あたし達ArtemisとBREEZEのデュエルギグは、あたし達Artemisの惨敗で終わってしまった。
今はデュエルの勝者であるBREEZEがステージで歌っている。
本来ならデュエルに勝利し、今ステージで歌っているのはあたし達のはずだったのに。
なのにあたし達は、いや、あたしと翔子と澄香は、あたし達の楽屋で日奈子から大目玉をくらっていた。
「だいたい!何で翔子ちゃんは演奏中に鼻血出して倒れちゃうの!!」
「いや、トシキさんがかっこ良すぎて…」
「なんて!!?」
「す、すみません…。あたしも何でかわかりません。もうしません」
「「……」」
ちびっこのくせに仁王立ちしている日奈子を眼前に、あたしと翔子と澄香は正座しながら日奈子の怒りが収まるのを待っていた。
「梓ちゃんも!何で歌うの止めちゃうかな!?ギター下手くそなのに歌うの止めちゃったらダメでしょ!」
「いや、タカくんがめちゃくちゃ近くに来たから緊張しちゃってね…」
「ダメでしょ?」
「いや、だから…」
「ダメでしょ?」
「はい…ダメです。あたしはギター下手くそなんだから歌うの止めちゃダメですよね。すみません、反省してます」
「澄香ちゃんも澄香ちゃんだよね!梓ちゃんと翔子ちゃんに引っ張られてミスし過ぎ!澄香ちゃんもタカちゃんかっこいいとか思って演奏が疎かになってたの!?」
「いや、私はタカの事かっこいいとか思って集中途切れたりしてないよ!?私は梓と翔子が走り過ぎてるし何とかしなきゃって焦り過ぎちゃって…」
「え?じゃあタカちゃんの事かっこいいって思わなかったの?」
「…そりゃ、かっこいいって思いましたし、梓ちょっとタカに近くない?とか思ってヤキモキしましたけど…。ホントすみません」
「ほら!ほらほらほら!みんな何やってんのー!おかげで負け無しのArtemisだったのに黒星付いちゃったじゃん!!」
それから日奈子の説教は数十分と続き、あたし達の様子を見に来てくれた聖羅はあたし達の楽屋のドアを開け「ぷふっ、ま、まさかタカ達に見惚れてデュエル負けちゃうとは…あは、あはははは、あんまり笑わさないでよ!あははははは」とだけ言われた。
そしてドアを閉めて「あー、お腹痛い。あはははは!」と言いながら帰っていった。
「ホントにさー!梓ちゃんも澄香ちゃんも翔子ちゃんも(クドクドクドクド」
日奈子の説教はとどまる事を知らなかった。
-コンコン
あたし達が日奈子に説教されていると、ドアをノックする音が聞こえ、その後すぐにドアを開けられた。
「お、お前らまだ居てくれたか。良かった」
あたし達の楽屋に入って来たのはタカくんだった。
「って、まだ着替え終わってねぇのかよ…。まぁ、いいや。着替え終わったら俺らの楽屋来いよ。一緒に飯でも食いに行こうぜ。打ち上げだ打ち上げ」
「打ち上げ…?」
「一緒にご飯…?ト、トシキさんも一緒に!?」
「あ、えっと…私らも一緒でいいなら是非…」
「ご飯…。今日はあたしはもちろんタダ飯だろうね」
日奈子の分はあたし達で出す事になるんだろう。そう確信していた。
「お、来てくれるなら良かった。予約してっからよ。早めに着替えて来てくれよ。……ってお前!俺がまだ居るのに何脱いでんの!?」
「え?」
「あ、梓!何やってんの!」
あたしはタカくんとご飯に行けるという想いが暴走し、タカくんがまだ居るのに上着を脱ぎにかかっていた。
「あ、急いだ方がええかな?って思って…」
「と、とにかく!俺らは楽屋で待ってるから!…クッ、何で俺は着替えを止めてしまったんだ…」
そう言ってタカくんはドアを閉めて楽屋へと戻って行った。
見たかったのかな?あたしの着替え。
彼氏になってくれたらいくらでも見せてあげるのに…。
……いや、やっぱり無理。恥ずかしいわ。
とか、思いながらあたしは着替えを急いだ。
・
・
・
「って、打ち上げってどこ行くの?あたし達まだ未成年だし飲み屋とかじゃないよね?」
「ああ、俺達はいつもライブ終わりはファミレスなんだけどな」
「ドリンクバーあるもんね。それにしてもはーちゃんがデュエルの相手にしろ対バンの相手にしろ打ち上げに誘うのって初めてじゃない?」
「へぇー、そうなんだ?あたし達は打ち上げってあんまりした事ないよね?反省会ってのはあたしの家でやるけど」
日奈子と拓斗くんとトシキくんはあたしと話しながら、
「おー、マジか。兄貴達が大阪行った時に…」
「そうなんだよ。その時に物販してた私は梓ちゃんと澄香ちゃんと仲良くなって~」
「あたしもそのライブ行きたかったよ。まぁ、その頃はまだ音楽やってなかったからなぁ」
「私もその時はまさかバンドやれるだなんて夢にも思ってなかったよ」
BREEZEのライブを観に来ていた拓斗くんの妹である晴香ちゃんと三咲ちゃんと翔子と澄香で話しをして、
「おいタカ、打ち上げってどこでやるんだ?いつものファミレスじゃダメだったのかよ」
「ま、着いたらわかるわ」
英治くんとタカくんで話しながら打ち上げのお店へと向かっていた。
電車に乗り、少し歩き、あたし達がライブをした会場から少し…っていうか、かなり離れたお店にあたし達は辿り着いた。
「お、おい、タカ…ここって…」
「いいの?はーちゃん…」
「あ?何か文句ある?とりあえず入ろうぜ、腹減ったし」
「おいぃぃぃぃ!タカぁぁぁぁぁぁ!!」
「おわっ!?な、何だよ拓斗…」
「てめぇ!せっかく梓さんが…いや、Artemisの皆さんがわざわざ関西からここまで来てくれたんだぞ!それなのに何で打ち上げ会場がここなんだよ!もっとあるだろうが!夜景の綺麗な店とか、関東ならではの味を出す店とかよ!」
「……ほら、ここの店の前も道挟んでるけど海だし。オーシャンビューじゃん。それにチェーン店でもないからこの店ならではの味だし?」
「いや、オーシャンビューって、真っ暗で海見えないし!確かにチェーン店じゃないけどよ!何でラーメンなんだよ!」
あたし達がタカくんに連れられて来たのはラーメン屋だった。
「拓斗…。梓達はよ。ここに連れて来たいって思ったんだよ」
「……!?お前が…ただラーメン食いたかった訳じゃねぇって事か。そうだな…。お前がここに人を連れて来るってよっぽどだよな。悪い…」
「いや、ラーメン食べたかったんだけどね?」
タカくん達の不思議なやり取りを目の前で見させられなが、あたし達は正直「ラーメンかぁ…」って思っていた。
「ラ、ラーメンか…最近おっちゃんに脇腹の肉が付いてきたって言われてるのに…」
「ラーメン…わざわざ関東まで来て…」
「ラーメンがっつく姿をトシキさんに見られる訳には…」
「『ラーメン
「いや、ここは『ふぁんとむ』って店だ。音楽のファンと一瞬に夢を見ようって想いでこんな店名にしたらしい。変な店だろ?」
あたし達の会話が聞こえたのか、タカくんがあたし達に店名の説明をしてくれた。
あたし達がタカくん達に連れて来られたラーメン屋の店名は『ふぁんとむ』。
英治くんのライブハウス…今はなっちゃん達の音楽事務所かな。
その『ファントム』は、ここのラーメン屋さんの名前を使わせてもらったんだよ。英治くんもライブハウスに来てくれる『ファン』とバンドマン達の『夢』を繋ぐ為にって。
「ここはな。ONLY BLOODの2代目の大神さんと一緒にレガリア戦争を闘ったドラマーの
「「「「ONLY BLOOD!?」」」」
あたし達はONLY BLOODというバンドも大神さんも知っている。
そして、ONLY BLOODのベーシストだった氷川さんの事も。
まさかタカくんにそのONLY BLOODのドラマーだった人のお店に連れて来てもらえるとは…。
「とりあえず入るぞ」
そう言ってタカくんはお店のドアを開けた。
「へいらっしゃい!!!!……お、タカか。やっと来たか」
お店に入った途端、大きな声で迎えてくれた人は、金髪のモヒカンヘアでサングラス。
南の島とかで昔の人が着ているようなリゾートコーデの…何というか…ラーメン屋さんって感じの人ではなかった。
「って事はその後ろの女の子達がArtemisの子達か?話は氷川さんからも聞いてるぜ!世呂死苦!」
なんか『よろしく』って言葉が何故か漢字のような気がしたけど、あたし達は「よろしくお願いします」と頭を下げた。
「HAHAHA!なかなか可愛い子達じゃねーか。注文はどうする?…あ、そうだ、おいタカ。さっき氷川さんにも連絡したんだけどよ?何か怒ってたぜ?すぐに来てくれるってよ」
「え?氷川さんに連絡したんスか?まぁ、俺も連絡するつもりでしたけど…。え?てか何で怒ってんの?俺なんかしました?てか、何なんスかまこっさんのそのキャラ。何かの罰ゲーム?」
そしてあたし達は4人掛けのテーブル席にArtemisメンバーと座り、隣のテーブル席には拓斗くんと英治くんと三咲ちゃんと晴香ちゃんが座り、あたし達を挟んだもう1つのテーブル席にタカくんとトシキくんが座った。
チ、何故あたしはArtemisが同じテーブル席に…。
と、あたしも澄香もタカくんと一緒が良かったとか、翔子はトシキくんと一緒が良かったとか、日奈子は何食べようかな?とかボソボソと他のテーブル席には聞こえない音量で話していた。
「おい、お前ら注文決まったら遠慮なく言えよ?今日はArtemisの分は奢ってやるからよ。腹が裂けるくらい食っちゃいなYO!」
何となくノリが本当にONLY BLOODのメンバーだったんですか?って聞きたくなるような感じだったけど、奢ってくれるという事はにあたし達は感動していた。
何食べようかな?あんまりがっつくとタカくんに品のない女とか思われちゃうかな?とか思ったけど、あたしはこの場は食欲という悪魔に忠実な下僕になろうとメニューをガン見していた。
だけど…
「あ、まこっさん。注文は全員『大神スペシャル』で」
タカくんが勝手にみんなの分の注文をしてしまった。
『大神スペシャル』?メニューにはそんなの載ってないのに。
「大神スペシャルか。時間掛かるからちょっと待ってろな」
そう言ってまこっさんは調理に入った。
あたし達はアレが食べたかったのにとか、コレが食べたかったのにとか文句はあったけど、奢ってもらえる訳だし…と、ボソボソと他のテーブル席には聞こえない音量で文句を言っていた。
「ねぇ、はーちゃん。Artemisのみんなを『ふぁんとむ』に連れて来た事もだけど…『大神スペシャル』って、どうしてなの?」
「ん?ああ、そういや拓斗もだし英治も、何でArtemisをここに連れて来たのか不思議がってたっけ?
おい、三咲。お前、トシキ達にはあの事言ってねぇの?」
「あの事?なんの事?」
「あー、梓が魚座のレガリア持ってて、氷川さんから聞いてた木原 遙那さんの後継者って事」
「え?レガリアの事?タカくんにしか言ってないよ?」
「そうか。梓さんは魚座のレガリアの…天使か女神と思っていたが…まさかレガリアの………」
「はあー!すげぇ歌が上手いとは思っていたがまさかレガリアの後継者だったとはな………」
「なるほどね。だからはーちゃんはここに連れて来たんだね。そっか、それで『大神スペシャル』を………」
「「「……って!レガリア!!?」」」
トシキくんと拓斗くんと英治くんは大声を出してびっくりしていた。
三咲ちゃんにはあたしがお母さんからレガリアを受け継いだ事を話していた。
そして、またあたし達も三咲ちゃんからタカくんが大神さんから射手座のレガリアを受け継いだ事を聞いていた。
「マ、マジかよ…梓さんがレガリアを…?」
「おい!三咲!そんな大事な事、何でタカにだけ言って俺に言ってなかったんだよ!」
「え?何で私がわざわざ英治くんに言わなきゃいけないの?」
「そっか。梓ちゃんの歌声も凄かったもんね。まさかレガリア使いだったなんて…。はーちゃんも話してくれたら良かったのに」
「あ?俺が聞いたのも最近だぞ?デュエルするって話が決まった時は俺も知らなかったしな」
「何だよ、お前らArtemisがレガリアの後継者だって知らずにデュエル受けたのか?はい、大神スペシャルお待ちっ!」
そっか。あたしがお母さんからレガリアを受け継いだのをタカくん達は知らずにデュエルを受けてくれたんだ?
もし、あたし達が『あたし達は魚座のレガリアを受け継ぎました』って言ってたらもっと早くデュエルを受けてくれたかな?それともレガリア戦争の事を危惧してデュエルは受けてくれなかったかな?
とか思ったけど、考えてみたらレガリアを受け継いだのもつい最近だったわ。
それより…あたしは別の事に気を取られていたんだ。
「こ、これが大神スペシャル…?ど、どんぶりじゃないやん…これすり鉢やろ…?」
あたし達の目の前にまこっさんが大神スペシャルを運んでくれたけど、明らかにこれはあたしが食べれる量を凌駕していた。
「これ…ラーメンか?鍋じゃねぇのか?1人前でこれじゃないよな…?」
「これ麺何玉分…?チャーシューもどんだけ入ってんの…?」
「おいしそ~♪」
大神スペシャルを目の前にしたあたし達は驚き、これを今から1人ひとつ食べるの?と、恐怖していた。
「タカからは大神スペシャルって言われたけどな。さすがに女の子にこれは無理だろ。ほら」
そう言ってまこっさんはあたし達の前に大神スペシャルを1つと、取り分け用の器を4つ持って来てくれた。
てか、まこっさんって普通に喋れるんだ?
「え?俺、大神スペシャル全員分頼んだと思うんですけど?」
「大神さんとお前以外、誰がアレを食いきれんだよ。トシキは醤油ラーメンとチャーハン大盛セット。拓斗は塩ラーメンと唐揚げセット、英治は豚骨ラーメンと餃子セットな。三咲と晴香はラーメンとご飯のセットでいいよな?三咲は味噌で晴香は担々麺な」
そう言ってみんなの前に料理を運ぶまこっさん。
さすがに大神スペシャルってラーメンはみんな食べれないよね。
「いやいやいや、盛夏と美緒ちゃんならこんくらい余裕だと思うんすけど」
「セイカ?ミオちゃん?誰だそれ」
「あ、そうか。そりゃそうだ。この時代まだ2人共産まれてもないよな…」
タカくんが女の子の名前を出すもんだからちょっと気になったけど…。
気に…なったんだけど、盛夏ってせっちゃん?美緒ちゃんって美緒ちゃん…だよね?
あの頃は何となく気になっただけで聞き流してたけど、何であの頃のタカくんからせっちゃんと美緒ちゃんの名前が?
「お前は初代の矢沢さんに似て変な事ばっか言うよな。ほら、大神スペシャル。お前にはちゃんと大神スペシャル作ってやったからよ」
「ああ、どうも。
やべぇなぁ。ちょっとメタ発言は自重しないとな。まぁいいや。いただきます」
そう言ってタカくんは大神スペシャルを食べ始めた。
あれを1人で食べるのかな?と若干恐怖を覚えた。
「…オレが奢るのはArtemisの分だけで、お前らは自腹だからな」
「…。大神スペシャルっていくらでしたっけ?」
「2400円」
「……やっぱりまこっさんのラーメンは世界一だな」
「お世辞言っても無駄だからな?払えよ?」
タカくんは泣きながらラーメンをむさぼり食べていた。
それから少しした後、
-ガラッ
「へいらっしゃい!って……氷川さん、お疲れ様です」
「おうマコト、お疲れ。Artemisもわざわざ関東までお疲れ様だったな」
氷川さん。
りっちゃんのお父さんが『ふぁんとむ』に入ってきた。
「氷川さん、お疲れ様です。俺とはーちゃんの席空いてますよ」
「氷川さん!すんません、お先にいただいてます!」
「氷川さんは何注文されますか?タカとトシキのとこのテーブル席空いてますんでどうぞ!」
「ラーメン美味しい。あれ?いつもよりちょっとしょっぱい?あ、そうか。自腹だと思って涙が…。これ涙の味だわ」
「おう、トシキも拓斗も英治もお疲れ様だったな。で、タカ」
-ゴンッ!
「痛っってぇ、お、俺何で殴られたんすか!?」
「お前な!Artemisとライブする事あったら俺を呼べって言ってたよな!!?」
「え?そんな事言われてましたっけ?俺は過去を振り返らないので忘れました。いや、待てよ?今日ライブするって事は言ってたような?」
「ああ!そうだよ!お前からはライブするって連絡だけでな!デュエルするっても、Artemisが来るってのも聞いてねぇよ!」
「そうでしたっけ?てか、それより氷川さん」
「あ?何だ?」
「今日の
「お前何でこの状況で俺に奢ってくれとか言えるの?」
・
・
・
その後は色々とタカくんと氷川さんの問答があり、『ああ、わかったよ。BREEZEの分は三咲と晴香ちゃんの分も含めて俺が奢ってやるよ。お前…ほんっっとそういう所、大神に似てきたよな。何なのチキンのくせにその図太い神経』と、BREEZEの分は氷川さんの奢りになった。
そしてそれを聞いたトシキくんはチャーハン大盛を追加注文し、拓斗くんはご飯大盛を追加注文して、英治くんは餃子3人前を追加注文した。
まぁ、三咲ちゃんと晴香ちゃんとあたし達も追加注文したんだけど…。日奈子に至っては何故か大神スペシャルを追加注文したしね…。
「ふぅ、腹一杯だな。やはり氷川さんの奢りで食べるラーメンは最高だぜ」
「はーちゃんは何を言ってるの。ちゃんと氷川さんに感謝しなきゃ。俺は氷川さんに遠慮しちゃって思いっきりは食べれなかったよ」
「トシキ、チャーハン大盛を追加したお前がそれを言うのか?てか、いつも俺らまこっさんにはツケで色々食わせてもらってんだろ。いつもの事じゃねぇか」
「え?拓斗。それまじか?今までのってツケだったの?氷川さんかまこっさんの奢りじゃなかったのか?」
BREEZEはやっぱり変なのはタカくんだけじゃないんだな。と、改めて思った。
「はぁ、こいつら何て食欲してんだよ…また嫁に怒られる…」
そしてあたし達はまこっさんにお礼言い、その後は、タカくん達とはそのまま解散する事になって、あたし達Artemisは氷川さんの車でホテルまで送ってもらう事になった。
今なっちゃんにこの時の事を話してて思い出したけど、BREEZEのみんなと解散して、あたし達が車に乗る直前に、
「あ、おい、タカ。今日も奢ってやったんだから約束守れよ?うちのゴリラ…じゃない、ゴリナ…じゃない、理奈が結婚出来る歳になったら嫁に貰えよ?」
「ああ、はい、俺がそん時まで結婚してなくて理奈ちゃんが可愛くなってましたらね…」
とか、言っていた。
りっちゃん、おっぱいは小さいけど今はめちゃくちゃ可愛くなってるし、とっくに成人してるし…。
……やっぱり警戒しておいた方がいいかな。
あ、それでね。
その後、あたし達は氷川さんに車で送ってもらいながら…。
「俺よ、遙那さんや龍馬さんがレガリアの後継者として選んだみんなとゆっくり話してみたかったんだよ」
車を運転してくれている氷川さんがそんな事を言ってきた。
「え?あたし達と?」
「ああ、遙那さん達にも話せてない事もあるしな。大神の事…レガリア戦争の事をお前らにも色々と知っててほしいと思ってよ」
「大神って…あのカップ麺食べてたおっさんだよな?」
「レガリア戦争?それって梓ちゃんのおばちゃんやおっちゃんに聞いた話?」
「ちゃんとって事はおばさんやおっちゃんから聞いた話以上の事が聞かせてもらえるのかも?」
「ああ、ちょっと話長くなりそうだから遠回りするぞ。ゆっくり聞いてくれ。何で俺達が…タカに射手座のレガリアを託したのかって事もな」
「タカくんに…レガリアを託した事…あたし!それ聞きたいです!」
そしてあたし達はレガリア戦争がどんな
そしてタカくんが何であたし達を『ふぁんとむ』に連れて来てくれたのか、何であたし達に『大神スペシャル』を食べてもらおうとしたのかも…。
まぁ、射手座のレガリアがタカくんに託された時には、レガリア戦争は足立の勝利で終わっていて、大神さん達もONLY BLOODを引退してしばらく経ってからなんだけどね。
そんなお話を氷川さんはあたし達にしてくれて、お話が終わった時はもう日を跨いでて…、気づいた時には朝日があたし達の顔を照らしていた。
レガリア戦争はお母さんやおっちゃんから聞いてた話よりも凄惨で辛くて、あたし達はみんな疲れてるはずなのに、誰も寝ちゃったりする事もなくしっかりと聞かせてもらっていた。
・
・
・
「すごかったね。氷川さんのお話」
「うん、すごかった。氷川さんが…何でタカにレガリアを託したのかってお話も」
「あたしらはさ。エクストリームジャパンフェスで優勝したいって目標もあるからさ。やっぱり勝ったとか負けたとか、気にしちゃうもんな」
「うん、そだね。…でも聞いた?BREEZEって結構デュエルで負けてるんだってね。あたし達には勝ったのにさ」
氷川さんから聞いたお話は、今ははしょるね。
これもきっとトシキくん達が話してくれるだろうし、トシキくん達BREEZEがどう感じてたのかってのを先入観持たずに聞いてもらいたいし。
ホテルに戻ったあたし達は荷物をまとめて関西に戻った。
その時に拓斗くんと三咲ちゃんと晴香ちゃんが見送りに来てくれて、これからも対バンやデュエルをやろうって拓斗くんは言ってくれた。
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「その日からね。あたし達はBREEZEに今度こそはデュエルで勝つぞって遠征も増やして、デュエルや対バンじゃなくてもBREEZEのファンとして、ライブを観に行ったりしたの」
「そうなんだね。晴香さんから、梓お姉ちゃんが先輩に惚れてArtemisは負けたって聞いてたけど、思っていた以上にしょーもない負け方しててびっくりしちゃった」
しょーもない負け方って何!?
てか、晴香ちゃんは何をなっちゃん達に言ってるの!?
「それで梓お姉ちゃん達は結局、BREEZEやArtemisが解散になっちゃうまでBREEZEにはデュエルで勝つ事は出来なかったんだよね?」
「ウッ…そ、そうなんだけど…」
でも勝てなかったのはあたしだけのせいじゃないし。
主に翔子のせいだってあたしは思ってるし。
「結局梓お姉ちゃん達は何回BREEZEとデュエルしたの?」
「あたし達とBREEZEのデュエルギグはね。公式には7回…かな」
「7回も……。ん?あれ?てか、公式って?」
「うん、まぁ、翔子もアレだしね。トシキくんとは何回か1対1でギターデュエルもしたみたいだし、デュエルじゃなくて対バンならもっと何回もやってるからね」
「そうなんだ?そういや翔子お姉ちゃんもトシキさんには勝てた事ないって言ってたよね。負け方はいつもこんな感じだったのかな?」
はい。翔子の負け方はいつもそんな感じでした。
「だけどね」
「だけど?」
「あたし達ArtemisとBREEZEにとっては7回じゃなくて…まぁ、翔子とトシキくん的にはもっとなんだろうけど」
そう。公式に…オーディエンスがいたデュエルギグ。
ArtemisとBREEZEとしてデュエルギグ。
その回数は7回だけ。
「だけど、タカくんが足立と闘って喉を壊して…BREEZEを解散した後、あたしが事故に合う前。
そんな時にね、あたしはタカくんと、翔子はトシキくんと、澄香は拓斗くんと、日奈子は英治くんと。
各々が最後のデュエルギグをしたの」
「最後のデュエルギグ?」
「うん、だからあたし達Artemisにとっては、タカくん達とのデュエルギグは8回。公式ではないけど最高で最大のデュエルギグだったんだよ」
あたし達がBREEZEと初めてデュエルをして数年。
それまでにたくさんの出会いやデュエルがあって。
あたし達はエクストリームジャパンフェスの決勝リーグに出場出来る事になった。
でも決勝リーグに出場する少し前に、あたし達はBREEZEとの最後のデュエルギグをした。