俺の名前は宮野 拓斗。
かつてBREEZEというバンドのベーシストをしていた。
今はLazy Windというバンドでベースボーカルをしている。だが、俺はLazy Windをやりだしてからは楽しい音楽ってヤツを忘れていた。
BREEZEのバンドメンバー。
ボーカルのタカ、ギターのトシキ、ドラムの英治。
あの頃の俺達は悩んだり苦しんだり、喧嘩したりする事もあったが、楽しんで音楽をやっていた。
それを忘れていた俺は本当にダメな野郎だ。
音楽を…バンドを…破壊の為にやっていた。
だから、今は…いや、これからのLazy Windは楽しい音楽をやるバンドに変えていきてぇ。
南国DEギグのあったあの日、タカとトシキと英治と、俺のLazy Windでデュエルギグをしたあの日から…。
俺はベースボーカルからベーシストに戻り、架純…Lazy Windでギタリストだったあいつをギターボーカルにして、俺達は変わるんだ。
……まぁ、クリムゾンの奴らとクソつまらねぇデュエルギグをやる時は俺が歌うけどな。あいつらは俺が徹底的に破壊する。
・
・
・
チッ、モノローグが長くなっちまったぜ。
俺は今、カッコつけてないとヤバいくらいにヤバい。
あ、語彙力がもうヤバい。
俺はソッとスマホに届いたLINEを開いた。
梓『拓斗くん。大事なお話があるの。家に来てくれるかな?
あ、バイトとか忙しいなら全然いいんだけどね!
でも…待ってる。……あはは、何か恥ずかしいね。あ!拓斗くんって何が好きだっけ?作って待ってるよ(はぁと』
俺は今は妹である晴香の経営する居酒屋でバイトをさせてもらっている。
俺はバイトという身であり、シフトについても文句を言える立場じゃねぇ。
だが、梓からこんなLINEが来たらもう行かない訳にはいかない。だって俺の人生こんな事言われるなんて絶対今後ないもん。うん、今までなかったから断言出来る。
今日は俺は仕事の日だったが晴香に…
「それにしても梓が兄貴を呼び出すなんて珍しいよね。兄貴から梓を呼び出す事はあってもさ?」
…晴香に休みを貰えたんだが、何でこいつ付いてきてんの?
「おい、晴香。お前も今日は出勤の日だっただろう?何でお前はここに居るんだ?」
「そんな事よりさ?」
そんな事?お前、仕事の出勤日をそんな事で片付けるつもりなの?
「兄貴は梓に呼び出されて、ウキウキ気分で待ち合わせ場所に向かってんだよね?仕事を休んでまで」
いや、待って?
確かにウキウキ気分だよ?梓に呼び出されたのなんか今まで1回か2回あったかな?って感じだもん。
そりゃウキウキ気分にもなるよ?
でもお前、我が妹のくせに言い方がアレじゃない?仕事を休んでまでって何?お前も仕事休んでるよね?
「兄貴さ?このLINE、本当に梓が送ってきたと思ってる?」
何だと!?
俺は急いでLINEを確認してみた。
送り主の名前は確実に『木原 梓(天使)』になっている。
間違いなくコレは梓が送ってきたメッセージだ。
俺は恥ずかしげもなく『あ、梓が作ってくれんなら何でもいいぜ』とか送ってしまっている。
今更アレが梓じゃなかったとかだったらめちゃくちゃ恥ずかしい。てか、何で俺はLINEでどもってんの?
「晴香、お前が何を言いたいのかサッパリわからねぇ。これは梓のアカウントだ。そして、その梓のアカウントから俺のアカウントに連絡が来ている。梓以外誰が俺にこのメッセージを送れるっていうんだ」
俺は晴香にスマホを見せつけてやった。
「兄貴さ?この15年の間にやっぱ日和っちゃった?
昔も梓の携帯から日奈子がメールしてくるとかよくあったじゃん?この絵文字の使い方とか言い回しとか…日奈子くさくない?」
フッ、晴香のやつめ。
何を言いたいのかわからないとか思っていたが、やはり何を言いたいのかサッパリわからないな。
このメッセージを送ってきたのは梓じゃなく日奈子だと言いたいんだろう?
だが甘かったな。
確かに昔、梓の携帯を使って日奈子が梓の振りをしながらメールを送ってきた事は何度もある。そう、何度もだ。
その度に俺は梓からの連絡だと思ってウキウキしながら待ち合わせの場所に向かい、そしてそこに居たのは梓じゃなく日奈子だった。
何度もそんな恥ずかしい黒歴史を持つ俺が、何の確認もせずに仕事を休むと思っているのか?
この梓からのLINEがきた後、俺はすぐに手塚さんに連絡し日奈子の予定を聞いている。
そして手塚さんから日奈子は今日、俺の職場である居酒屋そよ風に飲み会に行くと情報をもらった。
だから今日この日この時間に、日奈子が俺を呼び出す事は出来ないという訳だ。
…だがあの日奈子の事だ。
手塚さんに金を積んで俺を騙すよう手を組まされた可能性も俺は考えた。
だから俺は直接、梓に会って今日の事を確認したのだ。
『お、おう梓』
『あれ?拓斗くん?』
『そうか、梓もこのスーパーで買い物してんのか。奇遇だな』
『わぁ~、拓斗くんもこのスーパーでお買い物してたんだね。あたしはここのスーパーは志保ちゃんに安いって聞いてさ?それからここの常連さんになったんだよ』
『そうだったのか。俺は昔からこのスーパーを使ってたからよ。ハハハ、まさか梓もここを使ってるとはな』
『ここって拓斗くんの今のお家から遠いのに。やっぱここスーパーは有名なんだね。さすが志保ちゃん!』
本当は梓がこのスーパーを使っているというのは、俺のバンドメンバーである観月 明日香からの情報だった。
あいつは志保の同級生だから色々と…その…な?
あ、ヤバい。もしかして俺ストーカーくさくない?
いや!違う!断じて否!
そう!これはあのLINEがもしかしたら梓からのメッセージじゃなく、日奈子の罠かもと思って梓と会う必要があったからだ。だからしょうがなくなんだ。
…っと、そうだ。
あのLINEを梓からの連絡かどうか確認しないとな。
その為にここ数日このスーパーでウロウロしてたんだし。
………ちょっと待って。
梓からLINE来たの今日だよね?そんで今日仕事を休ませてほしいと晴香に伝えた。
ここ数日このスーパーをウロウロしていたって何!?
『そういや梓、お前…結構食材買ってんだな?豆腐の比率がやたら多いが…』
『え?…だって、作って待っとくって言ったじゃない?結局何が食べたいか返事来なかったし…』
俺はその梓の言葉を聞いて確信した。
あのメッセージは梓からのものだったと。
『あ、梓…』
『ん?何?』
『うわぁぁぁぁぁ!疑ってすまなかったぁぁぁぁ!!』
『拓斗くん!?』
『クッ…神よ!こんな俺を裁いてくれ!!』
俺は溢れ出る涙を拭いながらスーパーをあとにした。
『た、拓斗くん?な、何だったの…?』
フッ、そんな事があったからな。
あのメッセージは梓からのものだったと俺は確信しているのだ。
だから晴香、お前は邪魔だ。早く帰れ。
家にはお前の愛する夫も子供もいるだろう?だから早く帰るんだ。邪魔だから。
いや、やっぱ仕事行け。今日はお前も出勤日だったろ?
今から仕事に行くんだ。邪魔だから。
「え?あれ?マジで梓が居る…」
何だと!?
「ホントに梓が兄貴を…?」
だからさっきからそう言ってるじゃねーか!
いや、言ってないわ。モノローグで語ってただけだわ。
って、こんな事考えてる場合じゃねぇ!
梓が待っててくれてんだ。急いで梓の元に向かわねぇと!
「おーい!梓ー!」
晴香は声を高らかにあげて梓の元へと向かった。
いや、待てよ!お前ホントに何なの!?
これって日奈子の悪戯と思ってたんだよね!?
違ったんじゃん!梓がちゃんと待ち合わせ場所に居るじゃん!
何でお前は梓の元に向かってんの!?
俺だって「梓ー!」とか言いながら梓の元に駆け寄って行きたいし!俺のキャラじゃないからやんないけど!
いや、お前ホントに帰れよ!
俺がそんな事を考えてる間に晴香は梓と合流していた。
ハァ…せっかくの4周年記念なのにな。何なんだこの話は…。
このまま俺がモノローグを語っていても話が進まねぇ。俺も梓の元へと急いだ。
・
・
・
「は?今からそよ風に行く?」
「うん、あたしは日奈子にここで拓斗くんを待ってろって言われて」
…うん?待って?
確かに数行前に俺は話が進まねぇって言ったよ?
何なのさっきの点点点ってやつ。急に話進み過ぎてない?結局、梓は日奈子に言われてここに来たの?さっきまでのモノローグ何だったの?
読者も俺も置いてけぼりじゃね!?
「はぁ~…結局そよ風に来るならあたしはここで待ってたら良かった。さっきまでの話は何だったの?」
「ん~…何の事かあたしもわかんないんだけど、日奈子が言うには文字数の関係らしいよ。BREEZEのみんなもArtemisのみんなももう個室であたし達を待ってるはずだって」
BREEZEもArtemisもみんな居るの?やっぱりあのメッセージは日奈子の仕組んだ巧妙な罠?
何だよ文字数って…。
「拓斗くん?さっきから全然喋らないね?」
「兄貴にも色々あんだよ。な?兄貴」
…うるせぇよ。
そうして俺と梓と晴香はそよ風に入り、バイトの相原さんに接客対応され、日奈子達の待つ個室へと通された。
その時相原さんに
『あれ?店長も拓斗さんも今日はお休みにするんじゃなかったでしたっけ?店長は有給ですよね?』
とか言われてしまった。晴香のやつ有給取ったの?
まぁいいや。もう。
とりあえずタカ達と合流してさっさと帰って寝よう。
梓と飲めるいい機会ではあるんだが、日奈子の呼び出しとなると何かあったら大変だからな。主に俺の命に。
タカ達も日奈子に呼び出されてんなら、何とか早く帰る算段を立ててるだろ。あいつに乗っかっとけば俺も早めに帰れるハズだ。
そう思って俺は個室のドアを開いた。
「やっと来たね!拓斗ちゃん、梓ちゃん!天晴れである!!……ってありゃ?晴香ちゃんも居るの?」
個室のドアを開けた途端に日奈子から訳のわからねぇ歓迎のお言葉を頂戴した訳だが…。
BREEZEのタカとトシキと英治、Artemisの日奈子に澄香に翔子。
そして、英治の嫁である三咲と娘の初音。
ここまでのメンツなら不思議に思わねぇんだが…。
Divalの渚の妹の水瀬 来夢…。何で来夢も居るんだ?
いや、それよりも…だ…。
「あ、拓斗ちゃんはそこの席に座ってね。タカちゃんの隣~。あ、梓ちゃんはそっちの席ね。晴香ちゃんは何処でもいいや」
タカの隣か…こいつに聞きたい事あったし好都合だな。
俺は日奈子に言われたようにタカの隣に座った。
「おう、タカ」
「おう!拓斗!(ニコッ」
……。
おっと、一瞬トリップしちまったぜ。
何だ今のニコッて。マジ怖いんだけど。
こいつの事だから死んだ顔をしながらブツクサ言ってると思ってたんだが何で笑顔なんだ?
まぁ、俺もこの個室に入った時、もう帰りたいオーラを出してるトシキと英治の横でニコニコしてるタカに違和感を覚えて話を聞きたいと思ったんだが…。
「タカ、お前も日奈子に呼ばれたのか?」
「うん!(ニコッ」
……。
おっと、一瞬気絶しかけちまったぜ。
何だ今のうん!ニコッて。お前そんなキャラじゃねぇだろ。
「よし!拓斗ちゃんも梓ちゃんも来た事だし早速始めちゃおうか!」
ん?日奈子のヤツ、早速何か始めるのか?
いや、このまま何かが始まっちまったら、タカが何でこんなに機嫌が良いのかわからねぇじゃねぇか。
機嫌が良いってかもう気持ち悪いレベルだけどな。
「日奈子、その前にちょっといいか?」
「ん?拓斗ちゃん?どしたの?」
「何か始める前に何故みんなが集められたのか…それが聞きてぇんだけど」
「む!拓斗ちゃんはホントに面倒くさいなぁ!いいじゃんみんな集まったんだから。これから今からやる事説明するしおいおいわかるよ。文字数ももう大丈夫だし」
だから文字数って何だよ…!!
いや、今はそれはいいか。
「おい、タカ。お前は何て日奈子に言われてここに来たんだ?」
「拓斗ちゃん!?」
「俺か?俺は日奈子からバンやりのマイミーちゃんの1/16フィギュアを造る事にしたからポーズを考えようって呼ばれてよ?ウフフ、めちゃ楽しみなんですけど」
…バンやりの?フィギュア?
「トシキ、お前は?」
「え?俺?俺はクリムゾンエンターテイメントの次の動きがわかったから、みんなで対策を考えようって…。
はーちゃんがマイミーちゃんのポーズを考案した資料を見せてくれた時に日奈子ちゃんに嵌められたって気付いたんだけどね…」
そうか、クリムゾンエンターテイメントのな…。
そんな事言われたら来るしかないよな。
てか、タカが考案したポーズの資料って何?こいつそんなの作って来たの?日奈子に誘われたの今日だよね?
「…英治、お前は?」
「あ?ああ…三咲も初音も居るのにこんな事を言うのもどうかと思うが…。日奈子に『あの日のあの夜のアレな証拠の写真が出て来たんだけど?これって三咲ちゃんに送っていいかな?あ、英治ちゃん今日暇?』って連絡が来てな…」
そうか、お前は過去はめちゃくちゃブラックだもんな。
三咲も初音も居るのにこんな事言うのもどうかと思うとか言ってたが、ここでそれ言っちゃうのは本当にどうかと思うぞ?お前それ言っちゃうなら何で来たの?
「三咲、お前は何て言われた?」
「あ、私?私は日奈子ちゃんに久しぶりに飲み会しようって誘われたの。みんなで集まるのも久しぶりだから。フフ、初音も一緒でいいって言ってくれたしね(ニコッ」
そうか、三咲は飲み会しようって誘われた訳か。
しかし、こいつのニコッも何?怖いんだけど。
あ、そうか、今日は初音が居るから猫被ってんだな。
安心したぜ、今日は三咲にはしばかれる心配は無いわけだな。
「初音は三咲に着いてきたって感じか?」
「いえ、私は今後のファントムでのライブについて話したいって…」
そうか、日奈子はこんな幼い初音にまでそんな事を…。
ってかファントムのライブについてって何?何で初音がそんな話を?そういうのって普通英治か三咲とじゃないの?
「…澄香は?」
「私?た、拓斗に言う義理なんかないし…な、何でもええやん」
そうか、ここにはタカも梓も居るもんな。
言える訳ねぇよな。どうせ『澄香ちゃん!タカちゃんとデートのセッティングしてあげるよ!』とか言われたんだろ。お前、昔からこれで日奈子に嵌められるの何回目?
「翔子は…どうせトシキと一緒に飲めるよ~とか日奈子に言われたんだろ?」
「な…何でわかったの…?」
そうか、お前もアホだったな。
お前もこれで日奈子に嵌められるの何回目なの?
いや、すまん、翔子。俺も日奈子に嵌められるの何回目?って感じだったわ。思いっきりブーメランだったわ。
「もう!拓斗ちゃんは!もういい?今度こそ本当に…」
「待て。まだだ、来夢、お前はなん…」
「仕事です」
そうか、仕事か。
え?仕事って言われてここに来たの?
「拓斗ちゃん、もういい?」
「あ?ああ、良くはねぇけどしょうがねぇ。俺達をここに呼んだ用件は何だ?さっさと終わらせて解散しようぜ」
「だから、俺達が集まったのはマイミーちゃんのフィギュアのポーズを…」
タカ、頼むから黙っててくれ。
「もう!拓斗ちゃんは!ま、文字数は稼げたけど今度は時間が無いしさっさと終わらせちゃおうか。
みんな…晴香ちゃんと来夢ちゃん以外のみんなの前にプリントが置いてあるでしょ?それを見てみて」
あ?プリント?
俺は目の前にあったプリントを裏返して内容を読んでみた。
…ファントムに所属するバンドで一番上手いと思うボーカルは誰ですか?
何じゃこれ?
「ふっふっふ、みんなこれでわかったようだね。これが今回のForth Anniversary!!の企画!
『関係者100人に聞きました!ファントムで一番上手いバンドマンは誰だ!?』大会です!」
…やべぇ、このちびっこが何を言っているのか理解出来ねぇ。
「ちょっと待て日奈子」
「英治ちゃん?何?」
「関係者100人って何だよ?ここにはBREEZEとArtemis、三咲と初音の10人しか居ねぇじゃねぇか。
晴香と来夢ちゃんにはこのプリントは配られてないしよ?あ、お前もプリントは持ってねぇか」
「ああ、うん。晴香ちゃんと来夢ちゃんには予め回答貰ってるしね。あたしももちろん回答済みだよ」
「日奈子、それでも12人しか…」
「ふっふっふ、甘いね翔子ちゃん。いや、翔子ちゃんにもちゃんと内緒にしてくれたGlitter Melodyを褒めるべきかな?ファントムのバンドメンバーにはもう回答貰ってるんだよ」
何だと?って事は明日香達も回答済みというわけか。
あいつらも俺に内緒にしてたわけだな…。
「んー?それでも38人とか中途半端じゃない?」
「あ、梓ちゃんが…こんなに早く計算を出来た…だと…?」
「え?日奈子ってあたしの事バカだと思ってる?」
やべぇな。無言でタカと英治と澄香と来夢も手を挙げてやがる…。梓の事バカだと思ってんの?バレたらしばかれるぞ?
ってか何で梓は38人って思ったの?
ファントムのバンドは9バンドで4人ずつだから36人。
そして三咲と初音と晴香と来夢で40人だぞ?
「まぁそれは置いておいてね梓ちゃん。
他にも手塚や有希ちゃん、亜美ちゃんや美来ちゃん。
そしてランダムでうちの社員、姫咲ちゃんとこのメイドさん、晴香ちゃんとこの店員さん、英治ちゃんとこのお客様にアンケート取ってね。ここにいるメンバーと合わせて100人になるように調整したんだよ」
こいつ…こういう事にだけは用意周到だな。
ってか美来にも聞いたの?一応あいつクリムゾン側のミュージシャンだよ?
「って訳でみんな回答よろしくね。
来夢ちゃんも早く集計取って発表して帰りたいだろうし」
「ホントに…みなさんお願いします。早く帰りたいので…」
なるほど…仕事…ね。
チ、まぁいい。どうせこれは梓とのデートではなかった事にかわりはねぇ。
ならさっさと終わらせて帰るのがベストだな。
「ちょっと待て」
ん?タカ?
「日奈子?さっきからお前の話を大人しく聞いてた訳だが…まさか、マイミーちゃんのフィギュアポーズを考える会というのは嘘か?」
今更そこ!?
「さすがタカちゃんだね。その通りだよ。
いくら何でもそんなの素人にやらせる訳ないでしょ」
「チ、巧妙な手口だぜ。俺も危なく騙されかけたぜ」
いや、もうお前めちゃくちゃ騙されてたじゃねーか。
ニコニコしてたじゃん。もうそういうのいいからさっさと終わらせて帰ろうよ。
「…って言いたい所だったけどね、時間もないし。
ポーズ考えようって呼んだのは嘘。だけど、マイミーちゃんのフィギュアを造るのは本当。
もしこのForth Anniversary!!の企画が滞りなく終われば、サンプルはあげれないけど、企画の際に使ったマイミーちゃんの複製原画なら協力金の代わりにタカちゃんにあげるよ?」
「畏まりました、日奈子様。この企画、必ずや滞りなく終わらせてみせます」
安いなぁ…こいつ…。
「ねぇ、マイミーちゃんの原画って梓が描いてんだよね?」
「うん、そだよ」
「こんな企画しなくても梓に頼めば描いてもらえるだろうに…タカは本当にバカだな」
澄香、梓、翔子。俺は早く帰りたいんだ。
あんまり余計な事言うな…。
そうして俺達は日奈子が用意していたプリントをやる事になった。長かったなぁ、ここまで…。
・
・
・
「はいはいはい!来夢ちゃんが集計結果出してくれたよ!時間も無いしさっさと発表しちゃうよ!」
俺達はプリントに書かれた質問に回答し、来夢に提出した後は日奈子の計らいで飲み会を楽しんでいた。
…少しは梓と飲めた訳だし一応感謝はしててやるか。
「じゃあ、早速発表しちゃうね!
各項目で3位の人まで発表しちゃうよ。まずはファントムのバンドで一番上手いと思うボーカルからね!」
「おい、タカ。お前何で照れてんだ?」
「バッ!英治!べ、別に照れてないし!で、でもファントムのバンドで一番上手いボーカルって言ったら…15年前の事もあるし…その…(照れ照れ」
タカのやつ。
自分が一番上手いボーカルだと思ってんのか?
まぁ、タカは喉を壊したと言ってもそれなりに歌は上手い。パフォーマンスも最高だしな。
ちなみに俺もタカに投票したくらいだ。
…タカも自分に投票してたりしてな。
「ボーカル1位はFABULOUS PERFUMEのシグレちゃん!」
「ファビュ…」
やべぇ、時間止まっちまったぜ。
タカなんか思わずファビュとか言っちゃってるし。
なるほど、シグレか。確かにあいつの歌唱力はスゲェからな。
「じゃあ次は2位の発表ね~」
「ま、まぁ、シグレもな。大人気のバンドボーカルだしな。歌唱力スゲェし?パフォーマンスもかっこいいし?」
「大丈夫、きっと2位ははーちゃんだよ」
トシキ!止めてあげて!
「2位はLazy Windの架純ちゃん」
「あは、あはは…架純ちゃん、架純ちゃんな。うん、架純ちゃんも元プロだもんな。うん、うん」
タカの語彙力が死んでいる…。
てか架純が2位なの?Lazy Windのボーカルは俺より架純の方がいいって事?
「3位はBlaze Futureのタカちゃん」
「ヨッシャ!キタァァァァ!!」
タカ、スゲェ喜びようだな。
まぁ3位か。さすがっちゃさすがだな。
「じゃあ次はギタリストねー」
時間無いから展開早いな。
前半の俺の話が長過ぎんだよ。
「1位はevokeの結弦ちゃん」
なるほど、結弦か。
さすが雨宮さんとデュエルをして心が折れなかっただけあるな。
確かにあいつのギターテクは大したもんだ。
トシキと翔子からあいつに周りと合わせる姿勢を学べば、さらにレベルも上がるだろうぜ。
「2位はAiles Flammeの亮ちゃん」
「お?亮か?」
亮か。Ailes Flammeから上位メンバーが出ると嬉しくなるな。
浅井さんにギターテクを教わったと聞いているが、浅井さんとはまた違う音を奏で…
「3位はGlitter Melodyの睦月ちゃん」
まだモノローグ途中だったのに3位の発表だと…?
「くぅ~…睦月は3位か…」
あ?ああ、そうか。睦月はガキの頃から翔子が教えてんだっけか。
「じゃあ次ベーシス…」
次はベーシストか。
嫌だなぁ。聞きたくないなぁ。俺入ってるかなぁ…。
「……モノローグが落ち込んでも困るから次はドラマーにしま~す」
ちょっと待って!モノローグが落ち込んでも困るって何!?
モノローグって今回俺だよね!?俺が落ち込むの!?
俺、3位までに入ってないの!?
「ドラマーの1位はDivalの香菜ちゃん!」
あ、本当にドラマーからやるんだ?
「2位はCanoro Feliceの冬馬ちゃん、3位がNoble Fateの綾乃ちゃんだよ」
一気にいったな。そんなに時間ないの?
「お、おい、待ってくれよ」
「どしたの?英治ちゃん」
「いや、こんなの事聞くのは…ちょっとアレだと思うが、まどかは何位だったんだ?あいつは俺の後継者として…その俺の弟子の…」
「うん、何位かは教えない。
でもね、あたし達バンドマンの投票ではまどかちゃんの票は多かったよ。でも一般票がね~」
「一般票…?あ、そうか、あいつのドラムは」
「そ、自由な感じが持ち味だからね。ドラムの腕は良いと思うけどライブ中はアレンジ入れたり色々とー」
なるほどな。
それがあいつの持ち味だし、それが奈緒や盛夏やタカにはマッチしてるんだが、一般の奴らが聴くドラムとしては…って事は正確にパワフルなリズムを刻む香菜や冬馬、綾乃がトップ3ってのも頷ける話だな。
「そっか、悪かったな。日奈子」
「ううん、別に?みんな色々気になってはいると思うし。梓ちゃんからもなっちゃんは何位だったの?ってLINEめちゃくちゃ来てるし」
次はベーシストか…。
「ベーシストの1位は~…」
え?日奈子の奴何で俺をジッと見てるの?
まさか…期待していいのか!?
「Blaze Futureの盛夏ちゃん、せっちゃんだね」
「「ま、当然だな」」
「タカも梓も何であんたらがドヤ顔してんの?」
クッ…盛夏か…。まぁあいつは天才肌だしな。
「2位はDivalの理奈ちゃん、りっちゃんだね」
理奈か…。まぁ、あいつは氷川さんの娘だしな…。
あ、絶対3位俺じゃないわ。日奈子が笑いを堪えた顔でこっち見てるもん。
「3位はGlitter Melodyの美緒ちゃんでしたー!」
「あーはっはっはっは!残念だったな!拓斗!やっぱうちの佐倉の方が上だったな!」
クッ…翔子め…。
「いいのか?トシキが見てんぞ?」
「ハッ!?ト、トシキさん、ちが、ちがくて…」
「ホントに宮ちゃん残念だったよね、盛夏ちゃんに入れた俺が言うのもなんだけど」
え?トシキ?お前盛夏に入れたの?
「タカは3位に入って安心したけど、お前は残念だったよな。ま、俺もお前には入れなかったんだけどな」
英治…お前も俺に入れなかったの?
「トシキちゃんも英治ちゃんも!誰が誰に入れたのかは内緒なの!もう!だったらあたしも言っちゃうからね!」
あ?日奈子お前も俺に入れなかったの?いや、お前の場合は俺に入れてくれなかった方が、後が怖くないから安心だわ。
「中原 英治ちゃんがドラマーに入れた1票はBREEZEの英治ちゃんでしたー!投票数1票!」
「テメェェェ!日奈子!バラしてんじゃねぇよ!」
「え?英治くん、自分に入れたの?ファントムのバンドマンじゃないくせに?さっきのまどかちゃんの話は何だったの?妻としてめちゃくちゃ恥ずかしいんだけど」
「私も娘としてめちゃくちゃ恥ずかしいよ。お父さんは何を思って自分に入れたの?」
「いや!そこはノリとかよ!タカもトシキも拓斗も自分に入れたよな?な?」
「あ?俺は渉に入れたけど?可愛いし」
「俺はギタリストは今現時点の上手さは睦月ちゃんに入れたかな」
「俺はベーシストは盛夏に入れた。タイマンのデュエルならもしかしたら負けてたかも知れねぇしな」
「お、お前ら裏切り者ぉぉぉぉ!」
などとバカな話で4周年記念は終わった。
今までで一番内容の薄かった周年記念じゃねぇか?
そうして俺達はそよ風を後にするのだった。
今は梓の過去話の途中だし、いつんなったら本編が再開するんだろうな…。
「って待ってよ拓斗くん!勝手に終わらせないで!」
ん?梓?
俺達がそよ風から出て、今まさに解散しようとしている時、梓が俺に語りかけてきた。
「あー、このまま終わっちゃったらどうしようかと思ったよ」
「どうした梓?タカならもう帰ってしまうぞ?俺に二次会にでも誘えって事か?」
「二次会?いや、違うよ。あたしも帰ってから仕事あるし。だから今日はノンアルコールにしたしね」
ああ、そういや珍しく飲んでなかったな。
「はい、これ」
「ん?何だこれ?」
「え?ええ!?拓斗くん…今日あたしに弁当作って行くって日奈子に言われたんじゃないの?」
弁当?何の事だ?
『拓斗くんって何が好きだっけ?作って待ってるよ』
あ、あれ…の事か?
じゃあ今日スーパーで会ったのは…。
「日奈子がそう言って拓斗くんを呼んだって言ってたからさ。拓斗くんはいつも日奈子に騙されてばっかだし。いつもお世話になってるから…」
俺は梓から包みを受け取った。
この包みを開けたら…梓の弁当が?
「晴香ちゃんのご飯食べ馴れてるだろうし、お口には会わないかもだけど。あ、あたしはそれを言われてここに来たんだからね!」
そう言って、言うだけ言って梓は帰って行った。
内容的にはアレだったが、最高の周年記念になったぜ。
ありがとう日奈子。
・
・
・
「まさかあんたがヒトカラしてるなんてね」
「あ、あはは、私も…びっくりしたよ」
「まだ…人前で歌うのは苦手なの?」
「え…?あ…うん」
「…あたしのせいみたいなもんか」
「ち!違うよ!それは違う!私は昔から…」
「……」
「ホントに違う…から」
「……」
「…?どうしたの?ホントに違うよ?」
「あ、いや、待って。ちょっ…え?アレ…BREEZEとArtemisのメンバーじゃ…」
「え?BREEZEとArtemis?」
「間違いない、え?何でこんな所に?
いや、やっぱり偽者かな?15年前と同じ顔だし。さすがにあの頃から変わってないとかありえないもんね…」
「多分、本物だよ。だって…三咲さんも居るもん」
「三咲さん?あのBREEZEのチューナーだった三咲さん?」
「うん、間違いないよ。三咲さんだ。私に…」
「あの人が…天音に…」
「うん、私に射手座のレガリアを託してくれた三咲さんだよ」