バンやろ外伝 -another gig-   作:高瀬あきと

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第4話 ライブ大会の予選のお話

「とうとう文化祭の日がやって来たね!」

 

「仕事の一環ではあるけど、渚と一緒に文化祭まわれる事になって良かったよ」

 

「だよね!木南さんや先輩と一緒だとザ・仕事!って感じが抜けないだろうけど、奈緒と一緒なら楽しいだろうしね!」

 

私は佐倉 奈緒。

秋月グループの 権力(ちから)を存分に発揮した姫咲ちゃんのおかげで、私達は仕事という形で文化祭を楽しめる事になりました。

もちろん仕事ですのでちょっとした雑務はあるんですけど、基本的には文化祭を楽しめるスケジュールになっています。

 

雑務の中には音楽大会を観る事も含まれているんですが、妹の美緒も音楽大会には参加しますし、元々観たいと思っていたので、私的にはとてもラッキーです。

 

ただそれにしても…。

 

「お~。この学校の文化祭では一般参加もオッケーな大食い大会も開催されるのか~。あたしこれに参加したい~」

 

「うーん、あたしは大食いってのはさすがにパスだけど、時間的にも余裕あるし盛夏が出るなら応援しよっかな」

 

「盛夏も香菜もはしゃぎ過ぎよ。奈緒と渚は一応仕事という形で文化祭に来ているのよ。2人の邪魔をする訳にはいかないわ」

 

何で盛夏と香菜と理奈も居るんでしょう?

 

「てか、何で盛夏と香菜と理奈が居るの?」

 

あ、渚が聞いてくれました。

 

「奈緒がこの学校の文化祭担当だと聞いた訳だし、もしかしたら予選にGlitter Melodyが出るかもと思って来ただけよ」

 

「あたしは~、せっかくの文化祭だし奈緒と遊びたかったから~」

 

「あたしは理奈ちも盛夏もこの学校の文化祭に行くって言ってたから何となく」

 

盛夏ったら何て可愛い事を言ってくれるんでしょうか。

危なく抱きつく所でした。

 

「そっか。なるほどね。でも美緒ちゃん達のGlitter Melodyの予選会場ってこの学校なのかな?奈緒は聞いてる?」

 

「うーん、結局家を出る時も教えてくれなかったんだよ。一応どのバンドがどの学校で予選をするのかは、そのバンドのファンが殺到してもって事で内緒にしとくように言われてたみたいでね。でも『あ、でも理奈さんが聞いてくれたら理奈さんには教えちゃうかもはぁはぁ』とか言ってたよ?」

 

「そうなの?だったら美緒ちゃんに直接聞いたら良かったわね」

 

美緒も何で家族の私には頑なに教えてくれなかったのに、理奈には教えちゃうかもなんでしょうか。

愛の差かなぁ…。お姉ちゃんは寂しいです。

 

「ねぇねぇ~。それよりあたしはこの大食い大会に参加してよき~?」

 

あ、そうでした。

大食い大会は確かライブ大会が行なわれる時間までに終了予定だとかで、午前中に行なわれるんでしたね。

盛夏の希望なら私は聞いてあげたいんですけど…

 

「私的には雑務も問題ないし大丈夫だよ。渚の方はどう?」

 

「うちの雑務もライブ大会の後にやっちゃえばいい感じだし大食い大会に出たいなら別にいいよ」

 

「私も目的はライブ大会な訳だし、盛夏が出たいのなら問題ないわ」

 

「あたしもさっき言ったけど全然オッケーだよ」

 

「わぁいわぁい♪やったー!

絶対優勝するぞぉ~!あたしが優勝したら優勝賞品の温泉旅行はこの5人で行こうね~。ちょうど5人分のチケットらしいし~」

 

え?優勝賞品の温泉旅行?

わ、ホントです!優勝者には温泉旅行2泊3日を5名分プレゼントって書いてます!

盛夏にはめちゃくちゃ頑張ってもらいたいです!

 

「とうとう私の本気の応援を見せる時がきたね!」

 

「温泉か~。あたし行きたい所あるんだよね~」

 

「温泉…温泉と言えば日本酒…盛夏、応援しているわ」

 

私もですけどみんなどれだけ温泉に行きたいんでしょう。しかも参加せずに応援だけとは…!

まぁ、盛夏が出場するなら私達の優勝は無理でしょうしね。

 

「そもそも高校生の文化祭で大食い大会とか温泉旅行が賞品とか凄いよね。私の学校なんて大した事してなかったよ?関東と関西の差?」

 

「うちも似たようなもんだったよ。定番のお化け屋敷とかカフェとか、ちょっとしたゲームとか?」

 

「私の学校には文化祭なんてあったかしら?」

 

「そりゃいくら何でもあるんじゃないの?私はぼっちだったし、学生生活とは無縁だったから私のクラスが何をしたのかすら覚えてないけど」

 

「理奈も奈緒も特殊な学生生活だったもんね~」

 

特殊!?特殊って訳じゃないですよ!?

ただすべての事に無関心だっただけで!

 

それから大食い大会の参加申請をして、少しぶらぶらと学生さん達の催し物を見てまわりました。

こうやって色々見てまわってると、私も学生時代にちゃんと文化祭を楽しんでたら良かったなぁ。

って気持ちがなくはないのですが、学生時代を思い出すと微塵も感じなくなっちゃいました。

 

あ、でも今のファントムのみんなで何かするってのは楽しそうです。

企画バンドで…ってのなら、日奈子さんや手塚さんに頼めば何か面白い事やってくれそうですけど。

 

「お、そろそろあたしは大食い大会の時間だぁ~。あたしは1人寂しく戦場に向かいますぅ~。って訳で応援よろしくね~」

 

「あ、もうそんな時間なんだ?私達も応援しっかりするからね!」

 

「特等席で応援してるからサクッと優勝決めてきてよね」

 

「ほ~い。では行ってきますぅ」

 

私と香菜から労いの言葉を貰い、盛夏は戦場へと旅立つのでした。

 

「ねぇ理奈」

 

「渚?何かしら?」

 

「盛夏ってさ。さっきぶらぶらしてる間も焼きそばとかお好み焼きとかフランクフルト食べてたけど大丈夫なのかな?」

 

「その合間にクレープと唐揚げも食べてたわよ。私も香菜に大丈夫なのか聞いたのだけれど、『え?大丈夫じゃない?盛夏だし』と言っていたわ」

 

「飲み会の時もよく食べるなぁとは思ってたけど、あれだけ食べて何であのスタイルを保てるんだろ?」

 

「本当に理不尽よね」

 

 

 

 

私達は盛夏と別れた後、大食い大会の会場に向かいそれなりに良い席をゲットする事が出来ました。

 

それなのに私達の席の隣に座って来た人が…。

 

「いやー、まさかこんな所で奈緒ちゃんと理奈ちゃん、渚ちゃんに会えるとは!これって運命感じちゃうよね!香菜ちゃんとはちゃんと話するのは初めましてだね」

 

「な、なんでヒデさんがこんな所に居るんですかね?」

 

「私は先日の件をまだ許した訳ではないわよ?」

 

「今日は香菜が居てくれてるから、私はヒデさんの相手しなくて良さそうだよね」

 

「ファントムでも絡んでなかったし、飲み会の時も席は離れてましたもんね。でも、この3人に手を出したらタカ兄に◯されちゃいますよ?」

 

貴に◯されるのか何ですかね?

ってか、ヒデさんが私達に手を出したりする訳ないじゃないですか。

今でもずっと澄香さんを想ってるって話ですし。

 

「それで?ナンパと新しい事務所のバンドメンバーの勧誘に忙しいはずの秀さんが、何故高校の文化祭なんかに来ているのかしら?」

 

「あ、あはは。手厳しいなこりゃ。あ~、俺の事務所でバンドをやってくれるメンバーはまだまだ募集中ではあるんだけどね。うちの唯一のバンド。

そのバンドメンバーのボーカルが所属してるバンドが今回のこのライブを解散ライブにするみたいでね」

 

「解散ライブ?ですか?」

 

「うん。そのバンドの子達は高校3年なんだけどね。

ボーカルの子以外はこれから大学受験とかで、バンドをやっていくってつもりはないみたいで。本気で音楽だけやっていきたいってボーカルの子だけをうちにスカウトしたんだよ」

 

「それはボーカルの子には寂しい話ですね」

 

「あはは、まぁボーカルの子以外は正直、メジャー狙ったりもしてないし、今はまだデュエルギグで勝てる程のレベルでもないしね。みんな学生時代の楽しい軽音部ってつもりでやってたみたいなんだよ。あ、もちろんその子達も一応うちにスカウトはしたんだよ?設備もそれなりに整ってるし講師もちゃんと居るしね。それでもやっぱり…断られてね」

 

そうなんですね。

それでもこれからはバンドをやるつもりがないなら強制は出来ませんもんね。

バンドや音楽って楽しんでやるものですし。

 

でもヒデさんの事務所。

昔に貴達に潰されて、その後Blue Tearの事務所を作るもクリムゾンエンターテイメントに潰されて…。

それから1年も経ってないのに、それなりに整った設備と講師を用意出来るなんて結構凄いんですね。

 

「それでそれで?何で大食い大会の客席に居るんです?」

 

「ああ、それね。それは俺も香菜ちゃん達に聞きたいとこではあるけど、俺の場合はそのバンドのプロデューサーの子がどうしてもこの大会に出たいって言うからさ」

 

「へぇ。私達も大食い大会に盛夏が出たいって言うからそれで」

 

「え?盛夏ちゃんが出るの?マジで?大食いじゃ誰も盛夏ちゃんに敵わないんじゃないか…?」

 

あれ?確かにこないだの飲み会でも盛夏はめちゃ食べてましたけど、大食いじゃ誰も盛夏に敵わないって程食べてましたっけ?

 

『お待たせしました!それでは大会参加者の20名の方の登場です!

まずはエントリーナンバー1!"我が校相撲部のエース!大山田 小太郎選手!"』

 

私達がお話をしているとアナウンスの方が大会参加者を1人ずつ紹介してくれました。参加者って20人も居るんですね。

あの二つ名みたいなのは誰が考えているんでしょう?

ってか初出の人名なのにルビが振られてないって事は、ちょい役なんでしょうね。

 

それから数人の紹介が終わり、盛夏の番になりました。

 

『続きましてはエントリーナンバー13!"見よ!当方は淡く萌えている!蓮見 盛夏選手!"』

 

あ~、これ東方不敗の『見よ、東方は赤く燃えている』のパロですね。考えたの盛夏だろうなぁ。

 

『続きましてエントリーナンバー14!"滴る涙は露草か! 六堂 瑠璃(ろくどう るり)!"』

 

「え?六堂 瑠璃って…」

 

-ざわざわ…

 

「え?本物?」「ルリルリが何でうちの学校に…」「うぉぉぉ、本物のルリルリだ…!」

 

まわりもざわめいてますね。

そりゃそうでしょうね。私でも知っています。

 

元Blue Tearの六堂 瑠璃。通称ルリルリ。

歌では架純ちゃんや優香ちゃん、瑞穂ちゃんの方がセンターという事もあり、一際秀でていましたが、ルリルリさんもしっかりとソロパートがありました。

でもそれ以上にルリルリさんが凄かったのがダンス。

 

ルリルリさんのダンスはセンター3人組も敵わない程の圧倒的なパフォーマンス力がありました。

それでしっかりとファンを掴み、Blue Tearの中でも人気はトップの方でした。

そしてBlue Tearのキャプテンだった人です。

 

「結衣や架純さんをいつも間近で見てるし、元アイドルのオーラには馴れたつもりだったけど、やっぱりルリルリも凄いオーラだねぇ」

 

「六堂さんが大食い大会に参加している。つまり、秀さんの言っていたプロデューサーが彼女って訳ね」

 

「ああ、瑠璃はBlue Tear解散後も紹介した事務所に行かず俺の手伝いをしてくれててね。本来なら新しいバンドのボーカルになってほしかったんだけど、本人の希望でバンドのサポートとプロデューサーをしたいってね」

 

へぇ~、そうなんですね。

せっかく歌もダンスも凄いのに勿体ない気もします。

 

「ま、今となってはサポートとプロデューサーをしつつ、今のバンドのサブボーカルとしてステージに立ってもらいたいと思ってるけどね。そうすれば瑠璃の希望も叶えてやれるし」

 

なるほど。メインボーカルとしてじゃなく、サブボーカルとしてって事ですか。

音楽の方向性にも寄るんでしょうけど、ツインボーカルもかっこいいですよね。

 

『さぁ!それでは早速大食い大会のスタートです!ルールはたった1つ!制限時間内に運営の用意した10品の料理を、一番最初に全て食べきった人が優勝です!制限時間を越えても10品全てを食べきれなくても優勝は出来ません!もちろん料理にも各々制限時間はございますのでご注意下さい!さぁ!これよりスタートです!!』

 

…って待って下さい!

それって時間内に全部食べきれなかったら優勝者は無しって事ですか!?

 

「なるほど。運営は最初から誰も優勝させるつもりはないという訳ね。豪華な優勝特典もこれで納得がいったわ」

 

「え?理奈ち。それってどういう事?」

 

「制限時間内に全ての料理を最初に食べきった人が優勝。つまり、盛夏ちゃんが参加者の中で一番多く食べても、運営の用意した料理を制限時間内に食べきれなかったらアウトって事だよ。それとは別に各々の料理に対しても制限時間はあるからそれもクリアしないとアウトって事かな」

 

「え!?それってずるくない!?」

 

香菜も渚もわかっていなかったのかヒデさんが説明してくれました。

確かにこんなのずるいと思います。

盛夏は大食いでも早食いではないですしね!

 

でも盛夏ならやれちゃうんだろうなぁ~。

 

『それでは!最初の料理の登場です!まずは当校の相撲部からご自慢のちゃんこ鍋の登場です!制限時間20分の間に5人前を食べていただきます!』

 

「ちゃんこ鍋5人前を20分!?」「無理だろ普通!」「元アイドルのルリルリに何て量を!」「ごっつぁんです!」

 

会場からはブーイングらしきものが飛んではいますが…。

 

「いやぁ、制限時間あるとはいえ、ちゃんこ鍋5人前程度なら盛夏なら余裕っしょ」

 

「瑠璃も大食いだからなぁ。これくらいなら大丈夫かな」

 

「さすがに美味しそうなちゃんこ鍋が運ばれて来たわね。とても日本酒に合いそうだわ。ねぇ、渚」

 

「わかってるよ理奈。今度志保に頼んでうちで鍋パしよう」

 

「わ、いいなそれ。私もお呼ばれしたい」

 

私達は盛夏なら余裕だろうと思っていました。

 

しかし、私達のこの余裕という想いは過信だったのです。ちゃんこ鍋が運ばれて10分ちょっと経った頃、盛夏の箸は止まってしまいました。

 

「え!?盛夏!?お鍋5人前くらいで箸が止まるなんで!」

 

「まさか!?体調が悪いんじゃ!」

 

「え?5人前って結構な量だよね?」

 

「そうね。この学校の1人前がどの程度かはわからないけれど、高校の相撲部員の5人前だものね」

 

まさか本当に体調が悪いんじゃ…。

 

『あの~…すみませ~ん』

 

『お、蓮見選手?どうされました?さすがにギブアップですか?』

 

『いえいえ、お鍋のシメは何かなぁ?って思いまして~。ぞうすいにうどんにチャンポン。シメ次第でお出汁の量も調整したいので~』

 

え?シメ?

 

『シメ…ですか?すみません、シメは用意してませんでして…』

 

『ふぇぇぇぇぇ…』

 

『あ、思い付きました!もしご希望でしたら、ご飯はたくさんありますので、ぞうすいにしてもらってもいいですよ。そのかわり、ぞうすいを追加した場合も制限時間の延長や次の料理が少なくなるとかはございませんので』

 

『わぁ~い!やったぁ!それじゃぞうすいの追加をお願いします~』

 

思い付きましたって何ですかね!?

てか、盛夏はそのルールでぞうすいの追加をお願いしちゃうの!?いや、盛夏だから大丈夫そうですけど!

 

『なんやって!?しもうた!ぞうすかば追加出来るなら出汁ば残しとったら良かった…!もう全部飲んでしもうたばい…!あっ…』

 

周りが一瞬シーンとしました。

今のって博多弁?九州弁?ですかね?

盛夏の隣で大食いチャレンジをしているルリルリさんの発した言葉でした。

 

「そういやルリルリってBlue Tearのリーダーなのに、テレビでもライブでもあんまり喋らないって…」

 

「そうなんだよね。あれが瑠璃のボーカルをやらない理由。台本通りなら大丈夫なんだけど、緊張したり興奮したり、突発的な発言では地元の言葉が出ちゃうみたいで…。普段は標準語で話すように気をつけてはいるみたいなんだけど…」

 

「えー?梓お姉ちゃんもライブの時は普通に関西弁だったし別にいいと思うんだけどなぁ。博多弁も可愛いし」

 

「渚も普段もMCも関西弁が出ないように気を付けてるじゃない」

 

「あ、渚ってわざわざ気をつけてたんだ?」

 

「Artemisの梓ってボーカルはずっと関西弁だったって事も伝えてはいたんだけどね。本人は恥ずかしいみたいで。おかげでMCはほぼ架純と優花に任せっきりだったしな」

 

まあ、私も方言とか気にせず気楽にやればって思いますけど、本人が嫌ってなるとどうしようもないですもんね。

 

それにコンプレックスって周りがどうってより、自分がどうって感じちゃうものですしね。

貴みたいに周りに言われ過ぎてコンプレックスの塊になっちゃうのもどうかと思いますけど…。

 

それから盛夏もしっかりとちゃんこ鍋を完食し、20人も居た参加者も8人が脱落し、その後の特大カツ丼や超大盛パスタ、スペシャルラーメンなどが続き、次が9品目となりました。

 

ここまでで残った大会参加者は盛夏とルリルリさんと、紹介すらなかった一般人の人。

ちなみに最初に紹介された大山田って人は、最初のちゃんこ鍋で脱落してました。

 

「次でやっと9品目の料理か…」

 

「盛夏はもちろんとして、しっかりルリルリも残ってるのが凄いよね~」

 

「それより私は思ったのだけれど…」

 

「ああ、さっきのスペシャルラーメンだよね?謎の小さいOLとその友達のベースケースを背負ったJKが、死んだ魚の目をしたおっさんが食べきれない程のラーメンを監修しましたって、美来お姉ちゃんと美緒ちゃんと先輩みたいだよね?」

 

「やっぱり理奈も渚もそう思いますよね…。美来さんはともかくうちの妹は何やってんでしょう…。貴も死んだ魚の目をしたおっさん呼ばわりとか…」

 

本当に何なんでしょうこのお話…。

 

『さぁ!続きましては9品目!近所の大学の学食からご協力いただきました"学生さんもギブアップ!超ウマカラカレーライス"です!しかも今日に限りの特別限定でいつもの量の1.5倍です!』

 

は!?この土壇場でいつもの量の1.5倍ですか!?

 

「あ、これうちの学食のカレーじゃん?」

 

「盛夏ならこれは余裕ね。いつも3杯は食べてるのだし。それも予算の都合で3杯で我慢してるって涙ながらに言ってるものね」

 

カレーは盛夏の得意分野ですし全然余裕でしょうね。

あ、ほら、思った通りです。

ルリルリさんも一般人の方もちょっと辛そうな表情で食べてますが、盛夏はしっかりおかわりを所望しています。運営の方も涙目になってますね。

 

そして9品目も終了し、とうとう最後の10品目になりました。

 

『さぁ!盛り上がってました大食い大会も次でラストの品目です!正直ここまで食べきれる人は居ないと思っていました!我々運営側の誤算であります!名もなき一般人の方は脱落しましたので、残りは蓮見選手と六堂選手の一騎討ちです!どうしてこうなった!?』

 

やっぱり優勝する人(完食出来る人)は出て来ないと思ってたんだろうなぁ~。

 

『それでは最後の料理の登場です!最後の料理は優勝者を決めるのに相応しいバトルです!皆さんご存知の"カッペヌードル大盛り"!お湯を入れるところからスタートし、制限時間の1分以内に食べきれた人が優勝です!』

 

……は?

 

「ちょ、待ってよ。お湯を入れるところからスタートで1分って…」

 

「カッペヌードルはお湯を入れて3分…。やはり優勝者は出さないつもりなのね」

 

「ダメだな。瑠璃はいつもカッペヌードルを前にすると『普段は固麺が好きばってん、カッペヌードルだけは違うっちゃんね。本来なら3分待つところば5分待って、麺ばデロデロにして食べるとが好きなんばい』って言って5分待ってから食べるからな…」

 

「それ普段から博多弁使ってません?本当に標準語を使うように気をつけてるんですか?」

 

「カッペヌードルを前にして3分待つところを5分も待てるとは…!先輩や美緒ちゃんや美来お姉ちゃんにはそんな忍耐力なさそ~」

 

『さぁ!これよりスタートです!何とかこれで脱落してくれそうで運営側としては安心しております!』

 

このアナウンサーの方って色々ぶっちゃけ過ぎてません?

そしてスタートのタイマーがカウントされてから、運営のお手伝いのような方が、盛夏達の前にあるカッペヌードルにお湯を注ぎ始めた。

 

蓋を閉じてこれから3分待つ事になります。

やっぱり優勝者を出すつもりはなかったんですね。

でも盛夏も思いっきり食べる事は出来た訳ですし、きっと満足してくれてますよね。

 

って思っていたんですが…。

 

 

『ごちそうさまでしたぁ~。ポリポリ』

 

 

『え?は?』

 

タイマーはまだ30秒にも達していません。

だけど、そんな時に盛夏から発せられた言葉は『ごちそうさま』でした。

 

『えっと…あの…蓮見選手?』

 

『ルールに3分待ちなさいってありませんでしたので~。もう食べちゃいました~』

 

『え!?あ!ホントだ!』

 

『そげんルールん穴ばついた事ば…。あ、もう優勝のうなったけん5分待ってから、うもういただきます』

 

本当に方言を使わないように気をつけてるんですかね?

 

『これってあたしの優勝ですか~?』

 

『うぅ…うぅ…はい…蓮見選手の優勝です…』

 

『やったぁー!大食い大会に優勝したぞーっ!ひゃっはーっ!!!!』

 

あ、どうやら運営さんの思惑通りにはいかずに盛夏の優勝に決まったようですね。

盛夏も飛び上がって、天下一武道会で優勝した悟空みたいに喜んでいます。

 

「やった!温泉だ温泉!」

 

「う~ん、どこの温泉がいいかな?あたしはここにずっと行きたいと思ってたんだけど、理奈ちは何処がいいと思う?」

 

「私は日本酒が美味しい所が…とは思うのだけれど、香菜はその温泉旅行の雑誌を何故今日この場に持って来ているの?」

 

 

 

 

「さっすが盛夏だよね!あたしは優勝出来ると思ってたよ~」

 

「まぁ、盛夏より食べる人って身近では見たことないですしね。でもラーメンだけってなると美緒と美来さんがいるかぁ~」

 

「私は正直驚いたわ。まさかここまでとは…」

 

「私も私も!私なら絶対最初のちゃんこ鍋でギブアップだよ」

 

「盛夏ちゃんが出るとは知らなかったから、もしかしたら瑠璃なら優勝出来ると思ってたんだけど」

 

「私も食べる事には自信あったんですけどね。盛夏さんの食べっぷりはびっくりしました」

 

あ、ルリルリさんが標準語喋っています。

本当に博多弁にならないよう気をつけてはいるのかな?

 

という訳で、私達は優勝した盛夏の授賞式が終わった後、同じ目的地だからとヒデさんとルリルリさんとも合流して一緒にライブ大会に行く事になりました。

 

それというのも、どうもヒデさんの事務所のバンドメンバーであるギタリストの男の子も、この高校の生徒らしく、ライブ大会を観るのに良い席を取ってくれるとの事でしたので、私達はお言葉に甘えさせてもらう事にしました。

 

「ふぇぇ…まだちょっと食べ足りない~…」

 

「盛夏はまだ食べ足りないの?何で?」

 

「そうなのですね。六堂さんも私達のライブを観てくれてたんですね。ありがとうございます」

 

「いえ、お礼を言いたいのは私もですよ。おかげ様でたくさんの刺激を頂きました。…Canoro FeliceとLazy Windのライブも素敵でした。結衣も架純もまだ演奏は荒いとはいえ、凄いミュージシャンになったと感じました」

 

「結衣って本当に楽しそうに踊るようにギター弾くもんね」

 

「…社長も瑠璃さんも遅いッスよ。って、その方達がファントムのミュージシャンの方達ッスか?」

 

「ああ、(けい)。待たせて悪かったな。

この方達がファントムのミュージシャン。Blaze Futureの奈緒ちゃんと盛夏ちゃん、Divalの渚ちゃんと理奈ちゃんと香菜ちゃんだ」

 

「うす、はじめまして。オレは…」

 

ヒデさんが慶と呼ばれる 二階堂 慶(にかいどう けい)くんに私達を紹介し、また二階堂くんも私達に挨拶をして自己紹介をしてくれました。

 

その後もライブ大会の観賞の為に、私達を席まで案内してくれて、ライブ大会が始まるまで話題が途切れないように、私や盛夏、渚と理奈とか、私達ファントムのメンバー同士の会話も邪魔にならないようにと気遣いまで出来た男の子でした。

 

ですが、自己紹介の後の言葉…。

 

「すみません。オレはBlaze Futureの方達やDivalの方達、Canoro Feliceやevokeの皆さんも凄いミュージシャンだと思ってます。でもオレはやっぱり社長や瑠璃さんの音楽が最強だと思ってますし、Ailes Flammeだけはオレは認められません…」

 

私達に好意は見せてくれましたし、挨拶や言葉遣いも丁寧に接してくれていますが、『Ailes Flammeだけは認められない』その言葉が私にはすごく引っ掛かりました。

 

江口くんも秦野くんも内山くんもシフォンちゃんも。

確かに凄いミュージシャンかと言われれば、駆け出しのミュージシャンという感じはします。

 

でもそれは私達も同じ。

いくら元BREEZEのtakaさんの居る私達Blaze Futureも渚達のDivalもCanoro Feliceも。

最近は登り調子のevokeや大人気のFABULOUS PERFUMEも、プロの方々の足元にも及ばない ミュージシャンと言えるレベルだと思う。

それこそAiles Flammeと遜色もないと言ってもいいくらいです。

 

なのに何故Ailes Flammeだけ…。

 

「おー!そろそろ1組目のバンドが出てくるみたいだね!どんなバンドか今からすっごく楽しみだよ!」

 

「う~ん…あたしはこの2組目のバンドが気になるかも~」

 

「盛夏が気になるバンド?それはどんなバンドなのかしら?」

 

「いや~、気になるっていうか~」

 

盛夏が気になるバンド…か。

どんなバンドなんだろ?でも今は二階堂くんの方が気になります。

聞いてみてもいいですかね?

 

「あ、あの…に、二階堂くん、ちょっといいですか?」

 

「あ、はい。奈緒さ…いや、佐倉さんでしたっけ?なんッスか?」

 

「あ、奈緒でも大丈夫ですよ。Blaze Futureでも奈緒表記ですし。って、それよりもですね。何でAiles Flammeだけ認められないのか私はそれが気になってまして…」

 

「Ailes Flammeの事…スか。まぁ、奈緒さんにとっては仲間ですもんね。実はオレはAiles Flammeのライブは観たことないんスけど…」

 

\\ワァー!//

 

「あ、1組目が出て来ましたね。すんません、続きは1組目が終わった後に…」

 

「あ、ごめんなさい。すみません、全然いいですよ。今は1組目のライブを楽しみましょう」

 

1組目のライブが終わったら教えてもらえるのかな?

二階堂くんの事が気になりますけど、今はライブに集中しましょう。

 

 

 

 

「今のバンドもなかなか良かったね!」

 

「渚ちゃんもそう思う?いや~、思い切ってうちの事務所にスカウトしちゃおうかなぁ~」

 

「社長は何を言ってるんですか。確かにいいバンドでしたけど、余計な予算はありませんよ。今は」

 

1組目のバンドの演奏が終わりました。

渚やヒデさん、ルリルリさんが絶賛してるのも頷けるくらい明るくポップでいいバンドでした。

 

「あ、すんません奈緒さん。Ailes Flammeの事…ッスよね」

 

私が感慨に耽っていると二階堂くんから話し掛けてきてくれました。

 

「はい。聞かせて頂けますか?」

 

「はい…オレはAiles Flammeの演奏を観たことないんスけど、江口や秦野、内山やシフォンの演奏は突飛して上手い訳じゃないけど、希望を持つような、元気になるような音楽だって聞いてます」

 

そうなんですね。

でもそれなら何故…。

 

「江口や内山やシフォンには会った事ないんスけど、オレの実家は定食屋をやってまして、オレの両親と秦野の両親は定食屋仲間って事で、昔からいい仲間でありライバルであり、そんな関係だったんスよ。それでオレもガキの頃は秦野とも仲が良かったんスけど…」

 

秦野くんのご両親と二階堂くんのご両親が同じ定食屋仲間?昔から…。

そして秦野くんと二階堂くんも仲が良かったのなら、何故そんな風にAiles Flammeの事を…。

 

「あれは…オレと秦野が親父達の定食屋の師匠である人の所に行った時の事ッス」

 

 

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『味皇帝さまー!』

 

『今日も亮と仲良く遊びに来ました!』

 

『ハッハッハ。亮くんも慶くんも元気だな。どれ、今日のお昼ご飯はワタシが直々に振る舞ってあげよう。何が食べたいかね?』

 

『お蕎麦ー!』

 

『おうどんー!』

 

『ハッハッハ。亮くんがお蕎麦で慶くんがおうどんか。残念だけど、どちらかに決めてくれるかな?』

 

『慶、お前うどんを諦めろよ。オレは蕎麦が食べたい』

 

『何言ってんだよ、亮は。蕎麦よりうどんの方が美味しいじゃん』

 

『あ?うどんなんてただ太いだけの小麦粉の塊じゃねーか』

 

『あ?亮、お前頭沸いてんのか?うどんバカにすんなよ。蕎麦こそ蕎麦の実の塊じゃねーか』

 

『『あ?やんのか?』』

 

『ハッハッハ!よろしい!

では亮くんが究極のお蕎麦を!慶くんが志向のおうどんを作って、このワタシ!味皇帝に振る舞ってみせよ!この味皇帝が蕎麦かうどん、どちらが優れているか見極めてしんぜよう!』

 

『『おもしれぇ!上等じゃねーか!』』

 

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「そしてオレと秦野は料理対決をする事になり、味皇帝様に優劣を決めてもらおうと思ったんスけど、結果はガキのオレらに美味い飯が作れるはずもなく、『どっちも不味い』と言われて引き分け。それからオレと秦野は名字で呼び合うようになり、仲違いをしたんス」

 

しょ、しょーもなっ!

聞いて損しました!このお話もう1万字超えてて最近じゃ長い方のお話なのに、なんてしょーもない理由で文字数を…!

 

てか、その味皇帝様もいったい何なんですかね!?

子供達にお昼ご飯振る舞ってやるって言って、結局自分は作らず子供達に作らせて、しかもどっちも不味いの一言で片付けるとか大人としてどうなんですか!?

 

「あいつはまだうどんより蕎麦の方がいいと思っているんでしょう。だからオレは…秦野の事はライバルと思っていますし、秦野のいるAiles Flammeは認められません」

 

てか、二階堂くんも本当にそれどうなんですか!?

昔の事ですし、それ音楽関係ありませんし!

確かに秦野くんは今もお蕎麦がめちゃくちゃ好きですけど!

 

「お、準備も終わってそろそろ2組目が出てくるみたいだよ」

 

「盛夏が気になるって言ってたバンドだよね?どんな感じのバンドなの?」

 

「いや~…どんな感じなのかは知らないけど~。ただこのバンド名って~」

 

「盛夏の言いたい事はわかったわ。香菜や渚もさっき受付で貰ったリストを見てみなさい。盛夏の気になる理由がわかるわよ」

 

あ、盛夏が気になるって言ってたバンドさんの登場ですかね。

さ、しょうもなかった二階堂くんの因縁はサッサと忘れてライブを楽しみましょうかね。

 

そしてステージに上がってきたメンバーを見て、私は…私達は驚きました。

 

「え?あれ?シフォン?何でステージに?」

 

ステージに上がって来たのはシフォンちゃんでした。

そしてその後に可愛い男の娘になった内山くん、この世の者とは思えないほど綺麗な男の娘になった秦野くん、何故か全身モザイクだらけになった江口くんがステージに上がって来ました。

 

「「「「(な、何やってんのあのアホの子達!)」」」」

 

「やっぱり渉ちゃん達かぁ~。エルフラコってバンド名だから気になってたんだよね~」

 

「あは、あははははは!そっかそっか。このライブ大会って女子限定だから…あははは、タカ達に教えてやったら大爆笑しそうだな!」

 

いやいやいやいやいや、本当に何やってるんですかあの子達!

今は文化祭真っ最中のハズですよね!?

あ、そういや貴と三咲さんのお話の時に何故か渉くん達が居ないとか言ってましたっけ…。

 

-バターン!

 

とか、考えているといきなり二階堂くんが倒れてしまいました。

そりゃずっこけちゃいますよね。

ライバルだーとか認めないーとか言ってた相手との久し振りの再会が男の娘ですもんね。

 

「ちょっと慶、どうしたの?そんな所で急に寝たら周りに迷惑よ?」

 

いやー、寝た訳じゃないと思うんですけど。

 

「あ、あのギターの…女子。な、何て美しい女性なんだ。天使…いや、女神か?彼女を見ただけで胸に激痛が…。フッ…なるほどな。これが初恋ってやつか…」

 

何て?

 

「うわぁ…慶のやつこれが初恋とか…。しかしこの反応梓ちゃんを前にした拓斗を思い出すわぁ」

 

「慶は彼女が男の娘だと気付いているのかしら?でもこの反応、話に聞いてた澄香さんを前にした社長みたいな反応ね」

 

拓斗さんもヒデさんもこんなんだったんですか?

 

『ちょ、ちょちょちょ、ちょっと待って下さい!あなた達男性ですよね!?』

 

あ、司会の方が渉くん達を止めに入りました。

 

『違うよ。ボクは可愛い男の娘!シフォンちゃんだ!』

 

『ほら、だからやめようって言ったのに…』

 

『オレと拓実はいけてると思うぞ?』

 

『あっはっは!違うぞ!俺達はエルフラコだ!まずは1曲目聴いてくれ!』

 

『いやいやいや、勝手に歌い出そうとしないで下さい!大会規定によりあなた達エルフラコは失格です!』

 

『え!?何で!?』

 

『ほら、だから言ったじゃん…』

 

『渉がシフォンに教わったメイクを勝手にアレンジして全身モザイクになったからバレたんじゃねーか?』

 

『大丈夫だ!絶対盛り上げてみせるから!』

 

『いや、盛り上がるとか盛り下がるとかそういう問題じゃなくてですね…。あ、盛り上がるならアリって気もしますけど…』

 

司会の方も困ってますし、このままじゃライブ大会も進行しませんし、ほかのバンドの方の迷惑にもなっちゃいますよね。

二階堂くんもハァハァ言いながら胸を押さえてヤバそうですし。

 

私がステージの渉くん達を注意しようとした時でした。

 

「こぉら!渉くんもいい加減にしなさい!司会のお姉さんも困ってるじゃん!」

 

香菜がステージに向かって声を張って注意してくれました。

 

『えぇ!?香菜姉!?何でここに居るの!?』

 

『か、香菜さんだけじゃないよ!理奈さんや渚さん、奈緒さんも盛夏さんも居る!』

 

『あん?あそこで胸を押さえて倒れてるのって…慶…二階堂か?』

 

『チ、まさか奈緒ねーちゃん達がここに居るとはな。俺達エルフラコもここまでだな…!』

 

-ボン!

 

『ケホッケホッ…え?何?これ煙幕?』

 

渉くんが懐からボールを取り出して地面に叩き付けた瞬間、ステージ上は煙まみれになりました。

 

そして煙が晴れた時には、楽器なども片付けられていてステージに立っているのは司会のお姉さんだけでした。

 

「「「「(本当に何やってんのあの子達)」」」」

 

『ハッ!?エルフラコさん達も楽器もなくなってる!良かった。これで通常通りライブ大会を進行できます。…ん?何だろうこれ?』

 

お姉さんの足元に何か置いてあったようで、お姉さんはそれを拾って一緒に落ちていた紙のようなものを見ていました。

 

『え~…と、"司会のねーちゃん悪かったな!俺達はねーちゃんの予測通り実は男の娘だったんだ。まさかこの会場に奈緒ねーちゃんや渚ねーちゃん達が居るとは思わなかったぜ。俺達の計画にも穴があったって事だな。…でもこれだけは信じてくれ!俺達はライブ大会を邪魔しようとしたんじゃなくて、みんなに俺達の音楽を聴いてもらって楽しんで欲しかったんだ。その為に迷惑をかけちまったのは本当に反省はしてる。ごめんな。PS、手紙とか書いてるとついPSとか書きたくなっちゃうよな!この手紙と一緒に置いてあるのは喉にいいドリンクだ!俺が煙玉使ったせいで喉とか痛めちゃったら大変だしな。落ちついたらそのドリンクを飲んで喉を癒してくれ。本当にごめんな。エルフラコ、江口渉子"』

 

長っ!長い!

その文章を今の一瞬で書いたんですか!?

私と渚がこの会場に居た事まで書いてますし!

 

『えぐち…わたるこ…さん…グスッ(キュン』

 

そしてあの司会のお姉さんは何で渉くんのドリンクと手紙を抱き締めながらキュンときて涙ぐんでるんですか!?

そういう要素ありました!?迷惑しか掛けられてないですよね!?

 

『グスッ、さぁ!失礼しました!それではライブ大会を続行します!皆さん楽しんで下さいね!…エルフラコの渉子さん達のためにも!』

 

いやいやいや、本当に何でですか!?

 

その後、司会のお姉さんは顔を真っ赤にしながらドリンクと手紙を抱き締めたままステージから下りて、何事もなかったかのようにライブ大会は進行されていきました。

 

 

 

 

その後のバンドもたくさん素敵な演奏を聴かせてくれました。

ですが…。

 

「ヒデさんの事務所にスカウトされた女の子のバンド。今日の演奏…最高だったよね」

 

「ええ。あの子達のバンドの絆。そして、ボーカルの子の決意と、バンドメンバー達の愛はとても深いものだったと思わされる演奏だったわね」

 

「感動したよね~。あたし達Blaze Futureもあんなバンドになれたらいいなぁ~。

あのボーカルの子がこれからを頑張ろうって思えるようなお別れになってたらいいよね~」

 

あの子達。

ヒデさんの事務所に入る予定の女の子が居るバンドの演奏は、とても最高でした。

ボーカルの子にとっても。ボーカルの子と一緒にバンドをやっていた子達にとっても。オーディエンスの私達にとっても最高のライブだったと思います。

 

 

 

-----------------------------------------------

 

 

 

『今日で私達のラストライブになります。皆さん、一生懸命歌うので聴いて下さい!』

 

-ドン、ドン、ドンドン

 

『え?ちょっと…まだMCの途中…』

 

『早く歌いなよ。これが私らのラストライブ。言葉なんかいらないよ』

 

-ギュイーン!ギュイギュイ!

 

『魅せてやろうよ。私達の3年間の絆』

 

-ベィンベィンベィン…

 

『あんたの門出になる演奏。私らはこれ以上は出来ない。これ以上はこれからのあんたが私達に見せて』

 

『みんな……グス、わ、私達の最後の曲です!』

 

『『『『聴いて下さい!』』』』

 

 

 

-----------------------------------------------

 

 

そして、あの子達は最高の演奏を魅せてくれました。

ヒデさんやルリルリさんが、本当にギターの子、ベースの子、ドラムの子をスカウト出来なかったのを悔やむくらいに。

そしてファントムの私達も、あの子達の曲を今後はもう聴けなくなる事が悔しいと思うくらいの最高のライブでした。

 

本来ならライブ大会では1バンド2曲を演奏する予定だったのですが、彼女達は1曲目が終わると泣き出してしまいました。4人で抱き合いながら大声で…。

 

そしてそのままあの子達は

 

 

『私達は最高のライブをやれましたので、これで棄権します。本当にありがとうございました』

 

 

そう言って2曲目を歌う事なく棄権しました。

 

またあの子達の音楽を見たかったですけど、あの子達の音楽はここで終わり。

そして、ボーカルの子にこれからを託して幕を閉じたのです。

 

私達がBlaze Futureを解散するという時も、きっと来ると思います。いえ、近い未来なのか遠い未来なのかはわかりませんが、必ずやってきます。

私はその時どんな気持ちでその時を迎えるんでしょうか。

 

けど私はこう思うのです。

このお話ってバンドやライブのお話なのに、音楽やってる描写は少ないし、結局今回もほとんどが大食い大会のお話だったなぁ…と。

 

そして、ライブ大会の予選の終了後に、ライブ大会司会のお姉さんが香菜に『あの、渉子さんに注意してたお姉さんですよね?渉子さんとお知り合いなんですよね?』とか問い詰められ、綺麗な便箋を江口くんに渡すように頼まれていました。本当に不思議な話です。

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