『結月、さすがにやるじゃない。まさかはーちゃんとえーちゃんに私を説得させる手段に出るとは。私もまさかあんな姑息な手を使われるとは思っていなかったわ』
『いや、タカさん達が来て下さったのたまたまだし…。てか、母さんタカさん達に説得された訳じゃないよね?三咲さんからの手紙だよね?』
『懐かしいという気持ちと、はーちゃん達への友情を利用するとは…まさに貴女は鬼の子よ』
『鬼の子って…あたし母さんの子だけど…』
『あんな卑怯な手を使ったのだもの。結月、私に恥をかかせない為にもしっかりやりきるのよ』
『割と夏希達の前であたしが恥をかいてる感あるんだけど…』
『まぁまぁ、あんな結月ママ見たの初めてで、私もびっくりしたけど、ファントムに所属ってのは許してもらえたんだし良かったじゃん』
『そうね。一時はどうなることかと思ったけど、結果的には良かったんじゃない?後は琴子の所のばーちゃん問題だけだし』
『お婆様の事も今の所大丈夫よ。それより結月、タカさん達はこの後、天音のご自宅にお伺いするようだけれど、本当に一緒にお伺いさせていただくつもり?』
『ああ、それね、うん。大丈夫だとは思うけど、英治さんは割と天音のお父さんの事気にしてるみたいだったし。天音とおじ様とおば様が…どうするのか気になるし』
『私達が気にしてもとは思うけど…さすがに今はまだ知らない方がいいかもか。多分タカさん達は何も気にせず受け入れてくれそうだけど…』
『そうね。話すにしても話さないにしても、あたし達は結果を知ってた方がいいかもね。うっかり口を滑らせたりはしないけど、知っているのか知らないのかでは対処の仕方も変わってくるし』
『こういう話はナイーブだから、私達が間に入るような事でもないと思うのだけれど。結月、貴女がうっかり言ってしまわないように気をつけるのよ』
『いや、さすがにあたしも言わないし…』
あたしの名前は寺川 結月。
母さんから無事にファントムに所属する事を許してもらい、これから天音の家にご挨拶に行くというタカさんと英治さんに同行させてもらっている。
天音達は本当の天音の父親の事を、タカさん達に話すのかどうかが気になったから。
あたし的には天音は天音だし、本当のお父さんの事なんかどうでもいいと思ってはいるし、天音のお父さんは今の優しいおじ様だと思っている。
だけど天音の本当のお父さんは今もバリバリのクリムゾン側の人間だし、敵対しているタカさん達にとっては大変な事かもしれないし。
夏希の言うようにタカさん達なら気にしないと言ってくれると思ってるし、琴子の言うようにあたしなんかが間に入る問題でもないってのはわかってるんだけど…。
「しかし結月ちゃんがついて来てくれるってのは俺的には助かったぜ。天音ちゃんの家はわかっても近くに駐車場があるかどうかとかは、さすがにわかんねぇしな」
「あ、そこの道右折していただいたら、コインパーキングがあると思います。そこから5分くらいで天音のご自宅着きますし」
「ん、オッケー右折な」
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コインパーキングは運良く開いてたから、車を停める事は問題なかったんだけど、英治さんはお腹を壊しているらしくトイレへ。タカさんは車の中で三咲さんが用意してくれたって服に着替えている。
さすがにあんな血塗れの服着たまま街中歩けないもんね。
天音はともかく、おじ様はどうするんだろう?
天音の本当のお父さんの事を話すのかな?
「お、悪いな結月ちゃん。待たせちゃったか?」
「あ、いえ、ぜんぜ……ん?な、何でタカさんはそんなキッチリしたスーツを着てるんですか?」
「俺も不思議だわ。あの
いや、あたし的には全然ありだと思います。
グッジョブです三咲さん。
「…結月ちゃんは何でついて来たんだ?まさか本当に駐車場の道案内ってわけじゃないだろ?」
ドキッ!
「え、え、えーと、あの…た、ただの道案内ですよ!?コインパーキング探すのにタカさん達困らないかなぁ?って思いまして!」
「う~ん、でも過疎ってる訳でもねぇし、数十分歩くとかの覚悟あれば、コインパーキングくらい割と見つかるだろ?まぁ、結月ちゃんのおかげで近くのコインパーキングに停める事出来たから、俺ら的にはありがたかったけど」
うぅ…。さすがに15年前にクリムゾングループと熾烈な戦いをしてただけあるよね。妙に鋭いっていうか。
…それより、あんまり周りを信用せずに1歩引いて見てるのかもしれないけどね。夜の太陽…か。
「結月ちゃん?いや、答えたくなかったら別にいいんだけどね?」
あんまり黙りになって、せっかく憧れのタカさんとお近づきになれたのに、警戒されたりして疎遠になるのは嫌だな…。だからって天音のお父さんの件には触れたくないし。
「いえ…その…せっかく………です」
「ん?なんて?」
「だ、だからっ!せっかく憧れのタカさんとお近づきになれたんだから、も、もう少し一緒に居たいって思ったからです!」
うん、ぶっちゃけこういう気持ちもあるし、嘘ではないもんね。もう少し仲良くなりたいのは本音なんだし。
「ふぇ!?///」
ん?あれ?正直『は?何言ってんの?』とか言われると思ったんだけど、も、もしかしてこんなので動揺しちゃうとかあたしにもワンチャンある?
ど、どうしよう!?あたしには天音も居るし、あたしはタカ奈緒派なのに!!…ごめんなさい、奈緒さん、天音!
「いや~、悪い悪い。待たせちゃったか?いざとなったらう○このヤツなかなか出てくれなくてよ。あれ?タカは何でスーツ着てんの?俺の嫁って頭大丈夫?」
あたしもタカさんも何も言えないでいると、英治さんがトイレから戻って来てくれた。
危なかった。あたし頭真っ白になっちゃってたし。
いや、自分で言った事だけど。
「ん?てか、タカも結月ちゃんも何で顔が真っ赤なんだ?俺が居ない間になんかあった?」
嘘っ!?タカさんはあたしから見ても真っ赤なのわかるけど、あたしも真っ赤になっちゃってんの!?
あ…だからタカさんも冗談って受け止めてくれなかったんだ?まぁあながち冗談ではないんだけど。
「そ、そんな事より!英治さんもお腹大丈夫ですか?そろそろ天音の家に向かいましょうか!」
「おお、そうだな。予定よりちょっと時間押してるしな。そろそろ向かうか」
そう言って英治さんは天音の家へと向かって歩いた。
率先して英治さんが前を歩くなんて…。何となく気を遣わせちゃったかな?
「あ…あのタカさん」
「ん?ああ、な、何?」
「さっきの半分冗談ですんで」
「…!い、いや、わかってるわかってる!大丈夫だから!」
取り敢えず英治さんにも気を遣わせちゃったかもだし、これからの事もあるんだし、しっかり話せるように戻らなきゃ。
「いや、わかってないでしょ」
「わ、わかってるって!」
「わかってないですよ。半分冗談だけど半分本気って事」
「ほんっ…!?」
「奈緒さんや理奈さんがタカさんに憧れてたように、あたしもタカさんに憧れてたんですもん。もっともっと仲良くなりたいって本気で思ってます」
「結月ちゃん…」
「だからそれ…」
「それ?」
「結月ちゃんっての。奈緒さんや理奈さんは呼び捨てですし、それどころか母さんの事も呼び捨てですし。あたしも"ちゃん"付けは…。仲間っぽくないっていうか、あんまり好きじゃないですし」
「はぁ…なんか奈緒も前にそんな事言ってたな」
奈緒さんも?
って事は昔は奈緒さんも"奈緒ちゃん"って呼ばれてたのか。
「それにちゃん付けは好きじゃないって…。真奈美にも結月ちゃんって呼ばれてんくせに…」
普段は呼ばれてないですよ?
あたしも今日びっくりしたんですから。
「じゃあ、結月って呼ばせてもらうわ」
「は、はい!ありがとうございます!///」
え?ヤバ。何なのこの破壊力。
てかあたし…絶対今顔真っ赤だよ。自分でわかるし。
・
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「おお、ここのマンションだ。間違いないだろ結月ちゃん」
「はい。ここの5階が天音の家です」
「お前、駐車場から徒歩5分くらいって言ってたのに、何でこんな時間かかってんの?お前方向音痴だったっけ?」
「梓と一緒にすんなよ。天音ちゃんの履歴書の住所が番地までと部屋番号しか書いてなかったからよ。マンション名が書いてなかったから、ちょっと迷っただけだ」
「ああ、そうなの?マンション名書かなくても今は荷物も届いたりするしな」
「マンション名書きたくなかったのかもな…」
「は?何で?あ、ハイツクリムゾン…まじでか」
「天音ちゃんのお父さんもお母さんも、元クリムゾンエンターテイメントってのは知ってるけど…」
「だ、大丈夫ですよ!天音のお父さんもお母さんも今は、クリムゾンエンターテイメントとは全然関係ありませんしっ!」
そういやあたしも失念してたよ。
一応、おじ様と初めて会った時に、おば様の職場から近くて、安かったからここにしたって言ってたし。
あたしもクリムゾングループと関係ある社宅みたいな感じかな?って思ってたけど、考えてみたらおじ様もおば様もクリムゾンエンターテイメントから逃げる時に社宅を出てるんだし。
「英治は気にしすぎだろ。うちには海原の娘も孫も、クリムゾンエンターテイメントに父親が居る子もいるんだし。元クリムゾンエンターテイメントもな。本人がどういう音楽してんのかってのが大事だろ」
「確かにそうだけどな。
え?そんな子居るんだ?
現クリムゾンエンターテイメントって事は、こないだの撮影の時には多分居なかったんだよね?
ファントムがカフェタイムの時は、あたしら(天音達も含めて)緊張しちゃって、お邪魔させてもらったことないもんね。
…バンドとか関係ないうちの学校の子らも、ファントムのメニュー美味しいって言ってたし、いつかあたしもお邪魔させてもらいたいな。
あたしがそんな事を考えていると、タカさんは先々と歩いてマンションの中へと入って行った。
「あ、おい、待てよ、タカ。俺も別に気にしてるって訳じゃ…」
タカさんからも離れてるし、聞いてみてもいいかな?
「あの、英治さん」
「ん?どした?」
「やっぱりその…天音のお父さんとお母さんが、元とはいえ、クリムゾンエンターテイメントだった事。気になりますか?」
「ん?ああ、結月ちゃんから見ても気になってるみたいに感じさせちゃってたか。ごめんな、別に天音ちゃんのお父さんとお母さんの事は、本当に気にしてねぇんだよ」
あ、そうなんだ?
「さっきタカが言ってたように、俺達の周りにはクリムゾンエンターテイメントと近しい感じのメンバーも居るけど、俺もそこらへんは全くどうでもいいって思ってる。ただな…」
ただ?
「天音ちゃんのお父さんとお母さんは、天音ちゃんの本当の親父さんから、クリムゾンエンターテイメントから逃げてる訳だろ?つまり、今は静かに生活出来てるのによ。俺達のせいで、天音ちゃんのご家族がクリムゾンエンターテイメントにバレて、迷惑とかかかんねぇかな?って、それが心配なんだよ」
あ、なるほど。そういう事か。
おじ様とおば様の事…確かにクリムゾンエンターテイメントから逃げたってなると、これからファントムと一緒に天音が居ると、クリムゾンエンターテイメントからおじ様とおば様も狙われるかも知れないもんね。
…多分、おじ様は大丈夫だろうけど。
「タカもその事は心配してると思うんだけどな。あいつはまた…勝手に色々背負うつもりなんだろうな。って、俺はそれも心配なんだよ」
色々背負う?
そっか。15年前にも色々あって、レガリアの後継者とかにもなっちゃって、タカさんも色々あったから。
だから…さっきみたいに、1歩引いてるようなそんな考えがしちゃったのかな。
「だ、大丈夫です。あたしも母さんにファントムの所属、許してもらいましたから」
「結月ちゃん?」
「これからは、タカさんが勝手に背負っちゃうなら、それで潰れないように、あたしが支えます」
「結月ちゃん…。そっか、ありがとうな」
な、何かあたしも勝手に『支えます』って思ってるだけなのに、ありがとうとか言われると照れちゃうな。
「これからが面白くなりそうだぜ。取り敢えず三咲と日奈子にさっきの結月ちゃんの言葉連絡させてもらうな」
え?面白くなりそう?
何で三咲さんと日奈子さんに連絡するの?
「おーい、もうエレベーター来てんだけど」
あ、タカさんがエレベーターに乗り込んでる。
あたし達も急がないと。
あたしと英治さんは急いでエレベーターへと乗り込んだ。
・
・
・
「あ、ここです。天音の家」
あたし達は天音の家に前に着いた。
なんかやっと着いたって感じだ…。
-ピンポーン
あたしがインターホンを押して少ししてから。
『はい、どちら様ですか?』
インターホンからおば様の声が聞こえる。
「あ、あたしです。結月です。えっと今日は…」
「結月ちゃん?ちょっと待ってね。天音~!」
あたしが言いきる前に、おば様は天音を呼び、インターホンを切ってしまった。
またそれから少ししてから。
「は~い。……って、えぇ!?結月ちゃんと…タカさんと英治さんも!?」
天音が出て来てくれた。
天音…もう夕方だってのにまだパジャマなんだ?
え?もしかして今まで寝てたの?
「タ、タカさんなんかスーツを着てらっしゃるし…え?何で?」
「ん、ああ、いきなり悪いな。ちょっとご両親にご挨拶させてもらおうと思って…」
「お父さんとお母さんにご挨拶!?ど、どうしよう…そんないきなり…。あ、私まだパジャマだ。ちょ、ちょっとだけ待ってて下さい!」
それだけを言って天音はドアを閉め、『お父さーん!お母さーん!タ、タカさんが私をくださいってご挨拶に!』
天音は何を大声で叫んでるの?
いや、確かに天音がファントムに所属するのを許してくださいって挨拶だろうから、天音をくださいってニュアンスはあながち間違いではないのかも知れないけど…。
そして英治さんはニコニコ嬉そうな顔をしながら、スマホで何の操作をしてるの?
結構待たされちゃったりするのかな?って思ってたけど、ものの5分程で天音は出て来てくれた。
……何それウエディングドレス?何で天音はそんなの持ってんの?てか、パジャマからそれに着替えるのに5分くらいしか掛からなかったの?
「タ、タカさんも英治さんも、結月ちゃんもどうぞ。その…ちょっと散らかってるんですけど…」
あたし達は天音の家へとあげてもらい、奥のリビングへと通された。
「葉川さん、中原さん。初めまして。
天音の父の
「その妻であり天音の母親、
何でおじ様は紋付き袴を着て、おば様は白無垢みたいなの着てるの?いや、おじ様は何となくアレだとしても、おば様の白無垢はミスチョイスじゃない?
てか、タカさんも英治さんも引いちゃってるし。
「あ、えっと…その俺…じゃなく僕は葉川 貴と申しまして…」
「俺…じゃない、わたしは中原 英治と申します」
あたしと天音を余所に深々とお辞儀しあう4人の大人。
何?今から何が始まるの?
「あの…きょ、今日こちらにお伺いさせていただいたのは…」
「わかっています!天音の事で挨拶に来られたんでしょう?」
「はい。まぁ…そうなんですけど…」
「天音から聞いているかと思いますが、僕は天音の本当の父親ではありません。ですが、本当の娘のように…いえ、それ以上に想い、僕の愛情を精一杯注いで育ててきたつもりです」
「お父さん…(グスッ」
え?天音何で泣いてんの?
いや、おじ様が精一杯愛情を注いでくれてたってのは、嬉しいと思うし、感動もしちゃうかもだけど、これファントムの所属を承諾もらう為の挨拶だよ?
「まだ早いとは正直思いますけど、葉川さん、約束して下さい。天音の事を守ってくれると。そして、幸せにしてくれると。僕からは…それだけです」
「お父さん…私、絶対に幸せになります(グスッ」
「あの…守るってのは約束しますけど…その幸せって…」
「そんな…!?貴さんは天音を幸せにすると約束してくれないのですか!?」
「母さん…もしかしたら幸せは人それぞれで形が違うから、葉川さんも約束は出来ないのかも知れない。僕も母さんも天音も絶対に守ると、幸せにしたいと誓ったけど、幸せかどうかは当人にしかわからないから」
「そ、それもそうね。私ったら早とちりしちゃって…恥ずかしいわ。でも、私は幸せですよ。昔も今も」
「私も幸せだよ!お父さんとお母さんの娘で本当に良かったと思ってるもん!」
この親子は何を暴走してるの?何かの茶番劇?
タカさん、めちゃくちゃ困ってるし、英治さんはめちゃくちゃ嬉しそうにスマホ弄ってるし。
「あ、あの…その…ね?ま、まぁアレです。幸せに出来るようには頑張りますんで…。その、そろそろ本題に入らせてもらえません?」
は、はぁ!?タカさんもおじ様とおば様と天音の前で何を言ってんの!?あ、あたしの事も責任取ってくれるって言ったくせにっ!
「葉川さん、ありがとうございます。その言葉を聞けて僕はもう何を言う事もありません」
「グスッ…天音、幸せになるのよ。ふふ、こんなおめでたい日に泣いてちゃいけないわね。どうしましょう?お寿司でも取ろうかしら?」
「ハッハッハ!俺もしっかり聞いたからな。タカ、お前、天音ちゃんを幸せにしてやれよ(笑)」
「は、はぁ…英治…お前…まぁやれるだけは…」
「あ、あの…タカさん。ふ、ふつつか者ですが、よろしくお願いしまちゅ!」
クッ…ちょっとムカついてたのに、こんな場面でも噛んじゃう天音の可愛さで、ちょっと冷静になれたよ。
タカさん、場の空気に流されすぎだよ。
英治さんはわかってて煽ってるし…。
取り敢えずあたしが軌道修正しないと…。
-バンッ!
あたしは思いっきり目の前のテーブルを叩いた。
あ、ちょっと嘘ついた。ちゃんとテーブルが壊れたりしないように、ある程度手加減して叩いた。
「おじ様もおば様も天音も自分の世界に入ってないで!ちゃんとタカさんと英治さんのお話を聞いて下さい!
そしてタカさん!タカさん、ちょっと場の雰囲気に流され過ぎです!英治さんも面白がってないでちゃんと説明して下さいよっ!」
ハァハァ…。ちょ、ちゃんと声を荒らげ過ぎちゃったかな?
「母さん…もしかしたら結月ちゃんは…」
「ええ、そうね。ごめんね、結月ちゃん。お寿司より他の方がいいかな?ピザとかいっちゃう?」
「あわわ…そうだよ。私ちょっと浮かれ過ぎだよ。私には結月ちゃんが居るのに…。それに私はタカ渚派だから…ちゃんと言わないと…」
おじ様のあたしはもしかしたらって何?
おば様がピザにしようかで、何も反論しないって事はおじ様もあたしはお寿司が嫌と思ってたって事?
いや、あたしもどちらかと言えばピザよりお寿司の方が…。
って、天音は天音でタカ奈緒派のあたし的には、タカ渚派はどうかと思うけど『私には結月ちゃんが居るのに』だって?んーー!ここにおじ様もおば様も、タカさんも英治さんも居なかったら、うっかり襲いかかっちゃってるからね?発言には本当に気をつけなよ!?
「俺はやっぱり寿司よりラーメンの方が…」
「いや、おめでたい席ったら焼き肉だろ?そういや最近そよ風ばっかりで、焼き肉食いに行けてないよなぁ」
クッ…タカさんも英治さんも…。
「も、もういいです!あたしから説明させていただきます!何かおかしな所あったら、タカさんも英治さんも遠慮なく口を挟んでくださいねっ!」
そしてあたしはおじ様とおば様、天音に今日タカさんと英治さんがお伺いされた理由を、天音の本当のお父さんの事とかは悟られたりしないように気を使って話をした。
・
・
・
「ああ、概ね今、結月が説明してくれた事で合ってます。だからこのスーツは気にしないでください」
「おお。適切な説明だったよな。いや、結月ちゃんのおかげで楽出来たぜ。それよりタカはいつの間に結月ちゃんの事呼び捨てするようになったの?」
「……ははは、僕ももちろんわかってましたよ?そんないきなり…ねぇ?
だから、天音をファントムに所属させていただける事をよろしくお願いします的な…。あ、この紋付き袴は僕の休日の普段着ですんで、気にしないでください」
「わ、私も結月ちゃんに説明されるまでもなく、わかっていましたよ?ファントムに所属させていただけるなんておめでたいですもの。そりゃお寿司も取りたくなりますよ!あ、この白無垢は職場のユニフォームでして…。あ、今仕事から帰ってきたばかりでして」
「ど、どうしよう…。私だけちょっと勘違いしちゃってたよ…。あ、いや、わ、私もわかってたもん!ファントムへの所属の事、ふつつか者ですがよろしくお願いいたしますっていうか…。あ、このウエディングドレスはその…パ、パジャマですんで…うっ、お、お腹痛い…」
こ、この大人達は…。
天音は勘違いしちゃってたとか正直に言ってたし、可愛いからいいとしても…。
「と、とりあえず!タカさん達が今日ここにご挨拶に来られたのは、その…天音の事を…っていうか、Amaterasuの事ですんで」
「モチロンワカッテル。ダイジョウブ。ダイジョウブダヨ」
「その…私としては…私は元事務員という立場でしたが、あの頃の事は色々と把握している身です…」
「お母さん?」
おば様?おば様もさっきまでは勘違いしてたんだろうに、急に真面目な顔をして、タカと英治さんの方へ向けて話していた。
「ファントムには…貴さんや英治さん、BREEZEの方はもちろんですが、梓さん達Artemisの方達。その…クリムゾンエンターテイメントに快く思ってない方も、たくさんいらっしゃると思います。クリムゾンエンターテイメントのせいで…色々と人生が変わるような事も…」
おば様…。
そっか。天音が産まれてからクリムゾンエンターテイメントを抜けたと言っても、天音が産まれたのは15年前。
タカさんや梓さん達が、クリムゾンエンターテイメントとまさにドンパチやってる時の当事者でもあるから…。
って、それはおじ様もだよね…。
「そんな私の娘が…どの面下げて…とは正直思っています。私は直接指揮を取るような身ではありませんでしたが、皆さんのライブを邪魔する立場であった事は変わりませんから」
「お母さん…」
そっか。おば様も事務員とはいえ…。
「それを承知で恥知らずと罵られるかとは思いますが、お願い致します。天音は本当に音楽が、歌が好きで、やっと、その事を胸を張って言える場所を…。ですから、天音をどうか…天音のファントムの所属を許してはくださいませんか?お願い致します」
おば様はそう言って頭を深々と下げた。
「お!お母さん…!」
「おば様!!」
天音とあたしがおば様に駆け寄り、土下座しているおば様を起こそとした時。
「お母さん、頭を上げてください。俺達の方こそです。俺達のせいで色々と昔にややこしい事もやらされたりしたと思います。それでも、大事な娘さんを俺達ファントムに預からせてください。よろしくお願いします」
そう言ってタカさんは美麗という言葉がバシッてはまるような綺麗な土下座をしてみせた。え?こんな綺麗な土下座初めて見るんだけど。
「俺からもよろしくお願いします。大事な娘さんをお預かりさせていただきます」
そして英治さんまで土下座を…。
英治さんも何でこんな綺麗な土下座が出来るの?
「そ、そんな!貴さん!顔を上げてください!そして私の事はお母さんではなく、お義母さんと呼んでください!」
おば様?
「母さんにいい所持って行かれちゃったな。だったら僕も誠意をみせないとね」
おじ様も土下座しているような姿勢を取り、その姿勢のままタカさんと英治さんの顔を見て話し始めた。
「天音の本当の父親の事…。これは申し訳ありませんがまだ言えません。これはいつか…時が来たらわかる事だと思いますので」
おじ様!?
天音の本当の父親の事…話さないんだ?
確かに今はまだって気もするけど、そんな風に改めて言われたらタカさんも英治さんも余計に気になるんじゃ…。
「そして…今からお話する事も深くは言えません。僕の事だけ…お話させていただきます」
おじ様の事?まさかあの事を言う気?
天音にもまだ話してなくて、あたしと真凛と涼風にしかって…。
「色々話せないって前もって言われたら余計気になるよな?ははは、な、タカ」
「別に。俺も言えない事も言いたくない事もいっぱいあるし」
「ハハハ、すみません。僕にもまだもしかしたらクリムゾンエンターテイメントに所属しているって友達や、後輩達の事もありますので…。その、あまり周りの事は言うべきじゃないと言いますか…」
「あ、ああ!そうな!確かにな。15年前って結構な時間だからよ。まだ所属してるかもって仲間達の事、少し失念してたわ。俺の方こそすみません…」
「いえ、とんでもないです。
…僕は当時、BREEZEの皆さんともArtemisの皆さんとも、直接デュエルをした事はありません。ですが、あなた方がデュエルをした中には、僕が直接指揮を取っていなくても、偵察という形でその場に居た事があります」
「確か名も許されてないデュエルギグ戦闘員みたいなもんでしたっけ?そんなのごまんと居たし、その場に居た事があるって言われましても、まぁ、昔の事ですしって感じすよ?」
「あいつらいつも仮面とか着けてたもんな?仮面着けてなくても俺はいちいち顔とか覚えてねぇと思うけど。まぁ、むしろ戦闘員とか俺らのやられ役みたいなもんだったし、こっちの方が恨まれててもというか、謝らなきゃっていうか…」
「仮面…は着けていましたが。
僕は…海原社長の直属の部下であり、クリムゾンエンターテイメントの最高戦力。デュエルギグ干支の"子"と名乗っていました。梓さんを追い詰めたデュエルギグ干支の隊長を務めていました」
「へぇ~、デュエルギグ干支な。名前は聞いた事あるけど……って、え?デュエルギグ…干支…?」
「デュエルギグ干支って…あの全盛期の梓が何とか勝てたって…ま、マジでか、その…デュエルギグ干支の隊長!?」
「お父さんが…デュエルギグ干支…?え?ものすごく語呂が悪い…」
おじ様…言っちゃったか。
あの海原が選んだ最高戦力って。
そしてレガリア使いを倒す為に選らばれたミュージシャンだって。
おじ様…何でこの場でデュエルギグ干支の事を話そうと思ったんだろう?