バンやろ外伝 -another gig-   作:高瀬あきと

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第19話 決勝リーグ1回戦

「いい?このライブ大会はあたしの最推しである拓斗さんも観てくれてるの。無様な演奏だけはするんじゃないわよ。……特に結月」

 

「え?あたし?」

 

「さっき貴さんに会えたのが嬉しかったのか…今の結月の表情はフニャフニャだものね」

 

「あー、私いらん事言っちゃったかな?」

 

確かに夏希も貴さんに向かってなんて事言ってくれてんのよって思ったけど、おかげで貴さんといっぱい話すことも出来たし指輪も…ってあれ?今回もあたしのモノローグ?

 

あたしの名前は寺川 結月。

今からライブ大会決勝リーグの1回戦が始まる。

ステージ上にはあたし達の機材が既にセッティングがされていて、ステージ袖で待機している所だ。

 

もう数分もすればステージの上にあがり、あたし達とあたし達の対戦相手のバンドの演奏が始まる。

 

「こんにちは。Break Bellの皆さんですよね?

抽選後の控え室が違っていたので、挨拶が遅れてしまいましたが、今日のデュエルはよろしくお願いします」

 

「え?あ…」

 

「これはどうも申し訳ございません。私達も挨拶を出来ずにいたのに、わざわざこちらまで来て頂いて…。私達の方こそよろしくお願い致します」

 

あっぶな。

あたしも色々ありすぎて対戦相手のバンドさんに挨拶出来ないでいたよ。

琴子が上手く挨拶を返してくれて良かった。

…あれ?でもいつもならこういうのは、初めましての相手でも人見知りをせず輪に入る事が得意な夏希の方が、挨拶も上手く返しそうなのに。

 

「あはは、いえいえ。お互いいきなりの1回戦ですし、慌ただしかったですもんね。うちの他のメンバーも準備に手間取ってて、挨拶に来れたの私だけですし」

 

「あ、いえ。とんでもないです。

わざわざ挨拶に来て下さってありがとうございます。お互いに今日は頑張りましょう」

 

無難な事しか言えなかったけど、変じゃないよね?

 

「はい!よろしくです!では、私も準備に戻りますね」

 

そう言って対戦相手のバンドの方は戻って行った。

夏希もあゆみも挨拶しないとか、あの人に失礼じゃない?

 

「ねぇ…結月。私達の対戦相手のバンドってさ?」

 

「確か『半ライス大盛り』ってバンドじゃなかった?正直聞いた事もないから眼中に無かったんだけど…」

 

ん?夏希もあゆみもどうしたんだろ?

 

「うん。確かにあたし達の相手。さっきの人のバンドは半ライス大盛りってバンドだよ。大盛りにするならそもそも半ライスにしなけりゃいいのにね」

 

「どうやら結月は気付かなかったようね。他のバンドの事はAmaterasuかBREEZEかLazy Windにしか興味のないあゆみですら気付いたみたいなのに」

 

え?何が?あたしが変なの?

 

「さっきの子。間違いないよ。色々なバンドのサポートメンバーとして、テレビにも出てる子だよ」

 

「え?テレビにも出てるような凄い子なの?」

 

「何で結月は気付かないのよ。音楽番組観てたらたまに観る顔だったわよ」

 

そんな凄い子がこのライブ大会に?

 

「いつもサポートだったから失念してたね。まさか自分のバンドもやっていたなんて…」

 

「さすが地方の合同文化祭とはいえ、ライブ大会の予選を通過するようなバンドのメンバーね。始めから飛ばしていかないと負ける事になるわよ」

 

「上等じゃん。あたしも音楽番組は割と観る方なのに思い出せないけど…ここで勝たないと優勝どころか、天音達ともデュエル出来ないんだもん。始めから飛ばしていくよ!」

 

そうしてあたし達の1回戦が始まった。

 

 

♪~

♪♪~

♪♪♪~

 

 

あたし達のデュエルは均衡を保っていた。

今回のライブ大会に関しては曲の制限や縛りといったものはないけど、通常のオーディエンスや自分達が盛り上がるだけのデュエルとは違って、演奏力や曲中のパフォーマンス、ボーカルの声量やドラムがリズムを刻んでグルーヴを生み出せてるか、ベースは安定感のあるリズムでバンドを引っ張れているか、ギターはバンドが演奏する曲や歌を表現出来ているかなんかも審査員の採点対象に入っている。

 

だから、オリジナルの曲をやるのはもちろんだけど、みんなが知っているようなバンドのコピー曲なんかも、表現力を魅せるには持って来いだ。

特にミーハーなオーディエンスには、オリジナルの曲をやるより流行りのコピー曲をやった方が一体感も出るだろうし、盛り上がるだろうしね。

 

だからあたし達は2曲目にコピー曲を入れたんだけど、選曲がイマイチだった。いや、この曲はあたしも大好きだし、あゆみもこれがいいと奮起してくれた。

 

あたし達が2曲目に演奏したのはBREEZEのコピー曲。

でもやっぱり、この会場のほとんどの人はBREEZEの曲は知らないから『コピー曲です』って言ってもほぼオリジナルと変わらないしね。

なんとか演奏力で食らいつけたって感じだった。

 

ちなみに半ライス大盛りはフェアエプのコピー曲を持ってきたもんだから、完全に認知度的に負けている。

 

「次が最後の曲だよ。どうする結月?」

 

「次もBREEZEの曲がいいわ!BREEZEの曲ならあたしはバッチリ演奏出来るし、結月も歌詞を間違える事もないでしょ!」

 

「でも認知度的に問題があるわよ。だから、決勝大会ではBREEZEの曲は止めときましょうと言ったのに」

 

確かにあたし達には後がない。

今の所は引き分けだと思うけど、次の曲で差が付いちゃったら負けてしまう。

 

あゆみの言う通り演奏力に自信のあるBREEZEの曲でいくか、それともオーディエンスを盛り上げる為に流行りの曲をやるか…。それともあたし達らしさをぶつけられるオリジナル曲をやるか…。

 

「次の曲は…」

 

「「「「!?」」」」

 

あたし達が焦っているのが見透かされたのだろうか?

半ライス大盛りの挨拶に来てくれた子。

ベースボーカルの女の子が、次の曲をコールした。

 

「私達のバンドの最高最強の曲です!『ご飯セット ライス抜きで』聴いて下さいっ!」

 

『ご飯セット ライス抜きで』だって!?

間違いない。これは彼女達の最高の曲なんだ。

だって普通ご飯セット頼んでるのに、ライスを抜きでなんて注文出来ないもん。きっとこれが彼女達の日常。

 

だったら、あたし達はその日常をぶっ壊す!

あたし達が頂点のバンドになる為にっ!

 

「いくよ……聴いて下さい!あたし達の燃え盛るハート!

灼き尽くせ!『インフェルノ』!」

 

「「「(ちょ!結月!それ決勝戦で演るって言ってた曲じゃない!)」」」

 

 

♪~

♪♪~

♪♪♪~

 

 

「ハァ…ハァ…やりきった…ハァ…」

 

「ハァ…フゥ…」

 

あたし達のメンバーも相手のバンドも息絶え絶えだ。

あたし達はやりきった。そんな想いでいっぱいだった。

 

 

「それでは!半ライス大盛りvsBreak Bellの採点発表をさせて頂きます!」

 

姫咲先輩がステージの上に登り、高々と声を挙げた。

 

「今回のライブ大会決勝リーグの採点方式は、私達審査員と、この会場に来られているオーディエンスの中からランダムに選ばれた方々で、各バンドが披露した曲目毎に10点で采配して採点を付けていただいております」

 

あたし他もそんな説明を受けていた。

…正直よくわかってなかったから、後から琴子に詳しく聞いたんだけど。

 

あたし達が披露出来る曲は3曲。

あたし達の1曲目と相手の1曲目。

あたし達の2曲目と相手の2曲目。

あたし達の3曲目と相手の3曲目。

その披露した曲目同士で、審査員とオーディエンスが持ち点10を采配する。

 

つまり、あたし達が1曲目で100対0で勝っても、2曲目と3曲目で80対20で負ければ、あたし達はトータルで140点、相手が160点で相手の勝ちとなる。

 

セトリの順番なんかも得点に影響するって事だね。

文化祭主催側の審査員が8人、それを2で割るからMAXで40点。

オーディエンス側は無作為に選ばれた60人の人達の点数を10で割るからMAX60点。

その各曲目MAX100点で勝敗が決まる。

 

「では、まず1曲目の採点から…皆様、ステージバックにあるスクリーンに注目下さいませ!」

 

ステージバックのスクリーン?

わ、ホントだ。

 

あたし達演者が映し出されていたスクリーンには、あたし達Break Bellの文字と半ライス大盛りの文字。

その下には1曲目、2曲目、3曲目と映し出されていた。

こんな感じ↓

 

 

    Break Bell   半ライス大盛り

1曲目

2曲目

3曲目

 

 

「まずは1曲目…Break Bell52点!半ライス大盛り48点!」

 

\\オォー!!!//

 

あ、1曲目はあたし達の勝ちだ。

 

「一先ずは安心といったところね(でも2曲目は私達はBREEZEのコピー、対して相手はFairy Aprilのコピー。認知度的には負けね)」

 

「でもまだ1曲目だかね。あ、天音じゃないけどお腹痛くなってきた…(2曲目は無理だろうなぁ。盛り上がり的には相手のが良かったし)」

 

「これは勝ちは貰ったわね(次はBREEZEのコピーだもの。あたし達が負けてる訳がないわ)」

 

「何とか1回戦はクリアか…(万が一もあるし相手が相手だから3曲目はあたし達最高の曲を持ってきたけど、2曲目はBREEZEのコピーだし負ける訳ないから、インフェルノはやっぱり決勝まで取っておくべきだったかな?)」

 

「「……(なんであゆみも結月も安心しているの?)」」

 

 

「…では、2曲目の採点を発表させていただきますわ。2曲目は…Break Bell45点、半ライス大盛り55点ですわ!」

 

「「ふぁ!?」」

 

「6点差…思っていた以上に離されたわね」

 

「やっぱり…って気はしてたけど、これは痛いなぁ」

 

「何で!?あたし達はBREEZEの曲をやったのよ!?」

 

「そうか…曲は凄くてもあたし達は演奏がまだまだって事なんだね。そう思っておこう」

 

「何言ってるのよ結月!これはおかしいでしょ!?」

 

「…でも、これがあたし達のレベル。BREEZEの良さを全然出せてないって事なんだよ。そう思っておこうよ。正直、琴子の言う通り決勝リーグでBREEZEはなぁ…って思っちゃったけど」

 

「「…(あゆみのBREEZEへの絶対的信仰心ってどうなってるんだろう?正直自分の幼馴染みが怖い)」」

 

 

「では3曲目の発表ですわ」

 

ゴクリ。

うわぁ、緊張してるとホントにゴクリって唾飲んじゃうんだ…。どうしよう…6点差…。

嫌だよ…ここで負けるなんて。天音と決勝戦で会おうって約束したのに…!

 

「Break Bell53点、半ライス大盛り47点!

合計Break Bell150点!半ライス大盛り150点!…まさかの引き分けですわ」

 

え?引き分け…?

 

「引き分け…?どうなるのかしら?(やはりBREEZEのコピーは決勝リーグでは止めるべきだったわね)」

 

「良かった…のかな?取り敢えず負けじゃないし(ヤッバァ…3曲目インフェルノやらなかったら負けてたんじゃない?)」

 

「2曲目のコピー曲の採点がやっぱり納得いかないわ(でも引き分けってあたし達どうなるの?)」

 

「ねぇ、何となくだけど、あゆみってセリフと心の声が逆になってるって事ないよね?」

 

あたし達と半ライス大盛りの得点は引き分けだった。

そう言えば引き分けの時の説明とか無かったと思うんだけど、勝敗はどうやって決めるんだろう?

まさかもう1曲やるのかな?

 

「まさか1回戦から引き分けになるとは思ってもいませんでしたわ!さすが決勝リーグ、とても素晴らしいです!さて、1回戦の勝敗に関してでございますが…。

サドンデスで決めさせていただきますわ!」

 

サドンデス…!?

って事は勝敗が決まるまで、デュエルをし続けるって事?まぁ、実際は1曲で勝敗は決するだろうけど。

 

「結月、どうする?さすがにインフェルノを連続でって訳にはいかないだろうし」

 

「そうね。同じ曲を立て続けにやっても勝てるとは思えないわ」

 

「BREEZEよ!BREEZEのコピーでいくしかないわ!

認知度が悪いってのは100歩譲って認めてあげなくはないけど、BREEZEの曲なら演奏力でゴリ押し出来るわよ!」

 

確かに演奏の技術を魅せるだけなら、BREEZEのコピーをやるってのもアリかも知れない。

けど、さっき2曲目で圧倒的な点差で負けた事を考えると…う~ん…。デュエルとなると…やっぱりコピー曲は…。

 

「半ライス大盛りも曲に悩んでるみたいだね」

 

「次が最後のデュエルになるでしょうし、お互いに曲選びは慎重になるわね」

 

「だからBREEZEよ、BREEZE!」

 

もうっ!あゆみはうるさいなぁ。

確かにBREEZEの曲なら上手くやれるだろうけど、デュエルじゃそれだけじゃ、きっとダメなんだよ!

 

そんな時、あたしは会場のオーディエンスの中に見知った顔を見た。

父さんと兄さん…。2人共…来てくれたんだね。

 

妹はまだ中学生だし、今日は平日だから来れなかったんだと思うけど、家族に見守られているのは、少し照れ臭いけど嬉しいな。

 

まぁ、母さんは来ないだろうね。

母さんはどちらかと言うとバンドは反対していたし、あたしが貴さんとお近づきになるのも快くは思ってなさそうだったしね。まぁ、母さんなんか関係ないけど。

 

父さんも昔は母さんに連れられて、BREEZEのライブに行かされてたのに、今は母さんはアイドル好きで、バンドには興味ないし、父さんの方があたし達のやりたい事に関しては…とか、次の曲を決めなきゃいけないのに、父さんと母さんの事を考えていると、オーディエンスの後ろの方、ほとんど出入り口って場所に…母さんが居た。

 

音楽やるならバンドじゃなくて、アイドルやりなさいと言ってた母さんが、まさかライブ大会を見に来てくれるなんて…。

 

そして母さんはあたしが母さんを見付けた事に気付いた様子だった。

そして、あたしに向かって口パクで何かを伝えようとしている。昔はバンド好きだったのもあるからアドバイスか何かだろうか?

 

えっと何なに?

『だから言っただろ?バンドじゃなくてアイドルをやれって。ここで負けたら大爆笑するし、晩ご飯も1週間抜き。あ、お小遣いも減額ね』

 

……激励でもアドバイスでもないし!

は!?可愛い娘が、今負けそうで悩んでるのに、大爆笑したあげく晩ご飯も抜かれてお小遣いも下げられるの!?母さん何しに来たの!?

 

ん?まだ何か言ってる?

『悔しかったらここで勝って、自分のやりたい事が最高だってあたしに認めさせてみろ。あんたの伝えたい歌で』

 

……母さん。

そっか。ありがとう。

 

「決めた」

 

「「「ん?結月?どうしたの?決めた?」」」

 

「いくよ」

 

「「「いくよって何を!?」」」

 

「みなさん!聴いて下さい!

あたし達のオリジナル曲『Fall in Love(フォールインラブ)』!!」

 

「「「タイトルコールの前に私(あたし)達に、何をやるのかちゃんと伝えなさいよ!」」」

 

 

♪~

♪♪~

♪♪♪~

 

 

あたし達はノリにノッていた。

夏希達が演奏の入りに少し戸惑っていたけど、それは今となっては些細な事だ。このままならいける!

 

あたしがそう思って安心した時、半ライス大盛りが高らかに声を挙げた。

 

「聴いて下さい!私ら達もオリジナル『チャーハン大は少なめで!』!!」

 

何だって!?

ライスは半ライスなのにチャーハンは大なの!?

それを少なめって注文するなんて…。

間違いない。この曲もあの子達の日常なんだ…。

 

でも、だからって負けられない!

あたしは歌が好きだから!もっともっと歌っていたいから!!それがあたし達の日常だから!!

 

 

♪~

♪♪~

♪♪♪~

 

 

「それでは結果を発表させていただきますわ。

Break Bell55点!半ライス大盛り45点!1回戦を勝ち抜いたのはBreak Bellですわ!」

 

\\ワァー!オォー!!//

 

勝った。あたし達が勝てたんだ…。

 

「やったよ結月!私らの勝ちだよ!」

 

「一時はどうなるかと思ったけど、何とか勝てて安心したわ」

 

「結月!あんたねぇ!タイトルをコールする前に、あたし達に何を演奏するのかちゃんと伝えなさいよっ!」

 

あ、そっか。うっかりしてた。

あたしの中だけで勝手に盛り上がっちゃってたよ。

あたしもこの癖直さないと…。

 

あたし達がステージから降りて、舞台袖に戻った時だった。

 

「おめでとうございます。『インフェルノ』も『Fall in Love』も凄い曲でした」

 

半ライス大盛りのベースボーカルの子が、ライブ前に挨拶に来てくれたように、ライブ後の今も声を掛けてくれた。

 

「ありがとうございます。貴女方の曲も最高でした。特に『ご飯セットライス抜きで』が良かったです。正直負けるかもと肝を冷やしました」

 

「ははは。それでもオリジナル曲は大差で私達が負けてますし…」

 

あ、うぅ…。

あたしはさっきまで勝てた事に安心して喜んでいたけど、こういう時って何て言葉を掛けたらいいんだろう…。琴子が対応してくれてるけど、あたしもリーダーらしくちゃんとしたいのに。

 

「それと…すみません。あの子達は悔しいからか、控え室に早々に戻ってしまいまして、最後の挨拶も私だけになってしまって」

 

そう…だよね。

あたしも負けてたら悔しいって気持ちでいっぱいになると思うし…正直、負けたのに対戦相手にちゃんと挨拶に来てくれたこの人が凄いっていうか…。

 

「Break Bellさんはまだ1年なんですよね?

きっとあの子達は来年も出ると思いますので、その時はリベンジマッチをよろしくです」

 

リベンジマッチ…か。

ん?待って。あの子達はって…。

 

「あ、あの…すみません。あの子達は来年もって」

 

「ああ、私は3年ですから来年は卒業してますしね。

今日が最後の部活動。文化祭後は受験勉強です」

 

そうなんだ…。

あたし達は来年も再来年もあるけど、3年のこの人にとっては今日が最後の部活動で…。

きっと予選で負けていった人達の中にも、これからこの決勝リーグで演奏する人達の中にも、3年生の先輩はきっといて…最後のライブって人達もいるんだよね。

あたしらの学校の軽音からは、あたしらしか出場しなかったから失念してたよ。

 

「あたし達…あたし達きっと優勝してみせますんで!」

 

「何がきっと優勝してみせますんで!なのよ。結月は甘過ぎるわ。

あたし達が絶対優勝してみせるわ。1回戦の相手があたし達だったからしょうがないって思わせてあげるから安心しなさい」

 

「あ、あゆみさぁ…相手は先輩なんだし、せめて敬語を使おう?伝えたい言葉ってのは何となくわかるしさ?」

 

「すみません、あゆみはどうも常識とか、相手を敬う言葉遣いなどを幼少期にどこかで失くしてしまったようでして」

 

「あははは、全然気にしないよ。

私も明日の決勝が終わるまで、しっかりライブ大会を楽しませてもらうからさ。応援してるね」

 

さっきまであたし達を真っ直ぐ見て笑ってくれていたのに、顔を伏せて声を少し震えさせながら、そう言って半ライス大盛りの子は控え室へと走って戻って行った。

 

重い…。

これがデュエルギグなんだね。

 

好きな音楽の、好きな歌のぶつかり合い。

精一杯の自分達らしい曲でぶつかり合ったなら、勝っても負けても楽しめたらって…正直、今まではそんな軽い気持ちでいた。

 

でも、今日半ライス大盛りと真剣にデュエルをして、やっぱり負けたくないって思ったし、勝ちたいって気持ちでいっぱいだった。

負けた方は次はもうないかも知れない。そんな事も考えていなかった。また次を頑張ればいいと思ってたけど、次がない人達もいるんだ。

 

負けた方の気持ちなんてわからない。

デュエルに勝ったあたし達が、負けたバンドの気持ちがわかるなんてわかった気になっている勝手なエゴでしかない。そんなのくそくらえだ。

 

だから、あたしに、あたし達に出来る事は、勝ち続けるしかない。あゆみが言ったように、あたし達が相手だったからしょうがないって思ってもらえるように。

 

……でも、それも正解じゃない気がする。

それだと楽しんで音楽をやるっていう根本的な想いが。

貴さん達やArtemisの皆さん、15年前のあの戦いの中に居た人達はどうだったんだろう?

 

「結月!結月!」

 

「ん?え?どうしたの?」

 

控え室に戻る途中、ボーっと考え事をしていたあたしに、あゆみが声を掛けてきた。

 

「…」

 

ん?話し掛けてきて無言ってどういう事?

夏希と琴子も控え室の方向。あたし達の行き先を見て固まっている。

 

あたしも夏希達の目線の先へと目を向けると、そこには女子高生が4人立っていた。

知らない制服だなぁ。どこの学校だろ?

 

「先程のデュエル。なかなかの演奏だったけど、私達の敵ではありませんね」

 

む?いきなり何なの?

その中の1人があたし達に向けて喋り、その後に他の女の子達も言葉を続けた。

 

「BREEZEのコピーをやった時はさすがと思ったけど、それもそこだけ」

 

「次のステージではあたし達とやる事になるわ。せいぜい今の勝ちを喜んで、悦に浸っていなさい」

 

何で喧嘩腰?

ってか、次の2回戦で演奏するバンドの子達なんだろうね。まだデュエルもしてないのに、次の相手はあたし達とか、なかなか自信があるみたいだね。

 

「BREEZEの曲のコピーの時って…もしかしてあんた達もBREEZEのファンなの?」

 

「ふふふ」

 

「BREEZEのファン?まさか私達が?」

 

「な、何がおかしいのよ!」

 

「あゆみ、落ち着きなさい」

 

「あたし達はBREEZEのファンなんかじゃないわ。むしろ彼らはあたし達の敵だと思っている。BREEZEは全盛期にあたし達がいなかった事をラッキーと思うべきね」

 

BREEZEが敵?

 

「ちょっと…それどういう事?

もしかしてあなた達って…クリムゾンの関係者?」

 

「クリムゾン…。安心していいわ。クリムゾングループも私達の敵よ」

 

BREEZEもクリムゾンも敵って…。

このバンドは何者なの?

 

「最終的に私達が狙っているのはBlaze Futureの葉川 貴の首よ。そして、その為に私達はこのライブ大会に参加した」

 

「要領が得ないわね。Blaze Futureの葉川さんを狙う事が何故このライブ大会に参加する事と繋がるのかしら?」

 

「最終的に…と言ったでしょう?

私達のこの大会の目的はAmaterasu。本城 天音が持つ射手座のレガリアよ」

 

天音とレガリア!?

何でレガリアを天音が持っている事を知ってるの?

でも、それなら尚更…。

 

「あたし達はあんた達には負ける訳にはいかない。

レガリアを…天音を狙ってるってんなら、次のステージであたし達があんた達を倒す」

 

 

-ピンポンパンポーン

『ライブ大会2回戦に出場するバンドは…』

 

 

「あら?時間のようね。そろそろ行かないと」

 

「次のステージを楽しみにしているわ。私達のバンドは『ツギにクル者(つぎにくるもの)』。覚えておくといいわ」

 

「射手座のレガリアを継承し、ONLY BLOODの本当の意志を語り継ぐバンドよ」

 

そう言って彼女達はステージへと向かって行った。

ONLY BLOODって確か今は4代目の人達が…。

本当の意志を語り継ぐってどういう意味なんだろう?

 

あたし達はそのまま控え室に戻らず、ツギにクル者ってバンドを追って、舞台袖から演奏を観る事にした。

 

 

♪~

♪♪~

♪♪♪~

 

 

まさかツギにクル者ってバンドが、190点対110点という大差の戦績で負けるとは思ってもいなかった。

すごく普通のそれなりの演奏だった…。

そして、舞台袖で観ていたあたし達を見付け、逃げるように走って帰って行った…。

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