俺の名前は江口 渉。
Ailes Flammeのイケメンボーカルだ。
南国DEギグのあの事件からもう3日経った。
あの旅行は本当に色んな事があった。
15年前の話。
Artemisとアルテミスの矢の話。
クリムゾンエンターテイメントの話。
ファントムの話。
拓実が拓斗にーちゃんに託されたベース。
俺とシフォンでinterludeとのデュエル。
拓実の雨宮の親父さんとのデュエル。
そして海の主の巨大タコに殺されかけた事。
どの出来事も俺達には衝撃的だった。
今日俺達Ailes Flammeは、金曜日にゲスト出演させてもらうFABULOUS PERFUMEのライブのセトリを決めるのと、俺達の今後の事を話し合う為にスタジオ『ミルフィーユ』に来ていた。
「なんか俺のモノローグも久しぶりだな!この物語の主人公なのに最近全然目立ってなかったもんな~」
「また渉は何を言ってるの?
そんな事より渉が歌詞を書いた『SUMMER DAYS』っていい歌詞だよね。渉らしさが出てるって言うかさ」
「ああ、オレもこの歌詞好きだな。渉が選んだオレの曲にも合ってるっつーか。
大体この物語の主人公ってお前だったのか?初耳だけど?」
「うん!ボクも渉くんが『SUMMER DAYS』を歌った時ビックリしたもん!
タカ兄とか渚さんの方が目立ってるもんね。そもそも渉くんって15年前とか関係ないし」
え?まじで?
俺が主人公じゃなかったの?
いや、でも何かあるかもしれねぇじゃねぇか。
15年前には居なかった期待のニュージェネレーションとか、実は俺も15年前にクリムゾンと戦っていた!とか、実は俺もクリムゾンエンターテイメントの創始者海原の実子だった!とか、実はクリムゾンの黒幕は俺だった!とか!!
「いや、渉がクリムゾンの黒幕だったとしたら僕達の敵だよね?」
「15年前っていったらボクらは2歳だよ?
クリムゾンと戦っていたとか無理がありすぎるよ…」
「大体お前には普通に両親いるじゃねーか。どっちかというとお前は親父さん似だし」
これはまずいな。
俺が主人公かどうかは今はまだ些細な問題だ。これから活躍して昇格したらいいからな。
今まずい事はナチュラルに俺の考えている事がみんなにバレてる事だな。
「じゃあ、お前らは誰がこの物語の主人公だと思ってるんだ?」
「そんなのシフォンに決まってるだろうが!」
「え?ボクなの?
ボクは意外と盛夏ちゃんが主人公じゃないかな?って思うなぁ~」
「僕は大穴で英治さんかな?
なんか英治さんってキーパーソンな感じしない?」
フッ、こいつらめ…。
今名前が挙がったメンバーみんな各バンドの第1章には出てないじゃねーか。
主人公が途中登場なの?それは斬新でいいですねっ!
「そんな主人公談義より金曜日のライブのセトリ決めようよ」
「そうだね。ボクが今歌詞を書いてる『雨上がりのピクニック』を入れても3曲しかないから順番を決めるだけだけど」
シフォンの言った『雨上がりのピクニック』。
これは俺達Ailes Flammeの3曲目の歌だ。
まだ完成はしていないけど、亮の作り溜めしていた曲の中からこれだって曲も決まり、歌詞も今夜には書き上がる予定らしい。
今回はポップな感じの明るい曲だ。シフォンらしい選曲だよな。
「そうだな……。オレは『Challenger』で盛り上げて、『雨上がりのピクニック』で場を明るくして、ラストに『SUMMER DAYS』で暴れる。
こんな流れがいいと思うんだけどどうだ?」
「「「うん!それでいこう!」」」
金曜日のセトリは一瞬で決まった。
「え?いいのか?」
「じゃあ次は俺達の今後の事を決めるか。
俺はまだメジャーデビューってのはピンと来ないしどうすっかな?って思ってるけど、ファントムに所属してAiles Flammeをやっていきたいと思ってる。
interludeは俺がぶっ倒したいってのもあるしな!」
「オレもメジャーデビューってのはまだ考えていないが、ファントムでやっていきたいと思ってる。別に親父やお袋の事に関係なく、あんな話を聞いたり南国DEギグの事を思うとな。やっぱクリムゾンは野放しに出来ねぇって思うし、あの『サガシモノ』って子も見つけてやりてぇ」
「うん!ボクも亮くんと一緒かな!
『サガシモノ』ちゃんを見つけてあげたい!そして梓さんは生きてるんだよって教えてあげたい!」
「シフォン、オレと同じ意見だな。
これはもう相思相愛の……いや、まるで長年連れ添った夫婦みたいだな」
「え?亮くん?」
ああ…どんどん俺の幼馴染が遠くの存在になっていってる気がするぜ。
そういや亮。俺言うの忘れてたけど、シフォンは俺達が『シフォンの正体は井上』って知っている事を知っているからな?
「え、えっと、そ、それにボクはおっちゃんの弟子だしね!クリムゾンの事は色々聞いてたのもあってクリムゾンって大嫌いだし、やっつけなきゃって思うし!」
「僕もそうかな。クリムゾンは怖いって気持ちもあるけど、ファントムに所属してAiles Flammeをやっていきたい。
そしてそれでクリムゾンと戦う事になるなら逃げずに戦って勝ちたいと思う。
拓斗さんに託されたベース『晴夜』もあるしね」
そう言って拓実は拓斗にーちゃんに託されたモンブラン栗田じーちゃんの最高傑作であるirisシリーズのベース『晴夜』を取り出した。
楽器がまるでわからない俺にもこのベースの凄さはわかる…。
「へぇ~、これがirisシリーズのベースか~。見ただけじゃ何が凄いのかわからんちんだね」
え?わからないの?
「ああ、オレも見ただけじゃわかんねぇな。拓実は弾いてみたのか?」
え?亮もわかんないの?
盛夏ねーちゃんや理奈ねーちゃんや美緒が凄い凄いって言うから凄いベースって思い込んでたのになぁ~…。
何が『このベースの凄さはわかる…』だよ!?
正直俺もさっぱりわかんねーよ!
ミーハーなんだよミーハー!
何かまわりのみんなが凄いって言ってたら、これって凄いのかな?って思ってこれは凄い物だって思い込んだりするじゃん!俺が正にそれだよ!!
「ん?渉はどうしたの?」
「いや…何でもない…」
「僕は昨日も『晴夜』を弾いてみたよ。
でもやっぱりって言うかベースの声は聴こえなかったけどね。あはは」
ベースの声か…。
盛夏ねーちゃんは『一緒に遊ぼう』って聞こえるって言ってた。
理奈ねーちゃんは『一緒に演奏しよう』って聞こえるって言ってた。
美緒は『一緒に歌おう』って聞こえるって言ってた。
拓実のベースからはどんな声が聞こえるんだろうな。
「ねぇ拓実くん。せっかくだし何か弾いてみてよ」
「うん、いいよ。じゃあ弾くね」
そう言って拓実はベースの演奏を始めた。
「お、いつも使ってた拓実くんのベースより重みのある音だね」
「ああ。とはいえ音に繊細さも感じるな。これはサウンドの幅も広がりそうだ」
「ああ…これは俺もわかる。いいベースだな」
俺は拓実の奏でるベースの音を聞いていた。これは『SUMMER DAYS』だな。
練習したんだな拓実。
俺は頭の中で歌詞を歌いながらパフォーマンスはどうするかをイメージしていた。
『力が欲しいか?』
「え?誰か何か言ったか?」
「ほぇ?誰も何も言ってないよ?」
「僕も演奏に集中してたし何も言ってないよ?」
「どうかしたのか?渉」
「あ、いや悪い。何でもねぇ」
誰も何も言ってないのか…。気のせいかな…?
「あ、そうだ亮。『SUMMER DAYS』のここの所なんだけどちょっと僕なりにアレンジ考えてみたんだけど聴いてくれないかな?」
「お、マジでか?聴かせてくれよ」
そう言って拓実は再び演奏を始めた。
『力が欲しいか?』
「え!?」
「どうしたの?僕のアレンジ変だった?」
「オレは今のアレンジで良かったと思うぜ?渉は何か気になったのか?」
「あ、いや…悪い。俺も今のアレンジで良かったと思う」
「変な渉くんだなぁ」
「じゃあもう一度頭から弾いてみるね変な所あったら言って」
拓実はまた頭から『SUMMER DAYS』の演奏を始めた。
本当にさっきの何だったんだ…。
確かに俺には聞こえた。俺にしか聞こえてない……?
『力が欲しいか?』
やっぱりだ。
拓実が演奏を始めたら声が聞こえる。
もしかしたらこれが…ベースの声?
『力が欲しいか?』
それにしても『カ』って何だ?
蚊なの?蚊なんて正直な所迷惑なだけなんだけどなぁ。
『いや、カタカナのカちゃうし。力やし。これってバンやろのネタそのまんまやん』
「な!?」
「うぇ!?わ、渉くんどうしたの!?」
「こ、このベース……関西人だと……?」
「「「は?」」」
あ、しまった。つい口に出しちまったぜ…。これじゃ俺まるで変な人じゃねーか。
「渉?本当にどうしたの…?」
「渉くん……そんな変な所はたか兄に似なくていいんだからね?」
「渉……お前まさか……」
な、何とか誤魔化さねぇとな…。
「いや、悪い。拓実のベースの音が心地好くてさ。寝ちまってたみてぇだわ。あはは…」
「お前…もしかするとベースの声が聞こえたんじゃねーのか?だから…」
やっぱり亮は鋭いな…。
俺は黙って頷いた。
「え!?渉くん!本当に!?」
「さすがオレの見込んだボーカルだな」
「そ、それで渉!このベースは何って言ってたの!?」
「あ、ああ……力が欲しいか?って聞かれて…」
「力が?ありゃ?盛夏ちゃん達とは違うんだね?同じirisシリーズなのに」
「力が欲しいか?って何だよ。ジャバウォックか?」
そして俺はありのまま聴こえた声の話をした。
「そんで…俺が『それにしても『カ』って何だ?蚊なの?蚊なんて正直な所迷惑なだけなんだけどなぁ』って言ったら、『いや、カタカナのカちゃうし。力やし。これってバンやろのネタそのまんまやん』って関西弁でツッコミを入れられたんだ」
「「「え……?関西弁?」」」
「ああ…」
「えっ……と…渉?それ本当にベースの声なの?」
「お前、実は寝不足とかじゃないよな?」
「渉くん、そんな所はたか兄に似なくていいんだよ?」
な!?何だと…!?
まさか俺が寝惚けてるとかそんな風に思ってんのか!?
くっそ~…もうベースの声が聞こえても絶対に教えてやらねぇからな!
「あ、そうだ。悪かったな拓実。渉のバカがバカな事言うからアレンジの所ちゃんと聞けなかったわ…」
「あ、うん。じゃあもう一度弾くね」
「うん。拓実くん頭からお願い」
「オッケー」
くっそ~…しかし本当にさっきの声は何だったんだろう?
俺がそんな事を考えていると、拓実がまた演奏を始めた。
けど本当にあれはベースの声なのか?
『力が欲しいか?』
!?また聞こえた!
間違いない。拓実が演奏を始めたら聞こえてくる。やっぱりベースの声なのか……?
『力が欲しいか?』
ん~…でも力なんていらないしなぁ。
『力が欲しいのなら……くれてやる』
だからいらないぞ?
『え?いらへんの?ほんまに?』
ああ、別にいらねぇ。
『ほんまに?後悔せぇへん?』
あ、ああ~……何かそういう風に言われると考えちまうな…。
具体的にその力ってどんな力なんだ?
『具体的に…?』
ああ、例えば世界を破滅させる力とか、リア充共を爆発させる力とか。
『え?そんな力が欲しいん!?』
いや、別にそんな力とかいらねぇけどな。
あっ!雨宮にしばかれない力なら欲しい!!
『ェェェェェェェェ~~……』
無理なのか?じゃあどんな力なら俺にくれるんだ?
『我がキサマにくれてやる力は……』
「……たる!渉!!おい!大丈夫か!?」
「え?あ、あ?わ、悪い。俺もしかして寝てたか?」
「「「………」」」
ん?どうしたんだ?
「いや、渉くんは寝てたっていうか…」
「目は開いたままだったしな。寝てるっていうかボーッとしてる感じだったな」
ボーッとしてる…?
やっぱり俺にだけあの声が聞こえてて…。
「渉…本当にこのベースの声が聞こえてるの?このベース本当に関西弁でツッコミ入れてくるの…?」
俺はまたバカにされるかもとは思ったが、さっきの声との会話のやり取りをありのままに話した。
「それって本当にベースの声なのかな?っていうか渉くんって声が聴こえるどころか会話しちゃってるよね?」
「渉にだけ聴こえる声……か…」
「えぇ~……本当に『晴夜』の声なのかなぁ?何か嫌だなぁ…」
「あ?何でだよ。関西弁いいじゃねーか」
「いや、僕も関西弁は好きだよ?関西のノリも好きだしお笑いの番組もよく観るし。でも演奏中に関西弁でツッコミ入れられると思うとさ…。
ちょっとミスしちゃったら『そこ間違っとるで?』とか、『そこそれとちゃうで?』とか言われたりしたらテンション下がるじゃん……」
あ~、まぁ確かにそうだな。
俺がもし歌詞を間違えたりした時にツッコミ入れられたらライブに集中出来ないもんな。
「ねぇ、それでベースのくれる力って結局何なのかな?」
「あ、それな。悪い拓実。もう一度ベースを弾いてくれないか?」
「え~……何か嫌だなぁ…」
「頼むよ拓実」
「わかったよ…もう一回だけだよ?」
そう言って拓実はベースを弾いてくれた。拓実のベースの音に集中して…。
もう一度ベースの声が聞こえたら…。
『力が欲し…』
いや、もうその下りはいいから。
『ぇ~…』
それよりさっきは何を言おうとしたんだ?俺にくれる力って何なんだ?
お前は本当に拓実のベースなのか?
『………我がキサマにくれてやる力は』
俺にくれる力は……?
『内緒♪』
「なんでやねん!!!」
ハッ、しまった…。
うっかり俺が関西弁でツッコミ入れてしまった。
「ど、どうしたの渉…?」
「今度はベースは何って言ってたんだ?」
「ああ、俺がその力って何なのか聞いたら、内緒って言われちまってな…音符付きで……」
「え?音符付きで…?」
「………拓実。悪いんだがもう一度ベースを弾いてくれないか?」
「え?亮?何で?正直嫌なんだけど…」
ん?亮?もしかして亮にも聞こえたのか?
「頼むよ拓実。これでラストでいいから」
「もう……わかったよ。でも何で?亮にも聴こえたの?」
「いや、そういう訳じゃねぇけどな。オレにも聞こえてねぇよ」
「そっか。じゃあもう一度だけね。今日はこれで終わりね」
そして拓実はもう一度ベースの演奏を始めてくれた。俺は拓実のベースの音に集中して耳を澄ませて……。
「ねぇ?亮くんは何でもう一度拓実くんにベースを弾いてほしかったの?」
「ん?ああ、渉の聞こえてる声は本当にベースの声なのかな?って思ってな…」
「ふぇ?拓実くんが演奏してる時にしか聞こえてないんだしベースの声じゃないの?」
「ああ、でも拓斗さんが言ってたろ。特別な力を持つ者は稀にいるって。もしかしたら渉の力は楽器の声を聞く力じゃなくて別の力じゃねぇかな?って」
「ほむほむ。なるほどね。
それならベースの声じゃない方がいいよね。ボクもドラム叩いてる時に関西弁でツッコミ入れられたら集中出来ないし」
「いや、オレはベースの声であってほしいけどな」
「え!?何で!?」
「渉が声を聞けるのは拓実の演奏してる時だけなんだぜ?なのにベースの声じゃなかったら渉の聞いてる声は…」
「あ、そっか。確かにベースの声じゃなかったら怖いよね。拓実くんの演奏中にだけ渉くんに聞こえる声……」
「大丈夫だシフォン。怖がる必要はない。お前はオレが守ってやる。一生な」
「え?う、うん、ありがとう…」
さっきから亮もシフォンもうるせぇな。
ベースの音に集中出来ねぇ…。
今はまだ声は聞こえない。早くしないと拓実の演奏が終わっちまう…。
ダメだ…聞こえねぇ…。
まさかもう聞こえなくなっちまったのか?
クソッ!しっかり集中して……!
『|д゚)チラッ』
チラッじゃねーよ!居たのかよ!!
その顔文字ってどうやって発音してんだよ!!
『だって力いらへんとか言うし…』
あ~……悪かったから。謝るから…。
ごめんなさい。これでいいか?
『力が欲しいか?』
やり直すのかよ!!
あ~、わかった!欲しい!俺は力が欲しい!!
『でもあげな~い』
何で!?謝っただろうが!
『さっき散々いらないとか言われて拗ねちゃった』
拗ねたのかよ!
だから悪かったって!な?機嫌直してくれよ。
『我は難しい年頃なのだ』
そんなの知るかっ!難しい年頃!?
何歳なの!?自慢じゃねーけど俺も難しい年頃だからな!!
『ふぅ……』
タメ息!?あー!イライラするなぁ…。
じゃあもういい!!俺は力なんていらねぇ!!
『さすれば力が欲しくなった時、我を呼ぶがよい……』
さっき力が欲しいって俺言ったじゃねーか!何なの!?もうマジで何なの!?
『………あんま拗ねちゃってると嫌な奴って思われても嫌だから1つだけ教えてあげるね』
ん?1つだけ…?教えてくれる?
『我は……ベースではない』
ベースじゃない?じゃあ誰なんだお前!?
おい!聞いてんのかよ!おい!!
………誰なんだよお前。
・
・
・
その後、俺にその声が聞こえる事はなかった。
ベースじゃない。あいつはそう言った。
その事を亮と拓実とシフォンに伝えたら、拓実は『良かったよぉ~良かったよぉ~晴夜ぁぁ!』って叫びながらベースを抱き締めて喜んでいた。
でも本当に何だったんだろうあの声は…。
まさか本当に俺が寝ちゃってて変な夢を見てたとか?いや、そんなはずはない。ハッキリとし過ぎている。
土曜日ににーちゃん達に相談してみるかな……?
「けど本当に何だったんだろうね?渉くんの聞いた声って」
「僕はあれが『晴夜』の声じゃなくて本当に良かったよ…」
「何か気になるよな~。拓実が演奏してる時にだけ聴こえた声」
「もう渉もシフォンも気にするなよ。
もう聞こえなくなっちまったし、考えたって答えなんか出ねぇだろ」
「う~ん、確かにそうだね。じゃあボクはここで!今夜中には歌詞を完成させて連絡するからね!」
「ああ、よろしくな。シフォン」
「僕もバイトあるから行くね。渉も亮も気を付けてね」
「ああ、拓実も頑張ってな」
そう言って俺達は解散した。
解散したといっても俺と亮はご近所さんだし帰り道は一緒なんだけどな。
「あ、そういやお前夏休み終わったらバイト始めるんだっけ?」
「ん?おお。そのつもりだ」
「どこで働くんだ?」
「ファミレス。こないだのリゾートバイトの時にウェイターって楽しいって思ってな」
「そっか。普通は夏休み中にバイトするもんだと思うがお前は夏休み終わってからなんだな」
「夏休みは遊びてぇからな」
その後俺達は何も話さず帰路についていた。参ったな。こういう時って亮のやつは何か考え事してる時なんだよな…。
「なぁ亮…」
「ああ、お前の聞こえた声の事を考えてた」
!?
全く…幼馴染は面倒だな。
「んだよ。俺とシフォンには考えても答えなんか出ねぇって言ってたくせによ」
「いや、誰の声だったのか、何の声だったのかってのを考えてた訳じゃねぇ」
あ?だったら何を考えてたんだ?
「何で渉に声が聞こえるようになったか。それって多分拓実が『晴夜』を弾いてたからなんだよな。きっとお前には何か特別な力があるんだよ」
「あ?まぁ俺って主人公だしな?」
「いや、主人公はシフォンだ」
そーでっか。
「お前の特別な力を引き出すきっかけが『晴夜』だったんだろうな」
「まぁ…多分そうだろうな」
「楽しみだな。これからのオレ達が」
ああ。確かに楽しみだ。
特別な力うんぬん関係なく、俺達はファントムに所属してライブをやっていく。
これから俺達Ailes Flammeは突き進んで行くんだ。
東雲 大和の言っていた天下一のバンドになる為に。
俺が見たいと思った音楽の先の世界へ。