セクハラ上手の高木パパ   作:暮影司

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お風呂

「ただいま~♪」

 

今日もいっぱい西片をからかって楽しかったなぁ~。

全く、西片ってば。

ふふふふ。

 

玄関で靴を脱ぎながら、目に入ったものを見て、思わず声が漏れる。

 

「げっ」

 

お父さんの靴がある!?

なんで!? お仕事終わったの!?

しかも、今日はお母さんがいないのに!?

 

「はぁ~」

 

思わずため息が漏れた。

お父さんのことは嫌いじゃない。

女友達はお年頃というのもあって、父親を嫌っていることも多い。

 

私は、結構好きな方。

家族なんだし、下着を一緒に洗濯されるくらいは構わない。

正直、見た目も悪くないと思うし。

 

でも苦手。

特に最近は。

 

もともとお父さんは、私の事をとても可愛がってくれている。

それは嬉しいんだけど、溺愛しすぎだと思う。

父親にとって娘は可愛くて仕方がないんだって言うけど……。

なんか他所のお父さんとは違うような気がする。

 

リビングのドアを開ける。

ソファでお父さんが漫画雑誌を読みながら、くつろいでいた。

仕事から帰ったばかりなのか、スーツ姿で、ジャケットだけ脱いでいる。

休日と違って、髪も整えていて、ちょっと格好いい。

 

「おかえり。どうした、そんな憂鬱そうな顔して。ま、まさか……今日はお赤飯か!?」

「ち、違うよ!」

 

んも~! なんてデリカシーがないの!?

それに、それはもうお父さんがいないうちに済ませたから。

始まったときは、お父さんには絶対バレないように、こっそりお母さんに報告した。

恥ずかしいから、絶対知られたくなかった。

 

「まだか」

 

お父さんはホッと、安心したようにため息をつく。

なんで安心してるんだろう……?

 

「まだなら、今日はお父さんとお風呂に入ろう」

「入らないよ!?」

 

なんで、生理が来るまでは一緒にお風呂に入れると思ってるの!?

中学生にもなって、お父さんとなんてあり得ないから!

小学校の卒業式のときが最後! あれで終わり!

 

「……ひょっとして、お父さんのこと。男として見てる?」

 

……えっ!?

そりゃそうでしょ、女じゃないじゃない。

ぱちくりと目を丸くしてお父さんを見る。

 

「そうっかそうか、お父さんを。男として。そうか~」

 

なにやら満足げに腕を組んでニヤニヤと笑っている。

 

「お父さんをねえ。そういう目で見てるんだねえ。性的な意味で」

 

言い方!

ねちっこくてキモい!

 

「じゃあ、ちょっとだけサービスしようかな」

 

ネクタイを緩めて、胸元のボタンを開けた。

むっ、ちょっと格好いいかも……。

 

いや違う違う!

騙されちゃだめ!

まただ。

 

お父さんはまた、私にセクハラしている!

 

お父さんめ~~~!

 

なんでいっつもいつも私にセクハラしてくるのよっ!?

 

両目をぎゅっと閉じながら、反論を試みるわたし。

 

「べ、別に、お父さんなんてなんとも思ってないよ」

「ほ~。じゃあいいじゃないか。去年まで一緒に風呂入ってたんだし」

 

あああ~~。

失敗したー!

つい言っちゃった!

 

生理が来てるのも言ってればこうはならないだろうに。

わたしのばか!

 

「じゃあ、いつもみたいに脱がしっこしようか」

「しないし、いつもやってない!」

 

セクハラ!

セクハラだよ!

脱がしっこをする事を想像して、かあ~っと頬が熱くなる。

お父さんに服を脱がされるなんて想像もできないよ。

昔はおむつを替えてやったとかすぐ言うけど、そんなの知らないし。

でもお父さんのネクタイを外したりするのは……ちょっといいかも。

 

って、何具体的に想像してるの!?

わたしはぶんぶんと、かぶりを振った。

 

それにしても……。

お父さんとお母さんは、いつも脱がしっこしてるのかな?

ひええ~! 恥ずかしい!

見たいような、見たくないような。

ううう。

 

ひとり悶絶していると、お父さんが次の言葉を紡ぐ。

 

「身体も洗いっこしよう」

「あ、洗いっこ!?」

 

脱がしっこですら恥ずかしいのに、洗いっこ!?

お父さんの背中は広くて、小さいときは洗うの楽しかったけど……。

今は胸を見られるだけで、恥ずかしくて死んじゃうよ……。

ましてや、洗われるなんて!

む、むり!

おもわず、両手で顔を覆う。

 

「脱がしっこも、洗いっこも、むり」

「わかった。じゃあ先にシャワー浴びてなよ」

 

~~~っ!?

なんか、なんか分からないけど、どきどきする!?

待って、あれはお父さんよ。

いつもみたいにお父さんがヘンなこと言ってるだけ。

 

じゃあ、お父さんじゃなかったら?

んー。

西片が言ったらどうだろう。

 

『先にシャワー浴びてなよ』

 

―――ぷっ。

あはははは!

おかし~!

何言ってるの西片ってば。

目尻に涙が溜まるほど笑っちゃう。

 

「おいおい、どうした。なんでそんなに笑ってるんだ?」

 

若干心配そうな顔で見られてしまった。

はー。

おっかし。

全くホントに西片は。

涙を拭いながら、お父さんに返事をする。

 

「ちょっと、クラスの男子のこと考えてて」

 

そう言うとお父さんは愕然とした顔をした。

ちょっと青ざめてる!?

顎も外れてない?

大丈夫かな?

 

「この、状況で、他の男の事、考えたのか?」

 

声が震えている。

肩も手もがくがくと、ゾンビのような動き。

 

「だ、大丈夫? お父さん。なんか変だよ?」

「お父さんという男が有りながら、他の男を……」

 

真っ青だった顔が、真っ赤になっていく!

ふらふらと身体を揺らす。

 

「お父さんと結婚するって言ったのに……」

 

でた!

なんかあるといっつもこれ!

幼稚園のときのことをずっと引きずってる。

こうなると面倒くさい。

仕方ないなあ。

 

「お父さん、大好き!」

 

とりあえず、抱きつくわたし。

 

「はっ!? 俺は何を!?」

 

よかった、正気を取り戻したみたい。

大体、何があってもこれでなんとかなる。

 

「ただいま~。あれ、帰ってるのパパ?」

 

玄関のドアを開ける音と共にお母さんの帰宅を告げる声。

リビングに入ってきたお母さんは抱き合ったわたしとお父さんを見て、引きつった笑いを浮かべる。

 

「……なにをやってらっしゃるの?」

「うん、今、お父さんが一緒にお風呂に入ろうって」

「ほほお~~~~!?」

 

お母さんの声が、重低音を響かせた! ガラス割れないかな!?

あまりの怒りで髪が逆立ってる!?

お父さんは、蛇に睨まれた蛙のように怯えていた。

 

「ママ、今日はいないはずじゃ……」

「私がいない間に、中学生の娘と風呂に入ろうとしてたんですか」

「い、いや、そういう言い方はその」

「問答無用! 死ねえエエエエ!」

 

お母さんはお父さんの首根っこを右手でつかみ、そのまま放り投げる。

 

「ぎゃああああ」

 

まるでボーリングのピンを倒すように、ダイニングの机と椅子が吹っ飛んだ。

ストライクだよ、お母さん!

 

「今日は久しぶりにママとお風呂に入りましょう」

「うん」

 

お父さんは今日はお風呂に入ると傷にしみるだろうな。

ちょっと、可哀想かも。

 

でも、お父さんには今日もいっぱいセクハラされちゃったなあ。

 

こういうときはアレしかない。

 

よお~し、明日はいっぱい西片をからかっちゃおうっと。

 

 

 





からかわれる高木さんも可愛いかと思って書いてみました。
こんなの高木さんじゃねえ! とか怒られますかね?
「続き書いて」だけでも感想いただけると嬉しいです。
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