バンやろ外伝 -another gig-   作:高瀬あきと

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第31話 グリメロちゃんの中身は…?

うわぁぁぁぁ、どうしよう…。

美緒は見た目に似合わず好戦的だし、恵美も普段は大人しいのに、理不尽な事や不条理を目にしちゃうと怒ってしまって手が付けられなくなるからぁ…。

…睦月は多分面白がってるだけだよね。

鼻歌歌いながらチューニングに没頭してる感じだし。

 

私の名前は藤川 麻衣。

Glitter Melodyでキーボードを担当している。

 

私達Glitter Melodyは近隣の高校で行われている合同文化祭。その文化祭で催されるライブ大会で優勝する事が出来た。

 

でも、優勝した直後の授賞式で事件が起きた。

 

授賞式の途中で何故かカニ怪人が現れ、

そのカニ怪人は優勝バンドに贈られる賞品を奪い、

そしてそこにやってきたセバスマン…中身はCanoro Feliceの人達なんだろうけど、

そのセバスマンがカニ怪人を倒し、

カニ怪人に奪われた賞品はセバスマンが報酬として奪い去ろうとしていた。

 

そして、優勝賞品…。

まぁ、本当なら私達的には賞品とかはどうでもいいんだけど、このライブ大会で優勝したという誇り。

このライブ大会で負けていったバンドの想い。

それらは奪われる訳にはいかない。

 

そういった事から私達は文句を言ってたんだけど、セバスマン達から出た言葉は『これより私達セバスマンと、優勝バンドであるGlitter Melodyとでデュエルギグをしましょう!』そんな言葉だった。

 

そんな事があったから、私達Glitter Melodyはこれからセバスマン…いや、Canoro Feliceの方達とデュエルをする事になった。

 

ちょっと時間が開いたから前回までのあらすじみたいな事を語っちゃいました。

 

もぉ~う!美緒も恵美も直情的になりすぎだよっ!

普通に考えたらわかるじゃん!

姫咲先輩は確かに面白がって色々やっちゃいそうだけど、春太先輩や松岡先輩が抑止力にもなってるだろうし、結衣先輩がこんな不条理を許す訳ないじゃん!

 

デュエルは本気でやるにしても、最終的には私達に勝ちを譲って、このライブ大会で優勝したバンドはさすがでした!って締めるだけでしょ!

だからCanoro Feliceじゃなく、セバスマンとしてのデュエルなんだろうし!

それより前に姫咲先輩はこの合同文化祭の企画者じゃん!こんな形でライブ大会終わっちゃったら、来年からの文化祭に支障出るじゃん!

 

…とか言っても。

今の美緒と恵美の耳には届かないんだろうなぁ…。

美緒は右手と左手の骨をボキボキいわせながら、Canoro Feliceのみんなを睨みつけてるし、恵美のドラムスティックを握りしめる手には、漫画でよく見るような怒ってる血管マークみたいなのが出てるし。

ドラムスティック折れちゃわない?大丈夫?

 

と、まぁ、色々とモノローグで語っちゃってる私だけど、さっきから実は気になってる事があるんだよね。

 

セバスマンの新キャラとして紹介された気持ち悪い色合いをしているセバスシーズンの事なんだよねぇ~。

Canoro Feliceの皆さんと一緒に居るって事は、中身はCanoro Feliceのチューナーである綾小路さんと予想出来る。

 

う~ん、やっぱりこれってエンカウンターデュエルなのかな?

私達にもチューナーであるグリメロちゃんはいるけど、いつも神出鬼没だし、美緒と恵美にしか懐いてないしなぁ。

 

私なんかひっかかれたりもしたし、睦月は『このヘタクソ!』って書かれたフリップで殴られたりしてるし…。

恵美にはたまに毛繕いとか膝枕してもらってるから、懐いててもしょうがないと思うけど、何で美緒にも懐いてるんだろう?

 

てかグリメロちゃんってただの着ぐるみだから、中身は人間なんだから、懐いてるって表現はおかしいをだろうけど。うぅ…実は私達Glitter Melodyのメンバーはグリメロちゃんの中の人が誰だか知っているだけに、頭も胃も痛い。中身は誰なのか知らないままで居たかった。

 

「ではデュエルを始めましょうか。時間も惜しいですしね」

 

私は姫咲先輩…セバスオータムの発言を聞いてハッとした。

うぅ…美緒も私達もあんまりエンカウンターデュエルに関しては、練習もしていないし、詳しくもないんだけど。

 

「上等です!さぁ、始めましょうか!」

 

「あたしも本気の本気でやりますからっ!」

 

「わぁ、美緒も恵美もやる気満々じゃん。面白くなりそう」

 

「睦月はお気楽だよね。私はさっきからお腹痛いよ」

 

「ん?あたしお気楽かな?どっちかと言うと美緒と恵美が回り見えてないだけじゃない?あ、もしかしてお腹痛いって天音とか、こないだのしーちゃんの真似?」

 

本当にお気楽でいいね、 睦月は。

 

「じゃあ、早速だけどキミ達もチューナーを呼んでもらえるかな?」

 

「そうそう。グリメロちゃん…だっけ?」

 

「そうですわね。貴女方もチューナーを連れて来てください。これはエンカウンターデュエルですので」

 

「っても、俺達もチューナーと練習とかしてねぇし、エンカウンターデュエルもどんなもんかわかってはねぇんだけどな」

 

「松お……セバスウィンター、黙りなさい」

 

あー、Canoro Feliceのみんなもエンカウンターデュエルは、よくわかってない感じかぁ。

って事は、やっぱり狙いは優勝賞品や私達とのデュエルじゃなくて、グリメロちゃんの正体の方かな?

 

まぁ、いきなり私達のチューナーをやりたいと言い出した人が、グリメロちゃんの中身だというのは、きっとファントムのみんなも気になってるよね。

私も正体を知った時は、何で私達のチューナーになりたかったのかわからなかったし。今もわかんないけど。

 

ずっと日奈子さん達SCARLETに匿われてて、音楽を自分でやる事を捨てて、チューナーになるべく手塚さんに鍛えられていた人。

もちろん私達は正体を明かされた日まで、誰も面識は……

 

 

「「「ぎゃあああああああ!!!」」」

 

 

わぁ!?ビックリした!!

 

私がモノローグでグリメロちゃんの事を考えていると、頭から血を流すタカさんと、腕が変な方向に曲がっている英治さんと、お腹を押さえながらゲホゲホ言ってる拓斗さんが転がりながら、ステージ上に投げ込まれてきた。

 

ちなみトシキさんはクルクルっと華麗に回転しながら、ステージに降り立ち『ビックリしたぁ、危なかったぁ』と言っていた。それを見た神原先生はうっとりとした目をしながら小声で『あぁ…カッコいいトシキさん、好き』とか言っていた。聞かなかった事にしよう。

 

「な、何でお兄さん達が…」

 

「汚ないですわね。私達の衣装にその赤い変な汁が付いたらどうしてくれるんですの?」

 

その直後だった。

 

「ハァ!ハァ!ハァ!」

 

と、荒い息をしながら、グリメロちゃんが四つん這いになり、手足を器用に動かしてステージに現れた。

目は大きく開かれ赤く光、口も大きく開かれヨダレを垂らしている。ヨダレがステージの床の上に落ちると、ジュッと焼けるような音がして、そこからは煙が出ていた。

本当に中身は人間なんだよね?

 

ステージの中央まで来たグリメロちゃんは、四つん這い状態から二足で立ち上がり、『グォォォォォォ!』と咆哮しだした。いったいグリメロちゃんは何を目指してるの?

 

でもまぁ、中身があの人だなんて、きっと誰に言っても信じ…「痛いっ!」

 

私がモノローグでグリメロちゃんの正体について考えていると、グリメロちゃんにフリップで叩かれた。

そして、そのフリップには『たとえモノローグでも我の正体を喋ったら…殺す』と書かれていた。

 

殺す!?『◯す』じゃなくて『殺す』ってしっかりと書かれている!何て恐ろしいの!?

今までこの物語では物騒な単語は、隠されていたというのに…!!

 

私はグリメロちゃんと初めて会った時の事を思い出していた。

 

 

 

 

 

「と、まぁ、お前らをSCARLET(ここ)に呼んだのは他でもない。本人たっての希望で、Glitter Melodyのチューナーになりたいって申し出があってな」

 

手塚さんはそう言って私達にグリメロちゃんの中の人を紹介してくれた。

 

私達はとても驚いた。

その人は私達も名前は聞いた事のある人だったから。

 

本当は自分から時がくれば、ファントムのみんなの前に姿を現すつもりだったらしい。

だけど、クリムゾンエンターテイメントの創始者である海原が動き出し、それに呼応するかのように、かつての四天王である足立も暗躍を始めた。

 

そして、私達の元のお話であるバンドやろうぜ!のバンドであるアヴァロンと、クリムゾンミュージックの戦いも佳境を迎えている。という時期のお話。

 

グリメロちゃんの中の人は、早くファントムのメンバーと合流すべきだと思っていたけど、まだみんなの前に姿を現す"その時"を迎えるには早いらしい。

そこで悩んでいた時に、私達Glitter Melodyがチューナーを着ぐるみにするという事になった事を耳にした。

 

元々、ファントムのメンバーの前に姿を現す時には、私達のチューナーとして活動するつもりでいたみたいで、私達が着ぐるみをチューナーにするという事は朗報だったようだ。

 

だけど、私達のチューナーをやるには『正体は自分から明かす時まで知らないふりをする事』という約束が交わされた。

 

「それで私達には正体を明かしたって事ですか?知らないふりなんて嫌です。私は…言ってあげたい」

 

私達は正体を秘密にする事は断った。

だけど、グリメロちゃんの話を聞いて、これまでの辛かった日々の事も聞かされて、私達は承諾した。

 

それでも美緒は最後まで正体を隠すのには反対していた。

昔の理奈さんの写真を取引に出されても、最近の理奈さんだけを編集した動画を取引に出されても…。

 

結局は美緒が出した条件。

 

「もし正体を明かせる日がきたら…誰よりも何よりも、1番にあの人に会いに行って下さい」

 

それが約束されて、そしてちゃっかり理奈さんの写真と動画も貰って、グリメロちゃんは私達のチューナーになった。

 

 

 

 

「グォォォォォォ!!」

 

おっと、私が回想なんか挟んでる間にグリメロちゃんがまた咆哮しちゃってるよ。

 

-サッ

『まだあんた達にはエンカウンターデュエルは早い』

 

グリメロちゃんは咆哮しながら、そんなフリップを出した。

 

「私達には早い…?まぁ、確かに私達Canoro フェリ……セバスマンもチューナーとの演奏は練習もしておりませんが、何事も経験。やってみても良いではありませんか」

 

-サッ

『黙れわがままお嬢様』

 

「わ、私がわがままですってぇ~!?(ギリッ」

 

おお…グリメロちゃんもなかなか言うね。

でも姫咲先輩、後ろで一瀬さんも結衣さんも松岡先輩もめちゃくちゃ頷いてますよ。

綾小路先輩に至っては涙を流しながら拍手してますし。

 

「まぁ…グリメロちゃんが何を仰いましょうが、これからエンカウンターデュエルを私達と、Glitter Melodyでやる事には変わりありません。それにステージ上では私がルールです」

 

ステージ上では私がルールって…。

姫咲先輩もやっぱりめちゃくちゃ言うなぁ。

 

-サッ

『でもチューナーがいない事にはエンカウンターデュエルは出来ないだろう?』

 

「は?何を仰ってんですの?Glitter Melodyにはあなたが、私達にはセバスシーズンが…」

 

姫咲先輩がそこまで言った直後。

グリメロちゃんは猛スピードで綾小路先輩の前まで行き、『バコォォォン!』と書かれたフリップで、綾小路先輩を殴りつけた。

 

「ちょ、早っ!?えぇぇぇぇぇぇぇ!!?」

 

グリメロちゃんのフリップに殴られた綾小路先輩は、そのまま会場の外へと飛んで行ってしまった。

 

『グォォォォォォ!!』

 

そしてグリメロちゃんは勝利の雄叫びをあげた。

ははは…何これ…。

 

「セ、セバスシーズンが一撃で…?」

 

「う、嘘でしょ…?ずっと澄香さんに鍛えられていたセバスシーズンを…」

 

「うわぁ、しっきー…じゃなかった。セバスシーズン大丈夫かなぁ?」

 

「つ、次は俺の番とかないよな…?」

 

あー、本当に何なんだろう、この流れ。

綾小路先輩はどっかに飛ばされちゃったから、エンカウンターデュエルは出来ないだろうし、デュエルしないのなら、優勝賞品を取り返す方法もまた考えなきゃいけないし。

 

「私達は控え室に戻りましょうか」

 

「え?ああ…うん、あたしらが居てもって気もするしね」

 

「あ~、まぁこうなっちゃうとね。私はCanoro FeliceとGlitter Melodyの生デュエルを近くで観たかった気持ちもあるんだけど」

 

「琴子も結月も何を言ってるのよ!せっかく拓斗さんと同じステージに立てた貴重な時間なのに!」

 

そういや、決勝からの流れでBreak Bellもまだステージに居るんだっけ。ごめんね、巻き込んじゃって。

 

「えっと…私達はどうしたらいいんだろ?」

 

「もうセバスマンとはデュエルしない感じ?」

 

「エンカウンターデュエルじゃなくなっただけでしょ。セバスマンとのデュエルはするんじゃない?このままでは私の腹の虫もおさまりませんし」

 

美緒は本当に好戦的だなぁ…。

 

-サッ

『ここは我が採点しよう。さぁ、デュエルをするのだ』

 

え?グリメロちゃんが採点するの?

 

-サッ

『忖度なしに採点をする。デュエルは1発勝負!さぁやるのだ』

 

「グリメロちゃんが言うならしょうがありませんね。さぁ、デュエルをしましょう」

 

「だね。やろ、デュエル」

 

美緒も睦月もやる気満々かぁ。

 

「私も準備オッケーです!」

 

あ、恵美もだ。ドラムの前に座っちゃったし。

 

「どうする姫咲。元々エンカウンターデュエルは、負けて滞りなく終らせるつもりだったでしょ?グリメロちゃんの正体を知る事が主な目的だったんだし」

 

「そうだよね。元々負ける予定だったから、私もこの企画に賛同した訳だし」

 

「忖度なしでグリメロちゃんが採点するのなら、手を抜いた演奏でもしねぇと、勝っちまう可能性もあるだろ?だからってオーディエンスやこいつらの前で手を抜いた演奏をする訳にもよ」

 

「今、必死で考えてますから黙って下さい。この状況で上手く場をおさめる方法は…うぅぅぅん…」

 

ああ、Canoro Feliceのみんなも困ってるね。

そりゃそうだよね。

てか、グリメロちゃんの正体が知りたいだけなら、SCARLETの投資者である秋月グループの力を使って、姫咲先輩だけで聞き出せば良かったのに。

変に頭が回るし嫌がらせが大好きだから、こういった単純な事は思いつかないのかな?

 

今、姫咲先輩にめちゃくちゃ睨まれたんだけど何で?

 

「詰みましたわね。やむを得ません、全力でデュエルをやりましょう。もし勝ってしまったら、その時に考えますわ。ただ、全力でやって負けるのは癪にさわりますので、必ず勝ちますわよ」

 

「しょうがない…か」

 

「まぁ 負けた方がいいんだろうけど、やっぱり本気でやるなら勝ちたいよね」

 

「相手はGlitter Melodyだからな。全力でやっても勝てねぇかも知れねぇが…やるか」

 

 

そうして私達Glitter MelodyとCanoro Felice…セバスマンとのデュエルが始まった。

 

 

 

♪~

♪♪~

♪♪♪~

 

 

 

「ハァ…ハァ…ど、どんなもんですか」

 

「ハァ…さ、さすがGlitter Melodyだね…ハァ…ハァ」

 

私達のデュエルが終わった。

と、言っても1曲だけなんだけど…。

今の演奏は私から見ると…Canoro Feliceはデュエルをしなれていないのもあるだろうから、どっちの勝ちかはグリメロちゃんが採点を出すまでわからない。

私達としてもやりきったって気持ちはある。

 

でも、これまでのライブ大会での演奏や、さっきのBreak Bellとデュエルした時の演奏と比べたら、全然ダメダメだったと思う。

 

グリメロちゃんは腕組みをしながら、動くことなくジッとしている。

どっちの勝ちなんだろう?

 

 

 

-サッ

『勝者はっ!!Glitter Melody!!!』

 

 

 

「や、やった…勝てた」

 

「う~ん…あたし的にはちょっと不完全燃焼かも?」

 

「良かった…みんなの想いも無駄にならなかった…」

 

「私達の勝ち…かぁ。でも、何となくだけど…私もさっきの演奏はダメだったなぁ…って思うんだけど」

 

グリメロちゃんの採点結果は私達の勝ち。

元々私達の勝ちで終らせる予定だったんだろうし、結果的には良かったと思うんだけど…。

 

「俺達の負け…か。あはは、勝つつもりでやったんだけど」

 

「結果的に良かったと思うけど…うぅ、やっぱり気持ち的には複雑かも」

 

「だってよ、セバスオータム。俺達全力でやったのに負けちまったな」

 

「わかってますわよ。結果オーライと言えばそれまでですが、私達は全力でやってGlitter Melodyに勝てませんでした。正直、悔しいですわね…」

 

う~ん、やっぱり悔しいなぁ…。出来れば勝ちたかった。優勝賞品はこれから姫咲先輩が何だかんだ言って、私達の元に返ってくるんだろうけど、スッキリしない終わり方になっちゃったよね。

 

-サッ

『演奏の腕で単純に言えば、Glitter Melodyとセバスマンにはそんなに差がなかったと思う』

 

-カキカキ

 

-サッ

『ただ経験の差。Glitter Melodyはデュエル馴れもしているしね』

 

-カキカキ

 

-サッ

『それにそもそもこのデュエルへの想いの強さもGlitter Melodyが上だった』

 

-カキカキ

 

言葉数が多いもんだからグリメロちゃんも、フリップを出すまでの時間がかかり過ぎちゃってる。

こういう時、喋っちゃいけないって不便だよね。

 

「もういい加減喋ればいいだろうに」

 

「本当にめんどくさい奴だな。こんな奴昔の俺達の仲間に居たっけ?」

 

「はーちゃんもえーちゃんも…何か事情があるんだろうし」

 

「トシキ、お前は殴られてねぇからいいかも知れんが、俺達はその事情ってやつで謂れのない暴力をうけてんだよ」

 

グリメロちゃんがフリップに一生懸命文字を書いていると、ステージの端っこで転がっていたBREEZEの方達が、起き上がって私達の近くへと歩いてきた。

 

「拓斗はそう言っているが、実はなタカ。

俺…腕が変な方向に曲がるくらいボコられた訳だが…気持ち良かったんだ」

 

「あ?お前変態だっけ?あ、変態だったな。うっかりしてたわ。だが、俺ももう1回くらいなら殴られてみたいと思ったのは事実だ」

 

「え?そうなの?宮ちゃんも?」

 

「俺をあの変態どもと一緒にすんな。俺はただ痛かっただけだ。2度と殴られたくもねぇ」

 

英治さんもタカさんも殴られ過ぎておかしくなっちゃったのかなぁ?

でも、今はあんまりこの人達に出てきて欲しくないんだけどなぁ。自分で音楽やってない時は理屈だけでごちゃごちゃ言う困ったおじさん達だし。

 

「まぁグリメロちゃんの言いたい事ってのはアレだろ」

 

「そうだな。Glitter Melodyとセバスマンとの差は、経験の差ってのは大きいと思うぜ」

 

「そうだね。それにGlitter Melodyには負けられない想いもあった」

 

「つまり、本気で演奏はしたんだろうが、本気で勝つ気迫がGlitter Melodyの方が上だったって事だ」

 

ほらめんどくさい。

タカさんに至っては、説明がめんどくさいのか『アレだろ』とか言っちゃって終らせてるし、英治さんやトシキさん、拓斗さんに至ってはグリメロちゃんが言った事を回りくどく言い換えただけだし。

 

それなのに!なんで美緒はうっとりした表情でタカさんを見詰めてるの!?うっとりする要素あった!?

神崎先生は何でグリメロちゃんのフリップに『カッコいい!好き!』とか書いてるの!?

トシキさんそんなカッコいい事言った!?

 

「お兄さん…はい。お兄さんの言う通りです。私はモンブラン栗田のおじいさんにIrisベースを託されて、ライブ大会にも優勝して、モノローグの出番も多くなって…、私は今この場に立つミュージシャンとして、こんな理不尽には負けたくない!そう思って歌いました」

 

何でタカさんの前だからって美緒はそんなしおらしくなってんの!?タカさんの言う通りって何!?『アレだろ』しか言ってないよ!?

それにモノローグの出番が多くなってって何!?

確かに最近多かったけど自覚してたの!?

 

「それにこんな理不尽な横暴。いくらあの我が儘お嬢様でも、何か裏がない限りはやらないだろうしな。美緒ちゃんも本当は気付いてろ?あいつがやるからには変な狙いがあるんだろうなって」

 

「お兄さん…。はい、実は…気付いてました」

 

いやいやいや!今、美緒嘘ついたでしょ!?

絶対気付いてなかったじゃん!めちゃくちゃ怒ってたじゃん!

 

「さすが美緒ちゃん。私は全然気付いてなかったよ。本気で怒っちゃってた」

 

「ははは、でも俺は恵美ちゃんのそんな所はいい所だと思ってるぜ?素直で可愛いしよ」

 

「もう!英ちゃんも!そんな風に言ったら恵美ちゃんが余計に気にしちゃうでしょ!」

 

「そういや睦月は最初から気付いてたんだろ?お前はデュエルにノリノリだったしな」

 

「うん。まぁ、こんな茶番、本当に酷いことなら春太さんや結衣さんはやらないだろうし。松岡先輩は姫咲先輩にほだされてやっちゃうかもだけど」

 

まぁ、これで解決なのかな?

グリメロちゃんがまだ長々と何か書いてるみたいだけど。

 

……セバスマンのみんなはどうするんだろう?

このまま退場ってなると、ただ虚しいだけだろうし。

 

「結局何もかもが失敗か。エンカウンターデュエルも出来なかったし」

 

「うん…そだね。これじゃ来年からは、男子生徒も参加可能にしてほしいって理事長さんにも頼み辛いし」

 

「グリメロちゃんの中の人ってのもわからず終いだしな。本当にどうすんだセバスオータム」

 

「セバスウィンター、黙りなさい。

確かにこのままではセバスシーズンの尊い犠牲も無駄になりますし、全力で演奏したのに私達は負けたと、辛い現実だけが残りますものね。まどかさんが連れてこられている園児の皆さんも、憧れのセバスマンが負けたという悲しみを背負う事になるでしょうし」

 

「いや、園児達の方チラッと見たけど、割と盛り上がってんぞ?見なかった事にしといてやりたかったが、俺達セバスマンが負けて悔しそうに泣いてるのって、美来さんだけだしよ」

 

でも本当にモヤモヤしちゃう終わりになっちゃったよね。姫咲先輩ももっと上手くやれば良かったのに。

まぁ、グリメロちゃんが綾小路先輩をぶっ飛ばして、エンカウンターデュエルが出来なくなるなんて、予測なんか出来ないか。

 

私がそんな事をモヤモヤと考えていると、グリメロちゃんがステージの前へと歩いていった。

 

-サッ

『みんなー!この余興は楽しめたかな?

これはこの学校と商店街との協力による特別ショーでした!』

 

-サッ

『そしてこの後はまだライブ大会の3位決定戦が残っているのですが!』

 

-サッ

『この特別ショーはまだまだ続きます!』

 

-サッ

『それでは!続きましてはCanoro Feliceによるライブ演奏です!皆さん是非楽しんで下さい!』

 

「お、俺達Canoro Feliceの演奏?」

 

「え?え?え?私達演奏していいの?」

 

「なるほど、さっきのはショーとしての俺達が登場する余興。本命はCanoro Feliceの演奏って事か。オーディエンスや周りには、これら全て含めてライブ大会の特別ショーって事にするわけか」

 

「自然な流れで私達の演奏へと導き、そして先程までの茶番を余興のショーとしてプログラムするなんて…。本当にグリメロちゃんの中の人は何者ですの…?」

 

姫咲先輩も茶番って言っちゃってるよ。

でもさすがグリメロちゃん。

場馴れもしてるし、今の説明なら自然にライブ大会の3位決定戦までの余興って事に出来るだろうし。

 

でも問題は…。

 

-シーン…

 

-サッ

『あ、あれ?オーディエンスが盛り上がってない…?』

 

「そりゃそうだろ。そんな小さいフリップに長文を書いても、オーディエンスは読めないだろうし。だから喋ればいいのにって…」

 

そうなんだよね。ステージ上に居る私達がやっと読めるって程度の文字だし。

ステージ下に居るオーディエンスには何が書いてるのかわからないよね…。

 

『キシャァァァァァァ!!』

 

タカさんの言葉にグリメロちゃんが怒り、タカさんをボコボコに殴りながら、グリメロちゃんとタカさん達はステージ袖へと消えていった。

 

その後、神崎先生がオーディエンスに、先程のグリメロちゃんのフリップに書かれていた事を宣言し、オーディエンスは大盛り上がり。Canoro Feliceは余興ライブを演奏する事になった。

 

そして意外と抜け目がないのが松岡先輩だ。

春太先輩がメンバー紹介をした時、松岡先輩は学校名と学年と名前を名乗り、『男子生徒でもこんなスゲーえ?出来るんです!聞いて下さい!』と、アピールしてした。

 

正直いつものまでの先輩らしくないと思うけど、松岡先輩もこれからのライブ大会の為に、後輩達のためにやりきったんだなって思った。

まぁ、恥ずかしかったのか、演奏中ずっと顔は耳まで真っ赤だったけどね。

 

Canoro Feliceの演奏終了後、セバスオータムから正体を明かした姫咲先輩より、私達Glitter Melodyへ優勝賞品の授与式が行われた。

姫咲先輩もここで機転をきかせたんだらうね。

『合同文化祭主催者として、授与式を行います』

と、案内してから、授与式へ移行したのだ。

 

本当にとんだ茶番だったよね~…。

久しぶりの更新だというのに、こんなお話とは…。

 

そして、この後、ライブ大会の3位決定戦。

AmaterasuとDaedal Luvのデュエルが始まるのだった。

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