バンやろ外伝 -another gig-   作:高瀬あきと

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第33話 エルフラコ

「ハッハッハー!俺達が3位を頂くって事を聞いて、まるで豆ガトリングを喰らったみたいな顔になってるな!」

 

「あのさ…渉子だっけ?

悪いようにはしないから着いてこい!

とか言われたから着いてきたけど、これめちゃくちゃ悪いようになってるよね?また僕達女装させられてるし…」

 

「えっと…拓実は何て名前なんだっけ?オレはまぁ、これはこれで楽しくなりそうだし、いいとは思ってるけどな。Amaterasuとも早速デュエル出来そうだしよ」

 

「豆ガトリングってめちゃくちゃ語呂が悪いよね。

さすが渉くん、変な所だけはしっかりタカ兄に似てるや」

 

 

 

 

「あのアホの子達は…私達の説教が足りなかったのかしら?」

 

「ホントだよね~。文化祭編じゃ私達は活躍出来ないし、さつさと終わらせてDivalライブ編とかそんなのやりたいのに」

 

「いや、いくらなんでもDivalライブ編ってのは無いんじゃない?まだ、ハロウィン編も修学旅行編もファントムギグ編もやってませんし。レガリアの事もうやむやですし…。それより慶くんがここに居なくて良かったって思ってる私が居るんですけど…」

 

「慶くん?慶くんってあの予選の時に会ったヒデさんの事務所の子?奈緒はあの子の事が気になってる感じ?」

 

「いやいやいや~。香菜は甘いですな~。

奈緒はタカちゃんにしか興味ないし~?あれじゃなあい?実は慶くんって子が、エルフラコの誰かにガチ恋しちゃってるみたいな~」

 

「何で盛夏はそういう所はするどいの?」

 

 

 

 

私の名前は本城 天音。

正直目の前で起こっている事を、受け入れきれてなくてポカーンとしている。

え?目の前に居るのは、どう見てもAiles Flammeの江口先輩と秦野先輩と内山先輩とシフォン先輩でしょう?

 

3位の賞品を貰いに来たとか、さっきのCanoro Feliceの先輩方の横暴より、何というか…変でしょ。

 

……あ、そういえばお父さんもお母さんも、今日の決勝大会は見に来てくれてるんだよね。

大勢のオーディエンスの中から、さすがに見つける事は出来なかったけど、さっきの私の歌い方を見てどう思ってくれたかな?

お父さんも元々はボーカルだったって話だし、家に帰ったら色々聞かせてもらえるかな?

 

「あまねーあまねー。現実逃避してるばあいじゃないと思うー」

 

「そ、そうだよね。涼風さんも…その、さっきとは違ってめちゃくちゃ真顔になってるし、まばたきすらしないから心配だけど…」

 

「らんらんもてるみんも何言ってんの?あれ?まだ3位の授与式はやらない感じ?終わったら終わったで、文化祭色々見て回りたいんだけど?」

 

「あ、真凜さんも現実が見えてない感じだったんだ?」

 

あ、そういえばお父さんもお母さんも、こういう日って何となくパーティーとかやりがちだよね…。

優勝は出来なかったけど、3位な訳だし、バンドをやり始めた私達にしては、すごくいい結果だったと思うけど、やっぱりパーティーするなら優勝したかったよね…。

 

あ!もしかしたら今日はお母さん特製のハンバーグが食べれるかも!

もしそうだったら嬉しいなぁ~♪

あ~…でもハンバーグに添えられてるお野菜はいらないかも…。

 

「あまねー!あまねー!!」

 

「え!?ふぇ!?ら、蘭ちゃん!?」

 

私が今日の晩御飯の事を考えていたのに、蘭ちゃんに思いっきり揺さぶられて現実に戻ってきた。

 

「あまねやっとおきた」

 

「あ、えっと…ごめんね。やっぱりお野菜はあんまり…その…」

 

「天音は何を言っていますの?」

 

私は蘭ちゃんに現実に戻された訳だけど、あんまり状況も飲み込みたくないし、このまま帰りたかった。

それなのにスズちゃんが、私と蘭ちゃんの間に入ってきて…

 

「どうしますの天音。この茶番…まぁ、3位という微妙な順位の賞品を、今になって奪いに来たエルフラコはきっと何も考えてないと思いますわ。

それでも、先程のCanoro FeliceとGlitter Melodyの時のように、わたくし達も何かしらやらない事には、この場から去る事もライブ大会が終わる事もありませんわよ」

 

丁寧に今の状況を説明してくれた。

うぅ…だって何とかしようにもデュエルやるしかないんじゃないの?とっても理不尽って言うか変だけど。

 

何でAiles Flammeの皆さんもこのタイミングで出て来たの?文化祭編だというのに、新規参入の私達や結月ちゃん達の出番が多いから…って感じなの?

でももう少ししたら修学旅行編でしょ?

私達は1年生だから修学旅行にはまだ早いし、いや、それより前にハロウィン編もあるよね?

ハロウィン編は私達は出演出来ないから、きっと出番はないし…。

 

「すずかー。あまねが大変なこといってる~。このままだと色々とやばたんかもー」

 

「ハァ…そうですわね。と、言ってもモノローグで勝手にメタってるだけですが、このままですと色々とよろしくないですわね」

 

「ハッハッハー!お前ら俺…じゃないなですわ。

私達を放置して何をボソボソやっているんだですわ?

やろうぜですわ!デュエル!!」

 

「この人今になってなんで語尾に『ですわ』って付けてるんですか?デュエルではなく、わたくしに喧嘩を売ってますの?」

 

「わわわ、す、涼風さんも落ち着いて…」

 

「あまねるとあたしが現実から逃避してんのに、スズも話から脱線しちゃったら、てるみんだけ被害者になっちゃうじゃん。らんらんはこういう時は役に立たないだろうし」

 

「え?真凜さんって自分が現実逃避してる自覚あったの?てか、それより!私は別に被害者とか思ってないし」

 

「まりんがあたしをバカにしてるー」

 

「大丈夫ですわ。わたくしはまだ多少は冷静です。そんな事よりこの異常事態。

どう丸く納めるのか…と、その懸念ばかり募ってきますわね。オーディエンスも何番煎じだってくらい盛り下がってますし、Ailes FlammeがCanoro Feliceみたいなまとめ方を出来るとは思えませんし」

 

ああ…私もちゃんと話に参加しないとだよね。

このままだと話も進まないし。

 

「あの…えっと…私は」

 

「わたくし達のバンマスは天音です。

ですから、この後どうするかの判断は天音に委ねましょう」

 

えぇ!?私に委ねちゃうの!?

ってか、私は正直Ailes Flammeさんに勝てるとか思ってないし、いや、Ailes FlammeさんもさすがにGlitter Melody程じゃないだろうから、もしかしたらとは思うけど、いやいやいや、やっぱりそれでも…!

 

だ、だからこのAiles Flammeからのデュエルの申し出は何とか断りたいと思ってるんだけど…。

 

「わたくしは正直Ailes Flammeに勝てる。とは思えません。Glitter Melody程ではないにしろ、わたくし達とはライブ経験が違いますし、Ailes Flammeの演奏はわたくし達に近いと思ってますから、やはりAiles Flammeに軍配が上がると思いますわ」

 

いやいやいや、スズちゃんもそれがわかってるんなら、私に委ねないで、デュエルは止めようって提案してよ…。

 

「ですが、だからこそ、今のわたくし達のレベルでどこまで通用するのか。それを知る為の良い機会だとは思いますわ」

 

えぇ!?それってつまりスズちゃんは、デュエル賛成派って事!?

 

「ん~…あたしはスズの言ってる事もわかるけど、さすがに今回はパスかな。Canoro Feliceん時みたいに、この後Ailes Flammeが何かやるって余興もないだろうし。さすがに勝っても負けても、あたしら的にはメリットなくね?」

 

メリットとかデメリットとかの話じゃないとは思うけど、良かったよ、真凜ちゃんは反対派で。

 

「あたしはやりたいー。かちまけとか相手が誰だとかより、あたしはたのしーからデュエルやりたい。まだまだベースひきたいー」

 

ああ…わかってはいたけど蘭ちゃんは賛成派だよね。

でも輝美ちゃんは反対派だと思うんだけど…。

あ、そうなっちゃうと2対2になっちゃうから、結局私の判断になっちゃいそうな…。

 

よし、輝美ちゃんには悪いけど、私が先に発言して輝美ちゃんに委ねる形に持っていかないと…。

 

「あ、あのね…私は…」

 

「涼風さんと蘭さんの言い分もわかるけど、やっぱり私は真凜さんと一緒で反対!

勝ち負けとか関係ないとか…今、私達がどれくらいAiles Flammeさんに食らい付けるかとか…そういうの考えてみたら、やってみてもとは思うけど、とにかく!今はそういう時じゃないと思うし!」

 

えぇぇぇぇ…。

輝美ちゃんが反対派なのはわかってたけど、何でそれを私のセリフに被せるように言っちゃうの?

 

「これでデュエル賛成派と反対派の2対2ですわね。

さぁ、天音、どうしますか?」

 

「あまねる!さすがに今回は止めてた方がいいって!」

 

「あまねー。あたしはやりたいー!もっとあまね達と演奏やりたーい!」

 

「私はその…反対だとは思うけど。

私達のリーダーは天音さんだもん。私は天音さんの判断に従うよ」

 

ああ…結局は私の判断に委ねられちゃうんだね。

でもそれならその方が良かったのかな?

ここで私が断ればデュエルしなくて済むんだもん。

 

「あ、えっと…私は…」

 

「ハッハッハ!何をグダってんのかわかんねぇけど、デュエルしようって即答できないって事は、やっぱり私達にビビってるって事だよな!

いくら三咲お姉様にレガリアの後継者として選らばれたって言っても、にーちゃんに選らばれた訳じゃねぇしな。やっぱにーちゃんの後継者はAiles Flammeの江口 渉しかいねーぜ!」

 

「あ"???」

 

「ヒィ!?あ、天音…?ど、どうしたというのですか!?」

 

「え?あまねるの顔めちゃくちゃ怖いんだけど。あまねるって、こんな顔できたんだ?」

 

「おわー。あまねの顔がすごいことになってるー」

 

「ちょ…ちょっと…天音さん?だ、大丈夫?」

 

え?あれ?

アハッ♪聞き間違えちゃったかな?

今、江口先輩は何って言っタ?

 

江口先輩がにーちゃんって呼ぶのはタカさんの事だろうけど、もしかしてそのタカさんの後継者はまるで私じゃなくて、江口先輩かのように言わなかった?

 

いや、ないよね。

尊敬するファントムのバンドの、Ailes Flammeのボーカルである江口先輩がそんな事言う訳ないもん。

確かに私よりは全然江口先輩の方が、タカさんとは親しいだろうし…とは思うけど。

三咲さんにレガリアを託して頂いたんだから、タカさんの後継者は私だし。ふぅ、私も落ち着かなきゃ。

 

「あ、あの…天音?」

 

「あ、うん。ごめんね。スズちゃん。

私は大丈夫だよ。全然いつもの天音ちゃんだよ」

 

「いや、全然いつもの天音さんじゃないよね」

 

「あまねるこっわ。顔もセリフも笑顔になったけど、目に光が灯ってないんだけど」

 

「これは…デュエルできる予感ー」

 

と、自分の中に入り込んでる場合じゃないよね。

いくらライブ大会はさっきの私達とDaedal Luvとのデュエルで終わったといっても、まだ、オーディエンスの方も会場に残って下さってるし、このままグダグダやってないで、ちゃんと閉会式もしなきゃだもんね。

 

「あ、あの…私としましては、やっぱりこんなデュエルはあり得ないかな?とか思ったりしてまして…」

 

「お?そうなのか?って事はつまり、自分はレガリアの後継者ではあるけど、にーちゃんの後継者はAiles Flammeの江口 渉に譲るって事だな?にーちゃんならこんな面白そうなデュエルなら受けて立つだろうしな!」

 

「あ"?今なんつった?」

 

「ヒィ!?天音の言葉使いがっ!?」

 

「こんなあまねるってめちゃくちゃレアじゃね?レアネルだ」

 

「いや…レアネルって…ほぼ原形が…」

 

「デュエルの準備しとこーっと」

 

アハッ、アハハハハハ。

江口先輩って面白い事言うね。

噂では色々そんな風には聞いていたけど…。

 

「…ます…よ」

 

「お?何言ってんのか聞こえねぇんだけど?」

 

「やりますよデュエル!ここで証明してみせます!

射手座のレガリアの後継者も!BREEZEのボーカル、タカさんの後継者が私って事も!タカさんの正妻は私ってこともっ!!」

 

「天音っ!?レガリアとかBREEZEのボーカルだとかはいいとして、正妻って何ですの!?え!?天音はわたくしの正妻ですけどもっ!?」

 

「ど、どうしよう…。ねぇ、真凜さん、蘭さん。私ホントにもう帰りたいんだけど」

 

「いやー…あたしもびっくりだわ。あまねるのタカさん好きは知ってたけど…。

え?てか今の江口先輩の、どこの言葉が気に障って正妻とか言い出したん?」

 

「あー…あたしもアレだ。デュエルしたかったけど、帰るのがいちばん平和だとおもうー。寒気してきたー」

 

 

 

 

「え?天音って声を高らかに何言ってんの?

タカさんの正妻はあたしだし、天音はあたしの愛人枠でしょ」

 

「あぁ~。天音って結月にとって愛人枠だったんだ?」

 

「まぁタカさんの正妻は結月だろうが天音だろうが…誰が自称してても問題ないけど、拓斗さんの正妻はあたしだから!」

 

「…頭が痛くなってきたわ」

 

 

 

 

「渉もアホだけど、天音もアホの子だったんだ?お兄さんの後継者はレガリアとか、誰がライブを上手くやれるかでもないし。私は義妹という確固たるポジションにいるけど」

 

「何で?美緒がタカさんの義妹になるって事は、奈緒さんが正妻って事でしょ?渉か天音が正妻になるんなら、美緒は義妹じゃなくなるんじゃない?」

 

「渉くんも何で変な事ばっかりするんだろ…。いつも通りならカッコいいのに…」

 

「恵美の好みのポイントってどこなんだろ?恋話とか私も好きなんだけど…美緒の偏屈なとことか、恵美の変なとことか、Glitter Melody(わたしたち)ってホント、青春とは無縁だよね………痛っ!?え?何で私また美緒にひっぱたかれたの?」

 

 

 

 

「えぇぇぇ…いや、まぁ?何となくはわかってはいましたが、やっぱり天音ちゃんもタカの事ガチ恋勢ですか。あの変な顔のどこがいいんだろ?」

 

「あの…えっと…あ、あはは。あたしはこの場では何て言っていいのかわかんないんだけど…奈緒はそれマジで言ってる?」

 

「チッチッチー。香菜はまだまだ甘いですなぁ~。

奈緒のコレはいつもの…照れ隠しってか、何かそんな感じのアレなだけで~。奈緒の中ではもうタカちゃんと婚約してるまでいってるんじゃないかなぁ?」

 

「…盛夏は出番が少なすぎてアホになっちゃったのかな?香菜の言う通り、私は割りとマジでガチで言ってんですけどね~。ほら、周りのみんなを見て下さいよ」

 

「お~。美しい堕天使シャイニング梓お姉様も、澄香さんも、渚も理奈も何か必死でメモしてるねぇ~」

 

「渚と理奈ちと梓さんも…今のやり取りで何をそんなにメモる事があるの?そんなガリガリとメモ帳に書き込んでいくような発言あった?

そして澄香さんはどこからその書道セット出したの?今から墨を擦ってまでメモするような事があったの?」

 

「ん~…確かにこれはさすがの盛夏ちゃんもドン引きですなぁ~」

 

「でしょ?私は割と普通だってわかってもらえたかな?」

 

 

 

 

「相変わらずはーちゃんはモテるよね。自分が把握出来ないっていうか…はーちゃんの認識外では…」

 

「だな。当時三咲と付き合ってた俺ですら、BREEZE(おれら)ん中じゃタカが一番最初に結婚すると思ってたんだけどな」

 

「止めてやれ英治。あいつも当時はそう言われてたもんだから、『あん時は俺が最初に結婚するとかみんなに言われてたよなぁ。何でだろ?え?何で俺まだ結婚出来てないの?』とか言いながら泣いてたじゃねぇか」

 

「ああ…あの時ね。ちょっとって言うか、めちゃくちゃ面倒くさかったよね。私も当時は英治くんしか眼中なかったけど、『そんな事ないよ。私は割とタカくんの事好きだったもん。英治くんが居なかったらタカくんと付き合って結婚してたかもね』って嘘付いてまで慰めてあげたのに、えぇ…ないわ。って顔されたから、つい殴っちゃったもん」

 

「そういやそのはーちゃんはどこに行ったの?」

 

「ああ、さっき結月ちゃんと天音ちゃんから、ファントムに入りたいって話を聞いてな。3位決定戦終わったタイミングで、手塚さんにその事について電話しに行ったんだわ。俺のスマホ持って」

 

「チ、って事はまたあいつはこう大事な所を聞き逃した訳か。それよりタカから手塚さんへの電話って珍しいな」

 

「まぁ、俺に電話するよう言ってやがったが、こういう話ならタカの方が手塚さんを丸め込めるだろって言ったんだ」

 

「それで何で英治くんのスマホ持って行ったの?」

 

 

 

 

「ヘッヘッヘ。やっぱり天音にはこう言ったらいいって言う助言通りになったな!」

 

「てか、渉はその助言誰に吹き込まれたんだ?…って言うかお前はこれからの事を考えて、天音に後継者どうこうって言ったか?」

 

「お?いや、俺もさすがに煽り過ぎたかも?とは思ったけど…もしかして何かヤバかったか?」

 

「僕もう吐きそうなんだけど?渉はホントにわかってないよね。本城さんにソレを言ったって事は『僕達はAmaterasuをタカさん後継者と認めていない。タカさんの後継者は渉だ』って言ってるようなもんだよ?どうやってこの場を収めるつもりなの?」

 

「えぇ!?ちょっと待てよ!俺は別にそんなつもりねぇし!天音がにーちゃんの後継者って事も、レガリアの後継者って事も、割と認めてるし、さっきのライブ観て納得もしてんだけど!?」

 

「コレってもうどうにもならないんじゃない?

このままだとAmaterasuに勝っても負けても、Amaterasuの子達には『江口先輩って嫌な奴だよね』って思われてもしょうがない事案だよ?」

 

「ただ春さん達みたいに俺達もちょっとライブやりたかっただけなのに…。

日奈子ねーちゃんやグリメロちゃんに、こう言ったらデュエル出来るよって唆されただけなのに…」

 

「オレには唆されたってわかっているのに、ソレをAmaterasuに言った事が不思議でならないけどな」

 

「ヤベェ…めちゃくちゃ焦ってきたんだけど?

え?もしかして優しくて頼りになる江口先輩って思ってもらえなくなる感じか?」

 

「渉?そんな事考えてたんだ?」

 

「お前…どんな世界線で生きてたら、そんな風に思ってもらえると勘違い出来るんだ?」

 

「クソッ、俺はまんまと日奈子ねーちゃんとグリメロちゃんに嵌められたって訳かっ!俺の優しくて頼りになる江口先輩って後輩達に慕われたい計画が、こうも簡単に頓挫するとはっ!」

 

「そういやさっきから舞台袖で、日奈子さんとグリメロちゃんと翔子先生が、こっち見ながらめちゃくちゃ手を振ってるね。完全にやられちゃったね」

 

「んーでもなぁ…」

 

「亮?どうかした?」

 

「いや、渉が日奈子さん達に嵌められたってのは、まぁ、何となくわかったけどよ。それでオレ達とAmaterasuがデュエルして、日奈子さんとグリメロちゃんに何かうまみがあるのかな?って思ってな…」

 

 

 

「いやー。渉ちゃん凄いね!

まさか本当に天音ちゃんにあんな事を言うとはっ!でもこれで面白い事になりそうだよね」

 

「ハァ…まぁ、日奈子の考えって事で、あんま乗り気じゃなくても承諾せざるを得なかった訳だし、Ailes Flammeがここで演奏する事で、来年からは理事長にも男子参加を認めさせる事が出来たら…とは思ったしな」

 

「ありゃ?翔子ちゃんも割と乗り気だと思ってたんだけど」

 

「あたしはこの学校のライブ大会ってのには、割と伝統とか重んじる気持ちもあるんだよ。まぁ、それで合同ライブ大会にも男子禁制ってのは、考えた方がとは思うけどな。なんつーの?伝統は伝統、合同ライブは合同ライブ大会でまた別って言うか…」

 

「でも翔子ちゃんも姫咲ちゃん達と一緒に理事長さんに、男子も参加出来るようにって嘆願してたんでしょ?」

 

「だから言ってるだろ。合同ライブ大会は合同ライブ大会で別って。わざわざ文化祭で他の学校も巻き込んでって形なら、伝統とかじゃなくて、新しい形でやって、伝統は伝統で学内だけでやりゃいいし。って、今はそんな事よりあんただ。あんたは何でAiles Flammeをけしかけるような事に賛同したんだ?」

 

『フッ。我はAiles Flammeの演奏を間近で見たかっただけ。そいた言えばキミは納得するのだろう?』

 

「いや、納得出来る要素が全然ねぇんだけど。

他ならぬあんたの頼みだから、あたしもこの計画に進んで参加した訳だしな。…佐倉達Glitter Melodyのチューナーの正体があんただって聞いた時は驚いたけど」

 

『フッ、我の正体を…』

 

-カキカキ

 

「グリメロちゃんホントめんどくさい。昔からめんどくさい人だったけど。ここにはあたしと翔子ちゃんしか居ないんだし、喋っちゃえばいいのに」

 

『まだその時ではない』

 

「ホントめんどくさいなこの人は。佐倉達もこんな人がチューナーで大変だろうな…」

 

 

 

 

何か舞台袖で神崎先生と日奈子さんとグリメロちゃんが、手を振ってるみたいだけど、何をしてるんだろう?

ふぁぁぁ…やっぱり何度見てもグリメロちゃんは可愛いなぁ。美緒先輩達のチューナーがあんな可愛いクマさんなんて羨まし過ぎるよ。

 

ああ、グリメロちゃんを見てると、心の中の闇が浄化されるみたいに癒される。

あ、そうだ。私は"楽しんでライブをやる"ッチ改めて誓ったんだった。

 

こんな心に闇や怒りを抱えたままデュエルしちゃいけたいよね。

さっきの江口先輩の発言には、憤りを感じ過ぎて頭の血管が何本かイッちゃったかも知れないけど。

 

「ふぅ…」

 

「「「「天音(さん)(あまねる)(あまね)?」」」」

 

「ごめんね、みんな。また闇に呑まれる所だったよ」

 

「「「「闇に?また?」」」」

 

私はスズちゃん達に謝った後、改めてAiles Flammeの皆さんの前を向いて宣言した。

 

「やりましょう。デュエル。

どっちが後継者とか…そんなのじゃなくて、音楽が好きな者同士で、オーディエンスや私達が楽しいって思えるデュエルを!」

 

「「「「天音(さん)(あまねる)(あまね)…」」」」

 

私がそんな事を言った直後の事だった。

 

 

-バァン!

 

 

私達の立つステージから対角線の、この会場の入り口、そこの扉が開かれ、迷彩服を着ている人達が入ってきた。私達がその人達に目を奪われた瞬間…

 

 

-ピカッ!

 

 

いきなりの眩しい光に、私達は視力を奪われた。

 

「え!?何これ!?」

 

「ちょ…マジ眩しいんだけど!?」

 

「おわー…目がー目がー」

 

「一体何ですの!?まさか閃光弾?」

 

「ウッ…み、みんな大丈夫!?」

 

いきなりの事でパニックになる私達。

そして

 

「お、おい、いきなり何なんだあんたらは!ってかマジで痛ぇ!いきなり光ったと思ったら誰かに後ろ手に押さえつけられてんだけど!?」

 

え?今の声は秦野先輩?

押さえつけられてるの!?

真凜ちゃんやスズちゃん達みんなは!?

 

「痛い痛い痛い痛い!ちょっと!抵抗したりしないんでもっと優しくして下さいよ!」

 

この声は内山先輩?

 

「うわぁー!助けて栞ちゃん!」

 

今のはシフォンさんの声?

栞ちゃんって小松先輩の事かな?

小松先輩は何かあると『助けてゆーちゃん』って井上先輩の名前出すし、え?井上先輩と小松先輩ってやっぱり?

 

「クッ…まさかこんな事になるとはな。俺達の快進撃もここまでか!?」

 

江口先輩…だよね?

え?俺達の快進撃って何?いつの間に快進撃なんてされてたんですか?

 

「だけどこのまま消される訳にはいかねぇ…。クソッ!天音!天音!!」

 

え?私?

 

「俺の声が聞こえるか!?」

 

いや、同じステージに居るはずな訳だし、そんなに叫ばなくてもちゃんと聞こえてますけど。

 

「さっきのアレな!ホントは射手座のレガリアの後継者は天音だって、俺も実はそれは認めてんだっ!!」

 

江口先輩?

射手座のレガリアは私だって認めてくれているの?

でも、それじゃ何でさっきはあんなの事を?

私は何か思い違いをしている…?

 

「そうだ!」

 

えぇぇぇぇぇぇ…そうだ!って何ですか?

私喋ってないし、モノローグっていうか心の中で思ってるだけなんですけど…。

ちょっと怖いんですけど。

 

「怖がる必要なねぇ!」

 

本当に怖いんですけど!?

 

「俺はあんな事言いたくなかったけど、心を鬼にして、言わざるを得なかったんだっ!先輩として、音楽をやっている先輩として、本気のお前とデュエルをする為にっ!だからっ!……クソッ、止めろ!なにをする!?」

 

私は私のモノローグに話掛けてくる江口先輩を怖いと思っていた。そしてそんな先輩達は、私達の目が馴れてきて、ステージ上を認識出来る頃には、その場から姿を消し、そこにはこの学校の理事長先生が立っていた。

 

「コホン。

皆様。多少のトラブルもございましたが、本年度も無事ライブ大会を………」

 

そして、理事長先生がその場で挨拶を始め、無事にライブ大会は閉会する事となった。

 

私達Amaterasuがバンドを始めてからの、最初のライブもデュエルも、あっという間の出来事のように感じていた。

 

だけど文化祭編はもう少しだけ続くのでした。

 

 

 

 

 

「うー…やっぱAiles Flammeとでゅえるしたかったかもー」

 

「あはは、蘭さんはさっきからそればっかりだね」

 

「そいやさ?江口先輩達がステージから消えた時だけどさ?なんかあまねるに話し掛けてなかった?」

 

「そういえばそんな気もしましたわね。あまりに騒々しかったので、わたくしには何を仰ってるかまでは、聞こえませんでしたが」

 

「あ、あれね…。えと…私も実はモノローグに返事されたりしてたから…怖くて…あんまり…」

 

「「モノローグに返事?」」

 

 

 

 

 

「いやー、ギリギリだったけど、天音達に、『俺達Ailes Flammeはお前を認めてるぞ!』って伝えられて良かったぜ!」

 

「あ?そういえばお前何か色々言ってたな。言い訳っぽい事」

 

「い、言い訳じゃねぇし!」

 

「あの状況でちゃんと伝わってたらいいよね。結局、僕らライブも出来なかったし、散々だったけど」

 

「渉くんはそんなに後輩に『優しくて頼りになる江口先輩』って思われたかったの?」

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