『…何が起こった?何故俺は倒れている?』
「次に俺が目を覚ました時、俺は床に倒れ、立っているのは葉川だった。正直何がどうなったのか理解するのに時間が掛かったぜ。
本来なら倒れているハズなのは葉川で、そこに立っているのは俺だったハズなんだからな」
今回もオレ、秦野 亮がモノローグをつとめる。
今、オレの目の前には、かつてクリムゾンエンターテイメントの四天王だった足立がいる。
オレの両親は昔バンドを組んでいて、クリムゾンエンターテイメントと戦っていた。と、聞いていた。
だから足立はそんな両親に復讐に来たのだと思っていたんだがそうじゃないようだ。
親父達はクリムゾンエンターテイメントと戦っていたとは思うんだが、足立の部下でもあったらしい…。
その事でオレ達の前に現れたんだろうか?
そういった謎はあるんだが…。
「なぁ、亮。さっきの足立の話って…」
オレと同じバンドAiles Flammeのボーカリストである江口 渉。
渉も今、オレと一緒に居るんだが、きっと渉もオレと同じ事を考えているに違いない。
「に、にーちゃんってさ…」
やはりだ!
渉の言うにーちゃんとは、15年前にBREEZEというバンドで、今はBlaze Futureというバンドでボーカルをやっている葉川 貴さんの事だ。
「渉、やっぱりお前も気付いたか」
「ああ、にーちゃんと足立のデュエルの最中…」
「「何でかタカさん(にーちゃん)の声で『いいや!限界だ押すね!』って聞こえたよな!?」」
渉もやはりそこが気になっていたか…。
「なぁ、さっきまでは足立が回想で話してたって設定のはずだよな?」
「ああ、あまりメタな発言はしたくはないが、あの時確実にタカさんの声が聞こえた。足立の回想の台詞を掻き消すかのようにな…」
オレはソッとお袋と親父と足立の様子を伺ってみたが、何もおかしいところはないかのように話が進んでいる。
足立の話を聞いておきたい気持ちもあるんだが、さっきのタカさんの声が気になってしょうがない。
だって、バンッ!って爆発音したんだぞ!?
タカさんは自称キラークイーンのスタンド使いだぞ!?
いいや!限界だ押すね!ってキラークイーンの使い手である吉良吉影の台詞じゃん!!
「なぁ、亮。やっぱあの時の話ってマジだったんじゃねぇか?さすがにーちゃんだぜ」
あの時の話?
「さすがタカさんだとは、この事に限らず思うが、あの時の話って何だ?」
「ほら!にーちゃん達にファントムで四天王の話を聞いた時だよ!」
タカさん達に四天王の話を…?
あ、あの時か!!
『僕達は手塚さんしか会った事ないですけど、やっぱり四天王って凄かったんですか?』
ファントムにBREEZEが揃ってるからって、拓実が珍しくそんな事を聞いたんだよな。
『あ?四天王?拓実。テメェはあんな奴らに興味を持つ必要はねぇ。あいつらは凄いアホだった。手塚さんも含めてな。話はこれで終わりだ』
『宮ちゃん…拓実くんも別に興味本位で聞いてる訳じゃないだろうし…』
『そうだよ拓斗さん。ボクは興味本位で聞きたいと思ってるけど、拓実くんは違うんじゃないかな?』
『シフォン…興味本位で聞きたいとハッキリ言うお前はやっぱり可愛いな。今度一緒に何処か遊びに行かないか?』
『亮?にーちゃんが今、席を離れてるからっていきなりシフォンを口説くのはどうかと思うぞ?』
『それで?拓実くんは四天王の奴らのどんな事聞きたいんだ?』
『まぁ、僕も興味本位ではあるんですけど、手塚さんって凄いギタリストだったって話ですし、拓斗さんや英治さんも手塚さんには敬語で接してますし、今は腕の怪我でギターは弾けなくても、バンやりの作曲されてたりとかしてますんで、手塚さんもミュージシャンとして凄かったのかな?って思いまして』
『ああ、なるほどね。手塚さんとは直接デュエルはした事ないけど、凄いギタリストではあったよ。あの性格からは考えられないような静かで繊細な音色だった。雨宮さんや、ユイユイちゃん、弘美ちゃんの演奏スタイルに近いかな』
『九頭龍の野郎は荒々しいが正確な演奏だった。俺や拓実…後は日高や達也と同じタイプだったな』
『二胴のヤツは雑さの中に力強さのある演奏だったなぁ。まどかや松岡くん、栞に近いタイプだな』
『足立ってヤツはどうだったんだ?』
『足立…か。足立と直接デュエルをしたのは、はーちゃんだけだけど…』
『ああ、あの野郎は天才的なボーカルだった。いや、歌だけじゃねぇ。あの野郎はギターもベースもキーボードもドラムも…音楽の全てに順応した天才だった』
『手塚さんや二胴や九頭龍も天才的な腕前だったが、足立は別格だったな。あいつらも性格と根性が腐ってなかったら今頃は名前の残るミュージシャンだったかもな』
『へー、四天王ってやっぱり凄かったんだ?そんな足立をやっつけたたか兄もやっぱり凄かったんだなぁ~。昔は』
『ただいま。何の話しとるん?』
『にーちゃんお帰り!う○ちいっぱい出たか!?』
『おう。モリモリ出たぞ。渉にも見せてやりたかったくらいだ』
『あはははは、別に見たくねぇー』
『今、拓実くんに聞かれてね。四天王の事をちょっと』
『四天王?何の?デビルガンダム?銀魂?』
『何のって…クリムゾンエンターテイメントの四天王の事スよ。すげぇヤツラだったってトシキさん達に聞いてた所です』
『あー、あいつらか。知ってる知ってる。四天王な。あのクリムゾンエンターテイメントのな。はいはいはい』
『テメェ、まさか俺ん時みてぇに忘れたとかネタを言うつもりじゃねぇだろうな?そんなネタは聞きあきてんぜ?』
『アホか。お前の事は忘れても四天王を忘れる訳ねぇだろ。ただ思い出したくもねぇだけだ。手塚も含めてな』
『俺の事は忘れても…って。テメェ、俺を泣かせるつもりか?』
『タカさん、足立って人もやっぱり凄かったんですか?』
『拓実くんも思い出したくもねぇって言ってんのにぶっ込んでくるのな。足立なんか一番思い出したくないし。…まぁ、四天王のヤツラも足立もミュージシャンとしては凄かったよ。クソ野郎ばっかだけどな』
『そんな足立をやっつけたなんてたか兄も凄いよね。昔は』
『シフォン、何で昔はとか言うの?まぁ、あの頃の俺はスーパー凄かったからな。足立相手ですら余裕だったね』
『さすがにーちゃんだな!』
『当たり前だろ?あんなヤツ俺のキラークイーンで一瞬でボンッだぜ』
『え?キラークイーン…?』
『はーちゃん…話してあげるならちゃんと話してあげればいいのに…』
そういやあの時そんな話をしていたな。
タカさんの冗談だと思ってたのに…。
いや、さすがに無いよな…。
「あの時はにーちゃんの冗談だと思ってたのに…」
いや、渉。オレもタカさんのあの時の話は冗談だと思っている。思っていたい!
そもそもこの話って音楽の話だぜ?それが戦いとかそんな話になって少年漫画なら胸熱展開だとは思うがオレ的にはいっぱいいっぱいだからな?
そこにスタンドとか出て来たらもう…。
いや、今はもう考えるな。今度タカさんに聞こう。
今は足立の話に集中した方が精神的に良い気がする。
「俺は俺のレガリアがデュエルに耐えきれず爆発したのだと理解した。ククク、葉川とのデュエルでは負けたとは思っちゃいねぇが、俺はレガリアを破壊されてしまい、葉川はとうとうレガリアを使う事もなく、Futureを歌う事もなく、その場に立っていた」
デュエルに耐えきれずレガリアが爆発…?
良かった。やっぱりタカさんがキラークイーンを使った訳じゃなかったんだな…安心したぜ。
「葉川との闘いには負けた。と思ったよ。
後にも先にも俺が負けたと思ったのは初めてだったぜ。葉川の野郎は俺に勝ったと思っているかは疑問だがな」
『まぁでも…俺は足立を倒すには倒したんだけどな。勝ったとは思ってねぇよ』
そういやあの時…タカさんはそんな事を言っていた…。
足立を倒したとか聞いていたから、あんまり深くは考えなかったが、タカさんも『勝ったとは思っていない』と言っていた…。
「レガリアを破壊され顔面に深傷を負った俺、喉が壊れこれ以上満足に歌う事も出来ない葉川…。これ以上続けてもお互いに相手の心を折る事は出来ねぇ。だからクリムゾンエンターテイメントの四天王として俺は負けを認めた」
『は…川…お前の…勝ちだな。ククク、ま…か…、レガリアを破壊され…とは…』
『ハァ…ハァ…あ…だ』
『……ふぅ。お前の勝ちだ葉川。クリムゾンエンターテイメントの四天王として俺の負けだ。負けは負け。お前の望み通り俺はこの舞台から降りてやる。Artemisにも手を出さねぇ。ククク、これからが面白くなってくるぜ』
『あ?てめ…何言って…ざけんな。俺はまだ歌え…ゲホッ』
『はーちゃん!((タカ!))』
「俺が負けを認めた時、やっと佐藤や宮野、中原が来やがった。もう少し早く来ていれば、本当に俺もヤバかったかも知れねぇがな。全ては終わった後だ」
『テメェ!足立…!』
『拓斗!足立よりまずタカだ。あいつ血ぃ吐いて…ん?え?何で足立も顔面が血塗れなんだ?何なのこれ。俺達がやってんのは音楽じゃないの?』
『はーちゃん、大丈夫?』
『ハァ…ハァ…お前ら…何で…?』
『梓に聞いた。タカ、俺の肩に掴まれ』
『BREEZEが揃ったか。だが少し遅かったな』
『遅かっただぁ?お前も血塗れじゃねぇか。今なら俺らでデュエルすりゃよ』
『行け。少し遅かったと言っただろう。この闘いは葉川の勝ちだ。さっき葉川にも言ったが、俺はこの舞台から降りてやる。クリムゾンエンターテイメントを抜けてやるよ』
『何だって?クリムゾンエンターテイメントを抜ける?はーちゃんの勝ち…?』
『俺のレガリアは破壊されちまったしな。
ククク、しかし楽しかったぜ。
レガリア戦争でONLY BLOOD2代目の大神を倒し、大神のONLY BLOODを受け継いだ3代目の波瀬を倒した。そして大神からレガリアと想いを受け継いだ葉川は今、潰した。もう葉川は以前のように歌う事は出来ねぇだろう』
『足立!!テメェ!!』
『落ち着け拓斗。あんま熱くなんな』
『そうだよ。行っていいって言ってくれてるんだし、早くはーちゃんを病院に…』
『次世代だ』
『何?次世代?』
『…射手座のレガリアを葉川が次世代に受け継がす時、次に俺が現れるのはその時だ』
『足立…それって…』
『このまま帰ってもクリムゾンエンターテイメントからArtemisを守れるか?アルテミスの矢ももう有象無象がクリムゾンエンターテイメントとの戦いを広げるやつらばかり。葉川が潰れた今、お前らはもう終わりだ』
『ざけんな!俺達はまだ終わってねぇ!Artemisもまもりきってみせる!あいつらがメジャーデビューするまでな!』
『ククク、メジャーデビューか。宮野、お前は何もわかっちゃいねぇ』
『何だと!?』
『足立。宮ちゃんもちゃんとわかってる。何もわかってないのはお前の方だよ』
『そうだな。タカには俺もトシキも拓斗も居る。Artemisもな。
だがな足立。お前はずっと一人で孤独だ。だから拓斗の事もわかんねぇんだよ』
『ククク、孤独か。それがどうした?俺の蠍座のレガリアの力は"蠱毒"。俺にはぴったりな言葉だぜ。それにこの場に葉川を一人で来させたお前達がそれを言うのか?』
『そうだね。後ではーちゃんは叱っておかなくちゃ』
『所詮人は最終的には一人だ。信じられるのは自分だけだ。誰も例外はねぇ』
『大神さんやタカ、波瀬もそうだったか?』
『お前のレガリアの蠱毒はそうやって人の心を蝕んで行くんだな。テメェ自身の心もよ。テメェも昔は一人じゃなかったくせに』
『浅井に俺の過去を聞いたか?いや、氷川か?だが、今となってはどうでもいい事だ』
『行こう。宮ちゃん、えーちゃん。
はーちゃんを早く連れて帰らなきゃ』
『あ、ああ。そうだな。拓斗、タカのヤツさっきから全然喋らねぇけど大丈夫か?』
『……大丈夫じゃねえな。気を失ってやがる。急ぐぜ』
『足立。はーちゃんは確かにもう今までみたいに歌う事は出来ないかも知れない。だけどはーちゃんには俺達がついてる。そしてはーちゃんは守るよ。Artemisも次世代のレガリア後継者も。その時もお前ははーちゃんには勝てないよ』
「そう言って佐藤達は葉川を連れて帰って行った。
フッ、昔話が少し長くなってしまったな」
「足立さん。だから戻ってきたという事ですか?タカがレガリアを誰かに託すと…?」
「にーちゃんのレガリアを!?お、俺かな?なぁ?この物語の主人公って俺だもんな?」
「渉、黙って話を聞いておこうぜ。そして主人公はお前じゃない。シフォンだ」
「ククク、残念だったな江口 渉。
主人公がどうとか知ったこっちゃねぇが、葉川はレガリアをお前に託す事はねぇよ。ファントムの誰にもな」
ファントムの誰にも…?
待てよ。だったら何で足立はここに?
タカさんがレガリアってのを誰かに託すと思って、オレ達の目の前に現れたんじゃないのか?
「そうですね。タカがファントムのバンドの誰かにレガリアを託すとは考えられないです」
「うわぁぁぁぁん!お袋さぁぁぁん!にーちゃんの…にーちゃんの後継者になりたかったぁぁぁ!」
「よしよし。渉ちゃん、今はいっぱい泣きな」
渉。人のお袋の胸に顔を埋めて泣くのは…その…な?
「ククク、俺はこの街に戻って来たんじゃねぇ。呼ばれたんだ」
「呼ばれた…?海原に…ですか?いや、二胴…?」
「わからねぇか?俺を呼んだのは他の誰でもねぇ。Ailes Flammeだぜ?Ailes Flammeが俺をこの街に呼び戻したんだ」
Ailes Flamme!?オレ達が?足立を?
「亮達のAiles Flammeが?どういう事です?」
「江口 渉。お前の歌う元々の根元はBLASTの東雲 大和に勝つ為。つまり東雲 大和に野球で負けた事による復讐心や嫉妬。今でも思っているんだろう?野球で負けたから、歌で勝ちたいと」
こいつ!?BLASTの東雲 大和との事はともかく野球の事まで!?
「俺が…?嫉妬や復讐心で東雲 大和に…?」
「そして浅井 亮。いや、今は秦野 亮か。
お前は両親を潰したクリムゾンに復讐したい。クリムゾンを倒したいという憎しみでギターをやっているな」
…!?
確かに…そういった気持ちも多少はある。
だけど今はAiles Flammeで天下一のバンドになりたいから、その為に俺はバンドをやっているんだ。
「次にベースの内山 拓実。あいつはお前らと離れたくないという寂しさから。孤独を恐れ不安に思いながらベースをやっているだけ。
ドラムのシフォン。井上 遊太は自分の自信の無さから自分を認めてもらいたいという承認欲求と幼馴染であり同じドラム仲間だった小松 栞のFABULOUS PERFUMEとしてデビューした事による嫉妬。そういった気持ちがお前らAiles Flammeの根元だ。ククク、とことんお前らは昔の葉川達BREEZEに似ているぜ」
シフォン…。いや、そうなのか?
確かに最近は井上としても可愛いが…じゃない。井上としてもオレ達と話したり遊んだりしているが、他のクラスメイトと話したりしてる所は今もあまり見ない。
自分に自信が無いから…?
「そんなお前らは俺に近い。お前らも結局は歌や演奏で自己の欲求を補ったり、誰かに対して復讐しようとしているだけに過ぎねぇ」
「そんな事はねぇ!足立さん!渉ちゃんも亮も!拓実ちゃんもシフォンちゃんも音楽を楽しんでやっているんだ。あんたとは違う!!」
親父…。
「本当にそうか?お前も元はこっち側の人間だったからわかっているはずだ。葉川もそうだった」
タカさんもだと?
バカな。あの人は音楽を楽しくやってる権化みたいな人じゃねぇか。オレ達はタカさんからも音楽は楽しいものだと色々教わったんだぞ。
「あいつの歌は破壊的だった。世の中への不満、理不尽に対する叛逆。そういった破滅的な歌い手だった。
ククク、だから俺も最初はあいつを俺の後継者にしようとしていた」
タカさんを足立の後継者に?
「あいつはバカだったから俺を拒み、そして終わってしまった。江口 渉。お前はそんなバカじゃないだろう?」
そう言って足立はどこからか気味の悪い形をしたマイクを取り出しテーブルの上に置いた。
「足立さん!?まさかそれは…!?」
「そう。蠍座の宝玉。レガリアを組み込んだマイクだ。葉川に破壊されてから時間は掛かったが、今は完璧に修復している。受け取れ江口 渉。そして音楽の世界ってヤツを壊し、BLASTの東雲 大和に勝ってみせろ!
お前なら蠍座の宝玉を使いこなす素質がある!!」
蠍座の宝玉…レガリアを渉にだと?
そ、そんなもの渉が受け取る訳がねぇ!!
タカさんからレガリアを託されるならともかく、そんな音楽の世界を破壊する為の力なんて…!
「江口 渉。こいつがお前の歌の人生の中でのラッキーチャンスだ。2度はねぇ。こいつを受け取れ。享受しろ。そうしたら俺の全てをお前らに叩き込んでやる」
「俺に…レガリアを?」
渉!受け取るんじゃねぇぞ!?
「迷う必要はねぇ。お前は元々こっち側の人間だ。
それにクリムゾンエンターテイメントも今はレガリアを探しているらしいぜ?interludeの白石もレガリアを手に入れるかも知れねぇ。そうなったらBLASTどころかinterludeにも勝てなくなるぞ?」
クリムゾンエンターテイメントがレガリアを探している?
何でクリムゾンエンターテイメントが?タカさんや英治さんに伝えた方が良さそうだな…。
「そっかそっか。虎次郎のヤツもレガリアをな。
だったらレガリアを手に入れた虎次郎を倒したら俺の天下一への道も希望が見えてくるかもな!」
「なんだと?」
渉?
「今の俺じゃどう足掻いてもBLASTどころかinterludeにも勝てねぇ。でもそのレガリアを受け取ってまで勝ちたいと思わないし、その力で勝ててもなぁ?」
「お前もバカなのか?レガリアを受け取ればヤツラに勝つ近道にはなるぜ?」
「ハハハ、確かにそうかも知れねぇな。
でもよ。それの何が悪いんだ?
さっきお前に言われて俺も思ったぜ。確かに俺はBLASTをぶっ倒したいって気持ちもあるし、東雲 大和に音楽では勝ちたいと思ってる」
渉、お前…。
「亮にしたってよ?親父さんやお袋さんのバンドの仇を打ちたいと思って何が悪いんだ?クリムゾンにやられちゃった訳だし、俺達の音楽でクリムゾンをやっつけたいって思うのは普通の事だろ?拓実やシフォンの事にしたってよ。何もおかしくねぇし、だから俺達はAiles Flammeなんだ」
「渉。そう…だな。だからオレ達はAiles Flammeなんだよな」
「足立さん。そういう事らしいです」
「渉ちゃん、よく言ったよ」
「クク、クククク、やっぱりお前は葉川と似ているな。あの時の野郎も似たような事を言っていたぜ」
「ハハハ、俺にもにーちゃんにもフラれて残念だったな!」
「Ailes Flamme。俺が情けをかけてやるのはこれが最期だ。次はねぇ。
BREEZEもArtemisも何も残せなかった。何も残せず泡のように消えていった。お前らが生き残り、俺の前に立ち塞がる日が来るのを楽しみにしててやるぜ」
そう言って足立は立ち上がり、天井を見上げたと思ったら次は手を上げて天井を指で指した。
オレ達はその足立の手の動きにつられるように天井を見上げた次の瞬間。
-ガタン
何かが倒れるような音。
オレ達が再び足立の方へと目をやると、足立が座っていただろう椅子が倒れているだけだった。
そこに足立は居なかった。最初から誰も居なかったかのように。
『楽しみにしているぜ。だが、これだけは覚えておくといい。何もお前らの敵は過去だけじゃないぜ?そして黒だけでもないって事だ。現代からも未来からもお前らは見られているんだぜ』
どこからか…。
風に乗って足立の声が聞こえてきた。
さっきまで足立がここに居たのは、さっきまでの足立の話は、現実にあった事なんだろうか?
オレは夢を見ていたかのような錯覚を感じていた。
「Ailes Flammeも厄介なヤツに目をつけられたわね」
お袋?
「そうだな。タカや英治と話をしたいな。俺もやっと動く時が来たみたいだ」
親父?動く…?
動くってどういう事だ?今更…?
待てよ。
オレは今日の事、今までの事を思い返しているとある違和感を覚えた。
親父とお袋のバンドは、『クリムゾンのバンドに倒されて解散し、浅井の名から秦野に変えた』そう聞いていたし、それは不思議な事でもなかった。
だけど親父達は姿を変えた。名前も。
クリムゾンから逃げる為なら何故その必要がある?
クリムゾンに潰されたのなら、バンドを辞めて今のように定食屋をやっているだけで良かったはずだ。
本当は姿も名前を変えてまでやるべき事があったんじゃないか?
それがわかったのは、それから数ヶ月も先になるとはその時は思っていなかった。