「この前美味しそうと言っていた、牧場のアイスクリームを買ってきました!」
お父さんが宝物を手に入れたゲームの主人公のように、誇らしげにアイスを掲げた。
さすが、お父さん。
たまにセクハラしてくるけど、普段は優しいんだよね。
「もちろんこれは食べていいんだけど……条件がある」
「条件?」
まさか、一緒にお風呂に入れとか言うんじゃあ。
う~ん、でもそれくらいなら良いかな。
脱がしっこと、洗いっこ無しなら……。
どうしても食べたいし。
「お父さんの指示に従って食べてもらいます」
「え? 食べ方だけ?」
「そうです」
な~んだ。
そんなの別にいいよね。
またセクハラかと思っちゃった。
「うん、いいよ」
快く返事をする。
「じゃあ、まずはこれを着けて下さい」
お父さんが渡してきたのは、アイマスクだった。
「なんで?」
純粋な疑問を持つ。
意味がわからない。
「視覚情報を断つことにより、美味しさが倍増します」
「ふ~ん」
なんか怪しいけど。
さっきから言葉遣いが丁寧なのも怪しいし。
まあいいか。
このアイス、凄く食べたかったもん。
「はい、着けたよ」
何も見えなくなった。
「アイスはパパが持ちます。口に付けるから、手を使わずに、舌で舐めて食べて下さい」
……?
なんで?
まぁ、条件だから仕方ない。
私は唇に当たった冷たい感触を受けて、一口目を食べようとした。
「こ、こら、歯を当てちゃダメだろ。舌だけだ」
うーん、面倒くさいなあ。
カプッといっちゃいたかったのに。
しぶしぶ、私は舌を少し出して、棒アイスを舐め始めた。
濃厚なミルクの味が口内に広がっていく。
これは美味しい!
先端の部分を口に咥えて、唇をつぼめる。
ぺろぺろと舐めて溶かしたクリームを口に溜めていく。
唇を離すと、ちゅぱっと言う音を立てた。
唇の端から少し垂れる。
こぼしたら、もったいない。
舌を伸ばして、舐め取った。
「美味しい」
「そ、そうか」
ごくりとお父さんがツバを飲み込む音が聞こえる。
さぞ美味しそうに見えるんだろうなあ。
お父さんも食べたいだろうに。
あっ!?
「まさかお父さん」
「ええっ!? な、なんだ!?」
動揺しまくっている。
これはやっぱり……。
「私の目が見えないうちに、アイスを舐めようとしてるんじゃないでしょうね?」
私はもう3年くらいキスをせがまれても拒否している。
もう父親とキスをするような年齢じゃない。
アイスが美味しそうだったからつい、という言い訳で、間接キスを狙っている!?
お父さんめ~。
あまりにキスをしてもらえない寂しさだとしても許さないんだから。
「違う違う。これを舐めるなんてとんでもない」
あれ?
嘘を言っているようには聞こえない。
私の勘違いだったみたい。
「早くしないと溶けちゃうよ」
「う、うん」
再度口を突いてくる棒アイス。
さっきは上の方から出されていたと思われたが、今度は下から上向きになっていた。
食べやすいけど、これだと垂れちゃうんじゃないかな?
「あ、根本から垂れそう」
言わんこっちゃない。
んもう。
私は根元の方から、先端の方まで一気に舌で舐め上げる。
そのまま、舌を回して先端を舐め続けた。
「うう、ううう」
なんか、うめき声が聞こえる。
気になるけど、いいや、早く食べないと溶けちゃうから。
あっ、アイスが右向きに少し倒れた。
ちゃんと持ってて欲しいなあ。
私は右手で髪を掻き上げて、耳にかける。
右の髪の毛が動かないようにしてから、左のほうからアイスを咥えた。
「も、もはやアイスの食べ方で、みかんちゃんを越えたな……」
お父さんが何か言ってる。
誰だろ、みかんちゃんって。
「ほほぉはん、みはんひゃんてはれ?」
「おおお! 口に咥えたまま喋るなっ」
口に入れたままで喋るのは、確かにお行儀が悪いか。
それにしても、動揺しすぎだと思う。
舌でぺろぺろやってたんじゃ、食べ終わらないな。
私は口全体で、アイスを含んで、前後に動かした。
手を使えないので、頭の方を動かすしかない。
じゅぱっ、じゅぱっ、ぴちゅ、ぺろっ、じゅぱっ。
たまに喉の奥に棒が当たる。
でも、そのくらい早く口を動かさないと、溶けてしまう。
結構食べたかな。
ちゅぱっ。
一度、アイスから口を離した。
口の中に溶けたクリームがいっぱいに入っている。
私はごくりと飲み込んだ。
「はぁ~、濃くって美味しい……」
本当に美味しくって、私は恍惚の表情を浮かべた。
ぱしゃ、ぱしゃ。
あれ?
なんか撮影してる音がしない?
「お父さん、今カメラ使ってる?」
「お、おう、すまんすまん。自然な表情が欲しくてな、黙って撮影してすまんな」
ふ~ん。
それはいいけど、アイマスクしてるんだから表情なんてわからなくない?
まさか、私の知らないうちにセクハラしてるんじゃ……?
そんなわけないか。
目隠しして棒アイス食べてるだけだもんね。
いつもいつもセクハラするわけじゃないから、信じてあげないと可哀想だよね。
それにしても、もう口の周りが大変なことになっていた。
「口がべたべたなんだけど……」
「べたべたするのか……」
「うん……お父さんが下手だから……」
たまにほっぺたに当てたりするんだもん。
わざとじゃないかと思っちゃう。
「お父さんが下手でごめんな」
謝るほどのことはないけど。
謝罪してる割に、なんか嬉しそうな声なのが釈然としない。
「もう残り少ないから、普通に食べていいぞ」
「うん? うん」
お父さんはあっさりとアイマスクを取った。
ウェットティッシュも渡してくれた。
う~ん?
全然、意味わかんない。
意味はわかんないけど、多分今までのやつ、なんかおかしい。
ちょっと、カマをかけてみよう。
「お父さん、今度クラスの男の子の前で、同じことしてみようと思うんだけど」
「なんてことを!? 絶対ダメだよ!」
やっぱり……。
これはセクハラだったんだ。
とは言え、どんなセクハラなのか確認するのも恥ずかしいので今回は黙っておく。
こんなに美味しいアイスが食べれたんだから、良しとします。
でも、西片の前でアイスは食べてみようかな~。
西片には、意味がわかるのかな?
うーん、高木パパはお咎めなしでいいんでしょうか?
どう思いますか?
1.いいぞ、もっとやれ
2.爆ぜろ