バンやろ外伝 -another gig-   作:高瀬あきと

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第17話 澄香の過去

「姫咲お嬢様、一瀬様、結衣様、松岡様。

このような所へお呼びだてして申し訳ございません」

 

私は秋月 姫咲。

南国DEギグの会場から脱出した後、私達は会場近くの林道に呼び出されていた。

じいや…。いえ、澄香さんに…。

 

「改めてご挨拶させて頂きます。

私は15年前Artemisというバンドでベースを担当しておりました瀬羽 澄香と申します。年齢は不詳でお願い致します」

 

「え?年齢不詳?何で?」

 

「し、結衣、今は澄香さんの話を聞こう」

 

「まず…どこからお話をすればよろしいか…」

 

私の秋月グループの執事セバス。

 

セバスの正体はArtemisのベーシスト、瀬羽 澄香さんでした。

 

澄香さんは私が3歳くらいの頃。

15年前から私の専属の執事として仕えて下さってました。

 

忙しいお父様やお母様に代わり、ある時は親のように、ある時は友達のように、ある時は先生のように。

ずっと私と一緒に居てくれていました。

 

私は…そんな澄香さんが女性だとは知らず、15年前にクリムゾンと戦っていたバンドマンだとは知らず…。

私は執事である澄香さん…じいやに甘えて生きてきました。

 

ずっと一緒に居たのに…結衣にじいやが女性かも知れないと言われるまで…。

じいやがじいやである事に疑いも持たず…当たり前のように毎日を過ごして来ていた。

 

私は…大好きなじいやを…澄香さんの事を何も理解しようとしていなかった…。

 

「あれは15年前…BREEZEもArtemisも解散した後の事にございます…」

 

 

 

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-15年前

 

 

 

「クッ…参ったなぁ。デュエルギグ暗殺者がまだこんなに残ってたなんて…」

 

私は梓の事故の後、Artemisの解散後もある『サガシモノ』の為にクリムゾンエンターテイメントに潜入しようとしておりました。

 

アルテミスの矢はBREEZEの解散後も残ったメンバーで日夜戦いが続いておりましたし、創始者である海原が海外へ逃亡し、幹部である手塚と足立を失ったクリムゾンエンターテイメントであれば、一人でも何とかなると思っておりました。

 

しかし、クリムゾンエンターテイメントの本部にはまだ多くのバンドマンや、デュエルギグ戦闘員やデュエルギグ暗殺者。デュエルギグ騎士(でゅえるぎぐないと)デュエルギグ将軍(でゅえるぎぐじぇねらる)デュエルギグ皇帝(でゅえるぎぐえんぺらー)達が残っておりました。

 

 

 

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「なぁ?俺達がやってるのってバンドだよな?音楽だよな?何なんだナイトとかアサシンって…俺達何と戦ってんだ?」

 

「松岡くん、黙りなさい」

 

 

 

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私は深手を負いクリムゾンエンターテイメントのバンドマン達に追われておりました。

 

「ハァ…ハァ…ここまでやな…。

ごめんね、梓。……『サガシモノ』は見つけられそうにない…。約束…守れそうにないね…」

 

このまま私は…そう思っておりました。

 

「タカ…最期に会いたかったな…。

英治のオムレツももっかい食べたかった…」

 

-ガサッ

 

「敵!?」

 

私の腕は傷つき演奏するにはもう…。

私は覚悟を決めておりました。

 

「おや?これはこれは可愛らしいお嬢さん。どうされましたかな?」

 

「え?誰?クリムゾンじゃない?」

 

「まぁ…怪我をされてますのね。あなた…」

 

そこに現れたのは、姫咲お嬢様のお父上様とお母上様でございました。

 

 

私は秋月家の一室に通され、怪我の手当てをして頂き、食事までご馳走になりました。

 

「あの…匿って頂いてありがとうございました…」

 

「いやいや、しかしまたどうしてあんな所に?」

 

私がクリムゾンから無我夢中で逃げた先、そこはどうやら秋月家の敷地内のようでございました。

 

「あ、そうだったのですね…。勝手に入ってしまい申し訳ございませんでした」

 

「怪我もされてるようですし、何か事情があるのでございましょう?

良かったらお話して下さいませんか?」

 

勝手に敷地内に入ってしまったあげく、怪我の手当てや食事までご馳走になっておきながら何も話さないのは失礼にあたると思い、私は旦那様と奥様に全てをお話しました。

 

「なるほど…クリムゾンと…」

 

「それは…大変でしたわね」

 

「いえ…。とんでもありません。本当にありがとうございました」

 

クリムゾンとの事を話終えた私は旦那様と奥様に挨拶をして家を出ようとしました。

 

「待ちなさい、お嬢さん。

その『サガシモノ』が見つかるまで関西には帰らないのだろう?行く宛はあるのかね?」

 

「そうですわ。まだ怪我も治ったわけではありませんのよ。一人でクリムゾンと戦うなんて無茶ですわ」

 

私の実家は関西にございます。

『サガシモノ』が見つかるまではここに留まろうとホテル暮らしをしておりました。

 

 

 

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「あの…お話の途中で申し訳ないんですけど…」

 

「何ですかな?一瀬様」

 

「何故澄香さんは一人で?

いくら解散したと言っても…ギターの翔子さんやドラムの日奈子さん。

それに貴さん達BREEZEのみんなやアルテミスの矢の方々も…」

 

「そうでございますな。

当時残っていたアルテミスの矢のメンバーとはあまり面識もございませんでしたからな。BREEZEや雨宮さんや氷川さん…浅井さんもみんなアルテミスの矢を抜けておりましたから」

 

「それでも…」

 

「タカ様は…喉や梓の事がございましたし…その…何か頼るのはズルいかな?って…思って…」

 

ズルい?どういう事でしょう?

 

「や、失礼。そしてトシキ様は女性と二人きりになると喋れない病の事がございましたし、英治様は三咲様と結婚の為に仕事を頑張っておりました。

拓斗様は私と同じく『サガシモノ』を探しておりましたが…単独行動して行方知れずになっておりましたしな」

 

拓斗さんも澄香さんと同じ『サガシモノ』を?

『サガシモノ』っていうのは一体…。

 

「そしてArtemisのメンバーは梓はあんな事になりましたし、翔子は次世代のバンドを育てると別の道を行きましたし、日奈子はやりたい事があると言って旅に出ました」

 

次世代のバンドを育てる?

もしかしたら翔子さんは英治さんのように?

確か英治さんもライブハウスを作ったのは楽しく音楽をやる次世代バンドの為とか仰ってたような?

 

「浅井さんはまだ奥様と共にクリムゾンと戦っているというお話も聞いておりましたが、浅井さんも雨宮さんも氷川さんも、お子様がいらっしゃいましたから…」

 

浅井さんって方はどなたか知りませんが、雨宮さんと氷川さんのお子さんというのは志保さんと理奈さんの事ですわね…。

 

「そうだったんですね…だから一人で…」

 

「はい。それで一人で…と。

それに私は天才でございましたからな。一人でもやれんちゃう?って気持ちもありましたがな。ハッハッハ」

 

さすが私のじいやですわ。

おっと…じいやと呼ぶのは失礼ですわね。

 

 

 

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「ふむ。ではここで『サガシモノ』をしながら暮らしていくのは大変であろう?

金銭面の事もあるし、クリムゾンと戦いながら…となると…」

 

「これが…私の選んだ道ですから…」

 

「よし、ではこういうのはどうだろうか?」

 

「え?」

 

旦那様が私に提案した事。

それは旦那様と奥様には幼い娘がいらっしゃるとの事でございました。

この幼い娘とは姫咲お嬢様の事でございますが。

仕事が忙しくあまり一緒に遊んであげられないので、私は姫咲お嬢様の遊び相手として住み込みで働かないかとの事でございました。

 

そして、秋月グループはクリムゾングループのいくつかの会社とは対立しており、『サガシモノ』をする事にまで協力して頂けるとの事でございました。

 

「そ、そんな…!そこまでして頂くわけには…!」

 

「私達もクリムゾングループのやり方、今の在り方には不満もあります。

それに私達とはライバル会社でもあります。その点は問題ございません。

姫咲はあまり人には懐かない子ですので苦労をかけるかも知れませんが是非お願いしたいですわ」

 

行く宛もなく、今は頼る人もいない。

そしてこの大きな秋月グループが『サガシモノ』の手伝いをしてくれる事は私にはありがたいお話でございました。

 

そして、私は秋月グループで働かせて頂く事になり、姫咲お嬢様とお逢いする事になりました。

 

「お嬢ちゃんが姫咲ちゃん?よろしくね」

 

「……」

 

「あははー…やっぱ緊張しとるんかな…」

 

<<ギュッ>>

 

「ん?」

 

姫咲お嬢様は私の服の裾を掴み、私から離れようとしませんでした。

 

「姫咲が初対面で…珍しい事ですわね」

 

「ほ~。姫咲も澄香さんの事が気に入ったみたいだな。是非これからよろしく頼みます」

 

「あ、いえ、こちらこそよろしくお願いします」

 

 

 

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「その日から姫咲お嬢様の遊び相手として私は秋月グループにお世話になりました。

あの頃のお嬢様は本当に可愛くて…目の中に入れても痛くないとはこの子の事であると思っておりました」

 

澄香さん……

 

「それが何故このように頑固で我儘なドSに育ってしまったのでしょうか…」

 

澄香さん?

 

「それで姫咲の執事になったって事なのかな?でもそれで何で変装するようになったの?」

 

「はい、それでございますが…」

 

 

 

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私は姫咲お嬢様の遊び相手というだけで、姫咲お嬢様のお付きの人は別におりました。

 

ある日の事でございます。

 

「澄香さん!澄香さん!」

 

「ん?婦長さん?どうしました?」

 

秋月家のメイド長である婦長さんと、当時の姫咲お嬢様のお付きのメイドさんが私の元へと来られました。

 

「姫咲お嬢様を見ませんでしたか!?」

 

「姫咲お嬢様?いえ、見てないですけど」

 

「姫咲お嬢様が居なくなってしまったみたいで…」

 

「え?居なくなった!?」

 

「すみません!私が少し目を離した隙に…」

 

「屋敷内は一通り探してみたのですがどこにも…」

 

「わ、わかりました。私も探してみます」

 

もしかしたら屋敷の外に出たのかも知れない…。

そう私は思いました。この日の前にお嬢様は公園に行ってみたいと仰っておられましたので…。

 

 

「確かこの辺りに公園があったような…」

 

私が秋月家の近くの公園に行ってみた所、やはり姫咲お嬢様は一人で公園で遊んでおられました。

 

「姫咲お嬢様…」

 

「澄香さん。わたくち…せっかく公園に来まちたのに…お友達がおりませんの…」

 

秋月グループの娘となると誘拐などの恐れもございましたので、まだ小さい姫咲お嬢様は外で遊ぶ事を禁じられておりました。

外で遊ぶ事を禁じられていたお嬢様には同年代の友達はおらず、一人公園で寂しそうにしておられました。

 

「姫咲お嬢様。もう少し大きくなられましたら幼稚園に通う事になると思います」

 

「ようちえん?」

 

「はい。その後は小学校、中学校、高校大学と…学校という所にお勉強に行く事になります」

 

「おべんきょう…わたくち遊びたいですわ」

 

「その幼稚園や学校ではお嬢様と同じようにお勉強をしに来る子がたくさんいらっしゃるのです」

 

「たくちゃん?うちのメイドよりたくちゃんですの?」

 

「もちろんでございます。もっとたくさんの方がいらっしゃいます」

 

「そんなにたくちゃんの方が…」

 

「はい。そのたくさんの方々とお嬢様は一緒にお勉強をして、一緒に遊んで、一緒にお話やもっともっと色んな事をなさると思います」

 

「いっちょに遊べますの?」

 

「はい。もちろんでございます。そうやってお嬢様にもたくさんのお友達が出来ると思います」

 

「本当ですの!?わたくち学校に行きたいですわ!」

 

「はい。もう少し大きくなられましたら、学校に行きましょう。だから今はお家に帰りましょう」

 

「う~ん…大きくなったら学校に行かせてもらえますか?」

 

「はい。約束します」

 

「わかりまちた。今日はおうちに帰ります。わたくちかならず大きくなってみせますわ」

 

「はい。帰りましょう」

 

そうして私は姫咲お嬢様と手を繋ぎ、秋月家へと戻ろうとしました。

 

 

 

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「わぁ~!姫咲ってすっごく可愛かったんだね!」

 

「時の流れっていうのは本当に残酷だね…」

 

「ああ、大きくなったら…か…。

身体だけじゃなく態度も自尊心も大きくなっちまったんだな…」

 

春くん?松岡くん?

 

 

 

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私達が公園を出ようとした時でした。

 

「瀬羽 澄香だな」

 

「デュエルギグ戦闘員!?」

 

「クリムゾンに仇なす者は何者も許されない」

 

「ちょっと待って、瀬羽 澄香って誰?

私は名もない一般人の専業主婦、この子の母親なんですけど?」

 

「え?マジで?」

 

「おい、どうする?人違いやん?」

 

「かっこつけて出てきたのに人違いって…」

 

姫咲お嬢様を連れている私は、姫咲お嬢様に危害が及ばないように、人違いのふりをしてその場を逃れようとしました。

 

「あはは、そんな訳ですんで失礼しますね~」

 

「あ、人違いしたみたいですみませんでした」

 

私は助かったと思い、そそくさとその場から退散しようと思いましたが姫咲お嬢様が…

 

「澄香さん。この人達は誰ですの?

澄香さんのお友達ですの?」

 

「「「!?」」」

 

「お嬢様!逃げますよ!」

 

「はい?」

 

「やはり瀬羽 澄香か!追え!」

 

姫咲お嬢様と一緒だった私がデュエルギグ戦闘員から逃げられるはずもなく、あっさりと追いつかれてしまいました。

 

「クッ…」

 

「瀬羽 澄香、我々を欺けるとでも思ったか?」

 

「澄香さん?鬼ごっこですか?」

 

「こっちには子供もいるんやしさ、今日は見逃してくれへんかな…?」

 

「我々が見逃すと思うか?」

 

小さい子供がいようが関係ない。

まるでそう言わんかのように、デュエルギグ戦闘員は私を襲ってきました。

 

「お嬢様!絶対に私から離れないで下さい!」

 

「わかりまちた!」

 

お嬢様は私の足にしがみつき、私はベースを取り出して戦いました。

 

何とかその場を切り抜ける事が出来た私はお嬢様と秋月家へ戻り、ある事を考えました。

 

今日は何とか切り抜ける事が出来ましたが、これから先姫咲お嬢様と行動を共にしていれば、また姫咲お嬢様と一緒に居る時に襲われるかもしれない。

 

それどころか秋月家に匿われてる事をクリムゾンに知られたら、対立グループである秋月家に迷惑が掛かるかもしれない。下手をすると迷惑以上の事が…。

 

私はその夜早速旦那様と奥様に話しました。

 

「それで…ここから…秋月家から出て行くのかね?」

 

「はい。これまでのご恩は忘れません。本当にお世話になりました」

 

「秋月グループも舐められたものだ…」

 

「は?い、いえ、そういうわけでは…」

 

「クリムゾングループがそれで我々秋月グループに危害を及ぼそうとするのであれば望む所。我々も本気で叩き潰す事が出来るというもの!」

 

「は?え?」

 

「そうですわね。クリムゾングループが表立って仕掛けてくれましたら、私達も戦いやすいのにと常々思っておりましたものね」

 

「あの…」

 

「我々はいつでもクリムゾンと戦う準備は出来ておる。デュエルギグ人型機動兵器(でゅえるぎぐもびるすーつ)の量産化も出来ておるしな」

 

「ええ。そうですわね」

 

私は秋月グループを甘く見ておりました。それは旦那様や奥様を侮辱したようなもの。私は迷惑がかかると家を出ようと考えた事を申し訳ない気持ちでいっぱいでございました…。

 

 

 

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「(ちょっと待って。デュエルギグ人型機動兵器?ナイトとかアサシンだけでもお腹いっぱいなのにモビルスーツって何?春太俺は今まで散々ツッコミを入れてきただろ?頼む。今回くらいはお前がつっこんでくれ)」

 

「(まずいな。姫咲との付き合いでもうつっこむだけ無駄だと悟ったけど、これはツッコミたい。いや、やっぱりダメだ。冬馬ですらツッコミを入れていないこの状況。俺一人おかしい人扱いになりかねない…)」

 

「ねぇ…誰もツッコミを入れないみたいだから私がツッコミを入れたいんだけど…いいかな?」

 

「(結衣!)」

 

「(ユイユイ!)」

 

「何でございましょう?」

 

「結衣?どうしましたの?」

 

「澄香さんはそれでどうしてセバスちゃんになったの?」

 

「「(それツッコミ違う!)」」

 

「ハハハ、申し訳ございません。話が長くなり過ぎてしまいましたな。

そして旦那様はこう仰いました…」

 

 

 

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「澄香さん。姫咲が幼稚園に行くようになれば、姫咲も外出も増える事になるだろう。いっその事澄香さんが姫咲の専属の付き人になるのはどうだろうか?

外出時は変装すれば良いだろう」

 

「そうですわね。変装すれば問題ないと思いますわ。澄香さん考えてくれませんか?」

 

「私が…お嬢様の…」

 

そしてその翌日。

私は瀬羽 澄香の姿を捨て、セバスとなりました。

 

「旦那様、奥様、姫咲お嬢様」

 

「「え?誰?」」

 

「?どなたですの?」

 

「澄香でございます。私はこれよりこの姿でお嬢様の専属執事として従事させて頂きたく存じます」

 

「おお、澄香さんでしたか。はははは、バッチリな変装じゃないですか。本当に誰かわかりませんでしたよ

(どうしよう…変装ってサングラスかけるとかマスクするとかそんな感じのつもりで提案したのに…)」

 

「そ、そうですわね。それだと絶対に澄香さんとはバレませんわね

(ど、どうしましょうかしら?ちょっと髪型とかメイクを変えるとか…そのくらいのレベルの変装を考えていましたのに…)」

 

「わたくちちぇんぞくのちつじ?

澄香さんはどこにいますの?わたくち澄香さんがいいですわ」

 

しかしこの姿ですと、なかなか姫咲お嬢様に懐いていただけず苦労しました。

 

「いやですわ!わたくち澄香さんがいいです!澄香さんしかいやですわ!

……うぐっ…うわぁぁぁぁぁん、澄香さ~ん、澄香さ~ん。どこにいますの~?うわぁぁぁぁぁん」

 

「いやはや、これは困りましたな…」

 

「うわぁぁぁぁぁん、わたくちいい子になりますから。いい子にちますから、澄香さん出て来てくだちゃいませ~。うわぁぁぁぁぁん」

 

澄香である私を泣きながら探し、疲れて眠る姫咲お嬢様。

 

胸が締め付けられる程の想いでございましたが、姫咲お嬢様に危害を及ばせるわけには…その一心で姫咲お嬢様の前で澄香の姿になる事は、今日まで封印しておりました。

 

 

 

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「春くん、松岡くん。まさかとは思いますが『ああ、だから姫咲はいい子にならなかったんだ』とか思っていませんわよね?」

 

「……………そんな事思うわけないじゃないか」

 

「……………あ、ああ。春太の言う通りだ」

 

 

 

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姫咲お嬢様になかなか懐いていただく事は出来ませんでしたが、私はこれから秋月家の執事として生きていかなくてはならない。

 

私はそれからの1年間。

最強の執事になる為に『執事虎の穴』に入門し、血の滲むような修行の日々を過ごしました。

 

修行を終えた私はメイド長である婦長さんとの決戦に勝利し、姫咲お嬢様の専属執事になれましたのでございます。

 

 

 

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「(ヤバい…ツッコミどころが満載だぜ…。執事虎の穴って何!?執事って修行してなるものなのか?そもそも何でメイド長と戦ってんだ!?)」

 

「(何て言えばいいんだろう?大変でしたね。かな?いや、本当に大変な事になってるよね。そもそも1年間も修行してたの?その間は姫咲はどうしてたの?それに『サガシモノ』の事とかさ……)」

 

「澄香さん…大変だったんだねぇ。ぐすっ」

 

「澄香さん…そうでしたのね。私の為に変装を…」

 

澄香さんは私の為に…。

私に危害が及ばないようにと変装されてましたのね…。

15年も…女性である事を隠して…。

 

「とんでもございません。姫咲お嬢様の為ならば何も大変な事なんてありませんでした」

 

「澄香さん…。

それで…何故…私達に話そうと思ってくれたのですか?」

 

「はい。それはCanoro Feliceの皆様に私の事が女性だと思われた事もございますが…元々姫咲お嬢様が強くなられましたら、正体を明かそうとは思っておりました」

 

「私が…強く…?」

 

「はい。お嬢様は強くなられました。

Canoro Feliceという仲間にも恵まれましたし、ファントムでタカ様や英治様と出会い…。

今のお嬢様ならクリムゾンにも負ける事はないと思い、私はお話しようと決心しました。

そして今回のこの旅行での数々の事件。

今がお話する時だと思いました」

 

「澄香さん…」

 

昔から…昔からずっと澄香さんは私の事を…。それなのに私は…私は……。

 

「姫咲お嬢様にお渡ししたい物がございます」

 

そう言って澄香さんは1本のベースケースを取り出し、橙色のベースを私へと差し出してきました。

 

これは…このベースは…。

 

「このベースは私がArtemisの時から使っていたベースでございます。

伝説の楽器職人モンブラン栗田の最高傑作irisシリーズの1本『虚空』でございます」

 

凄い。このベースからは凄まじい力を感じますわ。この感覚…一体何ですの…?

 

「モンブラン栗田!?」

 

「え?結衣は知ってるの?」

 

「うん!晴香さんが言ってた。すっごい楽器職人の人なんだって!

秦野っちもマイマイも絶賛してたし、たぁくんのお友達のたっくんが使ってたベースもこのirisシリーズだって!」

 

「モンブラン栗田。俺も知ってるぜ。

モンブラン栗田の楽器には生命が宿り、演者と楽器がひとつになる時、楽器は演者の想いを音色に変えて紡ぎ出されるそうだ」

 

そんなにすごいベースですの…?

確かに…このベースからは鼓動を感じますわ。

 

ですが…。

 

「澄香さん、このベースは受け取れません」

 

「姫咲お嬢様?」

 

「Artemisの頃から使ってらしたベースなのでしょう?このベースには澄香さんの思い出がたくさん詰まっていると思います。

そんな大事なベース…私なんかには…」

 

「だからこそ。お嬢様に託したいのでございます。私が認めたベーシストに…」

 

澄香さん…。

 

「それにそのベースは私では使いこなせませんでした。そのベースの声は…鼓動は私には聞くことは出来ませんでした」

 

ベースの声…?

 

「私はお嬢様の執事になった時、そのベースを梓のダミーのお墓に封印しました。そのベースをお嬢様に託そうと思い、封印を解きましたのでございます」

 

私の為に…?

 

「お嬢様ならきっと『虚空』の声が聞こえると思います」

 

澄香さん…。

 

「ありがとうございます…。私、この『虚空』を使いこなしてみせますわ。

クリムゾンと戦う為ではなく、Canoro Feliceとして、私達らしい音楽を楽しんで演奏する為に!」

 

「はい。見届けさせて頂きます」

 

 

私達はその後、それぞれのホテルに戻り、明日に備える事になりました。

 

もしかしたら今日の南国DEギグの爆発事件のせいで、クリムゾンと戦いたくないと思う人がいるかも知れない。

英治さんはそれを危惧していました。

 

ですがきっと私達は大丈夫ですわ。

 

 

 

私はホテルの部屋で綾乃さんと花音さん、美緒さんと同じホテルに泊まっていた木南さんとで談笑していました。

誰も今日の爆発事件の事は語らず、好きなバンドの事やテレビ番組。そんな話をして過ごしてました。

 

「あら?」

 

「姫咲さん?どうしたんですか?」

 

「あの中庭にいらっしゃるのは…澄香さんとタカさん?」

 

「え?お兄さんと執事さんですか?」

 

あの二人が中庭で…?

何のお話をしてらっしゃるんでしょうか?き…気になりますわね。

 

「え?何?もしかして葉川のやつ……逢引き?」

 

「えー?貴兄に限ってそんな事あるかなぁ?」

 

「怪しいです…お姉ちゃんという者がありながら…」

 

「え?貴さんと奈緒ってそんな関係じゃないでしょ?」

 

久しぶりにお会いしたわけですし、積もる話もあるんでしょうけど…。

 

「覗きに行きましょうか?」

 

私はこんな提案をしてみた。

 

「「「「行きましょう」」」」

 

皆さん素敵な性格してますわね。

 

 

私達はホテルの中庭に行き、澄香さん達の近くへと向かった。

 

「どうですか?」

 

「ここからじゃあんまり声が聞こえないね」

 

「もう少し近付いてみる?」

 

何とか声が聞こえる所に…。

私達は息を潜めてこっそり近付きました。

 

「あ、ここなら少し声が聞こえます」

 

「よし、ここから覗こう」

 

「私も着いて来ておいて今更だけど…いいのかなぁ?」

 

「タカさんが澄香さんを襲おうとしたら一斉に飛び掛かりましょう」

 

 

「ハァ……」

 

「ん?どした?タメ息なんかついて」

 

「いや、別に…。何でもございませぬよ」

 

「その喋り方やっぱり何とかならない系?」

 

ん~…お二人で居るのにあんまりソレっぽいお話ではなさそうですわね。

 

 

 

「やっぱり逢引き?」

 

「木南さんそれ好きですね」

 

「貴兄に限って…。でもそうだったら面白いかも♪」

 

「タカさんには私の澄香さんは渡せませんわ」

 

「お姉ちゃんに報告しなきゃ…」

 

 

 

「ん~?どうやったら面白くなるかな?」

 

「あ?何が?」

 

「よし」

 

あ、澄香さんがタカさんの方へと近付いて行きましたわ。

 

「ごめんね、タカ。

私もタカに久しぶりに会えて嬉しかったけど、タカの気持ちには応えられないよ」

 

「え?何が?急にどうしたの?」

 

「最後に会った時から今までずっと私の事を想ってくれてたのは嬉しかったよ?

でもタカの愛の告白には……ごめんね」

 

「どうしたの?立ちながら寝てるの?

愛の告白って何?」

 

 

 

「まさか葉川が告白だなんて…」

 

「あちゃ~、タカさんかわいそ…」

 

「貴兄が…?愛の告白…?似合わな~い…」

 

「ま、当然ですわね」

 

「おのれお兄さんめ…お姉ちゃんという者がありながら…(ギリッ」

 

 

 

 

「で、でもね。タカがどうしてもって言うなら…いいよ?えへへ」

 

「は?何が?何がいいの?

てかえへへって何?ちょっとキモいんですけど…」

 

「いや、女の子にキモいとか普通言うかな…。ほら、私の後ろ(ボソッ」

 

「あ?後ろ?…………ああ、そういう事ね…」

 

「さ、タカ?もっかい心のこもった愛の告白をしてくれたら私も落ちるかもよ?

ほら、カモン!どんと来い!」

 

「えぇぇぇぇぇ……てか何でそんな乗り気なの?何が面白いの?」

 

「ほらほら~。あの子らびっくりさせたいじゃん?(ボソッ」

 

「め…めんどくさ…」

 

「バンやりのマイミーちゃんの限定アクスタでどう?(ボソッ」

 

「澄香。もう一度俺の気持ちを聞いてくれるか?(キリッ」

 

「ほんとチョロいなぁ~(ボソッ」

 

あ、タカさんが澄香さんの両肩を掴みましたわ…!ま、まさか…。

 

「え、ちょっ…タカ、これやり過ぎじゃ…」

 

「澄香…」

 

「は、はい!」

 

 

 

 

「おおおおお!まさか!このままブチュッと!?」

 

「しっ!木南さん声が大きいです」

 

「あ、あわわわわ、まどか…まどかにLINEしなきゃ…!」

 

「クッ、今から秋月家のスナイパーチームに連絡しても間に合いそうにありませんわね…」

 

「どこかに手頃な石とかありませんかね?」

 

 

 

 

「澄香…ずっと好きだった。

必ず幸せにする。俺と付き合ってくれ」

 

「は、はい…よろしく…お願いします…」

 

「「ヘェー」」

 

「え?」

 

あ、渚さんと理奈さんですわ。

 

「ふぅ~ん。先輩?どういう事ですカ?

あ、もしかして澄香お姉ちゃんへの告白シーンを私達に見せたかったとかそんな感じですカ?アハッ♪おめでとうございマス『しばくぞ』」

 

「いや、あの渚…その違うくてだな…なんかステレオでしばくぞって聞こえたんですけど?」

 

「本当にどういうつもりで私達を呼び出したのかしら?返答によっては地獄を見る事になるわよ?さぁ、遺言でも辞世の句でも好きな方を言いなさい『地獄を見せてあげるわ』」

 

「理奈。だからこれは違うくて…え?理奈からはステレオで地獄を見せてあげるわって聞こえたんだけど?何これ」

 

タカさんが渚さんと理奈さんを呼び出した?どういう事ですの?

 

「「何が違うの?」」

 

「澄香…あの澄香さん。すみません、二人に説明してくれませんかね?」

 

「はわわわ…タカが私の事を……どうしよう…梓…」

 

「あの…もしもし?澄香さん?」

 

「先輩♪澄香お姉ちゃんにオッケーしてもらえて良かったですね♪『お前を〇す』」

 

「あの…〇すってなんですか?まるす?それ怖い漢字が伏せられてる訳じゃないよね?」

 

「でもやっと貴さんも幸せになれそうね。まだ夏だけど春が来たって感じかしら?おめでとうと言わせてもらうわ『この後地獄を見る事になるんだけどな』」

 

「……え?この後地獄見る事になるの?もう俺ちびりそうなんだけど」

 

「「ネェ、さっきから何ヲ怯えてるノ?(ニタァ」」

 

「ギャアアアアアアアアアアアアア」

 

 

 

 

「なぁ~んだ。ただのお芝居だったんだ?つまんな~い」

 

「まぁ貴さんに春が来るなんてありえない事だものね」

 

「あはは、なっちゃんもりっちゃんもごめんね…」

 

なっちゃん?りっちゃん?

澄香さんはお二人と面識がありましたの?

……昨日お会いした未来さんみたいな呼び方ですわね。

 

タカさんが渚さんと理奈さんにある程度しばかれた後、澄香さんが二人にお芝居だったとネタばらしをしました。

 

澄香さんは私達が覗いている事に気付いていて、私達をびっくりさせようとしたらしいです。

考えてみれば姿が澄香さんってだけで、澄香さんはあのじいやだったんですものね。あれだけ近付いてしまえば気付かれてしまいますわよね…。

 

「へぇー、じゃあ瀬羽さんって水瀬さんの実家のご近所さんなんだ?」

 

「まぁ、近所って言っても澄香お姉ちゃんの家は山の下の町の方なんですけどね」

 

「えー?りっちゃんって私らの事覚えてくれてへんの?」

 

「ご、ごめんなさい。ぼんやりとは覚えてるのだけれどハッキリとは…」

 

「綾乃さんはArtemisの曲は聴いた事ないんですか?」

 

「うん、おっちゃんも貴兄もあんまりArtemisやアルテミスの矢の事は話してくれた事ないし」

 

「私も聴いた事ありませんのよ。いつか聴いてみたいものですわ」

 

「私は聴いた事ありますよ?」

 

「え?」

 

美緒さんがArtemisの曲を…?

あ、そう言えば以前美緒さんはガールズバンドを追っ掛けてると聞いた事がありますわね。それででしょうか?

 

「へぇー、美緒ちゃんってArtemisの曲聴いた事あるんだ?実は私も聴いた事ないんだよね~」

 

「あれ?そうなん?梓にもなっちゃんちのおっちゃんにも聴かせてもらった事ないん?」

 

「うん、実はあらへん。澄香お姉ちゃんはCDとか音源持っとる?」

 

「ん~、実家にはあるかもやけどこっちには持って来てないかなぁ?てか、タカも英治も音源持っとるはずやで?」

 

「ほんまに?今度聴かせてもらお」

 

渚さんと澄香さんが話すと関西弁になってますわね。素が出ちゃうのでしょうか?

 

「あ、なら今から聴きますか?

私音楽プレイヤーに入れてますし」

 

「え!?美緒ちゃん本当に!?

いいなら聴いてみたい!」

 

「じゃあちょっと待ってて下さいね。部屋から取ってきます」

 

私も楽しみですわ。

まさかArtemisの曲を聴けるチャンスがこんなに早くやってきますなんて…。

 

「ん?あら?そういえば…」

 

「姫咲さん?どうしました?」

 

「そういえばタカさんは何故渚さんと理奈さんを呼び出しましたの?」

 

「それでございますか。私はなっちゃんの家の近所に住んでいた事は先程のお話でもわかると思いますが、りっちゃんとはArtemis時代によくお会いしていた事もあり、この姿で暮らす事にしましたからな。改めてご挨拶をと思いまして」

 

なるほど。そういう事でしたのね。

 

「ん?あれ?あれあれ?」

 

「渚?どうしたのかしら?」

 

そう言って渚さんはタカさんの方へと近付いて行った。

 

「先輩先輩」

 

「ふぁい?なんでふか?」

 

あ、渚さんと理奈さんにしばかれて顔が腫れて上手く喋れませんのね…。

 

「先輩は何で私も澄香お姉ちゃんと会わせようとしてくれたんですか?」

 

「うっ…」

 

「やっぱり……私が梓お姉ちゃんの家の近所のなっちゃんだってわかってたんですね」

 

「…ふぁい」

 

「うふふ」

 

あら?渚さん…何か嬉しそうですわね。

 

 

「じゃあ再生しますね」

 

♪~

 

「ん?この曲って…fairy-tale(フェアリーテイル)?」

 

「Artemisってこんな激しいロックやったんや!?」

 

確かに…想像してたイメージと違いますわね。ああ…ヘドバンしたくなってきますわ…。

 

「本当にかっこいい曲ね。梓さんの声も凄いわ。すごく胸に響いてくる」

 

「あたしこの曲好きだな。曲調はロックなのに歌詞はすごく優しい感じ」

 

「本当に…梓さんの声に合った曲だね」

 

「やってさ。タカ。みんな絶賛やで良かったなぁ」

 

え?何でタカさんに…?

 

「あはは、この曲はタカに提供してもらった曲でございますから」

 

「「「「「「え?」」」」」」

 

「な、なんでふかね?」

 

この曲をタカさんが…。

梓さん達の事、Artemisの事をタカさんも大切に想ってましたのね。

 

 

私達はその後も数曲、Artemisの曲を聴かせて頂き幸せな気持ちになれた時間を過ごしました。

 

「梓…お姉ちゃん……グスッ」

 

「え?渚さん?どうして泣いてるんですか?」

 

「あ、あは、ごめんね。梓お姉ちゃんの事を思い出しちゃって…」

 

「ん?そうなんですね。最近は梓さんに会えてないとかですか?」

 

「え?あ、うん。会えてないっちゃ会えてないかな。もう会うことは出来ないから…」

 

そうですわね…。

梓さんは……もう…。

 

「タカ…(ボソッ」

 

「なんでふかね?」

 

「なっちゃんにも言ってないの?(ボソッ」

 

「なぎふぁのぼやでぃざんもびっでなびびだびだびぶぁ」

 

「ごめんね。何を言ってるのかわかんない」

 

タカさんと澄香さん?

またこっそりと何を話してますの?

 

「『渚の親父さんも言ってないみたいだしな』かな?」

 

「コクコク」

 

「そっか。私もこの事はまだCanoro Feliceのみんなにも言えてないし…(ボソッ」

 

私達にも言えてない?

一体何の事ですの?

 

「でぶぉな、べいびとトシキどもぶぁなびだぶぁ、明日びんぶぁにぶぁなぶぶぼりだ」

 

「ん?ん~…『でもな、英治とトシキとも話したが、明日みんなに話すつもりだ』?」

 

「コクコク」

 

「そっか。うん、私もそれがいいと思う」

 

明日…明日にはその事を話して頂ける?

 

「え!?梓さんって亡くなってらっしゃるんですか!?」

 

「ええ…そうなのよ」

 

美緒さんはご存知なかったのですね…。

 

「そうだったんですね…。渚さん、すみません…」

 

「ううん、全然。気にしないで。

美緒ちゃんは知らなかったんだし…」

 

「はい…軽音部の先生にも聞いてませんでした…。言いたくなかったのかな…」

 

「そういやデュエルギグ戦闘員の事とか、二胴とか九頭竜とかクリムゾンの事もその軽音部の先生に教えてもらったんだっけ?」

 

「はい…」

 

「そうなのね。美緒ちゃんの学校の先生は詳しいのね。一体何者なのかしら?」

 

「あ、うちの軽音部の先生ですか?」

 

「意外と美緒ちゃんの先生もアルテミスの矢のメンバーだったりしてね」

 

「それならタカさんか澄香さんに名前を出して聞けばわかるんじゃないかしら?」

 

確かに。もしかしたらタカさんや澄香さんのお知り合いの方かもしれませんわね。

 

「いえいえ、先生はアルテミスの矢ではないですよ」

 

「あはは、さすがにそれはなかったかぁ」

 

「ええ、先生の名前は神原 翔子。Artemisのギタリストでしたから」

 

なるほど。Artemisでしたらアルテミスの矢ではありませんものね。

 

…………え?

 

「み、美緒様…ちょっとお待ち下さいませ…。美緒様の学校の軽音部の先生が…翔子?」

 

「あれ?澄香さんも知らなかったのですか?

はい。私達の顧問は神原 翔子先生です」

 

「「「「な、なんだってー!!?」」」」


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