「いやぁ、実に素晴らしかったね。特にGlitter Melodyの演奏は感動すら覚えたよ。私の元に置いておきたいくらいだ」
「海原…テメェ…」
「英ちゃんも落ちついて。Glitter Melodyもファントムのバンド。海原には手は出せないよ」
「だから早く帰れと言ったのに…」
俺の名前は佐藤 トシキ。
今日は英ちゃん。
俺と昔BREEZEというバンドを組んでいて、今はカフェ兼ライブハウス兼音楽事務所のオーナーである中原 英治と2人で高校生による文化祭のライブ大会を観に来ていた。
一応仕事の一貫ではあるんだけど…。
ライブ大会の予選が終わった後、今俺と英ちゃんの前にはクリムゾンエンターテイメントの総帥である海原と、クリムゾンエンターテイメントのバンド、interludeのベーシスト朱坂 雲雀ちゃんが居た。
何故、今、こんな状況になっているのか。
それは今から少し前の時間に遡る。
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「ライブ大会の観戦か。俺的には仕事を休めた訳だし、今の高校生バンドのライブも楽しみだし、今日はこの学校の文化祭に来れて良かったって感じなんだけど。
……なんで英ちゃんは泣いてるの?」
「グスッ、バカ野郎トシキ!これが泣かずにいられるかっ!!本来なら俺と三咲のペアでライブ大会行くはずだったところを…」
「あ、あ~…、本当なら三咲ちゃんと一緒に文化祭を楽しめたはずなのに相手が俺になって嫌って事?」
う~ん、確かに初音ちゃんが産まれてからはデートらしいデートしてないって言ってたけど、初音ちゃん産まれる前もそんなデートらしいデートとかしてたっけ?
「バカ野郎!逆だ!!」
ん?逆?
「三咲と一緒だったら羽目を外せない…。だから!姫咲ちゃんに昔の澄香の写真10枚セットという賄賂を渡して!三咲のペアをタカにしてもらった…そして、俺の行動に文句が出ないようにトシキか拓斗とペアにしてくれと頼んだんだ」
……何て?
「そして更に澄香の水着写真5枚セットを賄賂として渡し!可愛い女子高生が居そうな学校の担当にしてくれと頼んだ!!」
ん?あ、あ~…。これ聞かなくていい話かな。
俺はそんな事の為に英ちゃんとペア組まされて、この女子校の担当にされちゃったんだ?
このライブ大会ってガールズバンドの大会だってことだし、俺が女子校担当になるのもって思ってたけど。
なんだ。こいつのせいか。
「まさか…まさか夢にまで見た女子校に足を踏み入れる事が出来る日が来るとは…。こんなに嬉しい事はないっ!トシキ!お前も男ならわかるだろ!?…ん?あれ?トシキ?どこ行った?」
「そんな所で泣いてたら変質者扱いされてライブ大会も観れなくなっちゃうよ?一応仕事なんだから早く行こうよ」
「ん?お、おお!そうだな!泣いている場合じゃねぇ!女子校の校舎に早く入りたいよな!」
ああ、取り敢えず英ちゃん殴って早く帰りたい。
でも一応仕事だし、やっぱりライブ大会が楽しみってのもあるし、英ちゃんの事は放っておいて文化祭を楽しむか。
それから適当に文化祭を回り、歳も考えずに女子高生に声を掛けまくる英ちゃんを割と強めに殴ったりし、ライブ大会の予選が始まる時間まで、変質者と通報される事なく過ごす事が出来た。
昔から顔だけは良く、初対面の女性に対しては紳士でモテモテだった英ちゃんは、この歳になってもモテモテで何人かの女の子と連絡先の交換をしていた。
父親としての尊厳を守る為に初音ちゃんには言わないでおこうと思うけど、はーちゃんと三咲ちゃんにはしっかりとチクっておこうと思った。
そんな時だった。
あの子に会ったのは。
「ん?」
「あ」
「中原 英治に佐藤 トシキ…。何故こんな所に…?
なるほど、あなた達もライブ大会の視察という訳か」
そこに居たのはinterludeのベーシスト、朱坂 雲雀ちゃんだった。この学校の生徒だったんだね。
彼女は『2-A お化け屋敷』と書かれたプレートを持っていた。
「おお!interludeの雲雀だっけか?お前、この学校の生徒だったんだな。それにしても…スカート穿いてるって事はやっぱり女の子だったんだなお前」
「…さすがBREEZEのEIJIだね。翔子さんの言っていた通りデリカシーのかけらもないね」
翔子ちゃんは英ちゃんの事どんな風に人に言ってるんだろう?
「翔子の野郎…まぁ、いいや。それでお前はなんでここでクラスの催し物の呼び込みなんてやってんだ?」
「別に呼び込みやっている訳じゃないよ。クラスの催し物なんかに参加するつもりはないからね。ただ、何もしない訳にはいかないからね。看板持ちをやってるだけさ」
「俺が聞きたいのはそういう事じゃねぇよ。もうすぐライブ大会だってのに、お前は参加しないのかって事だ」
「?何を言っているの?
虎次郎もリュートも武も高校生でもないし、しかも女性でもないんだけど。」
「んな事はわかってんだよ!学校の友達とバンド組んだりとか、学生生活の思い出とかよ」
「僕のレベルに見合うミュージシャンがこの学校に居る訳ないじゃないか。仮に居たとしても僕には思い出なんか必要ない」
それはそれで悲しいんじゃないかな。
「そんな事より、あなた達は早く帰った方がいい。
ライブ大会が観たいのなら端っこで大人しく観て、それから早々と帰ればいいよ」
「あん?早く帰れだ?」
「どうして俺達に早く帰ってほしいの?」
「…ふぅ、もういいよ。取り敢えず僕は早く帰るよう忠告はしたからね」
「せっかく念願の女子校に足を踏み入れる事が出来たのに早く帰るなんて勿体ない事出来る訳ねぇだろ!」
英ちゃん頼むから黙っててくれないかな?
「早く帰れって言われなくても、そんなに長居するつもりはないよ。でも、俺達にはライブ大会以外にも一応仕事があってね」
「仕事…?まぁいいや。僕はもう行くよ。僕らは今はファントムと事を構える気はないから、しばらくは会わないと思うけど、またねって言っておくよ。内山 拓実にもよろしく言っておいて」
またね…か。
今はファントムと争えないけどいつかは…って事だよね。
内山くんの事もきっとIrisベースを狙っての事なんだろうな。内山くんの話だとIrisベースの雷獣は雲雀ちゃんが持っているらしいし、俺としては取り返しておきたい気もするけど…。
俺が今からどうこうする訳にはいかないしね。
ただ、どうして雷獣を持っているのに内山くんのベースを狙っているんだろう?
理奈ちゃんも盛夏ちゃんも姫咲ちゃんも美緒ちゃんもIrisベースを持っているのに、何故内山くんだけを?
雷獣の声は聞こえないけど、内山くんの晴夜なら声が聞こえると思った?
「しっかし、この学校にまさかクリムゾンエンターテイメントの…interludeのミュージシャンが居るとはな。せっかく軽音部もあんのに勿体ねぇな」
勿体ない…か。確かに勿体ないよね。
"せっかく軽音部があるのにクリムゾンエンターテイメントのミュージシャンの目がある"と捉えるか、"クリムゾンエンターテイメントと言えどせっかく軽音部があるんだから雲雀ちゃんも音楽を楽しめばいいのに"と、捉えるから勿体ないの意味も変わってくるけど。
元ミュージシャンとして俺は思う。
どっちの意味にしても雲雀ちゃんには悲しい話だなって…。
そんな雲雀ちゃんとの出会いを経て、俺達はライブ大会を観る為に観覧席へと向かった。
雲雀ちゃんも観覧には来てるかな?と思って見回してみたけど、この学校のオーディエンスが多くて雲雀ちゃんを見つける事は出来なかった。
この日のライブ大会ではGlitter Melodyが参加していた。
力強い最高の演奏だった。
他の参加バンドも高校生バンドと思えない程の凄い演奏だったけど、やっぱりGlitter Melodyは秀でていた。
おそらく決勝大会への出場も問題ないだろうと思う。
その後は英ちゃんのファントムの仕事をちょこっと片付けて、俺も自分の仕事をしっかりと片付けた。
英ちゃんはまだ帰りたくないとか駄々をこねていたけど、雲雀ちゃんとの事もあるし、ファントムに帰って姫咲ちゃんに報告もしないといけないし、俺達は早々に帰る事にした。
そんな時だった。
海原と会ってしまったのは…。
そして冒頭部分の時間に戻る。
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「つーかテメェ!こないだまたアメリカに帰るとか言ってたじゃねえかよ!なんで日本に居るんだ、あん?」
「なに、私はこれでも忙しい身でね。
アメリカに戻っても少し仕事を片付けたらまた日本、日本の仕事を片付けたら次は他の国へと渡ったりと忙しいのだよ。だが、今回は日本に帰って来ていて良かったよ。色々と収穫があった」
色々と収穫?
「チ、何で学生達の文化祭、このライブ大会に来てんだ?って聞いてもまともに答えるつもりはねぇんだろうな」
「フッフッフ、どうしてもと言うなら教えてやらない事もないが…」
「俺もまだたまにドラム叩いてるしな。ちょうどここにはうるさいタカもいねぇ!ここでテメェをやっちまってもいいだぜ!海原!」
「ちょ、英ちゃん…!」
ちょっと英ちゃん好戦的過ぎない!?
確かにはーちゃんやArtemis、ファントムのバンドが絡まない所で海原は倒しておきたいって気持ちはあるけど…!
「いつになく好戦的だね英治。面白い!キミはファントムのオーナーではあるが、ファントムのミュージシャンではない。ここで叩いてタカにひと泡ふかせるのも一興だな」
「上等だ!タカにはもうテメェと関わらせねぇ!ここで仕止めてやるよ!これでファントムのやつらも楽しく音楽をやれるってもんだぜ!やるぞ!トシキ!」
「え!?俺も!?」
ちょっと待って!英ちゃんと海原の一騎討ちじゃなくて俺も参加するの!?
「さぁ!朱坂くん!キミのベースを私に見せてみたまえ!英治とトシキを完膚なきまでに叩き伏せてしまいたまえ!」
「え?僕がやるんですか?」
いや、海原もやる気ないの!?
雲雀ちゃんに丸投げ!?
そういや海原は音痴だもんね。
楽器の腕前もそこそこだし。
ただ、レガリアやIrisベースも必要としないチカラがあるだけで…。
「フフフ、ここで英治とトシキを倒してみせたら、きっと朱坂くんのお父上とお母上も喜ぶと思うよ」
「!?」
雲雀ちゃんの…お父さんとお母さん…?
「…わかり…ました。
覚悟はいい?中原 英治、佐藤 トシキ」
志保ちゃんも睦月ちゃんも、昔は雲雀ちゃんと楽しくセッションしてたって話だったけど、まさかお父さんとお母さんの為にクリムゾンエンターテイメントで音楽を?
「……ちょっと待ってくれ」
英ちゃん?
「英治?どうかしたかね?」
「今さら怖じ気づいたの?」
「いや、スマホがブルブルなってるからよ。ちょいメール確認だ」
そう言って英ちゃんはパンツの尻ポケットからスマホを取り出して画面を見た。
「ゲ!……悪い海原、雲雀。ちょっとデュエルは今日は無しで。俺はとてつもなく急いで帰らなくてはならない」
「何?どういう事かね?」
「悪いけど、あなたの都合なんて知らないよ。僕にも僕の都合があるからね」
「英ちゃん、誰からの連絡だったの?」
「タカからだ…タカから早く帰ってこいってメールが…なんか怒ってんのかなあいつ。めちゃくちゃチビりそうなんだけど…」
はーちゃんから連絡?
こんなタイミングで?
「そんなの関係ないよ。あなた達は今日ここで…」
「待ちたまえ朱坂くん」
「海原さん?」
「タカからの呼び出しならしょうがない。英治ももうデュエルどころではないだろう」
「あ?ああ…まぁな。あいつの呼び出しに少し遅れただけで、しばかれた方がマシなくらいネチネチネチネチネチネチネチネチネチネチネチ文句言われるからな」
はーちゃんのネチネチとした小言は本当に鬱陶しいけど、そんなネチをいっぱい言っちゃう程ネチネチしてるかな?
「そういう訳だ朱坂くん。今日は残念だがデュエルは無しだな」
「海原さんがそれでいいなら別に…」
海原がどうしてここに居たのか。
雲雀ちゃんがお父さんとお母さんの事を出されて何故デュエルをする気になったのか。
気になる所は色々あるけど、はーちゃんからの呼び出しならしょうがないか。
でも、はーちゃんも担当の学校の仕事とかライブ大会はもう終わったのかな?
まだ夕方だしそんな早く終わるとは思えないんだけど…。
「悪いな、海原、雲雀。俺達はこれで帰らせてもらうわ。もうちょっと女子校をエンジョイしたかった…」
「では私も帰るとするかな。明日の準備もあるしね。朱坂くん、キミはここまででいいよ。後は学生らしく文化祭を楽しみたまえ」
「……はい。そうさせていただきます」
雲雀ちゃん?さっきは思い出は必要ないとかクラスの催し物に参加するつもりはないとか言っていたのに?
やっぱり海原に何か握られてるのかな?
「あ、そうだ。海原。
さっきお前が文化祭に来ている事は、どうしてもって頼めば教えてくれるって言ってたよな?」
「…どうしてもと言うなら教えてやらなくもないと言っただけだがね」
「じゃあ、どうしてもって頼むぜ。お前、何でここに居る?何で高校生達の文化祭なんかにわざわざ足を運んでんだ?」
英ちゃん?
「私がまともに答えるとは思ってないんじゃなかったかね?」
「ああ、まぁな。だけど気になるからよ。どうしてもってお願いしてんだわ」
「そうだな。私としてもまともに答えないと思われているのは心外だよ。だから、英治。お前にまともに答えるつもりはないな。お前達のデュエルを観れなくなったのも私には面白くないしね」
「チ、ああそうかよ」
「だがチャンスだけはプレゼントしてやろう」
「あ?チャンスだ?」
「先程私は明日の準備と言ったが、明日もこのライブ大会の予選が行われる高校のどこかに姿を現すつもりだ」
何だって!?
海原は明日も…?
「そうだな…。明日の文化祭で私をタカと梓が見つける事が出来たら、今回の目的を話してやろう。梓はもう日本に帰って来ているのだろう?特別サービスだ」
はーちゃんと梓ちゃん?
「ちょ、待てよテメェ!梓は…」
「英ちゃんこそ待って。梓ちゃんが帰って来ているのはどうせ梓ちゃんのSNSで知ってるんでしょ?だったら誤魔化しても意味ないよ」
「フフフ、まぁね。今はDivalの水瀬 渚と同じマンションに住み、私達クリムゾンエンターテイメントのmakarios bios39番と仲良くしているのも知っているよ」
梓ちゃん、本当に何やってんの?
自分が昔狙われてたって自覚ある?
色々SNSに書きすぎじゃない?簡単に身バレしてるし。
…って思ったけどちょっと待てよ。
梓ちゃんがわざわざ美来ちゃんと遊んだ事を"39番"と書く訳がない。
美来ちゃんと名前を書いてたとしても、"美来"なんて名前は珍しくもないし、美来ちゃんもSNSやっているからハンドルネームがあるはずだ。ヲタ活用の。
梓ちゃんはアホだから本名でやっていたとしても、美来ちゃんの名前まで出すはずがない。
海原はどこまで知っているんだ…?
「安心したまえ。梓の事は二胴くんにも九頭竜くんにも話していないよ。その方が色々と面白くもなるしね」
面白くだって?
「チ、まぁいいぜ!それより本当にタカと梓がテメェに会いに行けば、その目的ってやつをあいつらに話すんだな?」
「ああ、もちろんだ。約束しよう。
ただし、私は明日、どこの学校に行くのかは明かさないよ。これはゲームだ。君たちが私を見つけて目的を聞き出すか、私を見つける事が出来ず今回の目的を明らかに出来ないか。フフフ、明日の楽しみがひとつ増えたものだね」
どこの学校に行くかは明らかにしない…か。
でも、まぁそこは何とかなりそうだね。
これからみんなにこの事を共有して、明日、海原を見つけた人がはーちゃんと梓ちゃんに連絡して急いで向かってもらえばいいし。
「ヒントもねぇのかよ。そんなの無理ゲーじゃねぇか」
英ちゃん?
「ヒントも何も…攻略法はあると言うのに。相変わらず愚かだね英治は」
「攻略法だと!?そんなのある訳ねぇじゃねぇか!この時期どんだけの学校が文化祭やってると思ってんだ!テメェを見つける事が出来なかった俺達を笑うつもりかよ!」
英ちゃん本当に気付いてないの?
まぁ、いいか。はーちゃんや宮ちゃんなら余裕で気付きそうだし。
「わかったよ海原。明日、はーちゃんと梓ちゃんがお前の目的を聞く。そして俺達はその目的を阻止してみせるよ」
「フフフ、楽しみにしているよトシキ。梓に会うのは本当に久し振りだからね」
そう言って海原は帰って行った。
その後ろ姿を見送った俺達も帰る事にした。
でも…。
「英ちゃん」
「ん?何だ?」
「はーちゃんから呼び出しって嘘でしょ。どうしてそんな嘘までついてデュエルするの止めたの?」
そう。はーちゃんからの呼び出しなんか嘘だ。
本当にはーちゃんからの呼び出しなら、話の途中だろうが何だろうが英ちゃんならダッシュで向かうだろうしね。
「ああ、嘘ってバレてたのか。まぁ、あのままデュエルやっても良かったんだけどよ。俺がぶっ倒してぇのは雲雀じゃなくて海原だしな。それに雲雀のやつ、親父さんとお袋さんの事言われて…」
そっか。
やっぱり英ちゃんも雲雀ちゃんの事が気になってたんだね。
「いくらクリムゾン相手ってもあんな顔したヤツとデュエルなんか出来ねぇしな。それこそタカにしばかれちまうよ」
そっか。英ちゃんも海原に会って頭に血がのぼったのかも知れないけど、割と冷静ではいてくれたんだね。
安心したよ。
「しかし海原の目的を聞けなかったのは痛かったな。攻略法って何なんだ?とにかくタカと梓に伝えて、何とか明日はあいつらに海原を見つけてもらわねぇとよ」
英ちゃん?
・
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「え~…やだよ、めんどくせぇ」
「何でよタカくん!お父さんは今のうちにやっつけなきゃ!だから、しょうがないけど2人で…いや、2人きりで文化祭まわろうよ!!」
「梓は何で2人きりって言い直したの?」
その夜、俺達は各々今日の仕事の進捗やライブ大会での事を姫咲ちゃんに報告する為に、ファントムに集まっていた。
その時に俺と英ちゃんは海原の事を報告し、はーちゃんと梓ちゃんに海原の目的を探ってほしい事を伝えたんだ。
「そもそもあのアホが俺が出張った所で本当の事を話すと思うか?何回その手で騙されてんだよ。俺と梓を誘き出すのが目的じゃねぇの?」
だけど、はーちゃんはどうも乗り気じゃないらしい。
まぁ、何度も海原にはハメられてるし、今回の事も確かにはーちゃんと梓ちゃんを誘き出す事が目的なのかも知れない。かと言ってこのまま放置しとくのもなぁ…。
「罠だったら罠だったでいいやん!その時にあたしとタカくんでしばき倒したらいいんだよ!」
「お前は何でそんな必死なの?てか、それより海原をやっつけるって音楽じゃなくて物理的な事を言ってるの?それならお前1人いればその一帯焼け野原に出来るしいいじゃん。むしろ俺がついて行った方が足手まといだし、巻き添えで俺も危ないじゃん」
「だから!一般人を巻き込まない為に、あたしを止める人の役がいるんやんか!」
「お前俺が止めた所で止まらないじゃん。それこそ人選ミスだろ」
そんなこんなで話が纏まらなくなっている。
確かにはーちゃんの言い分もわかる。
それにはーちゃんとしても海原に梓ちゃんを会わせたくないってのもあるんだろうな。
「全く…タカのやつも腹を括って梓と海原を探しに行きゃいいのによ」
「あら?意外ですわね。拓斗さんの事ですから、明日も梓さんと文化祭をまわりたいものだと思ってましたわ」
「姫咲。お前は俺を何だと思ってるんだ?」
「澄香さんに聞いたそのままのお人だと思っています」
「そうか。澄香からか。それならそう思われていてもしょうがねぇ。反論の余地がねぇな」
「拓斗さんは何を諦めてるんだろ…。って、でもさ!私達も文化祭での仕事もライブ大会の観賞もしっかりと頑張ったのに、私達のお話がないとか雑過ぎない!?」
「真希も諦めたらいいのに。きっとアレだよ?新バンド増えたせいで、登場人物が増えすぎて収拾つかないって思ったからじゃない?」
「綾乃さん…私もそう思いますけど、そんなハッキリと言うのは…」
「沙織も何を言ってるの!あんたも仕事も頑張ったんでしょ!?それなのに私達の出番ってさ~」
「真希さんの言い分もわからなくもないですけど…私は私なりに仕事もしましたし、文化祭やライブ大会も楽しみましたので…。私はそれよりもそこの端っこの方で水瀬さんや氷川さん、佐倉さんに怒られてるAiles Flammeの方が気になるんですけど…」
あ、本当だ。
そういやはーちゃんと三咲ちゃんの話じゃAiles Flammeのみんなは文化祭に居なかったんだっけ?
何かあったのかな?
…まぁ理奈ちゃん達に怒られてる時点で、変なことをやらかしてたんだろうなって想像はつくけど。
「だぁー!もういいよ!うるせぇよお前ら!」
ん?はーちゃん?
いきなり叫んでどうしたの?
はーちゃんが『もういいよ』って叫んだ時は、ほぼはーちゃんの考えとかをみんなが無視して、作戦とか思惑と違う事に決まって、最後の最後には全部の責任をはーちゃんに押し付けるだろうって結果になると決まりきった時なんだろうけど。
「梓。俺はお前と一緒に海原に会いに行ってやる。だから、せめてマジでガチで海原が行きそうな学校を選べよ?…うぅ…明日こそ渉達のクラスに押し入ってあいつらの催し物を満喫したかった…」
「任せてタカくん!父娘の血の繋がりを元に!必ずお父さんが来そうな学校をチョイスしてみせるよ!ケッヒッヒ」
梓ちゃんは何であんな笑い方してるの?
「澄香ちゃんは明日も姫咲ちゃんと一緒だよね?いいの?梓ちゃんって多分海原の事そっちのけでタカちゃんとの文化祭デートを楽しむつもりだよ?」
「あ、やっぱ日奈子もそう思うよな?あたしも学校の事なかったら海原の事も探りたかったんだけどな」
「日奈子も翔子もそんなん気にせんでええよ。明日は私の私設部隊のメンバー総出で海原を警戒するように全員に通達したし。逐一連絡するようにって徹底してるしね。
私は明日も姫咲お嬢様の付き添いやから自由に動けないけどね」
「私設部隊のメンバー総出って、澄香ちゃんめちゃくちゃ梓ちゃんの邪魔する気満々じゃん」
そっか。
はーちゃんは梓ちゃんと海原に会いに行く決意をしたんだね。
英ちゃんも今日の雲雀ちゃんの事で色々考えてるみたいだし。
俺も俺がやれる事だけじゃなくて、渉くん達にしてあげれる事を見直す時期かも知れないな。