バンやろ外伝 -another gig-   作:高瀬あきと

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第2話 くじ引き

8月18日に開催されるギグイベント。

南国DEギグ。

この南国DEギグは日本のトップアーティストがみんな過去に参加してきたと言われる程の大イベントだ。

 

あのDESTIRAREも参加した事のあるギグイベント。

 

その南国DEギグのチケットを譲ってもらう事が出来た。

今日はその参加者を募る為に、俺達はライブハウス『ファントム』のオーナーである中原 英治さんに呼ばれていた。

 

おっと、自己紹介が遅れてしまったね。

俺の名前は一瀬 春太。

Canoro Feliceのダンサーボーカルをしている。

 

今、英治さんが参加メンバーを纏めているのだけど、その横にいる俺達Canoro Feliceのベース秋月 姫咲が悪そうな顔をしている。

この南国DEギグへの旅費等は、姫咲のお父さんが全員分出してくれる事になっている。

つまり…俺達を生かすも殺すも姫咲の手の中と思ってもいいはずだ。

 

姫咲が変な暴走をしてみんなが困った事にならないように見張っておかなくては…。

 

「なかなか動きを見せないな…秋月のやつ…」

 

俺と同じバンド、Canoro Feliceのドラム

松岡 冬馬が話し掛けてきた。

冬馬も姫咲の暴走の危険性は知っている。むしろ一番被害に合っているのは冬馬だろう。

俺と冬馬は他のバンドのメンバーに迷惑をかけない為に姫咲の動向に目を光らせていた。

 

「冬馬、春太」

 

俺と冬馬が声のした方に目をやると、そこにはFABULOUS PERFUMEのナギとイオリがいた。

 

「ナ…ナギ、足は大丈夫なのか?あんまり立ったりせずに座ってろよ」

 

「少しくらいなら大丈夫さ。ありがとう」

 

ナギは……

ここでは茅野 双葉と呼ばせてもらおうか。

双葉ちゃんは先日の冬馬との遊園地デートで暴れ馬に襲われて足を怪我していた。

 

「松岡 冬馬!お前!シグレと約束したんだからな!双葉の事しっかり頼むぞ!」

 

「イオリ…。あ、ああ…わかってるよ」

 

「ごめんね、冬馬(ボソッ」

 

FABULOUS PERFUMEは男装バンドだ。

その正体は秘密という事になっている。

だからあくまでもナギはナギであり、茅野 双葉という人物はFABULOUS PERFUMEの友人という事になっている。

 

「よーし!参加メンバーが決まったぞ!!」

 

<<<ざわざわ>>>

 

英治さんがそう高らかに叫んだ。

どうやら南国DEギグに参加出来るメンバーが決まったようだ。

 

「ちょうど上手いことに参加出来るメンバーと参加出来ないメンバーで綺麗に纏まった。

まずはAiles Flamme、Blaze Future、Divalのメンバーは全員参加だ。

次にevokeからは豊永くんと折原くん、FABULOUS PERFUMEは代理として双葉ちゃんと栞。gamutからは美緒ちゃんと藤川さん。そして綾乃と花音ちゃんが参加メンバーだ」

 

 

「やった!ボクも行ける!」「やったな!シフォン」「良かった…シフォンも栞も行けるんだ…」「ほら!まどか先輩も参加希望で良かったですよね!」「美緒ー!私達も行けるよ!」「わ、わかってるから…暑いから抱きつかないで…」

 

<<<わいわいがやがや>>>

 

わいわいがやがやって古いなぁ~…。っと、そんな事考えている場合じゃない。姫咲が動いたら止めに入らないと…。

 

「それでは…」

 

姫咲が動いた!

何を企んでいるのかわからないけど、止めてみせる!

 

「これから参加メンバーでグループと泊まるホテルを決めましょうか。私の…秋月グループのホテルは全部で24人分空いてますが、それぞれ別の場所に位置してますので。同じホテルに泊まる者同士でグループを作って、ファントムギグまでに他のバンドのメンバーと親睦を深めるのも良いと思いますの!」

 

<<<は?>>>

 

「ちょ…待ってそれって」「え?別のバンドのメンバーと一緒にって事?」「え!?それって私が理奈さんと同じグループになれるチャンス!?」「美緒!?」「俺はどこでも構わないがな」

 

「それで、私が融資の権限を活かして面白そ……いえ、何となくグループを決めていきますね!」

 

「ちょ!何て横暴!」「今絶対面白そうとか言おうとしたよな?」「渉か亮かシフォンと一緒だったら助かるんだけど…」「シフォンと同じグループになれないかもなのか…」「にーちゃんと同じグループになりたいけどボーカル同士だし無理かな?」「あ?今回はそんな話じゃないだろ」

 

…おかしい。こんな事で姫咲にとって面白い結果になるなんてありえない…。

姫咲が独断でグループ分けをしたとしてもそのグループ内で、姫咲の思惑通り上手く動くなんてありえない…。

 

ピンポイントで狙っているメンバーがいる?

いや、それなら姫咲が真っ先に狙うのは冬馬と双葉ちゃんだ。

それならバンド同士でグループを分けただけで十分なはずだ。

 

考えろ…姫咲の狙いを…。

姫咲の狙いがわからない今は下手に動くわけにはいかない…。

 

「ねぇ、ボクもしかしたら双葉と同じグループになれないの?」

 

「え?あ、うん。そうなるかな?でも大丈夫。もしかしたら遊太くんと同じグループになれるかもだよ?」

 

「ゆーちゃんと……!?ゆ、ゆーちゃんなんか関係無いし!双葉とがいいし!」

 

まぁ、みんなざわついてるから大丈夫だろうけど、ナギもイオリも素に戻ってるよ?大丈夫?

 

「秋月ちょっと待ってくれ」

 

<<<ざわ…>>>

 

みんながざわついている中、冬馬が声をあげた。姫咲の考えに何か気付いたんだろうか?

 

「そのグループを秋月の独断で決めるってのはどうかと思うぞ。せっかくの旅行でもあるんだ。一緒になりたい者同士もいるだろう?」

 

「ええ、そうですわね。確かに松岡くんの言う通りです。ですが、今日この場でも初めてお会いする方同士もたくさんいますわ。11月のファントムギグでは私達は同じイベントを盛り上げる仲間。逆に言いますと、今回の旅行くらいでしか他のバンドのメンバーと親睦を深める機会はないと思いますの。これから各々練習もライブも忙しくなるでしょうし」

 

「あ~…確かにそれあるかも…」「他のバンドとの馴れ合いなんていらねぇ」「そっかぁ。音楽性も違うだろうし仲良しになるにはこんな時くらいじゃないとってのあるよね」「それが原因で仲違いする事もあるんじゃない?」「う~ん」「でも旅行でもあるし仲良しと行きたいってのもあるよね」

 

みんな各々の思いを口に出している。

冬馬は恐らく姫咲の独断を止めるタメの物言いだったんだろう。

それを姫咲は読んでたかのように他のみんなを煽るような言葉を選んで返した。

 

やっぱり姫咲は何か企んでいる。

 

「わかりましたわ」

 

ん?

 

「確かに私の独断というのはよくありませんわね。では、公平にくじ引きで決めましょうか。全ては運次第、これでどうですか?」

 

「くじ引きかぁ」「まぁ、親睦を深めるのも大事だしね」「お姉ちゃんと理奈さんと同じグループになれたら…」「美緒?私は?」「くじ引きなら面白そうだしいいんじゃない」「懐かしいな。学生ん頃思い出す」「ごめんなさい。貴さんにとっては懐かしくても私達にはつい最近の事よ」

 

くじ引き…?おかしい。

それだとますます姫咲の思惑がわからない。

 

「と、言いたい所なのですが、タカさんだけは独断で決めさせていただきますわ」

 

「え?俺?何で?」

 

「秋月グループのホテルは4つあります。北のノースアイランドホテルに3部屋の6名、東のホテルイーストブルーに3部屋6名とシングル1名、南のサウスカントリーホテル3部屋6名、西の民宿秋月に5人用の1部屋ですわ」

 

「おい、西だけ民宿って言ったぞ?」「西だけランクダウンって感じじゃね?しかも5人1部屋って…」「ボク民宿好きだよ!」「奇遇だなシフォン。オレも民宿がいいと思ってたんだ」「シングルっていいな」

 

「そしてトシキさんの別荘が民宿秋月の近くでして、ホテルイーストブルーからは離れてますの。トシキさんの別荘には大人のトシキさん、英治さん、三咲さん、晴香さん、達也さんがお泊まりになられますわ」

 

そこでタカさんだけってどう繋がるんだろう?それさえわかれば…。

 

「私達の中には私も含めてですが未成年もたくさんいます。ですので、各ホテルのグループには大人の引率の方がいらっしゃった方が安心だと思いますの」

 

「な、なるほど」「確かに江口達だけだと何やらかすかわからないもんね」「知ってたか雨宮、俺とお前は同い年だぞ?」「つまり貴をトシキさんの別荘から離れてるイーストブルーに…って事かな?」「あ、そうかも。そして他のホテルには晴香さん達とか」

 

「気付いてる方はいらっしゃると思いますが、別荘に泊まられる中でも英治さんは家族サービスもありますので、民宿秋月の引率をトシキさん、ノースアイランドホテルを達也さん、サウスカントリーホテルを晴香さんに引率して頂いて、ホテルイーストブルーはタカさんに引率してほしいんですのよ」

 

「ああ、まぁそういう事ならしょうがないわな。俺もその方がいいと思うし構わんぞ?」

 

<<<ざわざわ>>>

 

確かに筋は通っている。だけど…。

何が狙いなんだ姫咲。

 

「松岡くんもそれなら問題ありませんでしょう?あ、シグレ様からの頼みでもありますので、松岡くんと双葉は同じホテルになるように調整します」

 

「あ、ああ……わかった」

 

「では私は早速くじ引きを作りますわね」

 

そう言って姫咲はくじを作り始めた。

 

「春太、悪い…」

 

「ん?冬馬?何が?」

 

「俺が踊らされる事で何か掴めるかと思ったが…何もわからなかった」

 

「うん、そうだね。姫咲の狙いがさっぱりわからない…」

 

「くじが完成しましたわ!さぁ、まずは松岡くんがこの4枚の中から選んで下さい」

 

「お、俺からかよ…!?」

 

「当然でしょう?松岡くんの引いたホテルは双葉と同じホテルになるわけですし、くじの数を減らさないといけませんから」

 

「あ、ああ…そうか」

 

そして姫咲は冬馬の前に4枚の紙を出した。

 

「じゃあ……これで」

 

「何が書いてありますか?」

 

「ん…Wだな」

 

「では松岡くんと双葉はwest。西の民宿秋月ですわね。では、残りの西のくじ3枚、北と南の東のくじを6枚ずつこの箱に入れましたわ」

 

本当に普通のくじ引きなのか…?

 

「悪い…茅野…」

 

「ううん、全然いいよ。私民宿大好きだよ」

 

うん、冬馬も双葉も素に戻ってるよ?

大丈夫?双葉は今はナギだよ?

 

「さぁ、どなたからくじを引きますか?私は最後で良いですわ」

 

ん?姫咲が最後?

そうか…。やっとわかったよ姫咲。

 

 

 

 

 

 

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私の名前は秋月 姫咲。

Canoro Feliceでベースを担当しています。

 

私は今、南国DEギグの参加メンバーのグループ分けのくじを作り、今から皆様に引いてもらうところです。

 

既に松岡くんがくじを引き終わり、今は誰からくじを引くかみんな考えているようです。

 

「さぁ、どなたからでもいいのでくじを引いて下さい」

 

「じゃあ俺が引くー!」

 

真っ先に立候補して来たのはAiles Flammeの江口 渉さん。

この方もなかなか弄り甲斐が…いえ、楽しそうな方ですわね。

 

「どのくじがいいかな~?」

 

江口さんはくじの箱の中をごそごそしている。

 

「狙っているホテルはありますの?」

 

「おう!にーちゃんと一緒に泊まりたい!」

 

<<<ざわっ…>>>

 

なるほど。江口さんはそっちの方ですのね。

 

「いや、違うぞ。にーちゃんと居ると楽しいからな!」

 

……この方もマインドリーダーですの?

 

「よし!君に決めた!」

 

「……N。ノースアイランドホテルですわね」

 

「に、にーちゃんと違うグループか…」

 

とぼとぼと江口さんは帰って行った。

 

「じゃあ次はボクが引くー!」

 

次に立候補したのは同じくAiles Flammeのシフォンさん。

本当に近くで見ないと男の娘ってわからないですわね。

 

「どのくじがいいかな~?」

 

「シフォンさんは狙ってるホテルはありますの?」

 

「ううん、全然。どこでもいいって感じだよ!」

 

「………私もキュアトロが大好きですの。ユキホ様激推しですわ」

 

「ほんと!?ボクもキュアトロ大好きだよ!ボクはミントちゃん激推しだけどね!」

 

「またゆっくりお話したいですわね♪」

 

「うん!」

 

そしてシフォンさんが引いたくじはNだった。

 

「ノースアイランドホテルですわね。江口さんと同じホテルで良かったですわね」

 

「渉くんと一緒か~」

 

シフォンさんが戻ったのと同時くらいにAiles Flammeの秦野 亮さんが来た。

 

「あら、秦野くんこんにちは」

 

「こないだはどうも。今、渉とシフォンがNを引いてNの流れが来ているはず…!」

 

「あら?やっぱり同じAiles Flamme同士でって思ってますか?」

 

「いえ!オレはただシフォンと同じホテルに泊まりたいだけです!」

 

な、なんて鬼気迫る目をしていますの…!?それほどまでにシフォンさんの事を…。

 

私の目的の1つは色んなバンドメンバーで親睦を深めるという事もありますが…。

何とか秦野くんにはNを引いてもらいたいですわね!

 

「神よ!我にNの力を!!」

 

秦野くんが引いたくじはSだった。

まさか北と真逆の南を引くとは…。

ま、人生なんてこんなもんですわね。

 

秦野くんは半泣きしながら戻って行った。

 

「じゃあ次は私が引こうかな!」

 

次に来たのはBlaze Futureの柚木 まどかさん。

 

「狙っているホテルはございますの?」

 

「んーん、どこでもいいって感じ。あ、観光するならここがいいとかある?」

 

「そうですわね。ノースアイランドホテルは海水浴場から近いですし、民宿秋月には露天風呂が付いてます。イーストブルーは繁華街って感じですわね。サウスカントリーホテルはインスタ映えするような景色の綺麗な所が多いですわね」

 

<<<露天風呂!?>>>

 

「へ~?そうなんだ?どこも楽しそうじゃん……よし!これだ!」

 

「N…。ノースアイランドホテルですわね」

 

「何ぃぃぃぃ!?」

 

秦野くんが悲痛の叫びを上げた。

2連続でNが出て自分が引いたら違う所が出て、次の人が引いたらNとか…。

まぁ、ショックですわよね…。

 

「ゆーちゃんもまどか姉もNか…」

 

「栞、まだWも残ってるし引くなら今かもだよ?」

 

「うん…ボク引いてくる…!」

 

ナギ様もイオリ様も、双葉と栞ちゃんに完全に戻ってますけど大丈夫ですの?

 

「じゃあ次はボ……」

 

「はいはーい!次は私!私が引くー!」

 

栞ちゃんが引こうと出てくる前に結衣が出てきた。

 

「結衣はどこか狙って…」

 

「私!サウスカントリーホテルがいいかな!」

 

そして結衣が引いたのは……。

 

「やった!Sだ!S?

Sがサウスカントリーホテルだよね?」

 

「そうですわよ」

 

「やった!やったー!写真撮りまくるぞ~」

 

 

 

「ほら、栞。結衣が引き終わったよ。行っておいで」

 

「う、うん…!」

 

 

 

「俺はホテルはどこでも構わないしな。引かせてもらうか」

 

「あ、あう……」

 

次に来たのはevokeの豊永 奏さん。

 

「……Nだ」

 

「ノースアイランドホテルですわね」

 

 

 

 

「ほ、ほら栞」

 

「うん……」

 

 

 

「俺は他のバンドメンバーと馴れ合う気はねぇが…。同じイベントを盛り上げる仲間ってのは悪くねぇ」

 

「うあ……」

 

次に来たのはevokeの折原 結弦さんだった。

 

「Wか……民宿…悪くねぇな」

 

 

 

これで残りはノースアイランドホテルのNが2枚。

ホテルイーストブルーのEが6枚。

サウスカントリーホテルのSが4枚。

民宿秋月のWが2枚となってしまった。

 

おかしいですわね…。何でEが出ませんの?

 

 

 

「ほら、栞…NもWも2枚になっちゃったよ。早く行かなきゃ…」

 

「う…うん…」

 

ああ、イオリ様が泣きそうになってますわ…。早く、早く引きに来て下さい!

 

しかし、私の前に来たのはCanoro Feliceの一瀬 春太。春くんだった。

 

「姫咲、ものすごく俺の事を睨んでるね?」

 

「な、なんでもありませんわ…」

 

「栞ちゃんには悪いと思ったけどさ。まだEが1枚も出ていないタイミングの今しか無いと思って」

 

「イオリ様に悪いと思ってながら来るとは……後でグーパンですわね」

 

「何で!?今栞ちゃんが来てもNやWよりEを引く可能性の方が高いでしょ!?」

 

「それはそうかも知れませんが…」

 

「ってわけで、俺が引かせてもらうね。まぁ、イーストブルーには姫咲が居るから栞ちゃんは大丈夫だと思うけど…」

 

「な、何の事ですの…?」

 

「姫咲は貴さんと同じホテルになって、姫咲の執事であるセバスさんと貴さんを引き会わせようとしてるんでしょ?この箱の中にはEは5枚しか入っていない。

最後の姫咲は引く必要ないもんね」

 

「……」

 

「俺もセバスさんの事は気になるしさ。協力するよ」

 

春くん…。さすがですわね…。

いえ、春くんに見透かされるようでは私もまだまだという事かも知れませんわね。

 

「春くん…。さすがですわ。協力…お願いしますわね」

 

「うん、任せて」

 

 

春くんが引いたくじはNだった。

 

 

やはり後でグーパンですわ…。

 

 

 

 

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私の名前は佐倉 奈緒。

Blaze Futureでギターを担当しています。

 

今私は南国DEギグのグループ分けのくじをどのタイミングで引きに行こうかと悩んでいるところなのです。

 

「なかなかE出ないね~。これって貴ちゃんと同じホテルになる可能性高そう~」

 

そう私に話しかけて来たのは同じBlaze Futureのベース担当の蓮見 盛夏。

 

「盛夏も貴と同じホテルがいいの?」

 

「ほぅほぅ。盛夏『も』って事は奈緒も貴ちゃんと一緒がいいんだね~」

 

「ち、違うから!言葉のあやだから!」

 

「お姉ちゃんがBREEZEのTAKAと同じホテルになる…それは何としても阻止しないと…」

 

「え?美緒!何で!?」

 

この子はgamutのベースボーカル佐倉 美緒。私の可愛い妹です。

 

「だって私まだ高校生だよ?この歳でおばさんにはなりたくない…」

 

「ちょっ…!だから私と貴はそんなんじゃないってば!」

 

本当にこの子は…。

まぁ、小さい頃から私とお母さんがBREEZEのTAKAが好きって言ってたのもあるから、私が貴とバンドを…ってなったら変な勘違いしちゃうのもわからなくはないけど。

 

「美緒って奈緒さんの前ではすごい事さらっと言うよね?」

 

「そう?」

 

今、美緒と話しているのは美緒のバンドgamutのキーボード担当の藤川 麻衣ちゃん。私とも何度か会ってお話した事があります。元気で良い子です。

 

「でも本当に全然Eが出ないよね~」

 

「そうだよね。まさか細工されているのでは…」

 

「細工?何の為に?貴をぼっちにする為?」

 

「それなら無駄な細工ね。貴さんはいつもぼっちだもの」

 

そして今会話をしていたのがDivalメンバー。

喋った順に紹介すると、ドラムの雪村 香菜、ボーカルの水瀬 渚、ギターの雨宮 志保、ベースの氷川 理奈。

 

「でもこの感じ…なかなかくじを引きに行きにくいよね」

 

この子は…バンド名はまだないのかな。

私が大学に通っていた頃の友達。

大西 花音だ。この子はボーカル担当らしいです。歌上手かったですからね~。

 

「そうだよね…。栞ちゃんがさっきからくじを引きに行こうと頑張ってるし…」

 

この人は花音と同じバンドのドラム担当であり私の大学時代の先輩、北条 綾乃さんだ。

 

今ここにいる10人と、FABULOUS PERFUMEのイオリこと栞ちゃん。後はAiles Flammeの内山 拓実くんと、くじの主催者である姫咲ちゃんの13人がまだグループが決まっていません。

 

私達も拓実くんも、栞ちゃんが引きに行こうとしてもタイミング悪く行けなくなっているのを見ているだけに、なかなかくじを引きに行けないでいるのです。

 

 

 

「ほら、栞。もう誰もくじを引こうとしてないよ。今がチャンスだよ」

 

「でも…Eがいっぱい残ってるし…また引こうとして誰かが来たら…グス」

 

 

 

「それにしても…」

 

「こうやって栞ちゃんを見てるとさ…」

 

<<<可愛くてホッコリするね!>>>

 

私達10人の想いは同じでした。

 

 

 

「栞?どうする?」

 

「ん…んー…もう少し…様子見る。まだEが出てないから怖いもん。Eはたか兄が居てくれるけど、やっぱり双葉とがいいもん」

 

 

 

「か、可愛いわね…。しょうがないわ。私がEを引きに行ってくるわ」

 

そう言って理奈がくじを引きに行った。

Eを引きに行くとはすごい自信だ。

 

「どうも」

 

「Divalの氷川 理奈さんですわね。狙っているホテルはございますの?」

 

「そうね。狙っているホテルというわけではないのだけれど、Eを引く事を狙っているわ」

 

「それは…タカさんと同じホテルがいいと?」

 

「違うわ。あなたがEを5枚しか入れていない事を差し引いてもこの確率は変だものね。私が一番最初にEを引きたいって思っただけよ」

 

「春くん以外にも勘の鋭い方がいらっしゃいますのね」

 

「あなたが何故貴さんと同じグループになりたいのかはわからないけれど、さすがにそれくらいならわかるわ」

 

「さすがですわね。もし理奈さんがEを引けて同じグループになれたら全てお話しますわ」

 

「そう。楽しみにしているわ……

……Eよ」

 

「理奈さんはホテルイーストブルーですわね」

 

<<<ざわざわ>>>

 

初めて引かれたEのくじ。

みんながEって入ってたんだ?とかざわついています。

 

そのEの引率の貴の方を見てみると…。

あ、興味なさそうですね。英治さん達とビール飲みながら談笑してます。

 

「ほら、Eを引いて来たわよ」

 

「すごいね理奈ち。でもすごく顔がにやついてるね?タカ兄と一緒がそんな嬉しいんだ?」

 

「ち、違うわ!私が引こうと思ったくじを引き当てる事が出来たから、自分の引きの強さを誇っているだけよ」

 

「ふぅ~ん。私も引いて来ようかな?まだEの確率高いだろうし」

 

「あ、やっぱり渚は貴と同じホテルがいいんだ?」

 

「志保ったら何を言ってるの?イーストブルーってのがワンピースっぽい名前だからヲタ心が疼くだけだよ?」

 

「ヲタ心って何なの…?」

 

しかし、また誰もくじを引こうとしない。

みんな栞ちゃんの様子を伺っているみたいですね。

 

 

 

「残りはNが1枚…Eが5枚…Wが2枚…Sが4枚…?」

 

「うん、そうだね。栞どうする?」

 

「まだEとSの出る確率の方が高い…」

 

 

 

 

う~ん、確かにそうなんですけど、今までのNの確率見てるとなぁ~。

どうしたもんですかね。

 

「う~ん、イオリさん行きそうにないし私達が行こうよ、美緒」

 

「え?わ、私も?」

 

「うん!それに今ならEの確率高いじゃん?理奈さんと同じグループになれるかも知れないし!」

 

「そ、そうだね。お姉ちゃんにEを引かせない為にも私達が行こうか」

 

美緒と麻衣ちゃんがくじを引きに行った。

 

「こんばんは。美緒さんと麻衣さん…でしたわね?」

 

「あ、こ、こんばんは」

 

「こんばんはで~す。よろしくお願いしますね!さ、美緒から引く?私から引こうか?」

 

「ん…麻衣からよろしく」

 

「はいよー!」

 

「狙っているホテルはありますの?」

 

「私は美緒と同じホテルが希望ですけどどこでも……って感じです」

 

「Sですわね」

 

どうやら麻衣ちゃんはSを引いたようですね。美緒はどうかな?

 

「う~………美緒~…Sを引いてね…!」

 

「わ、わかったよ…」

 

「美緒さんはS狙いですか?」

 

「いえ、私の狙いはEです!」

 

「美緒!?」

 

そして美緒が引いたのは…。

 

「ぴぎぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

そう叫んで美緒は倒れた。

あ、どうやら理奈と同じEを引けて嬉しさのあまり倒れたみたいですね。

良かったね、美緒。

 

これでまた少しNかWを引く確率は上がったわけですけど栞ちゃんはどうするかな?

 

 

「あ~……う~……うぅ~…」

 

 

あ、まだ悩んでいるみたいですね。

くじを引きに行こうとしたり、やっぱり止めて戻ったりする姿が可愛くて堪りません。

 

「う~ん、しょうがないな~。あの手を使うか~。ほんとはあたしも貴ちゃんと同じ部屋が良かったけど~」

 

え?今、盛夏何って言った?

貴と同じホテルじゃなくて部屋って言わなかった?

 

「ねー、奈緒~、綾乃さんと香菜も協力して~」

 

「ん?協力?」

 

 

「な、なるほどね~…」

 

「それなら栞ちゃんはNかWに行けるだろうけど…いいのかな?」

 

「大丈夫でしょ~」

 

盛夏ってよくこんな事考えつくよね…。

貴の影響でしょうか?

 

「盛夏、それならあたしも手伝うよ。人数は多い方が確率高いでしょ?」

 

「志保の言う通りなんだけど、あんまり大人数で行くとズルってバレちゃいそうだし~。5人いたら確率的にも大丈夫かな?って~」

 

ああ、盛夏ったら普通にズルって言っちゃってますよ…。

 

「うん、まぁこれくらいのズルなら誰も何も言わないと思うけどね。わかった、あたしは見守っとくよ」

 

「よろしくぅ~」

 

そして私と盛夏と香菜と綾乃先輩はくじを引きに行かず栞ちゃんの前に来た。

 

「ん?香菜姉に綾乃姉?」

 

「栞ちゃん、くじ引きに行こう」

 

「え?で、でも…」

 

「栞、大丈夫だって~安心しな」

 

そう言って香菜は栞ちゃんの手を引いてくじを引きに向かった。

 

「あら?これは皆様お揃いで…」

 

くじの前には私、盛夏、香菜、綾乃先輩。そして栞ちゃんの5人が立っている。

 

「じゃあ、あたしが最初に引いてあげるね!」

 

「え?香菜姉?」

 

香菜は大きな声でそう言った。

 

「Sですわね」

 

香菜が引いたくじはS。

これでまたNとWの確率が上がりました。

 

「じゃあ次は私が引いてあげるね!」

 

そして綾乃先輩がくじを引いた。

 

「Eですわね」

 

綾乃先輩はEのくじを引いたみたいです。

いいなぁ~。

あ、これは別に『E』と『いい』をかけたわけじゃないです。

 

「よ~し、次はあたしだ~。あ、そうだ。イオリさん引いて下さい~」

 

「え?え?」

 

「早く引いて下さい~」

 

「う、うぅ…」

 

そして観念した栞ちゃんがくじを引いた。そこにはSの文字が書かれていた。

 

「あぅ…」

 

「ほうほう~。あたしのホテルはサウスカントリーホテルか~。くじを引いてくれてありがとうございます~」

 

「え?どういう事ですの?」

 

「さっきあたしはあたしの番って言いましたよね~?イオリさんに代理に引いてもらっただけです~。

栞ちゃんでしたっけ?栞ちゃんの代理にイオリさんがくじを引いてるんですから、あたしもイオリさんに代理に引いてもらっても構わないですよね~?」

 

「なるほど。そうですわね。なかなか考えますわね」

 

「え?え?」

 

栞ちゃんはわからないって顔をしている。そりゃそうでしょうね。

多少強引なやり方ですから。

さて、次は私の番です。言い回しを間違えないようにしないと…。

 

「さぁ、イオリさん引いて下さい。次は私の番ですから」

 

「え?い、いいの?」

 

「はい♪」

 

そして栞ちゃんが再びくじを引いた。

栞ちゃんの引いたくじは……。

 

「Nだ……あっ…」

 

そして栞ちゃんは私の顔を見た。

 

「おー!Nですね!って事は~。栞ちゃんって子がノースアイランドホテルですね!さぁ、イオリさん次は私が引くのでどいて下さい!」

 

「あら?イオリさんは奈緒さんの代理に引いたのではないのですか?」

 

やっぱりそう来ますよね。

ってか、姫咲ちゃんってきっとわかってて言ってますよね。

まぁ、主催者側としてはまわりが納得いくような説明も必要なのかなぁ~。

 

「何を言ってるんですか?私は私のくじは自分で引きますよ?だからさっき私はイオリさんに『早く引いて下さい。次は私の番ですから』と言ったじゃないですか~。私も早くくじを引きたかったので急いでもらっただけですよ?」

 

「クス、なるほど。確かにそうですわね」

 

盛夏の考えた作戦はまず香菜が『くじを引いてあげるね』と言ってくじを引き、NかWが出たら栞ちゃんに『くじを代理で引いてあげたよ』と言って栞ちゃんにくじを譲る。綾乃先輩の時も同じ感じですね。

それでも出なかったら、栞ちゃんに引かせるって作戦でした。この辺りは盛夏と私で説明してますね!

 

「やっと私が引けますね。ちゃっちゃと引いちゃいますね~」

 

私はどこのホテルを引きますかね~?

 

美緒もいるからEが引けたらいいですね!

 

……違いますね。貴と同じホテルがいいって思ってます。貴には恋をしているわけじゃない。私はそう思っている。

BREEZEのTAKAさんを好きだった時とは違う気持ちだから…。

 

でも貴と一緒に居たい。

バカな事を言い合っていたい。

 

同じグループになって私が行きたい所に付き合わせたい。

そして貴は『めんどくせぇ』とか言いながら嫌そうにするくせに私に付き合ってくれる。

 

そんなやり取りをしたいだけ。

この気持ちって何なんだろう?

 

そして私は横に居る盛夏を見た。

 

「ん?」

 

あ、盛夏に見てる事気付かれちゃいました。

 

私は子供の頃から友達と呼べる人はいなかった。もちろん学校の行事とかで同じグループになったクラスメートとは話は合わせてきました。

 

それも中学になった頃からそうする事も煩わしくなりました。

 

執拗に遊ぼうと誘ってくる男子。

もちろん二人きりで遊ぶ事はしませんでしたが、グループで遊ぶとなると男子の中で女子は私だけ。

私はそのせいで学校の女子には嫌われていた。

 

誘ってくれるから男子と遊びに行っていただけ。誘ってくれないから女子と遊びに行けなかっただけ。

 

男子に気を使うのも女子に気を使うのもしんどくなっていた。

だから私はぼっちで居る事を望んだ。

 

私は誰かに嫌われる事もなく、誰かに好かれる事もない青春を送った。

それでも中学に成り立てのあの頃より、ずっと楽でしたし幸せでした。

 

ですが大学に入った時、まどか先輩と綾乃先輩に話掛けられ、同じように友達の居なかった花音と出会い、人と触れ合う楽しさを知り、貴に出会いBlaze Futureとしてバンドを始め……渚や理奈にも出会え、そして…盛夏とも出会う事が出来た。

 

盛夏は私にとって一番の親友です。

渚や理奈ももちろん花音もまどか先輩もみんな私は大好きです。

 

盛夏とはほぼ毎日会ったりしてて、沢山色んな事を話してるのに、いつも話足りないと思う。もっと盛夏の事を知りたいと思う。そして盛夏はいつも隣に居てくれる。

 

………貴と同じホテルがいいけど、盛夏とも同じホテルにも泊まりたい。

だから私の狙いは……!

 

「………Sですね!」

 

私の引いたくじに書かれていた文字はSでした。

 

私はまた盛夏の方に目をやった。

 

「ん~?さっきからどうしたの奈緒~?まさかあたしに惚れた~?」

 

「んーん!別に!貴と同じホテルじゃなかったのは残念だけど、盛夏と同じホテルだし、まぁいいかな~?って思って」

 

「何それ~?素直に盛夏ちゃんと同じホテルになれて嬉しいって喜んでいいんだよ~?」

 

「ふふ、嬉しいよ!盛夏!」

 

 

 

 

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あたしの名前は大西 花音。

あたしのバンドにはまだ名前も曲もないけど、ボーカル担当という事で綾乃さんと達也さんとバンドを組んでいる。

本当に今はまだ形だけだけど…。

 

あたしがバンドをやりたいと思ったきっかけ。

それは先日のBlaze FutureとDivalのライブを観たからだ。

 

あたしは子供の頃から友達が居なかった。

人との距離感がわからず、何をどう話しかければいいのかわからなかった。

話掛けられればそれなりに応対は出来るけど、自分から誰かの輪に入る事が苦手になっていた。

 

奈緒もずっとぼっちだったみたいだけど、根本的にぼっちの系統が違う。

奈緒は自分から他人と離れてぼっちの道を選び、あたしは他人との輪に入れなくてぼっちになったのだ。

 

そんなあたしは大学でまどかさんや綾乃さん、奈緒と出会い仲良くなって友達と呼べる仲にはなれたわけだけど、先日のライブでは奈緒はすごくいきいきとしていて、とても眩しくて羨ましく思った。あたしは奈緒みたいになりたいと思うようになった。

 

それがあたしがバンドをやりたいと思ったきっかけ。

 

「残りのくじはEとWか…。綾乃さんも居るしEを引いておきたいけど…」

 

「あ、花音もE狙いなんだ?」

 

「渚も?」

 

「うん、理奈もいるしね」

 

「あたしもE狙いかな。まぁ、渚がWを引いてくれたらWでもいいけど」

 

そっか。WにはDivalのメンバー居ないもんね。

 

Divalのメンバーは奈緒が紹介してくれた。まだ出会って数時間だけどみんなすごく話しやすくてあたしは助かってる。

もっとあたしからいけるようになればいいんだけど…。

 

「あたし達も早くくじを引きに行かないと内山が引いちゃうし、そろそろ行こうか」

 

志保はそう言ってAiles Flammeの内山くんを見た。

う~ん、内山くんはあたし達に遠慮してる気がするんだけど…。

 

「じゃあ私が引いて来ようかな」

 

そう言って渚がくじを引きに行った。

 

「花音さんはどうする?次引く?」

 

「う~ん…志保が先に行っていいよ」

 

「んじゃ渚の次に引いて来ようかな」

 

あたし達は渚のくじを見守っていた。

 

「Eですわね」

 

「やったー!せ……理奈と一緒だー!」

 

『せ』って『先輩』って言おうとしたよね?

 

「じゃ、あたしも引いて来ようかな」

 

志保が続いてくじを引きに行った。

 

「あ、Wだ」

 

はやっ!迷うことなく引いたね!

 

「ありゃ~…志保は民宿かぁ。離れちゃったね」

 

「うん、まぁ、これはこれでありかな?って思ってるよ。しばかれる心配も無さそうだし、次にW引くのが花音さんにしても内山にしても話しやすいと思うしさ。Wなら茅野先輩も学校で面識もあるしね」

 

あ、そうなんだ?

あたしもくじ引きに行こうかな。

 

そしてあたしはくじの前に立った。

 

「はじめまして」

 

「あ、ど、ども」

 

「残りはEとW。どちらを狙ってますか?」

 

「最初はEを狙ってましたけど、Wでも知り合いはいますしどっちでもいいかなって思ってます」

 

うぅ…知り合いか…。

友達って言えないあたりがあたしの悪いところだよね。

まぁ、実際友達なのかどうかわからないし。

 

あたしはくじのボックスの中に手を突っ込んだ。

…でも綾乃さんもいるしやっぱりEのグループに行きたいかな。

 

……ん?あれ?

くじが2枚しかない?

 

あたしは目の前の女の子…姫咲さんを見た。

 

「どうしました?」

 

「いえ、別に…」

 

あたしはくじを取りだし書かれているアルファベットを確認した。

 

「E。ホテルイーストブルーです」

 

あたしがみんなの元に戻るのと同時くらいに内山くんはくじを引き終わったようだ。

 

内山くんが引いたくじはW。

って事はあの姫咲さんって子はEのグループに行きたかったのか…。

 

「怪訝な表情をして…どうしたのかしら?」

 

「あ、理奈…。えっと…何て言えばいいか…言ってもいいのかどうか…」

 

「あの子が何故Eのグループに行きたかったのか?って事かしら?」

 

「理奈…気付いてたんだ?」

 

「まぁ、あれだけあからさまな心理トリックをやっているとね。それよりあなたも気付いてたのね」

 

「いや、あたしは…さっきくじを引いた時にくじが2枚しか無かったから…」

 

「なるほど。それより内山くんは違和感を感じなかったのかしら?」

 

 

 

 

 

「渉、シフォンと同じホテルで羨ましいな。帰りは背後に気を付けるんだぞ?」

 

「おう!亮の前には歩かないように気を付けるぜ!」

 

「う~…僕は知り合いが茅野先輩と雨宮さんしかいないよ…」

 

「まどか姉と栞ちゃんと同じホテルか~。うん!楽しそう!」

 

 

 

 

「あ、やっとグループ分け終わったの?げ、女の子ばっかりじゃねーか。あ、亮のやつのホテルもか」

 

「盛夏、ホテルも同じ部屋になれるといいね」

 

「ふっふっふ~、寝させないからね~奈緒~」

 

「シフォンと栞と一緒か~。これはからかい甲斐があるね!」

 

 

 

 

「私達みんなバラバラになっちゃったね~」

 

「うん、でも俺のグループにはAiles Flammeとevokeのボーカルさんがいるし話を聞くのも楽しみかな」

 

「これはシングルには私が泊まった方が面白くなりそうですわね…」

 

「茅野以外知らないメンツだけど引率はトシキさんだしなんとかなるか…」

 

 

 

 

 

「先輩が男で一人だからって逃げ出さないように見張っとかないとなぁ~」

 

「そうね。協力して貴さんが逃げ出さないようにしましょう」

 

「ん~、内山に荷物持ちしてもらおう」

 

「奈緒と盛夏と一緒か~。結衣ともまた一緒みたいだし楽しみかな」

 

 

 

 

 

「結弦。頼むから他のバンドのメンバーに迷惑をかけるような事はしてくれるなよ?」

 

「あ?てめぇこそまわりに暑苦しがられないように気を付けろよ?」

 

 

 

 

「良かったね。まどかさんと遊太くんと同じグループになれて」

 

「そ、そんな事ないもん…。双葉とが良かったもん…」

 

 

 

 

「理奈さんと同じグループにはなれたけど、お姉ちゃんとは離れちゃったか…」

 

「ねぇ、美緒。私は?」

 

 

 

 

「貴兄も花音も一緒だし楽しそうだね」

 

「まぁ…せっかくですから、あたしもみんなと仲良くなれるようには頑張ってみます…」

 

 

みんな思い思いの事を話しながら過ごしていた。そろそろ出発の準備とかしに帰りたいんだけど、まだこの話は続きそうなのである。

 

『では、予約の事もありますし民宿秋月以外のメンバーのホテルの部屋割りを決めましょうか』

 

この姫咲さんの台詞のせいでまた一悶着起きるのである。


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