バンやろ外伝 -another gig-   作:高瀬あきと

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第12章 あたし達の冒険譚

「ん…!よし!真希さん、お願いします!」

 

「オッケー!えっと、フレイムバフ!」

 

あたしは弓を引き矢を放つ。

そして真希さんがその矢に、炎のバフをかけて、あたしの放った矢は、炎を纏いながら魔物の足元に着弾した。

 

-ドォォォン!

 

「グモッ!?グモォォォォ…!」

 

炎の矢が足元に着弾した爆発と音に驚き、魔物は尻尾を丸めてというか、体全体を丸めながら逃げていった。

 

「おー!さっすが香菜ぽんとマッキーだ!」

 

あたしと真希さんの連携攻撃を見た結衣が感嘆の声をあげる。

 

「ゴルァァァァ!」

 

そんな結衣に向かって新たに現れた魔物が攻撃してきたのだった。

 

「ゆ、結衣!危ないっ!」

 

魔物に気付いたあたしが結衣に向かって声をあげる。

 

「え?わ!?」

 

「うちに任せときっ!アースウォール!!」

 

魔物の攻撃が結衣に直撃しそうになる瞬間。

結衣と魔物との間に土の壁がせりあがり、魔物の攻撃は土の壁が防いだ。

 

「ゴウッ!?」

 

「わぁ~。助かったよさとみん!ありがとう!」

 

聡美さんにお礼を言った結衣は、土の壁から魔物側へと回るように移動し…。

 

「ご、ごめんね。痛くしないからね」

 

両手に短剣を握ったと思うと、華麗に踊るように魔物がに切り付けた。

 

-スパスパスパッ…

 

「ふぅ…」

 

「ゴウ?」

 

-スパーン!

 

「ゴオォォォォォ!?」

 

次の瞬間。

魔物の体を覆っていた毛が刈られ、魔物はトリミングされたてのトイプードルのような…。

あ~、何て表現したらいいんだろ?

とにかく変な…っていうか、キモカワいい感じのスタイルにされてしまった。

 

「ゴ…ゴォォォォォォォン///」

 

そしてその魔物は何故か胸と股間部分を手で隠しながら、内股で逃げて行った。

 

あらやだ。花も恥じらう乙女の香菜さんともあろうあたしが、股間とか言ってしまうとは…。

 

あたしの名前は雪村 香菜。

Divalのドラマーのはずなんだけど、今は異世界でアーチャーをやっている。

 

「ユイユイちゃんには今回もヒヤッとさせられたけど、なんとか無事で良かったよ」

 

この人はNoble Fateのギタリスト真希さん。

タカ兄と渚の会社で経理のお仕事をしているみたいだけど、今はこの異世界で付与術士をしている。

 

「うちも簡単な防御魔法なら、詠唱なしで出せるようになったしな。みんなの事はうちが守ったるから!」

 

この人はLazy Windのドラマーである聡美さん。

この異世界では魔防師という魔法で防御壁を作れる職業をしている。火や水や風や土、それぞれの属性に合わせた壁を作れるらしい。

正直、ここ最近は魔物に出くわす機会が多いから、聡美さんの防御魔法にはずいぶん助けられている。

 

「さとみんごめんねー。私がぼんやりしてたもんだから…」

 

「何言うとるのん。うちこそユイユイに助けてもらってるし。ユイユイが戦ってうちが守る。なかなかの連携プレーやで」

 

そしてこの子が元blue tearのアイドルで、現Canoro Feliceのギタリスト結衣。

今はディアルブレイズ。わかりやすく言うと双剣を使う剣士だ。

素早い動きと剣撃で戦うタイプ。

あたしも戦闘職だけど後方支援って感じだし、近接での戦闘なら結衣があたし達の中で最強だ。

 

あたし達は何故かこのファンタジーな世界に召還されてしまった。

あたし達もこの世界に来た時は、何がなんだかわからず、戸惑いや不安もあったんだけど、あたし達の召還された場所が良かったんだと思う。

 

あたし達は最初から4人一緒に居て、村の宿屋のような所で目を覚ました。

知らない場所という事もあり、さっきまでハロウィンライブの準備をしていたという事もあり、混乱していたんだけど、あたし達が目を覚まして、宿屋から外に出てみると、村の人達があたし達を勇者様と崇めてきた。

 

何の事だかわからないあたし達は、村の人達にその勇者様ってやつの事、この世界の事などを色々と質問して、そのひとつひとつを丁寧に説明してもらった。

 

あたしが英治先生から軽く聞かせてもらった事のある異世界の話。結衣がCanoro Feliceを始めてから澄香さんに軽く聞かせてもらった異世界の話。

真希さんが創作話のネタ程度に、昔にタカ兄に聞かせてもらった異世界転生の話。

村の人達の話と英治先生達の話をまとめて、あたし達は異世界に召還されたんだと信じる事にした。

 

聡美さんは『拓斗くんからそんな話はうちは聞いてないかなぁ?まぁ、拓斗くんの話なんかまともに聞いた事ないんやけどね』と言っていた。

 

そして何故、村の人達はあたし達を勇者と崇めていたのかと言うと、その村の近くの山には古の魔物が住み着いているという事で、その魔物は定期的に村に食べ物を貢ぎ物として捧げるよう言っていたみたいだけど、今回初めて、生け贄として若い女性を差し出すように要求してきたのだという。

 

今までは村の生活には困らない程度の貢ぎ物だったし、その古の魔物に貢ぎ物をしているから、その魔物が他の魔物から村を守ってくれている。と、解釈して貢ぎ物をしていたらしいけど、今回は若い女性の要求。

村から犠牲者を出さないといけなくなったと思って焦っていたそうだ。

 

そんな時に見慣れない服装、急に村に現れた事で、あたし達を勇者と思い、その魔物の討伐をお願いしたかったらしい。

 

その村にも伝わっている伝承や、あたし達が聞いていた話では、勇者は楽器を使い音楽で魔物を倒していたという。

 

それなのにあたし達は誰も楽器を出す事が出来なかった。

 

だけどあたし達は村の人達には助けてもらい、あたし達もそんな話を聞かされては、何もしないなんて出来ない。あたし達は色々話し合い、その魔物への生け贄はあたし達がなるという事にした。

 

本来、あたし達が召還されてくる前に、生け贄になる予定だった女の子が、Canoro Feliceのチューナーである綾小路さんにそっくりだったから、何とか助けてあげたいというのもあったんだけどね。

 

そして古の魔物の前にあたし達が行った時。

 

古の魔物をなんやかんやとやっつけて、古の魔物も若い女性の生け贄が欲しかったのは、ただ単に1人で寂しかったから一緒に女子話をする友達が欲しかっただけだという事がわかった。古の魔物が女の子?メス?だったってのにもびっくりしたけど…。

 

あたし達は古の魔物を可哀想に思い、村の人達に事情を話した。

その結果、古の魔物と村の人達はお互いに助け合い、共存していく事になった。

 

そして古の魔物のチカラで、あたし達の職業や戦い方がわかり、村の人達の助言で勇者の伝承を詳しく聞かせてもらうようにと、人間国のブリージア王国へと向かっているのだった。

 

………。

 

「なんであたし今の冒険譚をモノローグで話してんの!?十分すごい話じゃん!あの冒険譚で2話はやれたんじゃない!?」

 

「わ!?香菜ぽんどうしたの!?」

 

「香菜ちゃん疲れてきた?あ、そろそろ休憩する?」

 

「うちも休憩したいとは思ってますけど、地図によるともう少し行けば村があるみたいですし、そこまで頑張りたいとは思うんやけど…」

 

「あ、あはは。ごめんごめん。あたしまだ大丈夫ですよ。もう野宿は勘弁って感じですし、あたしも聡美さんの意見に賛成です」

 

「そう?じゃあ、もうひと踏ん張りしよっか」

 

いけないいけない。

いつものツッコミスキルが発動しちゃったよ。

自分のモノローグにツッコミしても、みんなからは変に思われるだけだよね。

ここに来た当初はツッコミする余裕もなくて、焦るばっかだったけど、この状況にも馴れてきたって事かな?

 

 

 

 

 

 

「地図によると、もう少し行った所に村があるみたいなんやけどなぁ…」

 

「ここら辺って結構ひらけてる場所なのに、村の明かりも物陰も見えないね」

 

聡美さんが地図を見ながら首をかしげている。

真希さんもこの辺りの地形を見ながら、聡美さんの地図を覗いてる。

 

もう陽は沈みそうだし、明かりの点いている家があってもいいはずだし、そういった明かりがあるなら、ここからでも見えそうなもんなんだけど…。

 

「あれ?ねぇ、あそこ。あれって建物じゃない?」

 

結衣が指をさした方向にみんな目をやった。

う~ん…確かに建物に見えなくはないかも。

 

「この地図の村の場所とは少し離れとりますね」

 

「そだね。この世界の地図だし、そこまで正確じゃないとか?」

 

取り敢えず他にめぼしい建物も見えないし、このままだとまた野宿になっちゃうしという事で、あたし達はその建物の場所まで歩く事にした。

 

あれが村の建物だったらいいんだけど…。

野宿はもちろん勘弁だけど、出来ればお風呂に入りたい…。

 

 

 

 

 

「な、何これ…」

 

「ひどい…」

 

「この位置からすると…確かにこの地図にある村の端っこの方やね…」

 

あたし達がさっき見えた建物に向かう途中。

その道中には朽ちた家屋が並んでいた。

どの家もあたし達の身長にも満たない高さしかなくなっている。まぁ、家壁があるだけで屋根も何もないんだけど…。

 

「この様子やと村は魔物に襲われたか、戦争に巻き込まれて被害を受けたか…やろうね」

 

「この惨状じゃ…町の人達は…」

 

…聡美さんと真希さんの言葉に息が詰まる。

この辺りには人の気配も何もない。

あたし達がもっと早くこの世界に来てたらって思う事すらおこがましく思う。

あたし達が居た所で、あたし達も巻き込まれて死ぬだけだ。

 

「何でや…何でうちらは…」

 

「聡美!」

 

聡美さんが何か(・・)を言う前に真希さんが聡美さんを抱き締めた。

 

「私達が居てもどうしようもなかったと思うよ。でもさ、私達はシッキーちゃんも古の魔物も、あの村も守ったんだよ!私達が異世界(ここ)に来れたから」

 

「うぅ…でも…でも…」

 

聡美さんは泣き出してしまった。

真希さんはそれ以上何も言わなかったけど、真希さんもこの惨状は辛いだろうな。あたしも頭の中がごちゃごちゃして…。自分の無力さが恨めしい。

 

と、そこまで思ってハッとした。

 

結衣!

結衣は!?

 

あたしらの中じゃ一番感情的なのは結衣だ。

この異世界に来て何もかもがわからない状態だった時も、結衣がシッキーちゃんを助けようって言い出したし、古の魔物と村のみんなと仲良くさせようって提案したのも結衣だ。

 

結衣がこの惨状を見て冷静にいれる訳が…!

 

「結衣!」

 

あたしはたまらず叫んでしまった。

 

「…結衣?」

 

だけど結衣は微動だにする事もなく、あたし達のそばに居るだけだった。

 

「…大丈夫だよ、かなぽん」

 

大丈夫?

 

「あそこの建物の明かり。きっと…この町から逃げれた人達の…だから、きっと大丈夫」

 

結衣が指をさした方角。

そっちに目をやる。

そこはさっきあたし達が見た建物のある方角だ。

 

今は陽もほとんど沈んじゃって、建物もあるのかないのかわからないんだけど…。

 

「きっと生きてるよ!」

 

結衣はそう言って走って行った。

 

「結衣!待って、ひとりじゃ危ないよっ!」

 

あたしも結衣を追って走り出す。

 

「ユイユイちゃん!香菜ちゃん!」

 

「真希さん、うちらも!」

 

その後から真希さんと聡美さんも走って追いかけてくれた。

 

 

 

 

 

「誰も…居ない…?」

 

あたし達はその建物が見えたと思った場所に着いた。

確かに建物はある。見た感じプレハブ小屋みたいな建物や、茅葺きの小屋みたいな感じの建物が並んでいる。

そして、多分あたし達がさっき見た建物。

ちょっと高い建造物って感じだけど、とても人が住めるような面積はなく、何っていうか、見張り用の矢倉?そんな感じの建物があった。

 

「ここも…魔物か何かにやられた後やろか…?」

 

「それにしては建物も新しいし…」

 

「うん、誰も居ないように見えますけど…人の気配みたいなのはありますよね」

 

「人の気配?香菜ぽん、それホント!?」

 

「うっ、結衣…。えぇっと…さっきから感じない?その何て言うか、誰かに見られてる感じ?」

 

さっきからずっと気になっていた。

この建物付近に来てから人を目視は出来てないんだけど、ひっそりとこちらを伺っているような感覚。

ちょっと前にデュエルギグ野盗と戦ってた時に、他の誰かに見られてるな~って感じていたような感覚。

 

「確かに…うちも何となくそれっぽいの感じるわ」

 

「私には全然わかんないんだけど~…。うん、香菜ちゃんと聡美ちゃんは、それなりに修羅場もくぐってるし、そういう感覚に長けてんのかな?」

 

「うぅ~…私も全然感じないんだけど…」

 

「あ、いや、あたしも何となくって感じなだけで、えっと…上手く言えないんですけど…あ、あはは」

 

あたしもそんな修羅場をくぐってきたって訳じゃないし。何となくあの頃と同じような感じがするだけで…。

改めて真希さんや結衣に言われると、あたしの勘違いかもって気もするし…。

 

 

-ガサッ

 

 

!?

間違いなく物音がした!

そう思った刹那の出来事だった。

 

「アースウォール!」

 

聡美さんが魔法で土の壁を作り、あたし達の元に飛んできた矢を防いだ。

…矢が飛んできた?

 

「え?え?え?」

 

「ユイユイちゃん!香菜ちゃん!真希さん!うちの側に来て!!」

 

聡美さんが叫んで、あたし達は言われるままに聡美さんの近くに駆け寄った。

 

「ウインドドーム!」

 

聡美さんはあたしと結衣、真希さんが近くに来たのを確認してから、風の防御魔法。

あたし達の周りに風の防御壁を張った。

 

「くぅぅぅ~…こ、この魔法は防御魔法としては完璧やけど、この人数を守れるくらいの大きさで展開するのは、魔力がごっそり無くなりそうやわ…」

 

聡美さんが張った防御壁は、あたし達4人をすっぽりと囲めるようなドーム状の魔法壁。

常に風を起こして防御しているもんだから、魔力の枯渇もすごいんだろうな。

 

-ヒュン、ヒュンヒュンヒュン

 

周りからは怒涛の如く矢が飛んできていた。

だけど、聡美さんの魔法のおかげで、矢があたし達に届く事はなく、風の防御壁を前に落とされていく。

 

「わわわ、さとみん大丈夫!?」

 

「あはは…大丈夫って言いたい所やけど、このままやとちょっとキツいかな…」

 

「ど、どうしようか?あたしが内側から矢を撃ってみる?」

 

「うちの今やってるウインドドームは、完全鉄壁魔法なんやけど、弱点もあって内側からも攻撃は外側に出されへんねん」

 

えええぇぇぇぇ…それって手詰まりじゃない?

こっちからも攻撃出来ないんじゃ、聡美さんの魔力が切れちゃうと…。

相手の矢による攻撃が止んでくれたらいいけど、四方八方から矢は飛んで来てるし、全然矢が止まる気配もないし。

 

「私の付与魔法を香菜ちゃんの矢にかけて、この魔法を内側から突破出来ないかな?」

 

「真希さんの付与魔法…か。確かにうちの魔法を上回る貫通力が付与出来たら、内側からも攻撃出来るかも知れませんけど…」

 

「聡美ちゃんの魔力を上回る魔力を付与か…。でも、やってみるしかないよね」

 

「そ、そですね…。このままじゃジリ貧やし、うちの魔力ももう限界近いし…」

 

「いけますか?真希さん!」

 

あたしは弓を取り出し、一撃に賭けるように矢を構えて弓を思いっきり引いていた。

 

「そだね。私もありったけの魔力を付与するよ」

 

真希さんはあたしの矢に手をかざし詠唱を始めた。

いつもは手をかざすだけで、魔力を付与してくれてるっぽいのに、真希さんが詠唱をするなんて初めての事だ。

聡美さんの魔力を越える程の魔力を付与するってなると大変なんだろうな。あたしも一応古の魔物の話では、魔力で弓を撃ってるらしいけど…。

 

「ま、待って!ちょっと待って!」

 

真希さんが詠唱をしていると、結衣が何故か真希さんの腕にしがみついて魔力付与を止めた。

 

「ゆ、結衣?」

 

「ちょ、ちょっとユイユイちゃん!?しがみつかれたら、魔力付与出来ないんだけど!?」

 

「ユイユイちゃんどないしたん!?うちも結構限界やねんけど!?」

 

「ち、ちがくて…あの、その…マッキーはどんな魔法をかなぽんの矢に付与するつもりなの!?」

 

「魔法?あ~…えっと、私が得意なのは火系の魔法だし、広範囲に影響できるように、爆裂魔法を付与するつもりなんだけど…」

 

「こ、広範囲だったらさ!?あんまり強い魔法だったとしたら、周りの人死んじゃわない!?」

 

「!?」

 

「あ、た、確かに…」

 

「そ、それもそやね。確かにうちらは一般の人らより魔力高いみたいやから…。全力でやっちゃうと、被害も大きくなるかもやね…。かと言って、手を抜いたらうちの魔力壁は越えられへんやろし、うちが手を抜いた途端に蜂の巣にされちゃうかもやし…」

 

結衣の止めたい気持ちもわかる。

古の魔物の話じゃ、あたし達の魔力はかなり高いらしい。まぁ、実際に古の魔物も凌駕したし、今まで魔物に襲われても余裕で対処が出来てたくらいだ。

 

そんなあたし達の攻撃をまともに受けてしまったら、魔物はもちろん、人間だったら一溜りもないだろう。

でも、このままじゃ聡美さんの魔力が尽きて、そしたらあたし達は…。

 

「香菜ちゃん、あっちの方角。わかる?」

 

「え?」

 

真希さんが弓を引くあたしに声をかけてきた。

真希さんの言う『あっちの方角』。

その方角に目を向けると、少し高い壁があり、その壁の向こう側から、矢が順々に飛んできていた。

 

「あの壁の向こう側には、たくさんの人…か、魔族か魔物かわかんないけど、とにかくあの壁の向こうから、こっちに矢を射ってきてる人がいるっぽいよね」

 

「え、そ、そうみたいですね」

 

「あの壁から私達の中間地点くらい。ううん、もっと私達側でもいいかもしれない。そこに矢を射ることは出来る?」

 

「中間地点より私達側って…ほぼ聡美さんの風の壁抜けたあたりですか?」

 

「うん。そこの地面に向けて撃って。そしたらきっと、あっちの人達に大ダメージは入らないだろうから」

 

「…!?わ、わかりました。ギリギリ狙ってやってみます」

 

真希さんの言いたい事はわかった。

こっちに近い所に矢を撃って爆発させれば、あの壁が向こう側の人達を守ってくれるだろうし、爆発が大きく出来れば出来る程、相手への威嚇になると思う。

 

だけど、その爆発が強すぎた場合、聡美さんの魔力を越える爆発が起きたら、あたし達は…。

 

「って!考えてもムダムダ!オッケです、真希さん!魔力付与お願いしますっ!」

 

「うん、私のありったけの魔力を込めるよ」

 

「うぅ~、かなぽん、マッキーごめんね。あたし何も出来ないのに…」

 

「うっし!うちももう少し…ふんばるわ!」

 

真希さんが詠唱を始めて、あたしの矢に魔力が込もる。

弓を引いているだけでもわかる。この矢にはとんでもない魔力が付与されて、かなりの威力を発揮するだろうと。

 

……ううぇ!?大丈夫かな?

こんな凄そうな矢をあたしらの近くで爆発させても、ホントにあたしら大丈夫?

 

「はぁ…はぁ…魔力…込め…たよ…はぁはぁ…」

 

「ありがとうございます!」

 

考えてる場合じゃない。後はあたしが上手く撃つだけだ。

 

「スーパーファイナルエクスプロージョンアローアタック!!」

 

あたしは必殺技の名をたからかと叫び矢を射った。

 

「「「ダ…ダサいっ!!」」」

 

え?結衣と聡美さんと真希さんが、声を揃えてダサいとか言ってるけど…。まさかあたしの必殺技の名前に対してじゃないよね?

 

あたしの必殺技であるファイナルアローアタックと、真希さんの爆裂系付与を合体させた、オシャンティーな名前だ。ダサいなんて事はないはず。

 

 

-ドォォォォ…ン!!

 

 

とか、何か心配しちゃったけど、この爆発の威力の方が凄くない!?

 

あたしの射った矢は聡美さんの防壁を内側から貫通して破り、そのままの勢いで地面へと刺さった。

その刹那、矢から大きな爆発が起こった。

 

あたしも真希さんも急いで身を伏せたけど、爆発があたし達に届く事はなかった。

 

「あれ?何で?…あ、土の壁?」

 

「土の壁って…これ!聡美ちゃん!?」

 

あたしの射った矢の爆発は、あの威力なら確実に風の防壁も突破して、あたし達も無事ではいられなかったはず。だけど、いつの間にか目の前に建っていた土の壁が、あたし達を爆発から守ってくれていた。

 

「へ、へへへ…。二重魔法や。ぶっつけやったけど、上手くいって良かったわ。ブイっ!」

 

聡美さんはそう言って、ピースポーズを取ったまま倒れてしまった。

 

「「「聡美さん(ちゃん)(さとみん)!!」」」

 

あたし建は倒れる聡美さんに急いで駆け寄ったけど、聡美さんが倒れた直後、あたし達の回りに渦巻いていた風は段々と消えていった。

 

風の力が弱まり、土の壁も崩れ、あたし達を守る壁はなくなってしまった。

それを狙っていたのか、さっきの爆発から止んでいた矢は、またあたし達に向かって四方八方から飛んできた。

 

「クッ、さとみんの死は無駄にしないよっ!」

 

いや、聡美さんの死って…。聡美さん別に死んだ訳じゃないから。

結衣は何かに覚醒したのが、物凄い動きで飛んでくる矢を双剣で叩き落としていた。

あたしも残った力を振り絞り、矢をガトリングのように撃つ『香菜ちゃんガトリング』で迎撃していたけど、やはり数には勝てず、結衣の迎撃やあたしの迎撃を抜けた矢が、真希さんと聡美さんに襲いかかろうとしていた。

 

「あわっ!?マッキー、さとみん!」

 

「くっ、間に合わない…!」

 

「聡美ちゃんは私が守る!私が盾になっても…!」

 

真希さんは聡美さんを守るように覆い被った。

もうダメだ。あたし達は覚悟した。

 

-キンキンキンッ!

 

その直後、真希さんを守るように、真希さんに向かう矢を埃でも払うかのように、長い剣と槍で矢を叩き落とす人が視界に入った。

 

「皆さん!攻撃を止めて下さいっ!」

 

そう言って真希さんの側に立ったのは…。

 

「ト、トシキさん?」

 

「あれ?トッシー?」

 

「トシ兄?何でここに…」

 

「この方達は俺達の敵じゃありません!きっと、俺達の希望、勇者様達だと思います!」

 

そこにはあたし達のよく知るトシ兄が立っていたのだった。

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