バンやろ外伝 -another gig-   作:高瀬あきと

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第43話 バンドやろうぜ! to 澄香

「翔子ちゃん!何度教えたらわかるの!

そこはそうじゃないからっ!」

 

「え?そうなのか?」

 

「あはは、翔子はおバカだなぁ」

 

「笑ってる場合じゃないでしょ!梓ちゃんもここもここも間違えてるっ!」

 

「え?マジ?」

 

あたしの名前は木原 梓。

 

無事にあたし達のバンドに、日奈子がドラマーとして参加してくれる事になり、学校が終わった後の放課後、日奈子に生徒会の仕事やバイトがない時は、あたしと翔子は日奈子に勉強を教わっていた。

 

「うぅん…さっぱりわからねぇ…。何であたし勉強なんかしてんだろ…ギター弾きたい…」

 

「あたしも…勉強なんて受験の時にやりきったって感じだし…。作曲もしなきゃいけないのに…」

 

「これも瀬羽ちゃんにバンドに入ってもらう為でしょ?ってか、梓ちゃんも翔子ちゃんもよくこの学力でうちの学校合格出来たよね」

 

「あたしはボランティア部の活動どうこうで推薦枠だったしなぁ」

 

「澄香がうちの高校受けるって言うから、あたしもここにするって言ったら『梓には無理だよ』とか言われたから本気出した」

 

「なら梓ちゃんは今も本気出してよ…」

 

あたし達が何故、楽器の練習もせず勉強なんかをやっているのかというと、こういう理由があったのだ。

 

 

 

『なるほどね。瀬羽ちゃんは大学行きたいから勉強したくてって感じなのね?』

 

『梓から聞いた感じだとそんな感じだな』

 

『澄香から聞いた感じだとそんな感じだけど、あとバイトも頑張りたいって言ってた』

 

『こないだの学力テスト…確か澄香ちゃんは12位くらいだったかな?』

 

『え?瀬羽さんそんな頭良かったのか?』

 

『あたしも12位くらいだったよ。ドベからだけど』

 

『よし、ならこういう作戦でいこう!』

 

『さっすが日奈子!早速、瀬羽さんをバンドに入れる作戦を思い付いたか!』

 

『あたしも日奈子の作戦に賛成~♪』

 

『…2人ともちゃんと考えてる?

まぁ、いいや。あたしは学年1位の学力あるからね。このバンドに入ってくれたら、勉強も教えてあげるって特典を付けよう!』

 

『さっすが日奈子!もうこれは瀬羽さんもバンドに入るしかないな!』

 

『あたしも日奈子の作戦に賛成~♪』

 

『だから、瀬羽ちゃんにあたしが勉強を教えてあげるって特典が素敵な特典だと思ってもらえるように、今週末のテストで梓ちゃんも翔子ちゃんも、せめて学年100位以内になろうね?』

 

『『は?』』

 

『だってあたしが勉強教えても学力上がらなかったら意味ないでしょ?梓ちゃんと翔子ちゃんの成績を上げて、あたしの勉強法はすごいってアピールしなきゃ』

 

『日奈子、残念だ。他の作戦を考えよう』

 

『あたしもその作戦は諦めた方がいいと思うよ?確か翔子もあたしと変わらないくらいの順位だったはずだし』

 

『なんでよ!だから2人共あたしが勉強教えるから!

もし梓ちゃんか翔子ちゃんのどっちかが100位以内に入れなかったらあたしもバンド辞めちゃうからね!ぷんぷん!』

 

『えぇぇぇ~…何でだよ…』

 

『ドベから100位以内じゃダメ…だよね?』

 

 

 

というやり取りがあったからだ。

さすがに日奈子がバンドを辞めるというのは、葉月ちゃん達との約束もあるし冗談だとは思うけど、澄香にバンドに入ってもらう為に、今回だけテストを頑張る事にしたのだ。

 

「あんまり初日から詰め込み過ぎてもモチベーション上がんないだろうし、今日はここまでにしとこっか」

 

「やっと終わった…もうギター弾いていいよな?」

 

「うん、いいよ」

 

「こんな勉強したの受験以来やわ…ってまだ3ヶ月も経ってないけど…。あたしもギター弾いて…」

 

「梓ちゃんはダメだよ?」

 

「え!?何で!?イジメ!?」

 

「梓ちゃん、昨日作曲やってた時さ?『あかん!考えてみたら曲に合わせて歌詞書ける気がせえへん!まずは歌詞!歌詞に合わせて曲を作った方がいい気がする!』とか言ってたじゃん?」

 

「え?ああ、うん。いいなぁって思うフレーズにフンフンフ~ン♪って曲をちょっとずつメモしたりしながら、繋げていった方が何か作れそうな気がして…」

 

最初の頃は作詞も作曲もさっぱりで、とりあえず浮かんだフレーズに曲付けて繋げるってやり方で曲を作ってたんだよ。

馴れてきたら曲からでも歌詞からでも作れるようにはなったんだけどね。

 

「でしょ?だったら今はギター触るより歌詞書かなきゃダメでしょ」

 

「いや、でもちょっと。ちょっとくらい…」

 

「ダメでしょ」

 

「先っぽ。先っぽだけだから。マジだから」

 

「ダメでしょ」

 

「気分転か…」

 

「ダメでしょ」

 

「……」

 

「ダメでしょ」

 

あたしは日奈子の圧に負けて、この日は歌詞を書く事にした。

確かに早くライブをやりたいとは3人で言っていたから、曲作りも早目にやらなきゃいけなかったしね。

 

「わかったよ…今日は歌詞を書きます。

うぅ…さっきまで勉強してたのに、現国の続きをやってるみたいや…」

 

「英語でもいいよ?」

 

「英語で歌詞とか作れる気がしないわ…」

 

「じゃ、翔子ちゃんはあたしのドラムと合わせる練習しよっか」

 

「おっ、いいな!やろうぜ」

 

「うぅ…羨ましい…」

 

 

♪~

♪♪~

♪♪♪~

 

 

その日から週末までの間、あたしと翔子は勉強8に対してバンド練習2くらいの比率で勉強していた。

おかげであたしと翔子は見るからにやつれ、クラスメート達からは心配を通り越して怯えられてるくらいだった。

 

そして、テストの結果発表の日。

 

「梓ちゃん!翔子ちゃん!どうだった!?」

 

「ふっふっふ、あたしは98位…。どんなもんよ」

 

「あたしは梓にも勝ったぜ…87位だ」

 

あたしと翔子は何とか100位以内に入る事が出来た。

その日のテスト以降はダメダメだったんだけどね。

 

そう。その日のテスト以外はダメダメだったんだよ。

何故ダメになったのかというと、この後の澄香との話のせいなのだ。

ここからは澄香と日奈子のやり取りをご静聴下さい。

 

「瀬羽ちゃん!いや、今日からは澄香ちゃんって呼ばせてもらうよ!」

 

「え?月野さん?いや、全然澄香でもええけど、急にどうしたん?」

 

「見て!梓ちゃんと翔子ちゃんを!」

 

「梓と神崎さん?……梓は何か笑いながら虚空の何かを見つめて追っかけてるし、神崎さんは廊下なのに布団敷いて寝てるけど…」

 

「あ、あの2人じゃなくて、あの2人のテストの成績見ちゃってよ」

 

「ん?…うわっ、すご!神崎さんは普段の成績知らないけど、梓はめちゃくちゃ成績上がってるやん!」

 

「ふっふっふ、すごいでしょ~」

 

「あ~…あれはその代償か…」

 

「んでね、澄香ちゃん!」

 

「ん?何?」

 

「梓ちゃん達が成績上がったのはね!バンドやってるからなの!」

 

「は?」

 

「バンドやってるから成績上がったの!」

 

「いや、意味がわからへんねやけど…」

 

「だからね!梓ちゃん達とあたしは一緒にバンドをやる事になってね。学年トップのあたしが、梓ちゃん達にバンド練習の合間に勉強教えてあげてるから成績がものすごい上がったんだよ!」

 

「あ、そうなんや?月野さんは結局梓とバンドする事にしたんや?」

 

「え?そこ?いや、そうだけど梓ちゃんから聞いてないの?」

 

「ん~…登校もお昼も一緒やけど聞いてないなぁ。なら、月野さんも明日から一緒にお昼しようよ。神崎さんも一緒やし」

 

「あ、みんなお昼休み一緒なんだ?あたしお昼は学校に内緒で作った地下室でちょっと危ない研究してるから知らなかったよ」

 

「え?地下室?研究?」

 

「う~ん…研究も一段落してるし仲間外れみたいで嫌だから、あたしも明日からお昼は一緒しようかな?」

 

「うん、そうしなよ。大歓迎だよ」

 

「うん、じゃあ、そうする。

って、それは置いといて、このまま勉強頑張っていけば梓ちゃんも翔子ちゃんも大学進学も夢じゃないと思うの!」

 

「うーん…確かに梓もこの高校には受かった訳やし、このまま勉強頑張っていけば…でも、今は勉強頑張り過ぎたのかあんな感じなってるしなぁ…」

 

「でね!澄香ちゃんもバンドやれば一緒に…」

 

「ふふ、でも梓も大学行けたらいいよね。月野さんも大変だろうけど、また梓の勉強見てあげてよ」

 

「え?それはまぁ…でも、そうじゃなくてね」

 

-キ~ンコ~ンカ~ンコ~…ン

 

「あ、チャイムだ。教室戻らなきゃ。じゃあ、月野さんまたね。明日から一緒にお弁当食べようね」

 

「あ、澄香ちゃん待って…!」

 

澄香と日奈子の話はそこで終わってしまったらしい。

放課後に意識が戻ったあたしと翔子は、日奈子から『失敗しちゃった。テヘッ』と報告を受けた。

 

その日の放課後は澄香はバイトだったから先に帰り、あたしと翔子と日奈子はバンドの練習をしながら、どうやって澄香をバンドに加入させるかを話し合っていた。

 

「って事は瀬羽さんがバンドやらない理由って、大学行きたいからじゃないんじゃないか?いや、そりゃ大学に行きたいとは思ってるかもしんないけど…」

 

「でも考えてみたらうちの高校って割りと進学校だし、澄香ちゃんの成績なら大学も大丈夫そうなんだよね。よっぽど上を狙ってるなら頑張らなきゃだろうけど」

 

「まさか…ほんまはあたしとバンドやりたくないだけなんじゃ…」

 

「梓もネガティブになんなよ。…でもガキの頃から梓の隣でベースやってたんだよな?それで梓とじゃダメだわ。って思われてても不思議ではないか」

 

「翔子ちゃんも梓ちゃんが落ち込みそうな事言わないでよ。まぁ、BREEZEのタカちゃんの事があるから、梓ちゃんとは敵みたいなもんだし、梓ちゃんとはやりたくないって思ってるのかもしんないけど」

 

「うぅ…やっぱりあたしのせいなのかも…。ってか、あたしの事はともかく日奈子は何で澄香もタカくんを想ってる事を知ってるの?あたしはそれが怖い」

 

あたし達はああでもないこうでもない。ああなのかもこうなのかも。とか話をしていたけど、やっぱり澄香本人の気持ちはわからないままだった。

 

だけどこの時、あたしは初めて澄香をバンドに誘った日の事を思い出した。

 

「あ、そういや澄香ってバンドの話とかをご両親に聞かれるのを嫌がってたかも。本気のバンドはやれないとか言ってたし」

 

「あ?もしかしてそれってバンドやるのご両親に反対されてるとかそんなんじゃないか?」

 

「梓ちゃんは何でそんな大事な話を忘れてたの!?きっとそれじゃん!澄香ちゃんのお父さんとお母さんを説得出来たらいいんだよ!」

 

そう。澄香は第39話で『父さんと母さんの事もあるから…バンドはやれない』と言っていた。

 

確かに澄香のご両親を説得出来たら、澄香もバンドをやってくれるかもしれない。

 

あたし達はそう思い、早速その日の夜、澄香の家へと3人で向かった。

 

 

「ん?梓?神崎さんも月野さんも?」

 

澄香の家の前に着いた時、ちょうど澄香もバイトが終わって帰宅してきた所だった。

 

「澄香!」

 

「瀬羽さん!」

 

「澄香ちゃん!」

 

「え?何?」

 

「「「バンドやろうぜ!」」」

 

「なっ!?」

 

「「「バンドやろ…」」」

 

「待って待って待って!!声が大きい!ちょっとこっち来て!」

 

あたしと翔子と日奈子は、澄香の家の前で大きな声でバンドやろうぜ!と叫んだ。

そしてそれを制止してきた澄香。

 

やっぱり澄香は家の人にバンドの話を聞かれたくないようだった。

 

「ちょっと…3人共こっち来て」

 

「澄香、あたしは澄香とバンドやりたい。澄香にベースをやってほしい。だからお願い!」

 

「ちょっと梓、前にも言ったやろ…家の前でバンドの話は…」

 

「瀬羽さん、あたしからもお願いだ。瀬羽さんにあたしらのベースになってほしい。瀬羽さんとは最近よく話すしさ。あたしも瀬羽さんとバンドやりたいって思ってる。それとも瀬羽さんはベース嫌いなのか?」

 

「神崎さん…ベースは好きだよ。好きだから今も弾いてるし…」

 

「澄香ちゃん!あたし達のバンドでベースやってくれたら、あたしは梓ちゃんじゃなくて澄香ちゃんを応援するよ!タカちゃんとの恋愛!この条件でどう!?」

 

「なっ!?何で月野さんがタカの事を知ってんの!?てか、3人の中で1番姑息なお願いの仕方やけど!?ちょっと悩んじゃったけど!」

 

「え?澄香それで悩んじゃったの?てか、日奈子?澄香を応援するって何?」

 

あたしはうっかり日奈子の頭を掴んで持ち上げていた。

 

「痛い痛い痛い!梓ちゃん!ちょっとマジで痛い!応援だけだから!いや、ほんと…ちょっ、頭を掴む力が強くなってる!ごめんなさい、ほんとごめんなさい。もうしませんから!別の方法考えますから!痛いので離して下さい!」

 

あたしはそれを聞いて安心し、日奈子の頭から手を離した。

 

「…タカとの事を応援するって聞いてバンドやろっかな?とか思っちゃったけど、ただの気の迷いだから。私はバンドはやれないの。梓も神崎さんも月野さんもわかって。お願いやから。

今の私にはタカとの事を応援してくれる以上の魅力的な条件もないだろうし…(ボソッ」

 

「澄香?聞こえてるよ?」

 

澄香を説得する事に失敗したあたし達は、やっぱり澄香のご両親を説得するしかないのかな?と思っていた。

 

「澄香、ご両親の事があるから…バンド出来ないと思ってるの?」

 

「梓…。

…うん。正直そうだよ。それが理由。

私はベースが好きだし、ほんとはバンドやってみたいと思ってる。ずっとそう思ってベースやってきてたし。

それも梓と一緒のバンドなら…こんな嬉しい事ないよね」

 

「澄香…」

 

「でも私は大学に行きたいと思ってるし、さっきはタカと大学を天秤にかけてタカの方がいいかも?とか思っちゃったけどさ。やっぱり大学に行きたい気持ちも本気だから。みんな、ごめん!」

 

澄香の気持ちを聞いて嬉しかった。

澄香はベースも音楽も好きで、バンドをやってみたかったって、本当はバンドをやりたいんだって。

タカくんの所はスルーした。

 

そうスルーしたのだ。

この時に本当は気付くべきだったのだ。

 

あたしは澄香にご両親の事があるからバンドをやれないのかと聞いた。

そして澄香はそれを肯定した。

 

だけど澄香はその後、大学に行きたいと言ってきた。

ご両親の事を聞いているのに大学に行きたい?

 

ご両親の事が理由で、大学に行きたいからバンドをやれない。

 

今思うと何だか話がちぐはぐだ。

 

「わかったよ!梓ちゃん!翔子ちゃん!プランBでいくよ!」

 

「う、うん!」

 

「了解だ!瀬羽さん、ごめん」

 

「プランB?…って、神崎さん!?」

 

翔子は澄香を羽交い締めにして、あたしと日奈子は澄香の家に「お邪魔します」と言ってから靴を玄関にちゃんと並べてから突入した。

 

「なっ!?何で梓と月野さんが私の家に!?ちょ、神崎さん離して!」

 

「悪い。瀬羽さんも本当はバンドやりたいって気持ちはわかったからさ。今から梓と日奈子が瀬羽さんの親父さんとお袋さんを説得しに…」

 

「父さんと母さんを説得!?待ってよ!バンドやらせてやれって説得するつもり!?私の話ちゃんと聞いてた!?」

 

「聞いてたよ!聞いてたから親父さんとお袋さんに説得…」

 

「だから!何って説得すんの!?」

 

「は?だからバンドやらせてやれって…ん?そういや瀬羽さんって…バンドやりたいけど大学に行きたいって…あれ?親父さん達から大学行く為にバンドするなって言われてる訳じゃない…?あれ?何で親父さん達がバンドやれない理由なんだ?」

 

翔子もそのちぐはぐな話に気付いたようだった。

そして、ちょうど澄香のご両親を説得したあたしと日奈子は、澄香のご両親と一緒に家から出て来た。

 

「澄香…バンドを…バンドをやりたいと思っていたとは…お父さん感動のあまり涙が止まらないぞ」

 

「お母さんも嬉しいわ。澄香、バンドはやらないとあれだけ言ってたのに。私も泣いてる場合じゃないわね。今からお赤飯を炊くわ」

 

「あかん…終わった…」

 

そう言って項垂れる澄香。

そう、澄香のお父さんとお母さんの台詞からもわかるように、澄香はバンドを反対されていた訳じゃなかったのだ。

 

「ん?あれ?えっと…瀬羽さん?どういう事なんだ?」

 

「聞いての通り…。私が父さんと母さんに反対されてたのは大学への進学。バンドをやってメジャーデビューしてくれって…」

 

「は!?何か変だと思ってたら、そういう事だったのかよ!」

 

澄香がご両親から反対されていたのはバンドではなく、大学への進学だった。

 

バンドをやっていた訳じゃないけど、音楽やバンド、ライブが大好きだった澄香のお父さんとお母さん。

2人共あたしのお母さん達のバンドの大ファンだったらしい。

 

ある日、なっちゃんの家のおっちゃんにベースを教えてもらえる事になった澄香。

澄香には楽器の声を聴くチカラもあったし、ベースの才能があった。

 

だから澄香のご両親は澄香に、あたしのお母さん達が果たせなかったメジャーデビューという夢を勝手に託し、大学には行かず本格的にバンドをやるように言っていたようだった。

 

澄香自身もベースも音楽も好きだし、いつかバンドをやりたい。ライブとかもやってみたい。と思っていたそうだけど、簡単にメジャーデビュー出来る程世の中甘くないとも思っていた澄香は、大学には行っておいた方がいいだろうと思っていたらしい。就職もしといた方がいいし。と幼い頃から思っていたらしい。

 

だから大学進学に反対されているから、高校になったらバイトを頑張って学費を貯めて、大学に進学してからバンドをやろうと思っていたそうだ。

 

澄香も本当はあたしとバンドをやりたいとずっと思っていたから、あたしが高校になった途端にバンドをやるとなった時は本当はもう少し待って欲しいと思っていたそうだ。

だけど、それはせっかく音楽が嫌いだったあたしが、また音楽に興味を持った事に対して水を差す事になるかもしれない。タカくんへの恋を邪魔する事になるかもしれない。思って自分の気持ちを押し殺していたらしい。

 

これ聞いたのはもうArtemisを解散してからだったけど、聞いた時は嬉しかったなぁ。

 

「せっかく…父さんも母さんもメジャーデビュー諦めてくれて…大学行く為にバイトも勉強も頑張ってたのに…」

 

「あ~…そうだったのか。瀬羽さん、なんかごめん」

 

「澄香。大学の事は大丈夫だよ」

 

「え?大丈夫?」

 

「あたしがバッチリ説得したから」

 

「月野さんが?」

 

そうだったのだ。

日奈子は澄香の家に来てからのやり取りで、澄香が反対されているのは大学への進学であって、バンド活動じゃないと見抜いていたのだ。

 

あたしと日奈子が澄香の家に入って、澄香のお父さんとお母さんの前に行った時の事。

 

 

『おじさん!おばさん!』

 

『やぁ、梓ちゃん。…と、えっと』

 

『ほら、お父さん、あの子神社のとこの』

 

『ああ!あの神社のな。確か日奈子ちゃんやっけ?』

 

『こんばんは!』

 

『おじさん!そんな事より澄香の事なんやけど!』

 

『澄香?今はまだバイトから帰ってきとらんよ?もう少しで帰ってくるんちゃうかな?』

 

『おじさん!おばさん!お願いします!澄香の…澄香のバンド活動を許して下さい!澄香はバンドがやりたいんです!』

 

『澄香が…!?バンドをやて!?』

 

『そんな!?あの子がバンドを!?』

 

『そうなんです!だから、あたしに澄香とバンドをやらせて下さい!!』

 

『澄香が…!?遙那さんの娘さんである梓ちゃんと!?』

 

『そんな!?あの子が梓ちゃんと一緒に!?』

 

『はい!だから…!』

 

『だから、澄香ちゃんに大学の進学を許してあげてくれませんか?』

 

『日奈子の言う通り!澄香を大学に……へ?大学?』

 

『あたし達のバンドはエクストリームジャパンフェスの優勝を目標にしてるんです!』

 

『エクストリームジャパンフェスで優勝!?』

 

『あの優勝したらメジャーデビュー出来るというあの!?』

 

『そんなんですよ。ね?梓ちゃん』

 

『え?うん、まぁエクストリームジャパンフェスでの優勝があたしらの目標やけど…』

 

『つまり!澄香ちゃんがあたし達とバンドをやれば、澄香ちゃんもエクストリームジャパンフェスで優勝しちゃう事になります!』

 

『澄香が…!?エクストリームジャパンフェスで!?』

 

『優勝してメジャーデビュー!?』

 

『え?え?おじさん?おばさん?日奈子?』

 

『最高じゃないか!これは大学なんか行かずに本格的にバンドを…』

 

『そうね!せっかくメジャーデビュー出来るんだもの』

 

『そこです!』

 

『『『そこ?』』』

 

『澄香ちゃんはー、大学に進学したいから、バイトも頑張らなきゃいけないんですよねー。ああ、可哀想な澄香ちゃん。大学の進学さおじさんとおばさんに許されてれば、バンドもやれるのになー』

 

『な、なんやて!?』

 

『澄香は大学に行きたいから…だから、あの子は…』

 

『おじさんとおばさんは澄香ちゃんにバンドやってほしくないですか?(ニコッ』

 

 

「澄香、お父さんが悪かった。大学の進学も許す。学費もちゃんとお父さんが出してやる。そんくらいしか出来んけど、バンドを頑張ってみてくれんか?」

 

「え?大学行ってええの?」

 

「うむ、澄香がお父さん達の夢を頑張ってくれんねんから、お父さん達も澄香の夢を応援せなな」

 

「大学…行ってもいいなら、やりたい。私バンド、梓達とやりたい!」

 

「やったね!梓ちゃん、翔子ちゃん!」

 

「でも日奈子すごいね。澄香のお父さんとお母さんを説得しちゃうなんて」

 

「まさか大学の進学反対されてたとはな。うちは親父にもお袋にもせっかくこの高校に入れたんだから、大学も頑張って行けって言われてるしなぁ」

 

「え!?翔子それマジ?」

 

「翔子ちゃんの今の学力じゃ無理じゃない?」

 

あたし達が澄香ファミリーを見守りながら話していると…

 

「梓!翔子!日奈子!」

 

「澄香?」

 

「瀬羽さん?翔子って…あ、あたしも澄香って呼んでいいかな?」

 

「うん!澄香ちゃん!」

 

「い、今更やけどさ…私、みんなとバンドやりたい。梓と翔子と日奈子のバンドに私を入れてほしい」

 

そう言って澄香は頭を下げた。

 

「澄香、頭をあげて」

 

「そうだぜ澄香。今更とかないしな」

 

「そうだよ。澄香ちゃん、こういう時は頭を下げるんじゃなくてさ」

 

「うん、そうやね。

梓、翔子、日奈子…バンドやろうぜ!」

 

「「「うん!バンドやろうぜ!」」」

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