お風呂から上がってリビングに行き、冷蔵庫からスポーツドリンクを取り出してコップに注ぐ。
リビングではお父さんがテレビを見ていた。
私はお父さんが座っているテレビの近くではなく、脇のソファに座った。
私からはテレビとお父さんが両方目に入り、お父さんからは私は見えない形だ。
どうやらお父さんはドラマを見ているようだった。
私も画面を見ながら、冷たいスポーツドリンクを喉に流し込む。
舞台は学校で、生徒は女性しかいないから女子校だと思われる。
若くて格好良い男の先生が爽やかに挨拶している。
俳優や女優は全く知らない人たちだった。
こんなドラマやってたっけ?
お父さんは割と真剣に見ているようだった。
学園ドラマなんて見るんだな。
少し意外。
ドラマの映像はなんてこともない学園風景が続く。
放課後のチャイムが鳴り、部活が始まる。
ぼんやりと見ていると、突然画面がピタッと止まった。
え? 放送事故?
すると、さっきの男性教師だけが動いている。
えっ、これ超能力モノだったの?
驚きの展開に、先が気になり始めてきた。
教師が移動していく途中で、廊下で女の子同士がキスをしているのを見つける。
うわ~。
女子校だとそういうこともあるのかも……。
それにしてもこういうシーンを父親と一緒に見るって気まずいよね……。
ちらっとお父さんの様子を伺う。
もしこちらを見られたときに意識していると思われたくないので、なるべく顔を動かさないで。
ポーカーフェイスだった。
う~ん、この程度では動じないんだな。
さすが大人というべきか……。
教師は無言でそれをスマホで撮影した。
時間を止めてる状態で……なんてことを。
そのまま移動していく教師。
今度は階段の踊り場にいる生徒のスカートの中を下から撮影。
うわあ、最低。
お父さんをチェック。
うんうんと頷いていた。
さすがお父さん、最低。
教師はそのままプールの更衣室へ入っていく。
すでに嫌な予感しかない。
想像通り、水着に着替えようとしている女子たちが沢山いた。
着替える途中で固まっている。
プールの更衣室なので、下着も外している生徒もいる。
うわうわうわ。
っていうかこんなのお父さんも見ちゃ駄目でしょ。
多感な時期の娘と一緒に見れないでしょ。
視界には入ってないけど、さすがに存在には気づいてるよね。
そう思いながらお父さんを見るが、微動だにせず画面に見入っていた。
むむむ。
そういう態度ですか。
こちらが慌てふためいたり、咳払いしながら部屋を出ていくなんて負けた気がして嫌だった。
なので、平静を装ってドラマを見続けることにした。
変態教師は生徒たちをじろじろと見はじめる。
どうせまた写真でも取るのかな。
ところが取ったのは写真ではなく、下着だった。
ブラジャーを手に取り、それをなんと――嗅いだ!
ひえええ!
変態だ!
そしてぱんつは――かぶった!
信じられない!
くらくらしてきた。
一体どんなドラマなのよ。
お父さんの顔を見る。
もはやこっそり見る必要はない。
どんな顔で見ているのか、このような破廉恥なものを。
へらへらと笑っていた。
……待って。
青春学園モノと思ってたけど、実はこれコメディなのかな。
これって笑うところなのかもしれない。
だとすると真剣に恥ずかしがったり、意識しすぎるというのはダサい感じ?
正直なところ、続きが気になってることもあり、そのまま視聴する。
一体これはどういうドラマなのだろう。
今は夜の10時で、深夜のドラマというわけでもない。
しかも有名な俳優が出てるわけでもない。
この謎を解明しないと枕を高くして眠れない!
ぱんつをかぶった教師は、調子に乗って生徒たちのお尻を撫でまくった。
あははは。
ここも笑うところに違いない。
お父さんも笑ってるし。
今度はおっぱいを触り始めた。
当然の流れか……。
大きい子のおっぱいを触り、次も大きい子のおっぱいを触り、次の小さな子は触らずに次の子に移動した。
はははは……。
私みたいな小さい胸には興味がないって。
そうですか。
なぜこんな変なドラマを見て傷つかないといけないのか……。
いや、別に変態教師に時間を止められているときに触られたいわけでは決してないのだが。
なんというか乙女心というのは複雑なのである。
やはりここは笑うポイントなのか、お父さんもウケている。
小さなバストを馬鹿にしおって、許せん。
西片もそうなのかな。
彼の考えてることはほとんどわかっちゃうんだけど。
結構、肝心なことだけはわからないことが多い。
さすがにおっぱいでからかうのは……想像するだけで赤面する。
そんなことを考えていたら、ドラマは新たな展開を見せていた。
えっ。
ちょっ。
変態教師は有ろう事か、更衣室中の女生徒を裸にしていた。
そんなことをしたら、放送できないんじゃ……?
そもそも、さっきから全然CMにならないことに違和感を覚える。
これって、ほんとにドラマなの?
するとお父さんは何故かティッシュを2枚取った。
感激して泣いた涙を拭うため、ではもちろん無かった。
鼻をかむわけでもなく握りしめたまま、左手でリモコンを操作して、
「えっ」
思わず声が出た。
これは今放送されているドラマじゃない。
するとお父さんは私の方を見て、ぎょっとした。
今まで全く気づいていなかったらしい。
そして、弱々しい声でこう言ったのだった。
「このBlu-rayは……お前は見ちゃ駄目なんだ、少なくとも18歳になるまでは」
「そんなのリビングで堂々と見るな~~!」
私は大声で叫びつつ、お父さんを睨む。
そんな私に悪びれもせず、こう言ったのだった。
「で、どう? 興奮した?」
お、お父さんめ~。
結局セクハラするんだから。
娘にア、アダルトな動画を見せて感想を訊くなんて。
反撃をしなければ気が済まない。
「もっと凄いことしてるから」
西片をからかうときのようなニヤニヤの笑顔でそう言い放ち、私はリビングを出た。
ドアの向こうから悲鳴が聞こえたけど、知らない。
心配して眠れなくなっちゃえばいいんだ。
西方も、こういうの見るんだろうか。
少女漫画を買うだけでもあんなに恥ずかしそうなんだから、借りれないか。
少し安心して、私は眠りについた。
その日はちょっとえっちな夢を見た。