バンやろ外伝 -another gig-   作:高瀬あきと

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第23話 今回も初音ちゃん視点だよ

私の名前は中原 初音。

今回のサブタイは私の視点だよって言っているのに、私がモノローグじゃなかったら、サブタイトルどうなってんの?って感じだよね。

 

今日は待ちに待った合同文化祭の決勝リーグ最終日。

今日はライブ大会に勝ち残った4バンドによる準決勝と決勝戦、そしてついでに3位決定戦も行われるそうだ。

 

私達ファントムのバンドであるGlitter Melodyはもちろん、射手座のレガリアの後継者であるAmaterasuも、タカ達BREEZEを目標にしてるっていうBreak Bellも勝ち残っている。

 

今日のライブ大会はお昼過ぎからの開催になっているくど、せっかくだから高校生の文化祭もどんなのか楽しんでみたい。そういう気持ちから文化祭が始まる朝から私達はライブ大会が開催される学校に来ているのだ。

 

「わぁ、なんか名門の進学校とは聞いてたけど、こんな大きい学校だったんだ?あたしここに進学しようかな?」

 

「うぇぇ…周り女子ばっかり…。やっぱ中原と不破に連れて来てもらえて良かった。オレ1人だったら絶対浮いてるよな」

 

私の親友である不破 茜と、小さい頃からの幼馴染みであるただのクラスメートの波瀬くんとの3人で。

 

今、私達はお母さんにライブ大会が開催される美緒達の通う学校に連れて来てもらって、お母さんは仕事があるからと校門で別れるところである。

 

「じゃあ初音も茜ちゃんも翔太くんも、せっかくの文化祭だから楽しんでほしいとは思うけど、(タカくんみたいな)変態や、(英治くんみたいた)変質者や、(拓斗くんみたいな)ヤンキーみたいな人とか、(トシキくんみたいな)挙動不審の人には気をつけるのよ?」

 

何でだろう?

お母さんからの注意なんだろうけど、お父さんやタカ達の名前が聞こえたような…。

 

「大丈夫です。オレも男ですから、中原と不破の事は守ってみせます。必ず」

 

「あぁ~。翔太くんってなんてカッコいいんだろう。お姉さんキュンキュンしちゃうよ」

 

「お姉さん…?

あ、そうだ。三咲さん、ここで別れる前にちょっと質問させて欲しいんですけど」

 

ん?波瀬くんがお母さんに質問?

何だろう?お母さんは私のお母さんなんだから手を出すのは止めてね?

 

「あ、その前にオレの事も三咲さんの車で送ってくれてありがとうございました。

それで質問っていうのは…さっき車の中にオレの母さんも居たと思うんですけど…今は姿も見えなくなったしどこに行ったのかと思いまして…」

 

「ああ、薫ちゃんね。

薫ちゃんはこのライブ大会に興味を持って、観に来たいと言った翔太くんに感動して、ライブ大会を楽しんでる翔太くんを陰ながら見ていたいって言うからさ。一緒に連れて来たのよ」

 

「え?あ、あの…陰ながらって…。さっきまでめちゃくちゃ一緒に居ましたよね?」

 

「ふふ、翔太くんはお父さんにもお母さんにも、音楽に興味を持った事は内緒なんでしょ?だから、薫ちゃんは何も知らない振りをしているの。今もきっと翔太くんの事を見てるわよ」

 

「いや、それめちゃくちゃ怖いんですけど!?

てか、もう母さんはオレがライブ大会に興味持ったって知ってるんですよね!?それなのに何で陰から見てるんですか!?ていうか、何で母さんはオレがライブ大会を観たかったって事を知ってるんですか!?」

 

「人様のお子さんを送り迎えするんだから、こういう事はちゃんと親御さんに話を通さないとダメでしょ?だから私から薫ちゃんに話したのよ」

 

「そう言われましたらそうですけど…!」

 

いや~。

お母さんには『明日は波瀬くんも観たいから来るんだって』って話したら、ソッコーで波瀬くんのお母さんに電話してたけどね。

波瀬くんの事も家まで迎えに行こうって事になったのは、その電話の後だし。

 

「質問はそれだけかしら?じゃあ、私はそろそろ仕事に向かうわね」

 

「あ、すみません…後ひとつだけ?急いでらっしゃるのに本当すみません」

 

「ふふ、いいのよ。気にしないで。

それで何かしら?」

 

「あ、あの…ちょっと言いにくいんですけど、何で三咲さんは制服を着てらっしゃるんですか?

中原も不破もオレも…何故か制服を着せられてますし…」

 

「?そりゃ高校の文化祭だもの。あ、この学校とは違う制服だからって事がおかしいのかしら?」

 

「いえ…制服がおかしいって訳ではなくて…。普通に保護者の方とか、一般参加の方達は私服ですよね?何でオレ達だけ…」

 

…?波瀬くんは何がおかしいと思って、そんな質問してるんだろう?茜も全然気にしてない様子なのに。

 

「ふふ、翔太くんもおかしな事を言うのね。あ、これが男の子特有の思春期ってやつなのかも知れないわね」

 

「いや、三咲さんが何を言ってるんですか?オレがおかしいんですか…?」

 

「それじゃ、私は行くわね。みんなはしっかり楽しんでね」

 

そう言ってお母さんは仕事へと向かった。

 

「え?何で答えてくれないの?本当にオレがおかしいの?」

 

「ほら、三咲さんも行ったし、波瀬くんも変な事言ってないで…。初音、私達もライブ大会までは文化祭楽しもう」

 

「そうだね!なかなかこんな経験出来ないもんね!今日は目一杯楽しんじゃおう!」

 

私は茜と手を繋ぎ、校舎の方へ走って向かうのだった。

 

「中原も不破も待ってくれよ…。えぇぇ…オレがおかしいの…かな?」

 

 

 

 

私達は文化祭の催し物を目一杯楽しんでいた。

凄いな高校生は~!私も高校生になったら絶対こんな文化祭にする!って思うくらいだった。

 

あ、ヤバ。私年齢不詳だったわ。

もう高校生かも知れないし、大学生かも知れないのにね?こないだランドセルに顔埋めてたけど。

 

「あ、初音ちゃん」

 

「え?」

 

私は声を掛けられた方に目を向けた。

そこにはAiles Flammeの拓実さんと亮さんが居た。

 

「今日は初音ちゃんも観に来てたのか。そっちの2人は学校の友達かな?」

 

「…亮さん///

はい。こちらの2人は私が学校で仲良くさせていただいている、不破 茜さんと波瀬 翔太さんです」

 

「…おい、不破。中原って何かいつもと違うくない?オレの事もさん付けだし」

 

「はわわわわ…Ailes Flammeの秦野さんとウチヤマさんだぁぁぁ…」

 

「え?不破もいつもと違う感じ?」

 

「ははは、亮、僕達見つかっちゃったね。まぁ、これくらい痛くも痒くもないし、初音ちゃんにはいつもお世話になってるから全然いいけどね」

 

「ああ、そうだな。昨日、姫咲さんが作ったあのルールな。ちょっと待ってくれな。今、財布出すから…」

 

と、拓実さんと亮さんが財布を持っているバッグから取り出そうとしていたので、私は急いでその行動を止めた。

 

「ま!待って下さい!亮さんも拓実さんも!

それはお父さんとか梓さんや、渚さん達への『大人は見つかっちゃいけないかくれんぼ。三咲さんは別れてから参加』って姫咲さんが勝手に作ったゲームのやつですよね!?」

 

「うん?そうだよ」

 

「ははは、オレ達も初音ちゃん達からしたら大人だしな。そんなゲームなら参加すんのも面白そうって思ってたし」

 

姫咲さんが独裁権限の元に作ったゲーム。

私、茜ちゃん、波瀬くんの3人の幼女組が、今日の文化祭に参加するという事でいきなり開催宣言された。

 

ファントムのバンド関係者大人組。

お父さん達、15年前にバンドをやっていたメンバーと、現在のファントムやSCARLETに属するメンバーの内、大学生以上のメンバーが、今日の文化祭中(ライブ大会開始時間まで)に、もし見つかったら私と茜ちゃんと波瀬くんにお小遣いとして300円ずつあげないといけないという私達にはとても嬉しくてありがたいゲームだ。

 

まぁ、高校生をそのゲームから廃除した理由は、美緒達はクラスの催し物があるから、どこに居るのかバレてしまっている事と、責任者や審査員である姫咲さんやさっちさんも、ライブ開始前に会場で待てばすぐに見つかる可能性が高いからという事があるからだ。

 

タカやトシキさんや梓さん達は『いや、見つからなくてもせっかくの文化祭だし、少しくらいお小遣いあげてもいいじゃん』と、言っていたが、拓斗さんは来月にある明日香さんの修学旅行の費用と準備金とかで金欠らしく、今月は水道と電気も止められるかも知れないのにと嘆いていた。

 

お父さんも私とお母さんからの少ない小遣いで色々とやりくりしてるのに、余計な出費は痛い。茜ちゃんともう1人の男の子の分は出してもいいけど初音の分は出したくない。と、私から嫌われてもしょうがないよね?ってことを、私の前で堂々と言っていた。

 

まぁ、そんなゲームが行われる事になったんだけど、亮さんや拓実さんは高校生なんだから私達にお小遣いを出す必要はないのに…。と、思って私は止めたのだ。

 

「オレも親父の店の手伝いで給料ってやつを貰ってる身だし、拓実もケーキ屋でバイトしてるしな」

 

「そうだよ。それに僕らももう大人だって見られたい年ごろでもあるしさ。受け取ってよ」

 

そう言って亮さんと拓実さんは、用意していたんだろう300円が入ったポチ袋を私達に手渡してくれた。

 

「あ、あの…これって…」

 

「ん?キミはこのゲームの事聞いてない感じかな?」

 

ああ、波瀬くんも困っちゃうよね。

亮さんが事情を知らない茜ちゃんと波瀬くんに説明してくれた。

 

波瀬くんもさすがに受け取れませんよ。と、言っていたけど、亮さんと拓実さんの説得に応じて、申し訳なさそうに受け取っていた。

私もさすがに亮さん達から貰うのはと思ったけど、結局は受け取り、私も茜ちゃんも波瀬くんも目一杯ありがとうと伝えた。

 

その後、亮さん達は『受け取ってくれてありがとうな。無駄遣いはするなよ』と、笑いながらその場を去って行った。やっぱり亮さん達はかっこいいなぁ~。

 

ずっと静かだった茜ちゃんは、お小遣いを受け取った時にちゃんとお礼は言ってたんだけど、終始亮さんと拓実さんのかっこ良さに見惚れてしまって、呼吸すら忘れていたらしい。

最推しである渉さんに会ったらどうなっちゃうんだろう?

 

『ちゃんと亮さんと拓実さんに挨拶もお礼も言えなかったぁぁぁぁ!推しと会話するチャンスだったのにぃぃぃ!』と嘆いていたけど、ちゃんとお礼は言ってたから安心していいと思うよ?

 

それから私達は理奈さんや渚さんに会ったり、早織さんに会ったり、綾乃お姉ちゃんにあったり、逃げるお父さんを追っ掛けて捕まえたりして…こ、こんなにお小遣い貰っていいの?って思う程の金持ちになっていた。(私調べ)

 

そしてそのお小遣いは大変有意義に使わせて頂き、私達3人はとてもウハウハな文化祭を楽しむ事が出来ていた。

 

「お?初音?」

 

そんな時に声を掛けて来たのは志保だった。

志保の文化祭用バンドの演奏も聴いてみたかったけど、1回戦の相手はGlitter Melodyだったもんね。

Glitter Melodyの演奏も楽しみだから、やっぱり昨日に1回戦が行われたのは私にとっては痛手だ。

 

「あ!?…き、期待してるかもだけどさ。あたし今月は金欠だからお小遣いあげれないから」

 

「ふぁ!?な、何言ってるの志保!私そんなの期待したりとかしてないよ!?」

 

私そんな物欲しそうな顔してる?

 

「フ、志保は甘いわね。初音ちゃん、私はちゃんと用意しているわよ」

 

「ふぁ!?明日香さん!?い、いえ!私、別にお小遣い欲しいとか思ってませんし!そ、その気持ちはありがたいとはめちゃくちゃ思いますけど…」

 

「…そう、そうよね。初音ちゃんは私みたいな…復讐の為に音楽をやっていたような人間からは、お小遣いなんか受け取りたくない…」

 

「ありがとうございます!明日香さんのおかげで、もうワンランクアップした文化祭楽しめそうです!お小遣いありがたく頂戴します!」

 

「フ、聞いたかしら志保。これが大人の嗜みというものよ」

 

うわぁぁぁぁぁ!

高校生組からはお小遣いなしのはずなのに!

何で亮さんも拓実さんも明日香さんも!

3人共、来月は修学旅行でお小遣いいっぱいいるでしょ!?結構大きいよ!?私達3人に300円ずつで900円の出費だし!!

 

しかも悪いと思っても明日香さんみたいな言い方されたら受け取らない訳にはいかなくない!?

 

「あれ?そういや志保と明日香さんの2人だけ?栞お姉ちゃんや遊ちゃんも一緒でも不思議はないのに」

 

「あ、栞と遊太なら来た時は一緒だったけど…」

 

そして志保が回想シーンに入りながら、今の栞お姉ちゃんと遊ちゃんの事を教えてくれた。

 

 

 

 

「ゆーちゃんはボクの代わりに出場したくせに何で負けてんの!!」

 

-バシッ!

 

「え?何で僕は栞ちゃんの代わりに嫌々出場したのに蹴られたの?ってか、家から一緒にここまで来る途中は『ごめんね』とか『ありがとう』とか言ってたくせに何で今になって文句を?」

 

「うるっっさいっ!」

 

-バシッ!

 

「何この謂れのない暴力」

 

「それより私は井上が栞相手には普通喋れる事にびっくりだわ」

 

「あ、明日香ちゃん…えと…その、栞ちゃんは生まれた時から…その一緒だし…家族みたい…な感じだし」

 

「ゆーちゃ…!か、家族って///」

 

「妹みたいな感…じだ…から…その、全然平気っていうか…」

 

「い、妹!?だ、誰が妹だ!ゆーちゃんの方が弟だしっ!」

 

-ドカッ!

 

「いったぁぁぁぁぁぁぁい!!今日一で痛い!何で!?ボク変な事言った!?」

 

「あ、井上が僕からボクになった。って事は今のはシフォンの叫び?」

 

「遊太はホント、栞の前だと素直だよね~」

 

「ねぇ志保。こいつらホントに付き合ってないの?(ボソッ」

 

「うん。何かそうみたい。お互い好き合ってそうな感じあるし、ちゃっちゃと付き合っちゃえばいいのにね。あ、でもそうなると秦野が大変かぁ~」

 

「わ、私は気を遣ってボソッと言ったのに、何で志保は普通に喋ってんの?てか、やっぱ秦野はそうなの?」

 

「とにかく!ゆーちゃんはボクの代わりのくせに負けちゃったダメダメ男なんだからっ!今日は全部ゆーちゃんの奢りだからねっ!」

 

「え!?何で!?」

 

「いいから!」

 

「いいからって…。

はぁ…志保…明日香ちゃん…ご、ごめんね。僕、栞ちゃんに奢らなきゃみたいで…。レガリアを…継承したお祝いも…兼ねてだけど…」

 

「あ、ううん。いいよ、行ってらっしゃい」

 

「わ、私達の事は気にしなくていいわよ。せいぜい栞にたかられる事ね」

 

「う、うん…助けてくれないんだ…(ボソッ

じゃあ、行ってくるね。し、栞ちゃん待って…」

 

 

「あの2人の邪魔するのは何かね~…」

 

「てか、何で一回待ち合わせしたの?」

 

 

 

 

「そんな事があった訳よ」

 

あ~…栞お姉ちゃん、なかなかの力技を使って遊ちゃんとのデート権をゲットしたんだね。

 

「それで志保と明日香さんの2人で文化祭回ってたんだね」

 

「そういう事。ま、ライブ大会は負けちゃったけど、せっかくだから決勝は観ておきたいしね。それに学生として文化祭も楽しみたいし」

 

「わ、私は文化祭を楽しみたいとかないけど…。文化祭も参加しないと皆勤にはならないしね。って、それよりそっちの男の子。確か波瀬くんって言ったわよね?波瀬って名前…どこかで聞いた事あるような…」

 

ほえ?波瀬くんのお父さんの事かな?

拓斗さんから聞いてて名前を知ってるとか?

って事はもしかなくても、やっぱり波瀬くんのお父さんってアルテミスの矢の関係者?

 

私がそんな事を考えながら波瀬くんを見ていると。

 

「お、やっと初音ちゃん達見つけた」

 

学生組の物語である文化祭編なのにも関わらず、何故か出番の多いタカが私達を見つけて近付いてきた。

 

「タカ!あんた初音をやっと見つけたって…。もしかして仕事もせずに初音を探してたっていうの!?このロリコンッッ!!」

 

え?そ、そんな…。タカったら。

ここには茜も波瀬くんも居るっていうのに、積極的なんだからっ!

わ、私は亮さんの方がかっこいいと思ってるし、遺産の期待も出来ないタカの事なんて…!

 

「あ?いや、せっかくだからお小遣いやろうと思って探してただけだけどな。こんな時でもねぇと、三咲に甘やかすなとか怒られるし。ついでに…」

 

「ああ…タカは幼女に甘いもんね。

お小遣いあげる為に初音達を探してたわけか。

そしてついでにあたしと明日香にもお小遣いをあげたいと…。なるほど、タカ、ありがとうね♪」

 

「何言ってんだ?何なのその今までに見たことのないような笑顔。お前バイトしてるよな?そんな金欠なの?」

 

なぁんだ。ただお小遣いくれようとしてただけか。

まぁ、タカだもんね。

 

「俺の言ったついでに…ってのはだな」

 

そう言ってタカは波瀬くんの顔をジッと見た。

 

「あ、あの…オレが何か…?」

 

「いや、キミ、波瀬の子供なんだってな?

うわぁ…波瀬に似てたら笑ってやろうと思ってたけど、びっくりするくらいイケメンだな…。いや、松田さ…薫さんにも似てないけど…」

 

「あ、オレはどっちかというと父さん似ってよく言われてまして…って、もしかしてタカって、あのBREEZEのTAKAさんですか!?」

 

あれ?波瀬くんってタカの顔は知らない感じだったのかな?Blaze Futureの事も知ってる感じだったのに。

ってか、やっぱり波瀬くんのお父さんはタカ達とお友達だったんだね。なんて狭い世間なんだろう。

 

「オレ、父さんから話は聞いてまして…。いつもタカさんの事かっこいいミュージシャンだったとか、凄い人だったって聞いてます。あ、もちろんオレも曲はBREEZEもBlaze Futureも聴かせていただいてます!」

 

「え?…波瀬って俺の事そんな風に言ってんの?いかん、気分が悪くなってきた…」

 

「はい!最近では本当に大神さんに似てきたって凄い褒め称えてました!」

 

「…大神さんに似てきただと?

見た目が太ってきたって事か?それとも性格がふてぶてしくなってきたとか言いたいんだろうか?うぅむ…大神さんに似てきたってのは明らかにディスってる感があるな。安心したぜ」

 

「安心?…あ、そ、それであの…!」

 

ふぅん、珍しい。

波瀬くんが音楽の話をあんなにするなんて。

何だかんだと言って、やっぱり音楽が好きって気持ちをお父さんからしっかり受け継いでるのかな?

 

その後、しばらくタカと波瀬くんとで何かを話してたみたいだけど、特に興味がないので、私は茜や志保達と会話を楽しんでいた。

 

「そっか。波瀬くん…って何か気持ち的に言いづらいな。翔太郎くんは今は音楽やるつもりはないって感じか」

 

「あ、翔太でいいですよ。友達も両親からも翔太って呼ばれてますし。アハハ、音楽好きって気持ちはありますけど、オレはサッカーとかスポーツとか、体を動かす方が好きでして」

 

「そういや波瀬のやつ…あー、お父さんもそんな事言ってたわ。まぁ、いいんじゃねぇの?好きな事を好きにやるのが一番いいし」

 

「…ありがとうございます」

 

「って、ここでゆっくり話してる時間もあんまないな。もうすぐ決勝始まるし。

みんな腹減ってないか?今から美緒ちゃんのクラスがやってるラーメン屋行くつもりなんだけど、ラーメンで良かったら奢ってやるぞ」

 

あ、確かにもうそんな時間か。

軽くは食べたりもしたけど、美緒のクラスがやってるのはラーメン屋なのか。

ラーメン好きの美緒がやってるような所なら、めちゃくちゃ美味しいかも知れないね。

お言葉に甘えて奢って貰おうかな。

 

私達はもちろん、志保と明日香さんも美緒のクラスに顔を出す事にした。

 

 

 

 

「あ、タカさんだ。

初音ちゃんもお友達ちゃんも、志保も明日香もいらっしゃい。あ、一応ラーメン屋だし、へい、らっしゃいの方がいいかな?」

 

「やっほ、睦月」

 

「永田さんが受け付けやってるんだ?もうすぐ決勝大会なのに大丈夫なの?」

 

美緒達のクラスに行くと、教室の前で睦月さんが受け付けをやっていた。

どうやらここで食券を買ってから、教室に入るっていうシステムらしい。

 

「ああ、それね。あたしはさっきまで自由時間だったんだけど、今から受け付けなんだ。学生たる者文化祭もしっかりやらないと。

もちろん、決勝大会の前には交代が来るんだけどね」

 

「ほぉん、大変だな。ま、頑張れ。

それで?メニューはどれ?」

 

「あ、タカさん。その前に聞いて」

 

「あ?どした?」

 

「タカさんが制服着てて良かったよ。ちょっとこっち来て」

 

睦月さんはタカを自分の座っていた受け付けの席に座らせた。何をするんだろ?

 

「うん。しっくり来る。じゃあ、次はこれ。

これね、恥ずかしいけど…あたしが自分で作ったネックレスなんだ」

 

「は?ネックレス?」

 

そう言った睦月さんは、自分が首から下げていた『受け付け係』と書かれた板の付いた看板をタカの首にかけた。

 

「お前…これネックレスじゃないじゃん。ただの看板じゃん。それを何で俺にかけるの?」

 

「うん。我が自作ネックレスながら似合う似合う。

って訳であたしの代わりに受け付けよろしく」

 

「は!?お前何を言ってんだ!?アホなのか!?」

 

「あたし、自由時間終わったのにさ。さっきここの前をひーちゃんが通って行ったから。追っ掛けて色々話を聴聞かないと。

何でクリムゾンに居るのか。そういうの聞けるのきっと幼馴染みのあたしだけだし。メタな事言うとあの後何で泣いてたのかも気になるじゃん。泣いてる女の子放っておけないでしょ?」

 

「おま…雲雀をたてに出すとか…その物言い卑怯過ぎるだろ…。てか、それめちゃくちゃメタな発言じゃねぇか」

 

「あ、はい。これがメニューだよ」

 

「……お前、これがメニューって。

お前らのクラスってラーメン屋だよな?何なのケーキセットしかメニューにないじゃん。そのケーキもパウンドケーキのプレーンかチョコか抹茶だけだし。ドリンクもコーヒーと紅茶とオレンジジュースしかないじゃん」

 

「うん。文化祭始まる2日前まではラーメン屋の予定だったんだけどね。どうやっても美緒の納得のいくラーメンが作れなかったから、急遽ケーキ売る事になったんだよ。看板も作っちゃってたからそのまま」

 

美緒の納得がいくラーメンが作れなかったって。

文化祭2日前まで頑張ってたのにダメだったんだ…。

美緒のラーメンへの拘りは凄そうだもんね。

 

「って訳でよろしく。あたしはD組の演劇観てく…違った。ひーちゃんを探してくるから」

 

「お前!待て!今演劇観てくるって言いかけたよな!?」

 

そして睦月さんはそのまま手を振りながら走り去ってしまった。

 

「タカ…あんたどうすんの?」

 

「何もかも投げだして帰りたい…」

 

「ちょっと、睦月ちゃん。教室の前で何を騒いで……って、タカさん!?」

 

そう言いながら教室から出てきたのは恵美さんだった。

 

「あ、あの…何でタカさんが受け付けに?睦月ちゃんは何処に行ったんですか?」

 

「恵美ちゃんに言ってもしょうがないだろうけど、Glitter Melodyのギタリストの教育ってどうなってんの?翔子か?このやるせない気持ちは翔子にぶつけたらいいか?」

 

「あ、あの実は永田さんは…」

 

恵美さんに明日香さんが事の敬意を説明してくれた。

 

 

 

 

「あ、あはは…そ、そういや睦月ちゃん、D組の演劇観たいって言ってたっけ…」

 

「あの野郎。マジで演劇観に行きやがったのか…」

 

「あはは…その…ごめんなさい…」

 

「いや、恵美ちゃんに謝られるのは違うしな。

それで、ここの受け付けなんだけど…」

 

「ごめんなさい」

 

「え?いや、さっき謝罪は聞いたから。それより睦月に押し付けられたここの受け付けを…」

 

「ごめんなさい」

 

「……受け付」

 

「ごめんなさい」

 

「……」

 

「あはは、わ、私今からウエイトレス担当しなきゃいけなくて…。私達、午後からライブ大会で抜けちゃうからら、ちょっと今は人手が足りませんでして」

 

「いや、だからっておっさんが、女子校の文化祭の催し物の受け付け係する方が問題じゃない?下手しなくても営業停止レベルの不祥事じゃん」

 

「あ、それで初音ちゃん達は、私達のクラスに食べに来てくれたのかな?」

 

「恵美ちゃん?」

 

「あ、そうだ。睦月ちゃんが勝手したお詫びに、初音ちゃん達の分も志保さん達の分も、うちのケーキセットご馳走しますよ。教室の中で好きなの注文しちゃって下さい」

 

「え!?俺へのお詫びは!?いや、お詫びとかいいから」

 

「えへへ、自分で言うのもなんだけど、うちのクラスのパウンドケーキは自信作なんですよ」

 

そう言って恵美さんは私達を教室の中へと案内してくれた。

 

「お願い!待って恵美ちゃん!いや、初音ちゃんでも志保でも明日香でもいいから待って!お願い!ここに俺を1人にしないで!」

 

「…もう少ししたら調理担当の美緒ちゃんと麻衣ちゃんの交代時間になって手が空きますから…。それまで頑張って下さい…」

 

「それまで頑張って下さいって!?それまでって後何分!?何分頑張らされんの!?」

 

タカの悲痛な叫びを聞きながら私達は教室に入り、各々が好きなケーキセットを注文した。

もう少しでライブ大会を観れる。

私はワクワクしながら、美味しいケーキを頬張るのだった。

 

 

 

 

 

-------------------------------------

 

 

 

 

「俺は無機質、俺は無機質。

神様…お願いします。このクラスにもう少しの間だけでいいので、お客さんが来ないようにして下さい」

 

「女子校の文化祭で、クラスの催し物の受け付けを男性がしているとは。本当にびっくりね」

 

「ヒィ!ち、違うんです!違うんです!俺は変質者とかそんなんじゃなくて……ってお前」

 

「久しぶりね。タカさん。その反応。私の事を覚えててくれたみたいね」

 

「あー、まぁ、俺らのファンだったって訳だし」

 

「そ。嬉しいわ」

 

「お前…その襟章…」

 

「あら?気付いた?まぁ、気付くようにわざと見せてたんだけど」

 

「何でお前がクリムゾンの…それも二胴の襟章なんか付けてんだ?」

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