バンやろ外伝 -another gig-   作:高瀬あきと

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バンドやろうぜ!ライブイベント「Christmas Duel Carnival」Blu-ray&DVD発売決定!!
発売日は2022年12月21日!!!!
本当におめでたいヽ(´∀`≡´∀`)ノ

と、いうわけで2日連続投稿させていただきました!


第47話 和解

お母さんの葬儀が終わった夜。

あたしは大きな家に1人。

あたしは寂しさを実感していた。

 

ううん、寂しさだけじゃない。

葬儀の時に会ったお父さんと、姉の聖羅に寂しさや悲しさとか、色んな気持ちが渦巻いていて、余計に心にモヤモヤしたもの感じていた。

 

そして、雨が降っている事に気付き、庭に繋がる裏戸を閉めようとした時。

庭にうずくまっている人に気付いた。

 

「…あの人…お姉さん?」

 

庭に居る人は姉である聖羅だった。

雨の中、あたしの家に向かって土下座していた。

 

「め、めちゃくちゃ雨降ってんのに!」

 

あたしは急いで聖羅に駆け寄った。

 

「ちょっと!あんた何しとるん!?」

 

「梓…さん…?ごめんなさい…ごめんなさい…」

 

聖羅は涙をボロボロと溢しながら、あたしに謝ってきた。

 

 

 

 

「ごめんなさい。ご迷惑をお掛けしました。お風呂まで借りてしまって…服も…」

 

「…いや、あんなずぶ濡れで家の前におられても怖いだけやし、風邪引かれてもあれやし?アレがアレなだけでアレだから」

 

「…ぷっ」

 

「え?あたし何で笑われたん?」

 

「いえ…ごめんなさい…。梓さんの言い回しが知人と似ていたもので…」

 

「それより…何で家の前で土下座してたん?膝も擦りむいてるし、ちょっとの時間じゃあんな風にはならへんやろ」

 

「…」

 

「…え?何でだんまり?」

 

「どこから話せばいいのか…。でもまずは…」

 

そう言って聖羅はあたしに土下座をした。

 

「ちょっと…あたし別に土下座してもらうような…」

 

「いえ、昼間の非礼な言葉の数々、誠に申し訳ございませんでした。私の頭を下げた所で溜飲が下がるとは思えませんが、深く謝罪します」

 

昼間の非礼な言葉の数々。

確かにあたしは聖羅とお父さんにはすごくムカついていたけど、聖羅の今の態度を見たら、何か事情があったんだろうと思った。

 

「まぁ…昼間はぶっ飛ばしたいなぁって思ってたけど、今の姉さん見てたらわかるよ。何か事情があったんやろ?だから、もう頭下げんでええよ」

 

聖羅は頭を上げて、『私達は…』と、あたしにクリムゾングループの事や、クリムゾンエンターテイメントの事を話してくれた。

 

聖羅はクリムゾングループやクリムゾンエンターテイメントのやり方に反発していた。

だけど、自分の力じゃどうにも出来ない事も理解していた。

 

そこでまだ大学生という身分ながら、お父さんの、クリムゾンエンターテイメントの仕事を手伝いながら、多くのバンドマンが極力クリムゾングループとぶつかったり、狙われたりしないように手を回していたらしい。

 

幸いこの頃にはクリムゾンエンターテイメントの四天王の1人である手塚さんも改心していて、陰ながら聖羅のサポートなんかをしてくれていたらしい。

 

「だから父が音楽の話題を出した時、Artemisの事を知られる訳にはいかないと思って、梓さんから興味が逸れるようにと、とっさに話題を変える為にあんな事を…」

 

「そっか…。それであんな事を…。

ってそれより!姉さんはあたしの事!Artemisの事知ってるの!?あたしはそっちの方がびっくりなんやけど!?」

 

「私も一応クリムゾンの人間。情報はいくらでも入ってくるもの。

でも、あなた達の情報は他に漏れないように、私の方で何とかしたからしばらくは安全だと思うわ。

まだデビューしたてだから、何とかなったけど、今後は私の力じゃどうにも出来なくなるかもしれないわ。

梓さん達にも迷惑を掛けてしまう事になるかも…」

 

「はぁ…まぁ、あたしらはエクストリームジャパンフェスを目標にしてるし、いつかはクリムゾングループにもあたしらの事は知られちゃうか…。あ、それとせっかく姉妹なんやしさ?あたしにさん付けはいらんよ。梓って呼び捨てにして」

 

「クスッ、わかったわ。私も聖羅って呼んでもらったのでいいわよ。

梓達がエクストリームジャパンフェスを目指すのなら遠くない未来に父にも知られる事になるかもしれない」

 

「めんどいなぁ…あたしらは好きな音楽を好きなように歌ってたいだけなんやけど…」

 

「そうね。ほとんどのバンドマンがそうだと思うわ。

………やっぱりタカ達に相談して梓達を守ってもらおうかしら(ボソッ」

 

「ん?何か言った?」

 

「いいえ、何も。あ、そうだ。私、Artemisのライブ、1度だけだけど見に行かせてもらった事もあるのよ」

 

「え!?マジで!?」

 

「ええ、その時は、まだ『艶かしい母君遙那マム』もご存命だったから、本当は挨拶に伺わせてもらいたかったのだけど…」

 

「……なんて?」

 

「でも、私のその軽率な行動で魚座のレガリアの所在がバレても困るでしょう?だから寂しかったけど、グッと我慢して…」

 

「いやいやいや、あたしが『なんて?』って聞きたかったのは、そのお母さんに会いに行かなかった理由じゃなくて、お母さんの事変な呼び方してなかった?」

 

「ええ、私には実の母がいたわけだけど、幼い頃の事だから実の母の事はあまり覚えなくて、だから実の母の事は『ママ』。お母さん、遙那さんの事は『お母さん』って呼ぼうとしたんだけど…」

 

 

『いい?聖羅。お母さんの事はこれから艶かしい母君遙那マムって呼ぶのよ?』

 

『え?何で?お母さんじゃダメなの?私のお母さんになるのは嫌?』

 

『ううん、聖羅は私の大切な娘だよ。

でもね、お父さんの前じゃ絶対ダメ。お父さんの前では私に懐いてない振りをしておばちゃんって呼ぶの。いい?』

 

『うん。うん?お父さんの前じゃおばちゃんって呼べってのはわかったけど、何で艶かしい母君遙那マムなの?私はそこがわからないよ…?』

 

 

「そう言われてね。父の前ではおばちゃん、父のいない所では艶かしい母君遙那マムと呼ぶよう言われたのよ」

 

「うちのお母さんってアホだったの…?」

 

と、当時はめちゃくちゃお母さんにドン引きしちゃったんだけど、思い返してみるとあたしもせっちゃんに『美しい堕天使シャイニング梓お姉様』と呼ぶように言ってた訳だし、これ完全に血だね。

 

「まぁええわ。あのお母さんだもんね。普通じゃない1面もそりゃあるよね。でも幼女にそんな呼び方強制するとか娘ながらちょっと引くわぁ…」

 

あの時はドン引きしちゃってごめんね、お母さん。

 

「そ、そんであたしらの演奏どうやった?」

 

「そうね、あなた達の演奏は…」

 

「わぁ!止め!ストップ!ちょっと待って!」

 

「どうしたの?」

 

「一応クリムゾングループの…とはいえ、色んなバンド見たり聴いたりしてきた音楽評論家みたいな聖羅の感想やろ?」

 

「音楽評論家みたいなって…。私はそんな大した事ないわよ。楽器も出来ないしただ音楽が好きってだけで」

 

「…せっかくそんな感想聞かせてもらえるんやからさ。あたしのバンドメンバーも今から呼んでいい?」

 

「え!?本当にそんな大した感想言えないわよ!?」

 

そうしてあたしは澄香と翔子と日奈子に連絡して、あたしの家に来てもらう事にした。

 

まだそんなに遅い時間じゃないとはいえ、晩御飯も食べ終わっただろう時間に急に呼び出して集まれるとは…。

本当に集まりのいいバンドですね。

 

 

 

 

「なるほどな…そういう理由があって、梓にあんな態度を取ってたのか」

 

「ええ、梓の友達であるあなた達にも不快な想いをさせてしまったわね。本当にごめんなさい」

 

「いや、そんなのいいですよ。聖羅さんが梓の事を守ろうとしての行動だったんですし」

 

「澄香ちゃん…だっけ?私の事は聖羅でいいわよ」

 

「じゃああたしも聖羅って呼ぼーっと。聖羅もあたしは日奈子でいいよ」

 

「わかったわ、日奈子」

 

「って訳でさ?聖羅があたし達のライブに来た時の感想を聞かせてもらおうと思ってね。みんなを呼んだ訳だよ」

 

「クリムゾングループの…とはいえ音楽評論家の感想か…」

 

「さ、さすがに緊張するよね、どんな評価をされるんだろう?」

 

「さすがのあたしもちょっとビビってるよ。でも悪くても次のライブには良くなるようにしたいよね!」

 

「ねぇ梓。翔子と澄香と日奈子に私の事どんな紹介の仕方したの?」

 

そして、聖羅のArtemisを聴いた感想をあたし達みんなで聞いた。

 

「まず一般的な感想を言わせてもらうわね。

すごく楽しかったし、演奏に迫力もあって、オーディエンスの私も暴れたくなるような…そんなライブだったわ」

 

「やった!ベタ褒めだ!」

 

「そっかそっか。あたしらのライブ楽しかったんだ。良かったぁ」

 

「うん、オーディエンスも一緒に暴れたくなるようなライブ。私達そんなライブをやれてたんだね。

…って日奈子?どしたの難しい顔をして」

 

「梓ちゃんも翔子ちゃんも澄香ちゃんも甘いよ。

ティラミスにハチミツをかけて、その上から生クリームと練乳をかけたくらい甘い」

 

「うぇ、想像しただけで胸焼けがする…」

 

「そうか?梓は甘いの苦手だっけか?あたしは美味そうだと思ったけど」

 

「日奈子、何で私達がそんな甘いの?まだ慢心するなって事?」

 

「違うよ。聖羅は一般的な感想って言っただけでしょ?」

 

「「「あ…」」」

 

あたしは日奈子に言われてから気付いた。

そうだ、確かに聖羅は一般的な感想と念を押してから言っていたと…。

 

「日奈子の言う通りね。

あなた達のライブを観た率直な感想はそれよ。でも、これからクリムゾングループの猛者達とデュエルをする事になるかもしれない。そして、エクストリームジャパンフェスを目標にしているなら、もっともっと上を目指さないといけないわね」

 

そして、聖羅からあたし達がそれぞれに足りないところや、全体的にこうした方がいいと思うところなど、色んな指摘を受けた。

 

聖羅って凄いなって思ったのはまずはその時だった。

聖羅の指摘してきた点はすごく正確で、あたし達自身も足りないと思っていたところだったから。

 

「…結構きつめに言ったつもりだったけど、みんな落ち込んだりしなかったみたいね。目がギラギラしてるわ」

 

「いやー、落ち込んだのは落ち込んだよ?でも、それ以上に聖羅はあたしの直したらいい点言ってくれたしさ」

 

「あたしもだな。あたしはまだ初心者だし澄香や日奈子には着いていけてない部分的もあるしさ。でも、指摘された点。そこを改善したらって思ったらさ」

 

「私もそうだね。ずっとベースはやってきたけど、セッションとか全然やれてなかったし。あたしの音にはまだまだ上に行ける可能性がある。そう思ったら嬉しくて」

 

「あたしもそうだよ。悪い点、良い点それぞれ言ってもらえたから、あたしの延ばすべきところと、良くしなきゃいけないところが見えたから良かったかな」

 

「そう。それを聞いて安心したわ。

……BREEZEのヤツらはせっかく指摘してあげたのに泣きながら逆ギレしてきたしね。梓達は素直で良かったわ(ボソッ」

 

「ん?何か言った?」

 

「いいえ、何も。あ、それよりエクストリームジャパンフェスに参加するつもりなら、色んな地域のバンドと対バンした方がいいわね。Artemisも色々と対バンやデュエルをして負けなしみたいだけど、だからこそ今のうちに色んな地域のバンドと対バンしてみた方がいいわ」

 

あたし達は対バンは割と関西でやっていたつもりだけど、デュエルだけは負けなしだったけど、地元から離れた所のバンドとはまだ未経験だった。

 

「まぁ、まだ高校生なんだし金銭的な問題もあるとは思うけど、そこは私もある程度ならサポートするわよ」

 

「いや、あたしは金銭面は大丈夫なんやけど…。お父さんがお母さんに振り込んでたあたしの養育費の通帳も、貰ったことやし…」

 

「ああ、梓のお袋さんが亡くなる前に、梓に渡してた通帳か?確か梓が一生働いても手に入らないような金額なんだっけ…」

 

「さすがに金銭面のサポートを受ける訳には…」

 

「梓ちゃん以外は金欠だけどね。それより梓ちゃんと澄香ちゃんは地元以外の初めてのデュエルは関東のBREEZEとやりたいって言ってるから、なかなか重い腰が上がらないんだよ」

 

「BREEZE!?関東の!?」

 

この時、初めて聖羅の前でBREEZEの話題が出て、BREEZEの名前を聞いた聖羅はびっくりしていた。

 

「あ?やっぱりBREEZEの事知ってる感じ?」

 

「梓と澄香はずっとBREEZEとデュエルしたいって言ってるもんな」

 

「ま…まぁ、梓のバンド始めた動機はBREEZEとのデュエルやしね。私も…BREEZEとはデュエルしてみたいし」

 

「私も驚いたわ。BREEZEも確かにいいバンドだけど、有名って訳でもないのに、まさかあなた達が知っているなんて…。それより梓がバンド始めた動機って…」

 

「ああ、んとね、梓ちゃんと澄香ちゃんはBREEZEのボーカルのTAKAちゃんって人に恋しちゃってるみたいでね」

 

「「日奈子!!?」」

 

「梓と…澄香が…BREEZEのTAKAに…恋?(白目」

 

「そんでね……」

 

それからあたした澄香が悶え苦しむような話を、日奈子は聖羅に包み隠さず、小さな事をちょっぴり大きく盛りながら話した。

 

「って訳でね。あたし達はBREEZEと対バンしたいんだけど断られててね~」

 

「私の可愛い妹が…可愛い妹の親友が…(白目」

 

「日奈子!は…恥ずかしいでしょ!聖羅…な、なんか変な事聞かせてごめんね」

 

「い~え~。全然変じゃないわよ~(え?何で!?何でよりによってタカなの!?まぁ、確かに歌ってる時はかっこいいけど、顔がもうアレじゃない!あ、そうか。梓と澄香は男は顔じゃなくて性格派なのね!?…いや!タカは性格も変じゃない!!むしろまだ顔の方がマシじゃない!何で何でなの!?)」

 

「聖羅?どうしたの?あたしも澄香も…まぁ、確かに日奈子の言う通りなんやけど…」

 

「恥ずかしい…た、確かに私もそうやけどさ…そんなハッキリと…」

 

あたしと澄香は恥ずかしさで照れてヤバかったけど、聖羅は白目を向いてボーっとしていた。

この後何でだかはわかったんだけどね。

 

「ご、ごめんなさい。…BREEZEのタカに…こ、恋する妹と妹の親友。どっちの恋を応援するべきか悩んじゃって…」

 

「そこは!あたしの応援をしてよお姉様!」

 

「あ、梓ずるっ!身内やからって贔屓なしやで!」

 

「も、もちろん、身内だからって梓だけを応援したりしないわ(いや、本当に応援したくないんだけど?梓とタカがくっついたら、タカは私の義弟になっちゃう?…う~ん、義弟ならまだありか?いや、でも梓があんな男とくっついて不幸になったら大変だし…。だからと言って澄香を応援して澄香とくっついても澄香もいい子だから不幸になってほしくないしなぁ…)」

 

「「聖羅!」」

 

「ど、どっちかを応援とかしないから安心して頂戴。音楽の事ならともかく、恋は自分で頑張りなさい(よし、これだ。これが1番だわ。どっちかがくっついたとしても自己責任。もう梓も澄香も大人なんだもの)」

 

「ちぇ~」

 

「良かったぁ」

 

聖羅は厳しかった。

実の妹のあたしをちょっとは応援してくれたらいいのにさ。

でも、澄香も聖羅にとっては妹の親友。大切な存在だからあたしも澄香も応援しないって優しい答えを言ってくれたんだと思った。

 

……でもこないだ聖羅とお茶した時、タカくんはせっちゃんと結婚させたいとか言ってたような?

きっと聞き間違いだよね?

 

「それにしても…BREEZEのみんなは何でArtemisとの対バンを断ってるのかしら?」

 

「えっと…私が何度かメールでお願いしてるんやけど、交通費がどうとか…」

 

「ああ…あいつららしいわね…」

 

「ねぇ?もしかして聖羅ってBREEZEの事よく知ってる感じなの?」

 

「え?ええ、私はBREEZEがデビューしたての頃から追っかけをしてて…その内に親しくなったって感じかしらね。……主に英治のおかげで(ボソッ」

 

「ん?何か言ったっての」

 

「いいえ、何も。それよりBREEZEとの対バンがしたいなら、私なら何とかしてあげれるわよ」

 

「「え!?マジで!?」」

 

あたしと澄香は大きな声をあげて驚いた。

まさかと思って…。

もしかしたらBREEZEと対バン出来るかもしれない。

当時のあたし達からしたら、聖羅のその言葉は願ったり叶ったりだった。

 

「大丈夫。あいつらには貸しもあるから、あたしから言えばすぐにでも対バン出来ると思うわ」

 

「貸し…?」

 

「でもこれでBREEZEと対バン出来るなら…。

最初の目標に一歩前進って感じだな」

 

「…美容院予約しなきゃ」

 

「関東かぁ…。ついでに東京に行って秋葉原のジャンク屋とかまわりたいなぁ…。あのパーツさえ手に入れば…」

 

そしてその日は聖羅はうちに泊まり、翌日の朝早くに関東へ帰って行った。

 

それから1ヶ月。

聖羅からは何の連絡もなく、時間だけが過ぎていっていた。

 

「聖羅から連絡ないね…」

 

「うん、あたしもBREEZEの演奏観てみたいし、早くデュエルしたいって気持ちもあるけどね。あ、翔子ちゃん、そこ違うよ」

 

「あ?ちょっとアレンジ入れてみたんだけどダメだったか?てか、澄香のやつ今日は遅いな。バイトだっけ?」

 

「うん。澄香は今日はバイトだって~」

 

「いや、そのアレンジ全然変ではないけどね。そこにその音被せられたら、あたしが目立たないなぁと思って」

 

「そっか。澄香はバイトか。

って日奈子!目立つ目立たないとかいいだろうが!あたしらの曲をどう良くするかが大事だろ!」

 

「翔子ちゃんは相変わらず面白いなぁ。あたしが目立たないのはそもそもがダメでしょ」

 

「あたしはお前の自分が目立たないとダメって考え方が恐ろしいわ」

 

翔子と日奈子が不毛な争いをしていたら、バイトだった澄香も練習に合流した。

 

「ちょっ、ちょっ、ちょっと!みんな!大変!

聖羅からBREEZEとの対バンの連絡来たよ!みんなどの日なら都合いい!?」

 

澄香はあたし達と合流するや否や、聖羅からBREEZEとの対バンの日程の連絡が来た事を伝えてくれた。

 

何であたしじゃなくて澄香に連絡したんだろう?

と、あたしは今でも不思議に思っている。

 

聖羅からBREEZEが対バン出来ると提案された日程は、どの日もあたしは大丈夫だった。

 

だけど、バイトをやっている翔子と澄香と日奈子はどの日でも…という訳にはいかなかった。

 

更に澄香と日奈子には学校のテストがあるから、この日は避けたいよね。っていう日もあった。

あたしと翔子にとってはその日でも良かったんだけど…。

 

そしてあたし達の対バンの日が決まった。

 

10月23日!!

 

その日があたし達Artemisと、タカくん達BREEZEの初めての対バンの日。

 

そう本当ならその日は対バンのはずだった。

 

「じゃあ10月23日で聖羅に連絡するね。とうとうBREEZEと対バンか…。ドキドキするね」

 

澄香が聖羅に日程の連絡をしようとした時…。

 

「澄香、待って」

 

「ん?どしたの?」

 

「その日さ。BREEZEと対バンじゃなくて、BREEZEとデュエルしたい!」

 

「デュエル!?あ、梓、本気!?聖羅の話じゃ有名じゃないとはいっても、私と梓が心を動かされるようなライブやるバンドだよ!?」

 

「やる!本気のBREEZEとライブしたいもん!デュエルだって言ったら、本気のBREEZEとライブやれるでしょ!」

 

「そ、そりゃデュエルってなるとBREEZEも負けたくないやろし、本気のライブになると思うけど…」

 

「いいじゃねーか澄香。せっかくなんだ。デュエルにしようぜ!」

 

「翔子まで…」

 

「あたしもいいと思うよ。あたし達も負けなしだし、エクストリームジャパンフェス狙ってんだし。デュエルは積極的にやっていきたいじゃん」

 

「日奈子まで…。これでデュエルは止めとこうとか言ったら、私がヘタレみたいやん。

…わかった。聖羅にはデュエルにしたいって連絡しとく。でも、やるからには絶対勝つからね!」

 

「「「もちろん!」」」

 

そして、澄香は聖羅に対バンではなくデュエルがしたいという旨と、10月23日にという連絡をしてもらった。

 

デュエルにしたいという連絡は意外とあっさりOKが出て、10月22日に前日入りし、10月23日にBREEZEとデュエルギグ。そして10月24日に関西に戻るという、プチ旅行のような日程が組まれた。

 

しかも、あたし達は遠慮したんだけど、往復費とホテル代は聖羅が出してくれた。

これはあくまでもあたし達、Artemisに対する先行投資らしい。

 

聖羅の夢はクリムゾンのない世界で、自由な音楽をやる音楽事務所のプロデューサーだったから、その時にあたし達Artemisがメジャーになってたら、イベントに参加してほしいという投資って事だった。

 

…そして別に3連休じゃないのにあたし達が10月22日から24日の3日間、関東に行けるのは日奈子のチカラだった。学校から休んで良い。と連絡があったのだ。

今となっても日奈子があの時、何をしたのかはあたしも翔子も澄香も知らない…。

 

 

 

そして10月22日。

あたし達は新幹線に乗って関東へと向かった。

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