バンやろ外伝 -another gig-   作:高瀬あきと

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第14話 楽器の声

あたしの名前は蓮見 盛夏。

 

あたしは昨日、元BREEZEのベース。

宮野 拓斗というおじさんにデュエルを挑み…負けてしまった。

 

そしてデュエルに負けたあたしは自分のベースを破壊した。

そういう約束でデュエルをしたから。

 

宮野 拓斗はあたし達に覚悟が足りないと言った。

ベースを破壊しても買い直せばいい。

ベースを破壊しても修理すればいい。

 

確かにあたしには覚悟が足りなかった。

 

 

 

そして貴ちゃんは今手術をしなきゃいけない状態になっている。痔の。

 

宮野 拓斗は貴ちゃんは喉の手術をしなきゃいけないと思っている。痔なのに。

 

だから宮野 拓斗は貴ちゃんに歌うことを辞めさせようとしていた。

 

貴ちゃんは歌うのが大好きだ。

BREEZEの時に歌えなくなった貴ちゃんは本当に辛かっただろうと思う。

 

そんな貴ちゃんの側に居たくせに、貴ちゃんに歌うのを辞めさせようとするのは、あたしは許せなかった。

 

貴ちゃんが本当に喉の病気だったら、あたしも歌うのは辞めてほしいと思うだろう。

そう思うと無理矢理歌うのを辞めさせるのも優しさなのかも知れない。

 

でもあたしは貴ちゃんに歌うなとは言わない。言いたくない。

 

無理矢理歌うのを辞めさせるのが正しいのか。

歌いたい貴ちゃんには思う存分に歌わせてあげるのがいいのか。

 

あたしは貴ちゃんへの想いも足りなかったのかも知れない。

 

 

 

 

そんな事を考えていたら、あたしはいてもたってもいられなくなった。

 

あたしはある所へ向かうべく、朝早くから山を登り、崖を越え、長い道のりを走っていた。

 

「はい、お嬢ちゃん着いたよ。4,600円ね」

 

「は~い。ありがとうございます~。

あ、領収書下さい~。宛名はファントムでお願いします~」

 

今、あたしはタクシーを使って目的地に到着したのだ。

 

そう…あたしはここに来る為に…。

 

 

 

 

そしてある家のインターホンを押した。

 

-ピンポーン

 

……

………

…………

 

およ?出てこない?

もう一度押してみる。

 

-ピンポーン

 

……

………

…………

 

お留守かな?

 

-ピンポーン

-ピンポーン

-ピピピンピンポーン

 

連打してみた。

 

あれ~?本当に居ないのかな?

取り合えず行く宛も無いし帰ってくるまでここで待たせてもらおうかな?

 

そう思った時だった。

 

-ガチャ

 

「うるさいな…誰?」

 

家のドアが開かれ、タバコをくわえたお姉さんが出てきてくれた。

 

「あれ?女の子?本当に誰?」

 

「はじめまして~。あたしは蓮見 盛夏と申します~」

 

「え?は、はい、はじめまして」

 

「こちらに伝説の楽器職人、モンブラン栗田さんがいらっしゃるとお聞きしたのでお伺いさせて頂きました~」

 

「……何でここにモンブラン栗田って人がいると思ったの?あんた何者?誰に聞いた?」

 

「それはですね~。まずここの表札にモンブラン栗田って書いてますので居ると思いました。そして先程も言いましたがあたしは蓮見 盛夏と申します~。誰に聞いたのかは昨日ご本人に名刺を戴きまして~」

 

あたしはお姉さんに昨日のおじいさんに貰った名刺を見せた。

 

そうなのだ。昨日あたしが北国モンブランをあげた人物。

あのおじいさんこそがモンブラン栗田だったのだ。

 

「じじいが名刺を…?珍しい…。

あ、あんたまさか…じじいの愛人?」

 

 

「あー、盛夏ちゃんだっけ?アイスコーヒーでいい?」

 

「お構いなく~。ありがとうございます~」

 

あたしはお姉さんに家にあげて頂き、これからアイスコーヒーを美味しく頂戴する所だ。

 

このお姉さんの名前は杏子(きょうこ)さん。モンブラン栗田さんのお孫さんらしい。

 

「んで?じじいは今モンブラン食べに町に出てんだけどさ。何の用?」

 

「あ~。それはですね~。実は」

 

あたしは杏子さんの前にベースを出した。

 

「この子を修理して欲しくて~」

 

「あちゃ~。これもうバラバラじゃん。修理するより新しいの買った方がいいよ?」

 

「あは~。やっぱりそうですかね~…?」

 

「さすがにモンブラン栗田でもそれは直せないよ」

 

「そっかぁ…」

 

あたしが自分で壊したんだもんね。

ごめんね。あたしのベース…。

 

「随分型遅れみたいだし…新しいのが良くない?」

 

「はい~。バイト頑張って新しいの買う事にします。あ、でもバイト先のお店閉店しちゃったんだった。どうしよっかな~?」

 

「………そのベース。そんなに大事なんだ?」

 

「ほえ?」

 

「なんか…愛おしそうに触ってるからさ…」

 

「うん。中学の頃から…ずっと一緒だったから」

 

「そっか」

 

「アイスコーヒーごちそうさまでした~。あたしはそろそろ…」

 

「え?帰っちゃうの?もう少ししたらじじいも帰ってくると思うしゆっくりしていきなよ」

 

「いえ~。友達に何も言わずに出て来ちゃったから心配してると思いますし、ベースも直せないなら…」

 

「ふぅん、あ、そだ。うちの店見て行く?店って言ってもいつもは開けてないんだけどね。ベースももちろんあるよ」

 

ほぉ~。ベースもあるのかぁ。

でも藤川さんがモンブラン栗田さんのベースは100万以上するって言ってたしさすがに買えないしな~。

 

「見てくだけならタダじゃん。おいでよ」

 

う~ん、次に買うベースの参考にもなるかな?せっかくだし見させてもらおうかな?

 

「じゃあ、見るだけで」

 

「あはは、気に入ったのあったら買ってくれていいんだよ」

 

 

そしてあたしは杏子さんに連れられて家の裏手にあるお店へと入った。

 

「普段はこのお店は閉めててね。気に入った客しかお店に入れないし売らないから在庫だけはいっぱいあるんだ」

 

お店の中にはギターやベースだけじゃなく、ウクレレやバイオリン。色んな楽器が列べられていた。

 

「およ?このギター」

 

「ん?盛夏ちゃんギターもやるの?

でも、ごめんね。それは売り物じゃないんだ」

 

「いえいえ。あたしはベースオンリーです。ランダムスターって珍しいなぁって思いまして~」

 

レジの横に広いスペース。

そこには星の形をしたギター、ランダムスターが置かれていた。

 

「このランダムスターは古いモデルでね。もう20年くらい前のやつかな?

これを最新型にカスタムしてくれって面倒な依頼を受けちゃって…」

 

ほうほう。20年前のギターか~。

このギターはヘッド部分がギブソンタイプなんだね。

その人もこのギターがすごく大事なんだね。

 

 

 

 

ふぅん。ベースも色々あるなぁ。

カラーはやっぱり奈緒のギターが赤だしあたしは青系の方がいいかな?

 

そんな事を考えていると…

 

「え!?理奈!?」

 

「ん?盛夏ちゃんどしたの?」

 

あたしの目の前に理奈の大きなポスターが貼ってあった。これcharm symphonyの時のポスターかなぁ?

 

「あ、それね。charm symphonyのRina。

じじいがこの子のファンでさ。それでポスター貼ってんの」

 

ほうほう。モンブラン栗田さんは理奈のファンなのかぁ。理奈とお友達ですよ~って言ったら羨ましがるかなぁ?

 

「今帰ったぞ~」

 

およ?帰ってきたかな?

 

「あ、じじい。おかえり」

 

杏子(あんこ)。お前ランダムスターのカスタムは終わったのか?」

 

「いや、まだだよ。お客さんが来ててさ。そんであたしの名前はきょうこだから。あんこじゃないから」

 

「客人じゃと?」

 

モンブラン栗田さんとあたしは目が合った。

 

「こんにちは~。あれ?まだおはようございますかな?」

 

「おお!おお!おお!!

お嬢ちゃん久しぶりじゃのぅ!」

 

「久しぶりって言うかお会いしたのは昨日ですけどね~」

 

モンブラン栗田さんはあたしの所に走って来て手を握ってブンブンと手を振りながら

 

「お嬢ちゃんよく来てくれたのぅ!お嬢ちゃんにはワシの出来る限りのお礼をしたいと思っておったんじゃよ!」

 

「あははー。北国モンブランくらいでおおげさですよ~」

 

「そんな事はないぞ!北国モンブランを貰ったからってわけじゃない。お嬢ちゃんの優しさと眼に惹かれたんじゃ。

っと、それより今日は何でここに来たんじゃ?ベースの事か?」

 

「あー、それね。盛夏ちゃんはベースの修理依頼に来てくれたみたいなんだけどさ。さすがに修理不可能って感じで…」

 

あたしの代わりに杏子さんが答えてくれた。

 

「ふぅむ…杏子にも修理が無理ならワシでも無理かの……すまんな、お嬢ちゃん」

 

「いえいえ。お気になさらず~」

 

あたし達はお店からまたリビングの方へ戻り、今度はモンブラン栗田さんがあたしのベースを見てくれた。

 

「おぉ~…これは確かに酷いのう…」

 

「やっぱりそうですよね~。ベースは新しいのを買う事にします。ありがとうございました~」

 

あたしはベースを担いで帰ろうとした。

けどモンブラン栗田さんは

 

「お嬢ちゃん。何でベースを壊したんじゃ?」

 

「ほえ?」

 

「これはお嬢ちゃんが叩きつけるとか何かして壊したんじゃろ?かわいそうな事じゃ…」

 

「え?盛夏ちゃん…そうなの?」

 

やっぱりバレちゃったか。

そうだよね。こんなにバラバラなんだもん。

 

「実は…ですね~…」

 

あたしはモンブラン栗田さんと杏子さんに昨日の経緯を話した。

二人とも黙って最後まで聞いてくれた。

 

「なるほどのぅ…」

 

「拓斗さん…か…。もしかして盛夏ちゃんってタカさんのバンドメンバーなの?」

 

え?

杏子さん…貴ちゃんの事知ってるの?

 

-ピンポーン

 

あたしが杏子さんに貴ちゃんの事を質問しようとした時、家のインターホンが鳴った。

 

「はい?どなた様ですか?」

 

あたしの時はなかなか出てくれなかったのに…。

あたしがそう思っていると聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

『ああ…あんこか。じいさんはいるか?』

 

この声…貴ちゃん?

 

「あたしの名前はきょうこだ!あんこじゃねぇ!」

 

『いや、そのネタはもういいから。じいさんに聞きたい事あんだけど』

 

「盛夏ちゃんの事?」

 

『……やっぱ盛夏はここに来てたか。今も一緒か?』

 

え?え?え?本当に貴ちゃん?

どどどどど…どうしよう!?

 

「さぁ?きょうこ様お願いしますって言ったら教えてあげない事もないけど?」

 

『あ、そういや俺昨日運転中のトシキの写真撮ってたんだったわ。この写真見たくねぇか?』

 

「盛夏ちゃんは今一緒に居るよ。鍵は開いてるから入って来て」

 

え!?杏子さん!?

 

 

「盛夏…」

 

「た、貴ちゃん…。あ、あはは~。おはようございます~」

 

「お前ほんと何してんの?」

 

「あ、あ、あ…あは~。貴ちゃんよくあたしがここに居るってわかったね~。

おお!?もしかしてこれは…!貴ちゃんの愛の力…!」

 

「はいはい。愛の力愛の力」

 

そう言って貴ちゃんはあたしの隣に座った。

 

「あんこ。悪い、何か飲み物くれ」

 

「あたしはタカさんの家政婦じゃ…」

 

「ほれ」

 

そう言って貴ちゃんは杏子さんにスマホを投げ渡した。

 

「トシキの写真いっぱい入ってるから欲しいの転送していいぞ」

 

「タカさんはコーヒー好きだったよね。すぐ淹れてくるね」

 

杏子さんはスキップしながら台所へ向かって行った。

ほうほう。杏子さんってもしかしてトシキちゃんの事……

 

「さてと…」

 

ビクッ

 

あ、あわわわわ、貴ちゃんに怒られる…

 

「じいさん。盛夏のベース直せそうか?」

 

え?あれ?あれあれ?

 

「…さっき見せてもらったがの。あれを直すのは無理じゃな」

 

「そっか。じいさんに直せないなら無理か」

 

……

………あれ?貴ちゃん?

あたしの事怒らないの…?

 

「盛夏」

 

「は、はいぃぃぃぃ!?」

 

「あ?どしたの?」

 

怒られる…怒られる…

 

「まぁいいか。このじいさんの所は楽器屋もやってんだけどよ。少しベース見させてもらうか?」

 

え?あれ?……怒られない?

 

「はいタカさん。アイスコーヒーでいいよね?」

 

「おう。ありがとうな」

 

そう言って貴ちゃんは杏子さんからアイスコーヒーを受け取って飲み始めた。

 

貴ちゃん…?

 

「あの…貴ちゃん…?」

 

「ん?どした?」

 

「ううん…何でもない…」

 

貴ちゃんは…あたしを怒らないの…?

 

 

 

怒ってくれないの……?

 

 

 

「盛夏?」

 

………

 

「おい、盛夏」

 

………

 

 

「盛夏!」

 

え?あれ?

 

「ん?貴ちゃん?なぁに?」

 

「お前俺の話聞いてた?」

 

「お?ごめ~ん。お昼ご飯と晩御飯の事考えてて~」

 

「はぁ…あのな。あんこが言ってたけどさっき店の方見せてもらったんだって?」

 

やっぱり…怒ってくれないんだ…

 

「うん~。でもお金もないし~?何かコレってのがなかったっていうか~」

 

「え!?ワシの作ったベースはダメじゃったか!?」

 

「いえいえ。そうじゃなくてですね~。

何て言えばいいかなぁ?何かね。どのベースもあたしと一緒に居たいって思ってくれてないみたいな?ベースの声が聞こえてこないっていうか~」

 

「ベースの声…じゃと?」

 

「盛夏…お前…」

 

ん?何か変かな?

あ、まぁベースの声が聞こえるとか聞こえないとか変だもんね。

 

あたしは……何を言ってるんだろう?

 

「じじい…もしかしたら盛夏ちゃんなら…」

 

「そうじゃな」

 

ほえ?

モンブラン栗田さんは席を立って杏子さんとお店の方に歩いて行った。

どうしたんだろう?

 

「盛夏…お前のベース…親父さんに買ってもらったんだったか?」

 

「うん、そうだよ~。当時はあたしはギターをやりたかったのに間違えてベースを買って来られて~」

 

「蓮見……やっぱり記憶にねぇな…。

なぁ、お前のお母さんの旧姓って…」

 

ん?どうしたんだろう?お母さんの旧姓?

 

「待たせたの…」

 

お?

あたしと貴ちゃんが話しているとモンブラン栗田さんと杏子さんがベースケースを3本持ってきた。

 

……

………

 

その3本のベースケースの内の1本。

あたしはそれに目を奪われた。

 

3本共同じベースケースに入っているのに、何故かあたしにはその1本のベースがすごく輝いて見えた。

 

「お嬢ちゃんに見て欲しいベースがあっての…」

 

モンブラン栗田さんはあたしの前に3本のベースケースを置いて、ベースを取り出そうとした。

だけどあたしは1本のベースケースに指を指して…

 

「あたし…このベースが見たい…」

 

「ん?これかの」

 

そう言ってモンブラン栗田さんは藍色のベースを取り出してあたしに渡してくれた。

 

「おお~!これはこれは~」

 

あたしはその藍色のベースに目も心も奪われていた。

 

だけど…何か違う。

 

「お嬢ちゃんそのベースはどうじゃ?」

 

「うん。すごいと思う。何がどうすごいかと聞かれてもわからないんだけど~」

 

「盛夏ちゃん、それ弾いてみる?」

 

「いいの?」

 

あたしはその藍色のベースを弾かせてもらった。

 

ん~?やっぱり…何か違う…。

 

「じいさん。あのベース…」

 

「うむ。ワシの最高傑作irisシリーズのうちの1本。『狭霧』じゃ」

 

「……まだ残ってたのか」

 

「拓斗のやつはお嬢ちゃんとのデュエルで『晴夜』を使ったらしいの」

 

「らしいな…」

 

「ホッホッホ」

 

「ん?」

 

「カマをかけただけじゃが…本当に『晴夜』を使っていたとはのぅ」

 

「…盛夏から聞いてたんじゃねぇのかよ」

 

「お嬢ちゃんから拓斗とデュエルをした事は聞いたがの。ベースの事までは聞いておらんよ」

 

「……そうか」

 

「拓斗に託した『晴夜』、澄香に託した『虚空』。そしてクリムゾンに奪われた『雨月』と『雷獣』。

ベースは音楽を楽しむ為に弾くもんじゃ。だから楽しい音楽をやれないクリムゾンにはワシのベースは渡したくなかった」

 

「……」

 

「お主らにクリムゾンからワシのベースを取り戻してほしくて託したベースじゃが…」

 

「悪かったな…取り戻せなくて」

 

「いや、その方が良かったのかも知れん。ワシもワシのベースを、クリムゾンから取り戻す為の武器にしてたんじゃよ」

 

「そうでもねぇだろ。拓斗のバカは律儀にクリムゾンとのデュエルん時しか使ってなかったけど…澄香はいつもあのベースで弾いてたしな。少なくとも澄香は楽しんで弾いてたぞ」

 

「ワシの気持ちの問題じゃよ。

だから残った『狭霧』と『雲竜』と『花嵐』の3本は楽器の音色(こえ)を聴ける者に託したかった」

 

「それが盛夏か」

 

「ホッホッホ。後は元charm symphonyのRinaちゃんに使ってもらえたら最高じゃのう」

 

「は?理奈?」

 

「お?タカも知っとるのか?」

 

「ああ、その理奈ならモンブラン栗田(じいさん)にベースをリペアしてもらいたいって言ってたぞ」

 

「な、なんじゃってぇぇぇぇ!!?」

 

「おわっ!?び、びっくりしたぁ~」

 

あたしはモンブラン栗田さんの叫び声にびっくりしてベースの演奏を止めた。

 

「じじいどうしたの?いきなりでかい声出して…盛夏ちゃんびっくりして演奏止めちゃったじゃん…」

 

「タカ!それは本当か!?マジか!?

嘘じゃったらワシは泣くぞ!?お前も泣かせるぞ!?」

 

「いや、マジだけど?」

 

「まさか…Rinaちゃんがワシの事を知ってくれているとは…嬉し過ぎて天に召されそうじゃ…。あ、婆さんが川の向こうからワシを呼んでる」

 

ん~?どうしたんだろう?

何かあったのかな?

 

「どうしたのじじいは…それに婆ちゃんまだ健在だからね?今日も朝から南国DEギグに出演する推しバンドのグッズ買う為に並びに行ってるからね?」

 

「そうじゃったかの?

それよりお嬢ちゃん。そのベースはどうじゃ?」

 

「う~ん。とってもいいベースだと思います~。でも何か違うんだよね~」

 

「違う?」

 

「うん」

 

どう言えばいいだろう?

思った事をそのまま言えばいいかな?

 

「なんか~?お互いに仲良くしようとしてるけど上手く打ち解けないみたいな、息が合わないみたいな?なんかそんな感じ?」

 

このベースはすごくいいベースだと思う。でもあたし達は合わない感じがする。

 

「だからこのベースはお返しします~。関東に帰ってからゆっくりベース探ししようと思いま~す」

 

「お嬢ちゃんはそのベースの声は聞こえたかの?」

 

「うん。それは聞こえた気がする~」

 

「そうかそうか」

 

そしてモンブラン栗田さんはあたしのベースを取って。

 

「お嬢ちゃん。このお嬢ちゃんのベースとその藍色のベースを交換してくれんか?交換じゃからもちろんタダじゃよ」

 

え?あたしのベースとこのベースを?

 

「そのベースの名前は『狭霧』。

明日お嬢ちゃん達が帰るまでに必ずお嬢ちゃんに合う最高のベースに仕上げてみせる。じゃから…お願いじゃ」

 

う~ん…どうしようかな?

あたしのベースとバイバイしなきゃだしなぁ?でもタダか~。むむむむ~。

 

バイト先も潰れちゃったからすぐにベースも買えないしな~。う~ん…。

 

「じゃあ、是非お願いしま~す」

 

「ありがとうの。さぁ、忙しくなって来たぞ!杏子、手伝ってくれ!」

 

「は?あたしランダムスターのリペアがあるんだけど…」

 

「全部明日までに仕上げるぞ…。ワシの最後の仕事じゃ」

 

最後の…?

 

「じじい…?」

 

「ワシももう歳じゃ。細かい作業はもうやれんし最新のパーツなんかもよくわからん。その辺はもう杏子の方が詳しいじゃろ」

 

「じいさん…」

 

「じゃが、irisシリーズだけはワシの手で…そう思っておった。

これがワシの最後の仕事。そしてこれからは杏子。お前がモンブラン栗田二代目としてワシの仕事を継げ。お前ならもうワシの腕を越えておる」

 

「じじい……。そっか。じじいも引退か…。わかったよ。最後の仕事…あたしも手伝う」

 

「お嬢ちゃん、タカ。そういうわけじゃ。ワシらは仕事に戻るからの。明日トシキの所に届けに行くから待っておれ」

 

「………わかった。じいさん…頼むな」

 

「モンブラン栗田さん…お願い…します」

 

「ばっちり任せとけぃ」

 

そう言ってモンブラン栗田さんと杏子さんは玄関まであたし達を見送ってくれてから仕事に戻り、あたし達も南国DEギグがあるから急いで戻る事にした。

 

「よし、みんなにもLINEしたし俺らも行くか」

 

「うん…」

 

ベースの事は何とかなって一安心だけど、貴ちゃんは…二人になった今も怒ってくれなかった。

 

「参ったな。この辺は山だしちょっと町の方まで歩かないとタクシーもつかまえらんねぇな」

 

「そうだね~」

 

「ん?盛夏?何か元気ねぇか?

ベースの事はじいさんに任せとけば大丈夫だと思うぞ」

 

違う…そうじゃない…。

 

「貴ちゃん…」

 

「ん?」

 

「怒ってないの?」

 

聞いてしまった。

怒ってくれないの?って続けようかとも思ったけど…それだと…やっぱり違うから。

 

「は?それでビビってんの?」

 

ビビってる訳じゃないけどね…。

 

「うん…まぁ…」

 

「そっか。まぁあれだ。

怒ってるか怒ってないかって質問なら、正直めちゃくちゃ怒ってる。

本当ならげんこつの1発でもお見舞いしたいくらいだな。もしくはお尻ペンペン」

 

貴ちゃん…怒ってる…?

 

「お尻……うわぁ…セクハラだぁ~」

 

「でも奈緒と香菜に聞いたしな。どういう経緯かは知らねぇけど、盛夏は俺の為に拓斗とデュエルをしたって…」

 

まさかそれが貴ちゃんの痔が原因だと知ったらどう思うかなぁ?うふふ~。

 

「誰にも言わずにじいさんの所に行った事は怒ってるけど…元はと言えば俺の為だったわけだし。

でもみんな心配してたからな。みんなには謝っておけよ」

 

「やっぱり怒ってるんだ?」

 

「ああ…まぁな」

 

貴ちゃん…怒ってくれてた…。

怒ってくれてたんだ。

 

「貴ちゃん…!」

 

「グハッ」

 

あたしは貴ちゃんに飛び付いた。

 

「ごめんなさい…」

 

「あ?何が?今いきなり体当たりしてきた事?勝手に行動した事?」

 

「ん…どっちも…」

 

「そっか」

 

「うん…ごめんなさい…」

 

「まぁどっちも気にすんな。でももう勝手な行動したりすんなよ?

って言ってもお前こないだの旅行の時も勝手に行動してたけどな。2回目だよ?わかってる?」

 

「は~い。もう勝手な行動はしませ~ん」

 

「本当にわかってんのかな……。

それより歩き辛いんだけど?いつまでしがみついてんの?」

 

「朝から何も食べてないから力が入らない~。ひとりで歩けない~」

 

「め…めんどくさ…」

 

あたしはそのまま貴ちゃんの腕にしがみついて歩き始めた。

 

 

ちょっとくらいなら…今日だけだから……いいよね?

 

 

 

「おお!?そうだそうだー!そうだったー!」

 

「あ?いきなりどした?」

 

さっきの貴ちゃんの質問に答えてないや。

 

「あのね?お母さんの旧姓なんだけど~」

 

「ん?おお、そういや聞いてなかったな」

 

「知らないの」

 

「は?」

 

「んとね。あたしって貴ちゃんのBREEZEのライブの後にお父さんとお母さんに作られたじゃん?」

 

「いや、あの…はい。そうみたいですね。ってかそれわざわざ俺のって言う必要ありましたかね?」

 

「お母さんその時まだ18で未成年だったから、お母さんのお父さん。つまりあたしのおじいちゃんに反対されてて、勘当されたんだって~」

 

「そうなのか…。やっぱ考え過ぎか…。考えてみりゃ盛夏って21だもんな。15年前に盛夏のお母さんに会ってたら盛夏にも会ってても不思議はないもんな」

 

「ん~?そうとも限らないかも?」

 

「え?そうなの?」

 

「さっきも言ったけどお母さんは色々反対されてて、籍は入れてたから結婚はしてたわけだけど、お母さんがあたしを産んでからしばらくの間、お母さんは一人暮らししててね。あたしはお父さんとおじいちゃんとおばあちゃんと4人で住んでたからね~」

 

「なんか…複雑だな…」

 

「色々落ち着いてから一緒に暮らし始めたんだよ。その間もお母さんは趣味全開でライブとか行きまくってたらしいし、英治ちゃんに口説かれてた時には実はお母さんは人妻だったのだ~。まぁ、お父さんと出会う前にも口説かれてたみたいだけど~ 」

 

「そうだったのか…」

 

「それでも時々はあたしもお母さんに会ったり遊んだりしてたし寂しくなかったけどね。おお!そういえばあたしがお母さんと暮らし始めたのも15年前くらいかも~。結局お母さんのお父さんには認めてもらえなかったみたいだけど~」

 

「15年前…か…」

 

「うん」

 

「盛夏が…生まれる前から英治に口説かれた事もあって…生まれてからも口説かれた事があるなら…やっぱり盛夏のお母さんは俺達と…何度も会ってんだな」

 

「そういう事になるね~。でもどうしてお母さんの事が気になるの?

まさかとうとうお母さんに…娘さんをくださいと挨拶に…!?」

 

「盛夏に英治がお母さんを口説いてたって聞いた時から気になってはいたんだけどな。お母さんの名前な…」

 

「ほえ?」

 

聖羅(せいら)だろ?」

 

「おお!正解正解!さすが貴ちゃん!」

 

「やっぱりか」

 

「貴ちゃんはお母さんの事知ってるの?」

 

「あ?まぁな。何度も会ってんぞ。

そっか…聖羅ってあん時にはもう盛夏を産んでたんだな」

 

「……ならお母さんならあたしと貴ちゃんの事許してくれそうだねぇ」

 

「は?何が?何を許してもらうの?」

 

そっかそっか~。

お母さんは貴ちゃん達と何度も会ってるのか~。

高校の時は軽音楽部に入るのも反対されたけど、バンドをやるって話した時に何も言われなかったのはそれも関係してるのかな?

ボーカルがBREEZEのTAKAだったから…?

 

「盛夏…変な事…聞いてもいいか?」

 

「変な事…?

あ、大丈夫。あたしまだ彼氏とか出来た事ないし~。まだした事ないよ?

ちょっと怖いけど…頑張る…!」

 

「お前何言ってんの?マジで何言ってんの?俺がこの状況でそんな事聞くと思ってたの?」

 

「ほえ?あたしバンドやるの貴ちゃんとが初めてだよ?」

 

「え?あ、ああ、バンドな。バンド。うんバンドだなバンド」

 

うふふ~。貴ちゃんからかうと面白いなぁ~。

 

「それで?変な事ってなぁに?」

 

「あ、ああ…あれだ…。

盛夏のお父さんって本当に間違えてベースを買ってきたのか?」

 

え?変な事ってそれ?

 

「そうだよ~。貴ちゃんは何を見てたの?あたしが弾いてたのはベースだよ?」

 

「いや、それは見たらわかるっつーの」

 

まぁ、ギターとベースは違うしね。

見たらわかるよね~。

 

………見たらわかる?

お父さん…音楽があんなに好きなのに…ギターとベースを間違えて買ってきた…?

 

あれ?なんか違和感…?

今更だけど…普通間違えないよね…。

 

「盛夏のお父さんは間違えて買ってきたのかな?って。もしかしたら…ギターじゃなくてはじめからベースを…ってな。

ベース買うちょっと前に何かあったんじゃねぇかな?って」

 

ちょっと前に?

お父さんは最初からベースを買うつもりだった?

あれ?……あれ?

 

 

……あ

 

 

あたしは思い出した。

お父さんがベースを買ってきてくれた日。

 

あの日の少し前……。

 

 

 

 

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『おかーさーん。おかわりー』

 

『せ、盛夏?もう5杯目よ?』

 

『おかわりー』

 

『はいはい…』

 

あの日は家族みんなでご飯を食べてて…

 

『あ、ごめんね盛夏。もうお米ないみたい…』

 

『ええええ~…あたしまだ食べ足りないよ~』

 

『ごめんごめん。また明日はもう少し炊いておくから』

 

『ふぇぇぇぇぇ…食べ足りない~…』

 

あの日はお米がなくておかわり出来なくて…落ち込んでたんだっけ?

そしたらお父さんが…

 

『ほら盛夏。今日はもう我慢しろ。

その変わり今度ギター買ってきてやるから』

 

『ギター…?ほんとに!?』

 

『ああ、少し早い誕生日プレ…』

 

『わぁぁぁい!やったぁー!

誕生日でもクリスマスでもないのにギター買ってもらえる~!』

 

『ああ、だから少し早い誕じょ…』

 

『わぁぁぁい!わぁぁぁい!!

誕生日とクリスマスと別腹でギター買ってもらえるぅぅぅぅ!』

 

『だから別腹じゃなくて…』

 

『わぁぁぁい!おかわり我慢したらギター買ってもらえる事になったぁぁぁ』

 

『あの…も、もういいや…』

 

あたしは確かにお父さんにギターを買ってもらえるはずだった。

だってあの時お父さんは…

 

『それでな盛夏。お父さん雑誌買ってきたからこの中から好きなギター選んでいいぞ。どのギターが欲しい?』

 

お父さんは…楽器の雑誌を買ってきてくれてて…あたしに好きなギターを選べって言ってくれたんだ…。

 

『う~ん、どのギターがいいかなぁ?

これもいいし~、これも可愛いし~、あ~、これもいいなぁ』

 

『盛夏…?これ値段で選んでないよな?』

 

いいな~って思うギターはたくさんあったけど、どれかってなるとなかなか決められなくて…。

 

『どれどれ~?お母さんにも見せて』

 

お母さんも一緒に雑誌を見て3人でどれがいいかってなってたんだっけ。

 

『あ、盛夏。お母さんこれとかかっこいいと思うんだけどどう?』

 

『ん~?何かピンときませんなぁ』

 

『あ、お母さんこれ欲しいな~。ねぇ、お父さん』

 

『いや、母さん楽器何も出来ないじゃない。譜面も読めないし…』

 

『あ、これ…盛夏。これにしなさいな。

盛夏にはこの子がいいよ』

 

『ほえ?どれ~?』

 

『このブルーの…』

 

お母さんがあたしに勧めたのは、ギターじゃなくてベースだった。

 

『お母さん~。これギターじゃないよ~』

 

『お父さん。盛夏にはこの子がいい』

 

『母さん…?そっか。わかったよ』

 

『お父さん?何がわかったの?あたしが欲しいのはギターだよ~』

 

『あはは、そうだな。盛夏が欲しいのはギターだもんな。じゃあどのギターにする?』

 

『う~んとね~…』

 

 

 

-----------------------------------------

 

 

そうだ。あの日は結局どのギターがいいか決められなくて…。

 

お父さんが買ってきてくれたベース。

あれは…お母さんが選んだベースだ。

 

「貴ちゃん」

 

「ん?」

 

「貴ちゃんの言う通りかも。お父さんが買ってきてくれたベースは…お母さんが選んでくれたベースだ」

 

「そっか」

 

ん?どうしたんだろ?

もしかしてお母さんもバンドやってたとか?実はベーシストだったとか?

 

「貴ちゃん、お母さんってバンドやってたとか?」

 

「ん?いや?俺の知る限りじゃバンドやってたとかないぞ?」

 

あ、そうなのか。

ならお母さんがベースを選んだのはたまたま?

 

いや、それよりも…何で貴ちゃんはそんな事を聞いてきたの?

やっぱりお母さんには何かある?

 

「何で俺がお母さんの事聞いてきたんだろ?って思ってんのか?」

 

「お?さっすが貴ちゃん。あたしの事は何でもお見通しですな~」

 

「さっき盛夏がベースの声が~とか言ってたろ?盛夏のお母さんも楽器の声が聞こえるとか言ってたからな。それで思い出しただけだ。

世の中には音色が見える人もいれば、楽器の声を聞ける人もいるんだと」

 

「ふ~ん、そうなんだぁ?」

 

あたしのお母さんも楽器の声が聞こえるのか~。遺伝なのかな?

 

「あ、そいや」

 

「なぁに?」

 

「拓斗のバカに何言われたんだ?」

 

「ほえ?」

 

ん~。さすが貴ちゃんが歌う事を辞めさせようとしてたからとか言えないよね~。どうしようかなぁ?

 

「んとね。貴ちゃんの昔のMCは下ネタだったって~」

 

「は?あのバカ……奈緒と盛夏と香菜の前で何言ってんの?本当にバカなの?

やっぱりあの野郎いっぺんシメてやんねぇとな……」

 

嘘はついてないもんね~。

 

「でもそれじゃねぇだろ?それくらいでデュエルしようとかなんねぇだろ…」

 

「どうしてそう思うの?それが原因だよ~?」

 

「いや、それこそなんで!?俺の昔のMCが下ネタばっかだったからってデュエル勃発しちゃうの!?やだ怖いわ。過去のMCに震えちゃう」

 

「いや~何が原因でデュエルになるのかわからないものですな~」

 

「はぁ…てっきり盛夏が俺のベースをやるのを認めねぇとかそんなん言われたんかと思ってたわ…」

 

え?貴ちゃん…?

 

 

 

『もうタカの隣には俺以外のベースは認めねぇ。特にお前はな』

 

 

 

特にお前はな。

宮野 拓斗は確かにそう言っていた。

 

あれはあたしが文句を言ったからだと思ってたけど…。実は違う?

あたしだから…貴ちゃんの隣はダメ?

 

「貴ちゃんは…何であたしが宮野 拓斗にそう言われたと思ったの?

貴ちゃんも…あたしが隣でベースを弾くのは……」

 

「貴ちゃんも……か。やっぱり拓斗にそれ言われたんだな」

 

「あ…」

 

「心配すんな。拓斗が何を言おうと…誰が何を言おうと…俺の隣は盛夏の場所だ」

 

貴ちゃん…。

 

「ずっと?」

 

「おう。ずっとだ」

 

「あたしは貴ちゃんの隣にずっと居ていい?」

 

「当たり前だろ。Blaze Futureのベースは盛夏じゃねぇとダメだ。盛夏以外のベースを俺は認めねぇよ。だから奈緒と一緒にずっと俺の隣に居ろ」

 

「おお!?これは……プロポーズ!」

 

「いや!?何言ってんの!?

ボーカルとベースとの話だよね!?」

 

「ん~?でも宮野 拓斗は貴ちゃんと相思相愛って言ってたし~。そういう事なのかな~?って~」

 

「た、拓斗の野郎…マジで泣かす…。

いや、待って。あいつ俺と相思相愛とか本当にどうしちゃったの?梓にフラれたショックでソッチになっちゃったの?やだ怖くなってきた」

 

あたしはずっとBlaze Futureで、貴ちゃんの隣でベースを弾き続けるよ。

貴ちゃんの隣でずっとずっと…。

 

 

貴ちゃんの隣はあたしの居場所だから。

 

 

「あ、貴ちゃんタクシー来たよ。

ヘ~イ、タクシー!」

 

「どうしよう拓斗と会っちゃったら…。逃げる?やっぱり逃げるのが1番かな?」

 

あたし達はタクシーに乗り、南国DEギグの会場へと向かった。

 

やはり一大イベントがあるからか道は混雑していて、あたし達は開場時間どころか開演時間にも間に合わなかった。

 

タクシーを途中で降りて、領収書をしっかりと貰い、あたし達は走って会場へと向かった。

 

会場の裏手の林道を走り、もうすぐ会場の入口という所まで来た時、

そこにはトシキちゃんと英治ちゃんと、宮野 拓斗が居て……

今まさにデュエルをしようとしているところだった。

 

「トシキ…英治……。と、誰だあいつ?」

 

貴ちゃん…もうそのネタはいいから~。

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