バンやろ外伝 -another gig-   作:高瀬あきと

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第26話 最高×ヤミ

「ぐぉぉぉぉ…指が…指がつる…」

 

「だから!いきなり早弾きでFコードとか無理だってば!力み過ぎだし!」

 

私の名前は水瀬 渚。

Divalのボーカルなんだけど、会社の先輩である葉川 貴に私はライブ中暴れ過ぎで体力が無いとか言われ、ギターボーカルもやれるようにと、伝説のバンドArtemisのギターボーカルである梓お姉ちゃんの使っていたギターを託された。

 

そして今私はギターの練習中なのである。

 

「くぅ……ギター難しいね…。

でもせっかく梓お姉ちゃんのギターを託されたんだし、早く上達したいなぁ~」

 

「そんな簡単にギターが弾けるようになるわけないじゃん。今は練習あるのみだよ」

 

まぁ確かにそうなんだけどね…。

先輩ですらギターは妥協しちゃったんだもんね。だからこそ早く上達したいとも思うんだよね~。

 

 

 

『何だ?もうギター弾けるようになったのか?Fコードも?』

 

『どうですか先輩!私もやる時はやるんです!』

 

『本当に凄いな渚は。可愛いだけじゃなくて頑張り屋さんなんだな。よ~し、頭撫で撫でしちゃうぞ』

 

『はぅ…せんぱぁい…』

 

 

 

いやいやいや、これ誰よ?どこの先輩さん?

っていうか私はこんなの妄想した事もありませんけど?何これ。

 

「いや、早く上達して貴に褒めて欲しいのかな?って思って…」

 

「いや、何を言ってるの志保は…」

 

何て事!?至ってクールな渚ちゃんを装ってはいたけど正直ビビっちゃってるよ!

志保ちゃんったらいつの間に私のモノローグを改変出来るようになったの!?

 

私は今後ももしかしたら志保にモノローグを改変されるかもしれない…。

私はその恐怖に戦慄を覚えた。

 

あ、もし何か変な事考えちゃったら志保に改変された事にしちゃおう。

 

「渚、ちょっと休憩にしよっか」

 

「あ、うん。そうだね」

 

「私も少し休憩にしようかしら。それにしても香菜は遅いわね?どうしたのかしら?」

 

「あ、理奈お疲れ様。どう?『OCEAN』と『素直になれなくて』と『RADICAL HEART(ラジカルハート)』の渚パートは出来た?」

 

今日はDivalのメンバーでそよ風に行って今後の私達の事を話し合う予定にしていた。

 

理奈は私がギターも弾くようになったのならと、今までのDivalの曲に私のギターパートを追加する為に私の家に来ていた。

 

仕事が順調に終わった私は帰宅してすぐにそよ風に向かおうと思ってたんだけど、香菜のバイト先の友達が風邪を引いちゃったらしくて、ヘルプで短時間だけバイトに行く事になったらしい。

 

一応私の定時に合わせて帰らせてもらえるみたいだったけど、まだ香菜は私の家に来ていない。

 

「『素直になれなくて』は完成させたわ。でも『OCEAN』と『RADICAL HEART』はどうしたものかしらね。

私達には渚の元気に走り回るパフォーマンスも必要だと思うのよ」

 

「あ~、確かに。なら全部の曲でギターやるんじゃなくて…ってした方がいいかな?」

 

え?私ギター担ぎながら走り回るの?

 

「そうね。ギタースタンドを用意しておいて、渚のギターパートのない曲の時は立て掛けておけばいいものね」

 

あ、ギターを弾かない曲の時はギタースタンドに立て掛けとくのか。

それなら走り回る事も出来るかな?

私の体力次第だけど……。

 

「そうなるとセトリも考えて組まなきゃね。まぁ、そこら辺は何とでもなるか」

 

あ~…確かに1曲目にギター演奏、2曲目にギターなし、3曲目にギター演奏とか交互にやっちゃうとバタバタしちゃうもんね。

 

理奈にも曲の事で苦労掛けてるんだし、私もギターの練習しないとね!

 

「あ、理奈も休憩するならお茶でも淹れようか?渚も何か飲む?」

 

「ぐぉぉぉぉ…指が…指が…」

 

「何で!?休憩するんじゃないの!?」

 

 

 

 

-ピンポーン

 

「あ、香菜が来たのかな?あたし見てくる」

 

「は~い」

 

「ええ、お願いね」

 

私達が冷たい麦茶を飲みながら休憩をしていると呼鈴が鳴った。香菜だといいなぁ?

ちなみに志保が飲み物を用意してくれるって言うので、私はビールを、理奈は戦乙女をリクエストしたんだけど志保に却下されちゃったのだ。

だからそよ風に行くまでビールは我慢なのだ。

 

「ねぇ、香菜来たよ。玄関で待ってもらってるしあたしらも用意して行こっか」

 

よし、これからの私達の話し合いだ。

しっかり飲むぞ~。ん?あれ?しっかり飲んで大丈夫かな?

 

 

 

 

私達はそよ風の個室に通してもらい、乾杯をしてからミーティングを始めた。

うん、ミーティングだから飲み会じゃないから。

 

「バイト長引いちゃってごめんね。

ってわけで~、ベロンベロンに酔っちゃう前に話し合いしちゃおうか」

 

「え?香菜何かあったの?」

 

「ベロンベロンに酔っちゃう?香菜、あなたそんなに飲むつもりなの?」

 

香菜はどちらかと言うとお酒の強い方だ。いや、強いというより私や理奈とは違い、自分の限界がわかっているのか自分のペースでお酒を飲むのでそんなに酔ってる所を見た事がない。

あ、私も理奈も自分の限界はわかっているんだよ?ただペースは早いし、たまに限界突破しちゃうだけで。

 

「あ、うん。ごめん。ベロンベロンに酔っちゃうのはあたしじゃなくて、渚と理奈ちだから」

 

「私と渚が…?香菜も面白い事を言うのね」

 

「私達ベロンベロンに酔った事あったっけ?」

 

ないよね?

 

「ま、それはいいじゃん。どうする?あたしからどうしたいか言おうか?

どうせみんな同じ気持ちだろうけどね~」

 

「香菜の言う通りね。私達の気持ち…。

これからどうしたいのかはみんな同じだと思うわ。だけど…」

 

「うん、そうだね。改めてって言うか…。

私達の気持ちをちゃんとお互いに言い合っとこう」

 

「じゃあ誰から言う?香菜から言う?」

 

「「「「……」」」」

 

え?誰も何も言わないの?

 

「ま、んじゃあたしから言うか~。

あたしの今の目標はDivalで最高のバンドに、最高のドラマーになる事。

その最高のバンドになるって目標は正直ファントムに所属しなくてもあたし達なら達成出来ると思ってる。

でもね、あたしは英治先生の事を尊敬してるし、Divalに入れて貰った時の目標の1つはクリムゾンを倒して、バンドマンがやりたい音楽を自由にやれる世界にしたかったから。そうする事によってデュエルギグ野盗も減ると思うしね。

だからファントムに所属してクリムゾンと戦いたいって思ってるよ。まぁ、メジャーデビューの件はどっちでもいいって感じかなぁ」

 

うん、そうだね。

香菜はデュエルギグ野盗がいない世界。

みんなが楽しい音楽をやれる世界にしたいって思ってたんだもんね。

 

「じゃあ次は私が言おうかしら。

私はcharm symphonyとしてメジャーデビューをしていて、その時は自分のやりたい音楽をする事は出来なかったわ。

だからファントムに所属してメジャーデビューをするという事に関しては少し思う事もあるし土曜日に詳しく話を聞いてから……と思ってる。

私の夢は最高のバンドになる事。

渚の歌声、志保のギター、香菜のドラム、そして私のペース。私達なら必ず最高のバンドになれると思っているわ。

でも15年前の事、私の父がアルテミスの矢だった事。その話を聞いて、私はクリムゾンは私の夢の障害だと認識している。だから、私はファントムに所属してクリムゾンを叩きたいと思ってる。

まぁ、ついでに私達がクリムゾンを叩けばKiss Symphonyの子達もやりたい事をやれるでしょうしね」

 

理奈…。うん、香菜も言ってたけど私も私達なら必ず最高のバンドになれると思ってるよ。

それにしてもついでにKiss Symphonyもって……。理奈も心配なんだね。

 

「じゃあ次はあたしが言おうかな。渚はうちらのリーダーなんだしトリね。

あたしも理奈と香菜の言う通りあたし達なら最高のバンドになれるって確信してる。だけどあたしはその前に倒さなきゃならない相手……お父さんがいる。

そしてお父さんの音楽をあんな風にしたクリムゾンをあたしは潰したいって、クリムゾンは憎いって気持ちもある。

だけど、あたしはあたしが楽しいと思う音楽で、最高のバンドになる為にクリムゾンと戦う。楽しい音楽が最高の音楽なんだってクリムゾンに思い知らせたい。

だからあたしもファントムに所属して、クリムゾンと戦いたいと思ってる」

 

志保。志保なら大丈夫。

今の志保なら楽しい音楽でクリムゾンに勝てると思う。

 

「最後は私だね。

私もみんなと一緒だよ。Divalならみんなとなら最高のバンドになれると思ってる。

でもね、15年前の話とかも聞いたりして、志保のお父さんみたいな人、始めて志保に会った時のように楽しんで音楽をやれてない人、香菜の弟くんみたいにやりたい音楽を邪魔された人、拓斗さんのバンドメンバーのようにクリムゾンを憎んでる人、梓お姉ちゃんや澄香お姉ちゃんみたいな人、15年前にも今もいっぱいいると思ってる。

正義の味方になったつもりもなるつもりもないけど、そんな人達をこれ以上増やさない為にも私はクリムゾンをやっつけたい。だから最高のバンドDivalとしてファントムに所属したいって思ってる」

 

そう。もう先輩みたいに一人で抱え込んだり傷つく人を見たくない。

 

………え?先輩?あれ?私何で先輩が一人で抱え込んだり傷ついてるって思ったんだろう?

そういえば前にも先輩を一人にしちゃいけないって思って……あれ?何でだろう?

 

あ、先輩はいつもぼっちだからかな?

 

「私達4人の気持ちはやっぱり同じようね」

 

「だね。でも改めてみんなで話せて良かったと思うよ」

 

「うん。あたしも!…………あれ?渚?ど、どうしたの?泣いてんの?」

 

え?私が泣いてる?

何を言ってるの志保ちゃんったら。

 

「渚…?大丈夫かしら?」

 

え?あれ?あ、本当だ。右目から涙が出てる…。

 

「渚…?あ、ハンカチ使う?」

 

「え?いや、本当に大丈夫だよ?

何でだろう?ん~?みんなの気持ちが一緒で嬉しかったのかな?それともただの疲れ目?」

 

みんなの気持ち…みんな同じ気持ちだろうって思ってたし、そんなに感動したわけじゃない。

それに何か嬉しいとか悲しいとかそんな気持ちも今はない。本当に疲れ目かな?片目からだけだしね。

 

それ以上は私は涙を流す事はなかった。

え?本当に変な病気とかじゃないよね?

 

「本当に何だったんだろう?またこんな事があったら眼科行ってみた方がいいかなぁ?」

 

「あ~、そうだね。本当にただの疲れ目かも知れないけど続くようなら病院行った方がいいかもね」

 

「夜中までアニメの観すぎやゲームのやり過ぎとか?」

 

「何を言ってるの志…保……った……ら?」

 

「え、どうしたの?渚?」

 

な、何だこの胸のざわめきは…?

そして身体の奥底からフツフツと沸き上がってくる感情……何だ…これ…は…。

穏やかな心を持っているはずなのに……激しい怒りによって何かが目覚めそうな…この感覚…!

 

「ちょっと!渚!?」

 

「なぁに?どうしたノ?」

 

「ヒィ!!?」

 

フフ、フフフフフフ……。

 

「ちょっ…な、何で渚がヤミモードに…?」

 

「まさかさっきの志保のアニメの観すぎとかの台詞で…?」

 

「こ、怖い事言わないでよ香菜…」

 

「ア!」

 

「ヒィィィ、な、渚、ご、ごめ…ごめんなさい。わ、悪気があった訳じゃないの!冗談!冗談だから!」

 

「どうしたノ志保?何ヲ謝ってるノ?」

 

「ヒィィィィィ!!」

 

「そうだそうだ。センパイにLINEしなきゃ。フフフフ…」

 

「え?貴…?」

 

「え?タカ兄なの?何で急に?」

 

よーし、これでいいかナ?

あ、せっかくだしハートの絵文字もツけてあげようカナ。

 

「フフフフ…センパイから返事クるかなぁ?」

 

「ちょっと…怖いんだけど…どうしたの渚?(ボソッ」

 

「わかんないよ……だってタカ兄だよ?今はこの場にいないじゃん(ボソッ」

 

「フフフフフフフフ…」

 

「え!?理奈!?」

 

「ちょっと…何で理奈ちまで!?」

 

ン?リナ?どうしたんだろう?

 

「奇遇ね渚。私も今貴サンにLINEした所なのヨ」

 

「あ、リナもなんだ?」

 

「エェ、何か急に貴サンに聞きたいって思って…」

 

「アハッ♪私もだヨ。何が聞きたいのかわからないんだけど…」

 

「ちょっとちょっと…貴って何したの?新手のスタンド攻撃?(ボソッ」

 

「わかんない…わかんないよ……と、取り合えずタカ兄には逃げるように言っとこう(ボソッ」

 

「アレ?志保も香菜もどうしたノ?」

 

何ヲこそこそ話してるノ?私も仲間に入れてほしいなぁ~。

 

「な、渚?ビール…ビールがもう少なくなってるから注文した方がいいかな?って…」

 

「エ?」

 

「り、理奈ちも…次も戦乙女にしとく?それと漬物ももっかい注文しようか?あ、あははは」

 

「………ソウネ」

 

「こわっ!ホント怖いんだけど!(ボソッ」

 

「ねぇ?タカ兄大丈夫かな?大丈夫かな?(ボソッ」

 

-ガタッ

 

-ガタッ

 

「ヒィィィィィ!!!!きゅ、急に二人共立ち上がったんだけど何で!?(ボソッ」

 

「わ、わかんないよ!あたしもう逃げたいよ!渚なんて相変わらず目のハイライトが職務放棄してるし、理奈ちなんか前髪で目が隠れちゃってるし……!」

 

ウーン……どうしようカナ?

逃げられてモ嫌だしナー。

 

「ネェ……リナ…」

 

「何かしラ?」

 

「明日ハ私とリナの奢りって事にシナイ?」

 

「イイワネ、そうしましょウ」

 

「ちょっ……この二人何の話してるの!?声もめっちゃ低いし単調なんだけど!?(ボソッ」

 

「志保……取り合えず落ち着こう。今下手な事をしたらあたし達も危ない…(ボソッ」

 

「ネェ…志保、香菜」

 

「「はぃぃぃぃ!あたしですか!?」」

 

「志保も香菜もどうしタのかしラ?」

 

「「な、何でもないです!」」

 

「何でケイゴ?それよりネ、明日モそよ風でご飯にしようと思うんダけどどうかナ?」

 

「「え!?明日ですか!?」」

 

「エエ、貴サンも一緒ヨ」

 

「ちょっと貴も一緒って何で…?(ボソッ」

 

「これは本格的にヤバいね…明日もバイトって事にしとこうかな?(ボソッ」

 

「あ、それいいね。あたしもそうしよう(ボソッ」

 

「…………マサカとは思うのだけれド、無理なのかしラ?」

 

「エ?無理なノ?何デ?」

 

「「 無理じゃありません!大丈夫です!」」

 

「ソウ…(ニヤッ」

 

「ヨカッタァ…(ニタァ」

 

「これまずい…絶対まずいやつだよ…(ボソッ」

 

「こ、断れなかった…怖すぎる…タカ兄逃げて…!(ボソッ」

 

じゃあ、明日ハ私とリナと志保と香菜とセンパイと盛夏とナオかな?

 

「アラ?」

 

「ど、どうしたの?理奈…?」

 

「あ、ちゅ注文かな?あははは…」

 

「渚、ナオからLINEが来たワ。明日ハ澄香サンも来れるみたいヨ(ニヤッ」

 

「エ?澄香オネーチャンも?アハッ♪楽しみだネ(ニタァ」

 

「な、な、何で澄香さんも!?(ボソッ」

 

「渚に理奈ちに奈緒に澄香さんにタカ兄…?どうしよう明日は惨劇になる末路しか見えない…(ボソッ」

 

明日ハ澄香オネーチャンも一緒かぁ。

澄香オネーチャンともユックリお話シタイし、一緒にノむなんて初めてダもんナー。アハッ♪イマから楽しみ~♪

 

「フフ、フフフフフフ…」

 

「フフフフフフフフ…」

 

「「早く明日ニならないカナ(かしラ)?」」

 

「あ、明日なんて来なくていいよ…むしろあたしもその飲み会に行きたくないよ…(ボソッ」

 

「どうしよう…何か…何か手を考えないと…(ボソッ」

 

ン~?サッキから志保と香菜は何ヲぼそぼ……そ……と……?

ん?あれ?あれあれ?私どうしたんだろ?

 

「あれ?私……?」

 

「え?渚…?」

 

「あら?私どうしたのかしら?え?もしかしてあれくらいの量で酔った…?」

 

「り、理奈ち…?」

 

あれ?どうしたんだろ?

何か急に安心したっていうか…。

今すっごく気分がいい。

まるでフルマラソンを完走したような…。まぁ、フルマラソンなんて参加した事ないけど。

 

「何かしら?今すごくホッとしてるというか…。何て言えばいいかしら?

作詞作曲に悩んでたけど最高のフレーズとメロディが思いついて一気に一曲を作りきったみたいにスッキリしてるわ」

 

「渚…?ちょっと顔を見せて」

 

「え?どうしたの?志保」

 

急に私に顔を見せてだなんて…!

もう!志保ちゃんったら!渚ちゃん照れちゃうじゃん。

 

「良かったぁ…ハイライトが社畜してる…」

 

え?社畜?

 

「理奈ち!ちょっとあたしに顔を見せて!」

 

「え?香菜?な、何かしら急に…そ、その…恥ずかしいじゃない…」

 

「うん、綺麗なパッチリおめめが髪に隠れてない。理奈ちは目がすっごく可愛いんだし今の方がいいよ?」

 

「な、何を急に……!そ、その…あ、ありがと…」

 

ん?志保も香菜も急にどうしたの?

も、もしかして百合ですか!?そうなのね!?

 

「あ、そだ。ねぇ、理奈。

そういや先輩って奢られるの嫌いなんだったよ。たまに自分は奢ったりしてるくせにさ」

 

「そうなのね?それなら貴さんとは割勘でいいんじゃないかしら?盛夏の分は喜んでるみたいだし出してあげようかしらね。クス」

 

「え?何?もしかして貴と盛夏には奢ってでも明日来させようとしてたって事?(ボソッ」

 

「お前達絶対逃がさないぜ!って事だったのかな?(ボソッ」

 

それにしてもさっきのは何だったんだろ?まるで私じゃないみたいな?

あ、もしかしたらまた志保にモノローグを改変されちゃったのかな?

 

「あ、そういえば渚と志保はファントムに所属した後、メジャーデビューについてはどう考えているのかしら?」

 

「あ、私も仕事もあるしね。メジャーデビューは悩んでるかな?でもネットテレビとか?そんなのはやったみたいなぁって思うんだよね~」

 

「あ、普通に会話続くんだ?(ボソッ」

 

「志保、気にしたら負けだよ。いつもの事じゃん(ボソッ」

 

「そうだね……(ボソッ

あ、あたしもメジャーデビューはどっちでもって感じだよ。まだ学校もあるしさ」

 

「では、特に私達からはメジャーデビューに関して希望者はいないって事かしらね」

 

それに理奈のcharm symphonyの時の話もあるしなぁ。

もしメジャーデビューしちゃって私達がやりたい音楽をやれなくなっても意味ないしね。

 

私達の今後の方針。私達のやりたい事はあらかた決まった。

 

土曜日にSCARLETに訪問してどうなるか…。何かあったらその時に考えたらいい。

 

 

 

 

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「え?転勤…ですか?正直嫌なんですけど?」

 

「まぁ、転勤っていうより引き抜きだな。

うちも大きな会社とグループ提携を組む事になってな。向こう側さんが是非とも水瀬にうちでって事なんや」

 

「はぁ……。でも私は家を出たくないですし、関東なんて怖くて住めません」

 

「水瀬のお姉さんも関東で働いてるって言ってなかったか?」

 

「まぁ姉は関東にいますけど…」

 

「それにやっと『見習いちゃん』から卒業出来るチャンスだと思って。

ほら、これが向こう側さんが出して来た水瀬の優遇についての契約書や」

 

「いや、私もう2年以上勤めてますしね?

見習いどころか割と仕事出来る方だと自負してますんで…。

てか、名前が水瀬 来夢だからって『見習いちゃん』って呼ぶのいい加減止めません?」

 

「僕も水瀬は仕事の出来る方だと思ってるよ。だから向こう側さんも水瀬が欲しいんやろ。まぁ契約書見てみ。考え変わると思うで?」

 

「はぁ……。……………って、こ、これほんまなんですか!?きゅ、給料が今の倍以上なんですけど! ?」

 

「どや?行きたくなって来たやろ?

ほんまやったら僕が行きたいくらいやで」

 

「ちょ……ちょっと考えさせてもらいます…。両親とも相談したいですし」

 

「うん、よろしく頼むな」

 

「(一般社団法人SCARLET…か。聞いた事ない名前の音楽事務所やけど…。給料もええし考えちゃうな)」

 

 

 

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何かあっても私達なら最高のバンドになれると思うから…。


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