依田芳乃がシンデレラになった話。   作:姪谷凌作

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後編

 

 

 

 

カツカツというチョークの音。先生の声。乃々はそれらがどこか、自分とは切り離されているものに感じていた。

学校という空間が自分に最適なものではないということは分かっていたが、こうも遠いものだと感じたのは初めてだった。

体中が筋肉痛で痛むのに、心はぼーっと浮ついていて、見えるものはどこか現実味が無い。夏休み前の浮つきとは違い、不快感をまとうものだ。

 

原因はわかっている。芳乃のせいだ。

次事務所に行くのは明日だ。その時、芳乃に会って、どういう顔をすればいいんだろう。

忘れようとすればするほど、いつもどういう風に接していたのか分からなくなる。

深呼吸して整理すれば、普段と違う芳乃を見た、それだけだ。そのはずだけど、変に胸騒ぎがする。

 

依代様、芳乃はそう呼ばれていた。あの集団がファンではないことは一目瞭然だ。

乃々にはその呼び名にどんな意味があるのかまるで見当もつかないが、あの集団の凄く重要な立場に居るのだろう。

そして乃々がそれに触れることを、芳乃は嫌がっている。多分、プロデューサーにも何も話していないのだろう。

乃々は好奇心に従って嫌われてまで首を突っ込むもうなどという気はない。

無かったことにする、そんな演技をしよう。きっと芳乃も、それに気づいたって何も言わないだろう。必死にそう暗示をかけながら、一日を過ごした。

 

 

 

 

 

翌日。今日は歌のレコーディングの日だ。乃々は間違って迷惑をかけてしまうことがないよう、レッスン以外にも家で練習してきている。

 

けど、先ほどから何度もリテイクを出されている。理由はわからない。リテイクを出している当の本人であるプロデューサーは何か違う、と何度も言っている。

 

芳乃とは上手くやっていけている。何事もなかったように、普段通りのやり取りができている。あっけないくらいだった。

 

「二人とも、ちょっといいか?」

 

プロデューサーに呼ばれる。珍しく困ったような表情をしていた。

 

「何回もリテイクだしてごめんな。ちょっと休憩した後、もう一回だけやってみてくれないか」

「わかりましたー。それでは一旦、休憩とさせていただきますー」

 

芳乃はとことこと控室に戻っていく。

 

「なんだ森久保? 休憩しないのか?」

「あ‥‥いえ‥‥」

 

不思議そうな顔をするプロデューサーの視線から逃れるように乃々も控室に移動した。芳乃は机に突っ伏して寝ていた。

やはり、ほかの仕事も忙しいのだろう。頭にちょこんとのっけたリボンは、重力に引かれて落ちかけていた。

乃々も手近な椅子に腰かけ‥‥急に心細くなった。人がいるのに静かだという状況は、中々落ち着けないものであるということを感じた。

 

落ち着こう落ち着こう、そう考えれば考えるほど、頭は冷静さを失っていく。机の下で体育座りをしても、それは変わらなかった。

乃々は気を紛らわせようと携帯を取り出すためバッグを手に取り、そこで御守りの石を持っていることに気付いた。

ぎゅっとそれを握りしめ、どうかもりくぼを普段のもりくぼに戻してください、と祈る。祈りが通じたのかはわからない。石はひんやりとした感触を返し続ける。

そして、それが体温と遜色ない温度になった頃に、プロデューサーが「そろそろいいかー?」と戸をノックしたのだった。乃々はそこでやっと、自分が眠りかけていたことに気が付いた。机の下から出ると、少しまぶしかった。

 

「良き収録が出来ますよう、頑張りましょー」身なりを整えながらそう微笑む芳乃に、

「はい‥‥次こそ・・・・・」と自然に返せる程度には、落ち着いていた。

 

そして、収録が終わり、

「うーん‥‥‥うん、うん!これでいこう!」と、プロデューサーはゴーサインを出したのだった。

 

 

 

 

 

それから、またしばらくして。

 

事務所内が、にわかに騒がしくなる。

 

原因は、とある週刊誌の記事だ。

 

シンデレラガール総選挙一位、依田芳乃は、やくざの家と関係が?という内容だ。

この手の記事は時々見られるし、特に気にするほどでもないのだが、今回は少し違う。

事務所の周りなどをうろつく黒服集団の写真が出ている。中には先日乃々に詰め寄ってきた男も映っていた。つまり事実なのだ。

今の所ガセだろうという見解が強いが、今後も写真が増え続けるならそうはいかないだろう。

 

事務所に入ると、入れ違いに芳乃が出ていく。事務所に来る時間を細かく指定されたことから、事情を聞いていたのだろうと思った。

 

案の定、プロデューサーがその件について何か知っていることはないか、と聞いてきた。乃々は知らない、と答えた。

ちくりと胸が痛む。誰に頼まれてもいないのに、乃々はプロデューサーを騙したのだ。

ここで話していれば、なんとかなったかもしれない。嫌われてでもそうした方がよかったかもしれない。そう考えてしまう。

 

それ以外に用は無かったので、話が終わってすぐ帰ることにする。

駅に向かってしばらく歩いていると、女子寮の前で芳乃に出くわす。

 

「また会いましたなー。わたくしも駅近くまで用がありますので、ご一緒しませぬかー?」

「あぁ…はい。いいですけど‥‥‥」

 

二人で並んで歩く。乃々が沈黙を苦痛に感じてきた頃に、芳乃が話し始める。

 

「また迷惑をかけてしまいましたー。すみませぬー」

「いえ‥‥もりくぼも迷惑かけることがあるので‥‥人のことは言えないし…」

 

口ごもる乃々を見て、困ったような顔をする芳乃。

 

「言って、しまわれたのでしてー?」

 

思い切ったように、そう言う。語尾は少し震えていた。

乃々が首を横に振ると、少し安心したようだった。

けどそれは、疚しいことがあるということを認めているのと同義で。

乃々はさらに芳乃へのかかわり方が分からなくなってしまった。

 

そろそろ駅も見えてこようか、といった頃。

 

「乃々殿には、やはり話しておこうかと思いますー。隠し事をするのは、やりきれませぬゆえー。お時間よろしいでしょうかー?」

 

いつもの芳乃とは違う、柔和さのない真剣な表情。これ以上触れてしまうことは乃々にとって恐怖だったが、逃げるという選択肢は選べなかった。

絶対に聞かれたくない話らしかったので、手近なカラオケに入った。

 

芳乃は思いつめたように、ぽつり、ぽつりと話し始めた。

 

 

 

 

依田の者には、とある言い伝えがある。

 

『関わった他者に幸せを分け与える』そんな不思議な力を持つらしい。そして、それは先に生まれた子ほど強く顕れる。

 

代償は、当人が分け与えることのできる幸せの総量は決まっていて、それがなくなる時、死んでしまうこと。寿命は、長男長女なら良くて30年、だそうだ。

 

大昔から伝わってきたこの言い伝えは、確かに今でも効力が残っている。

 

そして、そのせいで争いも絶えなかった。

 

そこで村の人間は、依田の人間を幽閉し、裏で神として崇めることで、その恩恵にあずかってきた。

 

依田家としても、身の安全が確保でき、祷り屋としての生活が保証されるなら、とそれを受け入れてきた。

 

長男長女が依代の役目を果たし、その弟妹が子孫を残す。そういうサイクルが成立していたのだ。

 

しかし、問題が起きた。

 

先々代、つまり芳乃の祖母に当たる代の子供は、一人だけだったのだ。

 

つまり、芳乃の母は、依代の役目と、子孫を残すという役目の両方を背負うことになってしまったのだ。

 

勿論、うまくいく訳はなかった。いつ死ぬかも解らないせいで村の人間が焦り、若すぎるまま芳乃の母は妊娠し、そして、第一子である芳乃を生んですぐに亡くなってしまった。

 

当然、芳乃にも母と同じ運命が待つことになっている。

 

それを拒んだのは、芳乃の育て親である、祖母だ。

 

祖母は同じ悲劇を繰り返さぬよう、一計を案じた。

 

長男長女ではないとはいえ、依田の人間は多少の力を有する。

 

『関わった他者に幸せを分け与える』という性質上、神事以外で対面して人と関わることを禁じられてきた状況を利用し、芳乃のふりをして神事を執り行うことで、芳乃の力の減衰を抑える。

 

小さいころから色々な教育を施し、芳乃をどこでも生きていけるように育て上げる。人とのかかわり方を教え、力の制御を教える。

 

そうして、十六歳になった時、芳乃を逃がしたのだ。

 

芳乃は自分の居場所を探し、プロデューサーと出会い、アイドルとなった。

 

それからはトントン拍子に人気が出て、総選挙で一位をとるまでになってしまった。

 

それと、芳乃の教育役であり、今回の事件の首謀者である祖母の、力を失ったことによる死は、ほぼ同時だったのだ。

 

作戦の発覚と同時に、芳乃は目立ってしまった。芸名である可能性があるとはいえ、芳乃は母とそっくりの顔立ちだったらしい。すぐに足はついた。

 

すぐにあの男たちが、芳乃を連れ戻しに来る。当然の事であった。

 

今の芳乃は、制御しているとはいえ、力をあちらこちらに流しすぎている。寿命は刻一刻と減っている。

 

早く連れ戻さなければ、家の存続さえままならないのだ。

 

前々から少しづつ干渉はあったが、焦りが募ってきたのか、手段を選ばなくなってきている。

 

これ以上迷惑をかけるわけにはいかないので、この仕事を最後に、アイドルを辞めてしまおう。芳乃はそう考えている。

 

これが、話の全容だった。

 

 

 

 

やくざとかそういったことより、はるかに上を行く話で、うまく頭が理解しない。

 

乃々はぐちゃぐちゃになった頭を必死に整理しながら言葉を選ぶ。

 

「アイドルをやめて、えっと…ど、どうするんですか・・・?」

「少し遠い、静かなところで、ゆっくり休憩いたしましょうかとー」

 

休憩という言葉の意味が文字通りでないということくらい分かった。

止めなければ、どうやって止める? 止めることに意味はあるのか?そういった思考が焦燥に火をつける。

 

「別に、そう考えこまなくてもよろしいのでしてー。乃々殿はそれまで、黙っておいてくれればー。わたくしは依代、もとより真っ当な人間ではないのですから、かまいませぬよー」

 

躊躇いもなくそう言って笑う芳乃。いつの間にか、カラオケは時間切れになろうとしていた。

 

期待を縫い付けられているんだ、漠然と乃々はそう思った。

 

乃々がアイドルを始めるきっかけになったのは、芸能プロダクションで働く叔父に子役としてデビューしないかと薦められたことだ。

元々気弱だった乃々は、似たような臆病な子供の役にピッタリで、特に演技することもなくそのオーディションに通ってしまった。

そして結果は上々、すごく演技が上手な子役として、持ち上げられてしまった。

当然、両親の期待も高まる。乃々の性格とは違った役も、回ってくるようになった。

そしてついに、失敗したのだ。監督の、「君はそれしかできないのか、代わりは居るんだぞ」というセリフは、まだ耳に残っている。

 

その時から乃々は、「無理」になってしまったのだ。先に進むことも、成長することも、期待に応えることも。

両親はそんなときもあるさと慰めてくれたが、その目に失望があることが見えてしまった。それが怖くて、目を合わせられなくなってしまった。

乃々が自棄を起こして全てを投げ出してしまってから、しばらくして。叔父がまた仕事を持ってきた。

何度も断ったが、結局流されて出会ったのが、今のプロデューサーだ。今の印象と変わらず、不思議な人だった。

小鳥の求婚のように一生懸命、君が必要だ、と言い続けた。

期待に応える人、ではなく、乃々を必要とする人なんて、初めてだった。

 

だから、乃々は期待を肩から下ろしたまま、アイドルをやっていられるのだ。

 

一方、芳乃は、期待に応えることが、自分の唯一の存在意義であると思っている。乃々には、眩しすぎる考えだ。

それが正しいことなのかは、乃々にはもはや見当もつかない。間違っていたって、解決策などわからないのだ。

 

乃々は芳乃の深淵に触れてしまったような気がして、一層怖くなった。

 

全てを知ってしまった乃々には、口を噤むことしか、出来ない。

 

 

 

 

 

 

それからは、形だけはトントン拍子で進んでいた。曲の前人気も上々で、あの黒服の男たちも見つからなくなり、夏の暑さもゴシップも、嘘のように消え去った。

 

そして秋も深まり、今日は曲のお披露目イベントだ。緊張するが、歌も踊りもしっかり練習して、目を瞑ってもしっかり動けるくらいだ。昨日のリハも完璧だった。

 

つまり、乃々の心の蟠り以外は、何一つ問題もなく進んでいるのだ。

 

今はメイク待ちをしている。あと数時間もしないうちに開始のはずだ。そのせいか外は騒がしくて、緊張が高まってくる。

 

机の下にでも隠れておこうかと考え始めたころ、乱暴に戸が開く。見るとプロデューサーが息を切らして立っていた。

 

「芳乃を‥‥芳乃を見てないか?」

 

憔悴したその言葉に、心の奥を突かれたような気分になる。嫌な予感が、全身を駆け巡る。

 

探さなくちゃ。乃々は直感的にそう思った。

 

「あっ…朝は!‥‥き、来ていたんですか」

 

急に声を出したせいで、変に上ずってしまう。プロデューサーは頷いた。

 

「さ、探してくる‥‥んですけど‥いいですか‥‥」

 

勢いで立ち上がったはいいものの、尻すぼみになっていく。乃々にもメイクの予定があるのだ。

 

「いや、探すのはこっちで・・・・・」

 

そう言おうとしたプロデューサーは、乃々の顔を見て少し笑った。

 

「ああ。見つけ次第連絡してくれ。俺は客席の方を探してくる」

 

乃々は駆けだした。

 

 

 

走る。ただひたすらに走り、和服の少女の姿を探す。

 

机の下、柱の陰。違う。自分が隠れるところじゃない。芳乃が行きそうなところを探さないと。目深に帽子を押さえたまま、芳乃を探す。

 

イベントの前の体力温存とか、そんなことは毛頭頭になかった。レッスンの時もあれだけ頑張れたんだ、と自分を鼓舞する。

 

けれど、一向に見つからない。時間もかなり押している。一度連絡を取ろうと携帯を取り出そうとし――

 

指に、違うものが触れる感覚。例の、御守りだった。

 

ひんやりとした感触の中に、違う何かが、流れている気がした。それに従って、携帯で地図を確認する。

 

――――ある。ここだ。

 

どこにも根拠はない。それに、こんなところまで歩いていては、通常の開演時刻には間に合わないだろう。

 

それでも、ここに行くしかないのだ。乃々は再び足を速めた。

 

雨が、降り始めていた。

 

 

 

 

 

芳乃は、あっさりと見つかった。それはもう、強まっていく雨とは対照的に、嘘のように簡単に見つかった。

 

会場の近くの、海にほど近い河川敷。橋のたもとに、立っていた。

 

「乃々殿ー。どうしてここにー? あぁ、気を辿って来られたのですかー」

 

芳乃を見つけ、今にも泣きだしそうな乃々を見て、それでも落ち着いた様子で芳乃がそう言う。

 

「探し…ました。今から‥‥戻れば」

「それはもう手遅れなのでしてー」

 

さえぎるようにぴしゃりとそう言う。

 

「どう‥‥して…」

「わたくしはやはり依田の人間だった、そういうことなのでしてー」

 

後悔、苦悩、怒り、哀しみ、羨望、そして諦め。色々な感情が複雑に混じった微笑みを向けられ、乃々は思わず目をそらしてしまう。

 

不意に、車のブレーキ音がして、乃々は振り返る。停止と同時に、男たちが降りる。何人かには、見覚えがあった。

 

「依代様、逃げては困りますよ。大人しく務めに戻ってくださいませ」

 

一人がそう言う。芳乃は動かなかった。

 

「やれやれ‥‥仕方ない」

 

声が急に冷たくなり、意味の分からない声を発し始める。

呆気にとられる乃々の横を、さっきまでは動かなかった芳乃が、ゆっくりと通り抜け、男の方に歩いて行く。

 

「よ…芳乃‥‥さん?」

 

芳乃は男の下で立ち止まり、乃々にお辞儀をする。

 

「乃々殿とは、今日でお別れになりまするー。今まで、ありがとうございましたー」

 

乃々をじっと見つめる目は、感情というものをおよそ持っているとは思えない目だった。

ガラス玉のように無機的で、感情に鋭敏な乃々と目が合っても何も感じないくらいだった。

けれども顔は微笑っていて、アンバランスだ。

 

「あ・・・・・あぁ‥‥」

 

本降りになりだした雨に打たれ、振り返って車に乗り込もうとする芳乃を、乃々はスローモーションで見ていた。

 

これで、いいのか?

これが、当然なのか?

仕方ない、ことなのか?

 

答えは全部、ノーだ。

 

「も・・・・・もりくぼは‥‥」

 

見過ごして、いいことではない。

 

「こ、こうなったら・・・・・」

 

どうやってでも、とめなきゃ。

 

「やけくぼなんですけどぉぉぉぉぉおおおおお!!!」

 

乃々は絶叫しながら、芳乃のもとに走る。

 

押さえつけようとする男たちの腕を潜り抜け、噛み付き、ひたすらに走る。

 

その甲斐も虚しく、乃々は抑え込まれてしまった。

 

けれど、足を擦りむきながらも、車に乗ろうとする芳乃の着物の裾を掴むことは、出来た。

 

「芳乃さん‥‥も、もりくぼは! ずっと、芳乃さんにもらってばっかりで、励まされてばっかりで! ダメダメですけど・・・! 貰った幸せでよければ……分けてあげることが出来る・・・かもしれない・・・・から! 何もできないかも・・・・しれない・・・けど!

ずっと一緒に、いて、ください!」

 

雨と涙でぐちゃぐちゃにしながら、乃々は芳乃の目を見たまま、そう叫ぶ。

 

言い終わると、力が抜け、裾から手を放してしまう。

 

涙と雨粒を腕で擦って押しのけ、その先に見えた芳乃は、

 

 

 

泣いていた。

 

「わたくしも・・・・・こんな運命は…嫌なのでして…‥‥」

 

堰を切ったように熱い涙が零れ、芳乃は乃々を抱きとめて、声をあげて泣き始める。

二人の声は雨にかき消されて遠くには聞こえないが、お互いにはしっかりと感じられる‥‥‥

 

呪縛は、すべて解けたのだ。

乃々の祈りは、運命に囚われた依田芳乃を、普通の、女の子に戻したのだ。

乃々が左手に握りしめていた御守りの小石も、力を失って、ただの丸い石に逆戻り。何度呪文を唱えても、魔法にはかからない。

依代の役目も、これでさよなら。秋の雨の中に、流されてしまった。

それは彼女たちの起こした奇跡であり、強い祈りから来る必然でもあった‥‥‥‥

 

 

 

 

 

 

 

 

それから、二人はプロデューサーによって発見され。

当日の開演は雨でアイドルが来られなくなったことにして延期。

大騒ぎとはなったが、何も明るみに出ることはなかった。

 

 

 

そして、一週間後。

 

「乃々殿ー?」

「ひぃっ!?……よっ、芳乃さんですか……」

 

相変わらず芳乃は乃々の隠れている場所をぴたりと当て、そこにやってくる。

 

「力は使えなくなかったって言ってた気がするんですけど‥‥」

「ええー。ですから、少しだけ探しましたー。今日こそはお披露目の宴、はりきって、まいりましょー」

「もりくぼは‥‥もう少しだけ、充電期間が欲しいんですけど‥‥」

 

そういいながらも立ち上がり、二人、並んでまた、歩きだす。

 

 

 

                                     fin.

 

 

 

 


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