バンやろ外伝 -another gig-   作:高瀬あきと

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第32話 星

「クッ、クックックック、Starglantz。

そうか、てめぇらの仕業か」

 

あたしの父である手塚 智史はフードを被ったまわりの人達に向かってそう言った。

 

あたしの名前は桐谷 亜美。

前回に続いて今回もあたしのモノローグのようだ。

 

「俺の意思を継ぐ者とか言ってたか?

わかんねぇな。俺はてめぇらの事なんか知らねぇし、俺には後世に継いでいかせるような意思もクソもねぇ。

てめぇら何者なんだ?そろそろ答えを聞かせろよ」

 

「そうですね。オレ達は15年待ちました。

言葉にすればたったの数文字。ですが、オレ達にとってはとてつもなく長い年月でしたよ」

 

「さっき言ったろ?まだるっこしい話は嫌いだとな」

 

「……オレ達はかつてのクリムゾンエンターテイメント四天王である手塚さん。

あなたに憧れ、尊敬する者達で集まった組織です。あなたにSCARLETを抜けてオレ達のトップになって頂きたい!

それがオレ達の理念であり目的です」

 

お父さんに憧れて…尊敬…?

お父さんに組織のトップになって欲しい…?

 

こいつらもしかしなくてもアホの集まりなの?

 

「俺をトップにした組織…か。

フン、いい心掛けだぜ。どっかのBREEZEのボーカルやArtemisのドラマーに見習わせたいくらいだな」

 

「オレ達はあなたをトップに輝かしい星になりたいと思っています。

いえ、あなたがオレ達の星なんです!」

 

「ますます殊勝な心掛けだぜ。

だが俺の問いの答えにはなってねぇな」

 

「フッ、フフ、フフフフ…答え…か、フフ」

 

「あ?てめぇ何笑ってやがる?この場でヤッちまうぞコラ」

 

「失礼…あまりにおかしかったもので。

いいでしょう。お互い変な探り合いは止めましょうか。

安心して下さい。あなたを監視していたのはSCARLETやファントムの者ではありません。

あなたの名付けたバンド名を他の連中に取られたくなかった。そういった者が勝手にやらかした事ですよ」

 

お父さんを監視?

SCARLETやファントムに裏切り者がいる訳じゃない?

…そっか。その監視してたって奴がStarglantzの名前を…。

 

「そうか。いや、そうとは思っていたがよ。

安心したぜ。ファントムのヤツラの中にそんなバカはいない。最低最悪の結果はなくなった訳だな。

ま、俺のバンド名を取った取られただで裏切り者って呼ぶつもりもなかったけどよ」

 

「ええ。元々はあなたをクリムゾンエンターテイメントから守る為にオレ達の下の者にSCARLETに潜入させていたんですが、どうもそいつらがあなたがBlaze Futureの佐倉 奈緒のプロデュースをする事ににヤキモチを妬いたようで」

 

じゃあ本当にファントムは関係ないんだ…。

良かった。いや、あたしもそう信じてたけどね?

 

「なるほどな。やっと合点がいったぜ。

ならどうでもいいな。Starglantzの名前もてめぇらにくれてやる。そんで俺様はてめぇらごときに守ってもらう程弱くもねぇ。てめぇらも俺を監視させてたって奴も俺の前から消えろ。俺は四天王の手塚でもミュージシャンの手塚でもねぇ。SCARLETで雇われてるしがないサラリーマンの手塚様だ」

 

お父さん…。

お父さんはSCARLETの手塚か。

なんかお父さんの口からこういう事聞くの初めてな気がする。

 

「それも安心して下さい。

オレ達があなたの前に現れた。その時点であなたの監視は終わらせています」

 

「あ?俺の前に現れただ?てめぇらがつけて来てんのを暴いたのは俺だろうがよ」

 

「本当にそう思っていますか?」

 

「チッ…てめぇらは俺にわざと見つかり、そして今になって現れた。この15年間隠れてやがったのにな。

どうでもいいんだけどよ。何故今なのかってのだけがわからねぇ。……どうせそれも今から話すつもりなんだろ?」

 

「手塚さん!オレ達の組織に来て下さい!

あなたをトップにオレ達の組織に迎えます!給料もSCARLETの倍は出しますよ!」

 

「ハッハッハ、一瞬悩んじまいそうになったぜ、給料も今の倍か。日奈子の野郎、俺には安賃金だからな」

 

お父さん…安賃金だったの…?

 

「だがさっきも言ったが俺はSCARLETの手塚だ。

他の組織に属する事はねぇ。てめぇも本音で話せよ。

てめぇは、てめぇらの組織の上の奴らのスピーカーか?てめぇの本音はそれだけじゃねぇだろう?」

 

「さすが手塚さんだ。何でもお見通しですね。

ですが、さっき言った事はオレの本音ですよ。隠してる事はありますがね」

 

隠してる事?

 

「フフン、正直な野郎だな。気に入ったぜ。

その隠してるって事は何だ?どうせそれも話すつもりなんだろ?」

 

「あなたはオレにとっても最高の星だ。

あなたにとってはオレなんかゴミ屑以下でしょうが、オレが輝く為にはあなたは絶対に必要な星だ。

あなたには是非オレ達のトップに立って欲しい!」

 

「それで?」

 

「…オレ達の組織は、あなたを切り捨てたクリムゾンエンターテイメント、あなたを潰した足立 秀貴に制裁を。

あなたの仇を討つ。その為に結成されました」

 

「復讐か。フン、くだらねぇな」

 

「だが、元々はそれだけじゃあない!

あなたが潰れる切っ掛けになったBREEZEとArtemis!

あいつらもオレは恨んでいるんですよ」

 

!?

タカさん達のBREEZEや日奈子さん達のArtemisも!?

 

「なるほどな。BREEZEやArtemisも恨んでるってか。

いいぜ、おもしれぇ。あいつらがてめぇらの敵だってんなら俺もてめぇらの敵だぜ!

今ここでてめぇら全員潰してやる!かかってこい!

俺がてめぇらの心をへし折ってやるぜ!!」

 

 

-ゾクッ

 

 

あたしの背中に冷たいものが走ったような気がした。

いつもはバカで弄られ役のお父さん。

そんなお父さんしか見たことなんかなかった。

 

敵意?殺意?

あんな怖い顔をしているところを初めて見た。

そういえばお母さんが昔に言っていた事がある。

クリムゾンエンターテイメントに居た頃のお父さんは、まわりの全てが気に入らないかのように怒ってばかりいたと。そんな人と何で結婚しちゃったんだろう?とも。

 

でもそんなお父さんがタカさんとBREEZEの皆さんと出逢って、ものすごく変わっていったと。

 

これがBREEZEに出逢う前のクリムゾンエンターテイメントのお父さんの顔?

 

「落ち着いて下さい手塚さん。

隠しているという事がその事です」

 

「あ?訳わかんねぇんだよ。本当にヤッちまうぞテメェ!」

 

「オレはBREEZEもArtemisも恨んでいます。

オレ以外にも隠れて恨んでいるヤツもいるでしょうが、オレ達はBREEZEにもArtemisにも、もちろんファントムのバンドには手を出したりしませんよ」

 

「手を出さないだぁ?」

 

「もちろんです。それはあなたに反目する事になりますしね」

 

BREEZEやArtemisを恨んでいるけど手を出さない?

手を出さないっていうのはありがたいけど、何故わざわざそんな事を言うの?

 

「フン、BREEZEやArtemisを恨んでいるが手を出さねぇ。俺を尊敬しているからStarglantzの名を語る。

好きにしやがれ。そしてクリムゾンエンターテイメントや足立を潰してくれるならありがてぇ事だぜ。勝手にやってろ。BREEZEにもArtemisの奴らにも手を出さねぇんならてめぇらの事なんざ知った事じゃねぇよ」

 

そう…だよね。

あたし達のバンド名はSoledeaに決まったんだし、Starglantzとか今となってはどうでもいいだろうし。

BREEZEにもArtemisにも手を出さないで、クリムゾンエンターテイメントや足立って人を倒してくれるなら、あたし達には願ったり叶ったりじゃん。

 

「ええ、勝手にやらせてもらいます。

その前にあなたに挨拶だけでもしておこうと思っただけですよ」

 

「てめぇさっき探りあいは止めようって言ってたよな?

Starglantzの名前、クリムゾンエンターテイメントと足立を潰す。今も足立がバカやってるのか何処にいるかは俺様も知らねぇんだが…。

わざわざそれだけを言うつもりだったのか?てめぇらの組織のトップは誰だ?俺を組織に勧誘しても俺がなびかねぇ事くらいは俺を知ってる奴ならわかってただろ?いい加減イライラも爆発しそうだぜ。てめぇらが俺の前に現れた本当の理由をそろそろ話せよ!」

 

「何を勘ぐってらっしゃるのかわかりませんね。

本当にただそれだけですよ。

オレ達は今後Starglantzと名乗らせて頂きます。

そして手塚さんにこの組織のトップに立って欲しい。

あなたに報いる為にBREEZEやArtemisには手を出しません。あなたが苦労されないようにクリムゾンエンターテイメントと足立はオレ達で潰します。

本当にただそれだけの事なんですよ」

 

「…」

 

「…」

 

あの男がそう言った後、お父さんは何も言う事もなくジッとStarglantzと名乗る面々を見ていた。

また、お父さんもStarglantzを名乗る面々に見られていた。

 

ほんの短い時間のようで、とてつもなく長い時間だと錯覚するような時間。

 

そして、お父さんのまわりを囲んでいたフードを被った一味のうち1人が、さっきまでお父さんと話していた男に駆け寄ってきた。

 

「手塚さん、少し失礼します。

おい、手塚さんの御前だぞ?どうした?」

 

そのフード男がお父さんとさっきまで喋っていた男に耳打ちして何か言っているようだ。

 

「……何だと!?…そうか、わかった。……よし、お前は下がれ。警戒を怠るな」

 

な、何か大変な事でも起きたんですかね?

 

「手塚さん、すみません。

オレ達には少々野暮用が出来てしまいました。

ここらで失礼させて頂きます」

 

「あ?野暮用だ?」

 

「心配しないで下さい。また近々会いに来ますよ」

 

男がそう言った後、お父さんを囲んでいた人達が、1人、また1人と音もなく消えていった。

まるで最初からその場に誰も居なかったのように。

 

「待ててめえ!まだ逃がさねぇぞ!

てめえらのトップってのは誰だ!?クリムゾンと足立を潰した後はどうするつもりだ!?

野暮用ってのは何だ!?俺に納得させてから消えやがれ!」

 

「質問が多いですね。

足立がこの街に現れてAiles Flammeと接触したようです。探しても影すらも見つけられなかった足立が、やっと姿を表したチャンスです。この機を逃す訳にはいきません」

 

足立?お父さんと同じクリムゾンエンターテイメントの四天王の?

Ailes Flammeと接触…?

 

「足立がAiles Flammeと接触だと!?」

 

「安心して下さい。Ailes Flammeは無事ですよ。

そして、オレ達のトップはかつて貴方の部下の幹部だった者です。オレなんかが名前を言う訳にはいきませんがね」

 

「俺の…?誰だ?全く見当がつかねぇ。あいつらは全員BREEZEにもArtemisにも共感していた…。あいつらの中からてめえらみたいな組織を作るようなヤツは…」

 

「フフフ、BREEZEとArtemisに共感をしていても、貴方という星が必要だったんじゃないですか?ここにいるオレ達のように」

 

「星…か。そういやてめぇら俺の事を星とか言ってたな?

てめぇら理科は知ってるか?星ってのはよ。単体じゃ光れねぇんだよ。星はな、太陽の光があって輝けるんだ。てめぇらの中にも俺のまわりにも太陽はねぇだろう。太陽はたったひとつだからな」

 

「…何が言いたいんですか?

太陽?まさか、葉川 貴が夜の太陽と呼ばれていたから…と言いたいのですか?」

 

太陽。夜の太陽か。タカさんが夜の太陽と呼ばれていたから…待って。タカさんって何で夜の太陽って呼ばれてたんだろう?有希ちゃんに聞いた話だと、タカさんが持っていたのは射手座の宝玉。

 

射手座の宝玉のチカラは"輝星"。

輝く星のように人を音で導くチカラだと。

だったらタカさんも星のタカとか何か…。

太陽も星といえば星だけど…。

 

「そうだ…。タカはよ。

心の迷子になったり悩んだりしてる奴らをな。導くなんてもんじゃねぇ。照らしてくれんだよ。

クリムゾンエンターテイメントって日陰で居た俺達なんかもな。底抜けに明るいバカさでな。ただ照らしてくれんだよ。それがタカって男だ」

 

「何が…言いたいんですか?」

 

「てめえらも復讐だなんだつまんねぇ日陰に居ないでよ!太陽が出てる日向に出て来てみろってんだ!!」

 

「日陰に居た貴方を葉川 貴が太陽のように照らしてくれたから、だから貴方は星のように輝けたと?」

 

タカさんは導いてくれるじゃなくて、照らしてくれてた?だから星じゃなくて太陽…?

 

「いや、そういう訳じゃねぇんだけどな。

俺が輝いてた全盛期はあいつらに会う前だし」

 

違うのかよ!だったら何なのよ!

 

「俺は俺の道を歩いただけだ。タカはそこを照らしてくれてただけ。ただのきっかけだ。

あいつはアホみたいに、ただ照らしてるだけ。本当に太陽みてねぇにな。

太陽っては熱いからな。遠くから見てたら綺麗だが、近付いたりしたら熱さで大火傷だ。そうして近付いちまったら、大火傷しちまってな。俺達は変われたんだ。

あいつはそんな事も知ったこっちゃなくただ高い空で自分勝手に自由に照らしてるだけなんだけどな。そんなもんだ。

チ、思い出したら腹が立ってきたぜ。俺があいつを見込んで近付いてやっても、俺に逆らうわケンカ吹っ掛けてきやがるわバカにしてきやがるわってな」

 

え?何なのそれ?タカさんの事褒めてんの?ディスってんの?

 

「道を見つけるのはよ。俺ら自身なんだ。

タカは俺らが道を見つけやすいように照らしてくれてだんだ。

だから…大神もタカにレガリアを託したんだろうぜ」

 

道を見つけるのはあたし達自身…か…。

そっか、そうだよね。だから有希ちゃんもバンドを組み立ての時は、助けて欲しくてあたしとバンドを組んだんじゃないって言ってくれてたんだね。

 

「その話…覚えておきますよ。

なんせあの手塚さんがオレらなんかにしてくれた話だ

ですが手塚さん!今のオレらには時間がねぇ!足立をここで逃がす訳にはいかないんでね」

 

「てめえ!やっぱり何もわかってねぇじゃねぇか!

俺が言いたい事はな…!」

 

「…そうですね。最後にこれを答えさせて頂きましょう。クリムゾンと足立を倒した後。

それからオレ達がどう動くのか、どうするのかは正直下っ端のオレにはわかりません。ですが…」

 

「ですが…なんだ?」

 

「あなたがオレ達の元に来てくれないのであれば、オレ達の敵はあなたという光をくすぶらせる大きな光…って事になるんでしょうね」

 

ちょっと待って、その大きな光ってのはもしかして…。

 

「…!!

待ててめえら!やっぱりここでぶっ倒してやる!」

 

「フフフ、あなたとお話が出来て光栄でしたよ。

もっとあなたとお話していたかったですが、時間がありません。ここいらで…」

 

-スゥ

 

「くそっ!消えやがった!

本当に人間かあの野郎!!?」

 

お父さんを囲んでいた人達は1人残らず音もなく消えた。

そして、お父さんはその場に立ちすくんだまま…

 

「って訳だ亜美。つまんねぇ事を聞いちまったもんだぜ。ま、この事は日奈子にも言う必要はねぇわ。俺は忘れるからお前も忘れろ。忘れらんねぇなら誰にも喋んな」

 

あたしの方を振り向く事もなくそう言った。

あたしが尾行してたのバレてたんだ…。

 

お父さんはあたしの方へと歩いて来て何も言わずに、あたしの横を通り過ぎて行った。

何で何も言ってくれないの?あたしが何も言わないから?

 

「お、お父さん!あのね!」

 

「帰るぞ。もうこんな時間じゃケーキ屋は開いてねぇだろうしな。コンビニスイーツにすっか」

 

お父さん…ケーキ食べたいってのは一応本気だったんだ?

 

 

 

 

コンビニに適当にスイーツやらお菓子を買った後、結局あたしは何をどう言ったらいいのかわからず、ただ黙ってお父さんの隣を歩いていた。

 

お父さんも何を思っているのかわからないけど、あたしに何も言う事はなく、黙って歩いているだけだった。

 

家に帰ったらお母さんもいるし、クリムゾンの話は出ないかも知れない。だから本当は今この時間しかお父さんにさっきの事を聞く時間はないんだけど…。

 

 

うぅ…何をどう言ったらいいのか…。

有希ちゃんならストレートに聞けるんだろうけど…。

 

「15年前…お前も知っているとは思うがクリムゾンエンターテイメントには四天王と呼ばれる男達がいた。

俺もその四天王の1人だった」

 

お父さん…?

急にお父さんがそんな事を言ってきたものだからビックリした。

お父さんがクリムゾンエンターテイメントの四天王って呼ばれていたのはもちろん知っているけど…。

 

「俺達クリムゾンエンターテイメントのミュージシャンも他のクリムゾングループの会社と同じように、自由な音楽をやるミュージシャン、クリムゾンミュージックの考えに否定的なミュージシャンを潰してまわっていた」

 

うん、その話も知っている。

そんな時にお父さんはBREEZEやArtemis、アルテミスの矢のバンドマンと出会って変わったんだって事も。

 

「クリムゾンエンターテイメントの最高のボーカリストだった足立、最強のギタリストだった俺、至高のベーシストだった九頭竜、稀代のドラマーだったニ胴。

俺達はクリムゾンエンターテイメントの四天王として、各々に部隊を指揮していた。自由なミュージシャンを潰すって事とは別の役割の為ってのもあったが…」

 

別の役割…?

クリムゾンエンターテイメントも、他のクリムゾングループと同じように自由な音楽を望むバンドを潰していってただけじゃなかったの?

 

「そ、その役割って何だったの?」

 

「まぁ大した事はねぇ。その事についてはその内話してやる」

 

大した事はないって…。

だったら言わないでよね。余計に気になっちゃうじゃん。

 

「俺はクリムゾングループのミュージシャンにやられちまった連中を集め、自由な音楽はやれなくても、音楽はやっていけるようにとクリムゾンエンターテイメントに取り入れ、そいつらを鍛えてやっていた」

 

うん、それは日奈子さんや有希ちゃん、お母さんから聞いていたから知っている。

お父さんはどんな形であれ、音楽をやれなくなったミュージシャンを救済していたって…。

 

「俺の部隊のヤツラはそんな奴ばっかりだったからな。元々クリムゾンエンターテイメントに忠誠心があった訳じゃねぇし、恨みや復讐したい気持ちも多少はあったのかも知れねぇ。だが、俺が足立にやられてクリムゾンエンターテイメントを抜けた時、ヤツラも全員クリムゾンエンターテイメントを抜けて各々の道に行ったからな」

 

そうだったんだ?

何かそれってお父さんはお父さんの部隊の人達に慕われてたって事だよね。何か少し嬉しいかな。

 

「そんなヤツラの中からStarglantzみたいな組織を作ろうなんて奴が現れる訳がねぇ。しかも俺の部隊の幹部だった奴だと?一体誰なんだマジで」

 

お父さんは怒り口調ではあったけど、どこか寂しそうな目をしていた。

 

そして帰宅するまでの間は、それ以上この事について話す事もなく、他愛のない話だけだった。

 

 

 

 

だけど翌日。

あたしがリビングで朝食を摂っていると、お父さんは泣きながらリビングに入ってきた。

 

「お父さん!?ど、どうしたの?」

 

「グスッ、夕べやっぱりStarglantzのトップって野郎が誰なのか気になって、当時の幹部連中に電話したんだが…」

 

夕べ電話を!?

そっか!お父さんの部隊の人達に連絡を取れば、誰がStarglantzのトップなのかわかるかも知れない。

何か情報を持っている人達だっていたかも…。

 

「なのに…グスッ、幹部連中のヤツラ全員電話番号使われてなくて誰とも連絡がつかなかった。

Starglantzのトップが誰なのかわからなかった事より、誰1人として電話番号変えてから俺に連絡先を教えてくれてないって現実がめちゃくちゃ辛い…うぅ…」

 

誰からも連絡先変えた事を教えてもらえてないなんて………あたしも泣いた。

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