バンやろ外伝 -another gig-   作:高瀬あきと

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第8話 文化祭は続くよ

「俺達が全然目立ってねー!!!!」

 

「どうしたの渉?あ、もしかしていつもの発作かな?」

 

「渉くん、落ち着いて!ほらヒッヒッフー、ヒッヒッフー」

 

「ラマーズ法で渉を落ち着かせようとしているシフォン。マジで推せるぜ」

 

俺の名前は江口 渉。

Ailes Flammeのボーカルをやっている。

実質この物語の主人公と言っても差し支えないレベルだ。

 

今は合同文化祭が開催されてから3日目の放課後。

昨日と一昨日の文化祭でライブ大会の予選が終了し、土曜日の決勝大会まで少しの間の小休止って感じだ。

まぁ、俺達学生は普通に文化祭もあるし、にーちゃん達も学校で仕事あるみたいだけど。

 

「まぁ、渉くんは置いておいて。ボクらもライブ大会の決勝に出たかったよね」

 

「ああ、そうだな。それにタカさん達の話じゃ、雨宮達もしっかりライブしてたみたいだし、AmaterasuとBreak Bellだっけか?何かスゲェ音楽やるらしいじゃねぇか。雨宮やそいつらともデュエルしてみたかったな」

 

「渉がメイクに変なアレンジを入れなければね…」

 

「俺のせいなの!?」

 

う~ん…、確かにメイクに気合いを入れすぎたせいで、何故か全身にモザイクがかかってしまったけど、俺のせいだけじゃないと思うんだけどなぁ。

 

「それで?さっき渉が言ってた『全然目立ってねー』ってどういうこと?」

 

「あ、ああ、それな。にーちゃんの後継者の証である射手座のレガリアが、どこの馬の骨ともわからないポッと出の女の子に受け継がれちまってよ。主人公の座が危ないなと思ってな」

 

「ああ、なるほどな。渉。お前が相変わらずのアホで安心したぜ」

 

「ま、確かに文化祭編なのにエルフラコも失敗したし、目立ってる目立ってないの前に、不完全燃焼ではあるかな。

あ、そうだ!ねぇねぇ、じゃあさ、ライブは無理だろうけど今からみんなでスタジオ練しちゃう?」

 

お、久しぶりのスタジオ練!

いいなそれも!

 

「そうだね。僕も晴夜は持って来てるし、今日はバイトもないし、いいと思うよ」

 

「そうだな。オレも大丈夫だ。渉ももちろん大丈夫だよな?」

 

「当たり前じゃねぇか!もちろんやるぜ!やろうぜ、スタジオ練!」

 

「オッケー。じゃあボクのスマホで早速スタジオ予約しちゃうね」

 

エルフラコの時に披露する予定だった新曲の練習をするか、それとも今までの曲をもっと極める為に煮詰めるか。どっちにしろ有意義な時間になりそうだぜ。

 

「ん?ありゃ?」

 

「どうしたシフォン。もしかしてスタジオは予約でいっぱいか?」

 

「いや、そうじゃなくて今、スマホひらいてみたんだけど、志保からボクらみんな宛に連絡が来てて…」

 

「え?雨宮さんから?何って?」

 

雨宮のヤツめ。

例えお前からの連絡であっても、俺達Ailes Flammeは止まらねぇぜ。残念だったな。

 

「今日は志保のバイト先のカラオケが半額デーだから、ボクらも来ないかって。さっちちゃんと明日香ちゃんと栞ちゃんも一緒みたい」

 

「フッ、カラオケの半額デーか」

 

「そういや、僕はまだあのカラオケの今月のスイーツを食べてない事を思い出したよ」

 

「ああ!亮、拓実、シフォン!俺達の向かう先はひとつだ!行くぞ!!」

 

俺達はカラオケへと向かうべく、雨宮の指定した待ち合わせ場所へと向かった。

 

 

 

 

 

 

「いやー!しっかり歌ったな!」

 

俺達は雨宮達と合流した後カラオケに行って、かれこれもう3時間程歌ったのだ。

まぁ、拓実や明日香や小松は人前ではあんまり歌いたくないというバンドマンにあるまじき理由から、ほとんど歌ってたのは、俺と亮とシフォンと雨宮とさっちくらいだったけどな。

 

今は歌うのはちょっと休憩しようって事で、何故か亮が持っていた『蕎麦打ち名人100選 関西編』というDVDを観ながらみんなでスイーツを食べてダベっていた。

 

「ふぅん…。あんたらスタジオ練行くつもりだったんだ?あたしらDivalはライブあんまり出来てないけど、割りとスタジオ練はしてるよ」

 

「何!?Divalはたまにスタジオ練してんのかよ!ずりぃぞ雨宮!」

 

「ずるいって何よ…」

 

「そういや栞ちゃん達FABULOUS PERFUMEはハロウィン前にライブやるんだっけ?」

 

「遊ちゃんはもう普通にボクがFABULOUS PERFUMEである事話してるよね?一応、FABULOUS PERFUMEは正体不明のバンドなんだけど?」

 

「あのさ?秦野くん…その、物凄く言いにくいんだけど、このDVD…面白いかな?」

 

「え?私は面白いと思って観てたけど、紗智的には面白くない?さっきの職人の蕎麦の切り方。見事なものだったわ」

 

「おお!そこに気付くか観月!さすがだな!」

 

「あー、新作のスイーツ美味しい」

 

俺達は思い思いに語っていた。

まぁ、主に文化祭とか音楽の事だな。

 

「そ。今予選の集計中で、今日中には決勝大会に出れるバンドが決まるみたい。デュエルの対戦組み合わせもその時に発表されるんだってさ」

 

「なるほどな。それで待ってるだけじゃ、落ち着かねぇから、カラオケ半額デーって事でみんなで来たって感じか?」

 

「秦野亮は何を言ってるの!ボクらが決勝大会に行くのは確実だよ!だって即席のパスビにはボクも双葉もいるんだし」

 

「栞の言う通りね。私達が決勝大会に出れないなんてあり得ないわ」

 

「ありゃ?意外だね。明日香ちゃんの事だから『私はさっさと負けてゆっくり文化祭を楽しみたい』とか言うと思ったのに」

 

「やってしまったからには負けたくないの!正直面倒くさいって思ってたけど、やるからには優勝目指すわよ」

 

ライブ大会で優勝かぁ。

俺達もエルフラコで演奏出来てたら、順当に決勝大会も出てただろうし、優勝もしてただろうな。

あ、そういやライブ大会って言えば…

 

「そうだな明日香。せっかくならアマテラスに負けないようにお前らが優勝してくれよ」

 

「え?何で江口くんはAmaterasuを敵視してるの?

Amaterasuのボーカルの子ってタカさんのレガリアの後継者でしょ?仲間みたいなものじゃん」

 

「いや、別に敵視してる訳じゃねぇぞ?」

 

「河野。聞いてやるな。渉はアホなんだよ」

 

「そうそう。渉くんはAmaterasuに主役の座を奪われると思ってジェラシー妬いてるんだよ」

 

「主役の座?ジェラシー…?」

 

いやいや、確かに最近は出番が少ないから、少し妬きもちも入ってるけどそうじゃないからな?

 

「そういうのじゃなくてよ。ほら、にーちゃんからレガリアを託されたっていうポッと出の女の子。確かアマテラスのボーカルの…天音だっけか?」

 

「もしかして渉って、レガリアって対バンかデュエルで勝ったバンドの物になるとか思ってたりしてるとか…?

渉、レガリアってそういうシステムで手に入る物じゃないからね?」

 

「拓斗ならともかくタカさんはそういうのでは、レガリアの後継者とか決めたりしないでしょ」

 

「うん。明日香の言う通り。

タカがそんなので後継者決めるなんてありえないよ。むしろタカが相手ならあたしの胸かお尻でも触らせて『通報したり訴えられたり、理奈達にチクられたくなかったら、あたしを後継者にして』って言った方が可能性ありそうだし」

 

「雨宮の手でタカさんなら何とかしてしまいそうって思える所が恐ろしいな」

 

「そんなんじゃねーよ。雨宮と亮こそにーちゃんを何だと思ってんだ?てか、その前にお前らみんな俺の事を何だと思ってんの?」

 

いや、本当に何を言ってんだこいつら。

 

「確か天音…だっけか?ほら昨日のにーちゃん達の話じゃ海原に狙われてるみたいだったしよ。昔のArtemisの事もあるし、俺もこないだ足立に会った時によ」

 

あの時、足立に会った時俺は、正直息をするのもヤバいと思うくらい恐怖を感じた。

海原にファントムで会った時は、そん時みたいな恐怖は感じなかったけど、海原も足立と同様に恐ろしい相手だってのはにーちゃん達から聞かされている。

 

「足立…か。確かにあいつに会った時はヤバかったな。正直、親父達が来てくれるまでは生きた心地がしなかったぜ」

 

「足立…元クリムゾンエンターテイメントの四天王の1人…か。手塚さんを見る感じじゃ、恐怖とかそんなの感じないけど、そんなヤバいヤツだったんだ?」

 

雨宮の問いに俺は黙ってこくりと頷いた。

だけど、雨宮は俺の方を見ずに『蕎麦打ち名人100選 関西編』の画面を見ていた。

かっこよく頷いたつもりだったのに。

 

「でもそれでAmaterasuに負けないようにって、どう繋がるの?」

 

「ああ、それな。一応にーちゃんのレガリアの後継者って事で、海原はファントムに手を出さない約束だからってのでアマテラスを諦めるって話だったけどよ。にーちゃんや梓ねーちゃん達は警戒はしてたろ?」

 

「確かにそうだね。ボクらは正式にファントムのバンドだけど、Amaterasuは正式にファントムに所属してる訳じゃないもんね」

 

「拓斗も言っていたわね。二胴や九頭竜が本当にそれで手を引くか疑問だって」

 

天音って子がどんだけすげぇバンドで、どんだけすげぇ歌を歌えても、海原に狙われたら昔のにーちゃんや梓ねーちゃんみたいになっちまうかも知れない。

 

「俺もよBLASTに勝ちたいとか、音楽の先の世界を見たいとか、色々音楽で目標はあるけど、俺はにーちゃんの仲間として、にーちゃんの後継者を守りたいって思ったんだ。にーちゃん達がArtemisを守ったみたいにな」

 

「う、江口くんが(今日も)かっこいい…」

 

「わ、渉が(今日も)かっこいい…」

 

「お?さっちも明日香も俺の事かっこいいって思ってくれたのか?もしかして俺に惚れたり…」

 

「志保ちゃん助けて。江口くんが頭おかしい事言ってる…」

 

「秦野!あんたAiles Flammeのリーダーでしょ!?バンメンがおかしな事言ってるんだから注意しなさいよ!」

 

え?さっきのかっこいいって何だったの?

 

「でもよ渉。雨宮達がアマテラスを倒して優勝したからって、海原がアマテラスから興味なくなる訳でもないかもだし、雨宮達が海原に執拗に狙われるようになっても大変は大変だぞ?」

 

「ま、そこはほらよ!俺達も居るしにーちゃんやねーちゃん、春さんやevoke…仲間がいっぱい居るしな!」

 

「ああ、良かった。いつもの江口くんだ」

 

「まったく…渉はいちいち言う事が大げさなのよ」

 

え?俺ってそんな変な事言ってる?

 

「ん~、まぁいいや。取り敢えず明日香、雨宮、小松」

 

「な、何よ」

 

「ライブ大会!お前らがアマテラスを倒して優勝しろよ!」

 

俺は思いっきり叫んだ。

 

 

 

 

 

 

-渉達の居るカラオケの隣の部屋

 

 

「あ、あはは、渉くんってまた面白い事言ってるね…」

 

「ほんと渉はアホだね」

 

「なぁに~?そんな事言ってぇ。美緒も本当はタカさんの後継者になりたかったんじゃないの~?」

 

「は?麻衣は何を言ってるの?私はお兄さんの義妹になる予定だから後継者になんてならなくていいし」

 

「義妹って…」

 

「うん。渉は本当にアホだね。優勝するのはあたし達Glitter Melodyだし。さすがにしーちゃん達相手でも負けるつもりはないよ」

 

私の名前は佐倉 美緒。

正直、お兄さんの後継者より理奈さんの後継者になりたい普通のJKだ。

 

「隣に渉くん達が居るのもびっくりしたけど、Amaterasuって確かあたし達の学校の子達なんだよね?gamutじゃないバンドが居たのも私はびっくりしたよ」

 

「あ、そうだよね~。私もAmaterasuってよく知らないし」

 

Amaterasuか。

私もどんな音楽やっているのかは、よく知らないんですよね。

でもメンバーの子。天音ちゃんって子はあの子の事なんだろうって目星は付いている。

多分、今年度の始めくらいにgamutのまわりをウロウロしていた大人しそうな感じだったあの子だろう。

 

私と睦月でgamutに勧誘してたあの子。

まぁ、結局話途中でいつも逃げられてたし、gamutに入ることはなかったんだけど、最近、ギターケースやベースケースを持ってる子達と一緒に居るのを見てたから…。

 

でもまさかあの子がレガリアを継承してるとは夢にも思ってませんでしたけど。

……それもお兄さんのレガリアとは。

 

「どしたの美緒?何か怖い顔してない?」

 

「は?え?そんな顔してないけど?」

 

「あ、もしかしてラーメン分切れてきた?体調悪い?」

 

「あの…睦月ちゃん、ラーメン分って何かな?」

 

「あれ?恵美はラーメン分って知らない感じ?」

 

「あ、あはは、聞いた事もないんだけど…」

 

「え?恵美ってあたし達の中でも成績優秀って感じなのに、ラーメン分知らないんだ?」

 

あ、確かに睦月の言う通りかも。

文化祭始まった3日前からラーメン食べれてないし、ちょっとイライラしてるのかも。ラーメン分摂取しなきゃ。

このカラオケってラーメンありましたかね?

 

「あ、あはは…あ~…もしかして…、カルシウムとか糖分とか鉄分とか…そんな感じ?」

 

「うん、そう。美緒ってラーメン食べない日が何日か続くと何でもケンカ売っちゃうし。こないだ蟻にケンカ売ってたよね?」

 

「いや、さすがに模造しないでくれない?麻衣と恵美が信じたらどうすんの?確かにラーメン分が不足してくるとイライラしちゃうけど…」

 

「美緒も睦月もラーメン分って栄養素が本当にあるかのように話してるよね?」

 

「あ、だよね?麻衣ちゃんの言う通りそんな栄養素ないよね?」

 

「え?うそ、ないの?」

 

「麻衣も恵美も変な事言ってないで。睦月が信じたらどうすんの」

 

麻衣も恵美もラーメン分がないとか、さすがに睦月も信じないと思ってのジョークなんだろうけど。

ラーメン分不足したら人間生きていけないでしょ。

お兄さんも昔ラーメン分が不足して死にかけたって言ってましたし。

 

「いや、美緒も何を言ってるの?そんな栄養素ないよ?」

 

「いや、麻衣。さすがにそのジョークは笑えないよ?」

 

「美緒は本当に何を言ってるの…?」

 

「ねぇ恵美」

 

「睦月ちゃん?何かな?」

 

「さすがにラーメン分ってあたしも冗談だったんだけど、美緒ってどうも本気くさいね」

 

「あ、睦月ちゃんは冗談だったんだ?」

 

え?睦月も何を言ってるの?

あるでしょ。ラーメン分は…。

 

「そもそもね?美緒。美緒はこないだ文化祭前も景気付けってラーメン食べてたよね?」

 

「うん、まぁ…でも、その日以来ラーメン食べてな…」

 

「私達ラーメン食べてなかったでしょ?その時。

もちろんその時以降も私は食べてないし。私がこないだラーメン食べたのって夏休みの時くらいだよ?」

 

「え?冗談でしょ?麻衣はそれで何で生きてんの?」

 

「「「……」」」

 

え?嘘でしょ?何でみんな私を可哀想な人を見るかのように見てくんの?

 

 

 

 

-渉達の居るカラオケのGlitter Melodyと逆サイドの部屋

 

 

「カラオケだとベース弾けないし、さっきまで帰りたかったけど、面白い展開になってきたね」

 

「おのれ、忌々しい!Ailes Flammeの江口さんとおっしゃいましたか?まさかわたくし達Amaterasuを…いえ、天音を敵視するとは!」

 

「いや、別に私達や天音さんを敵視してる訳じゃないんじゃ…?まぁ、でもわざわざAmaterasuを倒して…って言ってるのか…」

 

「あははは!良かったじゃん、あまねる大人気じゃん!」

 

「うぇぇぇぇぇぇ…な、何が良かったって言うの?あ、どうしよ…お腹痛くなってきた…もう帰りたい…」

 

私の名前は本城 天音。

今日はライブ大会の結果発表だから、みんなで結果を聞こうとカラオケ半額に乗っかって、バンドメンバーとカラオケに来ていた。

 

さっきまで気持ちよく歌ってたんだけど、蘭ちゃんがベース弾けなくて暇ー!って言うものだから、真凛ちゃんが『じゃあちょっと休憩しておやつタイムにしよ!』と提案し、小休止を挟む事になった。

ちょうどその時に隣の部屋から話し声が聞こえてきて…。

 

「わ、私はファントムの方達と敵対するつもりなんてないのに…」

 

「あまね。でも、あたし達、優勝目指してるでしょ?」

 

「うぅ…そ、そりゃ、もちろん優勝を目指してはいるけど…。そ、そもそもみんなの演奏はすごいけど私の歌なんてまだまだだし」

 

「だったら問題なし。ファントムとかクリムゾンとか関係ないし。あたし達はあたし達の音楽やるだけ」

 

「そうそう!らんらんの言う通りだってー。あたしらならいけるいける!ヤバそうになったらあまねるのレガリアで蹴散らせばいいし」

 

「いや、レガリアってそういうモノじゃないから…」

 

「う~ん…、確かに私もドラム始めたばっかりだし、あんまり自信ないかも。優勝はもちろんしたいけど…」

 

「天音も輝美も自信無さすぎですわ。貴女方はもう少し自分の演奏を信じればいいのです。逆に真凛が何でそんなに自信満々なのか不思議でなりませんわ」

 

「え?あたし?」

 

いや、そうは言っても…。

もちろんライブ大会の日に改めて、バンドを、音楽を頑張ろうって決意したけど、みんなで気楽に楽しんでライブやりたいだけだし。

も、もちろん、三咲さんに大切な射手座のレガリアを託してもらったし、デュエルするなら負けないように…とは思ってるけど。

 

「天音はもっと自信を持つべきですのよ。貴女はあのレガリアの後継者として認められたシンガーなのですから。それも15年前にクリムゾンエンターテイメントと戦っていたBREEZEのチューナー、三咲さんから直接に」

 

「も、もちろん、わかってるよ。

こ、こないだは逃げちゃったりして、みんなにも迷惑掛けちゃったし、カッコ悪い所を三咲さんにもタカさんにも見せちゃったけど…。今はもう逃げたりはしない」

 

で、でも、それとこれとは違うと思うんだけど…。

どちらかと言えば、出来れば私はファントムの方々とは仲良くしたいと思ってるし。

それに…私達の敵はクリムゾンエンターテイメントの方だと思うし…。で、出来ればクリムゾンエンターテイメントとも戦いたくないけど。怖いし。

 

「そ、それに天音には最大の武器がありますのよ?何と言ってもその可愛さ、愛らしさは何物にも敵う事はありませんわ。もう可愛くて可愛くて本当に堪りませんわ。可愛いは正義なのです。じ、自信が無いのでしたら、こ、今夜はわたくしと一緒に…はぁはぁ」

 

「すずか残念ー。あまねはお腹が痛いのがピークになったのか聞いてないよ」

 

「う~…ん、う~…ん…」

 

「…聞かれてなくて良かったと思っておきますわ。断られでもしたらわたくしが自信喪失しそうですし」

 

「ねぇねぇ、てるみん。何でスズはあたしが自信満々なのが不思議なの?」

 

「え!?ちょっと言いにくいっていうか…。わ、私もわかんないなぁ~…」

 

-ピコン

 

「あ、あまねるのスマホにメールだ。もしかしてライブ大会の結果メールじゃね?」

 

「あ、そうかも。あまねーあまねー。メール見てみてー」

 

うぅ…色々考えてると余計お腹痛くなってきちゃった…。

 

「天音!死んでる場合じゃありませんわよ!メールを確認して下さいまし」

 

う?え、私?メール?

 

「天音さん!スマホにメールが」

 

「あ、ご、ごめん!」

 

私は急いでスマホの通知を確認した。

 

「えっと……わぁ!いける!私達、ライブ大会の決勝トーナメントに参加出来るよ!!」

 

「よっしゃ!やり~!ほらな、あまねる!あたしらなら大丈夫って言ったじゃん!」

 

「うん!うん!良かったよぉ~」

 

「みんなで頑張ったもんね。良かった。私も…つい涙が出そうになってきたよ」

 

「あまねもまりんもてるみも大袈裟過ぎ~。あたしらなら余裕だし」

 

「蘭の言う通りですわね。まぁ、わたくしも大丈夫と確信していましたが、一安心ですわ」

 

本当に良かった。

やっぱり嬉しいな。大好きな音楽を、大好きなみんなと目標に向かって頑張ってきたんだもん。

 

「それより天音。土曜日の1回戦。初戦の相手の連絡も来てますわよね?相手は何ていうバンドですの?」

 

あ、そっか。

このメールに1回戦の対戦バンドと、そのバンドが演奏してる動画のURLが貼られてるんだっけ。

もう少し下の方かな?

 

「えっと…待ってね。あ、ここかな。えっと…私達の1回戦の相手は……え?嘘…」

 

 

 

 

-渉達の居るカラオケの正面の部屋

 

 

 

「ただいま」

 

「やっっっぱり居たわよ!内山 拓実!!」

 

「内山さんは私達の1つ上よ?親しい訳でもないのに呼び捨ては止めなさい」

 

あたしの名前は寺川 結月。

今日はライブ大会の決勝トーナメントに行けるかどうかの結果メールが届く日。

 

あたし達もライブ経験はあるし、初めてという訳でもない。

それにライブ自体は、今のあたし達がやれる会心の出来だったと自負している。

 

なのに…。

 

『結月!あんたが遅刻して来たせいで、ライブの順番は変わるし、審査するみんなの印象も悪いし!決勝大会に行けなかったら結月のせいだからね!』

 

『いや…確かにそうだけど…。わ、悪かったとは思ってるし』

 

『そうね。それで審査に影響が出るかといえば、どうかとは思うけど、少なくとも主催者やスタッフの人達、オーディエンスや私達に迷惑は掛けたわね』

 

『だ、だから…悪かったって…』

 

『まぁまぁ。結月もちゃんと反省してるんだし、今回は許してあげようよ』

 

『夏希…何て優しいの…!まるで天使だよ…』

 

この子の名前は黒河 夏希(くろかわ なつき)

あたし達Break Bellのバンドでリードギターを担当している。

普段から先生やクラスメート達からも頼りにされていて、周りにも気を遣えるし学校行事やあたしの家のお寺の交流会なんかも率先して手伝ってくれている。

確か今回の文化祭も実行委員の1人として色々やってるんだっけ。

 

中学卒業間近の時に、あたしだけ諸事情でみんなと別の高校を受験すると言った時、高校は別になってもみんなで繋がりは持っていたいという事から、バンドを組もうと言い出したのは他でもない夏希だった。

 

『ま、迷惑料って事で私達にカラオケくらいなら奢ってくれるよね?』

 

前言撤回だよ。全然天使じゃなかったよ。

あたしこないだタクシー代で散財したばっかりなのに…。母さんからお小遣い前借り出来るかな…?

 

『夏希はいつもいつも結月に甘いのよ』

 

いや、甘くないでしょ?

今回は遅刻しちゃって確かに悪かったとは思ってるけど、基本的にあたし遅刻したりしないし。むしろ普段はいつも最初に待ち合わせ場所に着いてるし。

それなのに金欠時にカラオケ奢りって…。

 

『ま、あたしも鬼じゃないしね。カラオケプラス好きなスイーツ。それで許してあげるわ』

 

鬼が居たよ。

この子はうちのベーシスト、橘 あゆみ(たちばな あゆみ)

Break Bellのメンバーはみんなあたしと物心付いた頃からの付き合いで幼馴染みだ。

その中でもあゆみはいつも一緒に居た女の子で、昔から一緒によくBREEZEのDVDを観ていた。

 

その中でもベーシストである拓斗さんのかっこよさに惹かれ、小学校に入学する前にはベースを両親に買ってもらい、独学やらネットでベースを学んで、あたし達の中では一番音楽の経験が長いメンバーだ。

まぁ、拓斗さんの事が好き過ぎたあゆみは、こないだのAiles Flammeのライブで内山さんが、拓斗さんのベースを使っていた事に憤慨し、あの日以来、内山さんの事をやたらと敵視している。

 

『 みんなが行くのなら私も行かない訳にはいかないわね』

 

だよね。琴子も来るよね…。

あたし達の中でも一番大人びているこの子がドラマーの桂木 琴子(かつらぎ ことこ)

 

大人びているというのも、この子の母方のお婆様がすっごく古風な方で、昔ながらの大和撫子?みたいな感じで育つように琴子はお婆様に厳しく育てられた。

まぁ、琴子のご両親が共働きであんまり家に居られないからという事もあっての事だったんだけど。

あたし達でバンドやるってなった時も、反対派のお婆様とバンドやりたい琴子とで一悶着もあった。

 

『あ、あのさ?実はあたし今月はピンチで…。カラオケは来月とかにしない?』

 

『私、今日は超歌いたい気分なんだよね』

 

『今月のスイーツのコンセプトは何かしら?ふふ、今から楽しみだわ』

 

『今日は早目に帰宅したかったのだけど、決勝トーナメントに行けるかどうかの結果も気になるし、私も今日は行くわ。結月のせっかくの奢りだものね。特別よ』

 

本当に奢らされるんだ…あたし…。

 

 

 

 

そんなやり取りがあり、あたし達はカラオケに来たんだけど、あゆみがファントムの方達もカラオケに来ているのを発見し、自分達が歌いたい曲を歌った後、あたしの歌の番になってから、夏希とあゆみはファントムの方達の居る部屋へと挨拶に行ったのだ。

 

「それで?ファントムの方達にはちゃんと挨拶はしたの?あゆみ、間違えても内山さん達を呼び捨てにしたりしなかったでしょうね?」

 

あ、あたしもそれは心配かも。

あゆみって根はいい子なんだけど口が悪いしね。

あたしには意地も悪いけど。

 

「いや、それがさぁ~…」

 

「そうよ!聞きなさいよ!あいつらってあたし達Break Bellの話題を出さずに、天音達Amaterasuをぶっ倒してレガリアを奪う気でいるのよ!」

 

「は!?はぁ!?天音を倒して射手座のレガリアを!?」

 

嘘でしょ…?何でファントムの方達が天音を…。

 

「……夏希。あゆみの言っている事がよくわからないわ。本当にファントムの方達はそう言っていたの?」

 

「間違いないわよ!天音にジェラシーとか言ってたし!」

 

ん?ジェラシー?何で?

まぁ、確かにBREEZEに憧れてるあたしとしても、天音がBREEZEのチューナーである三咲さんから、レガリアを託されたってのは羨ましくもあるけど。

 

「あー…う~ん…。私もファントムの方達に挨拶しとこうと思って部屋に入ろうとしてノックしようとしたら、中からの会話が聞こえてきて…」

 

「Ailes Flammeの江口はAmaterasuを倒せって言ってたわ!」

 

「Amaterasuを倒すようにってAiles Flammeの江口さんが言ってたのは確かだけど、それは別に天音達を敵視してる訳じゃなくて、クリムゾンエンターテイメントの海原ってのに、レガリアが狙われてるから、Amaterasuを倒して目立たないようにさせようって感じに私は受け取ったんだけど…」

 

天音のレガリアをクリムゾンエンターテイメントの海原が?海原ってクリムゾンエンターテイメントの大ボスじゃん。

そっか。海原が天音のレガリアを…。

天音からしたら胃が痛くなって、それこそぶっ倒れちゃうような話だよね。

 

「なるほどね。だったら心配はないんじゃないかしら?江口さんは天音達を…天音のレガリアを守ろうとしての事でしょう?確かにAmaterasuがファントムの方にデュエルで敗れれば、クリムゾンエンターテイメントの興味はレガリアより、レガリアを持つ者を倒したバンドに向くでしょうね。理に適ってるわ」

 

「あたしも琴子の言う通りだと思うよ。特に江口さん達が天音を敵視する理由もないだろうし」

 

「琴子も結月も甘いのよ!天音のレガリアがAiles Flammeに奪われたらどーすんのよ!」

 

「あゆみこそAiles Flammeさんを敵視し過ぎでしょ。レガリア戦争の頃じゃあるまいし、レガリアってデュエルで倒した倒されたで奪い合うものじゃないじゃん」

 

「あれ?そーなん?結月って天音にいつかレガリアを奪ってみせるとか言ってなかった?天音がライブやれる状況になかったから話は流れてたけど」

 

ああ…それね。

 

「ん。まぁ、そだけどさ。デュエルで勝った負けたで天音からレガリアを貰うつもりはないよ」

 

「え?そうなの?何でそれで天音にいつもレガリア奪ってやるとか言ってるの?」

 

「あたしも結月の事だから最悪暴力を奮ってでも天音からレガリアを奪い取るつもりなんだろうなって思ってたんだけど…」

 

「結月は口より先に手が出るものね」

 

あたしの幼馴染み達はあたしをどんな目で見てるの?

 

射手座のレガリアは三咲さんが天音に託してくれた物。

だからあたしはいつか天音とデュエルをして、天音があたしにならレガリアを託してもいいと思ってもらえたら、天音からあたしにレガリアを託してもらう。

そして天音はレガリアは天音に託されて良かったとあたしが思えるように歌い続ける。

お互いがお互いを高め合えるようにと交わした約束。

 

「まぁ、それはあたしと天音の約束だから」

 

「カッコつけてる所悪いけどさ。さっき結月のスマホに着信あったみたいなんだけど?」

 

え?あ、ほんとだ。

 

「もしかしてバンド大会の結果メールかしら?」

 

「うん。そうみたい」

 

「そうみたいって!結果は!?あたし達は決勝トーナメントに出場出来るの!?」

 

「うん。もちろん。あたし達決勝トーナメント出れるよ」

 

「良かったぁ~。ドキドキしたよ」

 

「ま、まぁ?あたしが居るんだし余裕よね!」

 

「安心したわ。これでゆっくりスイーツが食べられるわね。どのスイーツを注文しようかしら」

 

え?待って。琴子ってさっきもスイーツ食べてなかった?もしかしてそれもあたしが奢るの?

 

あたしのお財布事情は大変な事になってしまったけど、無事に決勝トーナメントに行ける事になった。

メールに書いてあった1回戦の対戦相手は正直知らないバンドだけど、あたし達が勝ち続けて、天音達も勝ち続ければ、いつかはあたし達と天音達のデュエルギグがやれる。

あたしは本当にそれが楽しみだよ。

 

 

 

 

「へぇー、マジかよ。それは一回戦から面白いカードだな」

 

「あははは!ドンマイ!」

 

「う~ん、でもボクとしてはどっち応援しようか悩んじゃうなぁ」

 

「だよね。僕も雨宮さん達には悪いけど、どっちを応援しようか悩んじゃうよ」

 

そしてモノローグは俺、江口 渉に戻ってきた。

雨宮達パスビは決勝トーナメントに出場出来る事になった。

でもその結果メールに書いていた一回戦の相手が、なかなか面白いデュエルを見れそうでワクワクしてくる。

 

「ゆーちゃんは!ちゃんとボク達を応援してよね!」

 

「そうよ!あんた達一応同級生でしょう!私達を応援しなさいよ!」

 

「安心して志保ちゃん。私は本当はパスビを応援したいけど、審査員という立場上、贔屓したりせずにしっかりと審査するから」

 

「まさかあたし達のいきなりの相手がGlitter Melodyとはね。面白くなってきたじゃん」

 

雨宮達パスビの一回戦の相手は、美緒達のGlitter Melodyだった。

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