バンやろ外伝 -another gig-   作:高瀬あきと

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第6章 響け!Dival!!

私の名前は水瀬 渚。

今日は私達のバンドDivalと、職場の先輩のバンドBlaze Futureの対バンライブの日だ。そして、私達のデビューライブの日でもある。

 

ライブハウス『ファントム』に着いて、Blaze Futureのギタリスト奈緒と合流し、時間までお茶でもしてようとカフェスペースに入ると、カフェはお休みで物販をやっていた。

 

私達Divalはもちろんグッズなんか用意してないし、奈緒もBlaze Futureのグッズは用意していないと言っていた。

何が売っているのかと気になり、奈緒と2人で物販を覗いてみると、そこには先輩の昔のバンドBREEZEのグッズが山程売られていた。

 

マフラータオル、Tシャツ、リストバンド、メンバーのブロマイド、ピック、キーホルダーなどなど。これ絶対15年前の売れ残りだよね?とは思っていたけど、奈緒曰く『宝の山』だそうだ。

 

奈緒は全種類買う!と、ワクテカしていたけど、ファントムのオーナーであり、元BREEZEのドラマーである英治さんにプレゼントしてもらい、更には英治さんのブロマイドにはサインまで書いて貰って大喜び。

 

私は別にBREEZEのファンではないので、グッズは遠慮したが、元BREEZEのボーカルである先輩のブロマイドが大量に余っていたので、先輩を憐れと思い3枚だけ貰ってあげる事にした。別に使用用、保存用、観賞用というわけではない。

 

 

BREEZEのグッズを貰い、大喜びしていたBREEZE大ファンっ子奈緒だが、そんな幸せな時間もすぐに終わった。

 

そう、私達がファントムの裏手に回り、楽屋に向かおうとした時だった。

 

ファントムの裏手にある喫煙所に居たのは、私達Divalのベーシスト氷川 理奈。元BREEZEのボーカルであり、現Blaze Futureのボーカルであり、私の会社の先輩、葉川 貴。そして、奈緒の妹JKの美緒ちゃんの3人だ。喫煙所とは言っても、喫煙者は私の先輩である葉川 貴だけだ。

 

奈緒はBREEZEのボーカルTAKAが大好きだ。恋とかではなく、憧れのバンドのボーカルとして。断じて恋ではないらしい。あ、先週の飲み会後の二次会でのトラウマが…。ゴメンナサイモウシマセン。

 

先輩はそんな奈緒の憧れであるTAKAのイメージを壊さない為、今の自分を見て幻滅させない為に、奈緒には自分がBREEZEのTAKAである事を内緒にしていた。

 

そして奈緒も、TAKAと先輩が同一人物だと気付いてはいるが、先輩に一緒にバンドをやりたいと言ったのは、『BREEZEのTAKAだったからじゃない。』その想いから、先輩がBREEZEのTAKAだと気付いている事は内緒にしていた。

 

だけど今日、美緒ちゃんの言った何気無い一言でそれは瓦解した。

 

先輩は『奈緒が先輩の事をTAKAと気付いている事』を知り、奈緒は『先輩をTAKAだと気付いている事』を知られてしまった。

 

でもそれも今のふた……ううん、Blaze Futureの絆の前には些細な事だった。

 

そんな事件を乗り越えて、私達はファントムの中にあるDivalの楽屋でライブの準備をしていた。

 

「渚…長い…」

 

「え?何が?」

 

志保が私に声を掛けてきた。一体何だと言うのだろうか?

 

「モノローグが長い」

 

どうやら志保には私の心が読まれているようだ。ニュータイプ同士はわかりあえるんだね、ララァ。

 

「そもそもそんな感じのやつ、ちょっと前に盛夏がしてなかったかしら?」

 

なんと!?理奈にも心が読まれているというのか!?

 

「みんなメタ発言とかしてないで早くライブの準備やっちゃおうよ。渚も『Divalの楽屋でライブの準備をしていた。』じゃないよ…。さっさと準備しないとBlaze Futureのリハ終わっちゃうよ?」

 

まさか香菜にまで読まれているとは…。これは迂闊に変な事考えられないね!おっと、変な事なんか考えた事ありませんけどねっ!

 

「そういや今日の対バンはどっちかのバンドの出演が終わってから交代する。って、段取りじゃないんだね?」

 

「そうね、今日は私達もBlaze Futureもステージ上にいる形式の対バンね。機材の入れ換えとかの時間は省けるけど、演奏するスペースは狭くなるから、リハもしっかりとしないといけないわね」

 

志保と理奈がそんな話をしている。今回のこの形式は先輩と私で仕事中に話して決めたんだよね。おっと、間違えた。仕事の休憩中にだ。仕事中は真面目に仕事してますよ?

 

「みんな準備は大丈夫?」

 

「衣装がまだ届いていないという事に関して以外は大丈夫よ」

 

私がみんなに聞くと理奈がそう返事してくれた。

 

衣装。そう。今日は私達のステージ衣装も届く。本当にギリギリになっちゃったけど、理奈の知り合いの仕立て屋さんが頑張ってくれた。前の事務所も使ってるプロの仕立て屋さんらしい。

 

ステージ衣装を用意しようと決まったのは先週の日曜日の夜。

前日の朝まで呑んでた私と理奈だったけど、香菜が日曜日に急きょ話があると言うので、私の家で飲み会をする事になった。急きょと言ってもほぼ毎日顔を合わせてるけどね。

 

 

 

 

 

『やっぱり1日の終わりのビールと志保の料理は最高だね~』

 

『渚、明日は仕事なんだし飲み過ぎちゃダメだよ!』

 

『は~い。志保のいう通りにしますぅ~』

 

『理奈ちもだよ?明日は学校あるんだし…。それ何杯目?』

 

『香菜、女性にあんまりそういう事を聞くものじゃないわ』

 

『なんでよ…。あ、志保ごめんね。あたしらも御呼ばれしちゃて…』

 

『ううん、大丈夫だよ。Divalの話ならお酒の場の方が渚と理奈が面白いし』

 

『こないだあんだけ痛い目見たのに?』

 

『貴が絡まなかったら大丈夫でしょ?それで?話って何?』

 

『ああ、んとね、ステージ衣装ってあんじゃん?』

 

『ああ、あたし達もそういうの用意した方がいいのかな?』

 

『昨日のライブの時、Ailes Flammeもevokeも衣装って感じではなかったけど、なんとなく色とかスタイルとか合わせてた感じじゃん?』

 

『あ~、確かにね。あたし達って私服の系統全然違うもんね。なんか合わせた方がいいかな?』

 

『理奈!お洋服!お洋服買いに行こう!』

 

『そうね。私もそろそろ買いたいと思ってたのよ。明日行きましょう』

 

『渚、理奈ち、ごめん。あたし達ステージ衣装の話してるんだけど?』

 

『キュアトロのマイリーみたいな衣装にしよう!私はキュアトロになる!』

 

『そうね。明日買いに行きましょうか。志保も香菜もいいかしら?』

 

『志保。この人達何を言ってるの?』

 

『家飲みだとこうなるんだよ。おもしろいでしょ?』

 

『話が進まないんだけど…?』

 

『もっとおもしろくしてあげよっか?』

 

『え?これ以上カオスにするの?何で?』

 

『渚』

 

『何?志保?おかわり?』

 

『キュアトロのマイリーみたいな服着てたら、貴に惚れられて口説かれちゃうかもよ?』

 

『……それはいけない。服のデザインは私が考えます』

 

『そうね。考えただけでも身震いしてくるわね。では、こうしましょう。私の前の事務所でお世話になってた仕立て屋さんがあるわ。そこで渚のデザインの衣装を仕立ててもらいましょう』

 

『私、ペンと紙を持ってくる』

 

『私は早速仕立て屋さんに電話してみるわ』

 

『ね?面白くなってきたでしょ?』

 

『え?これ本気なの?衣装作るの?』

 

 

 

 

そうして私達はステージ衣装を作る事になった。何でこうなった?

 

そんな事を思い出しながら、私達がリハの為にステージに行くとBlaze Futureがリハをしていた。

 

〈〈〈バシン〉〉〉

 

え?

 

「な、何でそんな事言うんですか!私は…貴とバンドを…ライブをしたかっただけなのに!」

 

奈緒…?

 

「俺はな。BREEZEのTAKAなんだよ。それは変わらない。過去は変わらない」

 

先輩…?

 

「うっ…くっ……無理です……」

 

「俺も無理だわ」

 

何で…?

 

「ちょっと…何で?もうその話は終わったんじゃないの?」

 

理奈も心配そうにしている。

 

「理奈」

 

「ええ、止めないと…」

 

私達がステージに入ろうとした時、香菜に腕を掴まれた。

 

「香菜…!離して!」

 

「大丈夫でしょ。あれお芝居っぽいし。多分まどか姉だよ。盛夏も台本みたいなの読んでる」

 

え?

 

「無理です無理です!あはははは。貴の顔を見て笑わないとか…む…無理…」

 

「いや、俺も無理だって。こんな小芝居誰が喜ぶの?これなら俺が昔やった一人漫才のがうけるわ。あ、ごめん。やっぱり無理。昔、全然うけなくて赤っ恥かいたし。……え?てか、俺の顔見たら笑えるの?うっわ、人を笑顔にする顔とか、俺素敵過ぎるな」

 

「あはははは。あー、改めて見ると変な顔…」

 

「俺、帰っていいか?もうライブとかやれる精神状態じゃないんだけど?」

 

お芝居……?なっ!?

 

「何で2人共笑ってんの!!ここから感動的に、やっぱりBlaze Futureは大切な場所だ~!みたいな展開になるのに!」

 

「まどかさ~ん、これやっぱりダメだよ。あたしの台詞少ないしあたしが目立たない~」

 

な、何でこんなお芝居を…。心臓に悪いよ…。

 

「お芝居で良かったわ…。今日の事があったわけだしビックリしたじゃない」

 

「本当だよね…」

 

でも、お芝居で良かったよ…。

もう……

 

「先輩!」

 

「お?Divalやっと来たか」

 

「さっきの何ですか?私も理奈もビックリしたじゃないですか!」

 

「ああ、今日のライブって、枠は2時間だろ?俺らの曲って3曲しかないしな。MCだけじゃ限界あるからどうしようか?とか、考えてたらまどかのバカがな」

 

そっか。Blaze Futureも私達も3曲しかないもんね。6曲じゃ確かに2時間はキツいかな…。

 

「でも、だからって今のお芝居は!」

 

「確かにな。あれはないわ」

 

なら最初からやらないでくれませんかね!

 

「なかなか感動的に書けたと思ったんだけどなぁ…。理系の私じゃダメか…」

 

まどかさん!台本じゃなくて題材の問題ですよ!

 

「それよりお前ら今からリハすんの?」

 

「はい。そのつもりで来ました」

 

「そか」

 

先輩はそう言った後、何か考えこんで…

 

「よし、まどか、お前香菜の事見てやってくれ。理奈はcharm symphonyの時にライブもやってるから大丈夫だろ?」

 

「あいよ~」

 

まどかさんがそう言って香菜の所に行き、

 

「ええ、問題ないわ」

 

理奈は先輩の問いかけにそう答えた。

 

「奈緒と盛夏はさっき教えたみたいな感じで志保を頼むわ」

 

「了解です!」

 

「おっけ~」

 

「んで、渚は…、PAは裏で英治がやってくれてるから、英治と確認しながら音調してくれ。俺は客席の一番奥に行って聴こえるかとかそういう合図送るから…まぁ、それも合わせて音調してりゃいいわ」

 

先輩はそう言ってステージから飛び降りて客席の奥に走って行った。あ、転んだ。また立ち上がって、今度は走らずに歩いて行った。

 

音調…どうやればいいんだろう……?

 

それより私達のリハ。手伝ってくれるんだ…?Blaze Futureも色々あると思うのにね。ありがとうございます。先輩、奈緒、盛夏、まどかさん。

 

 

 

 

 

私達のリハも滞りなく終わり、Blaze FutureとDivalで、ある程度の流れを確認した。予想時間は1時間ちょっと。ライブの時間を考えると全然足りない。あんまりダラダラやり過ぎるとオーディエンスも冷めたり飽きたりしてくる。そこは先輩が、何か時間までに考えてくれるらしい。

 

『今までの俺の経験した中で、やれそうな事で盛り上がりそうなやつ考えとくわ。あ、俺の経験とかほぼ黒歴史ばっかりやん』

 

とか、言ってたけど、仕事も今まで一緒にやってきたのを見てるから、先輩のそういう所は信頼してます。さっきのリハの時も私達に色々教えてくれたしね。

 

私達が楽屋に戻ろうとした時、英治さんに呼び止められた。

 

「渚ちゃん、Divalに何か荷物届いてたぞ?楽屋の前に置いてあるから確認しててな」

 

「わ、ありがとうございます~!」

 

私達のステージ衣装が届いたんだ。早く楽屋に戻って着替えなきゃ!

 

 

 

 

楽屋に戻った私達は早速届いた荷物を確認する。やっぱり衣装が届いていた。

私達は荷ほどきをし、衣装を確認する。

 

「おー!いいじゃんいいじゃん!さっすが渚のデザイン!可愛い!」

 

「あ、改めてこう見ると可愛らしすぎないかしら…」

 

「理奈ちは私服も可愛い系多いじゃん?あたしの方がこういうの着るの緊張しちゃうよ」

 

うん、本当に可愛く仕上がってる。

今回の私達のステージ衣装は薄い水色を基調としている。

 

理由としては、私が『水』『瀬』、志保が『雨』宮、理奈が『氷』『川』、香菜が『雪』村と、水を連想させる言葉がみんなの名字に入っているから、そして私の名前が海を連想させる『渚』。

 

理奈がそう言って私達のイメージカラーは水色に決まった。

 

「あ、衣装見てる場合じゃないよ!早く着替えなきゃ!」

 

 

 

 

 

 

 

着替えを終えた私達はBlaze Futureの楽屋に顔を出した。

 

先輩に衣装褒めてもらえるかな?って思ってたけど、志保にしか可愛いとか言わないし…。別に可愛いとか言われたかったわけじゃないけどねっ!!

 

そして、私達のライブの時間が近付いてきた。

 

どうしよう…今になって不安になって来た。私には志保も理奈も香菜もいる。

ステージに立って曲が始まれば、いつも通り歌えばいい…。

でも、今日はライブだ。MCもしっかりやらないといけない…。上手く喋れるかな?

 

「渚?どした?」

 

私が不安に思っていると先輩が声をかけてきた。

 

「先輩…。私、超緊張してます。上手くMCやれるかな?喋れるかな?」

 

「んな不安そうな顔すんな。大丈夫だ。今日は俺も居る。任せろ」

 

「は、はい!」

 

先輩…。そうだね。今日は先輩が居てくれてる。頼りにしてますね。先輩。

 

 

 

私達がステージ裏に行くと会場からのざわめきが聞こえてきた。

 

香菜と盛夏が客席を覗いているので私もつられて行ってみる。

うわ~、本当にすごいお客さんだ。香菜と盛夏の友達かな?若い女の子が多い。いや、私も若いけどね?

 

「あ、江口達も来てくれてる。さっちもだ!」

 

志保の友達も来てくれてるんだ?さっちちゃんってよく話に出る子だし、どんな子か気になるなぁ~。

 

私の友達は……うん、さすがにいないか。地元からじゃ新幹線乗らなきゃだし、こっちの友達って考えてみたら、ここにいるみんなしか居ないもんね…。

 

「う~ん、私の友達は来てくれてないかぁ…」

 

「は?お前会社のやつらに話したの?てか、お前友達居たっけ?」

 

う、会社でも先輩としかあんまり話さないしな…。私達隔離部署ですしね…。

 

「いえ、会社の人には言ってないですよ。地元の友達とか」

 

「いや、さすがに来れなくね?」

 

わかってますぅ。みんなお仕事もあるだろうし遠いし…。でも、ちょっとくらい期待してもいいじゃないですか。

 

「む!そんな先輩こそ友達来てくれてるんですか?」

 

「ばっか。俺にはお前らが居れば十分だから誰も呼んでないまであるな」

 

「「「「「「「うっ」」」」」」」

 

「ん?どしたん?」

 

先輩ってさらっとこういう事言うのって、わかってて言ってるのかな?計算なの?とか、思ってドキッとしたけど、考えてみたら先輩の友達もここにいるみんなしか居ないんじゃん…。

 

「おし、準備はオッケーか?そろそろ時間だ。照明落とすぞ?」

 

英治さんがそう言った。私達のライブが、初めてのライブが始まる。

 

 

 

 

 

会場の照明が落とされ、SEが鳴り響く。

 

まずは先輩達Blaze Futureが登場し、私達Divalも後を続く。

会場の手拍子や歓声が一層私を緊張させる。

 

ボーカルの私と先輩がステージ中央に立つと、私達は照明に照らされた。

 

〈〈〈わぁぁぁぁぁ!〉〉〉

 

すごい歓声だ。私は今、ステージに立ってるんだね。

 

………あれ?先輩?

本当ならここで先輩が挨拶をするのに…。

 

そう思っていたら、先輩は左手を高々と上げ……

そして左手を思いっきり降り下ろし、その反動で体を回転させた。それと同時にまどかさんのドラムが鳴り響く。 

 

「行くぜ!Blaze Future!!………Re:start!」

 

先輩がそう言ってBlaze Futureの曲が始まった。

 

BREEZEの曲より大人しい印象もあるけど、激しさもある王道ロックって感じの曲だ。これがBlaze Futureの曲なんだね。隣にいる私も自然と身体が動いちゃう。

 

ああ…。仕事中の真面目な先輩や、一緒にお話してて楽しい先輩とは違う。

奈緒や理奈がBREEZEの時の先輩の事好きなのわかる気がする。

 

 

 

 

 

 

〈〈〈わぁぁぁぁぁ!〉〉〉

 

「ありがとう。Blaze FutureでRe:startでした」

 

Blaze Futureの曲が終わり、先輩が挨拶をする。次は私達Divalの番だ。

 

「さて、自己紹介が遅れてしまったけど、俺達が!Blaze Futureだぁぁぁ!!」

 

〈〈〈わぁぁぁぁぁ!〉〉〉

 

「今日は短い時間だけど、俺達Blaze FutureとDivalのデビューライブです。

みんなの思い出に残るような最高のライブに……。

……ここにいるみんなと俺達で最高の1日にしたいです。俺達が失敗したら盛大に笑って下さい。俺達がかっこいいと思ったら盛大に歓声を下さい。みんな1人1人が家に帰って、今日1日を思い出して楽しかったって1日にして下さい」

 

先輩…。

うん、そうだね。失敗しても笑って貰えばいい。私も堂々と歌姫らしく。

 

「じゃあ、みんなでどんどんぶち上がっていこう!次はDivalだ!!」

 

〈〈〈わぁぁぁぁぁ!〉〉〉

 

「みんな!こんばんはー!」

 

〈〈〈こんばんはー!〉〉〉

 

「ありがとう!私達がDivalです!!」

 

〈〈〈わぁぁぁぁぁ!〉〉〉

 

「今日は私達のデビューライブです。ここでこうしてみんなに逢える事を楽しみにしてました!」

 

うん、喋れてる。かっこつけたりする必要ないんだ。これはライブだもん。

私は私の想いをみんなに伝えるだけでいい。

 

「貴さんも言ってましたが、失敗したら思いっきり笑って下さい。それが、私達のライブだから…」

 

ここで決め台詞!……言うの恥ずかしいなぁ…。けど、よ~し……!

 

「あなたのハートに!響け!Dival!!」

 

私の台詞の後、志保と理奈のハーモニーからこの曲が始まる。

 

歌い出しのタイミングを間違えないように…。よく曲を聞いて、集中して…。

 

今だ!

 

 

OCEAN(オーシャン)

 

 

私の曲名コールの後、一気に激しい曲になる。志保も理奈も香菜もヘドバンしながら演奏する。もちろん私もボーカルだから頭を左右に振りまくる…。激しく、荒々しく。

 

頭がボーッとしてくる。ふらつきそうになる。ダメだ。頑張れ私!

 

そして私は歌い出す。

 

 

♪♪

♪♪♪

 

 

ハァ…ハァ…ハァ…きっっつい。

酸素が上手く吸えない…。でも、倒れたりなんか出来ない。笑顔…笑顔で…。

 

「ありがとうございましたー!DivalでOCEANでした!」

 

ハァ…ハァ…。笑顔…で…。

 

「みんなー!最高に盛り上がったかな!?」

 

〈〈〈わぁぁぁぁぁ!〉〉〉

 

〈〈〈Dival最高ー!!〉〉〉

 

ふふ、えへへ。みんな盛り上がってくれた。

 

「まだまだ盛り上げていくよー!みんな!ついてきてね!」

 

〈〈〈わぁぁぁぁぁ!〉〉〉

 

水…水が飲みたい…。でも…。

 

〈〈〈わぁぁぁぁぁ!〉〉〉

 

みんなの声を聞くと元気になれる気がする。本当にありがとう。私達の曲を聞いてくれて。

 

その後、先輩がBlaze Futureのメンバーと私達Divalのメンバーを紹介してくれて、Blaze Futureの2曲目が終わった後、照明が落ちた。こんな段取りじゃなかったのに。

 

おかげで少しだけ私は休憩が出来て、水を飲む事が出来た。

 

「渚、お前最初から飛ばし過ぎ…。大丈夫か?」

 

薄暗いステージの上で先輩がそう声をかけてくれた。

 

「あんま時間も取れないからな。照明上がったら、お前らの曲の開始だ。バラード曲あったろ?それで行け」

 

「だ、大丈夫です!」

 

「ライブの時間と体力のペース配分も大事なの。後は俺がなんとかすっからバラード曲やれ。そんでラストに暴れろ」

 

先輩…。心配してくれてるのかな?

 

「わかりました」

 

そして照明が上り、私達の2曲目が始まる。本当なら3曲目にやるはずだった曲。段取りは変わっちゃうけど、志保も理奈も香菜も…。きっとやりきってくれる。

 

素直になれなくて(すなおになれなくて)

 

私がそう曲名をコールした。

 

♪~

 

さすが志保だ。上手く対応してくれた。

 

 

 

 

そして私達の2曲目が終わった。

 

「みんなー!まだまだ盛り上がれるかー!?」

 

先輩が客席を煽る。

 

「もっともっと熱い夜にするよ!みんな!ぶち上がって行こうー!」

 

そう言って私は飛び上がった。

あ、あれ?膝がガクガクする…。

 

「さて!次は俺達Blaze Futureのギタリスト奈緒と、Divalのギタリスト志保とのギターバトルだ!」

 

「ふぁ!?ふぇ!?私!?」

 

「ちょっと…聞いてないんだけど…」

 

「みんなー!歓声よろしく!」

 

〈〈〈わぁぁぁぁぁ!〉〉〉

 

「う~、よし!負けないよ!志保!」

 

「上等!最高のギタリストの実力!魅せてあげる!」

 

志保と奈緒のギターバトルが始まり、先輩は私の手を引いてステージ裏に戻った。

 

 

 

「こ、こんな所に私を連れ込んでナニをする気ですか!?」

 

「アホか。ちょっと座ってろ」

 

「渚さん、お水」

 

初音ちゃんが私にお水を持って来てくれた。

 

「衣装もあるし、ステージの上はめちゃ暑いからな。ちゃんと水分取らんと倒れるぞ?それに飛ばし過ぎって注意したのに、まだピョンピョン跳び跳ねるとかなんなの?前世うさぎ?」

 

私は両手を頭の上にやってうさぎの耳を型どり、

 

「ぴょんっ」

 

とか、言ってみた。

 

「なにこのくそ可愛い生き物」

 

おわっ!?先輩に可愛いとか言われちゃったよ。

 

「まぁ、いいや。あー、あー、マイクのテストなう。みんな聞こえてるな?この後、俺達が戻ったらBlaze Futureでコピー曲やろう。OSIRISのvoiceならみんないけるだろ?返事はいらない。どうせ返せないだろうし」

 

先輩がイヤモニに指示を送った。私、みんなに迷惑かけてばっかりだな…。

 

「全然迷惑とかないから気にすんな」

 

「え?先輩?」

 

「なんかそんな事思ってそうな顔してたから」

 

「そうだよ。渚ちゃん、こういう演出もライブには必要だしな。むしろ、楽器隊も自分の見せ場が出来たし良かったと思うぞ」

 

先輩と英治さんがそう言ってくれた。

 

「それに見てみ。奈緒も志保も楽しそうに演奏してるだろ」

 

うん、音から2人が楽しんで弾いてるのが伝わってくる。

 

「ギターバトルもそろそろ終わりだろうし、お前らもそろそろ準備しとけよ?」

 

「いや、まだ大丈夫そうだぞ。Blaze FutureにもDivalにも目立ちたがり屋も負けず嫌いも揃ってるしな」

 

ギターバトルが終わり、歓声が響く中、盛夏がステージの中央に躍り出た。

 

「ふっふっふ、Blaze Futureの美少女ベーシスト盛夏です」

 

盛夏が自己紹介を始めた。

 

「理奈~!次は私とベースバトルだ!」

 

「わかったわ」

 

理奈もステージの前に出る。

 

「盛夏。身の程を思い知らせてあげるわ」

 

「よし!いくよー!理奈!」

 

そしてベースバトルが始まった。

 

「な?まだ大丈夫だったろ?」

 

「まどかと香菜の目もギラギラしてるな。こりゃドラムバトルもありそうだな」

 

「渚さんも今のうちに休憩しててね」

 

初音ちゃんがそう声をかけてくれた。

それよりさっきから、初音ちゃんが一生懸命私をうちわで扇いでくれている。なにこの子お持ち帰りしたいんだけど?

 

「んで、どうすっか?俺らのコピーが終わったら、もうお互い1曲ずつしかねぇし」

 

「コピー終わった後に、MC挟んでお前らの曲やって…中途半端に時間余るな」

 

先輩と英治さんがこの後の段取りを話し合っていた。

 

「アンコは出来ねぇから、そのまま終わるにはインパクトに欠けるよな?」

 

「だったらラストにお前らみんなでBREEZEの曲でもやれば?氷川さんや奈緒ちゃんのお母さんも来てるなら喜んでくれるんじゃないか?」

 

「いきなりBREEZEの曲なんかやるって言っても、誰も演奏出来ないだろ?まどかと香菜ならやれるだろうけど」

 

BREEZEの曲か…。でもあの曲なら…。

 

「あ、あの!志保も理奈もFutureなら出来ると思います!私の部屋で弾いてましたし!」

 

「え?マジで?なんか俺らの曲を練習してくれるとか嬉しいなタカ」

 

「盛夏と奈緒もFutureなら練習してたって言ってたしちょうどいいか……」

 

「問題は私が歌詞を覚えてません!!」

 

何度か聴いた事はあるけど、それだけじゃ覚えられないよ?

 

「悪いが俺もうろ覚えだ」

 

え?先輩もなの…?

 

「はい、Futureのスコア」

 

そう言って初音ちゃんがスコアを貸してくれた。何で持ってるんだろう?

 

「ありがとうな、初音ちゃん。よし、今のうちに覚えてしまおうぜ」

 

「これって先輩に全然似合わない歌詞ですね?」

 

「ほっとけ」

 

 

 

 

 

「ドラムバトルも終わりそうだぞ?そろそろ準備オッケーか?」

 

「おう。歌詞もバッチリ思い出した」

 

「私はわからないところは、ふにゃふにゃ~って歌いますっ!」

 

さすがに短時間では覚えきれなかった…。うん、さすがに無理!

 

「渚さん、大丈夫?」

 

初音ちゃんが心配そうに聞いてくる。

 

「うん、ありがとう。もうバッチリ元気だよ」

 

「頑張って」

 

「うん!」

 

〈〈〈わぁぁぁぁぁ!〉〉〉

 

「ドラムバトルが終わったぞ?照明落とすからな」

 

「みんなすまん。助かった。照明が落ちたら俺達もまたステージに戻るからvoiceの演奏始めてくれ」

 

先輩がイヤモニでそう指示を出して、照明が落とされた。

 

「みんな、ありがとう!先輩達のvoiceが終わったら、すぐにDivalでコピー曲始めるよ。私達はキュアトロのメガメガトロンでいこう」

 

私がイヤモニにそう指示を送ると、薄暗いステージの中で、志保と理奈と香菜が小さく頷いたのが確認出来た。ありがとう。みんな。

 

 

 

そして、Blaze Futureのvoiceと私達のメガメガトロンが終わり、みんなで雑談みたいな楽しいMCも終わり……、私達の3曲目も終わった…。もうライブの終了の時間が迫って来ていた。

 

「みんな、今日は本当にありがとうございました。俺達の曲はこれでお仕舞いです。俺達の曲って言ってもコピー曲も挟んだりしちゃいましたが。名残惜しいけど、今日のライブはこれで終了です」

 

〈〈〈えぇぇぇぇぇぇ!〉〉〉

 

え?先輩?Futureは!?しないの!?

 

そう思って先輩の方を見ると軽く頷いた。そっか…。これで終わりなんだ…。私もちゃんと挨拶しないと…。

 

「みなさん、今日は本当にありがとうございました。今日このステージに立てた事、本当に…本当に幸せでした。名残惜しいですけど、最後まで聞いてくれて……ありがとうございました!」

 

うわっ、ヤバ…。ちょっと泣きそうになってきた…。

 

「俺達は……。Blaze FutureもDivalも、これからも、もっと曲を作って、もっと熱いライブをたくさんやっていきます。こんな俺達ですけど、これからもよろしくお願いします!!」

 

〈〈〈わぁぁぁぁぁ!〉〉〉

 

「にーちゃーん!もう1曲やってくれー!」「たか兄!アンコール!アンコール!」「理奈かっこいいー!」「渚ちゃーん!アンコール!アンコール!」「渚ちゃんもっと歌ってー!」

 

みんな……。ありがとう、ありがとう…。

もう涙腺崩壊必至だよ……。うぅ…。

 

「さっきも言いましたが…。俺達の曲はこれだけしかありません。でも…」

 

先輩…?

 

「みんなまだまだ暴れ足りねぇって感じだな!じゃあ、もう1曲いっちゃうか!!」

 

〈〈〈わぁぁぁぁぁ!〉〉〉

 

「せっかくもう1曲やるんだ!みんな!思いっきり暴れろよ!!」

 

〈〈〈わぁぁぁぁぁ!〉〉〉

 

先輩…。そっか。これを狙ってたんだ…。

 

「って、ちょっと待っててくれな!今からみんなと何の曲やるか相談すっから」

 

え?

 

「あはは何それ~」「ほんとに決まってなかったんだ?」「理奈ー!!」「あのボーカルの人面白いよね」「さすが!さすがにーちゃーんだ!」

 

「ちょ、ちょっと先輩(ボソッ」

 

「いや、マジまずい。なんとか演出っぽく誤魔化したけどマジヤバい。これチョベヤバだわ(ボソッ」

 

チョベヤバ?超ベリーヤバいって事ですか?

 

「だって、Futureやるんですよね?(ボソッ」

 

「そのつもりだけどな。俺、みんなにFutureやるの言うの忘れてた(ボソッ」

 

「は!?マジですか!?……あっ」

 

「おまっ!マイク!マイク入ってんだし小声で喋れよ!(ボソッ」

 

「す、すみません…(ボソッ」

 

「えー?やっぱり予定にない曲なんだ?」「今夜は特別って感じするね」「ラストの曲って楽しみだよね!」

 

ざわざわ…

 

ヒッ!?ヒィィィィ!みんな超期待しちゃってる!?ハードル!ハードルと言う名のプレッシャーが!

 

先輩が私の方を見て何か目で訴えかけている。なるほど。わかりました。

私と先輩は目と目で通じ合えるほど仲良くない事が。ごめんなさい。わかったのはそれだけで、先輩が何を言いたいのかはさっぱりわかりません。

 

しょ…しょうがないです。かつて私と先輩が別部署だった時にやっていた、野原一家もびっくりのジェスチャーで…。

 

「センパイ・ナニヲ・イイタイ・ノカ・サッパリ・ワカリマセン・ドーゾ」

 

「オマエ・バカ・ナノ?コンナ・シキン・キョリデ・ナニ・ヤッテンノ?・ドーゾ」

 

「ナニ・ヤッテル・トカ・コンナ・トキニ・シモネタ・ハ・ヤメテ・クダサイ・ドーゾ」

 

「クスクス、何あれ~」「めちゃジェスチャーゲームしてる。笑える」「あの二人のトークも漫才みたいで面白かったよね」「ニーチャン・ライブ・チュウニ・ナニ・ヤッテ・ルン・ダ?・シモネタ・ハ・ヤバイ・ト・オモウゾ・ドーゾ」「え?渉、お前何やってんの?怖いんだけど」

 

「誰がこんな時に下ネタ言うか!俺がみんなに説明するから、トークで間を持たせてくれって言ってんの!(ボソッ」

 

ああ…、そういうことですか。

 

「だったら最初からそう言って下さいよ(ボソッ」

 

そして、先輩が奈緒と理奈に腹パン喰らってたのがチラッと見えたけど、取り合えず私はトークで間を持たせる事になった。

 

「あは、あははは。すみません、お見苦しい所を…」

 

「いいぞー」「面白かったよー」「もっとやって~」「あはははは」

 

た、楽しんでもらえたみたいだし、良かったのかな…?

 

「私もこれで今日のライブが終わるのは寂しいと思っていたので。ラストの曲。もう1曲だけですが、みんなの前で歌えるのが嬉しいです」

 

本当に…。次で最後だけど。まだライブの時間が続いてると思えて嬉しい。

 

「よし、決まった!」

 

そう言って先輩がステージの前に立つ。

 

「今からやる曲は15年前に居たBREEZEってバンドの曲です。知らない人も多いと思いますが。この曲には…」

 

先輩?昔の事を思い出してるのかな?

 

「この曲にはみんな夢とかやりたい事とかを思いっきりやっていこう。自分の今やりたい事を大事にして未来に繋げよう。って、気持ちを込めて書いた曲…だそうです」

 

だそうですって……。

 

「だから、知ってる人は昔の想いを思い出しながら、知らない人も昔にやりたいと思ってた事を思い出しながら、これからの自分の未来を想い描きながら聴いて下さい。Blaze FutureとDivalで歌います。…………BREEZEでFuture」

 

 

 

 

 

 

 

「みんなお疲れ様!!」

 

私は志保と理奈と香菜に飛びついた。

 

「ちょっ…渚!」

 

「暑苦しいわね…」

 

「渚、今無理。あたしヘトヘトだわ…」

 

もう!みんなノリ悪いよ!

私はみんなから離れ…離れ……え?

 

「渚!?」

 

「あれ?えへへ」

 

急に力が抜けた感じがして座り込んでしまった。

 

「渚、もう…」

 

志保と理奈と香菜も座って、私に抱きついて来た。

 

「お疲れ様、渚。あたしを見つけてくれてありがとう」

 

「渚、お疲れ様。私と一緒にバンドをやってくれてありがとう」

 

「渚、お疲れ。あたしに一緒に戦おうと言ってくれてありがとう」

 

みんな…。私こそだよ。

 

「私こそ。志保、理奈、香菜、私と出逢ってくれて、本当にありがとう」

 

 

 

 

少し休憩して私達は今ロビーに来ている。今日来てくれたみんなのお見送りをする為に。

 

盛夏と香菜のまわりはすごいなぁ~。あれが世に聞くパリピうぇいうぇい勢のオーラか…。眩しい…!私なんかあの場に行ったら5分で浄化されそうだし、先輩なんか秒で成仏しちゃいそうだ。

 

「香菜も盛夏もすごい人気ね」

 

「理奈は行かないの?同じ大学の人達でしょ?」

 

「あんまり話した事もない人達だし…。ちょっと、ああいう場に行くのは苦手ね…」

 

わかる!わかるよ理奈!

 

「あれ?あそこもすごい人だかりだよ?」

 

「え?誰のまわりかしら?他に友達居そうな人いたかしら?」

 

理奈、さらっと酷い事言うね。私もそう思うけどさ!

 

その人だかりの方へ私と理奈で行ってみた。

 

「えぇ~?もう1枚写真撮りたいのぉ~?しょうがないなぁ~。ポーズはこれでいいかなぁ?」

 

あ、あの子charm symphonyのLunaちゃんだ。理奈のお友達さんでしたか。

 

「あ、頭痛くなってきたわ…。行きましょ、渚」

 

「え?理奈に会いに来てくれたんじゃないの?挨拶しなくていいの?」

 

「ええ、ライブは観てもらえたんだし十分よ」

 

「あ、Rinaだぁ」

 

「チッ、見つかったか…」

 

理奈?

 

「久しぶりねRena」

 

「久しぶりぶり~。それより『チッ、見つかったか…』ってどういうこと?」

 

わわわ、Renaちゃんだ…。ほ、本物の芸能人だ…!それよりさっきの聞こえてたんだ?

 

「言葉のままよ。ま、RanaとRenaに見つかるのはいいんだけどね」

 

「もう!そんな事言って!またLunaが泣いちゃうよ?」

 

「あなたが最後の最後にあんなLINEを送ってくるから、Lunaに会いたくないんじゃないの…」

 

Lunaちゃんと理奈ってあんまり仲良くないの?確かに性格は真逆って感じだけど…。

 

「それより今日はその…こんな時間だけれど大丈夫なの…?」

 

「え?彼氏の事?」

 

彼氏!?Renaちゃん彼氏いるの!?

 

「え?ええ…まぁ…そうね」

 

「今はまだダーリンパワーも残ってるから大丈夫。それに、今日はRinaの門出だもん。こっちのが今日は大切だよ」

 

「Rena…。泣かせにきてるのかしら?」

 

「エッヘッヘー。泣きそうになった?でも本当だよ。言ったじゃん?これからのRinaを応援するって」

 

おおー、なんか私まで泣きそうになってきますぞ!

 

「久しぶりだな、Rina」

 

「久しぶりね、Rana」

 

おおおおお…!Ranaさんだ…!女優様だ…!!

 

「あっと、渚さんでしたっけ?今日のライブ楽しかったです。お疲れ様でした」

 

じょ、女優のRanaさんが私に!?

 

「こ、こちらこそありがとうござりまする!楽しんでいただけたようで恐悦至極でござりまする!」

 

おわっ!?緊張しすぎて日本語が!?

 

「渚…?大丈夫かしら?」

 

ごめん理奈。全然だいじょばない

 

「Rina…うぐっ、えぐっ、会いたかったよ~。え~ん」

 

る、る、る、Lunaちゃんだだだだ!

 

「私は別に。それより、もうこの辺にはファンの子はいないわよ?」

 

「そんな~酷いよぅRina~。え~ん」

 

そう言ってからLunaちゃんはまわりの様子を窺うようにキョロキョロして…。

 

「私も別に会いたくなかったわよ。ライブの連絡が来たから、わざわざ来てやったんだっつーの」

 

え!?Lunaちゃんってこんな感じなの!?今の嘘泣き!?頭の弱いゆるふわ系アイドルって仮の姿なの!?芸能界こぇぇ~、半端ねぇ~…。

 

「そうだな。Lunaは今日来るの嫌がってたもんな。昨日までは。今日は待ち合わせに30分早く来た私達に遅いってぶち切れるくらい早く来てたけどな」

 

「う、うっさいな……」

 

「私が居なくても上手くやってるみたいで安心してるわ」

 

「まぁね、ボーカルのいないバンドとして話題性はあるしね。後、ベースもいないけど」

 

そういえばcharm symphonyって音楽番組だけじゃなくてバラエティにもよく出るようになったもんね。

 

「オーディションはよくやってるんだけどね。Lunaがみんな落としちゃうの」

 

「Rinaより上手くないと嫌なんだよな?Luna」

 

「ち、違うし。捏造すんなし」

 

「そう。今日は私達のライブに来てくれてありがとう。楽しんでもらえたようで何よりだわ」

 

「ああ、まぁまぁかな。いい暇潰しにはなったわ」

 

「え?Lunaめちゃはしゃいでたじゃん?」

 

「ステージまでちゃんと聞こえてたわよ。あなたの声」

 

「う!?」

 

「あ、そういえば今のLunaちゃんっぽい声私にも聞こえてました。理奈ー!とか、かっこいいー!とか」

 

「う!?」

 

恥ずかしいのかLunaちゃんが身悶えしてる。

 

「くっ、Rina…。あんたがうちの事務所辞めてくれて本当に良かったわ。………おかげで…あんたがまた楽しそうにベースを弾いてる姿が見れた。今日は来て良かったよ」

 

Lunaちゃん…。ツンデレさん?

 

「ええ、本当に。私も心の底からそう思うわ。………あなた達の出てる番組は必ずチェックしてる。今度関西である大きなファッションショーに出場するそうね。1つ夢が叶ったわね。おめでとう」

 

理奈…。理奈のデレもいただきました。

色々積もる話もあるだろうし、私は場所を変えますかね。良かったね。理奈。

 

私はロビーをぶらぶらしていた。その間色んな人に声を掛けてもらえて…。バンドをやって良かったと思った。またすぐにでもライブをやりたい。

 

 

 

 

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「今日のライブはほんと楽しかったー!」

 

「あたしも!またライブやりたい!」

 

「あははは、ほんとだね。またBlaze FutureとDivalで対バンしようよ」

 

今日は渚の家で奈緒と理奈で打ち上げをやるらしい。何故か身の危険を感じたあたしは、まどかさんの家にお泊まりさせてもらう事になった。

 

「ほんとに!それ思う!ゲストに綾乃姉とシフォンとイオリ呼んでさ!5人でドラムバトルやろうよ!」

 

「それじゃステージがドラムでいっぱいになっちゃうじゃない」

 

話の流れで香菜も一緒にまどかさんの家にお泊まりする事になった。

 

あたし達がまどかさんの家に向かって歩いていると、まだファントムからそう離れていない場所で、一人の男の人とすれ違った。

 

「今の人……」

 

まどかさんが急にそんな事を言った。

 

「まどかさん?どしたの?知り合い?」

 

こんな事を聞くのは正直白々しいと思う。だって、ただの知り合いに『今の人…』なんて言う訳がない。

 

「志保、香菜、あたしの家に急ぐよ」

 

私達は急いでまどかさんの家に帰り、ご両親にお邪魔しますと挨拶だけ済ませて、まどかさんの部屋に入った。

 

「えっと、確かこのアルバムにあったと思うんだけど」

 

まどかさんが綺麗に整頓された本棚からアルバムを1冊取り出した。アルバムには『タカの恥ずかしい写真集 vol1』と書いてある。何この渚と理奈と奈緒にオークションかけたら高値で売れそうなアイテム。

 

本棚を見ると貴以外にも英治さんやトシキさんや遊太の恥ずかしい写真集まであった。遊太のなら秦野に高く売れそうだ。

 

「あった!やっぱり!」

 

まどかさんがそう叫んだので、あたしと香菜で覗いてみる。

 

「さっきの人…やっぱりBREEZEの拓斗だ…」

 

「え?嘘!?これって英治先生やたか兄に言うべきかな?」

 

「いや、ほんとどうしよっか…。言うのも言わないのもなんか…ね。ファントムの近くに居たわけだし…」

 

「あたしらは何も言わない方がいいかな…。直接会った事ない人だし、今日もただすれ違っただけだし…」

 

まどかさんと香菜でアルバムを見ながらさっきすれ違った男の人の事を話していた。あたしはそれよりも、そのアルバムのページにあった別の写真に目を奪われていた。

 

貴を挟んで仲良さそうに肩を組んでいるカップルの写真…。あれは…お父さんとお母さんだ。間違いない。

 

貴も英治さんも、お父さんともお母さんとも顔見知りだと言っていた。だから、貴と一緒に写ってる写真があっても特に変じゃない。

 

ただ、気になったのは1つだけ。

貴とお父さんとお母さんの後ろにある段幕。そこに書かれてる言葉は…。

 

やっぱりあたしは……お父さんを倒さないといけない……。

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