第1章 ハッピーハロウィン
とうとう始まったぜハロウィン編!
ここまで来るのにめちゃくちゃ色んなの事があったよな!
俺はAiles Flammeの江口 渉!
今日ライブハウスファントムで開催されるハロウィンライブの為に、コスプレもしっかりとして、控え室で待機している。
ハロウィンライブの出演バンドは、
Ailes Flamme
Blaze Future
Canoro Felice
Dival
Noble Fate
Glitter Melody
Lazy Wind
の7バンドだ!
Noble FateとLazy Windは参加予定じゃなかったんだけど、綾乃ねーちゃんと真希ねーちゃんがコスプレやりたいって言って出る事になった。東山先生と花音ねーちゃんはコスプレしたくないって言ってたんだけど…。
そして、Lazy Windは明日香が嫌がったみたいだけど、架純ねーちゃんと聡美ねーちゃんが『明日香の学校のクラスメートは出るのに明日香だけ出ないのは可哀想だよ。青春させてあげたいじゃん!』と、拓斗にーちゃんに言ったら参加する事になったらしい。
そして!コスプレのラインナップはこんな感じだ!
俺達Ailes Flammeは不思議の国のアリス!
俺がチシャ猫で亮がマッドハッター、拓実が白ウサギでシフォンがアリスだ!
他のバンドはというと、
にーちゃん達Blaze Futureはジャンプヒーローらしい。
にーちゃんがるろうに剣心でまどかねーちゃんがONE PIECE、盛夏ねーちゃんが鬼滅の刃で、奈緒ねーちゃんがヒロアカらしいんだけど、なんでにーちゃん達はみんな主人公のコスなのに奈緒ねーちゃんは、出久じゃなくてお茶子なんだろう?あんまり深く考えないことにした。
そしてCanoro Feliceは昔話がモチーフらしくて、春さんが桃太郎、ユイユイが赤ずきんちゃんで姫咲ねーちゃんがかぐや姫、そんで松岡パイセンが浦島太郎だった。
みんなユイユイ以外は日本の昔話なのに、何でユイユイだけグリム童話なんだろう?あんまり深く考えないことにした。
Divalの衣装はすげークオリティが高くて、渚ねーちゃんがジャック・オー・ランタン、雨宮がヴァンパイア、理奈ねーちゃんが魔女で香菜ねーちゃんがサキュバスだった。香菜ねーちゃんの衣装はサキュバスって割に露出が全然なくて…『せっかくのサキュバスだから期待したのに!』って言おうものなら、また変態のレッテルを貼られそうなので自重した。
Noble Fateはスポーツのユニフォームをモチーフにしていて、花音ねーちゃんがバスケ、綾乃ねーちゃんがバレーボール、真希ねーちゃんがサッカーで東山先生が野球だった。みんなのユニフォームにはどこかで見たことあるような学校名が書かれていたけど、ジャンプ系って言っちゃうとBlaze Futureと被っちゃうもんな。と思って心の中に留めておいた。
そしてGlitter MelodyはゾンビJK。
美緒達の学校の制服をボロボロにして、しっかりゾンビメイクをしている。学校の制服そんなにボロボロにして次学校行く時大丈夫?とか思ったけど、睦月だけ何故かセーラー服着てて頭にクオリティの高い斧が刺さっていた。なんか睦月には色々聞くのは怖いのでスルーしておいた。
Lazy Windは聡美ねーちゃんの監修と独断で、ハロウィンっぽい者って事で、聡美ねーちゃんはキョンシー、架純ねーちゃんが猫耳メイド、明日香がゾンビメイドで、拓斗にーちゃんが狼男だ。
聡美ねーちゃんが『あれ!?架純の衣装ってゾンビナースちゃうかった!?何で猫耳メイドって可愛い系になっとんの!?』とか言っていたが、架純ねーちゃんは『こっちの方がタカさんが好きそうだって拓斗さんが…』とか言っていた。
その拓斗にーちゃんは狼男をやっていたんだけど、英治にーちゃんと狼男が被ったとかで『どっちが本物の狼男か勝負してやんよ!』とか言って、お互いの胸ぐらを掴み合いながら、もうすぐライブ始まるのにファントムから出て行った。
拓斗にーちゃんは狼男ってよりチワワ男みたいだったし、英治にーちゃんはプードル男みたいだったんだけどな!
そんでライブの手伝いをしている梓ねーちゃん達Artemisは見かけなかったから、何のコスプレしてるのか知らないんだけど、初音ちゃんは妖精みたいな格好してたし、三咲お姉さまは『え?それなんのゲームのラスボスですか?』って感じの、ものすごい大魔王みたいなコスプレをしていた。
「あ、Ailes Flammeの皆さん…こ、こんにちは」
「こんにちは、Ailes Flammeさんは不思議の国のアリスですか?皆さんなかなか似合ってますね」
俺がみんなのコスプレを思い返していると、後ろからAmaterasuのあまねると、Break Bellの結月の声がした。
AmaterasuとBreak Bellは研修生という形で、ファントムに所属している。
今回のハロウィンライブにはバンドとして参加はしないけど、あまねると結月は研修生という形でハロウィンライブのお手伝いをしてくれている。
Amaterasuの涼風もロビーの方で手伝いをしてくれているらしいけど、Amaterasuからは今回はあまねると涼風だけ。Break Bellからは結月だけのお手伝いらしい。
他のメンバーは前から予定があったとか、お給料払うにも人手は足りてるとかで、この3人だけになったそうだ。
「天音ちゃんと結月ちゃんのそれ。バニーかな?めちゃくちゃ可愛いし似合ってるね!」
何!?あまねると結月が…俺の後ろでバニー…だ…と?
ま、まさかバニーガールの姿で立っているというのか?
「確かに可愛いな。だがなシフォン。オレはお前のアリスが一番可愛いと思っているぞ」
「亮…そういうのもういいから」
み、見たい!振り向きたい!
だがここで振り向いてしまっては、俺はせっかく香菜ねーちゃんの時に自重したのに、変態のレッテルを貼られかねない!でも見たい!しょうがないじゃないか、俺だって思春期真っ盛りの男の子だし!
「は、恥ずかしいです…」
「あたしもですよ。まさかハロウィンライブのお手伝いで、こんな格好させられるなんて思ってませんでしたし」
くそ…見ちゃうか?振り向いちゃうか?
ちょ、ちょっとくらいならいいよな?
俺は覚悟を決め、変態のレッテルを貼られるのなら、それはそれで受け入れよう。そこにバニーガールが居るから悪いんだ。そうだ、俺は悪くない。と、思う事にし、チラッと振り向いて挨拶をしようとした。
「バニーガールじゃねーじゃん!ウサギの着ぐるみじゃん!!」
俺が振り向いた先には、ずんぐりむっくりとした動きにくそうなウサギの着ぐるみを着て、顔だけが露出しているあまねると結月がいた。
「え?わ、渉先輩、何を言ってるんですか?」
「江口先輩?これウサギですし、あたしらバニーだと思うんですけど…。一応あたしらガールですし」
「もしかして渉くん、天音ちゃん達のバニーって聞いて…バニーガールって思っちゃったとか?」
「しょうがないよな、渉。オレはそれでもお前の事は親友だと思ってるぜ」
「あー、うん。大丈夫だよ渉。しょうがないよね」
何なの!?俺が悪いの!?
シフォンの思わせ振りな言い方の方が悪くない!?
ウサギの着ぐるみでいいじゃん!何でわざわざバニーって言ったの!?
いや、確かに叫んでしまったのはいかがなもんかと思うけど…。
そんな事を考えていたら、明日香が俺の前に来て
「キモッ」
と、だけ言って去っていき、Glitter Melodyの恵美が来て
「渉くん、最低…」
と、だけ言って去っていき、次に何故か雨宮が来て
「江口。あたし何の事かわかんないんだけどさ?『江口くんにこの変態!って伝えてくれないかな?今すぐ』ってさっちからメール来たんだけど…。あんた何したの?とりあえず伝えたからね」
と、だけ言って去っていった。
明日香と恵美はともかく、何で客席に居るであろうさっちから雨宮にメールが来るの?と、少し怖かった。
・
・
・
「もうそろそろ開演だな。まずはGlitter Melodyか」
亮が誰に言う訳でもなくソッと呟いた。
今日のライブは、
Glitter Melody
Dival
Ailes Flamme
Canoro Felice
Lazy Wind
Blaze Future
Noble Fate
という順番になっている。
ワンマンをやり馴れているGlitter Melodyから始めてもらって、後は遅くなった場合、未成年組が早目に帰れるようにと、こんな順番にしたそうだ。
本当はにーちゃん達のBlaze Futureの企画だし、トリはBlaze Futureの予定だったんだけど、Noble Fateの参加が決まって、花音ねーちゃん達にラストの挨拶とか、ライブ馴れしてもらう為に、あえてNoble Fateをラストにしたらしい。花音ねーちゃんはさっきまで、いや、今もか。割と文句をにーちゃんに言っている。
「……おかしいな。さっきからもうかなり時間が経ってると思うんだが、時計が2分しか進んでない」
「亮ってもしかして緊張してる?僕も時間が長く感じるけど、控え室の時計も僕のスマホも時間のズレはないし、時計が壊れてるとかじゃないよ」
「ん、ああ、そうだよな。オレの時計とも合ってし、緊張して時間の流れがゆっくりに感じてるのかもな」
確かに変な感じするな。
時計の秒針はちゃんと動いてんだけど、こうやって話してる間に1分も経ってないし。
「ハッ!?ま、まさか…しまった!いかん!!」
俺達が時間の流れについて話していると、にーちゃんが急に叫び出した。
「タカ?どうしました?」
「急に叫びだしてどうしたのかしら?びっくりするじゃない」
「トイレに行きたい」
「は?タカ、あんた何言ってんの?」
「いや、トイレに行きたいんだけど。ライブ中に粗相しても大変だし」
「もう~早く行ってきなよ~。もうGlitter Melodyのライブ始まっちゃうよぉ~」
「ああ。そうだな。……あれ?まだこんな時間か。もう少し開演まで時間あるし、ちょっと行ってくるわ」
ん?『まだこんな時間か』って言ったって事は、体感的に時間経つの遅いって、にーちゃんも思ってんのかな?
「う~…ボクも今のうちにトイレに行ってくるよ」
「あたしも行っとこうかな」
「あ、ならあたしも行こっと」
「ちょっと睦月。私達はそろそろステージに向かわないと…」
「大丈夫。シャシャーって終わらせて、すぐ戻ってくるから」
そう言ってトイレに行ったにーちゃんを追うように、シフォンと雨宮、そして睦月も控え室から出て行った。
そんなシフォン達と入れ替わるように
「ふぅ…あの野郎。マジで殴ってきやがって…。まぁ、ハロウィンだし血糊って事で誤魔化せるか」
英治にーちゃんとファントムの外に出て行ったはずの、拓斗にーちゃんが控え室に戻ってきた。ん?その拓斗にーちゃんの後ろに居るのは涼風か?
「拓斗…もしかして英治さんを倒してきたの?」
「あん?俺があんなプードル野郎なんかにやられる訳ねぇだろ。狼は俺のように孤高に戦う者にこそ相応しい。孤高の狼…いや、ロンリーウルフとはまさに俺の事だぜ」
「うわぁ~…同じバンドとはいえ、拓斗さんのコレはいつも本当に気持ち悪いと思う」
「架純もタカさんの事になったら気持ち悪さは大概やけど、元アイドルやのに色々はっきり言うなぁ?」
「って、英治との戦いに結構時間掛かったと思ったんだが、まだ開演時間まで15分もあんのかよ」
開演まで15分?
いや、おかしいぞ。俺がさっき時計を見た時は、開演時間の7分か8分くらい前だったはずだし、美緒達Glitter Melodyもそろそろステージに向かおうとしていたのに。
俺がそう思った時だった。
-パチンッ
「ん?停電?」
「え?大丈夫なの?」
急に控え室の電気が消えてしまった。
みんなざわざわとしているけど、それなりに落ち着いてはいるようで、さっきトイレって出て行ったにーちゃん達がドッキリでも狙ってんじゃねぇか?って言い合っていた。
だけどその直後
ドドドドドド……
「う、うわっ!」
「地震!?」
「みんな!落ち着いていったん身を伏せるんだ!」
「天音!?大丈夫ですの!?」
「す、すずちゃん?私は大丈夫!結月ちゃんが抱きしめてくれてるし!」
「それはそれで全然大丈夫じゃありませんわ!」
立っている事も出来ないくらいの揺れ。
まるでこのファントムが持ち上げられて、ブンブン振り回されているような感覚になるくらいの地震が起きた。
電気も点いてないから、まわりがどんな状況かわからないし、今、自分がどんな状況なのかもハッキリとしなかった。
「うわぁぁぁぁぁぁ!」
「きゃぁぁぁぁぁぁ!」
みんなの悲鳴が聞こえる。
さすがにこの状況は、にーちゃんがドッキリでやるなんて次元の話じゃねぇし…!せっかくのライブだってのに、一体何が…。
そのまま俺は思いっきり転倒してしまい、頭をぶつけてしまったのか意識を失ってしまった。
・
・
・
「…くん、渉くん」
「ん…?り…なねーちゃん?」
「取り敢えず良かったわ。意識を取り戻したようね」
俺が目覚めた時、目の前には理奈ねーちゃんが居た。
「理奈ねーちゃん!さっきのは…いや、理奈ねーちゃんは無事なのか!?」
「ええ。一応身体は大丈夫ね。でも、この状況を大丈夫かどうかと聞かれたら、わからないのだけど」
俺を支えるように手を貸してくれながらも、理奈ねーちゃんは俺の方を一切見ず、1点をジッと睨み付けるように見ている理奈ねーちゃん。
「良かった。どうやら江口も目を覚ましたみたいだな」
この声は松岡パイセン?
「渉くんが目を覚ましてくれて良かったですけど…事態は好転してませんよね」
この声は恵美か?俺は理奈ねーちゃんにいつまでも支えてもらっている訳にはと思い、まだ少し頭がフラフラするけど起き上がった。
そして、起き上がった時に今の置かれている状況、周りを見て驚愕した。
この場に居るのは俺と理奈ねーちゃんと、松岡パイセンと恵美。
俺達はファントムの控え室に居たはずなのに、ゲームや映画で見るような中世のお城の中みたいな風景。
そしてこの4人を囲むように円になって、鎧を着た騎士みたいな人達が俺達に槍を向けていた。
「な、何だよこれ…」
「私も正直状況がサッパリだわ。でも、私達に向けられている敵意は本物だとわかるわね」
「くそ、何だってこんな事に…江口、動けるなら俺とお前で、なんとか理奈さんと松原だけでも…」
「松岡先輩!そういう訳にはいきませんよ!きっと話せばわかってくれますよ」
「話せばわかってもらえる…と、楽観的には考えられないわね。それに私が蹴散らして江口くんと松岡くんと松原さんを逃がす方がよほど現実的だわ」
いやいやいや、いくら理奈ねーちゃんでも、この人数の武器を持っている人には勝てないだろ!?
「キサマらぁぁ!何を話しておる!我らの問いに答えんか!何故いきなりこの場に現れた!?キサマらは何者だ!?」
いや、俺達もそれが聞きたい事っていうか…。
って言っても無駄な気がするな…。
「まさか我が国を狙う魔王の手の者か!?」
「魔王?何の事なのかしら?」
「ま、まさかさっきの地震で俺達…そして最近流行りの異世界転生ってヤツじゃ…」
「松岡先輩!怖い事言わないで下さいよ!」
「異世界…転生ではないわね。私は氷川 理奈だし、あなた達も私の知る江口 渉と松岡 冬馬、松原 恵美なのだもの」
そっか。俺達は俺達だもんな。
転生って訳じゃなさそうだな。
「ええい!さっきから何をブツブツと!構わん!全員一斉に攻撃するぞ!我らは王の盾となり槍となり!この国を守るのだ!」
「何を言ってもきっと無駄ね。みんな目が血走っていて、私達の言葉を聞く気がないもの」
「ど、どうしましょう…」
「理奈ねーちゃん!恵美!俺と松岡パイセンの後ろに!」
「全員突撃ぃぃぃぃ!!」
槍を持った騎士みたいな人達が、一斉に俺達に襲いかかろうとしていた。
「全員止まれ!!その者達を傷つける事は俺が許さんっ!!」
今まさに俺達の目の前に騎士の人達が突っ込んできた時、奥の方から聞いた事のあるような怒声が聞こえ、その声に応えるように、騎士達は攻撃を止め、声の方へ跪いた。
「取り敢えずは…助かったみたいね」
「ヒヤッとしたぜ。でも今の声って」
「うん、英治さんの声…に、似てましたよね」
「ああ、俺にも英治にーちゃんの声に聞こえた」
そう。俺が聞いた事のあるような声と思ったのは、英治にーちゃんの声だ。
いつも聞いている声だし間違いないと思うんだけど。
「ハッハッハッハッハ」
そして奥の方から笑いながら、ファンタジー映画に出てくる王様!って格好をした英治にーちゃんが歩いて来た。
「英治さん…?」
「中原さんが居るって事は…ここはファントムなのか?」
「で、でも英治さんって王様のコスプレされてましたっけ?」
「英治にーちゃん!これってどーなってんだ!?何かのドッキリか!?」
俺達は王様の格好をした英治にーちゃんに声を掛け、この今の状況を説明してもらおうと、英治にーちゃんに近付こうと動いた。
「キサマラァァァ!我が国の王に向かって無礼であるぞ!」
「我らが王には様と敬称せんかぁ!」
けど、英治にーちゃんに近付く事は叶わず、周りの兵士の人達に槍で制止されてしまった。
「よいよい。お前達も槍をおさめよ。この者達は俺が異世界より呼び寄せた勇者候補者達である」
「何と!?あの儀式が成功したと仰るのですか!?」
「この者達があの伝説の勇者達…」
「我が国を混沌から救うというあの伝説の…」
英治にーちゃんの言葉で兵士の人達はざわつきだした。
伝説の勇者?異世界から呼び寄せた?
それってどういう事なんだ?
「この者達もいきなりこの世界に呼び寄せられたのだ。状況もわからず困惑しておるのであろう。ああ、おい、ハツゥネ。この者達に説明を頼む」
「かしこまりました王。この勇者達には私から説明させていただきます。ではこの者達と私達で謁見の間に行きましょう」
え?初音ちゃん?
「初音ちゃんまで…いったいどういう事なの?」
「おう、頼むな。
この者達はつまりは俺の客人だ。兵達は槍をおさめて持ち場に戻るように」
俺達が戸惑っていると、王と呼ばれる英治にーちゃんはそう言って、俺達を初音ちゃんに別室へと案内させた。
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「と、いう訳なのです。勇者様達には大変申し訳ないとは思っているのですが、この世界の平和の為にやむを得ずと…。その儀式も急ごしらえで失敗したのですが、あなた方だけでも来て下さって助かりました」
「ちょっと…申し訳ないのだけど、考える時間をいただけるかしら?」
「南国DEギグでの事や、これまでのゴタゴタとかクリムゾンとの事で、色々馴れてきちまってたが…異世界ってのはとんでもなさすぎだろ…」
「私達どうなっちゃうんでしょう…魔王を倒して欲しいとか言われても…何で私達4人だけ…」
「取り敢えず俺はモノローグ内で、さっきのハツゥネちゃんの話をまとめてみるか」
えっと…。
俺達は異世界からこのファンタジーみたいな世界に来たと説明してくれたのが、この国の王族に代々仕えている王国占術師のハツゥネちゃん。
見た目は俺達の知る初音ちゃんにそっくりだ。
そして英治にーちゃんにそっくりなこの国の王様は、俺達の居るこの城。ファントムニア王国の王であるエィジィというらしい。
このファントムニア王国は1,000年前に建国され、今ではたくさんの人が住んでいて、建国以来大きな争いもなく、みんな平和に暮らしていたらしい。
それが200年ほど前から、魔物を使役し人々を襲う魔族がブリージア公国が建国し、このファントムニア王国と争いが勃発した。
この2国の争いは大きくはなかったけど、被害者も多く、どちらが勝利する事がなく膠着状態になっていた。
数年前にブリージア公国ではタカーという魔族が新魔王として即位し、圧倒的な戦略と知略でファントムニア王国の近隣の国を支配していった。
ファントムニア王国の隣国であり友好国であるアルテミィス帝国は、ファントムニア王国と共にブリージア公国と戦っていたが、王妃であるアズゥサ姫が、ブリージア公国のタカーという魔王に、連れ去られてしまったらしい。
それからアルテミィス帝国は混乱し戦どころではなくなり、このままこの世界がブリージア公国に支配されるのは時間の問題になった。
王国としてはこのままではマズイと思い、1000年前の伝承にある異世界の勇者を呼び寄せてみようという事になった。
1000年前にもこの世界は魔王による支配から逃れる為に、勇者を異世界から召還した。
伝承に寄れば、ボゥカァルとギトゥア、ベェイスとドゥーラと呼ばれる男女2人ずつの勇者が、オンガークという魔術を武器に、魔王に立ち向かい、最終的にはボゥクゥーンと呼ばれる2人の魔女が魔王を暴力で倒したらしい。
その伝承を元に儀式をして俺達を呼んだそうだ。
「今のハツゥネさんの話は、ボーカルとギターとベースとドラム。その4パートの8人が、音楽で魔王に立ち向かったという事ではないかしら?」
「いや…でも最後は結局暴力で解決したって言ってませんでした?」
「ねぇ…渉くん、何となくなんだけど…。この8人の勇者ってBREEZEの皆さんとArtemisの皆さんの事じゃない…かな?」
「ん?あ、ああ…そういやそうかも…。そういやにーちゃん達そんな話してたよな…」
「松原さん、江口くん。それはどういう事かしら?何故BREEZEとArtemisだと思ったのかしら?」
「あ、えっと…先日ファントムにお邪魔させていただいてたときに、それっぽい話を聞きまして…」
「みんなで同時に気を失って同じ夢を見たってオチになってたんだけど、こないだ
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『そういえば拓斗さん達はハロウィンライブとかってしなかったんですか?』
って拓実が拓斗にーちゃんに聞いて…。
『あ?ああ…一応俺達もハロウィンでコスプレしながら、ライブやろうってやった事があるな。Artemisと対バンで…』
『あの時は今回のハロウィンライブと違って、コンプラ的に色々あったから、お客様はコスプレ禁止だったんだけどね』
『へぇ~、そうなんだ?ハロウィンライブは盛り上がったの?』
『ああ、盛り上がるには盛り上がったな。ライブだけは…。楽しかったしライブだけは』
『なんだよにーちゃん。ライブだけはって強調してるけど、ライブ以外で何か失敗しちゃったのか?』
『あ、それっぽいのあたしも翔子ちゃんに聞いた事ある』
『え?睦月マジ?私達ハロウィンライブとか聞いた事ないと思うんだけど。恵美と麻衣は聞いた事ある?』
『あたしも聞いた事ないと思うけどなぁ~』
『私もArtemisのライブDVDは…神崎先生が持って来てくれてる分は全部見たけど、コスプレしてるライブは観た事ないかも』
『ハッハッハ、タカがライブだけはって言ってるのは、俺らもArtemisもあん時は、魔界に召還されて魔王討伐で大変だったしな』
『英治!バカ野郎!あの魔界の事は…』
『そうだよえーちゃん、アレは夢だよ夢…。魔界なんてそんな…』
『そ、そうだぞ英治。俺もめちゃくちゃ鮮明にあの夢の事は覚えてっけど…。いやいやいやアレは夢だって。だってアレがアレだし』
『おっちゃんもたか兄達も何を言ってるの?魔界とかって…。あ、その歳でまだ中二病とか?』
『いや、こいつらは夢って言ってるけど、マジで魔界に行ったんだって。梓達にも聞いてみろよ、マジだから。翔子はさすがに信じてもらえないと思って、睦月ちゃんにしか話してないんじゃねぇか?』
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「とかな話があったんだよ」
「さすがに私も冗談だと思ってたんですけど…」
「そういえば渚が梓さんに聞いたお話の中に、異世界への召還っていうのがあったみたいだと言っていたわね」
ねーちゃんも梓ねーちゃんから、それっぽい事を聞かされたって事はこの異世界って状況はマジなのか?
いや、マジなんだろうな。俺達が実際にこんな世界に居るんだし。
「もし葉川さん達の話が本当なら、俺達も元の世界に戻る事が出来るって事ですかね?」
「あ!そうですよ!きっと私達も…」
「その可能性は高いのだけど、元の世界に戻る方法がわからないわね。一番可能性が高いのは、その魔王ってのを倒せば元の世界に戻れそうではあるけれど」
「それだよ、理奈ねーちゃん!俺達も魔王を倒せばいいんだよ」
「それでもあくまでも可能性の話だし。それに今の私達はタカさん達の時とは違って4人よ。そして私達はボーカル、ベース、ドラム、ドラム。ギターがいないわ」
「「「あ…」」」
そっか…にーちゃん達の時はBREEZEとArtemisで8人。そして伝承通りならギターが俺達には居ないのか…。
「あの…やはりご迷惑でしょうか?」
俺達がいつまでも4人だけで話し合っているもんだから、ハツゥネちゃんが心配そうに俺達に声を掛けてきた。幼女にそんな顔をされちまうと…。
「よいよいハツゥネ。どうせその者達も、元の世界に帰る方法がわかんないんだろうしな。俺もわかんないし。アレだぞ、結局魔王を倒さない事には元の世界に戻れないだろうから、我らの頼みを聞かざるを得ないんだしよ」
「確かにその通りね。私達には魔王を倒すしか道はないのだとは思うのだけれど。あの王様にはムカつくわね。思いっきりひっぱたいてやろうかしら」
「俺も中原さんと違って、あの王様にはムカつきますけど我慢して下さい」
「そ、そうですよ。一応王様ですし」
「理奈ねーちゃん落ち着いてくれな」
そうして俺達はしぶしぶではあるんだけど、王様に魔王を倒す事を約束した。
「おうおう!そうかそうか!快く引き受けてくれるか!」
「やっぱりひっぱたいてやりたいわ」
王様がニコニコと笑いながら俺達に近付こうとした時だった。
-パリーン!
俺達の居る謁見の間。
その部屋の高い位置にある大きな窓ガラスが割れて、俺達の目の前にガラスの破片が落ちてきた。
ガラスの破片が俺達に当たる事はなかったが、何事かと思い、割れた窓ガラスの方に目をやった。
「フン、異様な魔力を感じたから、いったい何事かと思って来てみたら、まさかあの伝承の勇者を召還していたなんてね。なかなか面白い事をやっているじゃない」
割れた窓ガラスの所に立つ人影。
俺達はそいつを目視して驚いた。
「志保…?」
「あ、雨宮?…あんな所で何やってんだ?」
「志保さん…何で」
「それより雨宮のヤツなんであんなエロチックな格好してんだ?あいつヴァンパイアじゃなかったっけ?あ、あれ?そういや俺も今まで失念してたけど、何で俺達いつもの制服を着てんだ?理奈ねーちゃんはいつもの私服だし。おかしいな…俺達ハロウィンコスしてたはずなのに…」
今さらながらに自分達の格好に驚き、俺達は雨宮に似たヤツと対峙するのであった。