2018/07/24 座学を受ける時間についての情報を追加
天之河のバカが勝手に戦争への参加を宣言し、ほとんどのクラスメイトが賛成してしまうと言う事態になってしまった以上、必要なのは生き抜いていけるだけの強さと知識だ。召喚による力の付与があることで潜在能力は高いとしても、今までは世界の中でも有数の平和主義国に居た日本の学生である。
戦う術や心構え、色々なモノが不足しているということで、教会と密接な関係を築いている【ハイリヒ王国】というところで訓練するらしい。
「では、こちらへ」
教皇の声に従って今まで居た場所(聖教教会本山というらしい)から出て、荘厳な門の下を通って太陽の光を反射してキラキラと煌めく雲海と透き通るような青空という雄大な景色に皆目を奪われた。
どうやら【神山】と呼ばれるかなり標高がある山の頂上に聖教教会は築かれていたらしい。
自慢げな様子を浮かべている。
教皇に促されるまま、回廊を進むとやがて円形の台座が見えてくる。
「この台座に乗ってください。乗ってない人はここに置いていくことになってしまいます」
教皇の声に慌てて台座に乗り始める。
皆が乗り終わったと確認した教皇が何やら呟き始めた。
「彼の者へと至る道、信仰と共に開かれん、“天道”」
教皇が言い終えると同時に、台座が輝き、動き出す。
台座には複雑な文様が刻まれており、先程の教皇の独り言に反応している感じからして、おそらく魔法陣なのだろう。魔法陣が反応するということは、先程の独り言が詠唱になるのだろう。
非科学的な現象に、クラスメイトは皆魔法だ、魔法だと騒ぎだす。
まぁ、初めて魔法らしき現象を見たのだから仕方がないことか。
台座はそのままゆっくりと斜め下に下っていく。
やがて、雲海を抜け地上が見えてきた。眼下には大きな町、いや国が見える。山肌からせり出すように建築された巨大な城と放射状に広がる城下町。ハイリヒ王国の王都だ。台座は、王宮と空中回廊で繋がっている高い塔の屋上に続いているようだ。
しばらくして塔の屋上につくとメイドがおり、”お待ちしておりました。皆さまには国王にお会いになっていただきます。では、こちらへ”と言ってさっさと歩き始める。
教皇もさっさと歩きだすが、いきなりの国のトップとの会合である。
生徒達は尻込みをしているが、そんなことは知らぬ存ぜぬといった感じで教皇とメイドはさっさと歩いて行く。
仕方なしに、皆緊張した面持ちで教皇たちの後をついて行く。
その後数分くらい本にしか出てこなさそうな煌びやかな廊下を歩いたのだが、騎士やメイドとすれ違うたびに皆立ち止まり、皆一様に期待に満ちた、あるいは畏敬の念に満ちた眼差しを向けて来る。楓凜達が何者か、ある程度知っているようだ。
長い廊下を歩き続け更に数分経ってようやく大きな扉の前に辿り着く。
扉の前には二人の騎士が居り、彼らは”教皇とその一行がお着きになりました”と大声で告げると扉を開け放った。
扉を潜り、部屋の奥を見た楓凜は少し気圧された。
玉座と思しき椅子の前で覇気と威厳を纏った初老の男が立ち上がって待っている。
その隣には王妃と思われる女性、その更に隣には十歳前後の金髪碧眼の美少年、十四、五歳の同じく金髪碧眼の美少女が控えていた。更に、レッドカーペットの両サイドには左側に甲冑や軍服らしき衣装を纏った者達が、右側には文官らしき者達がざっと三十人以上並んで佇んでいる。
皆が玉座の前に来ると国王らしき人物が話し出した。
「ようこそ、ハイリヒ王国へ。私の名はエリヒド・S・B・ハイリヒ。こっちに居るのは妻のルルアリア。そして息子のランデル、娘のリリアーナだ」
自己紹介を終えると、教会で聞かされた話(人間族と魔人族の戦争である)をもう一度され、助力を請われた。
予想していた通りに列から天之河が一歩出ると、”お任せください!”と返事をする。
その言葉を聞き、国王はニッコリと微笑むと、騎士団長や宰相等、高い地位にある者の紹介が行われた。
また、衣食住が保障されている旨と訓練における教官達の紹介もなされた。
その後、晩餐会が開かれ皆思い思いに飲み、食べ寛いだ。
楓凜は今後役に立つかもしれないということで、貴族や国王の様子を窺いつつ、この食べ物はどこで採れたものなのか、産地はどう言った気候や風土について聞きまくった。
晩餐会が終わった後、各自に一室ずつ与えられた部屋に案内された。
天蓋付きのベットに少し驚きつつ、今日あったことを思い返し、聞いた情報を整理。整理し終わると楓凜は眠りに就いた。
☆★☆
次の日から訓練や座学が始まった。
朝食を終えてからの訓練なので、開始は9時頃。
訓練を行うのは闘技場(イタリアのコロッセオのようなもの)で行われ、座学は大学の授業に使われるような部屋だ。
訓練は騎士団長のメルド・ロギンスが行い、座学は魔法師団長のイルナ・パルシェが行う。
メルドは豪放磊落な性格で、非常に親しみやすい。楓凜を除くクラスメイトたちはすぐに馴染んだ。
一方、イルナは生真面目な女教師のような人物と言えば分かりやすいだろうか。
何事にも真剣に取り組むべし、と座学の合間に繰り返し言ってくる。また、そうすることで自分だけでなく、仲間を守ることにもつながるとも。
まずは訓練の内容でも見てみよう。
マラソンや筋トレといった基礎を重点的に強化しながら、それぞれの”天職”にあった武器の練習をする。これだけだ。
基礎強化で大体2時間かけ、武器の練習で3時間の合計5時間が一日の訓練時間だ。
(なお、昼食は訓練の合間にそれぞれで食べるような感じである)
なんだ意外と簡単そうじゃないかと思えるかもしれないが、この世界は地球と違って危険がいっぱいだ。しくじれば即、死なんてこともある。それを避けるために人(戦う系の天職の人は)は極限まで自らを鍛え抜くのだ。
ゆえに、徐々に訓練は厳しさを増していく。クラスメイトもブツクサ文句を言いながらも、仕方なしについて行く。
しかし、メルドの人柄もあってか、割と楽しげな雰囲気になっているのは僥倖だろう。
正直、座学の方がツライかもしれない。
座学は訓練終了後の2時間後に開始される。その間にある程度の疲れを取れということなのだろうが、かなりキツイ訓練の疲れなど早々に取れるはずがない。昼寝をしたり、各々に一人付いているメイドにマッサージをしてもらったりと、疲れを取ろうとするのだがそんな程度では疲れが取れないのが厄介だ。
そんな状態で座学を受けるのだが、眠くならない方がおかしいだろう。
しかも授業するのはイルナ。性格ゆえの生真面目なあまり面白いと言えない授業をするため、クラスメイトからは不評だ。だが、これもまたキチンとしておかなければ自分の命に直結する話なので、楓凜ととある理由からハジメも真面目に受けている。
そのとある理由とは、訓練の最初で配られたステータスプレートとそこに表示されたハジメのステータスが原因であった。
☆★☆
闘技場に集まった生徒達に十二センチ×七センチ位の銀色のプレートが配られた。
不思議そうにプレートを見る生徒達にメルドは説明を始める。
「よし、全員に配り終わったな? このプレートは、ステータスプレートと呼ばれている。文字通り、自分の客観的なステータスを数値化して示してくれるものだ。最も信頼のある身分証明書でもある。これがあれば迷子になっても平気だからな、失くすなよ?プレートの一面に魔法陣が刻まれているだろう。そこに、一緒に渡した針で指に傷を作って魔法陣に血を一滴垂らしてくれ。それで所持者が登録される。 “ステータスオープン”と言えば表に自分のステータスが表示されるはずだ。ああ、原理とか聞くなよ? そんなもん知らないからな。神代のアーティファクトの類だ」
アーティファクト。ラノベでは魔道具やら神器
「アーティファクトって言うのはな、現代じゃ再現できない強力な力を持った魔法の道具のことだ。まだ神やその眷属達が地上にいた神代に創られたと言われている。そのステータスプレートもその一つでな、複製するアーティファクトと一緒に、昔からこの世界に普及しているものとしては唯一のアーティファクトだ。普通は、アーティファクトと言えば国宝になるもんなんだが、これは一般市民にも流通している。身分証に便利だからな」
誰かがアーティファクトについて聞く前に、メルドは説明を始める。
理解した生徒達は嫌そうな顔をしながら針を刺し、血をプレートの魔法陣に擦りつける。
すると魔法陣が淡く光り、何も表示されていないプレートに文字が現れた。
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空楓凜 17歳 男 レベル:1
天職:召喚士
筋力:90
体力:90
耐性:90
敏捷:90
魔力:500
魔耐:90
技能:召喚・召還・血の記憶・言語理解
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レベルは1。ゲームの様に魔物を倒した、みたいな何らかの経験をしたわけでもないし当然だろう。
天職は召喚士。ゲームで考えるならば何らかの魔物や武器などを呼びだして攻撃したりする、そんな感じだろうか。それらは魔力を多く使って呼びだすのだろうと推測し、だから筋力といったステータスより圧倒的に大きい魔力についても納得することが出来た。
そして、一番気になっていた技能欄にある血の記憶というものについて思考し始めた。
天職が召喚士ということから、呼び出す、返すという意味の召喚と召還は技能にあるのは理解できる。言語理解の方も異世界転移した時に言葉が通じないと不便だから付与されたというのも分かる。
しかし、血の記憶だけは理解できない。聞いては見たいが、それによって不利な場面になるのは嫌だ。
とりあえず、メルド達のことを信用できるまで黙っておくことにした。
メルドの方を見ると、説明の続きを始めようとするところだった。
「全員見れたか? 説明するぞ? まず、最初に“レベル”があるだろう? それは各ステータスの上昇と共に上がる。上限は100でそれがその人間の限界を示す。つまりレベルは、その人間が到達できる領域の現在値を示していると思ってくれ。レベル100ということは、人間としての潜在能力を全て発揮した極地ということだからな。そんな奴はそうそういない」
「(人間族の上限は100。俺のステータスはほとんどが90で魔力にいたっては5倍の500だ。このステータスなら追放といったことにはならないだろう。まぁ、よかったと考えておくか……)」
そのあとにあったステータス、天職についての説明を簡潔なモノにすると、
〇ステータスはレベルが上がったら必ず上がる訳ではない。鍛練を積めば自分の限界まで伸ばすことが出来る。魔力の値が高いものは他のステータスも高くなる傾向にあるらしい。
〇天職はその名の通り自分に合った職業である。その天職に合った攻撃方法を行うことで威力の上昇などが望める。また、ステータスの伸び幅も大きく異なってくるらしい。
となる。
「後は……各ステータスは見たままだ。大体レベル1の平均は10くらいだな。まぁ、お前達ならその数倍から数十倍は高いだろうがな! 全く羨ましい限りだ! あ、ステータスプレートの内容は報告してくれ。訓練内容の参考にしなきゃならんからな」
事が起こったのはこの後のことだ。
ハジメは何やら青い顔をしてカタカタ震えはじめたのだ。震えと言っても、すぐそばにいる楓凜くらいしか気付かないような小さな震えだが。
他のクラスメイトたちにはそんな様子のやつは誰も居なかったので、気になり訊いてしまった。
「どうしたんだ?」
「い、いやぁ、えっと、その、これ……」
ハジメが見せてきたステータスはこうだ。
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南雲ハジメ 17歳 男 レベル:1
天職:錬成師
筋力:10
体力:10
耐性:10
敏捷:10
魔力:10
魔耐:10
技能:錬成・言語理解
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どうやら、ステータスの値が一般人と同じだったことが原因のようだ。
力が付与され一般人とは隔絶した力を持っているはずなのに、一般人と同じステータス。
それに加えて天職の練成師は所謂鍛冶師みたいなもので、結構な人数がいる、珍しくもないありふれた職業なのだ。
絶対に何か言われるだろう。もしくは追放、なんてことになるかもしれない。
それを想像してしまったのだろう。
ネット小説なんかではありふれたものだし。
オタクであるハジメの方がそんな内容のモノについては詳しいだろうし。
「……これはまずいかもしれない」
「そう……だよね……」
「ハジメ、落ちつけ。利用価値があると分かれば簡単に切り捨てることが出来なくなるだろう。まずは自分の天職についてより深く知ることだな。どこまでが出来ること、どこからが出来ないことを知ることで無茶をせずにすむだろう。それによって命を失う事態は回避できるはずだ」
「うん。後はやっぱり知識だね。おそらくダンジョンや迷宮みたいなものもあるだろうし、地形や気候についてキチンと調べないとね。後は魔物の特徴とかかな」
俺のフォローで多少なりとも落ち着いたのだろう、少し顔色は良くなっていた。
メルドがステータスプレートの確認をするからと生徒達に列を作って並べといい、一人一人確認を始める。
一番最初にステータスを見せたのは天之河だ。
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天之河光輝 17歳 男 レベル:1
天職:勇者
筋力:100
体力:100
耐性:100
敏捷:100
魔力:100
魔耐:100
技能:全属性適性・全属性耐性・物理耐性・複合魔法・剣術・剛力・縮地・先読・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・限界突破・言語理解
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THE・勇者のような感じのステータスである(楓凜も似たようなものというか魔力は大きく突き放しているが)。
最初から人間族の限界値の100である。技能の数もかなり多い。だが、楓凜の【血の記憶】の様な意味が分からないものはない。
「ほお~、流石勇者様だな。レベル1で既に三桁か……技能も普通は二つ三つなんだがな……規格外な奴め! 頼もしい限りだ!」
メルドの称賛を皮切りに天之河を称賛する声が上がり始める。
それに照れる天之河。正直キモい。
男の照れる様を見て喜ぶ男は居るのだろうか普通。
ちなみにメルドのステータスは300前後。流石王国最強に騎士団長。人間族の限界である値の3倍はある。
さすきしである。
その後も他の生徒を見て行くメルド。案の定他の生徒もかなりのものでメルドはホクホク顔だ。
そして遂にハジメの番が来た。
ス、と黙ったままプレートを渡すハジメ。
渡されたプレートを見て固まるメルド。
3秒ほど固まった後、プレートをコツコツ叩いたりしている。安心しろメルド、プレートは壊れていないぞ。
しばらくプレートを見た後、遠慮がちにハジメに告げるメルド。
「ああ、その、何だ。錬成師というのは、まぁ、言ってみれば鍛治職のことだ。鍛冶するときに便利だとか……」
それを聞いて目を輝かせ始めるのはハジメを目の敵にしている檜山達4人衆だ。
楓凜が予想した通りに絡みはじめる。
「おいおい、南雲。もしかしてお前、非戦系か? 鍛治職でどうやって戦うんだよ? メルドさん、その錬成師って珍しいんっすか?」
「……いや、鍛治職の十人に一人は持っている。国お抱えの職人は全員持っているな」
「おいおい、南雲~。お前、そんなんで戦えるわけ?」
周りの生徒もニヤニヤと嗤っている。
キモい。
はぁ、と溜息をつきながら前に出る楓凜。
「で?檜山何がしたいんだ?ハジメを晒し者にして楽しいか?周りのお前らもそれを聞いて楽しいか?楽しいならお前らはクズだ。人間のクズだ」
無表情を心がけていたが顔には怒りが滲んでいたらしい。
うっ、と顔に汗を滲ませる檜山。他の奴もバツが悪そうな表情で顔を背けた。
しかし、先程のステータスの数値を思い出したのだろう。へっ、と鼻で笑って矛先をこちらに向けてきた。
「なんだぁ?もしかしてお前もハジメと同じようなステータスなのかぁ?そうか、だから庇うんだな?雑魚は引っ込んでろよぉ!てめぇが出しゃばるのもいい加減ウゼェんだよ!潰すぞコラァ!」
「言いたいことはそれだけか?なら逆にてめぇを潰す」
勝手に勘違いでイキッて絡んできたものの表情が全く変わらない俺の様子を見て何処かヤバいと感じたのだろう。
檜山は俺にステータスを開示するように迫ってきた。
「……ならステータスを見せても問題ないよなぁ?早く見せろよ!」
「はぁ、失礼だが俺はまだ信用し切れてないから見せるつもりはなかったんだが、こうなっては仕方ない。メルドさん」
そう言いつつプレートを渡す。
「こ、これは……」
メルドの驚いた様子を見て悟ったのだろう。顔色を悪くする檜山。
「技能数は光輝に負けてはいるが、ステータスはほとんど変わらない。それどころか魔力は光輝の5倍だ!」
その声でざわつく皆。
「じゃあ、歯を食いしばれよ檜山。ダチを嘲弄する奴は許さねぇ」
「待ってくれ。檜山もそこまでしようと思ってなかったかもしれないだろう?落ち着いてくれないか楓凜」
間に入ってくるのは正義(笑)を掲げる天之河だ。
「俺は常々言っていたはずだが?ダチを傷つける奴は許さないと。それでも檜山は破った。ケジメはつけねぇとな?」
その言葉に天之河の後ろにいる坂上はウンウンと頷いている。ハジメのことは嫌いでも、檜山の陰湿なやり方は嫌っていたようで、ダチを守ろうとする俺の行動はどこか琴線に触れるものがあったらしい。
その様子を見ていた檜山も覚悟を決めたのだろうか、何やら決意した感じでこちらを見ている。
このまま殴り合いが始まるかと思われたタイミングでメルドが間に入る。
「バカ野郎!ケンカするな!お前らは元の世界にいたころと比べて力を持っているんだぞ!大怪我をしたらどうするんだ!檜山、アレはお前が悪いと俺も思うぞ」
その言葉に舌打ちをして闘技場から去っていき、俺も張りつめていた雰囲気を和らげたことでその場は落ち着いたのだった。
そんなこんなで楓凜とハジメは生きていくために知識を身につけようと踏ん張ることになったのである。
サブタイはしばらく原作と同じような感じになるかもしれません。
進むにつれてサブタイは原作と異なるものになっていきますのでご容赦ください。