バンやろ外伝 -another gig-   作:高瀬あきと

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第15話 まだ周年記念?

俺の名前は佐藤 トシキ。

元BREEZEというバンドでギターを担当していた。

 

この6周年記念っていつまで続くんだろう?

Amaterasuの自己紹介が終わり、Break Bellの自己紹介が終わり、そしてCrest Tearの自己紹介も終わった。

もう少しで本編である文化祭編に戻るとは思うんだけど、6周年記念から1ヵ月以上が経っている。

 

「え?クリムゾンカンパニー?」

 

おっと、そうだ。

こんな無駄なモノローグで時間を費やす訳にはいかないから、サッとした説明で終わらせてしまおう。

 

前回Crest Tearのメンバーが自己紹介をしたと思うんだけど、結局、四ノ宮くんの自己紹介では、レガリアの事を伏せるようにと、はーちゃんが四ノ宮くんに指示していた。

四ノ宮くんもお父さんを探し出す為だからと、最初は拒否していたけど、今のクリムゾンエンターテイメントはレガリアを狙っているという事を話した。

 

四ノ宮くんもヒデくんや和泉ちゃんから、クリムゾンエンターテイメントの恐ろしさを聞かされていたんだろう。はーちゃんにクリムゾンエンターテイメントがレガリアを狙っている事を聞いた四ノ宮くんは、『まさかクリムゾンが今になって…。ありがとうございます。タカさんの話を聞いて良かったです。俺が迂闊にレガリアを父が持っている事を喋っていたら、父どころか俺の家族にも危険が及ぶところでした』と、納得してくれた。

 

はーちゃんも四ノ宮くんのお父さんは見つけ出せるように、四ノ宮くんと話し合って、レガリアを話題を隠しながら、行方不明であるお父さんを誰かが見つけ出してくれたら~…というように言葉を選んで台本を即興で作った。本当長年一緒だけど、あんな台本を即興で作れるはーちゃんは、尊敬とか信頼とかする前に怖いと思います。

 

そして、Crest Tearの撮影が終わり、ミーティングが長引いていたヒデくんの撮影に入る事になったけど『この放送ってヒデが出ても大丈夫なの?クリムゾンの誰かに観られたらヤバくない?』という事で、ヒデくんの撮影はなくなった。

最初は顔を映さず声も変えて、社長のHさんとかで出せばいいんじゃない?という意見もあったけど、『いや、それ俺が悪いことしてる人みたいじゃん』と、ヒデくんが嫌がったのだった。

 

今、撮影が完全に終わった俺達は、さっさと帰って今日の撮影したデータを日奈子ちゃんに渡して、そよ風に飲みにでも行きたかったんだけど、その前にヒデくんに海原の言っていた『クリムゾンカンパニー』について、何か知っているかと質問している所なのだ。

 

「まぁ、俺もそんな交流もなかったし詳しくはないけど、同じクリムゾンエンターテイメントの傘下だったしな。お前らよりは多少は覚えてるかもな」

 

「んで?どんなバンドが居たんだ?」

 

「ハァ……、当の潰した本人達に覚えられてないって…本当かわいそうな奴らだな」

 

「そんな大きなタメ息つくなよ。当時はタカも拓斗も野蛮だったしな。しょうがねぇよ」

 

「いや、英治も大概だったからな?てか、お前らBREEZEの中じゃ一番好戦的だったのは英治だろ」

 

「え?嘘。だってタカのヤツいつも怒ってたし、Artemis絡むと拓斗も好戦的だったじゃん。拓斗なんかアルテミスの矢まで作っちゃうし」

 

「タカが怒ってたのは仲間内にだけだし、基本的にはチキンだろ?拓斗だって梓ちゃん絡まなかったらチキンだったじゃん」

 

「ああ、そう言えばそうだよね。英ちゃんも『俺達の中』じゃ好戦的ってだけで、基本的にはビビリでチキンだけど…」

 

BREEZEってファントムのみんなには凄いと思われてるし、これまでに出た過去話じゃかっこよく描写されてる事もあるけど、アレって身内補正かかってたりするもんね。俺達みんな骨なしチキンだし。

 

「ああ。んで、話を戻すぞ?クリムゾンカンパニーは俺達傘下の会社の中でも、割りと大きくて色んなミュージシャンが居てな。

ま、それでも結局はクリムゾンミュージックにも、クリムゾンエンターテイメントにも移籍させてもらえなかったミュージシャンばっかりだったんだけど…」

 

そう言われてみたらそうだよね。

そんな凄いミュージシャンが居たら、そんな傘下の会社に居座らず、クリムゾンミュージックは無理でも、クリムゾンエンターテイメントには引き抜きされそうなのに。

ヒデくんは何度か二胴から引き抜きの話があったみたいだけど…。

 

「でも、お前らに恨み持った奴らが、今またクリムゾンカンパニーになって、ファントムを狙うとは思えないな。

海原も含めてクリムゾンエンターテイメントの連中は、他のバンドに負けた会社やミュージシャンにかける恩情なんて持ち合わせてなかったし…。

俺もお前らにやられてからは、クリムゾンエンターテイメントに見捨てられて自由の身になれただろ?(笑)」

 

(笑)じゃないよ(笑)じゃ…。

 

「15年以上も前にお前らにやられて、ずっと恨みを持ったまま生活してるなんて考えられないな。……足立みたいなのも居るには居るけど(笑)」

 

だから(笑)じゃないよ(笑)じゃ…。

でも確かにそうだよね。聖羅さんもそんな事言ってたし、クリムゾンカンパニーもクリムゾンエンターテイメントみたいに活動を続けていたのなら、可能性はなくもないけど。

 

その後、ヒデくんからいくつかのバンド名を聞いて、全く記憶にないバンドも居れば、あ、そんな奴ら居たねって感じで思い出せるバンドもいた。

でも、今となっては聞かない名前のミュージシャン達だし、今もミュージシャンを続けながら生活をしていたとは俺としても考えにくいかな。

 

「だったらやっぱり海原のタカと梓に対する嫌がらせか?」

 

「あ?あいつは俺に無礼を働く超ド級の不届き者ではあるが、こんな地味な嫌がらせはしてこねぇだろ。どっちかっつーと、無理矢理にクリムゾンカンパニー復活させて、俺達にぶつけようとしてるって方がしっくりくるわ」

 

「確かに。海原ならはーちゃんへの嫌がらせには無駄にお金も使いそうだしね」

 

「……タカとトシキの言い分の方が俺もしっくりはくるけど、クリムゾンカンパニーを海原が復活させた所で、今のタカにも梓ちゃんにも大した嫌がらせにはならないと思うし、あの海原が本気で嫌がらせするならこんなもんじゃないんじゃないか?」

 

ヒデはそう言った後、俺達にピースしてきた。

 

「ピースじゃねぇよ」

 

俺のモノローグがヒデに読まれてるだと!?

 

「ん?あれ?さっきまで俺がモノローグしてたと思うんだけど…もしかしてモノローグって英ちゃんになってる?」

 

「あ?トシキは何を変な事言ってんだ?」

 

そんな訳ねぇだろ。

 

「あ、俺に戻ってるわ。前回の続きみたいになってるわ」

 

「ん?トシキも英治もどうしたんだ?

俺が思う可能性は2つ。

ひとつは昔にお前らにやられて、未だに恨みを持っている奴らを集めてクリムゾンカンパニーを作って再結成した。まぁ、俺の親父とか兄貴とかなら賛同しそうだよな」

 

「あ?お前の親父さんとか、まだ俺らの事恨んでんの?」

 

「もう15年以上会ってないけど、親父も兄貴も最近まで刑務所にいた筈だしな。出所してお前らに復讐とか考えても不思議じゃないだろ」

 

「え?やだ怖いわ。俺もう夜道歩けない。仕事辞めて家に引きこもるからお前の財力で俺を養ってくれ」

 

「う~ん…確かに俺達がヒデくんの事務所潰した事が起因してるとは思うけど、元々はヒデくんの内部告発のせいで逮捕になったんだし、クリムゾンエンターテイメントも使い捨てにして見捨てたのが原因だし…」

 

「タカもビビってんじゃねぇよ。返り討ちにしてやりゃいいだろうが」

 

「それもさっきの話と繋がるんじゃねぇか?俺達にまだ恨みもって15年以上も普通に生活してた奴らなんか、そんなに集まらねぇだろ。

俺達に復讐出来るにしろ返り討ちにされるにしろ今の生活を壊す事になるしな」

 

俺達がめちゃくちゃ凄い有名人ならともかく、今はただのおっさんだしな。

復讐とかすんなら昔のうちにやってんだろうし。

タカと足立の闘いの後とか絶好の機会だったろうしな。

 

「それで?もうひとつは何だよ?」

 

「ああ。お前らにクリムゾンカンパニーの事を話してて思い出したんだけどな。クリムゾンカンパニーには、クリムゾンエンターテイメントを飛び越えて、クリムゾンミュージックに引き抜かれるって噂のバンドが居たんだ」

 

「は?クリムゾンミュージックに?」

 

「え?そんな凄いバンドなら、俺達が倒したとか信じられないんだけど」

 

「トシキ!確かにそう思うが思っても口にするんじゃねぇ!俺らが惨めになるだけだろうが!」

 

「んで、ヒデ。そんな有名なバンドなら俺達も名前くらいなら聞いた事あるかもだよな。そいつらのバンド名は何ってんだ?」

 

当時の俺達は自分らの事で必死だったし、メジャーじゃないバンドは知らなかった可能性はあるが、今の俺は一応ライブハウスのオーナーだし、当時は知らなかったバンド名でもある程度は知ってたりするしな。

 

「そうだな。そいつらは特にクリムゾンとは謳ってなかったが、何度かテレビ出演もしてたし、ラジオ番組はサブレギュラーくらいの感じで出演してたんだ」

 

は!?テレビにも出演経験があって、ラジオ番組もサブとは言え持ってたようなバンドだと!?

それ完全にクリムゾンエンターテイメント超えちゃってるじゃん!俺達どころかArtemisも超えちゃってるじゃん!!

 

トシキの言う通り、そんなすげぇ奴らに俺達が勝ったとか考えられねぇんだけど…。

 

「そのバンド名は xenial X(ジニアル エックス)ってんだけどな。聞いた事あるか?」

 

「xenial X?う~ん?聞いた事有るような無いような?」

 

「え?xenial Xって…あのジニアル?の事かな?」

 

「xenial X?トシキは知ってんのか?俺は正直聞き覚えがねぇな…」

 

「俺はさすがに知ってるぞ?ヒデ、いくらなんでもそれはないんじゃないか?ジニアルなんか俺達デュエルどころか会った事もねぇし。それにそもそもxenial Xって…」

 

xenial X。

当時は確かに俺も知らなかったが、今となっては話に聞いた事があるバンドだ。

 

当時はインディーズの中でもそれなりに名前が通ったバンドで、独創的な音楽をやるバンドだったらしい。

日本では大して目立ってなかったが、海外からオファーがあったのを機に海外で名を上げようとした。

そして、海外フェスに参加したみたいなんだが、そのフェスで大失敗。逃げるように日本に帰って来てそのまま解散したと聞いたんだけどな。

 

俺はその事をかいつまんでヒデに話してみた。

 

「ああ、英治の概ね言った通りだな。

海外フェスに出演して失敗し、その後急に行方知れずになった…。だから解散したと言われていたんだが」

 

言われていたんだが?

それって事実は違うって事か?

 

「俺達クリムゾンの間では違う噂があった。

xenial Xは海外フェスで特に失敗らしい事はしていない。ただ、クリムゾンエンターテイメントの命令で、BREEZEやArtemisを倒す為に、クリムゾンカンパニーの幹部から日本に呼び戻されたって噂がな」

 

「あ?それって…」

 

「でもそれはただの噂でしょ?俺も英ちゃんが言ったような話を聞いたし、確か雑誌にもチラッと載ってたと思うよ?」

 

「最後まで聞けよ。

xenial Xは海外フェスに出れるようなバンドだ。だから、二胴か九頭竜あたりがクリムゾンカンパニーの手柄を潰す為にxenial Xを消した」

 

「おい、それはないんじゃねぇのか?二胴ならって気もするが、あいつは当時は手柄や出世よりも、俺達を潰したがってたし、九頭竜にしても、クリムゾンカンパニーは九頭竜の配下だったんだろ?何とでもして自分の手柄に出来るんじゃねぇか?」

 

「拓斗の言う通りだな。二胴にしても九頭竜にしても、当時にxenial Xを消すメリットはないだろ?消すなら俺達を倒した後の方がいいだろうしな」

 

「だから噂って言ってるだろ?それに俺も親父と兄貴に、xenial Xがお前らを潰す為に海外から呼び戻されたから、先に俺がお前らを潰してクリムゾンカンパニーの手柄を阻止しろって言われてたしな。その話は結局そん時だけで終わって、俺達も雑誌でxenial Xは海外フェスで失敗して解散になったと読んだし、その少し後だしな。クリムゾンカンパニーがお前らに潰されたのは」

 

そういやxenial Xの解散の話って、俺達がクリムゾンエンターテイメントとバリバリにやり合ってた時だもんな。

 

「つまりxenial Xが本当にお前らを潰す為に、海外から呼び戻されて、そしてそのせいでクリムゾンエンターテイメントに消されたんなら、そのメンバーはお前らの事を恨んでてもおかしくないだろ。お前らのせいで華々しいデビューが無くなって解散させられたようなもんだしな」

 

「ハァ…めんどくせぇ。何なの?俺達やってるの音楽だよ?バンドだよ?何なの潰しただの潰されただの、消されただとかよ…」

 

「まぁ、当時は当事者だった俺達が言うのも何だけど、本当に面倒くさい話だよね」

 

「てか、それも噂程度でヒデの憶測だろ?真実はわかんねぇな。クリムゾンカンパニーが俺達の前に現れない事にはよ」

 

「確かに拓斗の言う通りだな。結局何もわかんねぇし、解決策もねぇな。それにヒデの憶測通りならxenial Xは俺達よりクリムゾンエンターテイメントを恨むべきだろ」

 

しっかし、本当に面倒くさいな。

海原のヤツももっとタカと梓に詳しく話してくれてたら良かったのによ。

 

俺達のクリムゾンカンパニーとは何者なのかという話は、ただの憶測だけで何も解決する事もなかった。

だが、どんなバンドが居たのか、どんな闘いだったのを思い出す事は出来た。

 

今度、ファントムのみんなに過去話をしてやる時には、このクリムゾンカンパニーとの話もしてやれる。

それで良かったって事にして、実際に奴らが俺達の前に現れない限りは、海原の言った事は忘れちまうのが1番だな。

 

 

 

 

ファントムのある街から少し離れた街。

都市部から離れているが、人口も多く、活気にも溢れた賑やかな街。

そんな街の片隅には、再開発もされていない町並みがひっそりとあり、そこの更に片隅には窓ガラスも割れ、手入れもされていないような小さなビルが建っていた。

 

そのビルの地下には荒れ果てたライブハウスがあった。

かつて…いや、あのレガリア戦争が勃発するよりも昔の時代にはこの辺りも賑わい、このライブハウスも盛況で様々なバンドがライブを行っていた。

 

今はもう見る影もない。

そんな場所にかつてクリムゾンエンターテイメントの四天王と呼ばれたドラマーの二胴が居た。

 

「相変わらず汚え所だぜ」

 

二胴は埃の被ったイスを手ではたき、そのイスに座ったと思うと、手に持っていた袋から高級そうな洋酒とコップを取り出した。

酒瓶を開け、コップに注いで1口飲む。

 

「チ、そんな美味い酒じゃねぇな。まぁ、あの野郎にくれてやるにはこの程度で十分か」

 

そう言ってもう1口酒を口に入れた。

 

「…今日は現れやがったらいいけどな」

 

それから少し時間が経ち、空になったコップにもう1度注いだ時、その場所にもう1人の人物がやって来た。

 

「ほう…こりゃ珍客だな」

 

「やっと現れやがったか。久しぶりだな、足立」

 

そこにやって来たのは、かつてのクリムゾンエンターテイメント四天王の1人、ボーカリストの足立だった。

 

ライブハウス(ここ)の周りにゴミがやたらと落ちてやがったから何事かと思ってはいたが、二胴、あれはお前の仕業か?」

 

「ゴミ…?ああ。元々はお前を狙ってたみたいだがな。俺にも用事があったみたいでよ、暇潰しがてらにな」

 

「俺の暇潰しを横取りしやがったんだ。何か面白い話でも持って来たんだろうな?まさか『久し振りに最近どうですか?』って世間話しに来た訳じゃねぇだろう?」

 

「当たり前だ。俺もそこまで暇じゃねぇ。まぁ、せっかく持って来てやったんだ、飲めよ」

 

そう言ってもう1つコップを取り出し、二胴はそのコップに酒を注いだ。

しかし、足立は酒を注ぐ二胴から酒瓶を奪い、そのまま口にした。

 

-グビッグビッ…

 

「…ふぅ、安酒だな。残念ながらこれじゃ俺は酔えねぇな」

 

「チ、相変わらず嫌な野郎だぜ。わざわざこの俺が会いに来てやったってのによ」

 

「会いに来てくれとか頼んだ覚えはねぇぜ。で?そんな嫌なヤツにクリムゾンエンターテイメントの二胴様がよ、何の用だ?」

 

「単刀直入に言うぜ。足立、お前クリムゾンエンターテイメントに戻って来ねぇか?今度は自由にさせる訳にはいかねぇからな。形としては俺の下に就いてもらう」

 

「ほう。俺がお前の下に…」

 

「てめえはどうせ下とか上とか関係ないだろうがな。俺の下に就けたとしても、平気で俺にも噛み付いてくるだろうしよ。それもわかってて声を掛けてんだぜ」

 

「それは海原の野郎は承諾してやがるのか?その前にそこのソイツにすら話を通してもねぇんじゃねぇか?」

 

「そこのソイツ…?」

 

そう言って足立はライブハウスの入り口に顔を向けた。

そして、そこからもう1人の男が現れた。

 

「九頭竜…テメェ…俺を尾行してやがったのか」

 

「二胴…!キサマ勝手な事を…」

 

「チ、まぁいい。ここにかつての四天王が3人も揃った訳だ。

…九頭竜、テメェだってファントムが危険だとは思ってんだろ?更に海原はクリムゾンミュージックにも牙を剥くつもりだしな。だったら俺達にはもっと戦力が必要だ。足立なら戦力には申し分ねぇだろ!」

 

「確かにファントムは危険だし、邪魔だという事も認めよう。だが、足立はもっと危険だ!海原総帥がお許しになる訳ないだろう!」

 

「海原なんて関係ねぇんだよ!足立は俺の下に就ける!海原には手出しさせねぇ!」

 

「ククク、俺の意見も聞かずに暴走する所は相変わらずだな二胴。九頭竜、お前もまだ海原の傀儡か。変わらねぇな」

 

「足立!テメェにも損はねぇ話だろ!クリムゾンの後ろ楯を手に入れて昔のように暴れられる!そして、お前を狙うような雑魚共も下の奴らにやらせれば、テメェはもっと自由にやりたいようやれるだろうが!」

 

「俺は今でも好きにやってるぜ。そして周りの雑魚共を片付けるのにも苦労はねぇ。息抜きがてら軽く遊んでやってるだけだ」

 

「何だと…。チ、九頭竜。テメェもだ。足立が海原に逆らわねぇように俺が見てりゃ、お前にもメリットだろう。邪魔なファントムを潰すのも、足立の力がありゃ楽なもんだしな」

 

「確かに足立の力なら…とは思うし、海原総帥に歯向かわないのなら私にも願ったり叶ったりだが…。だが、足立が海原総帥に牙を剥いた時、お前に足立が止められるのか?」

 

「海原が生み出したいのは混沌だ。足立と目的は一致している。足立にとっても海原を泳がせていた方が面白い事になるハズだ。そうだろ足立。だからテメェも昔は海原の下に就いていたんだろう?」

 

「そうだな。俺はかつてクリムゾンエンターテイメントに就いていた。だが、今は違うぜ。

海原の目的が混沌か。ククク、二胴、お前は頭は切れるが、音楽の世界で力を振るうには向いてねぇ。かつての仲間のよしみで助言してやる。お前はクリムゾンを辞めて、音楽から離れて別の道を歩いた方がいいぜ」

 

「何だと足立。俺に向いてねぇだと…?

この15年クリムゾンエンターテイメントの力を伸ばしてきたのは俺だ!今のクリムゾンエンターテイメントはかつての力をとっくに超えている!それは俺の力だ!」

 

「足立。私は別に二胴の肩を持つ訳ではないが、二胴の力は本物だ。だからこそ、海原総帥も戻ってこられたし、私もアルティメットスコアの研究に没頭出来た。そしてかつてのクリムゾンエンターテイメントを超えた力を持っているというのも同意だ。だから海原総帥もクリムゾンミュージックと離反するつもりなのだろう」

 

「ククク、二胴に限った事じゃねぇよ。九頭竜、お前もだ。つまり俺が言いてぇのは、お前らはここが限界だって事だ。海原の足元すら見えてねぇ」

 

「足立!キサマ!私も愚弄するか!!私は確かに海原総帥の力の足元にも及ばないが、海原総帥と同じモノを見ている!」

 

3人はそのまま一言も発する事はなく、ただただ時間だけが過ぎていった。

 

「こうやって黙り込んでても時間が無駄に過ぎていくだけだぜ!足立戻ってこい!そして俺の下に就け!」

 

そしてそれに我慢出来ず、先に口を開いたのは二胴だった。

 

「さっきからお前の下に就けと言ってるがよ?お前らクリムゾンエンターテイメントは、ファントムには手出し出来ねぇんじゃねぇのか?お前は俺にファントムを潰して欲しいんだろう?」

 

「ほう、知ってやがったか」

 

「となればだ。お前は俺を下に就けて、今はお前の手駒となったクリムゾンカンパニーに所属させるつもりか?」

 

「…!?正直驚いたぜ。まさかクリムゾンカンパニーの事まで知ってやがるとはな。

そうだ。俺はかつてのクリムゾンカンパニーを俺の手駒にした!」

 

「な、何だと二胴!キサマまた勝手な事を!クリムゾンカンパニーは私の管轄だったろう!?」

 

「九頭竜黙れ。こいつは海原にも承諾済みだ」

 

「あ、ならしょうがないな」

 

「海原の事だ。クリムゾンエンターテイメントはファントムに手出しする訳にはいかない。だがお前はファントムを叩きたい。いつ暴走するかわからないお前に、わかりやすくファントムを攻撃する手段として、クリムゾンカンパニーを渡したって所だろうな」

 

「ああ。そうだろうな。だが、それでいい。おかげで誰にも文句を言われる事なくファントムを狙える訳だからな。まぁ、問題は今の俺の戦力を大きく削る訳にもいかねぇ。だからクリムゾンエンターテイメント外から人間を集めたかったが、そんな捨て駒事務所に所属したいってヤツが全然居ないって訳だ。かつてBREEZEやArtemis、アルテミスの矢に敗れた奴らに声を掛けたが…揃いも揃って日和やがって…」

 

「ククク、それで俺を勧誘か」

 

「誰も居ない音楽事務所なんか物置小屋と同じだからな。だが1人だけ勧誘出来たヤツが居る。

xenial Xのボーカルの妹。

ファントムを潰す事が出来たら"海外遠征で行方不明になった"兄貴の所在を教えてやるって言ってな」

 

「xenial Xのボーカルの妹だと?

xenial Xの連中は他の誰でもない。二胴、お前が直接手を下したんじゃないか。それを…所在を教えてやるって…」

 

「ボーカルの居場所なら把握している。他の連中はバンドとして再起不能になったし、何処に居るのかも知らねぇし興味もねぇけどな」

 

「だが、二胴。その妹を勧誘って、そいつは音楽の才はどうなのだ?そいつ1人ではファントムに勝てるというのか?…いや、だからこそ足立を引き入れたいという事か」

 

「ああ、xenial Xの妹は音楽経験はねぇらしいからな。

だが、さすがアイツの妹だぜ。作詞作曲をさせたらなかなかのもんだった。

あいつはプロデューサーとしては最高の逸材だぜ。俺の部下を何人か紹介してやったんだが、誰も気に入らねぇってよ。自分でプロデュースするバンドは見付けるつもりらしいが…。

クックック、ついでに言うとその妹はBREEZEの中原に恨みがあるらしいぜ。あいつにとっても今回の取引はメリットだらけって事だ」

 

それまで黙って二胴と九頭竜の話を聞いていた足立が口を開いた。

 

「興味がねぇな。話はそれだけか?

そろそろ時間切れだ。俺は俺の行く道を行くぜ。二胴、九頭竜、助言はしてやった。後はお前らがどの道を行こうが俺の知った事じゃねぇ」

 

「足立!俺ももう1度だけ言ってやる!クリムゾンエンターテイメントに戻ってこい!俺の下に就け!クリムゾンカンパニーならファントムともやり合える!」

 

「言っただろ。そろそろ時間切れだと。今ここには俺も二胴も九頭竜も居るんだ。今度は大軍で攻めてくるだろうぜ」

 

「大軍で攻めてくる…だと?」

 

「攻めてくる?外に居た連中の事か?何なのだあいつらは」

 

「Starglantzって名乗ってる連中だ。元は手塚の部下だった奴らが勝手に作った組織らしいが…。ククク、15年前にやられた手塚の敵討ちに俺を狙ってるらしいが、ご苦労な事だ」

 

「手塚の部下だった奴らだと?」

 

「そんな雑魚共、私達クリムゾンエンターテイメントの敵ではないだろうが、今は大事な時期だ。

二胴、足立なんて引き入れて面倒事を増やされても厄介だぞ?」

 

「ここのヤサもお前らに見つかっちまったし、外の連中を相手にするより面白い事を思い付いた。俺も過去にケリを着けてそろそろ動くか」

 

そう言った足立は、二胴から奪い取った酒瓶を開けて回りに酒を撒いた。

 

「テメェ、何やってやがる」

 

「酒臭いではないか」

 

「言っただろう?過去にケリを着けると。つまらねぇ過去はここで切り捨てる」

 

そして酒瓶を床に叩きつけ、溢れた酒にライターで火を着けた。

アルコール度数の高い酒だったのだろう。酒は勢いよく燃え出した。

 

そして足立はカウンターに置いてあった古い酒瓶を次々と割り始めた。

そこに残っていた酒に次々と引火し、勢いのあった火はすぐに炎となり、周りに広がりはじめた。

 

「キ、キサマ正気か!?ここは元々キサマの両親のライブハウスだろう!?ここを守る為に散々汚い事もやっただろうに!」

 

「言っただろう?過去は捨てる。ここは俺に残った良心だ。そして葉川とデュエルした場所でもある。

これからの俺はもうかつてのような慈悲はねぇぞ?ファントムにもお前らにも、この世の全てにな」

 

「キサマに慈悲なんて元々なかっただろうが!ゴホッゴホッ」

 

煙が一気に広がり、3人はお互いがどこに居るのかさえも視認出来なくなっていた。

 

「待て!足立!話はまだ終わってねぇ!」

 

「ク、出口はどっちだ…?に、二胴!早く出るぞ、この炎は危険だ」

 

「チ、足立…!」

 

やっとの事でライブハウスから出た二胴と九頭竜。

ビルの方を見ると建物全体が燃えていた。

 

そして誰かが通報したのだらう。

遠くから消防車のサイレンが聴こえてきた。

 

「足立の野郎…。いいぜ、お前が俺達の仲間にならねぇってんならお前も敵だ…」

 

「全く…二胴も足立も面倒な事を…。行くぞ。私達もこの場から離れなければな」

 

そうして二胴の足立を勧誘する作戦は失敗に終わった。

その日以降、この3人が同じ場に会する事はなかった。

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