セクハラ上手の高木パパ   作:暮影司

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夏服

明日から衣替えで制服が変わる。

新しい夏服に袖を通す。

姿見の前でチェック。

うん、なかなかいいと思う。

私はこの、とてもシンプルなデザインのセーラー服が気に入っていた。

 

西片はどう思うかな?

可愛いよとか、似合ってるよなんて言うわけないけど。

なんとか、言わせてみようかな。

ふふふ。

どうやってこの制服姿を褒めさせようかな……。

 

「おーい、まだか~?」

「あっ、ごめん」

 

お父さんが、私が着替えるのを待ってたんだった。

私が新しい服を初めて着るときは、お父さんが写真を撮ることになっている。

他所の家でもやってるのかな?

 

ドアを開けて廊下に出ると、お父さんはカメラを持って待ち構えていた。

いつも思うけど、すごくおっきいカメラ。

バードウォッチングじゃあるまいし、娘の制服姿なんてスマホのカメラで十分だと思うんだけど。

お父さんは私を見るなり、目を見開いて言った。

 

「くっ、セーラー夏服……他の男に見せたくねえ……」

 

なぜか顔を覆って苦悩してる。

似合ってない……かな。

 

「だめ?」

 

私は、手を広げてくるっと回って制服姿を見せた。

 

「ダメだー! 可愛すぎて危険だ! 俺だったら襲う!」

「ええっ!?」

 

襲うって何……?

怖いよ、お父さん……ちょっとだけ嬉しいけど。

 

とりあえず、私の部屋の中に入る。

お父さんはいつも私の部屋に入るとまず、鼻から大きく息を吸う。

別にお花とか飾ってるわけでもないのに、いい匂いがするって言う。

へんなの。

 

「じゃあ撮影しようか。まずは王道に体育座りだな」

 

制服で体育座り?

どこが王道なんだろう?

 

「これ、体操服じゃないよ?」

「体操服だったら体育座りじゃないな。跳び箱の上でぺたん。これだな」

「へ、へ~」

 

お父さんの言っていることは、よくわからない。

 

「じゃあベッドの上で斜めに体育座りしてね」

「う、うん」

 

とりあえず、言うとおりにする。

 

「くぅ~、最高だね~」

 

そんなに?

親指を立てた右手を何度も前に突き出しながらの大賛辞。

お父さんが褒めてくれることは素直に嬉しい。

 

「あっ、左脚はこうね。それだとぱんつ見えちゃうから」

「あ、うん」

 

―――って、今まで見えてたの!?

んも~~~!

 

お父さんめ~~!

 

体育座りさせて、ぱんつが見えるような写真撮ってたなんて!

信じられない!

 

「お父さんの変態!」

「おいおい、見えるようにするなら変態かもしれないが、見えないように言ってるんだぞ? むしろ紳士だろ」

「そ、そっか」

 

そうだよね、お父さんは紳士だもんね。

ちょっと悪かったかな。

 

「よし、これで丁度、ふくらはぎでパンツがぎりぎり見えない写真が撮れたぞ。超王道」

 

どこが王道なのかはわからないけど、写真に下着は写ってない。

よかった。

 

「次はこれだっ」

 

お父さんは小さなラジカセを取り出した。

なぜかお父さんはラジカセをよく使う。

本当は音楽を聞くものらしいけど。

私は使ったことない。

 

お父さんが再生ボタンを押すと、電車の中の音がしはじめた。

ガタンガタン……ガタンガタン……という地味な音。

私はあまり電車に乗ったことがないのでピンとこない。

 

「このつり革に捕まって」

 

お父さんはテキパキとクローゼットのドアにつり革を取り付ける。

なんでこんなの持ってるんだろう?

 

つり革に捕まって立つ。

私は座れないほど混んでいる電車を知らないので、つり革に捕まるなんて初体験だ。

 

その姿を見て、お父さんは両手を組んで何度も頷いた。

 

「自転車通学で本当に良かった……。東京なら確実に痴漢される」

 

痴漢されるんだ、確実に……。

良かった、自転車通学で。

 

カメラを私に向けるお父さん。

 

――ん? ちょっと待って?

 

「それって、思わず痴漢しちゃいそうな写真ってことなんじゃあ……?」

「これ、動画だよ?」

「な~んだ……ってなんで動画撮ってるの?」

「夏服セーラーで電車通学する中学時代がない以上は、シミュレーションで補完するしかないだろ?」

 

そうなんだ……。

お父さんの言うことは難しい。

 

動画はもう十分撮影し終えたのか、今度はシャッター音が聞こえてくる。

 

「ねえ、お父さん」

「なんだ」

「なんで寝っ転がって撮影してるの? 電車でその角度は本当はありえないよね?」

「これも王道だよ?」

 

そうなんだ……。

王道って難しいな。

 

「安心しろ、ぱんつは写ってない」

 

じゃあ安心だ。

お父さんは紳士だから、とっても安心。

 

「ねえ、お父さん」

「なんだ」

「そこからだと、脇が……」

 

つり革を掴んでる手の袖口から見えちゃうと思う。

 

「そうだ、脇マン……ゴホン、脇を写している」

「な、なんで?」

 

なんだろう、なんでかわからないけど、そこを撮影されるのは恥ずかしい。

まだ脇に毛は生えてないけど、あまりじろじろと見られる場所じゃないよね。

 

「脇が見えてこそ、夏服だろ?」

 

ふ……と目を細めて、なんか格好良い感じに言ってるけど、よくわかんない。

 

「その~、恥ずかしいよ~」

「恥ずかしがってる方が断然良い。問題なし」

 

ええ~、問題あるよ~。

ううう。

 

「よし、次は急な夕立に遭う。シャワーでびしょ濡れにしよう」

「ええっ!? それはダメだよ、明日学校に着ていくんだから」

 

西片に見せて、からかう予定なんだから。

でも、雨に濡れた状態でからかうのは良いかも!

いつかやろうっと。

 

「そうかー、仕方ないか」

 

心底残念そうに、うなだれるお父さん。

ちょっと可哀想かも。

 

「って、なんかお尻だけ撮ってない!?」

 

しょんぼりしてるから目線が低くなったのかと思ったら。

 

これは、明らかにセクハラ!

むしろ、痴漢!

触らない痴漢!

 

「違うよ、お尻だけじゃないよ、フトモモも撮ってるよ」

「それでもだめ!」

 

お尻とフトモモなんて、えっちすぎ!

 

「うん? お尻とフトモモを撮影して何が悪いの?」

「だめ。え、えっちだから」

「え? お父さんは全然えっちだと思ってないけど……えっちだと思ってるの? お尻とフトモモを?」

 

へぇ~とかふ~んとか、私の顔をためつすがめつするお父さん。

こ、これじゃあ私の方がえっちみたいだよ……。

私が考えすぎだったのかな?

だとしたら恥ずかしい。

不思議そうな顔で見ているお父さんを見て、頬が紅潮していく。

 

「じゃあ、次はぱんちらとブラちらを撮るね。大丈夫、お父さんはえっちだと思ってないから」

 

キリッとした顔で言い切るお父さん。

あははは。

 

こんなのに、騙されるわけ……ないでしょ!

 

ぷっしゅーー!

 

「ぎゃああああ!?」

 

ヘアスプレーを目玉に直接噴射した。

目蓋を抑えて、のたうち回るお父さん。

 

全く。

あやうくまたセクハラされっぱなしになるところだった。

 

でも、この写真を使って西片をからかうのは面白そう。

お父さんを廊下に叩き出して、私はベッドの上でお父さんの撮った写真を見ながら、次のからかいプランを考え始めた。

 

 





次は高木さんにどんなセクハラをしようかと真剣に考える日々です。
毎日、幸せです。
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