ワイワイガヤガヤ…
雨の日にお母さんの入院していた病院の裏庭で演奏をしてから数日経った頃、お母さんは亡くなった。
あたし達の村のちょっと広めの公民館で、今はお通夜が執り行われている。
なっちゃんに過去のお話をしてあげてるのに、今はって表現はおかしい気もするけど…。
お母さんのお通夜にはたくさんの人が来てくれていた。
山の近所の人達も、町の人達もたくさん来てくれていた。
あたしも会った事がない人がたくさん居て…。
あたしは落ち込んだり泣いたりする暇もないくらい、忙しく料理やお酒を運んだりしていた。
お通夜やお葬式の手配は、ほとんどおっちゃんがやってくれたんだけどね。
「梓、ずっと動きっぱなしで疲れたやろ?ちょっと休んで何かお腹に入れた方がいいよ?」
「あ、うん。澄香もずっと動いてくれてるやん。澄香も休んだ方がいいよ」
「あたしも疲れたぁ…。でも、翔子ちゃんの方が別の意味で大変かも…」
澄香と翔子と日奈子もあたしを手伝ってくれていた。
澄香と日奈子はあたしと一緒に料理やお酒を運んだり、何か足りなくなりそうなら日奈子が何かのツテで連絡して届けてもらったり。
さっきも言ったように、お母さんのお通夜にはたくさんの人が来てくれていた。
そして世間話を雨あられの如く振ってくる人達。
人見知りのあたしはATフィールドを展開していたのだけど、さすがにそれはダメだろうと翔子がみんなの世間話の相手をしてくれたのだ。
その為、翔子はたくさんの人達の会話相手になっていたのだ。
「てか、梓も澄香も日奈子も少し奥の部屋で休んでこい。ああ、翔子も連れてな」
「おっちゃん…でも…」
「明日もあるんやし、後は俺ら大人に任せてゆっくりしとけ」
「梓ちゃん、おっちゃんの言葉に甘えよ?あたしお腹空いたし」
「うちの父さんと母さんも仕事終わったみたいで、もう少ししたら手伝いに来てくれるしさ。私らは今日は休ませてもらおうか」
「澄香…うん、そうだね」
あたし達は少し休憩させてもらう事にして、澄香と日奈子には奥の部屋に先に行ってもらい、あたしは翔子に声を掛けた時だった。
「え!?梓!?翔子も!?」
「「え?」」
あたし達に声を掛けてきたのは…。
「加奈子ちゃん?」
「加奈子?何でここに…?」
そこに居たのは加奈子ちゃんだった。
加奈子ちゃんには、お母さんの具合が悪いとは伝えていたけど、亡くなったことは伝えていなかった。
だから加奈子ちゃんがお母さんのお通夜に来たのはびっくりしたよ。
「何でここにってのは私の台詞……あ、木原さん…そっか、梓のお母さんなんだ…」
「え?うん、お母さん…ずっと体調悪いって言ってたでしょ?つい先日ね。それより加奈子ちゃんは何でここに?お母さんが亡くなった事は言ってないのに…」
「うん…お父さんに連れられてね。私も天秤座のレガリアを受け継いだから…」
「あ、そうか。加奈子の親父さんってレガリア使いだったんだっけ」
お母さんが亡くなった時、おっちゃんはレガリア使いに連絡をしてくれたらしい。
連絡が取れなくなっていたレガリア使いも居たみたいだけど…。
連絡が取れた加奈子ちゃんのお父さんは、お母さんのお通夜に駆けつけてくれた。
「はじめまして。遙那さんとは同じレガリア使いとして、一緒に音楽をやっていた桑原といいます。…まさか、遙那の娘さんが加奈子の友達だったとは…」
「あ、あの…はじめまして。えと…木原 遙那の娘の梓といいます」
そして加奈子ちゃんと加奈子ちゃんのお父さんは、お母さんの納棺されている棺の前で軽く挨拶をして、加奈子ちゃんのお父さんはおっちゃんと、加奈子ちゃんはあたし達と一緒に話していた。
「まさか梓のお母さんがレガリア使いだったなんてね」
「うん、別に内緒にしてた訳じゃないんだけどね。あたしはレガリアをお母さんから受け継いだ訳じゃないし」
あたし達がレガリアの事やお母さんの事を話していると…。
「はるなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
一際騒がしい人が公民館に入ってきた。
その人はお母さんの棺を見た途端、棺に向かって走って来て、棺に抱きつきながら泣いていた。
「何で先に逝っちゃうんだよぉぉぉ。ずっと…ずっと一緒って言ってたじゃんかー!うわぁぁぁぁん!!」
「
「
後から入って来た藍と呼ばれる人は、足が悪いようで杖をつきながら歩いていた。
香織と呼ばれる人も藍って人もあたしの知らない人だった。
「遙那、久しぶりだっていうのに…。私と香織だけでごめんね。ありさはどこに居るのか連絡取れなくてさ…」
「お前らだけでも来てくれたのは良かった」
「あ?龍馬…久しぶり」
どうやら2人ともおっちゃんの知り合いらしかった。
そして2人は加奈子ちゃんのお父さんとも挨拶をしていた。
その後紹介されたんだけど、香織さんというのは牡羊座のレガリア使いで、藍さんというのは獅子座のレガリア使いの人だった。
香織さんはずっと昔にレガリアは後継者に託していて、藍さんは今も現役でレガリア使いとして、音楽に携わっているらしかった。
「すげぇな。今、ここにレガリア使いだった人らが4人も居るのか…」
「まぁ、お母さんは死んじゃってるけど…」
「現役のレガリア使いが加奈子と藍さんの2人も居るんだもんね」
「わ、私はお父さんに比べたらまだまだだし、娘だからレガリアも継承させてもらったって感じだし…」
「レガリアなんてお婆ちゃんのお伽噺だと思ってたのに、まさか本当に実在するなんて、あたしは加奈子ちゃんの持ってた本物のレガリア見た時びっくりしたけどね」
あたし達はレガリア使いの人達と挨拶をした後、奥の部屋でArtemisのみんなと加奈子ちゃんと5人で会話を再開した。
「でも…嬉しいな」
「あん?嬉しい?」
「どしたの梓?」
「お母さんが死んじゃったのは悲しいけどさ。
今日はお母さんの訃報を受けてたくさんの人が来てくれた。村の人も町の人もレガリア使いの人達も。あたしが知らない人達もたくさん」
「そうだね、梓のお母さんには私はお会いした事ないけど…」
「うん、おばちゃんはこんなにたくさんの人達から慕われてたんだね」
「うん。お母さんの事はすごく誇りに思うよ」
-ガラッ
「あー、梓。ちょっとええか」
「おっちゃん?」
あたし達が会話をしていると、おっちゃんがあたし達の居る奥の部屋へと入ってきた。
「Artemisも全員揃っとるしちょうどええな」
「あ、私は席を外した方がいいですか?」
「いや、加奈子ちゃんもここにおってええよ。
加奈子ちゃんのお父さんも、まだあっちでみんなと話しとるしな」
そしておっちゃんは小さな箱を取り出して、あたしの前に置いた。
「…これはお前らが遙那の病院でライブやった時にな。遙那から梓に渡してくれって頼まれたもんや」
「お母さんから?」
「ああ。早速開けて「うわぁ!すごく綺麗なピアス!」みろって言いたかったけど、言いきる前に開けよったか」
「あー…でもあたしピアスあけてないしなぁ。てか、うちの学校ピアスして良かったっけ?」
「確かうちの学校はピアス禁止だったと思うよ?」
「んだよ。せっかく梓のお袋さんからのピアスなのにうちの学校は禁止なのかよ」
「大丈夫だよ。あたしが理事に話してピアス許可にしとくよ」
「日奈子って何者なん?」
あたしはお母さんからの形見だと思ってピアスをずっと眺めていた。
綺麗な石の付いたピアス。
だけどお母さんってピアスしてたっけ?何でピアスが形見なんだろう?と不思議に思っていた。
「梓。それは魚座のレガリアや。
遙那がお前の歌を、Artemisの音楽を聴いて、お前に受け継いで欲しいから渡してくれって頼まれたもんや」
「「「「レガリア!?」」」」
「元気になってから…遙那から梓に渡せって言ってたんやけどな。結局、俺から渡す事になってしもた」
「お母さんがあたしに、魚座のレガリアを…?」
「ああ、心配すんな。
遙那は自分はもう長くないからと思ってお前に託したんやない。元々…お前がArtemisを始めた時は、遙那はお前に魚座のレガリアは継承させないつもりやったからな」
「え?どういうこと?」
「話せば長くなるんやけどな…」
おっちゃんの話によると、お母さんは歌えなくなってからずっと自分のレガリアを継承させたいと思う人を探していたらしい。
その時におっちゃん達から離れ、1人で日本中を周っていたらしいんだけど、その際に体調は悪化し、レガリアを狙うバンドマンに襲われ、お父さんと出逢った。
お父さんと出逢ってからは、しばらく平穏に過ごしていた。
そしてあたしが産まれ、お母さんはあたしに魚座のレガリアを継承してもらおうと、その時は思っていたらしい。
お父さんと敵対し、お父さんと別れてこの村に戻った後、成長したあたしの歌を聴いて、澄香とのセッションを見て、大神さんと話をして、レガリアをあたしに継承してもらいたいって気持ちはどんどん強くなっていったみたい。
だけどあたしは成長するにつれ、音楽を嫌いになり、音楽から離れていった。
それからレガリアはあたしには相応しくないと思ったんだって。
その時からは、自分がレガリアの継承者を見つけだせなかった場合は、おっちゃんに継承者を見つけてもらうようお願いしていた。
それから数年間、おっちゃんも認めるような人は現れなくて、あたしに音楽をまたやらせてみないかって話をした時に、あたしがたまたまその話を聞いて、BREEZEと出会い、音楽をまた好きになって、あたしはArtemisを始めた。
でも、お母さんはそれでもあたしにレガリアは相応しくないって、レガリアは託せないって思っていたみたい。
おっちゃんも何度かあたしに託すよう言ってたらしいんだけど、頑なに断っていたんだって。
そして、お母さんが病院であたしの歌を、Artemisの音楽を聴いた時に、お母さんはあたしの音楽への想いが、歌詞や音楽に乗って、お母さんに届いた事を実感し、
あたしの歌と音楽はレガリアを継承するに相応しいと思ってくれた。
えへへ、それをおっちゃんから聞いた時はすごく嬉しかったよ。
「遙那はな。お前の歌には魚座のレガリアに適したチカラがあるって確信したそうや」
「レガリアに適したチカラ…?」
「ん?ああ、チカラの事は説明はせぇへんけどな。チカラに囚われても…な」
「いやいやいや。おっちゃんちょっと待ってよ。
チカラの事は説明しないって、めちゃくちゃ気になるし、チカラに囚われてもとか、あたしの中二心が疼きまくるワードやんか。詳しく教えてよ」
「そうだぜ、師匠!梓の歌にそんなチカラがあるってんなら…」
「わ、私も知りたいです!私は父さんから天秤座のレガリアを受け継いだだけで、そんなチカラの話とか…」
「そういや射手座は『輝星』で蠍座は『蠱毒』だっけ?あ、しまった。この頃のあたしはチカラとか知らないはずだった…!」
「日奈子は何を言ってるの?」
「まぁ待て、ちゃんと1人ずつ答えたるから」
おっちゃんはそう言ってからタバコに火を着けた。
そして少しの間。
おっちゃんは何を話そうか考えているのかしばらく黙った後、タバコの火を消してあたし達に話してくれた。
「まずは梓やな。確かにチカラとかお前の好きそうな中二な話や。でもな、そのチカラを誰にも教わらずに自覚して使えるようになる方が…かっこよくないか?」
「ハッ!?た、確かに!」
「翔子。お前はレガリアを継承した梓のバンドのギタリストや。梓にどんなチカラがあるのか、魚座のレガリアにどんなチカラがあるのかは、お前が梓と共に見出だすべきちゃうやろか?」
「…くぅ、さすが師匠!かっこいいです!」
「そんで加奈子ちゃんは、お父さんがまだ伝えてない事を俺から言う訳にはいかん。お父さんは加奈子ちゃんが自分で見つける事を期待しとるんちゃうかな?」
「私が自分で…?そっか、そういや父さんも言ってた…。レガリアを使いこなすのか、継承者を見つけるかは私次第って…」
「あー…そんで日奈子な。
何でお前が『輝星』やら『蠱毒』やらを知ってんか不思議やけど…。そもそも射手座の『輝星』は大神っちゅーヤツの周りにみんなが集まるからそういうチカラや言われただけ。蠍座の『蠱毒』もそうや。足立ってヤツがそういう風にチカラを使ったからや。射手座のチカラも蠍座のチカラも根本的には別物や」
「え?そうなの…?あんまりメタな事は言いたくないけど、レガリアのチカラとは違うんだ?」
「違う…とは言い切れないんやけどな。まぁ、それもお前らが見て感じるもんやと俺は思う…。そんで澄香…」
「あ、私?な、何かな?」
「お前がこん中じゃ一番まともやから言っておく。
レガリアのチカラは誰にでも使えるもんやない」
「あ、ああ、まぁ、継承者ーとか受け継ぐーとか言ってるし、そんやもんやと私は思ってるけど…」
「けど逆にや」
「逆?」
「さっき日奈子も言ってたように射手座には『輝星』、蠍座には『蠱毒』ってチカラがあると今は言われとる」
「ああ、日奈子の言う事やし何となく聞き流してたんやけど…」
「レガリアのチカラを使える者は、そのチカラを別物に変えて使う事も出来る」
「は?それってどういう…」
「お前は賢いから科学もわかるよな?単純に考えたらええわ。
仮にレガリアに火を着けるチカラがあったとした、そのチカラを使えば、暗がりに明かりを灯す事も、炎にする事も、爆発させる事も、大気中の酸素を失くすまで燃え続ける事も出来るっちゅー事や。チカラってのはほんの少しの作用で色々変わる」
「おっちゃん…それって…」
「だから…チカラの説明は出来へん。それをどういう使い方をするのかは、チカラを使える使い手次第やからな」
その後もあたし達はレガリアだとか、次のライブはどうしようとか、お母さんに魚座のレガリアを受け継いだ感謝の気持ちを伝えるべきかとか…。
そんな話をしながらあたし達は次の日に備えて寝る事にした。
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そして次の日。
予定通りお母さんの葬儀は執り行われて、みんな最期の挨拶を…と、お母さんの棺に花を手向けていた時だった。
公民館の前にすごく大きな車が停まり、その後部座席から男の人と女の人が降りてきた。
その2人は公民館の前で挨拶をしているあたし達Artemisの前まで来て…。
「ずいぶんと大きくなったものだな。私は海原 神人。梓、君の父親だ」
「ごめんね、おじさん。あたしは日奈子。梓ちゃんはこっちだよ」
お父さんは初見であたしと日奈子を間違えていた。
そして『大きくなった』と言われたちびっこ日奈子はご満悦の表情だった。
「なるほど。こっちの娘だったか。確かに遙那の面影があるな。私は海原 神人。梓、君の父親だ」
「お父…さん…?」
「この人が…梓の…?」
「そうだ、梓。せっかくこうやって会えたんだ。ちょっと聞きたいのだが、お前は音楽はやっていないのかね?」
「え?音楽…?」
あたしはお父さんに…。
海原に音楽をやっているのかと問われ、どう応えるべきかを迷っていた。
お母さんの話では、海原はクリムゾンミュージックの傘下であるクリムゾンエンターテイメントという会社で、自由のない完璧な音楽を推奨している派閥だ。
歌えなくなったお母さんは海原に救われはしたけど、結局レガリアを誰にも託さなかったお母さんは海原に切り捨てられた。
あたしは『お父さんに音楽をやっている』事を伝えるか、『海原には音楽をやっていない』と伝えるのかを迷って応えられないでいた。
そんな時に海原の後ろにいた女の人があたしと海原の間に入ってきた。
「父さん。梓は音楽なんてやっていないですよ。
私はクリムゾンエンターテイメントの関西進行の責任者。
だから言えます。梓は音楽はやっていません」
その女の人っていうのはあたしの姉であり、Blaze Futureのベーシストであるせっちゃんのお母さんの聖羅だったんだけど…。
「梓、君は覚えていないかも知れないが、彼女は君の腹違いの姉、聖羅だ」
「そんな女に私の紹介は結構です。
それに…ふふふ。仮に梓が音楽をやっていたとしたら、この私の耳にも入らないようなミュージシャン。私達クリムゾンエンターテイメントの下っ端にもならないようなゴミですわ」
聖羅の第一印象は最悪だった。
あたしはそんな聖羅の言葉にカチンときてArtemisの事を言ってやろうと思ったんだけど…。
「父さん、私はこの機会を活かして関西のミュージシャンを、クリムゾングループの傘下に入れてまわろうと思っています。色々と忙しいのでこれで失礼します。
父さんも早く関東に戻らなくてはならないでしょう?」
「おいおい、聖羅。我が娘とはいえその言葉はいただけないな。遙那も少しの間ではあるがお前の母親だった女性だ。お礼の1つでもしてやるべきだろう」
お礼の1つでも…?
「私の母さんは亡くなった私の実の母親だけです。こんな女、私の知ったところではありません。
…むしろ不愉快です。私はもういいでしょう。私は先程も言ったように1分1秒も惜しい。父さんも早く関東に戻られるよう…」
そう言って聖羅はお母さんの顔を見る事もなく帰って行った。
待たせていた車には乗らず、公民館の脇に停まっていたタクシーで。
「やれやれ、せっかちな娘だ。誰に似たのやら。
聖羅は行ってしまったが私は献花はさせてもらおう」
あたしは悔しさと寂しさと、何とも言えないような感情が渦巻いて何も言えないでいた。
こんな人達があたしと血の繋がっている父親と姉なのかと…。
海原がお母さんの棺の前に行き、お花を棺に入れようとした時、
「愚かな女だ。私の元に居ればこんなに早く逝く事もなかったろうにな」
あたしはその言葉にブチ切れて、後ろから思いっきり蹴り飛ばしてやろうと、助走をつけて海原に向かって行った。
-つぅ…
「え?涙…?」
海原の頬につたる1滴の涙。
その時は何の涙だったのか、もしかしたら涙じゃなかったんじゃないかと思ったけど、あたしは海原を蹴り飛ばす事は出来なくなっていた。
「さて、挨拶は終わった。私は帰らせてもらうよ。
梓、君が音楽をやっていなくてとても残念だ。
だが、もし音楽をやろうと思ったらここに来なさい。待っている」
海原はそう言ってあたしに名刺を渡し、車に乗って帰って行った。
そういえば余談だけど、お母さんの葬儀には大神さんと氷川さんも来てくれた。
大神さんはあたし達に少し挨拶をした後、カップラーメンの大盛をお母さんの棺の前に供え『あん時のおにぎり!めちゃくちゃ美味かったです!』と言って拝んだ後、『すみません、お湯貰っていいですか?』と言って、カップラーメンにお湯を注いで3分待った後に自分で食べた。
『やっぱここは山の上だから移動が大変っすよね。町でトンカツ定食大盛食べて来ましたけど、ここまで歩くと腹が減って腹が減って…』と言い訳をしていた。
氷川さんは泣きながらあたし達に謝っていた。
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お母さんの火葬も終わり、公民館からお母さんはやっとあたし達の家に帰ってきた。
澄香達も自宅に戻ったから、この広い家にあたしは1人。
一気にお母さんを亡くした寂しさと、父親と姉があんな人だったという事があたしにのしかかってきて、あたしは1人で泣いていた。
おっちゃんにはこれからは水瀬家で一緒に暮らそうと提案されていたけど、お母さんと過ごした家を今は離れたくなかったし、これから成長していくなっちゃんの貞操を奪ってしまう訳にはいかないという想いから、あたしはこれからも自宅で暮らしていくと決めた。
「お母さん…寂しいよ。
お父さんもお姉さんも…やっぱり音楽なんか…。
…あれは…涙?だったのかな?それともあたしの気のせい?」
-グゥ~
「クッ…悲しくても寂しくてもお腹は空くなぁ。これが生きるって事か…」
お腹が空いたあたしは何か軽く作って食べようと思って立ち上がった。
-ザー…
「ん?雨?
いつの間にか雨降ってたんや…。
雨か、お母さんに…あたし達の歌を聴いてもらった日も雨降ってたよね…」
あたしは雨が降って来たことに気付いてなくて、裏の雨戸を閉めとこうとした時、庭に誰かが居る事気付いた。
「ひ、ひぃぃぃぃ!!?だ、誰か、誰かおる!?誰!?ま、まさかお化け!?」
その人をよく見ると何かうずくまっているようだった。
お化けじゃなさそうだ。
あたしはお化けじゃないならぶん殴ればいいと思い、部屋の電気を点けて庭に居る人をよく見てみた。
「…あの人…お姉さん?」
庭に居る人は聖羅だった。
雨の中、あたしの家に向かって土下座していた。
「め、めちゃくちゃ雨降ってんのに!」
あたしは急いで聖羅に駆け寄った。
「ちょっと!あんた何しとるん!?」
「梓…さん…?ごめんなさい…ごめんなさい…」
聖羅は涙をボロボロと溢しながら、あたしに謝ってきた。