バンやろ外伝 -another gig-   作:高瀬あきと

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第29話 ライブ大会決勝戦

私の名前は佐倉 美緒。

安定して私のモノローグ多いですね。

私のモノローグで面白い話なんか出来ないとは思うのですが。

 

それはさておき。

長かったこのライブ大会もとうとう決勝戦になりました。このライブ大会は近隣の高校で行われる合同文化祭の催しの1つです。

 

合同文化祭という事で、各高校の伝統的行事も、近隣の高校生達が参加出来るという事で大盛況でした。

演劇大会や吹奏楽大会、スポーツ大会や大食い大会。

クイズ大会やプリクラ誰が一番盛れるか大会など、さまざまな大会が行われています。

 

これまでは学内だけの大会でしたので、あまり注目はされていませんでしたが、色んな学校の生徒や各々の著名人なんかもゲストで来たりして、来年度もこの形で文化祭をやろうとか、もうそんな話になっていました。

 

それほどの大会で優勝出来たら、どれだけ嬉しいでしょうか。私は今、ドキドキとワクワクの気持ちもいっぱいですが、ライブ大会決勝の相手、Break Bellはバンド始めたてと思えないくらいの歌唱力と演奏力を持っています。

 

最初から飛ばして行かないと、もしかしたら負けるかも知れません。

私は柄にもなく緊張もしていました。

 

「ふぅ…少し落ち着いた方が良いですね」

 

緊張からか喉が渇いている。

私はテーブルに置いてあったペットボトルの蓋を開け、1口水を口に運び、ゆっくりと身体に染み渡るように胃に流し込んだ。

 

「あ、美緒。それ美緒のじゃないよ。あたしの水」

 

「ブホッ…ケホッケホッ…え?私の目の前に置いてあったのに?これ睦月の?」

 

「そ。それはあたしの。美緒のはこっちだよ」

 

何で睦月の水が私の目の前に…。

ああ、せっかくゆっくり飲んでたのに、びっくりして吹き出しちゃったよ。

まぁ、お陰で緊張も少し和らぎましたが。

 

「わぁ、これってあたしと美緒で間接キッスだね。照れちゃうよね」

 

か、間接キッス!?

 

「「「「「「間接キッス!!?」」」」」」

 

私が睦月の言う間接キッスという言葉に反応し、先程…いや、先程というかライブ大会編第24話の沖野さんの話を思い出してしまった。

 

案の定、睦月の間接キッスという言葉に反応してしまった人達もいる。

私と一緒に沖野さんの話を聞いていた花音さん。

花音さんは『あわわわわ』とか言いながら、私と睦月の顔を見ている。

 

そして、同じように沖野さんの話を一緒に聞いていたお兄さん。

お兄さんは睦月の間接キッスという言葉を聞き、『テメェ!英治ぃぃぃ!!』と言いながら、英治さんを殴っていた。いきなりお兄さんに殴られた英治さんは『いったい何事!?』とか驚いていたけど、殴られた英治さんを見た三咲さんが『な、何をするだァーッゆるさんッ!』と言ってお兄さんを殴っていた。…三咲さんに殴られたお兄さんは一瞬体が浮いたような気がしましたけど気のせいでしょうね。

 

それより気になったのが、他の間接キッスという言葉に反応したメンバー。Daedal Luvの4人です。

 

正直、間接キッスとか意識する方もする方ですし、嫌だという意識はあっても、沖野さんみたいに過剰に恨みを持つほど…とは思うのですが、Daedal Luvの4人が4人とも同じ反応をするという事は、私達が沖野さんに会った時間よりも後に、沖野さんとDaedal Luvは接触して、スカウトの話があったとみるべきですかね。

 

Daedal Luvのメンバーもいい人ばかりですし、沖野さん自身もいい人って感じではありましたけど、一応クリムゾングループのメンバーだという認識は持っておいた方が良いかもですね。

 

 

-ピンポンパンポーン

『ライブ大会決勝進出のGlitter MelodyとBreak Bellのメンバーは……』

 

 

おっと、モノローグに耽っている場合じゃありませんね。私達に呼び出しが掛かりました。

 

Break Bellのメンバーも睦月達も控え室を出ようとしています。

さっきの準決勝前は天音に声を掛けましたし、結月にも声を掛けておきましょうかね。

…出来るだけ怖くない笑顔で。

 

「結月」

 

「ん?あ、美緒さん?」

 

怖くない笑顔…怖くない笑顔…。

 

「さっきの準決勝の時は、天音に胸を貸してあげるとかいいながら、正直ギリギリでしたし、私も自分が先輩だからって傲っていたのかも知れません」

 

「美緒さん…。いえ、そんな事は…やっぱりGlitter Melodyは…」

 

「だから、今回は偉そうには言いません。

Amaterasuとの時も最初から全力だったけど、Break Bellとのデュエルも最初から全力でいくから。覚悟してて」

 

「美緒さん…も、もちろんです!あたし達も全力で最初から飛ばしていきます!絶対負けませんからっ!」

 

「うん、期待してるよ、結月(ニタァ」

 

「ヒ、ヒィィィィィィ!!」

 

え!?あれ!?

な、何で結月は走って逃げていったの!?

 

「さすがだね。美緒、グッジョブだよ」

 

え?睦月?

 

「いや、グッジョブって事はないんじゃない?でもまぁ、ここまで来たら優勝したいもんね」

 

は?麻衣は何を言ってるの?

 

「あはは、確かに優勝したいって気持ちもあるけど…でもさ、美緒ちゃん、下級生相手に威嚇するのはちょっと…私はそこまでしなくてもって思うよ」

 

恵美まで?え?威嚇?

……もしかしてだけど。

 

「ね、ねぇ。私さ、さっき結月には激励したつもりだったんだけど、もしかしてさっきの笑顔も怖かったの?」

 

「「「え!?激励!?今の笑顔って威嚇して怖がらせてたんじゃないの!?」」」

 

ああ、そうか。だから結月は走って逃げて行ったのか。

お姉ちゃんに今度笑顔の仕方を教えてもらおう。

 

私はとてもとても落ち込みました。

 

 

 

 

さっきの『私の笑顔は実は怖い事件』のせいで、結構というか、かなりメンタル的にダメージを受けていましたが、私もあの笑顔が天使のようなあざとお姉ちゃんの妹。

その気になれば素敵な笑顔が出来るようになる!と、前向きに気持ちを切り替えて、今、ライブ大会決勝のステージに立っている。

 

いや、ちょっと嘘つきました。

さっきの笑顔も怖かったとか割と引きずってます。

 

「美緒、大丈夫?結構顔が死んでるけど」

 

「始めっから飛ばしていかないと、またギリギリになっちゃうよ?だから気持ちを入れ替えなきゃ!」

 

「あはは、最初から飛ばしてやってもギリギリで負けちゃうかもだしね。だから美緒ちゃんも、麻衣ちゃんが言うように気持ちを切り替えないと。Break Bellも凄いから私達が圧倒的差で負けちゃうかも…」

 

いや、私が今落ちてんのは概ね睦月と麻衣と恵美のせいだから。

でも確かに、このままのメンタルでやって負けちゃったら、私達に負けたバンドメンバーにも、Amaterasuにも申し訳ないですしね。

 

スゥ~……ハァ…

 

私は大きめの深呼吸をして、私のベース、Irisベース花嵐を強く握った。

 

……いきますよ花嵐。一緒に歌いましょう。

 

『……』

 

え?花嵐も応えてくれないの!?

 

そう思った時、私達の立つステージがライトアップされ、初手はBreak Bellが動いた。

 

「決勝戦ありがとうございます!

聞いて下さい!あたし達のオリジナル『黎明の魔物(れいめいのまもの)』!」

 

結月のタイトルコールと共に始まった激しいサウンド。

曲調を聞いてみてわかります。

最初から全開の演奏で飛ばしてきている事が。

 

でも、私達も気圧されしている場合じゃありません。

 

「…Glitter Melodyです。聴いて下さい!『DANCE DANCE DOON!(だんだんどーん!)』!!」

 

 

♪~

♪♪~

♪♪♪~

 

 

「ハァ…ハァ…」

 

私達は1曲目の演奏を終えた。

結構いい感じの演奏は出来たと思っています。

でも、何で準決勝では声が聞こえたのに、この決勝では花嵐の声が聞こえてこないんでしょう?

 

「美緒、さっきの『DANCE DANCE DOON!』良かったと思う」

 

「うん、睦月ちゃんの言う通り大成功だったね。Break Bellの演奏も凄かったけど」

 

「うんうん!勝てたかどうかは正直わかんないけど、私も負けてないと思うよ。…って割には美緒は浮かない顔してるよね?何で?」

 

「え?ああ、私も『DANCE DANCE DOON!』は成功したと思ってるけど、準決の時には聞こえてた花嵐の声が、決勝になって聞こえなくなったから」

 

取り敢えず思った疑問を睦月達にも伝えてみました。

花嵐の声を聞いた事のない睦月達に話しても、きっと解決策は出ないと思いますけど。

 

「ふぅん、そうなんだ?あれじゃない?疲れて寝ちゃってるとか」

 

「えー?ベースに寝るとか起きてるとか、そんなのあるのかなぁ?それよりお腹空いちゃったとかじゃない?私もお腹空いてたら力出ないし」

 

「あ、そうかも。美緒。さっきの疲れて寝ちゃったってのは撤回する。きっと麻衣の言う通りお腹空いてるだよ」

 

「美緒ちゃんの気持ち的にはどうなのかな?

さっきの準決勝ではAmaterasuと一緒にって思ってたと思うんだけど」

 

睦月と麻衣の事は放っておくとして、恵美の言いたい事は何となくわかります。

 

「うん。優勝したい…って今も強く思ってるよ。でも、それはそれとして、今はGlitter Melodyとして、Break Bellと一緒に楽しんで演奏()りたい。そこはAmaterasuの時と演奏()った時と同じ気持ちだし、それが原因とは考えにくいんだけどね」

 

「そっかぁ。天音ちゃん達は私達学校の後輩でもあるし、胸を貸してあげるって気持ちでいたけど、結月ちゃんのお母さんはタカさんの…その…結月ちゃんと結月ちゃんのお母さんって似てるって話だし……だからちょっと気持ちに余裕がないとか?なのかな?」

 

待って恵美。

お兄さんの『その…だから』って何!?

ちょっと恵美も麻衣の影響受けすぎて、変な風に思ってない!?

 

「タカさん?あ、それかも」

 

睦月まで!?

 

「なるほどなるほど。恵美は私の悪影響でそう思うようになったとしても、あの睦月までそう思っちゃうとは。やっぱり美緒はタカさんの……痛っ!え?何で私またひっぱたかれたの!?」

 

全く…麻衣は…。

 

「え?あの、私は麻衣ちゃんの悪影響って…どういう事なのかな?」

 

「どうもこうも…だから私とお兄さんはそういうのじゃないから。だから、その影響による可能性ってのもないよ」

 

「いや、そんな事ないんじゃない」

 

睦月!?私、とうとう睦月もひっぱたかなきゃいけないの!?

 

「あのね睦月。だから私は…」

 

 

「美緒さん!そろそろいいですか!?あたし達、次の曲いきますよ!」

 

 

あ、ヤバ。

Break Bellも次の曲にいくようですね。

私達も次の準備しないと。

…でも結月も、私達の事は放っておいて次の演奏にいった方が有利だったでしょうに、私達に声を掛けてくれるなんて。

 

きっとBreak Bellも、私達と楽しんでデュエルギグをやろうと思ってくれてたんですね。

 

「バカ結月!何でわざわざ声掛けてんのよ!せっかく奇襲のチャンスだったのに!!」

 

まぁ、あゆみは置いておきますか。

 

「ほら私達も準備するよ。Break Bellもオーディエンスも待たせちゃってますし。睦月は後で説教ね」

 

「え?何であたし説教されんの?嫌なんだけど。

……あ、もしかしてさっきのタカさん影響ってやつの事かな?あれは別に美緒がタカさんに恋してるからって、そんな意味で言ったんじゃなくて」

 

は!?何割と大きめの声で変な事言ってんの!?

さすがに客席に聞こえてないだろうけど、結月達には聞こえちゃってるかもじゃん!

もうこれ説教だけじゃ済まない案件なんだけど!

 

「あたしがタカさんの名前聞いて、それかもって思ったのは違うよ。翔子ちゃんも楽器の声は聞こえた事ないみたいだし、花嵐の事もあんまりわかんないって言ってたけどさ」

 

いや、もういいから。

後で説教確定だから。さっさと演奏の準備を…。

 

「さっき相手だった天音は、レガリアを持ってたから。それの影響があったんじゃないかなぁ?って思って。レガリアとIrisベースが共鳴したみたいな?よくわかんないけど」

 

あ…そうか。

今の状況とさっきの状況とで違う部分。

確かに…花嵐の近くにレガリアがあるのか、ないのかって状況でもあるんだ。

睦月のくせにこんなギリギリに核心的な事を…。

でも今は。

 

「ごめん、お待たせ。いくよ結月!次も私達は飛ばしてく!!」

 

「はい!あたし達も全力全開でやります!!」

 

そして私はオーディエンスに向けて精一杯の声量で、

 

「お待たせしまってすみません!Glitter Melodyで『Flower Storm(フラワーストーム)』!!」

 

この曲はモンブラン栗田さんから、花嵐を託していただいて、花嵐を想って作った曲。

この曲なら花嵐は応えてくれるでしょうか?

 

 

 

 

今の曲は手応えがありました。

私自身も凄く楽しくなって、睦月や麻衣、恵美の音からも楽しんでいるのが伝わってくる程に。

 

でも…やっぱり花嵐は何も言ってくれませんでした。

 

「今のすっごい良かった。あたし寝る前に日記に書くよ」

 

「え?睦月って日記とかつけてたの?いが~い」

 

「ううん。今日からつけようかな?って」

 

「私もさっきの演奏は大成功だったと思うよ。美緒ちゃんはどうかな?花嵐の声は聞こえた?」

 

「ううん。花嵐は何も言ってくれなかった。

でも、さっきの『Flower Storm』は私も成功だったと思う」

 

やっぱり私が感じたように、睦月達もさっきの演奏は成功だったと思ってくれてるみたいですけど、花嵐は最初から最後まで何も言ってくれませんでした。やっぱりレガリアと何かあるから?

 

「ねぇ、睦月。さっき言ってたレガリアとIrisベースの共鳴とかって」

 

「いやー。さっきの演奏本当に良かったよ。

ひーちゃんも聞いてくれてたら嬉しいんだけど。

……あれ?美緒何か言った?」

 

睦月って本当にマイペースだよね。

自分が言いたい事を言ったら、もう他の事や他人の応えとかどうでもいいみたいな…。

 

「だから、さっき言ってた事だよ。レガリアとIrisベース。天音の射手座のレガリアの近くに、私の花嵐があったから共鳴したんじゃってやつ」

 

「……?美緒は何を言ってんの?あたしそんな話したっけ?それより次の曲どうしよっか?」

 

ホントその自分が言いたい事を言ったら、もう他の事や他人の応えとかどうでもいいみたいな考え方、止めてくんないかな!?

私はさっきの睦月の言葉で、『あ、もしかしたらそうなのかも』とか思ってたのに、当の本人が言った事忘れちゃってたら意味ないじゃん!

 

「ねぇ、美緒どうすんの?

Break Bellはさっきのデュエルは負けたと思ってるのか、次の曲悩んでるみたいだし。最初の予定通りアレやる?」

 

む、睦月は…。

確かに決勝戦の最後の曲は、アレをやりたいとは思っていましたけど…。

 

「私もそれでいいと思うよ。じゃあ、準備しちゃうね」

 

「も、もう……麻衣ちゃんってば。

美緒ちゃん、麻衣ちゃんも準備に入っちゃったし、最後はあの曲でいこう」

 

恵美の言う通りですね。

麻衣も準備に入っちゃいましたし、今更曲を変えても上手くいくとは思えませんし。

 

「うん。当初通りのセトリでいこう。睦月も恵美も準備お願い」

 

「「うん、わかった(よ)」」

 

もし、ライブ大会の決勝に行けたら最後の曲は、この曲にしようって決めていた。

予選前から睦月も麻衣も恵美も、この曲でラストを飾ろうと言ってくれていた。

 

今の私達みんなの想いを積めた、私達の曲。

でもその前に…。

 

「結月!私達の曲は決まってる!結月達はどう?いける!?」

 

私はBreak Bellを鼓舞するように、結月達に声をかけた。

 

 

 

「どうすんの結月!やっぱりラストはBREEZEのコピーでいっちゃう!?」

 

「あはは~…。あゆみは放っておくとしてさ。あたしは結月の判断に任せるよ。オリジナルでもコピーでもさ」

 

「……あゆみには悪いけど、勝つにしろ負けるにしろ、ラストは思いっきり楽しみたいじゃん。あたし達の始まりの曲。アレでいこう」

 

「そうね。私も最後にはアレが相応しいと思うわ。アレなら負けても悔いはないものね」

 

「よし、決まり。

……決まりました!いきますよ、Glitter Melody!!」

 

「オッケー結月!私達も全力でいくから!!」

 

「「Glitter Melody(Break Bell)で………!」」

 

 

♪~

♪♪~

♪♪♪~

 

 

「ほんっとぉぉぉぉに!

今年のライブ大会は予選から決勝まで最高だった!

あたしも昔はバンドもやっていたんですけど、またバンドやりたいとか、ライブやりたいとか思わされるくらいみんな凄くて…。今年のライブ大会に参加してくれたバンドメンバーもオーディエンスも、あたし達審査員の心に残るような、最高の大会だったと思います!」

 

私達とBreak Bellの最後の演奏が終わり、少しした後の結果発表。

gamutの顧問でもあり、Artemisというバンドの元ギタリスト、そして私達の学校でライブ大会を開いた第1人者である翔子先生がステージに立っていた。

 

今までの結果発表は姫咲さんでしたけど、決勝の結果発表は、翔子先生がやるんですね。

 

「ははは、ちょっとあたしも興奮気味で、長々と話をしちゃいましたが、決勝の勝者…優勝バンドの発表に入らせていただきます!」

 

 

\\ワァー!パチパチパチパチ//

 

 

オーディエンスの声援、たくさんの拍手。

私達はこのライブ大会で、今の精一杯の演奏をしてきました。

何とか来る事の出来た決勝戦。

もしBreak Bellに負けちゃったとしても、私達の精一杯の結果です。悔しい気持ちはあっても、今大会はとても満足です。

 

決勝で花嵐の声が急に聞こえなくなったのは、ちょっと心配ではありますが。

やっぱり睦月の言うようにレガリアの影響?

いえ、それもあるかもですけど、思い返してみたら、近くにレガリアが無い時にも声が聞こえた事はありますし。南国に行った時も。うぅん…。

 

「まず1曲目!

Break Bell51点!Glitter Melody49点!」

 

え?あ…。

1曲目…負けちゃいましたか。

今は採点発表に集中力して、花嵐の事は後にしましょう。澄香さんに聞けば何か知ってらっしゃるかもですし。

 

「続いて2曲目!

Break Bell48点!Glitter Melody52点!」

 

よし!

2曲目は勝てたみたいですね。

総合すると私達が101点で、Break Bellが99点…。

総合点でも勝てていますが、3曲目で負けちゃうとなると良くて引き分けのサドンデス。

最悪は負け…ですか。

 

「それでは!3曲目の特典と優勝バンドの発表です!」

 

勝ちたい…。

お願い、勝ってて…!

 

「Break Bell50点!Glitter Melody50点!

総合得点Break Bell149点!Glitter Melody151点で、今年の優勝バンドはGlitter Melodyです!!」

 

\\ワァー!!パチパチパチパチ//

 

勝て…た。

やった……やったっ!!!!

 

「やったよ美緒ぉ~!!私達が優勝だよぉ~!」

 

「麻衣は喜びすぎ。あたしが居るんだもん。優勝して当然だよ」

 

「もう!睦月ちゃんってば!

優勝出来たんだね、私達。あはは、な、何か涙が出てきちゃった」

 

「勝てたんだね。私達。このライブ大会で…」

 

 

 

「ふぅ…やっぱ敵わなかったか…」

 

「だ!だからBREEZEのコピーを…やって負けてたなら、オリジナルじゃなくてコピーを挟んだからって、自分に言い訳出来たのに…」

 

「あー、それであゆみはコピー押してたの?でもさ、全力でやった結果じゃん。負けて悔しいけど、ここまでやれて達成感はあるよ」

 

「夏希の言う通りね。私も悔しいという気持ちはあるけれど、達成感はあるわ。この負けがきっと私達のこれからの糧にもなるでしょう」

 

 

 

 

「やったな、お前ら。

まさか今大会の優勝バンドが、あたしの教え子になるなんてな。当然って気持ちと、よくやったって気持ちで誇らしいよ。佐倉、睦月、藤川、松原おめでとう」

 

そう言ってステージ袖に引っ込んだ翔子先生は、大きな旗を持つ生徒と、私達に授与するメダルを持って再びステージに出てきた。

 

今年のライブ大会は大盛況だったので、来年度からもこの形式でライブ大会は開催されるらしい。

どうせなら来年度からは、男子生徒も出場出来るようになったらいいなとは話してましたけど、うちの高校の理事長先生が『嫌ザマス』と一蹴したらしい。

 

翔子先生は来年までに、理事長先生を説得するザマスと言っていました。何で語尾にザマス?

 

そして今大会から授与される大きな旗。

その旗は1年間、優勝校に預けられ、大会が開催される度にリボンが旗に付け加えられていくそうです。

優勝バンドの名前と、そのバンドメンバーの名前を刺繍したリボンが…。

 

……そんな事より。

ステージ袖からステージ中央に居る私達の所まで来るの遅すぎませんか?

何か翔子先生も旗を持ってる生徒さんも、ゆっくりゆっくり歩いているような気がするんですけど。

 

私がそんな事を思った時、ステージの床が開き、そこからモクモクとスモークが流れてきました。

いつの間にステージにこんなギミックが!?

 

一瞬ステージ上はスモークまみれになっていましたが、スモークは自然と風に流され、そこには……

 

「カーカッカッカニ!この優勝旗と優勝メダルは、このカニ怪人様がいただくカニ~。返してほしくば…えっと何だったカニ?あ、こっちには人質が居るから抵抗しても無駄カニ~」

 

「きゃ、きゃぁぁぁぁぁ!!た、助けてトシキさーん!!」

 

「トシキさん?それは誰カニ?台本にはそんな台詞書いてなかったカニ」

 

自らをカニ怪人と名乗る着ぐるみと、何故かその着ぐるみに羽交い締めにされている翔子先生。

そして何故かその横で、血塗れになって倒れている旗を運んでた生徒さんが居ました。

 

てか、あの生徒さんが血塗れになってる演出って必要ですかね?多分、血糊か何かでしょうけど、その出血量ならまず助からないと思うんですけど。

 

「わぁ、すごい展開。これあたし達どうしたらいいのかな?」

 

「正直…私もついていけてないんだけど…」

 

「もしかして私達で何とかする感じなのかな?ライブ大会のはずなのに、演劇もしなくちゃいけないとか?」

 

「演劇って言っても私達、台本も何も貰ってないよ?どうしよう、これって秋月先輩の悪ふざけかな?神崎先生も何かノリノリみたいだけど…」

 

まぁ、カニ怪人と名乗る着ぐるみが、台本とか言ってましたし、普段の翔子先生ならアノ着ぐるみくらい簡単にやっつけちゃうでしょうし、計画的な演出だとは思うんですけど…。どうしたらいいですかね?

 

 

『一緒に歌おう』

 

 

え?花嵐何で今になって喋ったんですか?

 

「あ、あの…美緒さんこれって…」

 

「どうなってんのよ。あたし達何も聞いてないんだけど」

 

「えっと…これってどういう状況なんですか?」

 

「さすがにこれはこの学校の伝統行事ではないですよね?」

 

ああ…私達ですら困っているのに、Break Bellはもっと困りますよね…。

とりあえず結月達には、私達もこんな展開は知らない事、この後どうすればいいのかわからない事、もちろんこんな茶番が私達の学校の伝統行事ではない事は伝えました。

 

カニ怪人さんは『カーカッカッカニ』と、たまにむせながら笑いにくそうに笑ってますし、翔子先生は『助けてー』とか『トシキさーん』とか叫んでますし、血塗れ役の生徒さんはピクリとも動きませんし、ステージ上の私達には全くもってわからない展開ですし、めちゃくちゃカオスなんですけど。

 

そんな時、観客席から大きな叫び声が聞こえました。

 

「翔子がヤバイよー!助けてセバスマーン!!」

 

セバスマン?

声がした観客席へと目を向けると、『特別ゲスト』と書かれた腕章をしている美来さんが居た。

本当に何をやらされてるんですか?

 

そして、美来さんの声に反応するように、会場内に軽快な曲が流れ始め、ステージの床がパカッと開いて、ステージの下から人が飛び出して来ました。

だからいつの間にステージにこんなギミックが…。

 

 

「セバススプリング!!」

 

 

\\ワァー!キャー!//

 

 

ステージ下から飛び出して来た人が決めポーズをして名乗りを上げた。

え?何で観客席から歓声が聞こえてくるの?しこみなの?

 

そしてまたステージ下から人が飛び出して来た。

 

 

「セバスサマーだよ!」

 

 

\\キャァァ!可愛いぃぃぃ!//

 

 

そしてまた…

 

 

「セバスオータム!ですわ!!」

 

 

\\ブヒィィ!罵ってくださいぃぃぃ!//

 

 

え?何かセバスオータムの歓声だけ変じゃない?

そして、最後の1人はステージ下から飛び出してこず、ステージ袖から普通に歩いて登場してきた。

 

 

「セ、セバスウィンター…」

 

 

\\セバスウィンター!命乞いしてー!//

 

 

命乞いして!?そんな歓声ある!?

ステージ上には4人のセバスマンとやらが追加されました。

てか、この人達って…。

 

 

「あはは、春太さんおもしろー。後で店長に報告しよっと」

 

「さすが結衣さん胸の破壊力が凄いよね!あんなピチピチのスーツ着てるもんだから、すごく強調されちゃってるよ~」

 

「あ、あはは…秋月先輩も松岡先輩も何してるんだろう…」

 

「執事戦隊セバスマン?何で文化祭に…夏希は何か聞いてる?」

 

「ううん、私も何も聞いてないよ。まさかCanoro Feliceが出てくるとかホントびっくりだし」

 

「結月と夏希は何言ってんの?てか、何で夏希は聞いてる?とか結月から質問が出てくるわけ?」

 

「あら?あゆみは知らなかったのかしら?セバスマンはたまに夏希がバイトでやっている催し物よ」

 

え?そうなの?夏希のバイトって事は、夏希はCanoro Feliceとそれなりに面識はあるのかな?

 

「は!?そんなの聞いた事もないわよ!

って事は夏希はCanoro Feliceと親しいわけ?」

 

「いや、私はいつもセバスマンのスーツ着てるし、Canoro Feliceは私のバイト事は知らないんじゃないかな?私が一方的に知っているだけで」

 

ああ、そうなんだ。

 

「ま、まさかセバスマンがこんな所にやってくるとは~!やられたカニ~!」

 

え?は?

ただセバスマンが登場して名乗っただけで、カニ怪人とやらはクルクル回りながらステージ袖へと消えていきました。

 

 

-ドカーン!!!

 

 

そしてステージ袖から轟き響く謎の爆発音。

……ステージ袖から私達の方に結構強い風が流れてきたけど、本当に爆発した訳じゃないよね?

 

「今日もこの世界の平和は、俺たちセバスマンが守った!」

 

\\セバスマーン!カッコイー!//

 

何なのこの茶番。

ま、平和が守られたようで何よりです。

翔子先生も血塗れで倒れていた生徒さんも立ち上がって、『ありがとうございます。助かりました』とか言ってますし。

あの血塗れだった生徒さんは、どういう原理で助かったんでしょうか。何の説明もなく助かりましたが。

 

「…それでは世界を救った報酬として、この優勝旗と優勝メダルは私達が頂いて帰ります」

 

は?

 

「ちょ、ちょっと秋月先輩!それどういう事ですか!?」

 

「秋月先輩?私はセバスオータムですわ。

何の見返りも無しに世界を守る訳ないでしょう?」

 

見返り求めて世界守ってんの?

てか、本来守ってもらったりしてないし、ただ登場しただけじゃないですか。とんだ火事場ドロボーじゃん。

 

「春太さんヒドイ!店長に報告しよーと」

 

「ははは、俺は春太じゃないよ。セバススプリングさ。だけど、店長に報告はホント止めて…」

 

「どうやら皆様、納得いっていないようですわね」

 

「いや、納得いくとかどうとかの次元の話じゃ…」

 

「いいですわ!よろしい!!

では、これより私達セバスマンと、優勝バンドであるGlitter Melodyとでデュエルギグをしましょう!

勝った方が本当のライブ大会の優勝バンドですわ!」

 

なに理論それ。

てか、優勝決まってからの参戦とか、とんでもないシード枠じゃん。

 

せっかく優勝も出来て…。

この大会で悔しくも負けていったバンドの想いとかもあるのに…。

いくらCanoro Feliceの先輩方とはいえ、ちょっとムカついてきました。

 

「面白いですね!受けて立ちます!

私達が勝って優勝旗とメダルを取り返しますから!」

 

「え?面白そう。あたしも美緒に賛成」

 

「ちょっと…本当にCanoro Feliceとデュエルやるの?」

 

「私も美緒ちゃんと睦月ちゃんに賛成かな!こんな横暴許せないよ!」

 

 

 

「ま、マジで美緒さん達とCanoro Feliceでデュエルやんの?」

 

「へぇ~面白いじゃない」

 

「って事は私達が優勝してたら、私達とCanoro Feliceでデュエルだったのかな?」

 

「それより私達はいつまでステージに居たらいいのかしら?控え室に戻りたいのだけど」

 

 

そうして私達はCanoro Feliceとデュエルギグをする事になった。

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