読み返して思った……耳郎ちゃんとの絡みが少ないことに。
次こそはきっと、きゃっきゃうふふな展開に……できたらいいなぁ。
あぁ、文才が無いのが悲しい……。
「やっとヒーローらしい記録出したよー!」
「指が腫れ上がっているぞ……入試の件といいおかしな個性だ……」
緑谷の大記録に麗日は両手でガッツポーズをし大喜びし、その隣で飯田が緑谷の怪我を見てその個性のちぐはぐさに疑問を抱く。
「すっご……増強系だと思うけど、それにしても飛びすぎじゃない?」
諸葉の隣に立つ響香は緑谷の大投擲にあんぐりと口を開け、信じられないといった表情を浮かべている。だが諸葉は彼が個性を使えばこの記録を出すことができると知っていたので、別段驚きはしないが一応相槌だけは打っておく。
「ただやっぱり、使った反動が大きすぎる」
「反動って……てかあの指、絶対骨折れてるでしょ」
緑谷の個性はまさに諸刃の剣だ。常人をはるかに超えるパワーを引き出す代償は自身の体で、個性を発動した右手の人差し指の骨は砕け赤く腫れ上がっている。
諸葉もまた、彼と同じく自身の体を傷つけるリスクを持った個性を有している。だからだろうか、諸葉は胸の中で考える。緑谷がその激痛に飛び込んでいける理由、彼の背中を押す何かを。
緑谷の大記録に他の面々が驚愕する中、一人の男が集団から抜け緑谷へと向けて駆け出した。
「どーいうことだコラ! ワケを言えデクてめぇ!」
掌を爆破させながら怒りをあらわにする爆轟。鬼の形相を体現したかのような表情を浮かべた爆轟は、怒りのままに緑谷へ襲いかかるも相澤により個性を消され捕縛。
衝動のままに駆け出したのだろう、担任に注意を受け幾分か冷静になった爆轟だが、それでも緑谷へ向ける視線には憎悪にも似た何かが込められていた。
爆轟の襲撃を逃れた緑谷がクラス集団の元へ戻ると、彼の怪我を心配した麗日が駆け寄り声をかける。
「指 大丈夫? すっごい腫れてるけど……」
「あ、うん大丈夫……痛ぅ!」
「全然大丈夫じゃないじゃん! 保健室行ったほうがいいって!」
「でも、まだ残りの種目が……」
「そんな怪我じゃ満足にできんって! 一旦保健室にいこ、ね?」
怪我をした緑谷を保健室へ連れて行こうとする麗日。確かに今の緑谷の状態では残りの種目を満足に行えるはずもない。しかしそれ以上に緑谷が懸念しているのは、怪我を理由にテストを抜けたことで最下位になってしまうということ。
この怪我は不慮の事故ではなく、こうなるのを覚悟した上で負ったものだ。つまりは自己責任、このまま最後までやり通すのが最善だと緑谷は考える。
そんな緑谷に麗日はそれ以上何も言わないが、依然心配そうな表情を浮かべている。するとそんな二人の元へ歩み寄る一つの影が。
「……怪我、ちょっと見せて」
「え?」
その影の正体は響香の元を離れた諸葉だ。緑谷からしてみれば面識のない人物からいきなり声をかけられたも同然で、戸惑いつつも右手の怪我を見せる。
「あ、あの……君は?」
「癒代 諸葉……よろしく」
「あ、僕はみ、緑谷 出久……よろしく癒代くん」
自己紹介をしながら怪我の状態を見る諸葉へ、緑谷は何をしてるのか不思議そうな視線を向け問いかける。
「あ、あの……何してるの?」
「……うん、これくらいなら大丈夫」
「へ? 大丈夫って、何が……」
一人で頷く諸葉へ緑谷はさらに問いかけるが、それを無視して諸葉は個性を発動させる。緑谷の怪我に触れた手から白い光が漏れ、数秒も経たない内に彼の右手を覆い尽くす。
突然の現象に緑谷は目を見開かせ驚くが、次第に指の痛みが小さくなっていくことに気づく。光が消える頃には人差し指の腫れはほとんど引き、痛みも動かす際に多少痛い程度まで治った。
ふぅ、と息を吐き諸葉は緑谷から手を離す。
「これで、残りの種目も大丈夫」
「え、あ、うん……あ、ありがとう」
「それじゃ、次 俺の番だから」
そう言うと諸葉はボール投げを行うべく緑谷から離れ指定の場所へと向かう。怪我が殆ど治った緑谷は、遠ざかる背中と人差し指を交互に見比べる。
最下位は除籍。周りは皆ライバルだというのに、諸葉のとった行動はそのライバルを手助けするものに他ならない。なぜわざわざそんなことをしたのか、緑谷は諸葉の行動に疑問を抱く。
「いやーやっぱりすごいなぁ、あの人の個性」
「麗日さん、知り合いなの?」
「え? ううん、入試の時たまたま会っただけで……ていうか、覚えてないの?」
「入試のときはその……ショックで気絶したから記憶がなくて……」
0ポイントで終えた実技試験。ショックのあまり気絶をしてしまった緑谷はその後何が起きたのかを知らない。
しかしことの一部始終を見ていた麗日は、少し言いづらそうに口を閉ざす。そんな麗日の反応に緑谷は疑問を抱くが、言いにくいことを無理に言わせるのも悪いと話を終え、諸葉のボール投げへと意識を向ける。
緑谷が競技へ意識を切り替えたのを見て、麗日は彼に聞こえないようにぼそりと呟く。
「言えるわけないやん……君を治して全身から血ぃ出したなんて」
視点はボール投げに挑む諸葉へと変わる。
緑谷を治癒した諸葉はボール投げを行う為、円の中へと足を踏み入れる。そして相澤からボールを受け取り、早速測定を行おうとした直前
「入試といいさっきの緑谷といい、お前は怪我した奴ら全員をそうやって治していくつもりか?」
ぼそりと、諸葉にだけ聞こえるように問いかける相澤。その問いに視線を相澤へ向けると、彼の気だるそうな瞳と視線が重なる。
「お前の個性は大勢の人間を治せるほど万能じゃない。考えなしに使っていけば
許容限界がある諸葉の個性は、相澤の言う通り多くの人の怪我を治すことはできない。程度にもよるが、救える人数に限界があるのは紛れもない事実。
もしも身の丈に合わない人数を救おうとすれば、先に諸葉の体が限界を迎える。それは先の緑谷のように『
「誰にでも手を差し伸べる心は立派だが、治すべき人間とそうでない人間の見分けはつけろ。じゃねえと本当に救いたいもん取り零しちまうぞ」
言いたいことを言い終えた相澤は元の位置へと戻る。相澤が離れたことでボール投げへと挑む諸葉は、頭の中で彼の言葉を反芻していた。
見分けをつけるというのはつまり、救う人とそうでない人の線引きをするということ。それは諸葉の掲げる信念を、目の前で救える人を助けるという信念を曲げると同義である。
しかし相澤の言うことがもっともだというのもまた事実。諸葉の個性のデメリットを考えれば、多くの人を救う為にはそうしたある種の
ただそれを素直に受け入れられるほど諸葉は大人ではない。まだまだ未熟な、ヒーローの卵になったばかりの子供なのだ。これからヒーローとは何かということを学び、体感し、時に壁にぶち当たり乗り越えることで成長していく。
(俺にはまだ、先生の言ったことが正しいのかわからない。でもこれだけははっきりとわかる)
ボールを握る手へ力を込める。すると利き腕である右手を淡い光が包み込んでいく。
この光こそ、諸葉が誰かを助けたという証。そしてこの証が諸葉にさらなる力を与える。
構え、振りかぶり、力いっぱいに投擲する諸葉。ボールから手を離す直前までイメージするのは、諦めず今の自分の最大限を出し切った緑谷の姿。
(俺が緑谷を助けたことは、間違いなんかじゃない!)
それだけ誰になんと言われようと変えるつもりはない。
諸葉の手を離れたボールは、彼の個性で強化された腕力により常人をはるかに超えた勢い、そして速度で空を切り裂いていく。
数秒後、相澤の手元にある機械が飛距離を計測。記された数字は『155.3m』。相澤は計測機が叩き出した数字に目を向けた後、結果を問うように自分を見る諸葉へ視線を移す。
(実技試験の終盤、やけに動きが良くなったと思ったら……こいつ能力を隠してやがったな)
学校へ提出する個性届。相澤が目を通したそれに書かれていたのは『他者の傷を癒し、それを自身が引き受ける』という内容だけ。今の様な『力の増強』というものについては一切触れられていなかった。
確かに個性を隠すことによって得られるアドバンテージは大きい。しかし学校側にすら隠すというのは些かやりすぎとも言える。
相澤は試験での映像を頭の中で流し、諸葉の隠していた能力の発動条件を推測する。
(発動条件はおそらく『個性での治癒』……なら緑谷の傷を治したことも納得がいく。見たとこ、
だがそれは緑谷の負傷が最低限であったから。もしも入試の様に腕一本を犠牲にしていたのなら、結果は今とは違っていたのかもしれない。
(依然多用はできないが、得られるメリットは確かにある……もうしばらく様子を見るか)
メリットを最大限に生かす個性の使用。もともと身体能力は高い諸葉に、対応力・思考力の高い緑谷。今以上にうまい個性の使い方を知れば二人とも一気に化けるだろう。
互いにリスキーな個性を持つ緑谷と諸葉……少々心配だが、一応の見込みはあると相澤は判断を下す。
「そんじゃあと一球、さっさと投げろ」
後はこのテストをさっさと終わらせるだけ。相澤は諸葉へ次のボールを渡し、二度目の測定を無言で眺める。
そして時間は全種目終了後まで飛ぶ。
「んじゃぱぱっと結果発表するぞ。トータルは単純に各種目の評価点を合計した数だ。口頭での発表は時間の無駄なので一括で開示するぞ」
説明をする相澤の前に集合した生徒達。その中で一際 険しい顔をしているのは、ボール投げ以外パッとしない結果の緑谷だった。
諸葉のおかげで怪我の痛みを気にすることなく全種目を終えることができたが、それでも個性を活用した他のクラスメート達に比べれば数歩以上劣っているのは明らか。
最下位は自分だと理解している緑谷は結果が表示されるその時を、胸が張り裂けそうなほど跳ねる心臓の音を感じながら待つ。
「ちなみに除籍はウソな。君たちの最大限を引き出す合理的虚偽」
結果の開示とともに相澤はそう口にする。告げられた事実に、彼の言葉を信じていた大多数はこれでもかと叫び
「あんなのウソに決まってるじゃない。少し考えればわかることですわ……」
「そゆこと……これにて終わりだ。教室にカリキュラムなどの書類があるから目ぇ通しておけ」
そんなクラスメート達に八百万は、やれやれ、といった口調で告げる。
衝撃的な事実に、除籍を覚悟していた緑谷は口をパクパクとさせ
「緑谷、一応
そんな緑谷と開示された結果をぼうっと眺めている諸葉へ保健室利用書を手渡す相澤。
それを受け取った諸葉と緑谷は互いに視線を合わせ
「……とりあえず、行こ」
「う、うん……!」
相澤の指示に従い、二人で保健室へ向かって歩き出した。
こうして1年A組の少年少女達は最初の壁を乗り越えたのだった。
長くなってしまいましたが目を通して頂きありがとうございます。
少し駆け足かつ勢いで書いたので雑になっていた部分もあったと思います。
よろしければコメントにてアイディアを頂ければと思っています。
それでは、次の話でお会いしましょう!