バンやろ外伝 -another gig-   作:高瀬あきと

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第32話 3位決定戦

\\ワァー!キャー!//

 

『お待たせしました!それではライブ大会3位決定戦を開始します!

長かったライブ大会のデュエルギグもこれで最後!

勝つのはDaedal Luvか!?それともAmaterasuか!?』

 

「ん?てか何なんこのアナウンス?今までもさっきの決勝でもこんなアナウンスなかったよね?」

 

「真凜さん、あんまりそういうのは思ってても言わない方が…」

 

「うお~…、さんいけって~せんかー。さっきのじゅんけっしょー戦もたのしかったしー。……やっぱAmaterasuさいこ~」

 

「天音。"勝つつもり"…ではないのはわかっていますが、"楽しんで勝つ"って事は生半可なライブでは叶いませんわよ」

 

「うん、わかってるよ。ありがとう。私の我が儘を聞いてくれて」

 

「我が儘だとかは思っていませんわ。Amaterasuのバンマスは天音ですし、天音の音楽に着いていくと決めたのはわたくし達なのですから」

 

 

わたくしの名前は鶴木 涼風。

Amaterasuというバンドのキーボードを担当しています。

今、これからライブ大会の3位決定戦を行うわけですが、ここまで来るまでたくさんの事がありました。

 

わたくし達はまだ高校1年生。

わたくし達が出会ってから、まだ半年程しか経っていないというのに、さまざまな事件や争い、想いのぶつけ合いもありました。

そんな事もあってわたくし達Amaterasuは強い絆で結ばれ、今、一緒にバンドをやっているんだと思います。

 

このライブ大会。

わたくし達は優勝したいと意気込み、優勝するという気持ちでいましたが、やはり厳しい世界。

 

わたくし達は初めてのライブ大会で、初めてオーディエンスの前で勝利を勝ち取りましたが、初めてオーディエンスの前で敗北というものも覚えました。

 

初めてだらけのぽっと出のバンドですが、わたくしはAmaterasuが最高峰のバンドだと思っています。だから、これからは負ける訳にはいかない。

優勝こそは逃し、準決勝で敗れてしまった為、準優勝すらできなくなりましたが、せめて3位くらいは…と、思っていたのですが、先程、天音がわたくし達の前で言いました。

 

 

 

 

「あ、あの…みんな急に集まってくれて…その、ごめんね」

 

「そんな謝る事なんてないよ。天音さんが集まってって声を掛けてくれたら、私はすぐに駆け付けるよ」

 

「そうだし!あまねるはあたしらのバンマスだし、あたしらはAmaterasuだし!Amaterasuはみんなの為に、みんなはAmaterasuの為にみたいな?

あれ?うーん、思ったまま言ったけど何か違う?」

 

「まりんの言いたいこともなんとなくわかりみ~。

さっきのあまねは泣きそうになりながらどっか行ったけどー。ちょい心配はしたけどさ…あたしはあまねと一緒にいるの楽しいから何でもよき~」

 

「わたくしも蘭と概ね同じ意見ですわね。火の中でしょうが水の中でしょうが、草の中でしょうが森の中や土の中、雲の中や天音のスカートの中でしょうが、駆け付けてみせますわ」

 

「あの…涼風ちゃん、それ大丈夫?」

 

「あまねるのスカートの中なら呼ばれなくても、スズは飛び込んで行きそうだしね!」

 

「そんでそんで?あまねは何であたしらを集めたの~?」

 

「あ…えっと…その…。今みんなは『このチンチクリンさっき泣きながら逃げて行ったのに、何みんなを集めてんの?』とか草生えるとか思ってるとは思うんだけど…」

 

安心してください、天音。

わたくしは一切そんな事は思っていませんわ。ここに居るメンバーも当然。

 

…ですが、泣いている天音なんてスーパーレアですのに!わたくしは咄嗟のあまり写真を撮る事が出来ませんでしたわ!

 

もし、本当に悪いと思っているのなら、泣き顔をわたくしの天音コレクションに加えたいので、もう1度泣いてみせて下さい。動画で撮りますので。

 

「もう!天音さん、ネガティブ過ぎだよ!私達がそんな事思う訳ないじゃない!…それに、私もさっき…悔しくてちょっと泣きそうだったし…」

 

「あー、てるみは今にも泣きだしそうだったよねー。

あたしはさっきたのしかったし、ばぁばの妹ばぁばから、負けてわかることもあるって言われてたから、泣くまではなかったかなー。

でも負けても何がわかるのかわかってないけどー」

 

「あたしも悔しい!って気持ちあったし?あまねるの気持ちは何となくわかるよ?

まぁ、あたしは泣くまではないけど、これからはぜってぇ負けねぇ!って思えたから…何かこれはこれで良かったんじゃね?って思ってる。

あー…何か言葉にすんの難しいし、こ~いうのはパスパス!」

 

「わたくしは…そうですわね。負けは負け。勝てる事もあれば負ける事も当然あるでしょう。

まぁ、相手はGlitter Melodyでしたしね。悔しいという気持ちはもちろんありますが、相手が相手でしたからしょうがないとも思ってます。

だからって天音が泣いた事を咎めるつもりもありませんわよ」

 

さすがにもう1回泣き顔を見せてくれません?ちゃんと録画しますので!ハァハァ。とは言えませんでした。

 

「あの…ありがとう…。あのね…!」

 

天音からの話はわたくし達に、少なからず心に響いたと思います。

『楽しんで演奏をしよう』そして『オーディエンスのみんなにも楽しんでもらおう』それが『私達のやりたかった音楽だと想うから』

 

わたくし達がAmaterasuを始めたきっかけ。

天音は歌を好きだという事を思い出すため。

真凜は目立ちたいため。

蘭はつまらなかった毎日を面白くするため。

輝美は憧れの人に追い付くため。

わたくしは…下世話なお話ですがお金のため。

 

各々がバンドをやるきっかけというか、決め手は全然違いました。そのせいでたくさんの軋轢や相違が起こって、喧嘩や言い合い、最悪の時はバンドを解散しようという所まで仲違いもしました。

 

ですが…結局わたくし達はAmaterasuが好きで、音楽が好きで…誰にも負けたくないという想いは一緒で。

今、Amaterasuとしてわたくし達は一緒に居る訳です。

 

…誰にも負けたくない。

その想いだけでバンドをやっていたせいで、負けない為の、勝つ為の音楽にこだわり過ぎて、楽しんで音楽をやるという事まで、手を回せていなかったのですね。

 

それが、天音がGlitter Melodyに負けて、結月と話して、導きだした答えで、わたくし達に伝えてくれました。

天音自身もそういった想いで歌っていたから。

 

わたくし達はこれまでの演奏では、

勝たなければ目立たない。

勝たなければ面白くない。

勝たなければ憧れの人に追い付けない。

勝たなければ…まぁ、稼ぎにもなりませんし。

 

そういう想いだけで演奏していましたのね。

でも、そういった想いを天音は払拭して、わたくし達を楽しんで音楽をやるように導いてくれました。

 

わたくし達が"勝つため"にやる音楽も、わたくし達の"やりたい想いを遂げるため"の音楽でもダメだったのです。

"わたくし達がやりたい"音楽を、"オーディエンスと一緒に楽しむ"という、言葉にする事は簡単でも、実際にするとなると過酷な音楽。

 

ですが、そのおかげでわたくし達は…。

 

射手座のレガリアのチカラは輝星。

明るい元にみんなを導く道を照らす。そんなチカラ。

 

天音は立派に射手座のレガリアの後継者としての、責務を自然とやってのけるようになってましたのね。

まだまだ小さな星の輝きで、夜の太陽には及びませんが…。

 

 

 

 

「いいですこと?Daedal Luvはオリジナル曲が苦手ですが、コピー曲の演奏はこのライブ大会に参加したバンドの中でも抜き出た演奏力を持っています。おそらくオリジナル曲では挑んできません。最初から全力でやらないと負け確ですわ。まぁ、わたくしがある程度はサポートしますけども」

 

「え?さっきまでの話は何だったん?もち勝ちたいって気持ちはあるけど、楽しんでやったらいんじゃね?」

 

「あの…真凜ちゃん…スズちゃんの言いたい事って、負けないように楽しんで全力でやろうって事じゃないかな?そうじゃないとお客様にも私達の楽しいが伝わらないだろうし」

 

「そ、そうだよね。どっちにしろ楽しんでライブやりたいんだし…失敗して後悔しないようにって意味じゃないかな?」

 

「あたしももち勝ちたいけどー。楽しんでってだけなら、真凜がミスってテンパるのも見てて面白いし」

 

「え?あたしがおかしいの?てか、らんらんも何言ってんだし!あたしがミスる訳ないし」

 

ハァ…真凜はやっぱりおバカですわね。

さっきの意気込みも真凜に"だけ"向けた言葉でしたのに。楽しい楽しいと口で言ってても、真凜は些細なミスでもしたらいつも気にして、落ち込んでますのに。

鬱陶しいだけですし、いつも見て見ぬ振りをしてますけどね。

 

「まぁ、真凜は放っておいて。

先程のGlitter Melodyとのデュエルでは3曲目にカバー曲をしたおかげで、5曲しか持ち合わせていないわたくし達も残りの3曲で勝負できますわ」

 

そう。わたくし達Amaterasuもまだ結成して数ヶ月。

天音の歌詞のストックも、わたくしの曲のストックもまだあるにはありますが、合わせて1曲の音楽にする。その曲を練習して、ライブで披露出来るレベルに昇華する。

 

そういった意味では時間も技術も全然足りていません。

完成出来た5曲でライブ大会を勝ち抜ける必要がありました。

 

これまでの予選や本戦で披露したのは4曲。

日を変えればオーディエンスも変わるでしょうし、審査員の印象も変わるでしょう。

これまでのデュエルはその4曲とコピー曲だけで戦ってきました。

 

予選や本戦では披露した曲ですが、3位決定戦ではわたくし達のオリジナル曲から、先程のGlitter Melodyとのデュエルで披露しなかった2曲。

そして、本来なら先程のGlitter Melodyとの最後のデュエルで使う予定だった。今日まで披露する事なく温存していたオリジナル曲の1曲。その3曲を演奏する事に決めていました。

 

「Daedal Luvのコピー曲は有名所を押さえてますし、認知度では負けていますわ。だから全力で楽しみましょう。わたくし達とオーディエンスの皆様も一緒に」

 

わたくしは"負け確"、"全力で"と言葉を選び、"勝ちましょう"とだけは言わないように激励しました。

きっと"勝つ"という言葉は、わたくし達にはAmaterasuには意味はないから。

 

「あ、あの…ごめん。急に…なんだけど。

私も全力で楽しんで歌いたい。…だから、ずっとやってみたかった事なんだけど…やってみてもいいかな?」

 

「「「やってみたかった事?」」」

 

これから1曲目を披露するというのにこの直前で?

今までの天音からはこんな提案を直前にするなんて、想像もしていませんでしたが、ステージに立って何か想う事があったのでしょうか?

 

わたくしと真凜と輝美は驚きましたが蘭は、

 

「やってみたいってんならやってみたらいいじゃん。あたしはあまねのやりたいって事を見てみたい」

 

「うん、ありがとう」

 

そう言って定位置へと歩いていきました。

 

 

-パッ

 

 

先程まで暗かったステージにライトの明かりが降り注がれました。

眩しいという想いはほんの一瞬。

わたくしは勝つという気持ちだけで、オーディエンスに今までは目を向けきれていなかったのでしょう。

 

もちろん、今までもオーディエンスの多さには驚く事もありました。

ですが、改めてたくさんのオーディエンスの方々を目にした時、とてつもない強敵のようにも見え、とても頼りになる仲間にも見えました。

 

わたくし達次第で敵にも味方にもなる存在。

だったら、わたくし達の味方になっていただけるように、わたくし達の演奏を届けるだけです。

 

 

♪~

 

 

「「「「!?」」」」

 

ステージが照明に照らされた直後、Daedal Luvの演奏が始まりました。

 

この曲は…正直聞いた事はありませんわね…。

わたくしもそんなにテレビやSNSでスポットされている音楽に詳しい訳ではありませんが、Amaterasuを始めてからは、ある程度有名な曲を耳にすれば、しっかりと調べて聞くようには心掛けていましたのに。

 

Daedal Luvの演奏はロックを感じさせるような曲調と思いきや、急にポップスになるようなユニークさを持ち合わせ、その曲自体に引き込まれるような、そんな音楽を感じました。こんな引き込まれれるような曲なら聞き覚えもあると思うのですが…。

 

「えへへ、私達Daedal Luvのオリジナル曲です!聞いて下さい♪」

 

オリジナル曲ですって!?

そんな、何でこの3位決定戦で…。

 

Song by Soul(ソングバイソウル)!」

 

ボーカリスト、確か赤羽 杏奈さんと仰いましたか。

彼女がタイトルコールをした後、急に演奏が止み…

 

「@>=&%$#!((:&=>?[*+%…!!」

 

-ゾクッ

 

わたくしが圧巻してしまうほどのデスボイスでのシャウト。

きっとちゃんと歌詞はあるのでしょうが、歌詞を聞き取れない程の声量で、まるで演奏に合わせて叫んでいるかのような壮絶な叫び。

さっきの可愛らしい『聞いて下さい♪』からは、想像も出来ない程の戦慄でした。

 

そしてそのデスボイスでのシャウトが終わってからの、まるで世界を反転させたかのような曲調と、優しい歌声。

 

これは…一気に会場の雰囲気を持っていかれましたわ。

 

「すずか!」

 

「ハッ!?」

 

わたくしは蘭のわたくしを呼ぶ声でやっと現実に戻ってきた気がしました。

そうですわね。Daedal Luvの音楽に気圧されしている場合ではありませんでしたわ。

 

見るといつも余裕な顔…というか無表情でのほほんとしている蘭でさえ焦っている様子。

案の定、真凜はあたふたしていますし、輝美はどうしようか迷っているようで、ドラムを叩く事すらしていませんでした。

わたくしも演奏を開始する心の余裕がありませんでしたが…。

 

ですが、天音だけはこのステージで1人落ち着いている様子でした。

Daedal Luvの曲が演奏されている中、いつものようにマイクスタンドの前に立っていました。

 

そして天音はそのマイクスタンドからマイクを外して…。

マイクをマイクスタンドから外して!?

今までの天音はマイクスタンドを前でパフォーマンスしながら歌うスタンスを取っていました。

その天音がまさか自分でマイクを手に持つとは…。

 

もしかしてこれが天音のやってみたかった事?

 

「スゥ~……Amaterasuです。聞いて下さい!『巡り愛』!」

 

-ゾグゾクゾクッ

 

わたくし達が演奏を始める前に、天音はタイトルをコールし、歌い出しました。

今までの天音には感じた事のないような力強さ。

今までの天音の歌声は繊細で透き通った歌声をしていました。

 

先程のGlitter Melodyとのデュエルでも、天音の歌声には力強さを感じていましたが、今の天音の歌声は、透き通った声色で、そして会場の隅まで響くように力強く、それなのにとても繊細で優しさまでを感じさせられる歌声でした。

 

マイクを力いっぱい握りしめ、そして体全体を使うように大きくパフォーマンスをし、ステージ上を目一杯動きながら歌っていました。

それこそ…忌々しくて思い出したくもありませんでしたが、BREEZEの時のタカさんのような動きとパフォーマンスで。

 

スタジオで練習していた時は、動きながら歌うのは苦手と仰っていましたのに、今は完璧に、いえ、天音が『こんな風に歌えるようになりたいな』と仰っていた理想の通りに。

 

あ、ちょっとモノローグが長くなってしまいましたが、もちろんわたくし達も演奏を開始しています。

天音がタイトルコールをし、歌い出した直後、輝美がドラムを叩き、わたくしが音の抑揚を紡ぎ、それに合わせるように蘭がリズムを取り、そして真凜がメロディーを奏でました。

 

このままじゃ負けるだとか、これなら勝てるだとか、そういった想いも少なからずありましたが、何よりもAmaterasuの音楽がとてもとても楽しくて…。

わたくしは夢中でキーボードを弾きました。

こんな気持ちで弾いたのは…いつ以来でしょうか。

 

 

♪~

♪♪~

♪♪♪~

 

 

1曲目が終わり、2曲目のデュエル。

Daedal Luvに上手く演奏できるオリジナルはもうないのか、2曲目はコピー曲、わたくし達はもちろんオリジナル曲で挑みました。

 

2曲目でも天音は目一杯のパフォーマンスを披露し、オーディエンスもステージも、全てを味方につけたような。そんな圧巻する音楽を歌いました。

 

 

♪~

♪♪~

♪♪♪~

 

 

「すげぇ、すっげぇじゃんあまねる!あたし今めちゃくちゃ楽しんでギター弾いてる!」

 

「あたしもたのしー。ちょーさいこー」

 

「私も!最初は不安だったけど、天音さんの歌声に引き込まれて…楽しくて夢中でドラム叩いてたよ!」

 

「わたくしもですわ。こんなに楽しいって思ったのは久しぶりです」

 

「よ、良かった。私も今すごく楽しくて。その…動きながら歌うのちょっと苦手だったんだけど、オーディエンスに、みんなに私の歌を届けたいなら、もっとステージを思いっきり使わないとって思って…。そしたら、苦手ってよりも、もっとみんなに歌を届けたいって思うようになって…ああ、これがステージから見える景色なんだって、すごく景色が輝いてるなって思って」

 

なるほど。何となく天音の歌の質が進化したのが、今わかりましたわ。

天音は自分に自信がなく、歌を届けるという事は不得手でした。

 

ですから自分の殻の中でだけ歌っていて、それがこじんまりとしていましたのね。

そして、先程のGlitter Melodyとのデュエルの敗北で、何かを感じて、自分の中で足りなかったものを感じて、今『やってみたかった事』、憧れのタカさんのように歌ってみる事。それをして自分の殻を破ってみせた。

 

その歌い方が天音に本当に合った歌い方でしたのね。

さすが射手座のレガリアの後継者に選ばれただけはあると言った所ですが、タカさんと同じスタイルっていうのは若干ムカつきますわね。

 

「え、えへへ。3曲目も私達はコピーなんですけど…最後の最後!思いっきりやります!聞いて下さい!Canoro Feliceで『idol road』!」

 

 

 

 

「わぁ!idol roadだって!私達の曲だよ!嬉しいよね!」

 

「ああ、うん、すごく嬉しい…とは思うけど、俺達って大して有名でもないし、譜面が公開されている訳でもないし、もし完コピされてたらって思うとちょっと複雑かな…」

 

「春くんは頭が固すぎですわね。

そもそもidol roadとFriend Shipは、私達が初めてのライブ…FABULOUS PERFUMEとの対バンの時に披露した曲ですわ。あの時のライブはFABULOUS PERFUMEのミニアルバムの初回限定版Bの特典BDに収録されていますわ。あのBDを何度も観て完コピしたとしたら合点がいきます」

 

「え?秋月は何を言ってんだ?合点がいく?

てか、その可能性はあるのかも知れねぇが、俺はあのライブがBD特典として出されてるとか、今の今まで知らなかったんだけど?てか、FABULOUS PERFUMEそんなCD出してたの?初回限定版Bってことは初回限定版Aもあるって事だよな?…ん?てか、あのドラムの女の子、どっかで見たことあるような…?」

 

 

 

 

「Canoro Feliceの曲だって!Daedal Luvすっげぇ!ブチ上げじゃん!」

 

「確かにCanoro Feliceの曲を持ってくるとは思っていませんでしたが、逆にこれはチャンスですわね。認知度としては低いでしょうし」

 

「ちょ…涼風さん、それCanoro Feliceの方達にすごく失礼だよ…」

 

「でも逆に自信があるって曲なのかもー。いいじゃん、楽しくなってきたー」

 

「これが最後の最後。みんな楽しんでやろうね」

 

天音の顔からは笑顔が消えていません。

きっとDaedal Luvが何の曲を演奏しようと、今の天音は楽しんで歌うだけですのね。

"楽しんで勝つ"

今の天音とわたくし達なら、きっと実現できますわ。

 

「Amaterasuラストの曲です!聞いて下さい!

これは私達の始まりの曲…『明日への扉(あすへのとびら)』」

 

 

♪~

♪♪~

♪♪♪~

 

 

「すっごいじゃん!天音ちゃんの歌声!

さっきの準決勝でやられてたら、私達もギリ危なかったんじゃない?」

 

「いや、天音ちゃんの今の歌声じゃなくても、さっきはギリギリだったし。もしかしたら負けてたんじゃないかな?美緒ちゃんと睦月ちゃんはどう思う?」

 

「う~ん…確かにあたし達が余裕で勝ってたとは思えないかも。でもあたし達が勝つよ。Glitter Melodyにはあたしが居るし」

 

「まぁ、私も…負けてると思わないけど、ちょっと悔しいかな。今のAmaterasuとデュエルしたかった」

 

 

 

 

 

「天音…いつの間にこんな歌えるように。

ハハ…今のあたしじゃ、天音のライバルなんて…。ううん、ねぇ、琴子!」

 

「結月の言いたい事はわかっているわ。

明日の夕方からしか空いてなかったけど、さっきスタジオを予約したから安心してちょうだい」

 

「琴子の仕事早っ!まぁ、あたしもAmaterasuに負けてるとか思いたくないしね。いいんじゃない。明日からも徹底的に練習するわよ!」

 

「へへ、みんな燃えてるね~。確かにあの天音が…。

何か嬉しいよね。私達も負けてらんなんよ」

 

 

♪~

♪♪~

♪♪♪~

 

 

最後のデュエル。

オーディエンスの反応を見るにわたくし達の勝ちですわね。まぁ、Canoro Feliceには御愁傷様という気持ちもございますが、やはり認知度は低いバンドですしね。

 

ただ…オーディエンス席の端っこに居る幼児達が、Canoro Feliceの曲が始まった途端に『フゥー!来たぜ来たぜ!』『ヒャッハー!』『オラ!お前らサイリウムはしっかり握れよ!』『暴れるぜぇぇぇ!』とか言いながらみんなサイリウムを取り出し、激しく踊り出した時は正直びっくりしました…。

 

その幼児達の横に居るBlaze Futureのまどかさんも『こらっ!静かに!』『そこ!今日は立っちゃダメ!』とか叱ってたりで大変そうでしたが。

 

「ではお待たせしました!

これより3位決定戦の採点結果を発表ですわ!」

 

あら?意外と早かったですわね。

さっそく姫咲ちゃん…じゃない。秋月先輩が先程のデュエルの採点発表に出て来てくれました。

 

というか、秋月先輩はいつまでセバスマンのスーツを着ていますの?

 

「まず1曲目!Daedal Luv50点!Amaterasu50点!

最初の1曲目はイーブンです!」

 

…!?

やはり…負けてはいないと思ってはいたのですが、1曲目は引き分け。

わたくし達の演奏の質が変わり、天音の歌い方も"これがAmaterasuの曲"という、わたくし達にとって正解のような演奏でしたが、Daedal Luvのオリジナル曲も完成されていたという程ではありませんでした。

 

勝てなかったのは、Daedal Luvの演奏力は急造のオリジナル曲でもわたくし達と引き分ける力を持っていたという証明。そして、わたくし達がまだまだ未熟である事の証明ですわね。

 

「では2曲目……」

 

秋月先輩の採点では、わたくし達は2曲目は僅差での勝ち、3曲目は…まぁ、それなりの点差でわたくし達の勝ちでした。

 

「ライブ大会3位は…Amaterasuですわ!」

 

\\ワァー!キャー!//

 

会場から聞こえる賛美の歓声。

 

「やった…。私達の歌い方で勝てた…でも…」

 

「ちょーびみょーな気持ちー。でぃーらぶらぶが3曲共オリジナルだったら、わかんなかった結果だよねー」

 

「そうですわね。わたくし達が今日勝てたのは、Daedal Luvの選曲のおかげと言っても、過言ではないと思いますしね」

 

「そんな…天音さんも蘭さんも涼風さんも…私達が勝てたんだから、喜ばないと…」

 

確かに…。

わたくし達は今のわたくし達で最善であり、最高の曲を披露出来たと思います。

ですが、もし、Daedal Luvに完璧なオリジナル曲があって、この3位決定戦で披露されていたら、わたくし達は…。きっと天音と蘭も同じ思いなのかもしれませんわね。

 

「らんらんもスズも何を言ってんだし!」

 

バシッ!バシッ!バシッ?

 

「え?わぁ…!?」

 

「あ、ぜつみょーに痛い」

 

「真凜!このおバカは何をしますの!?」

 

わたくし達が落ち込んでいるというのに、真凜は結構強めに、わたくし達のお尻を叩きました。

これわたくしが天音にやったら、きっと真凜と蘭と輝美からはセクハラとして通報されていますわ。

 

「おバカは"2人"の方っしょ!てるみんの言うとりもっと喜ばねーと!

あたしらは確かにさっきすっげぇ演奏出来たけどさ!まだまだ付け焼き刃だったし、そんでもGlitter Melodyには勝てたってレベルでもなかったし!

Daedal Luvだってそうじゃん!今までのオリジナル曲とは全然違ってすっげぇ曲だった!でも、2曲目3曲目はコピーだったし、Daedal Luvもまだまだこれからって事っしょ!」

 

真凜…。

久しぶりですわね。こんなにわたくし達にまくし立ててくる真凜は。

 

「今日のさっきのがあたしらAmaterasuの限界!さっきの演奏がDaedal Luvの限界!

今のあたしらが限界までやってやった演奏での結果じゃん!あたしらもDaedal Luvもまだまだって思うけど、今はあたしらが勝ったんだから、素直に喜ばなきゃ!

次はあたしらももっと凄くなってるだろうし、Daedal Luvも凄くなってるだろうけど…え~っと、あの、アレだし!」

 

真凜は…。

本当に…いつも鬱陶しいですけど、こういった大事な時には、わたくし達の心をいつも動かしてくれますわね。

たまにしかありませんが、真凜の言葉や考え方には救われますわ。

 

「ご、ごめんね、真凜ちゃん。

えっと…私も勝てたのは嬉しいんだよ?

でも、私はまだまだだって実感もしたし、これからこの歌い方をどこまで突き詰められるのか?とか?あの…今日のこのテンションというか、モチベーションがいつまで続いてくれるのか不安になっちゃって…」

 

「あ、あまねるはわかってるから、別に気にしなくていーよ?勢い余ってあまねるも叩いちゃったけど、あたしはらんらんとスズに物申してんだし」

 

「え?勢い余ってって…私も結構痛いってレベルで叩かれたんだけど…」

 

「まぁ、あまねるも『私達の歌い方でも勝てた…でも』とか言ってたから、らんらんやスズみたいに勝てた事に納得いってないのかな?とか、思ったけどさ?あまねるの事だし、ああ、いつものネガキャンじゃんとか思ったし、もしかしたら、明日にはさっきの歌い方恥ずかしがって出来なくなってるかもだし?あんま気にしてないっつーか」

 

「いや…確かに私はネガティブだし、さっきの歌い方もやっと見出だせたと思ったのに、ちょっとタカさんみたいに暴れるのは恐れ多いと思ってるし、今になって恥ずかしかったかもとか思ってるけど…」

 

こういう事をネガティブとわかっている天音に、わざわざ言ってしまうところは、いつまで経っても鬱陶しいのですけどね。

 

「んあー。たしかにまりんの言う通りだね。

さっきはたのしかったし、そんで勝てたし。そんだけでよかったんだよね」

 

 

「そうだよそうだよ。私達もさっき思いっきりやったもん」

 

「私達もこれからもっと頑張って凄いバンドになってみせますから、またデュエルして下さい!」

 

「そうそう。あたしらは松岡くんの見てる所で、Canoro Feliceの曲やれたし、さっきのデュエルは大満足だよ」

 

「大満足なのはキョーコさんだけでしょ……アタシは……やっぱり勝ち………たかったよ?」

 

「え?いや、それはあたしももちろんそうだよ!?

ただ、Amaterasuも凄かったし、あたしらもやりきったしって意味でさ!?」

 

わたくし達が話していると、わたくし達の話が耳に入ったのか、Daedal Luvの方達が話し掛けて下さいました。

 

その後はわたくし達はお互いにお互いの曲やバンドを褒めあったり、ここはああした方がとか、ここはこうした方がとか…。

そんな他愛のない雑談を楽しみました。

まだここは、オーディエンスも目の前に居るステージ上だというのに…。

 

こういう時間を過ごしていると、音楽をやっていて楽しいと改めて思います。ここ数年はそんな事を思う余裕なんてありませんでしたから。

それもこれも、わたくしを執拗にバンドに誘ってくれた天音のおかげですわね。

 

そして秋月先輩が3位決定戦の賞品である、『3』という形をしたメダルを持って来られました。

この賞品の授与式が終わって、最後にこの学校の理事長の閉会のご挨拶があって、この長かったライブ大会は終幕です。

 

メダルを持っている秋月先輩の前へわたくし達は向かい、そして…ステージの床が開き、そこからモクモクとスモークが流れてきました。

 

なんですのこれは!?デジャヴ!?

 

一瞬ステージ上はスモークまみれになっていましたが、スモークは自然と風に流され、そこには……

 

「アーハッハッハ!この3位の賞品メダルは、この俺達がいただくぜ!返してほしくば…えっと何だったっけ?あ、そうだそうだ。こっちには人質なんてのはいないんだけどな!抵抗されてもたんまねぇから抵抗はしないでくれよな!」

 

どこからどう見てもAiles Flammeのシフォン先輩、可愛らしい男の娘、とても綺麗で美少女というよりは美女というよりはいう言葉が似合いそうな女性。

そして、何故か全身モザイクだらけの人が立っていた。

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