今日は従姉妹が遊びに来ていた。
お父さんのお兄さんの娘だ。
私はずっとお姉ちゃんと呼んで慕っている。
私がお姉ちゃんを向かいに行って帰ってくると、お父さんとお母さんはリビングのソファで待っていた。
「オジさ~ん」
そう言って抱きつくお姉ちゃん。
私より3歳年上の女子高生に抱きつかれたお父さんは、明らかにデレデレとしている。
お父さんめ~。
お姉ちゃんにセクハラしたら承知しないんだから。
お姉ちゃんは美人だし、おっぱいも大きいからセクハラしがいがあることは私でもわかる。
「パパめ~」
お母さんも同じ思いなのか、お父さんを睨んでいた。
「ママにもデレデレしろっ」
そう言ってお母さんもお父さんに抱きついた。
私とは違って、嫉妬だったらしい。
全く、お母さんはお父さんのこと大好きなんだから。
お姉ちゃんとお母さんに抱きつかれて、デレデレしているお父さん。
……ふん。
するとお父さんが私に向かって、ウインクをしながら言った。
「お前も来るか?」
「……行かない」
なんでセクハラお父さんに自分から抱きつかなきゃいけないのよ。
ちょっとだけ迷ったことが悔しかった。
「今日は何するんだ?」
お父さんがお姉ちゃんに言う。
お姉ちゃんはいつもゲームとか、一緒に遊ぶものを持ってきてくれる。
私もお姉ちゃんも一人っ子だから、普段家族で遊ぶ機会がないんだよね。
モノポリーも麻雀もお姉ちゃんに遊び方を習ったのだった。
一緒に遊ぶのが楽しくて、お姉ちゃんが来るのを毎回楽しみにしている。
今日の遊びがなにか聞いたのは、お父さんも楽しみにしているからだろう。
「今日は王様ゲームをしようと思いまーす」
お姉ちゃんが右手を上げて宣言する。
王様ゲーム?
なんだろう。
お姉ちゃんは、いつも私の知らないゲームを教えてくれる。
「えっ、マジで?」
お父さんは知っているのか、びっくりした様子。
「ママはやったことないわ」
お母さんは知ってるけど、やったことないみたい。
全く知らないのは私だけか。
お姉ちゃんから説明を受けた。
割り箸のくじで王様と番号を決めて、王様が命令を下す。
命令に従えなかったら負けらしい。
まだピンとこないな。
ゲームはとりあえずやってみる方がいい。
「王様だーれだ」
お母さんが飛び上がって割り箸を燦然と掲げた。
「私だ~~!」
なぜかテンションが高い。
確かになんでも命令できるって結構楽しいからテンション上がるかもしれない。
「じゃあね、2番が3番の足の指を舐める」
うわ、いきなりえげつない!
思わず目を見開いてお母さんの顔をまじまじと見つめてしまった。
いつも優しいお母さんを暴君に変えてしまう。
これが王様ゲームか……。
「2番俺だわー」
2番はお父さんだった。
よかった、私じゃなくて。
うわー、本当に舐めるのかなー。
嫌そうな顔を見せるお父さん。
そりゃそうだよね。
屈辱的な行為だよ、これは。
「仕方ないけど、王様の命令は絶対だからなー」
しぶしぶとひざまずき、ソファに座っているお姉ちゃんの左足を両手で持つ。
ひゃー。
お父さんは舌を出すと、そのままお姉ちゃんの足の親指と人差指の付け根を舐め始めた。
「ひゃうう!?」
お姉ちゃんはくすぐったいのか、甘い悲鳴をあげる。
いいリアクションだ。
お姉ちゃんも西片ほどじゃないけど、からかい甲斐があるんだよね。
次は人差指と中指の間へ舌を移動。
丹念に、丹念に舐めていく。
っていうかそんなに丁寧にしなくて良いのでは……。
あんなに嫌そうにしていたのに。
あれ。
今お父さんを見ると、全然嫌そうじゃない。
まるでご馳走を食べるような表情。
お姉ちゃんも気持ち悪そうな顔じゃない。
むしろ何か、恍惚としているような……。
な、なんかえっちな感じがする……。
でも足を舐めるって別にえっちな要素がないよね……。
えっちだと思う私がえっちなのかな……。
「ふう、いやー仕方なかったなー」
お父さんのセリフが空々しい。
なぜかはわかんないけど、完全に楽しんでたよね。
「じゃは、ふ、つぎね」
お姉ちゃんがろれつが回ってない口調で言った。
ちょっとよだれが垂れてるし。
次のゲームが始まる。
「王様だーれだっ」
王様を引いたのはお父さんだった。
「そうだなー。じゃあ1番と3番がキス。口で」
な、なんてことを言うんだこの人は!?
でも自分にしろって言わなかっただけ紳士なのかも?
「ふぁあああ!?」
お姉ちゃんも混乱した様子で変な声をあげた。
「1番私だ……」
あぁ、お姉ちゃんが1番なのか。
ご愁傷様です。
って、3番は私だった!!
えええええ!?
私がお姉ちゃんとキスするの!?
……まぁいいか。
お姉ちゃんは美人だからね。
親戚のお姉ちゃんとのキスなんて挨拶みたいなものだし。
私はお姉ちゃんに向かって目を閉じて、顎をあげた。
「ちょ、あっさり!? 意外とキスし慣れてるの?」
そんなわけないでしょ。
お姉ちゃんは美人だから慣れてると思うけど。
「ううう、は、恥ずかし~」
お姉ちゃんは意外と恥ずかしがってるようだった。
ふふふ、私がお姉ちゃんをからかってるみたい。
西方にこのポーズをしたら、どうなっちゃうんだろ。
10分くらいキスするかどうか迷って結局しないだろうな。
そんな想像をして、思わずにやけてしまう。
「よ、余裕の笑み……なんか負けた気がする」
お姉ちゃんは、なんか私のほうがキスしなれてるみたいな勘違いをしているようだった。
もういいからさっさとやってくれないかな。
せがむように唇を突き出すと、ちょうどお姉ちゃんもしようとしていたのか唇に柔らかな感触。
ちゅっ
パシャ
パシャ?
目を開けると、お姉ちゃんは顔を真っ赤にしていた。かわいい。
お父さんを見ると、カメラを構えていた。
私とお姉ちゃんのキスを撮影するのが目的だったのか。
まぁセクハラじゃないし、いっか。
むしろその写真を使って西片をからかうことが出来そうな気がする。
私がキスしているところの写真見たい? とか言って。
くふふ。
「お父さん、その写真私にも頂戴」
「お? おう」
「えええ!? 写真なんか撮ってたのぉ!? 恥ずかしいよっ!? しかもなんで欲しがってるの?」
「パパ、ママにも頂戴ね」
「おばさまも!?」
お姉ちゃんは混乱しているようだった。かわいい。
「じゃ、次やろっか」
私は結構やる気になっていた。王様やりたいし。
「うう、恥ずかしがってるの私だけなの……?」
お姉ちゃんは、うなだれていた。
「王様だーれだ」
元気のないお姉ちゃんに変わって私が言った。
王様、来い!
「パパでしたー」
チッ
「え、今舌打ちした?」
首を横に振る。
目ざといなあ、お父さんは。
「いいからさっさと命令」
「はい」
私が軽く睨むとお父さんは腕を組んで考える。
私だって早く命令したいんだから。
「じゃ2番が王様の頬にキス」
2番は私だ。
「はい、ちゅっ」
「へっ」
さっさと終わらせた。
お父さんが珍しく面食らっている。
「さ、早くやろ」
私は急かした。
「えええ……あっさり……普段してるのかな……」
お姉ちゃんは私があまりにもあっけなく命令を遂行したことに驚いているようだった。
お父さんは2番がお姉ちゃんである可能性を考慮して、口じゃなく頬にしてくれたんだと思う。
ほっぺなら余裕だよ。
「くうう、俺としたことがっ」
お父さんは何やら悔やんでるようだった。
どうせ、うまくセクハラ出来なかったとかだよ。
王様ゲームだと誰が何番ってわからないから確かに難しい。
でも、だったら。
誰が何番でも問題無いようにすればいいだけ。
おそらくこれが王様ゲームのコツ……!
「王様だーれだ」
よしっ。
心の中でガッツポーズを決めた。
私が王様だ。
「1番と2番がお互いの好きなところを10個言う」
くふふふ、これは恥ずかしいでしょ。
ただ好きというのではなく、具体的に褒めないといけないところがミソ。
仮に1番がお父さんで2番がお母さんなら、褒め合うのは簡単だと思うけど、お姉ちゃんと私が見てるからね。
恥ずかしいことうけあい。
私はからかい上手なのよ。
「1番はパパだ」
「2番は私です」
パパとお姉ちゃんか。
こりゃあ恥ずかしいぞう。
私とパパだとしても想像するだに恥ずかしいもん。
「えっと、格好良いところが好きです」
お姉ちゃんが赤面しながら言う。かわいい。
見てるこっちが恥ずかしくなる。
「おっぱいが大きいところが好きだ」
――くっ、お父さんめ~。
考えてみればこうなることはわかったじゃない。
絶好のセクハラの機会を与えてしまったことを悔やむ。
お姉ちゃんは更に顔を赤くしていた。当たり前だった。
「え、ええと、背が高いところも好きです」
お父さんは結構背が高い。
西片みたいに背が低い方が可愛いと思うけど。
「黒髪のショートカットが綺麗で好きだ」
似合ってると思うけど。
なに、お父さんは黒髪のショートが好きなの?
なんか面白くない。
「お仕事ができるところも好きです」
お父さんは仕事できるらしい。
私はセクハラしてクビにならないか、いつも心配しているけど。
「ブレザーの制服が似合うところが好きだ」
お姉ちゃんはブレザータイプの制服ですごく可愛いけど。
私はセーラー服で悪かったわね。
「歌が上手なところも好きです」
え、お父さんって歌が上手いの?
お父さん、お姉ちゃんと一緒にカラオケに行ってるのか……。
「眼鏡をかけると更に可愛くて好きだ」
わたしは眼鏡似合わないもんね。
「スノボを教えてくれるところも好きです」
お父さん、スノボなんて出来るんだ。
「ビキニタイプの水着が色っぽくて好きだ」
どうせ私は野暮ったいワンピースですよ。
「剣道3段で頼もしいところも好きです」
お父さん、剣道なんてやってたんだ、全然知らなかった。
「原付に乗ってるところも可愛いし好きだ」
はいはい、私は自転車ですよ。
なによ、この二人、見つめ合っちゃって。
お姉ちゃんは、私の知らないお父さんのこと知ってるし。
お父さんは、お姉ちゃんの私にない魅力ばかり褒めて。
くうううう。
すると温かく見守ってたお母さんが私に話しかけた。
「泣いてない? 大丈夫?」
「な、泣いてない」
そう言って私は、目尻を拭った。
私が王様で命令したのに、私がギブアップなんてありえない。
「なんか、10個じゃ伝えきれないな。好きなところが多すぎる」
「私もです」
そのセリフを聞いて、私は膝から崩れ落ちた。
「私の負けです……」