セクハラ上手の高木パパ   作:暮影司

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カタログ

「ただいま~♪」

 

西片の狼狽える顔がまだ鮮明で、私は笑いを堪えきれずに帰宅を告げる。

いつものようにまだ家には誰もいないようだ。

 

冷蔵庫から麦茶を出し、部屋に戻る前に少し休憩。

リビングのソファに腰掛けると、ローテーブルにファッションカタログがぽんと置いてあった。

洋服は街へでかけて買うこともあるけど、部屋着や下着は最寄りのファッションセンターで買っている。

今が暑い盛りなので、カタログは秋号。

表紙に載っている中高生向けのパーカーとデニムスカートのモデルが目を引いた。

 

軽い気持ちで手に取り、ぱらぱらとめくる。

へ~、中学生の服って大人っぽさと子供服の可愛さの中間って感じで良いな。

中高生向けの秋冬モノはまだ持っていないから買いたいかも。

 

そんなことを思いながらページを送ると、下着の特集になった。

上下のセットになっているもので、多少お得になるようだ。

確かに下着といえどコーディネートというものはある。

子供っぽいぱんつだと、大人っぽいブラジャーに似合わない。

まだ子供用のブラジャーを付けているから、もう少し大人っぽいのが欲しいと思っているところだった。

 

セット下着のブラジャーの小さなサイズのものから見ていく。

正直、まだまだ子供用でも入るのだ。

 

白いシンプルなもの。リボンのワンポイントがついているもの。

目だけで流すように確認していくと、赤ペンで丸がしてあるものを見つけた。

なんだろう、この丸。

 

赤丸は、パステルカラーのチェックの柄で水色とピンクと黄緑の3色のアイテムに付いていた。

ちょっと、かわいい。

しかし、この赤丸は一体?

 

右のページを見ると、また赤丸がついているものがある。

今度は赤いリボンのいっぱいついた白い下着だ。

これも、かわいいけど。

 

次のページをめくる。

すると今度はいっぱい赤のマークがついていた。

 

紫色の少しセクシーな印象のものに△が。

黒のテラテラしたシルクのものは×が。

そして、パステルカラーの横縞でフリルがついているものに◎がしてある。

 

どういうことだろう?

謎は深まるばかり。

 

次のページは少し大きなサイズになるみたい。

だけど、この冬から私も大きくなる。

きっと。きっとね。

だから、まだ着ることはないかもしれないけど、見てみようと思った。

 

すると、今度は赤で文字が書きこんであった。

 

『まだ大きい。来年くらい』

『こういうのはダメ、パパの趣味じゃない』

『こんなにえっちな下着をつける日が来るのだろうか』

 

……どうやらこれは、お父さんが赤ペンで書き込んだものだということがわかった。

 

お、お父さんめ~~!

 

なんでお父さんが、私の下着を選んでるのよ!?

勝手に、来年のバストサイズまで予測して!

しかも、えっちな下着をつける姿も多分、想像してるっ……。

 

念の為、もっと奥のページも見てみる。

奥のページほど、大人向けの商品になっていく。

後半はいちいちコメントが書いてあった。

 

『これ、買っちゃおう! 多分来年着れる!』

『高校生になったらコレくらいになるのか? 無理かも(笑)』

『俺は好きだけど、似合わないだろうな』

『とても娘が着けたところを想像できない。したけど』

『ママに着せたら……いや、もう無理か』

『うひゃぁ、えっちすぎて大変けしからん。絶対買おう』

 

んも~!!!

 

私は目を><(こんな)にして、カタログをローテーブルにぱぁんと叩きつけた。

残っていた麦茶を一気に飲み干す。

 

はーっ。

はっ? 待って。じゃあ。

さっきまでの×とか○とかは。

お父さんの趣味ってこと?

 

イヤ~!

そんなの知りたくないし、お父さんが気に入ったのなんて着たくないよっ?

ちょっとかわいいのもあったのに、どうしてくれるのよぉ?

 

そもそもこんな感想をいちいち書き込む必要なんてある?

何が目的なの?

やっぱりこの状況を見て反応を見るため?

まさか隠しカメラでも仕込んでいる?

お父さんなら、やりかねない。

 

隠しカメラを探していると、玄関のドアが開く音がした。

 

「ただいま~」

 

お母さんが買い物から帰ってきたようだ。

エコバッグからはみ出したネギが見えている。

私を見るなり、いい話があると言いたげな笑顔を見せる。

 

「あ、そのカタログ見てね、パパが今週いっぱい買ってやるって言ってたわよ、良かったわね、お洋服買って貰えて」

 

……。

言葉がなかった。

 

するとお母さんは不思議そうな顔をした。

 

「あら? 嬉しくないの?」

 

この赤ペンの跡を見る前なら、喜んだと思う。

 

「やっぱり原宿とかで買いたいのかしら?」

 

私はかぶりを振って、否定した。

おそらくお母さんは表紙のようなオシャレな秋の装いを買うことを予想しているのだろう。

 

「お母さん、この赤ペンで書かれた文字を読んでみて」

 

私はカタログを開いて渡した。

受け取ったお母さんは、笑顔のまま、背後のオーラだけが黒くなっていく。

お母さんは漫画の効果なんじゃないかって思うくらい、表情と別に感情を表に出せる人なのだ。

本当は何を考えているのかわからないって言われる私とは全然似てないな。

 

「ちょっとスマホ借りていい?」

 

言われるがまま、スマホを渡す。

お母さんは私のスマホから、無料通話アプリでお父さんに電話をかけた。

 

「お、どうした? ひょっとして、カタログ見ちゃった~? どう、どう?」

 

テンションの上がりきったノリノリのお父さんの声が私にも聞こえる。

 

「全部、ママが着ます」

 

お母さんはたった一言で、通話を切った。

お父さんの好みの下着を全部着るって言い切るお母さん、すごいなあ。

私からの電話だと思ってたお父さんは驚いているだろうけど。

 

お父さんじゃなくて西方だったら、下着を選ぶなんてとてもできなさそう。

顔を真っ赤にする西方の顔が目に浮かぶ。

でも西方に私の下着を選んでもらう……のは私もさすがに恥ずかしい。

水着を選んでもらうのはいいかも。

どんな顔をするんだろ、ふふふふ。

 

 

 

 

 

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