あたしの名前は蓮見 盛夏。
そんじょそこらには居ない美少女JDだ。
と、自分では思っている。
お父さんとお母さんの影響で音楽が好きになり、いつしか自分も楽器をやってみたいと思い、中学の時に音楽の授業で、ギターをやってた事もあり、お父さんにギターを買ってくれとおねだりした。
音楽が大好きだったお父さん。
なのに買って来てくれたのはベースだった。それからあたしはベースをやるようになるのだが、やってみるとベースが自分に合っていたのだろう。
中学で習っていたギターよりも、ベースを演奏するのが好きになっていた。
そんなあたしはひょんな事からライブハウス『ファントム』は、お父さんとお母さんが好きだったバンド『BREEZE』のドラムだった人が経営しているという話を聞き、いつか本物に会えるかもしれないと思い、ライブのない日のカフェタイムの日によく通っていたのである。
ある日、本物のBREEZEのドラムどころか、BREEZEのボーカル、BREEZEのギターのメンバーにも会うことが出来た。
それどころか、ボーカルの人が始めたバンドのベースとして入れてもらう事が出来たのである。バンドをやった事のなかったあたしはうれしみに溢れているのであった。
「と、まぁ、これがあたしなのである」
「え?ほえ?何?」
モノローグの中で一生懸命自己紹介したつもりだったけど、どうも奈緒には伝わらなかったみたいだ。まぁ、そりゃそうだね。
そしてそんなあたしは今、仕事帰りの奈緒と合流してファントムでお茶しながらバンド名を考えているのである。
「う~ん、バンド名とか難しいなぁ。全然考えてなかったよ…。貴に相談したら『え?俺らバンド名決まってなかったの?4章も終わったのにバンド名決まってないの俺らだけだよ?』とかわけのわかんない事言ってたしなぁ」
「貴ちゃんは時々まともな事言うけど、時々以外はわけわかんないね~。まぁ、そこが面白いんだけど」
「え?まともな事言ってた時あったっけ?」
「たまに?」
「ははは、2人共なかなか辛口だな?タカが聞いてたら泣いてるぞ?」
そう言ってファントムの経営者であり、BREEZEのドラマーであった英治さんがケーキを持って来てくれた。
「え?あ、私達ケーキ注文してないですけど…」
「ああ、気にしなくていいよ。俺の奢り。奈緒ちゃんは俺達のファンで居てくれたし、盛夏ちゃんはお得意様だからな」
「え?いいんですか?ありがとうございます!いただきます」
「おー!ありがとうございます。ラッキーだ~」
「ま、実は賞味期限ギリギリのやつなんだけどな。処分するのは勿体ないし」
「それでしたら処分しなきゃってのがあったらいつでも呼んで下さい。ダッシュで来ます」
「も、もう盛夏!」
「ははは、ああ、そん時はまた頼むよ」
わー、英治さんいい人だー。
「それより奈緒ちゃん達は今日はバンド名考えてんのか?」
「ええ、そうなんですよ。そういえばBREEZEの名前はどうやって決まったんですか?」
「ああ、もちろんタカが決めたぞ。元々はBREEZEって『
「え!?そうだったんですか!?知らなかったです」
「Brigade of Breeze……?そよ風の旅団?」
「お、盛夏ちゃんは英語得意なのか?そうだよ。そよ風の旅団。俺達は音色をそよ風に乗せて運ぶ旅団なんだって意味でな」
「す!すごく素敵です!!」
「ははは、それを面と向かってタカに言ってやれば照れて喜ぶだろうに」
「う…あの…あ、あはは…」
あ~、そういや奈緒には貴ちゃんがBREEZEのTAKAってのは内緒だったんじゃ?
「大丈夫。まどかから聞いてるよ。タカが気付いてないと思ってるから、気付いてない振りしてるんだろ?」
え?そうなの?何でだろ?
「あはは、はい、実はとっくに気付いてます…。気を使わせてしまってるようですみません…」
「いや、面白いから俺としては構わないぞ。盛夏ちゃんもそういう事らしいからよろしくな」
「ラジャー!ってか、何でそんな事に?面白そうだから、あたし的にもオッケーだけど?」
「あ、それより。何でBrigade of BreezeはBREEZEに名前が変わったんですか?」
「まぁ、ライブをやりだしたのはBREEZEになってからだけどな。元々はタカはBrigade of Breezeは長い名前だから、
「あ、あはは。そういうとこは昔からそうだったんですね」
「でも、略称はみんなから
「なんか貴らしいですね」
「ならあたし達のバンド名をBrigadeにしちゃう?」
「う~ん、それもいいかもだけど、それだと貴がまたBREEZEの事を思い出しそうだし…。やっぱり貴はBREEZEのTAKAじゃなく葉川 貴としてバンドやってほしいしなぁ」
「思い出す?およ?そう言えばBREEZEって何で解散しちゃったんですか?」
「あれ?盛夏ちゃんは知らなかったのか?実はな……」
「ほえ~、そうだったんですね。は~。なるほどなるほど」
「まぁ、俺達自身あれは楽しかった青春だって事で終わってるし、何も気にしてないけどな」
う~ん、計算が合わない…?あれ?
「どうしたの?盛夏」
「あたしは蓮見 盛夏。美少女JDである」
「え?何言ってるの?貴が憑依でもした?」
「あたしはJDなのだよ。大学3年生20歳!今年21歳!」
「え?何?私の事おばさんって言いたいの?」
「奈緒ちゃんの年齢でおばさんとか俺らもうお爺ちゃんじゃないか…」
「BREEZEが解散した15年前はあたしは5歳か6歳。あたしがお父さんとお母さんに作られたのは21、2年前のBREEZEのライブの日という事になる!」
「つ、作られたって…」
「大丈夫だ。その計算なら合ってる。22年前なら俺達もそれなりにライブやってたよ」
「ほぉほぉ。BREEZEの皆さんって……何歳なの?」
「やっほー!やっと仕事終わったよー!」
あたしのそんな質問は何故かスルーされ、まどかさんがファントムにやって来た。
「あれ?まどか先輩こんばんは」
あ、奈緒が呼んだんじゃないんだ?
「英治~…疲れた。ビール。ビール持ってきて…」
「お前最近よく来るな?そんなに俺に会いたいか?もしかして俺に惚れた?」
「えっと…三咲さんの電話番号は…と…」
「まどか。このビールは俺の奢りだ。だからスマホはしまっとこうな?な?」
「ありがとね!英治!」
そう言ってまどかさんはビールを飲み始めた。あ~、あたしも飲みたくなってくる。
「プハー!英治ー!おかわりー!」
「おかわりは奢りじゃないからな?」
「三咲さんと久しぶりに会いたいなぁ」
「待て、こういうのはタカのポジションだ!俺のポジションじゃない!」
「ま、冗談だけどね。さっきの分もちゃんと払うよ。あ、久しぶりに三咲さんに会いたいのは本当だよ?それより奈緒と盛夏はなんでここにいるの?」
「私達はバンド名を考えよー!ってここに!ね、盛夏」
「そんな感じですー」
「へぇ、なんかいいの思い付いた?」
「それがさっぱりです」
「ケーキ美味しかったですー」
「ケーキ?あんたらケーキ食べてたの?」
「あ?まどかも食うか?賞味期限ギリギリのでよけりゃマジで奢るぞ?」
「あたし英治の弟子で良かったよ」
「ほんと調子いいな、お前…」
「あー、ビールとケーキ。幸せな一時だった…」
まどかさんはとても満足そうだった。
「それで?バンド名の案とか見せてみ。お姉さんが酷評してあげよう」
「あ、はい。こんな感じです」
まどかさんが奈緒から色んなバンド名の書かれたノートを受け取り、ゆっくりゆっくり見ている。ビールを飲みながら。
何かお気に召すバンド名はありましたか?
「ん、奈緒、今からタカ呼びな」
「は?」
お?
「あたしが呼ぶよりは奈緒のが来ると思うし。呼びな」
「は?酔ってますか?」
「うん、それもある。でもバンド名の事で話あるのは本当だし」
「私がかけても来ないかもしれませんよ?ま、まどか先輩がそういうからしょうがなく電話します。しょうがなくです」
そう言って奈緒はニヤニヤしながらスマホを取り出した。あれ?そういう事なのかな?ちょっと残念。
「あ、もしもし、貴ですか?
……あ、はい。奈緒です。今お忙しいです?
………あ、やっぱり忙しいですよね?賢者タイム中でしたか?
……違う?なら何してたんですか?
……………は?電器の紐相手にデンプシーロールの練習してた?バカなんですか?
………え?今なら掴めそう?いやいやいや、ならデンプシーロール出来るようになったら私に試してみます?
……は?デンプシーロール破り?そんなのしないですよ。私の
………え?いやいや…」
奈緒~?話脱線してない?
てか、男の人に平気で賢者タイム中でしたか?って聞けるのすごいね。
「いえ、多分貴の
長い。長いよ奈緒。一体何分お喋りしてるの?
「ほえ?結局キラークイーンに頼るんですか?
………いえ、だから爆弾に変えられる前に」
「よし、奈緒からスマホぶんどってくる…」
おお!まどかさん、さすが!このままだと本題に入らないもんね。
そして貴ちゃんはキラークイーンで、奈緒は世界かぁ。いいなぁ。あたしもスタンド使いになりたい……。
「う~ん、私あんまりBLはわからないんですよね~………あっ」
まどかさんが奈緒からスマホを奪い取った。やったぜまどかさん。
「もしもし?タカ?あたしー!声でわかるよね?
………うん、あんたら一体何分お喋りしてんの?バカップルなの?
……は?奈緒みたいな可愛い女の子と何十分も電話しててぼっちとかありえないと思うんですけど?
………は?うるさい。今からすぐファントムに来い。
……え?嫌?いいの?あたしら今、めちゃ可愛い女子大生と一緒に居るけど?
………はぁ?もうそういうのいいから。
……タカ、真面目な話ね、バンド名の事で相談したいの。お願いだから来て欲しい。
………うん、ありがとね!待ってるよ」
そしてまどかさんが通話を切ってスマホを奈緒に返していた。
「タカすぐ来てくれるってー」
「最初からまどかさんが電話したら良かったのでは?」
「あたしも今そう思ってる……。しかも普通に相談したいって言ったら来てくれるとか、あたしの前半の掛合いもなんだったのか……」
「うっす」
「お、来た来た」
貴ちゃんがファントムにやって来た。
「家でゆっくりしてるのに呼び出しくらうとかマジで俺社畜だわ」
「貴、こんばんはです」
「こんばんは。で?可愛い女子大生どこ?」
「ほらここに」
「美少女JD蓮見 盛夏ちゃんどぅえ~す。ブイ」
「………それで?バンド名の事だっけ?」
お、無視ですか?スルーですか?
「貴ちゃん、貴ちゃん」
「ん?」
「美少女JD蓮見 せ…」
「はいはい。美少女美少女」
む~、何だその反応は~。
「あ、タカこれ。奈緒達が考えてたバンド名のリスト。酷評よろしく」
「は?酷評前提なの?」
そう言って貴ちゃんはまどかさんからノートを受け取っていた。
「どうですかね?」
「うん、どれもこれも中二病くさくて大変素晴らしいですね。もう帰っていい?」
「なっ!?」
「そうなんだよね。どうしたらいいかな?」
「いや、どうするもこうするも手の施しようがないんじゃないの?」
「な!何ですかそれ!私達のバンドの名前ですよ!真剣に考えて下さいよ!」
「いやいやいや、真剣に考えてこれなの?
「た、確かに中二心が疼くようなかっこいい英単語並べただけですけど…」
「
「うっ……」
「
「正解正解!さすが貴ちゃん!」
「タカが来てくれて良かったよ」
「じゃ、じゃあ貴が考えて下さいよ!中二病くさくない名前を!」
「はぁ……じゃあ
「…」
「…」
「…」
「え?何この沈黙?怖いんだけど?」
「いえ、貴にしてはまともだな…と思いまして…」
「いきなり下ネタでもぶっこんでくるかな?とか期待してたのに…」
「ん~?Blaze Future…?炎の未来?いや、違うな~」
何となくどこかで聞いた事あるような?ないような?
あっ!
「blaze a new path to the future(ブレイズ ア ニュー パス トゥー ザ フューチャー)かな?縮めてBlaze Futureとか?」
「まぁ、そうですね」
やった!当たった!
「え?どういう意味なんです?」
えっと確か……
「未来に向かって新しい道を切り開くって意味かな?だったと思うんだけど~」
「うわっ!?タカらしくない!どしたの?」
あ、まどかさんもそう思ったんだ?あたしもそう思います。
「は?まぁ色々ですね?あれがあれでな。あれなもので」
「ハッ!?まさかあれ?私か奈緒か盛夏とラブロマンス狙って結婚出来る未来が切り引かれたとか?そんな感じ?」
「ヒッ!?そんな目で私達を見てたんですか!?」
「フッフッフー、貴ちゃんもやっとあたしの魅力に気付いたか~」
「ああ、言われてみればそうだな。確かにバンドをやって、いつかキュアトロとデュエルしたらマイリーとお近づきになれて結婚出来るかもしれん。いや、結婚する事になるだろう。そういう意味ではありっちゃありか」
「ごめんね、タカ。そういうのは石油を掘り当ててからにしてくれるかな?そしたら結婚してあげてもいいよ?」
「いや、無理だろ?それ」
「わ、私はあれです!顔と性格と年齢をなんとかしてからにして下さい。ごめんなさい」
「顔と性格が仮になんとか出来たとしても年齢は無理だよね?」
「んー、あたしは特に理由はないけどお断りします。ごめんなさい」
「理由無しのダメってもうどうしようもないよね?」
まぁ、あたしは貴ちゃんとならありっちゃありだけどね。一緒に居たら面白いし楽しいし。年齢とかも気にしないし。でも、奈緒が貴ちゃんの事好きなのかと思ってるしな~。さっき断ってたのは好きなわけじゃなかったのかなぁ?
でもここは断ってた方が面白いよね。
「ねぇ?家でゆっくりしてたら呼び出しくらってわざわざ出てきて、バンド名の案を出したらこの仕打ちってなんなの?家帰って泣くよ?」
「じゃ、じゃあ何でそんなバンド名にしたんですか?」
「ん、まぁ色々な…」
「お、教えて下さいよ!気になるじゃないですか!自分達のバンド名の由来くらい知ってたいです!!」
「はぁ……。由来は3つ。まず1つ目。俺らはBREEZEに関係もあるバンドだからな。あ、俺はBREEZEと関係ないけどな。んで、BREEZEがそよ風だから、Blazeで炎な。対抗してみた」
「は、はぁ」
「んで2つ目。………な、奈緒がBREEZEの曲でFutureが好きって言ってたからな…。それで…まぁ、Futureって入れようかと…」
「あ……ありがとう…ございます……そ、そういうとこほんとズルいですよね(ボソッ」
んー?奈緒の顔が真っ赤だぁ?やっぱりそういう事なのかなぁ?
「で?3つ目は?」
「ああ、奈緒も盛夏もまどかも初めてのバンドだし、これをきっかけに未来も切り開けるかもだろ?そういうのとかなんつーの?なんか新しい道標的な?そんなんになってもいいかな。ってな」
「そこにタカは入ってないの?」
まどかさん?
「いや、だからさっき言っただろ?マイリーとの結婚も意味に入れようかな。って」
「何それ、あはは」
まどかさん?なんか寂しそう?どうしたんだろ?
「私はBlaze Futureでいいと思います。かっこいいですし……その…私の事とか考えくれたのかな?って……う、嬉しいですし…」
「あたしもいいと思うよ~」
「ま、奈緒達のバンド名よりは全然いいしね。あたしもいいと思うよ」
「ん、ならBlaze Futureで決定な」
なんだかあっさり決まったなぁ~。
でもBlaze Futureかぁ。なんか気に入ったしいっかな。
「あとな、それとこれだ」
そう言って貴ちゃんは私達に紙の束を渡して来た。
「とりま3曲程作ってみた。割りと簡単なコードで作ってあるし、楽器初心者でも何とかなると思う。盛夏とまどかにはしんどいかもしれんけどな」
「きょ…曲って……」
「タカ、あんた曲作りとかしてたの?」
いつの間に……すごいなぁ……。
「盛夏は?どうだ?やれそうか?」
「ん!大丈夫!あたしに不可能はないのだ」
「そうか、良かった。で、まぁ、バンド名も決まったしライブも視野に入れて活動していこう。やりたいだろ?ライブ」
「や、やりたいです!ライブ!!」
「あたしも~」
「まどかライブの日程とかそういうのとか決めたいから、ちょっと付き合ってくれ」
「ちょっ、いきなり告白?そんないきなり付き合ってくれって言われても…」
「お前の頭どうなってんの?腐ってんの?ああ、そういや腐ってたな」
「盛夏、明日も暇?明日早速、自分のギター買う!付き合って!」
「ほぇ~、いきなり告白?そんないきなり付き合ってくれって言われても…」
「は?そんなわけないでしょ?」
「てか、奈緒まだギター買ってなかったの?」
「はい!英治さんに備品のギター借りて練習してましたけどね!妹も軽音やってるだけあってギターもそれなりに詳しいですし。実はもうFコードもバッチリです!」
へぇ~、奈緒もいつの間に練習してたんだろ?偉いな~。あたしも貴ちゃんの作った曲練習しまくろう。
「まじでか。ってか、俺にギター教えてくれって言ってなかった?せめてギター買いに行くの付き合おうか?」
「いえいえ、お気遣いなく。盛夏に付き合ってもらいますので、貴はまどか先輩とライブの事決めてて下さい」
んー?やっぱり奈緒が貴ちゃんの事ってのは気のせいなのかな?
「それとも私にギターを教えたかったですか?……ハッ!?そしてそのまま大人の恋愛も教えてやるぜとか言って押し倒してくるつもりでしたか!?ヒィ!?つ…通報します!!」
「え?奈緒の目には俺がそんな事する人間に見えてんの?マジで?」
「タカにはそんな願望はあっても、する度胸ないってあたしは信じてるよ」
「え?それ信じてる事になんの?」
やっぱりこの空間楽しいなぁ。Blaze Futureに入れてもらえて良かった。
そして翌日。あたしは奈緒の買い物に付き合うべく駅前でぼけ~っとしていた。
「盛夏!ごめんね。待たせちゃった?」
「ん~ん、全然。あたしも今来たとこだよ?」
「そっか、良かった」
「それよりあたしで良かったの?貴ちゃんとデートの方が良かったんじゃない?」
「せ、盛夏まで何言ってんの!?貴はそんなんじゃないから!」
ふぅん、やっぱりそうなんだ?
「あ、それともやっぱり迷惑だった?」
「全然。あたしも弦とか買っとこうかな?って思ったし大丈夫」
「良かったぁ」
「あ、それでね。今から行くお店はあたしがよく行くお店なんだけど、なんとあの
「え?マジで?あのDESTIRARE!?」
「あくまでも『らしい』だけどね。あたしも会えた事ないし」
「そうなんだ~。今日は会えたらいいなぁ」
「いらっしゃいませ」
「あ、岬さん、ちゃお~」
「あら?盛夏ちゃん、いらっしゃい。今日はどうしたの?」
「友達がギターを買うみたいなんでその付き添いで~す」
「あ、は、はじめまして」
「へー、気に入ったのあったら言ってね。試し弾きもしていいし、おまけも付けちゃうよ」
「あの、えっとレスポールモデルのが良くて…ですね」
「あ、もうどんなギターがいいか決まってるのね。レスポールならこの辺りかな」
「ん~と……わ、高い……」
「ん?奈緒はそのメーカーのレスポールがいいの?」
「あ、あはは。まぁ…うん…」
「そのメーカーのは高いよ?初心者で1本目なら他のメーカーのがいいんじゃないかな?」
「でもこのメーカーのが欲しいんです。その憧れの人がこのメーカーのギターを使ってたみたいで…」
ん?奈緒の憧れの人?あ、貴ちゃんもギターやってたんだっけ?
「そっか、ならさスタンダードタイプじゃなくてこっち辺りにするとか」
「あ、えとレスポールスタジオとかってありますか?」
「ああ、それならこの辺よ。カラーは?拘りあったりする?」
「いえ、カラーは自分の気に入った色にしようと思ってまして」
「じゃあここにあるの試し弾きして、気に入ったのあったら言ってね」
「はい!ありがとうございます!」
「奈緒~」
「ん?何?」
「奈緒の憧れの人。レスポールスタジオ使ってた人」
「え?ふぇ?」
「貴ちゃんだよね~?」
「あ、あは。何言ってるの盛夏。それよりさ。この…」
「な~お~?」
「え、あ、うん。貴…だね」
「そっか。だからレスポールスタジオ?」
「あ…ま、まぁ…」
「なら貴ちゃんに付き合ってもらったら良かったのにさ。さっきもはぐらかされたようなもんだし」
「えと、うんとね…。貴の前で同じギター探すの恥ずかしいっていうか……。それにさ。貴って何だかんだバンドの事考えてくれてるじゃん?曲作ってくれてたり、バンド名も考えてくれてたり…」
うん、そうだね。あれはあたしもびっくりしたなぁ
「貴にバンドやりたいって言ったの私だしさ。何でもかんでも貴に頼るのは……ね。あ、でもだからって盛夏と買い物したいって気持ちはほんとだよ?ほら、私達話も合うしさ。自分を出せるから一緒に居て楽って言うか……。こんな事も素直に話せたしさ?」
素直にねぇ?あたしから聞き出したようなもんだけど…。
「だからカラーは自分の好きなのって思ったのも本当だし。ごめん、やっぱり迷惑だった?」
可愛い。可愛いなぁ、奈緒は。ういやつじゃわい~。
「盛夏…?」
「奈緒はね。一生懸命だと思うよ?」
「え?あ、ありがとう…」
「それは貴ちゃんにも伝わってると思うよ。だから貴ちゃんもバンドの事ちゃんとやってくれてるんじゃないかなぁ?」
「あ、あはは。そうだと嬉しいな」
「だからね。もうちょっと貴ちゃんに甘えてもいいと思うよ?」
「盛夏……。うん、ありがとうね…」
「貴ちゃんの事好き?」
「………ん、わかんない。好きか嫌いかなら好きだけど。私も自分の気持ちがわからないんだ」
ほぅほぅ。そっかそっか~。
「あはは。自分の気持ちなのにね?」
「奈緒は本当に可愛いね~」
「え?」
「あたしは貴ちゃんの事好きかどうか聞いただけだよ?恋かどうかは聞いてないよ?」
「ふぁ!?ふぇ!?な…ななな……」
奈緒は可愛いなぁ。あたしが男なら放っとかないのになぁ。てか、普通にモテてんじゃない?
「あ、あのね!それはね!違うの!あれがあれであれなの!」
「うふ~。ふっふっふ」
「な、何よ……」
「ううん、ギター。どれにする?」
「え?あ?ギター?ギターね。うん」
そして奈緒はうんうん唸りながらギターを選び始めた。
「これ。これにする。真っ赤なレスポール」
「お~、あたしのベースはブルーだし調度いいかも!」
「うん。今日からこのギターが私の…Blaze Futureのギターだよ」
あたしと奈緒がそんな買い物をしてた時。貴ちゃんとまどかさんは3ヶ月後のライブを…昔のドリーミンギグのような。
そんなライブを企画していた。
そのドリーミンギグがあたし達のBlaze Futureのデビューライブになる!
そう思っていた。でも、そうはならなかった。あんな事件を。あんな出来事を誰が予想出来ただろうか?
誰がいたらあの血の惨劇を回避出来たんだろうか……!!
この話の続きは…何故かDival編第5章で語られるのであった!