バンやろ外伝 -another gig-   作:高瀬あきと

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第15話 そよ風

俺の名前は佐藤 トシキ。

 

あれ?何気に俺のモノローグって初めてじゃないかな?

 

俺達は今南国DEギグの会場前に居た。

 

「タカと盛夏ちゃんはタクシーで向かって来てるみたいだけどな…。

渋滞してるから開場には間に合わないみたいだ」

 

「そうなんだ?チケットははーちゃんに渡してあるよね?」

 

「ああ、一応な」

 

南国DEギグの会場は広い。

アリーナはA~Eブロックに分かれていて、スタンドはA~Lブロックに分かれている。

 

チケットにはどこの席かは記載されておらず、開場された時に抽選で決まるらしい。

俺達が貰ったチケットはペアチケットになっているので、はーちゃんは盛夏ちゃんと一緒に入れるだろうけど…。

一度入っちゃったらもう合流は出来ないだろうな…。

 

「あ、列が動いてきましたよ。そろそろ開場ですかね?」

 

亮くんとシフォンちゃん。

渉くんと内山くん。

奈緒ちゃんとまどかちゃん。

一瀬くんと結衣ちゃん。

秋月さんと栞ちゃん。

松岡くんと双葉ちゃん。

渚ちゃんと志保ちゃん。

理奈ちゃんと香菜ちゃん。

豊永くんと折原くん。

綾乃ちゃんと大西さん。

美緒ちゃんと藤川さん。

晴香ちゃんと達也くん。

三咲ちゃんと初音ちゃん。

そして英ちゃんと俺。

 

このようにペアに分かれて南国DEギグを楽しむ事になった。

 

「出来ればアリーナに行きたいよなー」

 

「そうだな。近くで感じたいものだ」

 

「茅野はスタンドの方がいいよな?」

 

「あ、そうだね…ずっとスタンディングは辛いかも」

 

「もし冬馬達がアリーナになったら誰かと交換してもらえばいいんじゃないかな?」

 

みんな思い思いの事を話しながら開場するのを待っている。

 

SCARLETやクリムゾン、そして宮ちゃんの事を聞いた時はどうなる事かと思ったけど、今日はみんなにとって楽しい1日になるといいな。

 

そんな事を考えていると少しずつ動いていた列がスムーズに動き出した。

どうやら開場したみたいだ。

 

 

「やったよ亮くん!ボク達アリーナだよ!」

 

「ああ、やったな!渉達はどうだった?」

 

「俺達はスタンドだった。離れちまったな」

 

「まどか先輩!やりました!アリーナですよ!」

 

「でかした奈緒!」

 

「私達はスタンドですわね。春くんと松岡くんはどうでしたか?」

 

「俺達もスタンドだった。スタンドなら茅野も座れるだろうし良かったぜ」

 

「俺達もスタンドだったよ」

 

「あちゃ~。せっかくだからアリーナに行きたかったけどスタンドだよ」

 

「問題ないわ。スタンドでも十分楽しめるわよ」

 

「渚。あたし達は?」

 

「私達もスタンドかな。でもここならステージに近いよ」

 

「やるな結弦。まさかアリーナを引き当てるとはな」

 

「たりめーだ。だけどな奏。アリーナで喜んでんじゃねぇぞ?」

 

「もちろんだ。いつか俺達はステージに立つぞ」

 

「綾乃さんあたし達はアリーナですか?スタンドですか?」

 

「私達もスタンドみたいだよ」

 

「美緒!どうだった?」

 

「私達もスタンドだね。でもどこでもいいじゃん。来れただけ幸せだよ」

 

「達也?あたしらは?」

 

「スタンドですね。すみませんお義姉さん」

 

「お母さんどうだった?」

 

「スタンドよ。疲れたら初音は座れるし良かったかな?」

 

「トシキ。俺達は?」

 

「あはは。スタンドだよ。さすがにアリーナは無理だったね」

 

そして俺達は南国DEギグが終わったら集合する場所を決めてそれぞれ別れた。

 

 

俺と英ちゃんは抽選で決まった席に座った。

開演時間まではもう少しあるかな?

 

「いや~やっぱこういう時間が一番ドキドキするよな。なぁ、トシキ俺達も…」

 

「いや、無理だから」

 

「でもお前昨日はギター弾いたんだろ?」

 

「うん…まぁ…」

 

確かに昨日、雨宮さんとのデュエルでギターを弾いた。

久しぶりの感覚。あんな大変なデュエルだったのに楽しいって思えた。

 

でも自分でもわかる。

昔みたいな演奏は出来ないよ。

 

「コードはまだ覚えてるしね。昨日は必死だったのもあったからだよ。

昔みたいには……弾けないよ」

 

「そっか…残念だな」

 

「あ、俺今のうちにドリンク買ってこようかな。英ちゃんは?何かいる?」

 

「お?そっか?悪いな。なら水でいいから頼むわ」

 

「オッケー。行ってくるね」

 

俺は水を買いに席を立った。

英ちゃんもはーちゃんも…15年経った今でも俺を誘ってくれたのは嬉しいけど…。

 

俺はやっぱり今はギターより三線をやってる時が楽しいしね。

 

でも英ちゃんなら今からでもまたバンドを……

 

「トシキ」

 

俺がそんな事を考えていると、名前を呼ばれたので声のした方に目を向けた。

 

「………久しぶり、宮ちゃん」

 

「ああ…久しぶりだな」

 

そこには俺達の…BREEZEのベーシスト宮野 拓斗が立っていた。

 

「さすがにこの会場の広さだ。お前らを見つけるのは骨だったぜ」

 

「俺達を?探してたのははーちゃんでしょ?」

 

「トシキ。お前なら今あいつが何処にいるか知ってんだろ?タカと…Blaze Futureのメンバーを連れて来てくんねぇか?」

 

はーちゃんだけじゃなくてBlaze Futureのみんなも?

 

「……昨日、盛夏ちゃん達とデュエルしたんだよね?」

 

「ああ」

 

「はーちゃんが言ってたよ。もし俺が宮ちゃんに会ったら伝えてくれって」

 

「あ?タカが?」

 

「ぐしゃぐしゃにぶん殴って泣かせてやるってさ」

 

「…………そ、そんにゃのじぇんじぇん怖くないち!」

 

「じゃあはーちゃん呼んでくるよ」

 

「ちょ、ちょっと待て!心の準備するから!」

 

「やっぱり怖いんじゃん…」

 

宮ちゃんも昔からこうだよね…。

本当に変わってない。

 

なのに何で今でもクリムゾンと…。

 

「宮ちゃん。はーちゃん達とBlaze Futureとデュエルするつもり?」

 

「ああ…そうだ。

俺ももう手段は選らばねぇ…Blaze Futureを潰す」

 

手段は選ばない…?

デュエルでBlaze Futureに勝って、はーちゃんに歌うのを辞めさせるつもりか…。

 

「わかった。なら会場の裏の林道……開けた所あるでしょ?あそこで待ってて」

 

「ああ…わかった」

 

Blaze Futureを潰そうとしてる事は許せないけど…、

宮ちゃんも一応はーちゃんを心配してるんだもんね。

 

『はーちゃんの手術ってさ。喉じゃないよ。痔だよ?』

 

そう言えば宮ちゃんもはーちゃんを…Blaze Futureを潰そうとしないかも知れない。

 

でもそれじゃ……宮ちゃんとクリムゾンとの事は解決しないもんね…。

宮ちゃんは何でまだクリムゾンと戦ってるんだろう?

 

「英ちゃん」

 

「お?早かったな?」

 

「ごめん……俺と一緒に来て」

 

「トシキ…?……………わかった」

 

俺は英ちゃんを連れて会場裏の林道に向かった。

 

 

「そろそろ開演時間だな…。トシキ…何処まで行くんだ?」

 

「もうすぐ着くよ」

 

南国DEギグ。

俺も見たかったけど…。

 

俺達の…はーちゃんの明日には…。

 

 

 

「宮ちゃん…お待たせ」

 

「英治……?」

 

「………拓斗?」

 

 

 

これが大切だと思うから……。

 

 

「トシキ…俺はBlaze Futureを連れて来いって言ったよな?」

 

「俺…Blaze Futureを連れて来るって言ったっけ?」

 

宮ちゃんは…宮ちゃんの今のバンドのメンバーかな?

女の子3人と一緒に居た。

 

「拓斗…久しぶりだな」

 

「ああ…久しぶりだな…」

 

英ちゃんと宮ちゃんの挨拶は…そんなひと言で終わった。

 

「拓斗…Blaze Futureじゃないじゃん」

 

「ああ…ちょっと黙ってろ。トシキ…」

 

「何かな?」

 

「タカはどうした?」

 

「え?そんなにはーちゃんに会いたいの?………はーちゃんの伝言伝えたよね?俺知らないよ?」

 

「………!?しくしくしく」

 

「え?拓斗!?何泣いてるの!?」

 

「拓斗さ…!?ゴホッゴホッ……拓斗さんどうしたの?」

 

「え?タカさんに殴られるのが怖い?

え?拓斗くん……こんなキャラやったん…?クリムゾンにはいつも強気なのに!?」

 

もう…宮ちゃんはほんとに……。

 

 

 

ゾクッ!

 

 

 

俺は背中に冷たい水をかけられたような…。そんな恐怖感を感じた…。

 

昔…クリムゾンのミュージシャンとデュエルをする時。いや、それ以上の恐怖。

 

 

 

………足立…海原。

 

 

 

俺達が敵対していたクリムゾンエンターテイメント。

その創始者である海原。

そして…デュエルギグによる混沌の世界を作ろうとした足立。

 

あの二人に初めて会った時のような恐怖。

 

俺はそれを感じていた。

 

 

 

………英ちゃんから。

 

 

 

「(拓斗……何故こんな所に…。いや、それはどうでもいい。些細な事だ。

だが何故だ拓斗……。

何故奈緒ちゃん達にタカの手術の事を言った…?

おかげで俺は晴香にハメられ…奈緒ちゃん達にタカは痔だと白状させられた…。お前わかってんのか?

俺が奈緒ちゃん達にタカが痔だって事を話した事になるんだぞ?それがタカにバレてみろ。俺はしばかれる。絶対しばかれる……)」

 

英ちゃん…?

わかる。俺にはわかる。

英ちゃんは…すごく怒ってる…。

 

「(そしてお前のバンドメンバー…。噂で女の子達とバンドを組んでいる事は聞いていた。それはいい。

でも何故お前のバンドメンバーにBlue Tearの架純ちゃんが!?

お前ほんと何なの!?俺への嫌がらせなの!?

Blue Tearの架純ちゃんっていったら俺の最推しじゃねぇか!!

Blue Tearのリリイベの握手会…。

三咲と初音からの少ない小遣いの中、何枚もCDを買って応募したのに俺は一度も当たらなかった…。そう!一度もだ!

なのにお前は……タカに殴られるのが怖いからってだけで架純ちゃんに寄り添ってもらえてるだと!?)(ギリッ」

 

「え、英ちゃん…?」

 

「拓斗…!俺はお前を許せねぇ!!」

 

「…!?英治!!」

 

英ちゃんは本気で怒ってる…。

こんな英ちゃんを見るのは初めてだ…。

 

「許せなかったら何だってんだ…?俺も…!

お前らタカと一緒に居たんだろ!何でタカを守ってやらなかった!!タカに何でまた歌わせたんだ!?俺こそお前らを……!!」

 

宮ちゃん……ごめんね。

はーちゃんがまた喉を痛めたなら俺達も歌うのを止めると思うよ。

でもね、はーちゃんは痔なんだよ。

歌とか関係ないんだ…。

 

「拓斗…。タカの事は関係ねぇ。

俺は…お前に怒ってんだよ…」

 

英ちゃん…。

こんなに怒った英ちゃんを見るのは初めてだけど……何でこんなに陳腐に感じるんだろう…。

 

「英治…俺もテメェに怒ってんだよ」

 

「拓斗…俺はお前を絶対に許さねぇ」

 

宮ちゃんも…英ちゃんも…。

………どうしたんだろう?唐突に帰りたくなってきた…。こんな大事な場面なのに。

 

「拓斗…Blaze Futureの前にこの二人を倒す?そしたら…葉川 貴も出てくるんじゃない?」

 

「トシキ…英治…。タカは何処にいる?」

 

「ごめんね。今の宮ちゃんには会わせてあげれない」

 

「拓斗…お前はここで俺が倒す。物理的に」

 

物理的にって何!?

 

俺はギターを取り出した。

万が一の為に持って来ていたギター。

まさかこのギターを…もう一度弾く日がくるなんて…。

 

そして英ちゃんは金属バットを取り出した。

 

って、え!?金属バット!?

 

「え、英ちゃん…?」

 

「止めるなトシキ。これは避けられない戦いだ。俺は今のうちに拓斗を倒さなくてはならない」

 

「もう…デュエルするんでしょ…ちゃんとしようよ…」

 

「ちっ…」

 

英ちゃんはしぶしぶドラムを出し、宮ちゃんと宮ちゃんのバンドメンバーも楽器を出して構えた。

 

今…俺達のデュエルギグが始まる…。

 

「トシキ!英治!俺が勝ったらタカを連れて来てもらうぜ!!」

 

「宮ちゃん!俺達が勝ったら聞かせてもらうよ!クリムゾンとの事を!!」

 

「拓斗…!俺達が勝ったら貰うぜ!架純ちゃんのサイン!!」

 

「え?私…?サイン?」

 

ん?え、英ちゃん…?

 

「貴ちゃ~ん。お腹空いて走れない~」

 

「会場着いたら何か買ってやるから我慢しろ。ほら、ここ抜けたらもう少し……で……」

 

「ん?貴ちゃん?どうしたの?」

 

「トシキ…英治……。と、誰だあいつ?」

 

はーちゃん!?

何でこの林道に!?

 

「タカ…!」

 

「タカ…盛夏ちゃん…何でこんな所に…」

 

俺達がデュエルを始めようとした時。

はーちゃんと盛夏ちゃんが…。

まさかこんな所に来るなんて…。

 

「トシキちゃんと英治ちゃん…宮野……拓斗…」

 

「お前ら…何やって……いや、そんな事よりもだ…」

 

はーちゃんはそのまま宮ちゃんの方を見て

 

「お前…何者だ?」

 

は、はーちゃん?

 

「はーちゃん……宮ちゃんだから…」

 

「貴ちゃ~ん。そのネタはもういいから~」

 

「宮ちゃん?誰それ?お前宮ちゃんっていうの?はじめまして」

 

「タカ…テメェ…」

 

「この人誰?英治とトシキの知り合い?」

 

はーちゃんは…ほんとに…。

………ほんとに忘れてるとかじゃないよね?

 

「おい、トシキ、英治。

もう南国DEギグ開演してんだろ?さっさと行こうぜ」

 

「貴ちゃ~ん、お腹空いた~」

 

「わかったから。屋台で好きなの買ってやるから。英治が。だからもう少し我慢しろ」

 

そしてはーちゃんはそのまま盛夏ちゃんと会場に向かおうとした。

ちょ…ちょっと待ってよ…。

 

いや、待たなくていいのかな?

あ、そうだ。はーちゃんにはこのまま行ってもらった方がいいか…。

 

「待てよタカ!…お前また手術しなきゃなんねぇんだろ!?」

 

「あ?何でお前がそんな事知ってんだ?

てかお前…盛夏の前で何言ってんの?」

 

あ~あ…宮ちゃん言っちゃったか…。

このままはーちゃんが会場に行ってくれたら楽だったんだけど…。

 

「タカ…てめぇ俺とデュエルしろ。

そして俺が勝ったらBlaze Futureを…」

 

「貴ちゃん!お腹空いた!!早く行こう!!」

 

「盛夏?」

 

「早く早く~」

 

盛夏ちゃんははーちゃんを引っ張って行こうとした。

だけどはーちゃんは…。

 

「盛夏……そういう事かよ…。

はぁ~……もう少し待ってろ。

後で好きなだけお腹いっぱい買ってやるから。英治が」

 

「やだ!やだやだ!」

 

「言ったろ?俺の隣は盛夏の場所だって。誰に何を言われても俺は歌い続けるさ」

 

「貴ちゃん…」

 

「ちょっとここで待ってろな」

 

そしてはーちゃんは俺と英ちゃんの間に入り、宮ちゃんの方を見た。

 

「お前……俺と相思相愛とかわけのわかんねぇ事言ってたらしいな」

 

「え?拓斗そっち!?昔からタカにべったりだったが……梓はダミーだったのか」

 

「はーちゃんだけじゃなくて…宮ちゃんも?」

 

「おいトシキ。お前それどういう意味?」

 

「いや、だってお前キュアトロのマイリーと遊太の事好きだろ?」

 

「あの二人は天使だ」

 

「ほら…やっぱり…」

 

 

 

「拓斗…私が誘惑しても手を出して来なかったのは…そういう事だったのね…」

 

「いや、違っ!そういう話じゃなくて!」

 

「拓斗さん…安心して。私は見て見ぬふりしとくから…」

 

「見て見ぬふり!?」

 

「あーなんか今日で拓斗くんのイメージごっつ変わったなぁ~」

 

「だから違うって言ってんだろ!」

 

あっちも大変そうだなぁ。

でも宮ちゃんって梓ちゃんの事が好きだったと思ってたんだけどなぁ…。

 

「本来ならお前は俺のバンドメンバーと妹分を泣かせた罪で万死に値するわけだが………俺はそんなお前が怖くて逃げようとしていた」

 

「タカ!聞けよ!そういう意味じゃねぇ!盛夏もタカに何言ったんだ!?」

 

「ありのままを~。貴ちゃんと相思相愛なのにあたし達に取られてヤキモチ妬いてるって事とか~」

 

「おまっ!それ!確かに言ったけど、その言い方意味変わってくるじゃねぇか!!」

 

え?ほんとにそんな事言ったの?

 

「拓斗…やっぱりそうなのね…」

 

何だろう…これって…。

デュエルするのかな?

あ、HONEY TIMBREの出演時間って何時くらいだろ?

 

「けど気が変わった。やっぱりお前は俺達で倒してやらねぇとな……。

拓斗…お前らが勝ったら俺はBlaze Futureを辞めてやるよ」

 

はーちゃん…!?

負けたら辞めるって本気で!?

 

「タカ…お前…」

 

「貴ちゃん…」

 

「いいんだな?タカ。約束だぜ?」

 

「そん変わり俺らが勝ったら…お前を思いっきりぶん殴る。グーで。顔面を。全力で」

 

「タカ…今のお前らで俺に勝てると思ってんのかよ…」

 

「お前の今のツラ見てたらわかる。俺らは負けねぇよ」

 

「上等じゃねぇか…」

 

「トシキ、英治…BREEZEん時の曲ならまだやれるか?」

 

BREEZEの時の曲。

それなら俺もまだ出来るけど、昔みたいな演奏は出来ない。きっと英ちゃんも…。

それにはーちゃんもあの時のキーで歌うのは…。

 

「ああ…けどお前…ほんとにいいのかよ」

 

「そうだよはーちゃん。俺達とやるよりBlaze Futureでデュエルした方がまだ…」

 

「拓斗は…BREEZE(おれたち)で倒さねぇとな…。じゃねぇとあのバカにゃ意味ねぇよ」

 

はーちゃん…。

ベースもいないのに…。

でもやるしかないか。

 

「行くぜ?拓斗…」

 

「上等だ…後悔させてやるよ」

 

今、俺達のデュエルが始まる…。

もし負けたらはーちゃんは…Blaze Futureは…。

 

「トシキ、英治いきなり飛ばしてくぞ。『ヴァンパイア(ヴァンパイア)』!」

 

「明日香、聡美、架純!やるぞ!『SHADOW BIRTH(シャドウバース)』!」

 

 

くそっ…危なかった。

なんとかギリギリ負けずに済んだって感じだ…。

やっぱり俺と英ちゃんのブランクは…。

 

「拓斗の野郎…いつの間にこんな歌が上手く…まずいな…」

 

「タカ…!次で終わらせてやる!『DARK KNIGHT(ダークナイト)』!」

 

「チッ、トシキ、英治いくぞ!『MARIA(マリア)』!」

 

 

「ハァ…ハァ…さすがだな…ブランクを感じさせねぇ…」

 

そんな事ない…。俺も英ちゃんも必死でついていっているだけだ…。このままじゃ…。

 

「ハァ…ハァ…トシキ、英治。大丈夫か?」

 

「俺はまだ大丈夫だ…。お前こそ大丈夫かよ…」

 

「ハァ…余裕だっつーの…ハァ…ハァ…」

 

はーちゃんもきっと必死なんだ。

元々はーちゃんはベースの音でリズムを合わせて歌っている。

こっちにはベースは居ないし相手は宮ちゃん。

宮ちゃんの音に引っ張られそうになるんだ…。

 

「デュエルを長引かせてお前の喉に負担をかけるわけにはいかねぇ…『Bloody Rose(ブラッディーローズ)』!」

 

「中二病っぽいタイトルの曲ばっか作りやがって…!『夏の夜の思い出(なつのよのおもいで)』!」

 

 

「拓斗…いい加減諦めろよ…ハァ…ハァ…」

 

「タカ…負けを認めろ…ハァ…ハァ…」

 

何とかまだギリギリの所で負けずに済んでいる。

だけどはーちゃんも英ちゃんも俺も…。

宮ちゃんのバンド…さすがにクリムゾンと戦っているだけあるね…。

 

「拓斗の…バンドメンバー…名前…なんつったっけ?ハァ…ハァ…」

 

「あ?キーボードが観月 明日香、ギターが御堂 架純…ドラムが三浦 聡美(みうら さとみ)だ…ハァ…ハァ」

 

「ああ…架純ちゃんは知ってんけどな。

お前も…お前のバンドメンバーもみんな…そんなツラで音楽やってて楽しいかよ?」

 

「何だと…?」

 

「しかめっ面で演奏しててよ…楽しいのかよ」

 

はーちゃん?何で急にそんな事を?

 

「葉川 貴…あなたに何がわかるの?楽しいかって?楽しんで音楽をやる必要は私にはない」

 

「そう…私達は…クリムゾンに復讐する為に音楽をやってるの…」

 

「そや。拓斗くんとクリムゾンを叩き潰す。その為のうちらや」

 

「つまんねぇな…お前らみんな」

 

そうか。はーちゃんは宮ちゃん達が楽しんで音楽をやってないのが嫌なんだ。

そうだよね。音楽は楽しんでやらなきゃ。

宮ちゃんもそれはわかってるはずなのに。

 

「つまらない…?私達の事なんか何も知らないくせに…!」

 

「知らねえな。今日が初対面だし。

俺は絶対に…音楽を楽しんでやってない奴らに負けるわけにゃいかねぇんだよ」

 

「あなた…何を…言って…」

 

「楽しんでやれねぇ音楽なんかクリムゾンと一緒だろ…」

 

「うちらが…クリムゾンと一緒やて…!?」

 

「お前らに勝って証明してやるよ…。楽しい音楽が一番だってな…音楽は楽しんでやるものだって!」

 

「「「「!?」」」」

 

「『DREAM WORLD(ドリームワールド)』」

 

うん。俺もやるよ。

今の俺に出来る限りで楽しんで音楽を!

 

「拓斗…さん…私…」

 

「拓斗くん!やるで!」

 

「拓斗…!このデュエル負けられない」

 

「わかってる!俺達は負けられねぇ!『朧月夜(おぼろづきよ)』!」

 

 

今のデュエルは俺達に分があった。

宮ちゃん達…さっきのはーちゃんの言葉で迷ってる…?

少しだけどみんなの演奏に歪みがあった。

 

「どうした?お前らさっきの演奏今までと全然違うな?迷ってるのか?音楽を楽しんでやってた時を思い出したか?」

 

「うちらが…音楽を楽しんでやってた時…」

 

「私は…私は音楽を楽しんでやっていた事なんてないっ!私はずっと…!」

 

「明日香…」

 

「拓斗!本気でいくよ!アレを出して!」

 

「拓斗にアレを出してって…え?下ネタ?」

 

「違う!!」

 

はーちゃん…。こんな時に下ネタなんて言うわけないでしょ…。昔のはーちゃんじゃないんだから…。

 

「ああ…コレで勝てると思っていた俺が甘かったな…」

 

宮ちゃんは黒いベースをしまい、黄色のベースを取り出した。

モンブラン栗田の最高傑作irisシリーズの1本。『晴夜』を…。

 

「拓斗のやつ『晴夜』を出して来やがった…本気かよ…」

 

「これはまずいな。どうすっかまじで」

 

「お前が挑発しすぎなんだよ…」

 

「でもさ。これで…本気の宮ちゃんでしょ。本気の宮ちゃんを倒さなきゃさ…」

 

「トシキの言う通りだな。本気の拓斗を倒さなきゃ意味ねぇか…」

 

「やるしかねぇか…」

 

さて…今の俺達で勝てるかどうか…。

せめてベースがあれば盛夏ちゃんに加勢してもらえたんだけど…。

さすがに宮ちゃんには借りれないしね。

 

「いくぜタカ…覚悟はいいな?」

 

「あんまよくねーけどやるしかねーだろ」

 

「これで終わりだ『天国の扉(てんごくのとびら)』」

 

「………『光る空(ひかるそら)』」

 

え?Futureじゃない!?

てっきりFutureで決着を…って思ってたのに!?

 

はーちゃん…何か考えがあるの…?

 

 

「ハァ…ハァ…ハァ……」

 

「タカ…トシキも英治も…よく耐えたな。

だがもう限界だろう?」

 

確かに限界かな…。

はーちゃんの声も俺達も…。

やれても1曲か2曲…。

 

「タカ…何でFutureをやらなかった?俺はてっきりFutureをやるもんだと…」

 

英ちゃんもFutureをやると思ってたんだね。

確かに俺もFutureをやるなら今のタイミングだったと思う。

 

「Futureはまだ出来ねぇ」

 

「あ?何言ってんだお前」

 

「Futureはあいつらに…届けるように歌わなきゃ…」

 

「あ?」

 

「今、あいつらは迷ってる…焦ってるっつーかな。きっとあいつらも思ってんだよ。楽しい音楽がやりたいって…」

 

「お前それで…でも出し惜しみして負けちまったら元も子もねぇだろ…」

 

「ああ…確かにそうだけどな…」

 

はーちゃんは…宮ちゃん達の事を…。

もう…。はーちゃんも昔からはーちゃんだな。

 

「そろそろいいか?次でトドメをさす」

 

「……チ、やるしかねぇか」

 

これが最後のデュエルになる。

俺はそう思った。きっと次の曲で…

 

 

 

俺達は負ける…。

 

 

 

「しゃーねぇ。トシキ…英治……やるぞFutureを」

 

「はーちゃん…うん、Futureをやろう」

 

「ああ…俺達の一番の曲で決めるか」

 

「………一番の曲はFutureじゃねぇ」

 

「あ?一番人気もあってみんなも喜んだのはFutureだったろ?」

 

俺達は楽器を構え、最後のデュエルを開始しようとした時だった。あの人が現れたのは…。

 

 

 

「そこまででございます!」

 

 

 

その人は俺達と宮ちゃん達の間に入ってきた。

あの人は…秋月さんの執事さん。

 

「始めから見させて頂いておりましたが…拓斗様、退いては下さりませぬか?」

 

「あ?じいさん何者だ?退けだと?」

 

「ふざけないで!拓斗は葉川 貴を倒すの!今日ここで!」

 

「音楽は楽しんでやるもの。

タカ様のこの言葉に動揺されてますな。

本当は自分達も楽しい音楽がやりたいから」

 

「「「「!?」」」」

 

「お、おいタカ。あのじいさん何者なんだ?お前の知り合いか?」

 

「あ?英治お前あれ誰だかわからないの?もしかしてトシキもか?」

 

「え?俺達の知り合い?」

 

え?誰だろう?秋月さんの執事さんって事しか知らないんだけど…。

 

「退くのはじいさん、あんただ。俺はもう退けねぇ…ここでタカを倒す」

 

「私が…楽しい音楽をやりたいですって…!?そんなわけない!!ありえない!!」

 

「わた…私は……結衣…優香…瑞穂…」

 

「うちは…もう…楽しい音楽なんか…」

 

宮ちゃん達…やっぱり迷ってるんだ。

はーちゃんや執事さんの言う通り、楽しい音楽をやりたいから。でもクリムゾンへの憎しみが消えなくて…。

 

「退いては下さりませぬか…」

 

「くどいぜじいさん…タカにはもう歌わせねぇ」

 

「やむを得ませんな…」

 

そう言って執事さんは俺達の所に来た。

う~ん…やっぱり会った記憶ないんだけどな。

 

「お前…始めから見てたならもっと早く助けに来いよ…」

 

「これはBREEZEの問題と思いましたがゆえ……。それにしてもタカ様は私に助けて欲しいのですかな?」

 

「てか、その喋り方何とかなんないの?」

 

「拓斗様、退いて頂けないのであれば……私はタカ様に加勢させて頂きます」

 

「何だと…?じいさん…あんた楽器やれんのか?」

 

「多少嗜んだ程度でございますが」

 

「多少嗜んだ程度だぁ?お前よくそんな事俺らに言えるよな?嫌味なの?」

 

え?楽器を…?俺達に加勢?

BREEZEの曲を知っている人…?

本当に何者なんだろう?

 

「ベースの腕は衰えてねぇんだろうな?」

 

ベース…?

そしてはーちゃんの言った名前。

その名前を聞いた時、俺も英ちゃんも宮ちゃんも驚いた…。

 

 

 

 

 

「澄香」

 

 

 

 

 

 

「え?はーちゃん…何を言って…」

 

「澄香…?お、おいタカ!俺の知ってる澄香は女なんだけど!?じいさんじゃないんだけど!?」

 

「澄香…だと…!?」

 

はーちゃんは執事さんを澄香ちゃんって呼んだ。

そんな事って…。

 

「やはり…タカ様には見破られておりましたか…。いやはや、お見事でございます」

 

そして執事さん……澄香ちゃんはカツラとマスクを取りタオルで顔を拭いて…ウィッグネットを外すと綺麗な長い黒髪が現れた。

 

「俺の股間のセンサーなめんな。一度会った女は俺は忘れねぇ。てかその喋り方ほんと何とかならない?」

 

「え?一度ヤった?お前と澄香ってそんな関係だったの…?」

 

「な!?んな訳ないでしょ!英治!

タカも変な事言わないでよ!!」

 

「いや、俺は会ったって言ったからね?英治が勝手に聞き間違えただけだから」

 

「言い方が紛らわしいでしょ!」

 

「ほんとに…澄香ちゃんだったんだ…」

 

でも何で澄香ちゃんは変装してたの?

変装していなきゃいけない理由がある?

宮ちゃんのクリムゾンと戦っている事といい、澄香ちゃんの事といい謎だらけだな…。

 

「拓斗…あの女は何者?」

 

「あいつは…Artemisのベーシスト澄香だ」

 

「え?嘘やん。Artemisのベーシストって…あの人見た目うちらと変わらんくらいの歳に見えるんやけど?メイクも取ってたしあの人スッピンやろ?」

 

「BREEZEも…Artemisも…その見た目の若さ何なの…?」

 

「まぁええわ。取り合えず私はタカ達に加勢する。BREEZEの曲やったらやれるし」

 

そう言って澄香ちゃんは橙色のベース『虚空』を取り出した。

 

「澄香…てめぇ…」

 

「拓斗…悪いけどそういう事だから」

 

「上等だ!今日こそてめぇに勝ってみせる!」

 

 

俺達はFutureを演奏し、宮ちゃん達とのデュエルは圧倒的に勝利した。

 

ベースのあると無いとでははーちゃんの歌も全然違う。

そして…迷いながら演奏した宮ちゃん達は、俺達に勝てるはずが無かった。

 

「澄香お前すげぇな。全然プランク感じなかったぜ」

 

「英治達がサボり過ぎなんやろ。私は姫咲お嬢様にベース教えたりもしてるし」

 

澄香ちゃんの演奏は凄かった。

まるで昔を思い出すような……そんな演奏だった。

 

「さてと…」

 

そう言ってはーちゃんは宮ちゃんの所に歩いて行った。

 

「拓斗」

 

「タカ…」

 

「……まず先に言っておく。俺の病気。

俺が手術するのは喉じゃねぇ」

 

「喉じゃ…ない…?」

 

「おう………ちょっと耳貸せ」

 

はーちゃんは宮ちゃんの耳許で小声で何か言っているようだった。

 

「……は!?痔!?痔の手術!?」

 

「てめぇわざわざ耳貸せって小声で言ったのにでけぇ声で言うんじゃねーよ!」

 

「葉川 貴の病気は…痔?」

 

「喉じゃ…ない…?」

 

「え?じゃあ拓斗くんは痔の為にBlaze Futureのメンバーとデュエルしたん?」

 

「ほら!みんなにも聞こえちゃってんじゃん!お前ほんと何なの!?」

 

「あははー、大丈夫大丈夫。私はタカが痔って知ってるから。秋月グループの情報網すごいんやから」

 

「あたしも大丈夫~。あたしも英…」

 

「盛夏ちゃん!お腹空いただろ?待たせてごめんな!ほら!好きなの好きなだけいくらでも食べていいぞ。全部俺が奢ってやる!」

 

「え?ほんとに?やった~!」

 

「そう言えば盛夏ちゃんずっと静かだったよね?」

 

「うん~。せっかくのBREEZEのデュエルだったから奈緒にも見せてあげたくてスマホで動画撮ってたの~」

 

あ、そうなんだ。

だから静かにしてたんだね…。

 

「あ、そだ。拓斗。今から殴るぞ?歯を食いしばって祈れ」

 

「え?」

 

バキッ!!

 

「ゴブァ!」

 

「「「拓斗(くん)(さん)!?」」」

 

「ふぅ…」

 

はーちゃんは思いっきり宮ちゃんを殴って吹っ飛ばした。

やりすぎだよ…はーちゃん…。

 

「い…いてぇ……」

 

「拓斗…血が出てる…!」

 

「た、拓斗さん…」

 

「ほ、ほんまに殴りよった…こわぁ…」

 

「俺のバンドメンバーと妹分を泣かしてんじゃねぇ!!」

 

「タカ…てめぇマジで殴りやがったな…」

 

「約束は約束だ。そういう約束でデュエルしただろ」

 

そしてはーちゃんは吹っ飛ばした宮ちゃんの所に歩いて行った。

 

「拓斗…俺は昔から言ってただろ」

 

「あ?」

 

「漫画の受け入れだけどな。

お前はお前のバンドのリーダーだろ?」

 

「あ、ああ…」

 

「リーダーが笑えば仲間は明日を見つける。リーダーが憎しみの拳を握れば仲間も憎しみの拳を握る。リーダーは仲間の鏡だ」

 

「……」

 

「俺の仲間は…今のファントムの仲間も、昔の仲間もみんな笑ってくれてたぜ?もちろん昔のお前もな」

 

「タカ…」

 

「それが何だよ…クソつまんねぇツラになりやがって…。今のお前の仲間見てみろよ。誰も笑ってくれてねぇじゃねぇか」

 

「拓斗…」

 

「拓斗さん…」

 

「拓斗くん」

 

「明日香…架純…聡美…」

 

「お前らに何があったのか知らねえし、クリムゾンとの事で色々あったのかも知れねえけど…お前は復讐なんかに囚われずに仲間を明日に導いてやるべきだったんじゃねーか?」

 

「タカ…俺は…そうだな…俺が見てきた好きだったお前は…ずっとそうだった…。

俺は…こいつらを笑えるようにしてやるべきだったんだな…」

 

「拓斗…さん……。私も昨日結衣と…友達と会って思ったの…。羨ましいって。

私…も、もう一度…楽しい音楽をやりたい…」

 

「架純…」

 

「拓斗くん…うちもや。

クリムゾンの奴らは憎い。あいつらをうちは許されへん。でも昔みたいに楽しい音楽がやりたい…」

 

「聡美…」

 

「拓斗…私は…やっぱりクリムゾンに復讐したい。あいつらを潰してやりたい。

だから…楽しい音楽を拓斗に教えてほしい。楽しい音楽っていうのがあるのなら…私に教えてほしい」

 

「明日香…」

 

「俺が殴ったとこ。早く冷やしとけよ。これから腫れてくるぞ」

 

そしてはーちゃんはそれ以上何も言わず、俺達の所に戻ってきた。

 

「さて……南国DEギグを楽しむか」

 

「タカ…さっきのかっこ良かったよ」

 

「え?何?俺に惚れた?」

 

「アホか…」

 

「だよな?梓も澄香も元々昔からタカの事…」

 

「英治、余計な事言ったら潰すよ?」

 

「貴ちゃ~ん。お腹空いた~」

 

「お前さっきからそればっかりだな」

 

ひとまずはこれで解決したのかな。

これから宮ちゃん達はどうするんだろう?

楽しい音楽をやりはじめるのか、それともまだクリムゾンを…。

 

海原が日本に戻ってくる。

その事を宮ちゃんにも教えておいた方がいいとは思うけど…。

 

「拓斗!お前なにやってんだ?」

 

はーちゃん?

はーちゃんは立ち止まって宮ちゃんに声をかけた。

 

「早く来いよ。置いていくぞ?」

 

「タカ…俺を…俺達を連れて行ってくれるのか…?もう一度一緒に居させてくれるのか?」

 

「嫌ならそこで寝てろ…」

 

はーちゃん。

はーちゃんはやっぱりBlaze FutureでもBREEZEでも関係ない。

はーちゃんははーちゃんだね。

 

「明日香…架純…聡美…俺は」

 

「行くよ拓斗」

 

「うん、行こう拓斗さん…。私も結衣にもう一度謝らなきゃ…」

 

「拓斗くんもみんなに謝らんとな」

 

これで本当に解決だね。

 

色々あったけど…俺達にとって最高の旅行に……

 

俺がそう思った時だった。

 

 

 

<<<ドカーン>>>

 

 

 

南国DEギグの会場が爆発した。

 

え?何で…?


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