「クリムゾンカンパニー。彼らは元は手塚の管轄の会社だったのだけど、BREEZEに倒され、手塚が改心した後もクリムゾンに残り、BREEZEやArtemisに嫌がらせを続けていた嫌な奴らよ」
そうして聖羅から語られる昔の話。
本当なら文化祭編の合間のお話的な感じだったのに、思いの外長くなってしまった。
今回もモノローグはあたしこと、木原さんちの梓ちゃんが担当しちゃうのです。
え?あたしのモノローグ多くない?
「待て聖羅。手塚のアホが改心って何だ?手塚は今もアホのままで改心なんかしていないハズだ!」
「はーちゃんもクリムゾンカンパニーの事を聞きたいなら話の腰を折らないでよ」
「元々は手塚からこの辺の地域のバンドをクリムゾングループに取り込むように命令されていたのだけど、当時はONLY BLOODの3代目やBREEZE、氷川さんに香保や雨宮さんも居たからなかなかね…」
「お母さんやお父さんも…?」
「そう…父も…。って、志保?あなた明日の文化祭の準備は?」
「何かこっちの話の方が面白そうだから、江口達に任せてきた」
…渉くん達もこっちの話の方が気になってる感じだけど。
「色々とあったけど、
それでもクリムゾンから給料を貰ってる雇われの身だった訳だし表立って味方にはなれなかったのだけどね」
「さすがにーちゃんだぜ!クリムゾングループの事務所をやっつけちまうなんてよ!」
「さすが拓斗さんだ。僕もクリムゾングループに負けないようにベースの腕を磨かなきゃ…!」
「おい、拓斗。お前、昔からクリムゾングループを潰してたの?野蛮だな。俺はお前が怖いわ」
「英治、悪いが全く記憶にねぇ。梓達が嫌がらせをされてからは、クリムゾンの奴らとは積極的にデュエルはしていたが、そん頃はタカの"指示通り"にデュエルやってたハズだ。だから当時にクリムゾンを潰してたならタカの意思のハズだぜ」
「え?拓斗のヤツ何を言ってんの?俺がそんな音楽やる訳ないじゃん。そもそも面倒くさいし怖いし」
「当時のはーちゃんもチキンだったけど、気に入らない相手には鬼より怖かったからねぇ…。今は気に入らない相手にもチキンだけど」
渉くんも拓実くんも凄かったんだね。って褒めてるのに、当のBREEZEのメンバーが誰も覚えてなくて、責任の押し付け合いまでしてるのって…。
「クリムゾンカンパニーはクリムゾンエンターテイメントに使われているのが嫌で、何とか伸し上がろうとしていたのよ。それで九頭竜の管轄に入って、次はArtemisの妨害を始めたわ」
「あたし達の妨害かぁ~。澄香ちゃんや翔子ちゃんは覚えてる?」
「あの頃って九頭竜もやけど、二胴にしても海原にしてもやたら私達の妨害してきてたやん」
「まぁ、全部蹴散らしてたけどな。……だから覚えてねぇんだろうな」
日奈子?あたしは覚えてない前提なの?
だから澄香と翔子にしか聞かないの?
「それでも結局、BREEZEも協力してArtemisはクリムゾンカンパニーを撃退したわ。2度と悪い事が出来ないように徹底的にね。少し同情もしたわよ」
「徹底的にって…タカ兄達は何をしたんだろう?怖~い」
「綾乃、あんた本当に怖いと思ってる?目がキラキラしてるんだけど」
「さすが澄香さんですわね。早織さんもそう思いませんか?」
「秋月、私達がやっているのは音楽だぞ?徹底的に撃退の何がさすがなんだ?私に同意を求めないでくれ」
あたし達が徹底的にかぁ…。
正直、そんな風に倒して来たクリムゾングループはいくつかあるし、クリムゾンカンパニーの事って言われてもどれの事なのか思い出せないけど…。
「って事は、俺らやArtemisがそいつらぶっ倒してたとしても15年以上前の事だろ?」
「だよな。英治の言う通りだぜ。15年以上前の恨みを未だにネチネチネチネチと…ダセェな」
「こないだまで恨みでクリムゾンと闘ってた宮ちゃんがそれ言うんだ?」
「そん時俺本当に居た?俺以外のメンバーでやった事じゃない?」
「そうね。私も気になるのはそこよ」
「あ、やっぱ俺居なかった感じ?んだよ、恨まれてんのはトシキと拓斗と英治だけかよ。そうじゃねぇかと思ったけどよ」
ぇ~…タカくん抜きでクリムゾンの事務所を潰した事なんてあったかなぁ?
「私が気になっているのはタカのセリフじゃないわよ。拓斗の言っていたセリフ。"15年以上前の恨み"って所ね」
「あ?どういう事だ?」
「クリムゾンカンパニーはあなたたちに倒されて、当時の責任者や幹部達は失脚した。事実上、本当にクリムゾンカンパニーは潰れる事になったわ。それが…15年以上も経って復活し、あなたたちへの恨みを晴らす為にクリムゾンエンターテイメントに協力するなんて事は、私はあり得ない事だと思っている」
まあ、そりゃそうだよね。
あの頃に失脚して無職になったんなら、他の仕事とかしないと生きていけないだろうし、あたし達に恨みを晴らす為に準備してたとしても、あたし達も15年前に解散したようなもんだし、あたし達とまた事を構えるなんて考えもしないだろうし。
「あ、わかった。アレじゃね?海原のヤツ、俺をビビらせようと思って適当な事言ったんじゃね?だって俺は恨みを買うような青春時代送ってないもん」
「さすがタカだな。お前の言う通りだと思うぜ。そもそも俺らは音楽を楽しんでやってただけだから、恨みを未だに持たれてるとかあり得ねぇもんな」
「…が、タカと英治の意見みたいだが、トシキはどう思う?」
「う~ん…15年以上前の恨みを未だに…って思わなくはないけど、はーちゃんと英ちゃんに恨みを持ってる人なら割りと居そうな気がするなぁ。あ、もちろん宮ちゃんにもね」
…トシキくんも敵には容赦無かったから恨まれてても、あたしは不思議に思わないよ?
「ってのがお父さん達の意見みたいだけど、お母さんはBREEZEの元チューナーとしてどう思う?」
「そうね。私もクリムゾンのグループとは闘っていた訳だけど、そんな昔の恨みを今でも…とは思うわ」
「そうなの?じゃあタカの言う通り、タカと梓さんを警戒させる為だけなのかなぁ?」
「うん、そう思うわ。タカくんは確かに気に入らない相手はクリムゾンだろうとなかろうと潰してたし、英治くんは女の子が絡むと徹底的に相手を追い込んでたし、拓斗くんはクリムゾンとわかれば無慈悲に相手を倒していたわ。トシキくんは友達や知り合いがやられると正直私もドン引きするくらい容赦が無かったけど…恨まれる事なんてないと思うわ」
「…え?う、うん。ああ、そう」
「ねぇ、奈緒。先輩達って三咲さんの話だと、めちゃくちゃヤバそうな人達なんだけど、本当に奈緒はそんな
「え?渚は何を言ってるの?TAKAさんは許せない相手と闘う勇者。EIJIさんは女の子を守る騎士、TAKUTOさんはクリムゾンと闘う尖兵、トシキさんは仲間を守る戦士って事でしょ?素敵じゃない」
「お姉ちゃんはBREEZEが絡むと頭が悪くなる呪いにでもかかってるの?」
う~~ん、クリムゾンカンパニー…。
正直、あたし達Artemisも心当たりが多すぎて、どの会社の事だったか思い出せないなぁ…。
「思い出せないのも無理はないのかも知れないけどね。基本的にあなた達が闘っていたのはクリムゾンエンターテイメントで、クリムゾンミュージックには取り入れてもらえなかった小さな事務所や会社はあったけど、足立や二胴、九頭竜の部下という位置付けだったもの」
…聖羅は今、私はクリムゾンエンターテイメントには関係ないですよ。みたいな感じで喋ってるけど、あたし達昔は聖羅の部下とも手塚さんの部下ともデュエルした事あるからね?
聖羅は幹部より上の副社長みたいなポジションだったし。………でもそれは今もか。
「でもまぁ、15年以上前の恨みを持って今の俺達に何か仕掛けてくるとか根暗過ぎだろ」
「普通に考えるなら英治の言う通りよ。でもまぁありえなくもないわ。
それにタカもトシキも拓斗も、
そうだね。
お父さんは利益のある事しかしない。
クリムゾンカンパニーって会社の事を言った所で、お父さんに利があるとは思えない。
「んで、結局、俺は今でもクリムゾンカンパニーって奴らの事は思い出せないんだけどよ。そいつらってどんなバンドだったんだ?」
「……これだけ話してもクリムゾンカンパニーの事を思い出せないのなら、話すだけ無駄ね。私は盛夏を連れて帰るわ」
「いや、待てよ。あ、お前って盛夏を迎えにここに来たの?まぁ、それは今はどうでもいいわ。俺の質問に答えてくれよ。そのクリムゾンカンパニーってどんな奴らが居たんだよ。それ教えてもらったら俺らも思い出せるかもじゃん?」
ああ、さすがタカくんだ。
確かにどんなバンドが居て、どんな音楽やってたのか教えてもらったら少しは思い出せるかも。
「盛夏、帰るわよ。今日はおじいちゃんとおばあちゃんが来るから、外食にしましょうって言ってたでしょ?」
「お~!お~お~お~!うっかり忘れてたぁ~。今日はお爺ちゃんとお婆ちゃんが来るから焼肉食べ放題の日だぁ~」
うっかり忘れてたの?
「そういう訳だから私達は帰るわ。おもてに主人とタクシーを待たせてるし」
「いや、待てよ聖羅。タカの言う通りだぜ。どんなバンドが居たのか話してくれたら、俺達もクリムゾンカンパニーを思い出せると思うぜ?」
そう言って英治くんは聖羅の肩を掴んだ。
「い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「「「「「!!?」」」」」
その瞬間、聖羅が急に叫ぶものだからファントム内に居るみんなが驚いた。
「ん?え?ど、どうした?俺、何か変な事言った?」
「へ、変な事を言ったかですって!?聞いて!三咲!
英治ったら今、私の肩に手を置いた刹那に私のブラを外したのよ!」
え?ブラ?
「は!?ちょっと待て聖羅!俺がそんな事する訳ないだろ!?とんでもない言い掛かりじゃねーか!」
「今は私もあなたも結婚をしている身!それどころか子供まで居るのよ!?なのに…こんな事してくるなんて!」
「ほんと何言ってんだお前!み、三咲!俺はそんな事してないからな!マジで冤罪だから!」
「こ、こんな所には1秒も居られないわ!行くわよ盛夏!」
そう言って聖羅は強引にせっちゃんの手を引いてファントムから出ようとした。
「いや!本当にそんな事してないから!三咲!信じて!」
「大丈夫よ。英治くんの事はよく知っているから。そんな事が、で、KILLとは思ってないわよ」
「出来るの言い方がおかしいよ三咲!」
昔の英治くんならやりかねない所が疑わしんだよねぇ~。まぁ、聖羅の嘘なんだろうけど。
「三咲が怖い!お、おい、タカ!トシキ!拓斗!何とかしてくれ!」
「いくらみんなの目があるからといっても、あの笑顔の三咲を止めるのは俺には無理だから諦めてよ」
「トシキの言う通りだ。悪いな英治。お前との思い出は絶対に忘れないぜ」
「トシキも拓斗も諦めるの早すぎだろ!お、おい、タカ!頼むよ、今度奢るから!」
「チ、しょうがねぇ。ああなった三咲を止めるのは無理だからな。代わりに聖羅を止めてやるよ。聞きたい事もあるし。
おい、聖羅待てよ」
「待ってタカ!行かないで!俺が今、止めてほしいのは聖羅じゃなくて三咲なの!」
相変わらずBREEZEは混沌としてるなぁ。
「あ、そうだ。タカ」
「ん?何だ?クリムゾンカンパニーのバンドの事を話してくれる気になった?」
「おもてには私の主人も居るのよ。盛夏をバンドに入れておきながらちゃんと挨拶してないでしょ?」
「ん?ああ、そういやそうだな。そういえばお前の旦那って
「そんな!?せ、盛夏を嫁に下さいと挨拶するつもり!?」
聖羅?
「お前は本当に底抜けのアホだな。まぁ、いいや。ちゃんと挨拶だけは済ませておこう」
「あら?盛夏と結婚させて下さいって挨拶する訳じゃないの?」
「当たり前だろうが。お前はアホの世界チャンピオンか?」
「なら主人とは会わない方がいいわよ?」
「あ?何で?お前の旦那もアホの一派なの?」
「先日の盛夏と1夜を共にしたってやつ。うちの主人はめちゃくちゃ怒っててね?
相手がBREEZEのタカって事もあるし、ちゃんと結婚もして責任取るのなら…って怒りを押し殺してはいるけど、ただの挨拶だけなら○されても私は知らないわよ?」
「…は?だからそれあの夏休みの事だろ?誤解だってお前もわかってくれたじゃん。それに何年前の話だよそれ」
「主人には誤解だったって話してないもの。それに何年前って、今はまだ10月よ?2ヶ月くらい前の事じゃない」
「何で誤解だって話してねぇんだよ!」
「その方がおもし…なかなかその話をする機会がなくてね」
「今、絶対その方が面白いって言い掛けてたじゃん!」
「なら挨拶ついでにタカが誤解を解いてくれば?さ、盛夏行くわよ」
「ぐおおおおお…」
タカくんは結局その場に崩れ落ちて膝をつき、取り敢えず嘆いていた。
「おかーさぁ~ん、本当に英治ちゃんにブラ外されたのぉ~?」
「嘘に決まってるじゃない」
あ、やっぱ嘘だったんだ。
あたしまで聞こえちゃうような声の大きさだったけど、英治くんと三咲ちゃんには届いてないようだし、タカくんもずっと嘆いたままだし。
トシキくんと拓斗くんは、自分が止めに行ったらどんな弄られ方するんだろう?って不安と警戒がせめぎあっているような顔してるし…。
クリムゾンカンパニーか。
結局全然思い出せないし、もし本当にお父さんの言う通りあたし達を恨んでるにしても、どんなバンドが居たのか聞いたところで対処のしようもないんだろうけどね。
それより、今聖羅がここに居るなら…。
あたしは意を決して聖羅の元に近づいた。
「あの、聖羅…。ちょっと聞きたい事があるんやけど」
「何梓?貴女もクリムゾンカンパニーの事が聞きたいの?」
「…正直それも聞きたいとは思うけど、ああやってタカくんや英治くんを貶めるって事は、聖羅もクリムゾンカンパニーにどんなバンドが居たのかってのは、知らないか忘れてるんじゃないかな?って思ってる」
じゃない限りは聖羅は多分教えてくれるだろうし。
「そう…ね。詳しく知らないってのが正解ね。でも正直にそう話した所で、あの馬鹿達は『あ?やっぱお前も忘れてんじゃねーか』って私を馬鹿にしてくるだけでしょ」
うん。そうだろうね。あたしもそう思う。
「それがわかってて私に聞きたい事ったら何かしら?」
「あ、うん、それなんやけど」
聖羅ならちゃんと茶化したり変に誤魔化したりしないで答えてくれるはず。
いや、違うね。聖羅なら特に疑問を持たずに正確に答えてくれるだろう。
「ちょっと思う所があってさ?覚えてたらでいいんやけど、あたしと聖羅が初めて会った時の事って覚えてる?最初はあたしは良い印象じゃなかったんやけど」
ごめんね、聖羅。
あの時の、お母さんの葬儀の時に初めて会った時。
聖羅はお父さんから、あたし達Artemisの事を守る為に嫌な事をわざわざ言って、お父さんがあたし達に興味を持たないようにしてくれた。
聖羅はその時の事を誠意を持って謝ってくれたのに、そんな事を思い出させるなんて酷いよね。
でも、それを聞けたらあたしの記憶のおかしい部分も解決してくれるはず。
タカくん達BREEZEがあたし達Artemisとデュエルした事をお母さんが知っているのが正しいのかどうかが。
あたし達をBREEZEとデュエル出来るようにしてくれたのは聖羅だ。
そして、聖羅と初めて会ったのは、お母さんの葬儀の時のはず。
だから、聖羅の記憶でも、あたしと初めて会ったのがお母さんの葬儀の時だったなら、お母さんとタカくんは会える事はなかったはずだし、お母さんがあたし達の事を知る訳がない。
「私と梓が初めて会った時…ね。もちろん覚えているわよ。あの時は本当に貴女達には酷い事を言ったわ。印象が悪くてもしょうがないわね」
「あ、覚えてくれてたんやね。まぁ、その時の事は本当に気にしてへんよ。変な事言ってごめん。それよりさ?その時ってさ…いつ?」
聖羅はあたし達に酷い事を言ったと知っている。
いや、知っているって言い方も変だけど。
「何が聞きたいのかしら?変な事を言うわね。
あの日の事を忘れるわけないじゃない」
「うん。だよね。あたしも覚えてる。でも、それっていつなの?」
「梓?」
変な事聞いてるよね。
でも大事な事なの。
言って聖羅。お母さんの葬儀の時って…。
「ふふ、変な事聞くわね。ま、理由は聞かないけど、梓が聞きたいのなら答えるわ。
私と梓が初めて会ったのは…」
あたしと聖羅が初めて会ったのは?
「艶かしい母君遙那マム…。もう面倒くさいから母さんでいいわね。
母さんが入院をした翌日だったかしらね。あなた達Artemisがバンドを結成して少し経った頃の、夏休み前だったわね」
…は?え?
お母さんが入院をした翌日…?
「ちょ…っと待って。お母さんの葬儀の時…じゃなくて?」
「?何を言っているの梓は」
そんな…何で…?
「お母さんの葬儀の時に!お父さんと聖羅が一緒に来て!」
「本当に何を言っているの?母さんの入院を知った時に、確かに私と父で面会に行ったけど、父が母さんの事そっちのけであなた達に興味を示したから、私があなた達を侮辱するような事を言って…」
「た、確かにそんな感じだったけど、感じ…だったけど…」
「それから長い入院生活だったけど、私も母さんに会えて、もっと甘えたかったしもっと孝行もしたかったけど、ずっと伝えたかった言葉も全部は無理だったけど、たくさん伝える事が出来たわ」
何で…。あたしの記憶じゃ…聖羅は会いたかったのにお母さんには会えなかったって。
「無事に…とは言いたくないけど、母さんの葬儀にはちゃんと娘として参列も出来たし。…あの子には感謝しているわ」
あの子…?
「あの子が母さんを無理にでも入院させようとしていなかったら、私は母さんに会う事も出来なかったかも知れないし、母さんももっと早くに亡くなっていたかも知れないものね」
「聖羅…あの子って…誰?その子がお母さんに入院を?」
「?そうよ。梓達は仲良くしてたじゃない。私は頻繁に関西に行けた訳じゃないし、そんなに親しくなかったけど、母さんの病気が悪いのを見抜いて、早々に入院を勧めてくれた子よ」
誰それ…?あたしの記憶にはそんな子…。
「しばらくなっちゃん。水瀬さんの家に下宿してた可愛い女の子よ」
「本当に…誰やのその子…。おっちゃんの家に…なっちゃんの家に下宿…?」
「おかーさ~ん、何のお話?おとーさんがタクシーの中から身振り手振りで早くしろって言ってるよぉ~」
「あ、そうだわ。ごめんなさい、梓。
私達はもう行くわね。話の続きをしたいなら、また今度に…」
「あ、あはは、ご、ごめんね、聖羅。あたしこそごめん!ちょっと変な事気になってさ。お義兄さんにも待っててもらってごめんって言ってて」
「梓?本当に大丈夫?ちょっと変よ?」
「あはは、大丈夫大丈夫。また何か気になったら連絡するし。お義兄さん達と今日は楽しんで来て」
「そう?わかったわ。もし何かあるのならちゃんと連絡するのよ?」
「わかってるって。それじゃせっちゃんもしっかり食べて来てね」
「ほ~い。それじゃ美しい堕天使シャイニング梓お姉様バイバ~イ」
「うん。バイバイ」
「盛夏ってまだ梓をそんな風に呼んでるの?」
そして聖羅とせっちゃんら行ってしまった。
あたしと聖羅が初めて出会ったのはお母さんが入院をした時?
お母さんの病気が悪いのを見抜いて、お母さんに入院を勧めてくれた子?
しかもなっちゃん家の水瀬家に下宿?
わかんない。
わかんないよ。あたしの知らない事ばかりだ。
やっぱり何かおかしいよ。
でも、もし、あたしの知っている記憶とは違って、お母さんと聖羅は会う事が出来ていて、お母さんがArtemisとBREEZEの対バンやデュエルを観る事が出来ていたのなら、あたしの知っている記憶よりは、ずっと素敵だと思う。
どうしてあたしにその記憶がないんだろう。