「そっか。そんな事があったんだ?」
「うん。お尻をめちゃくちゃ叩かれたのは驚いたし痛かったけど、私達のチューナーが決まってくれて良かったよ」
「チューナーか…。拓斗さんもチューナーはいつかは必要になるって言ってたから、私達Lazy Windもチューナー探しはやってたみたいだけど、結局見つからなかったみたいだし…」
私の名前は夏野 結衣。
めっちゃくちゃ久しぶりのモノローグだよ!
昨日は何か笑ってはいけないみたいな企画物の周年記念をやらされたけど、その中でクリムゾンのバンドとデュエルギグをする事になって、危なく負けちゃう所だったけど、何とか私達のチューナーになってくれる人と出会える事が出来た。
チューナーが居なかった時のデュエルは負け負けだったと思うけど…。
私達Canoro Feliceのチューナーになってくれたのは、すみちゃんの私設部隊の一員であり、姫咲とまっちゃんと同じ学校に通うしっきー。
しっきーが私達に加わった事により、デュエルギグはほんとすごくいい闘いになって、勝てはしなかったけど負ける事もなかった。
その後、クリムゾンのバンド、クリムゾンフラムは『うわぁぁ~、やられてないけどやられたぁ~』と言いながらステージから去り、私達は少しだけ演奏をして1日を終えた。
うぅ~、あんまり悪そうな人には見えなかったけど、クリムゾンのバンドって言ってたし、逃がしちゃって良かったのかな?
追っかけようとしたら、春くんと姫咲とまっちゃんに止められちゃったし。
まぁ、それは終わった事だしいいとして!
今日は、架純と前々から約束してたショッピングという訳なの!
ショッピングと言っても、私はまだバイトも決まってないし、お金あんまりないんだけど…。
BlueTearの時の貯金もまだ少しはあるし、パパとママからのいい大人が恥ずかしくないようにって、ありがたい事にお小遣いは少し貰ってるけど…。
それにしても架純はさすがだね。
帽子を被ってサングラスまでして変装してるとに、何人かの人にはBlue Tearの架純って気付かれちゃったもん。
まるっきり変装もしてない私は、架純と一緒に居ても気付かれもしないのに…。
私達は何か買う訳でもなく、ぶらぶらと話しながら歩いていると、ふと架純が足を止めた。
「うん?あれ?架純?どうしたの?」
「……」
架純は私の言葉に無反応。
架純が目を向けている先を私も見てみた。
「わ!メグミちゃんだ!」
「あ、うん。『
架純が観ていたのは街頭モニターに映されるメグミちゃんだった。
メグミちゃんというのは、私達Blue Tear時代の仲間で、
メグミちゃんはBlue Tearの時は、引っ込み思案な性格が災いしたのか、あんまりパッと表に出たりはなかったけど、すごく努力家で、ダンスも歌も人一倍頑張っていた。
でも、Blue Tearが解散後は小さい事務所に行ったって話を聞いていたけど、それからグングンと知名度を上げて、今では知らない人はいないんじゃないの?って思うくらいの売れっ子になっている。
……今はあ~ちゃんってみんなに呼ばれてるからか、春くん達にはメグミちゃんって言ってもわかってもらえなかったけど。
「すごいよね、メグミちゃん。今じゃメグミちゃんが出した歌はいつも売れてるし、テレビでも歌番組からバラエティまで引っ張りだこだもんね!」
「うん、そうだね…」
ハッ…。
私はそこまで言ってしまってから気が付いた。
架純も…。
ううん、架純だけじゃない。
優香も瑞穂も、紹介された事務所がクリムゾンエンターテイメントじゃなかったら、今も3人共メグミちゃんみたいにテレビに出て、歌を歌っていれたかも知れない。
それなのに私は架純に…。
「結衣」
「え?な、何?」
「確かにこうやってメグミちゃんは歌を歌えているのは羨ましいって思うけど、私は…今は楽しんでバンドやってるから」
「架純…」
「いつかLazy Windでメグミちゃんを超えてみせる。ライバルっていうのかな?あはは、日奈子さんの企画アイドルのVivid Fairyででもいいけど。だから、結衣のCanoro Feliceにも負けないから」
「架純…うん!私も!私もLazy Windにも架純にも負けないから!」
「うん。楽しんで音楽やって、お互いを高めていこうね」
良かった。
クリムゾンエンターテイメントの事は、架純達の事以外にも色々あるからモヤモヤするし、やっつけなきゃって思うけど、架純が前向きになって音楽を楽しんでやってくれるようになって良かった。
「だからもう1度改めて謝らせて」
「謝る?」
「うん。南国で再会した時、あの頃の私はクリムゾンが憎くて、楽しんで音楽をやっている人達に嫉妬して、結衣に酷い事をした」
「酷い事?」
「胸ぐらを掴んで壁にドーンって」
あ、あの時か!
「あの時は本当にごめんなさい」
「いいよ、いいよ!頭を上げてよ!私、全然気にしてないし、大丈夫だし!」
「そう?ありがとう」
「私も、私ももしクリムゾンエンターテイメントを紹介されてて、架純達みたいな事になってたら、私もどうなってたかわかんないし…」
私は運良くエデンを紹介してもらって、そこで春くんと出会って、BLASTと出会って、姫咲やまっちゃん、すみちゃんと出会ってCanoro Feliceをやって、そしてファントムで演奏するようになって…。
私はすっごく恵まれてて、運が良かっただけだよ。
……あれ?
そういや何で架純達はクリムゾンエンターテイメントを紹介されたんだろう?
私達のBlue Tearの事務所はクリムゾンエンターテイメントに潰されたのに…。
「そろそろお腹空いてきたね。ファントムにでも行こっか」
「あ、うん。そうだね。今日のランチは何だろう~?」
私はマネージャーからエデンを紹介してもらった。
他のメンバーもマネージャーが事務所や会社を紹介するって言ってたような気がする。
マネージャーが架純達を?
「花梨も何とかしないとね」
「あ、花梨…花梨かぁ。何で架純と私を倒すなんて…」
花梨というのは、Blue Tearの時の仲間で
あの子は小さいカフェに地下アイドルとして紹介されたけど、そこでクリムゾンエンターテイメントの人と出会ってスカウトさされた。
そして架純と私を倒す為にって…。
「あの子をこのまま放っておいたら、私達の次は元Blue Tearの人や楽しんで音楽をやっている人をターゲットにしかねない。私が何とかしないと…」
「確かに花梨の口振りだとそんな感じだったよね。でもさ、架純だけじゃないから!私もいるからね!」
「フフ、そうだね」
そして私達はファントムへと向かった。
・
・
・
「え?何でファントムこんなボロボロになってるの?」
私達がファントムに着いた時、まず目に入ったのが割れた窓と、開けっ放しにされたドア。
昨日、ファントムに来た時はこんな事なかったのに。
「な、何があったんだろう?」
「とりあえず入ってみる?看板は営業中になってるし…」
何でファントムがボロボロになってるのか気になったけど、私と架純はファントムに入ってみる事にした。
「「え?何これ…」」
私達がファントムに入ると、テーブルやイスがひっくり返っていて、所々に割れたグラスの破片なんかもあった。
カウンターにはミオミオやせいちゃんも居るし、他のファントムのメンバーや、春くんやまっちゃん、姫咲も居た。
でも私はたぁくんと一緒に居る人に目を奪われていた。
久しぶりで、ずっとお礼を言いたいと思っていた人で…。でも、今日改めて、何で架純達をクリムゾンエンターテイメントに紹介したのかと問いただしたいと思った人。
「何でマネージャーがファントムに…たぁくんと一緒に居るの?」
私はびっくりした気持ちを落ち付かせて、マネージャーの方へと走って行こうとした。
-グイッ
「わっ、ふぇ?か、架純?」
走って行こうとしたけど、架純に肩を掴まれて制止されてしまった。
「結衣、違うから。…大丈夫」
え?架純?大丈夫って…?
私がそう思って架純の方へ目をやった時、たぁくんとマネージャーの側に居た奈緒ちんが声をあげた。
「ちょ、ちょっと!秀さん!やっぱりクリムゾンのミュージシャンだったんですか!?マジですかガチですか!?」
え?ヒデポンが…マネージャーが…クリムゾンのミュージシャン?
ヒデポンは私達Blue Tearのマネージャーをしてくれていた人だった。
ん?あれ?これって周年記念のお話だよね?
春くんから始まって、姫咲にバトンタッチされて、そして前回がまっちゃんで今回が私。
だから、これは周年記念の話で、誰かの仕込みなんだよね?
ヒデポンが、マネージャーがクリムゾンのミュージシャンだったなんて…嘘だよ…。
「結衣。本当に大丈夫だから。ヒデさんはクリムゾングループのミュージシャンだった。でもね、あの人は私達の味方だよ」
え?味方?
クリムゾングループのミュージシャンだったのに?
あ、そういえば秦野っちのパパとママもクリムゾンのミュージシャンなんだっけ?
「ちょっとヒデさんと話してくるね」
そう言って架純はマネージャーの方へと向かった。
……けど、すぐに戻ってきた。
「どどどどど、どうしよう!?タカさんも居るんだけど!?きょ、今日はお買い物って思ってたし、カジュアルに動きやすい服装で出て来たのに…!き、着替えに戻ってもいいかな!?ケホッ、ケホッケホッ」
架純!?たぁくんが居たくらいでそんな咳出ちゃうくらいに興奮したの!?
私と架純がそんなやり取りをしていると…。
「あ、架純、結衣。良かった、お前らもファントムに来てくれたんだな。お前達にも会いたいと思っていたんだよ」
私達にはそんなやり取りなんか無かったかのように、マネージャーが声を掛けてきた。