あたしの名前は木原 梓。
今はまだなっちゃん事、Divalのボーカルである水瀬 渚にあたしの昔の話を聞かせている。
てか、あたしの昔話めちゃ長くない?
そろそろ本編に戻った方がいいとは思うんだけど…。
「梓お姉ちゃんのお母さんと、私のお父さんから…バンドをやっていた頃の話を聞けたの?」
「うん、お母さんもなっちゃんちのおっちゃんも話してくれた。レガリア戦争とか当時のあたしには衝撃的だったよ」
「私もまだ…お父さんに昔の事を聞いた事はないんだ…。バンドをやっていたって事は知ってるんだけど…」
そっか。おっちゃんはまだなっちゃんには話してないんだね。
あたしからなっちゃんに話していいものかな?
もしかしたらおっちゃんはあの頃の話なんて、なっちゃんには知られたくないのかも知れないし…。
「私も…ちょっと聞いてみたいかも」
「…うん、ちょっとだけ話すね」
「ちょっとだけ?」
「うん、そんな面白い話じゃないからね」
あたしはなっちゃんにそう言って、昔にお母さんとおっちゃんから聞いた話をした。
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お母さんとなっちゃんのお父さんは同じ高校で、音楽を好きになってバンドを結成したらしい。
他のバンドメンバーの事はあんまり知らないんだけど、当時はお母さんもおっちゃんもメジャーデビューして、音楽の世界で食べていくのが夢だったみたい。
お母さんとおっちゃんのバンドは関西を拠点に色々活動も頑張っていてね。
当時はロックよりもポップスが流行っていたから色々苦労もしてたみたい。
そしてそんなある日、お母さんとおっちゃんは1人のある男の人に出会った。
『木原 遙那…。やっと見つけた』
『ん?あんた誰?』
『なんやこのおっさん?遙那の知り合いか?』
『この世界は腐っている』
その男の人はお母さんともおっちゃんとも面識はなかったみたいだけど話を続けたんだって。
『……だから私は宝玉を造ったのだ』
『え?な、何言ってんの?宝玉?』
『え?遙那…マジこのおっさん誰?マジで怖いんやけど…』
その男の人がお母さんに渡して来たのが魚座の宝玉。
その人は日本中を旅していたらしい。
歌い手の想いを歌に乗せる宝玉、レガリアの開発に成功したらしくてね。
その人が何を思ってレガリアを作ったのかわからないんだけど、自分が選んだチカラを持つボーカル、歌い手にレガリアを配っていたらしいの。
『…受け取るがいい。コレはお前のチカラを引き出してくれるだろう』
『は?へ、変質者?』
『私の作った宝玉。それは全部で12個ある。各々星座の名前に由来させて作った宝玉』
『ど、どういう事…?何やのレガリアって…』
『先程も言ったが近いうちに音楽の音楽による恐ろしい争いが始まる。その時の為に作った宝玉。私が選んだ12人の歌い手達、お前達がその闘いを終わらせる戦士になるのだ』
そう言って男の人は無理矢理お母さんにレガリアを渡して去っていった。
お母さんもおっちゃんもその時は気持ち悪いだの何だの思ったらしいんだけど、そのレガリアを返す事も棄てる事も出来ず、何もわからないままレガリアを大事に持っている事にしたらしい。
それから数年後、日本中でデュエルギグにより音楽の争いが起きた。
もちろんそんなのはニュースになったり、話題にあがったりする事も無く、人知れずバンドマン同士による争いだったらしい。
お母さんとおっちゃんの表現がびっくりだったよ。
音楽の闘いのはずなのにさ。何も音がしなかったんだって…。
ほとんどの人はそんな闘いがあった事も知らず、何も物音なんかもしなかったらしい。そして、たくさんの血が流れたと…。
お母さんとおっちゃんは、そんな闘いの日々に巻き込まれていった。
12人のレガリアを渡された者達。
本来ならそのレガリアを持つ者達がその闘いを終わらせるはずだったみたいだけど、世界はそうはならなかった。
お母さんも含めてだけどね。
レガリアを渡された人にも各々が音楽への想いもあったし、どうしても退けない事もあった。
そしてどこからレガリアの話を聞いたのか、レガリアを奪おうとする者達も現れた。
自分のバンドが一番だ。自分の歌が一番だ。
売れてお金持ちになりたい、異性にモテたい。みんなを見返してやりたい。思いっきり歌いたい。
たくさんのバンドマンが思い思いをぶつけ合って、デュエルギグによる戦争が起こり、その戦いは何年も何年も終わる事はなかった。
「昔…そんな戦いが…それがレガリア戦争…」
「違うよ」
「え?違う?」
なっちゃんはあたしの話を聞いて、音楽による長い戦いがレガリア戦争だと思ったんだろう。
まぁ、あたしもお母さんとおっちゃんにこの話を聞いた時はこれがレガリア戦争だと思っちゃってたし。
「うん。これはまだ音楽による争い。主張の押し付け合いみたいな所もあってね。この後に…」
この後に、1人のレガリアを持つ者が立ち上がった。
その人の名前は
ONLY BLOODの初代ボーカルで、射手座のレガリアを持つ人だった。
その人もバカみたいに音楽好きだったみたいでね。
日本だけじゃなく、世界に視野を向けて色んな音楽を好きになって自分の音楽を世に広めたいって思ってた人らしい。
その人がこの争いの中、12人のレガリアを持つ者達とコンタクトを取り、音楽の争いなんて終わらせようとした。
『おい!待てよ矢沢!俺たちは好き好んでデュエルをやってる訳じゃねぇ!退けない想いがあるから戦ってんだ!』
『そうだぜ!オレだって嫌々やってる事もあるんだ!メジャーデビューしたいって夢の為によ!』
『そ、そうだよ。あたしだってこんな音楽やりたい訳じゃ…』
矢沢さんに集めらた12人のレガリアを持つ者達は、やっぱり最初は矢沢さんの考えには批判的だったらしい。
だけど矢沢さんは…
『うっせーんだよテメェら!何か文句あんのかコノヤロー!!!お前ら全員やっちまうぞコラ!!!!』
矢沢さんは口々に文句や不満を言うレガリア使いのみんなに一喝した。
『……ふぅ…いいか、テメェら。俺らはよ、みんな音楽が好きだ。好きだから音楽やってんじゃねぇか。そりゃロックが好き、ポップスが好き、演歌が好き、アニソンが好き、クラシックが好き、ジャズが好き。
自分にゃ音楽以外は何もねぇ。音楽やってりゃ異性にモテる金が稼げる。
………とかよ。色々想いはあるだろうけどよ!俺らは音楽やってんだよ!音楽が好きじゃなけりゃこんな事やんねーよ!音楽好きな者同士でよ!争ってんのはバカみてぇじゃねぇか!!』
『こ、こわぁぁぁ…な、何やのあの人、いきなりレガリア使いの男の人達を殴り飛ばしたんやけど…』
『いや、ア、アタシもびっくりしたよ…。やっちまうぞコラって、やっちまってから言ってるし…』
『ごめんなさい、アタシも文句を言ってごめんなさい、もうしません。もうしませんから…』
文句や不満を言ったレガリア使いのみんなをぶっ飛ばした後での一喝だった。容赦ない暴力で。
さすがに女の子のレガリア使いには手をあげなかったみたいだけど、男の人達は潰れたトマトみたいになってたらしい。
『俺らはよ、バンドマンなんだ。音楽を好きな者同士、仲良く手を取り合ってよ。後世に胸を張って音楽やってたって…言いたいじゃねぇか』
『こ、この人、暴力で解決しよったんやけど…音楽好きな者同士なのに…』
『い、今はアタシら女は無事だけど、あんまり文句言ってるとアタシ達も…?』
『俺はよ…音楽が好きなだけ。たったそれだけなんだぜ』
『あ、あの矢沢って人自分の世界に入っちゃってるみたいだしさ。今の内に自己紹介しとこうよ。あたしは双子座のレガリアの使い手、
『あ、私は関西を拠点に活動してる魚座のレガリア使い、木原 遙那。私も遙那でええよ。みんなよろしくね!』
『アタシは
『わ、私は乙女座のレガリアを…』
お母さん達、女子陣はキャッキャウフフと自己紹介をしていたらしい。
………そんで色々あってね。結局みんな矢沢さんの意志に共感して、音楽を…好きな音楽をやりたい人がやれる世界にする為に戦う事にしたんだって。
「あ、あの…梓お姉ちゃん?」
「ん?どしたの?」
「そんで色々あってね。って…何があったの。」
「うん?それ?何か色々あったみたいだけど、お母さんとおっちゃんの話が長くて忘れちゃった。とにかく何か色々あったみたい。いや~、年寄りの話は長くて困っちゃうよね」
「え?私も梓お姉ちゃんの音楽をやるきっかけの話を聞きたいだけなのに色々聞かされてるんやけど…」
「……お母さん、おっちゃん、年寄りの話は長いとか思っちゃってごめんね」
「あ、そっちを謝っちゃうんだ?」
それからは12人のレガリア使いと、レガリアを狙うバンドマン、自分勝手なバンドマン、他のモブ達、ここら辺も正直あんまり覚えてないんだよね…。まぁ、そんなバンドマン達での戦いが始まった。
この戦いもすごく激しくて、残酷で、悲しくなるような戦いばっかりだったみたい。
その戦いの中でね。レガリアの使い手達はなんやかんだで歌えなくなったり、音楽に絶望して辞めてしまったり、新しい後継者にレガリアを託したりした人もいた。
お母さんも、肺を患ってしまって歌えなくなってしまっていた。
そんな時にお母さんはお父さん…海原と出会い…。
「あたしが出来ちゃった」
「ブフォ!…ゲホッゲホッ…あたしが出来ちゃったって…え?何でそんな展開に!?」
なっちゃんがびっくりしてビールを吹き出してしまった。ふふり。なっちゃんがビールを口に含むタイミングを見計らっての発言とはいえ、さすがあたしと言った所だ。あたしのMCもまだまだ捨てたもんじゃないね。
……MCとはちょっと違う気もするけど。
「その時はちゃんと正式に結婚はしてなかったみたいだけどね。後に結婚はしたけど。
海原には聖羅も居たし、聖羅のお母さんも亡くなってすぐの頃みたいだったから何やかんやってね」
「聖羅って…盛夏のお母さん…の事だよね?てか、何やかんやって何なの?」
「うん、お母さんと海原はその頃にね。お母さんは聖羅の事もあたしの事も守るつもりだったみたいだけど…」
「え?え?ちょっと…梓お姉ちゃん話してくれる割にははしょり過ぎじゃない?私正直混乱中なんだけど?」
「でも海原は…」
「え?私の質問は無視しちゃうの?これ何の為の話なの?」
海原は聖羅のお母さんを失ったショックと、音楽による戦い。そして、お母さんがレガリア使いだという事で…狂気に堕ちてしまった。
お母さんはあたしと聖羅を連れて逃げようとした。
『ふふふ。面白かったよ遥那。だが、ここまでのようだね』
『かい…ばら…』
『聖羅と梓を置いて行きたまえ。そうすれば君は自由だ』
『…それが貴方のシナリオ?』
『遥那。これが最期だ。聖羅と梓は…』
『わかったよ。でも…この子達は渡せない。置いて行けない。それが貴方の希望だったとしても!私は…』
『なるほど。面倒くさい女だ。おい、手榴弾を…。2、3個もあればいいだろう』
『……え?…は?手榴弾…?』
そう言って海原はその場に居た部下から手榴弾を受け取り、お母さんに向けて投げてきたらしい…。
『うわぁぁぁん、うわぁぁぁん…』
『聖羅…!良かった…無事で…』
お母さんは片手であたしを掴み…聖羅を抱き上げて…。
うぅ~ん……あたしも正直どんな状態だったのかわかんないんだけど、何かそんな状態だったらしい。
片手で崖の岩を掴み、あたしを片手で掴んで聖羅を脇で抱えてたみたい?お母さんにはそう聞いたけど今になって思うとそれどんな状態?お父さんも手榴弾とかさ…。
『さすがだね遥那。まさかあの爆発でもお前も娘達も無事とはね』
『お前…ほんまに…』
-グッ
『あっ…!聖羅…!!』
お父さんはお母さんが脇に抱えていた聖羅を取り上げたらしいの。……今は考えるの止めよう。お母さんから聞いた話だけをなっちゃんに伝えよう。
これ冷静に考えたらどんな状況なん?音楽の話だよね?
『いやぁぁぁ!おばちゃーん!おばちゃーん!』
『聖羅…!』
『聖羅は返してもらった。では、次は梓を返してもらおうか』
『海原…!』
『ふふふ。心配しなくて良い。聖羅も梓も私が立派に…』
『返して…あんたが私に聖羅を返して!聖羅も梓も!私の娘や!』
『…うるさい女だ。聖羅はお前の娘ではないだろう。私と私の妻の…』
お父さん…海原はそう言った後、崖の岩にしがみつくお母さんを蹴り上げた。
『あっ…』
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『おぎゃあ!おぎゃあ!!』
『あず…さ…?』
お母さんが目を覚ました時。
お母さんはあたしを抱えて崖の下に居たらしい。
あの崖から落ちても、あたしもお母さんも無事だったのは奇跡が起こったんじゃないかと思った程だった。
『私も…梓も…無事…?ごめん…ごめんね、聖羅…』
お母さんもその時、大怪我をしていたらしい。
本当は聖羅も助け出したいって思ってたみたいだけど、あたしを守る為に何とか海原から逃げなきゃいけない。
そう思ってお母さんは…。
『龍…ちゃん…』
『遥那…?お前…その怪我…子供…?』
何とかこの町まで逃げてくる事が出来た。
それから数年。
お母さんは怪我を治し、あたしはすくすくと育った。
お母さんは音楽を棄て、肺の病と闘いながらそれなりに幸せな日々を過ごしていた。
それから…何年経ったんだろう?
矢沢さん達レガリア使いが日本の音楽の頂点に立った事で、音楽の戦いは終わった事をお母さん達は噂で聞いた。
海原もお母さんとあたしを追う事はなく、お母さんは音楽を棄てて今の生活を享受し、レガリアの事なんか忘れようとしていた。
あたしが小学生になってからの頃…。
『おかーさーん!豚!豚が落ちてたよ!
今日はトンカツだね!もしくは生姜焼き?どっちにしても明日はホームランさ!』
『ブヒーブヒー…』
『ちょ…梓!これ…豚じゃないよ!人間だよ!』
『え?人間?でも、ブヒーブヒー言ってるよ?』
『ブヒー…ブヒー…』
『ブヒーブヒー言ってるけど人間なの!』
『そ、そんなアホな…!?』
『だ、大丈夫ですか!?』
『ブヒー…ブヒー…み、水を…一杯…いや、いっぱい頂けませんか?ブヒー…で、出来ればメシも…ブヒー』
『水…?ちょ、ちょっと待ってて!』
あたしは家の前に倒れていた人を豚だと思って今夜の食費が浮いたぜイェイ!とか思ってたらしいんだけど、そこに倒れていた人は紛れもなく人間だった。
ちょうど昼時だったのもあって、お母さんは急いでご飯の用意をして、その人にバケツにいっぱいの水を渡していた。
『もぐもぐもぐもぐもぐもぐ!!』
『もぐもぐ…』
『あ、あんたほんまいっぱい食べるな』
『バクバクバクバク…もぐもぐもぐもぐ!』
『もぐもぐ…おかーさんおかわり』
『もぐもぐもぐもぐ…すんません、俺もおかわりッス』
『え?あ、ああ…はい』
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『ふぅ…ごちそうさまでした』
『い…いえ…そ、それよりめちゃ食べたなあんた…。
今夜の分もと思って多目にご飯炊いてたのに無くなってしもたし…。また炊かなきゃ…』
『いえ!腹八分目って言いますからね!まだ六分目くらいですがさすがにもう結構です!炊かなくていいですよ』
『は?六分目…?5合炊いてたんやけど…?てか、あんたの為に炊こうと思ってる訳じゃないから』
『フッ、さすがに初対面で緊張してますからね。これ以上は喉を通りませんよ』
『いや、あんたほんま何言ってんの?てか初対面って…』
『あずさー!遊ぼー!ベース持って来たでー!』
『あ、すみかだ。…は~い!今行くー!
って訳でおかーさん、おっちゃんとこ行ってギター教えてもらってくる!』
『あ、ああ、うん、行ってらっしゃい』
『行ってきまんもすー!』
『娘さん…ギターをされてるんスね』
『え?うん、まだまだ全然下手くそみたいやけどね。
それよりあんたさっき初対面って…。それってやっぱり私に会う為にここに来たって事?』
そう言ってその男の人は正座してお母さんに頭を下げたらしい。
『挨拶が遅れてしまい申し訳ありません。
自分、大神 大悟といいます。矢沢さんから…射手座の宝玉を受け継いだ…レガリア使いです』
『レガリア…?射手座の…?』
その日、あたしが拾った人はONLY BLOODの2代目ボーカル、射手座の宝玉を持つ大神 大悟さんだった。
大神さんは矢沢さんからONLY BLOODというバンドと、射手座の宝玉を受け継いだ人だった。
大神さんがその日お母さんに会いに来たのは…。
『レガリア戦争…?』
『ええ、俺らレガリアを持つ連中にはそう言われています。レガリア使いによるレガリア使い同士の戦い。
まだ3ヵ月程度しか経ってませんが、昔、矢沢さんや木原さんが戦ってた時よりも多くの血が流れ、バンドマン達が潰されていってるっス』
『何で…?音楽の争いは終わったんでしょ?何でまたレガリア使い同士でそんな事…』
『それを今から説明させて頂きます』
大神さんの話によると矢沢さん達レガリアを持つ者達が音楽の戦いを終らせ、ロック、ポップス、演歌、レゲエ、ヒップホップ、ジャズ、ラテン、クラシック…他にもたくさんの音楽ジャンルがあるけど、みんながみんな自分の好きな音楽を自由にやれる時代がやってきていた。
そうして矢沢さん達レガリア使いのみんなも各々の音楽を自由にやっていた。
だけど、その時代に叛逆するように現れたクリムゾンミュージック。そしてその一派。
その時はまだそんな力も無くて、大して気に止める事もなかったみたいだけど、徐々に力を付けていっていた。
矢沢さんは自由の音楽というものがどういうモノなのか。その問いをずっと自分の中で考えていて、クリムゾンミュージックのような連中が現れた事。かつての戦いで傷ついた心。
結局、自分の中の問いに答えを見出だせなくて、次世代に想いを受け継がせようと考えて音楽を辞めた。
大神さんはまだその時にはレガリアを受け継いでなかったらしいんだけど、矢沢さんが音楽の世界から退いた頃、たまたまの偶然なのか必然なのか、矢沢さんの親友でありレガリア使いを矢沢さんに代わってまとめていた蠍座の宝玉の使い手が倒され、蠍座のレガリアを奪われてしまった。
後のクリムゾンエンターテイメントの四天王、足立 秀貴に…。
「足立!?」
「あ、やっぱりなっちゃんも足立の名前くらいは聞いた事ある?」
「う、うん、ちょっと聞いた事あるだけだけど…。足立って確か先輩が…」
「うん、足立はタカくんにレガリアを破壊され敗れた。それまでずっとレガリア使いの頂点にいたの。
……タカくん自身も足立を倒した訳じゃないって色々後悔してたみたいだけどね」
「倒した訳じゃない…?後悔…?」
「うん、まぁ…そこはまた今度ね。そして大神さんの話は…」
『足立って野郎が蠍座のレガリアを奪い、レガリア使い同士の戦いを煽動したんっス』
『ま、待って…話が見えて来ない。その足立ってヤツがレガリアを奪ったとしても…他のみんなでその足立を倒せば…』
『最初はそうしてました。だけど足立は強すぎた。誰も足立には勝てずレガリアは他の者に受け継がれたり、散り散りになっちまいましたし…それに』
『それに?』
『矢沢さん達、あなた達初代の想いを受け継いだ奴らや、歪んで受け継いでしまった奴らとか、自分の音楽がやっぱり最高だと思う奴らとか…色々とありまして…』
『そんなの…私達がやってた事って…』
『今、木原さんを含めて残っているレガリアは9個。他の3個はどこにいったのか現存してるのかわからない状況です』
『それで…大神くんは何で私に?レガリアが目当てなの?』
『……正直なところ、俺が射手座の宝玉を受け継いだのは、足立やあなたも含めて他のレガリア使いを全員ぶっ潰す為だったんス。そして、俺のレガリアを含めて全部のレガリアを破壊するつもりだったんスよ。矢沢さんが残した問いには…レガリアなんて要らねぇって思ってましたから』
『私のレガリアを破壊する為にここまで?』
『はい、最初はそのつもりでした。
ですがこの3ヵ月、俺もレガリア使いとして戦って来て、あなたに…いえ、あの子に会って、矢沢さんの残した問いを…解けそうです』
『あの子…?それって梓の事?』
『はい、だから俺はこのまま帰ります。木原さんがこの町に居るって事は足立も他のレガリア使いも知らないハズです。俺の仲間が必死に調べてやっと見つけられたくらいですから』
『そう、そっか。それを聞いて少し安心した。私もレガリアは梓に受け継がせたいと思ってたから』
『そうスか。俺もそれを聞いて安心しました。それにしてもあの子…ギター下手くそっスね』
『そうなんだよね…。うちのギタリストに習ってるのに全然上達しなくて…』
『ハッハッハ、ここに来て良かったっス。話したい事話して安心したらまた腹が減ってきました』
『え?まだ食べるの…?』
大神さんはそう言って、お母さんに追加でお米を炊いてもらい、ドンブリに3杯食べておにぎり15個をお土産にして帰って行った。
お母さんはその時以来、大神さんに二度と会うことはなかったんだけど、それから1年程経った後、大神さんと同じバンドだったメンバーが訪ねてきて、レガリア戦争は足立が勝利した事で終わったこと、大神さんが持っていた射手座のレガリアは、矢沢さんと大神さんの想いを受け継げる者に渡そうと、同じバンドメンバーだった氷川さんが預かっているという事を聞いた。
「氷川さん?」
「うん、りっちゃんのお父さん」
「理奈のお父さんってのそんな凄い人だったの!?」
「そだよ~。りっちゃんのお父さんが居なかったらBREEZEもあたし達Artemisも居なかったかも知れないくらいだよ~」
「へ、へぇ~…理奈のお父さんが…。理奈も知ってるこかなぁ…?」
この反応…。なっちゃんはりっちゃんのお父さん、氷川さんの事あんまり知らないみたいだね。
りっちゃんもタカくん達もおっちゃんもなっちゃんにはまだ話してないのかな?
…りっちゃんも知らない可能性もあるのかも。
「そ、それで?理奈のお父さんは…?」
うぅ~ん、どうしよっかな?
「お母さんはその時に氷川さん達からレガリア戦争の事を聞いてね。氷川さんとはあたしがタカくんに会う何日か前に関西でライブする事は聞いてたみたいだけど、お母さんは体調が思わしくないからさ。行けなかったみたいで…」
「理奈のお父さんからは関西でライブする事を聞いてたんだ?」
「うん、お母さんとおっちゃんから…あたしはそう聞いた」
…その時、お母さん達はタカくんが大神さんの射手座のレガリアを受け継げいた事も聞いたみたいだけどね。
矢沢さんが解けなかった音楽への問い掛け。
その問い掛けに誰も答えを見つけられなかった。
だけど大神さんはその問い掛けに対する式を見つけた。
自分のやっている音楽とレガリア戦争を通して…。
そしてタカくんが大神さんの残した式を解いて矢沢さんの解けなかった問いの答えを見つけて、あたし達やアルテミスの矢のみんなを…ううん、手塚さん達すらも導いてくれた。
それなのに…タカくんがせっかく導いてくれたのに。答えに辿り着いたあたし達は…結局…誰も…。
…うん、おっちゃんやタカくん達もまだなっちゃんに話してないなら、あたしから言う必要はないかな。ごめんね、なっちゃん。
「それでね…」
『それがレガリア戦争と海原…梓のお父さんの話だよ』
『……どや梓。やっぱり音楽って嫌いか?』
『わかんない…。音楽って…あたしが思ってたのと全然違ってた。お母さん達のバンドも大神さん達の事も。
でも…わかんないや。やっぱり海原?だっけ?親父の事はムカつくし』
『『梓…』』
『でもさ。かっこいいとか楽しそうって思ったのも本当。お母さん達の話を聞いてた時…あたし怖かったけどドキドキもワクワクもしてた』
だからあたしは…
『だから…あたしバンドを…音楽をやりたい。
そして、あたしが自分で決める。音楽が本当はどういうモノなのかって』
『梓…』
『よう言うた梓!俺はお前を応援する!』
『ほんまに!?』
『おう!』
『ちょっと…龍ちゃん…』
『大丈夫や遙那。梓は…大丈夫』
『龍ちゃん…』
『おっちゃん!ほんまに!?あたし音楽やっていい!?バンドやるの応援してくれる!?』
『おう!男に二言はあらへん。俺の…俺達の音楽をお前に叩き込んだる!ええな?遙那』
『…わかったよ。龍ちゃん、梓をお願いね』
『お母さん!おっちゃん!ありがとう!!
あたし、音楽を頑張る!って訳でおっちゃん、この書類にサインして』
『は?サイン?』
『うん!あたしも途中でお母さんやおっちゃんの気持ちを裏切らんように!誓約書や!』
『誓約書…梓、お前そんなモノまで…』
その誓約書にはあたしが音楽を真面目にやる事、正当な理由も無しに途中で投げ出したりしない事などを書いていた。
『梓、お前…これ、音楽の練習に関してはおっちゃんの言うことをちゃんと聞く事とかも書かれとるけど…ええんか?』
『うん、ちゃんとおっちゃん達が音楽を教えてくれるならその事に関してはね。でもちゃんと読んでや?音楽の練習に関してやから。不当な事は別やで?』
『わかっとるわ!…でもほんまやな?俺の音楽は厳しいで?』
『あたしはギター下手くそやったしな。今からやるんやもん。厳しいのは望む所や!』
『よう言うた!俺は感動したで!サインしたるわ!」
『あ、血判もよろしくね』
『おう、血判でも何でもしたるわ!』
そう言ったおっちゃんは親指を噛み、あたしの書いた誓約書にサインと血判をしてくれた。
『おっちゃん…ありがとう』
『おう、厳しくいくからな。覚悟しとけよ』
おっちゃんのサインと血判を手に入れたあたしは勝ちを確信した。
『フヒッ、フ…フッフッフ…フフフフ…』
『あ、梓?何や?何を笑っとるんや?』
『裏面も…フフ…ちゃんと読んで』
『あ?裏面……?
……ワタクシ、水瀬 龍馬は木原 梓に大切なバイクであるRSZ2…ゼッツーを譲ります。……は?』
『サインと血判貰ったからね!男に二言ないもんね!これでゼッツーはあたしのだ!やったー!』
『あ、梓!ちょっ…待っ…!』
そうしてあたしはなっちゃんのお父さんから大切なバイクを譲り受け、音楽をやる事にした。
『ちょっと…!ほんま!ゼッツーだけは!』