バンやろ外伝 -another gig-   作:高瀬あきと

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第31話 ライブやろうぜ!

「ああ…まさか理奈さんにお酌出来る日が来るなんて…」

 

「ありがとう美緒ちゃん。美緒ちゃんが成人した暁には私も美緒ちゃんにお酌させてもらうわね」

 

「そ、そんな…!なんと恐れ多い…!!う、嬉し過ぎて倒れてしまいそうです…。早く成人出来るように頑張ります!」

 

「え、ええ、頑張ってどうにかなる問題ではないのだけれど…」

 

美緒ちゃんは……理奈ちに戦乙女をお酌しながら嬉しそうに話している。

 

「え?私の家が経営してるマンション?」

 

「うん、叔母さんがそう言ってたよ~」

 

「渚の親父さんが経営してるマンションなぁ?今渚が住んでる所かな?」

 

「え?今の私の家ってうちが経営してるマンションだったんですか?だから家賃が引かれてなかったのか…」

 

「え?お前知らなかったの?」

 

渚は盛夏とタカ兄と仲良く話をしている。渚のマンションの事かな?

 

「あ、そういや江口もシフォンもinterludeとデュエルしたんだよね?」

 

「ん?おう。勝てなかったけどな。もぐもぐ」

 

「でも南国DEギグでのinterludeはヤバかったよね。フルメンバー同士でデュエルしてたら負けてたかも?もぐもぐ」

 

「ベースの子の名前とか聞いてたりする?」

 

「あ?何だっけ?ウグイスだっけ?」

 

「違うよ渉くん…ヒバリだよ。朱坂 雲雀って名前だったはずだよ」

 

「朱坂 雲雀………やっぱりひーちゃんなんだ…」

 

「ん?雨宮の知り合いなのか?」

 

志保は渉くんとシフォンと話をしている。interludeの事か…。

 

「奈緒ってArtemisの単独ライブには来てくれた事あるの?」

 

「いえ、単独は無かったと思います。当時はBREEZEしか見えてませんでして…あはは…」

 

「お前らArtemisって関東で単独やった事あったっけ?」

 

「え?なかったっけ?」

 

「何で当人のお前が覚えてねぇんだよ…」

 

英治先生は奈緒と澄香さんと話をしている…。

 

でも奈緒って何か上の空みたいな…?ん?美緒ちゃんを見てる?

理奈ちに可愛い妹を取られてジェラシーかな?

 

あたしの名前は雪村 香菜。

前回のラストに引き続き、あたしのモノローグからこの話は始まる。

 

てか、この飲み会いつまで続くの?もう3回目だよ?

 

今あたしはみんなの動向を見ていた訳だけど、今の所はとても平和だ。

あたしがこの中のどこかの会話に混ざるか否か。これであたしの運命が決まる。

 

理奈ち達に加わる?ここは美緒ちゃんが居るから安全牌だろう。

 

渚達に加わるとフリーダム盛夏が、志保達に加わると渉くんが暴走しかねない。そして英治先生達に加わるのは得策じゃない。英治先生はまどか姉と一緒で面白くなると感じたら堂々と場の空気を破壊する…。やはりここは理奈ち達か…。

 

「あ、そうだ。お姉ちゃんも日本酒にするならお酌してあげるよ?澄香さんもいかがですか?」

 

「あ、美緒、ありがとうね…私はまだビールでいいや」

 

「ではせっかくなので美緒様にお酌して頂きましょうかな?」

 

な、何ぃ!?美緒ちゃんが奈緒と澄香さんにターゲットを変更しただと!?

じゃ、じゃあ今理奈ちは!?

 

「そういや氷川さんは旅から戻って来たのか?」

 

「それが…母の話だと戻って来てはいるようだけれど、私はまだ会えていないのよ。LINEも電話もまだ着拒されているし…」

 

クッ…!英治先生と会話に入ったか…!

これはまずい…だったらタカ兄が犠牲になってくれる事を祈って渚達に…!

 

「そういや盛夏は秋アニメでこれだ!ってのある?」

 

「いくつかはあるよ~?でも取り合えず1話は全録するかなぁ?」

 

何ぃぃぃ!?渚は盛夏とヲタ話に突入!?まずい……今の放送中とか最近のだとある程度はわかるけど、秋予定のアニメはあたしにはわからない…!話に入れない…!た、タカ兄は今誰と…!?

 

「シフォン。やっと隣同士になれたな。酔ったらいつでも俺に寄り掛かって来てもいいからな」

 

「いや、ボクはソフトドリンクだし。酔うとかないよ?」

 

ダメだ。一番あかんやつだ…。

こうなったら志保か…。

 

「へぇ~…これがAiles Flammeの新曲のデモか。シフォンらしい選曲だね」

 

「だろ?俺もこの曲に合うパフォーマンスとか考えないとなぁ」

 

志保は渉くんとAiles Flammeの新曲の話!?イヤホンを片方ずつ着けて仲がおよろしい事ですね!

ってか、あたしのテーブルと志保達のテーブルには隙間があるし、あたしと志保との間には渚が居る…。遠すぎる…!

 

どうする……あたしはどうすれば…!!

 

「か、香菜?さっきからどうしたのかしら?何か悩み事?」

 

「お前本当にどうしたんだ?何か注文したいのか?」

 

理奈ちに英治先生?

クッ…ここはこの2人と会話しとくか。

あたしはパリピウェイウェイ勢だ。

会話の流れをコントロールしてみせる…!

 

「いや、何でもないよ。次は何飲もうかな?って思って」

 

「ハッ!?私とした事が失念していました……。香菜さんすみません。今からお酌させて頂きます!」

 

なっ!?美緒ちゃんが入ってきただと!?

 

「あ、ありがとう美緒ちゃん。でも、あたしは日本酒よりチューハイの方がね…。あははは」

 

「そういや酒ってひと口で言っても色々あるんだな?ビール、日本酒、カクテル、チューハイ、サワー、焼酎、ウイスキー、ワイン、マッコリ?マッコリって何だ?あのシティーハンターのやつか?」

 

渉くん!?そんな遠くからこっちの会話に!?新曲の話はどうなったの!?

マッコリってのは朝鮮の醸造酒の1つだよ!シティーハンターのはモッコ……あ、危ない危ない。花も恥じらう乙女の香菜さんが、はしたない事を言っちゃう所だった。

 

「そういやDivalって酒の趣味はバラバラだな。渚がビールで理奈が日本酒、香菜がチューハイだろ?志保が成人したらどうなんのか楽しみだな」

 

「あたし達Blaze Futureはみんなビールだよね~」

 

「あ、そういえばみんなビールだよね?奈緒とかカクテル少し飲んで『今日は酔っちゃった』とか言いそうな感じなのに」

 

「ふぇ?渚の中の私ってそんなイメージなの?」

 

何ぃぃぃ!?みんなでお酒談義に変わっただと!?だが、それがいい!

あたしがこの場を……支配する!

 

「そういえば英治先生はビールが多いですよね?でもトシ兄はカクテルが多いかな?」

 

「ん?ああ、そうだな。拓斗は焼酎が多いしな。Artemisはどうだっけか?」

 

「私はウイスキーで翔子がワイン。日奈子はサワーが多いかな。あの子はサワー頼んでフルーツを搾るのが好きだったみたいだけど…」

 

「梓お姉ちゃんは?」

 

「梓はビールかカクテルって感じ?何か交互に頼んでチャンポンしちゃうから、すぐ酔ってたけどね」

 

『すぐ酔ってたけどね』この台詞はまずい…!!英治先生の事だから『そんでいつも酔ってた梓をタカが介抱してたよな』とか言い出しかねない…!

 

そうなったら渚が『へぇー?先輩が梓お姉ちゃんを介抱していたんですか?セクハラですか?』とか、理奈ちが『それはどういう事かしら?まさか酔った梓さんを…』とか言い出しそうだ…!

あたしが会話の流れを変えないと…。(この間0.5秒)

 

「そういや梓はすぐ酔ってたもんな。そんでいつもタ……」

 

「へぇー!Artemisのみなさんもバラバラだったんですね!でもタカ兄も割りと色々飲んでない?よくウイスキーをロックで飲みながら『坊やだからさ』とか言ってんじゃん?」

 

「貴さんがシャアの真似を…?それは不愉快な話ね」

 

あ、理奈ちが食いつくんだ?渚狙いだったのに。

 

「へぇ~、にーちゃんそんな事やってんのか?今日もやってみてくれよ!」

 

「いや、言われてやるとか無理だから、あれは雰囲気が大事だからね」

 

「たか兄って所々にアニメや漫画のネタぶっこんでくるよね?日常生活の中で」

 

「そう?」

 

「叔母さんもそんな感じかな~?日常生活の中でアニメとかの台詞をいかに使うかに情熱をかけてるっていうか~」

 

「渚もそんな感じだよね?あたしもおかげで色々詳しくなったし」

 

「志保。こっちの世界に来るならいつでもウェルカムだよ。共に駆けよう。修羅の道を」

 

よし、まぁ予定とは違ったけど話題を変える事には成功したね。やるじゃん。さっすがあたし♪

 

「お姉ちゃんはヲタクだけどあんまりそういうのはないね?グッズ集めてるくらい?」

 

「ふぇ?何を言ってるの美緒は。お姉ちゃんヲタクじゃないよ?ただ、漫画やアニメやゲームをこよなく愛しているだけなの」

 

「私もアニメや漫画はよくわからないわね…」

 

「え?理奈って意外と色んなネタ知ってるじゃん?」

 

「嗜む程度よ」

 

よしよしよーし、こんな話なら平和に時は過ぎていくはず!あたしも美味しくお酒とご飯を楽しめるというものだ。

 

「あ、先輩。話は変わりますけどライブしたいです」

 

「ブフォ!!」

 

「うわ!?汚ねぇな香菜!?こっち向いて吹き出すなよ!」

 

「あれ?どうしたの香菜?」

 

「香菜?大丈夫?」

 

「ゲホッ…ゲホッ…え、英治先生すんません。渚も理奈ちもありがとう……大丈夫…」

 

何で!?何でなの渚!?

あんたの大好物のアニメや漫画の話じゃない!何でこのタイミングで話題を変えたの!?

 

「ん~……ライブなぁ…。確かにファントムギグまで長いし、近々ライブやりたいとは思ってたんだが……。ってか渚は何で俺に言うの?Divalで話し合った方がいいじゃん?」

 

「ほら、私達まだ主催ライブとかワンマンとかやる経験値が少ないですし」

 

「ああ、そうか…。渉達Ailes Flammeはどうなんだ?明後日のFABULOUS PERFUMEのゲストしか予定ない感じか?」

 

「ボク達も明後日のFABULOUS PERFUMEのゲスト参加くらいだね。でもライブもしたいよね~」

 

「ああ、そうだな。俺達も経験値が不足してるしな」

 

ま、まぁライブの話ならいっか。

これなら変な話になる事はないっしょ。

 

「ねぇねぇ貴ちゃ~ん」

 

「ん?どした盛夏?何か嫌な予感がするんだけど…」

 

「10月末にね?ハロウィンライブやらなぁい?」

 

「「「「ハロウィンライブ?」」」」

 

「みんなでコスプレしてライブやるの~。どうかな?」

 

ハロウィンライブか…。うん、楽しそう!

盛夏にしてはすっごくいいアイディアじゃん♪

 

「ぇぇぇぇぇ……俺もコスやんの?」

 

「志保!理奈!香菜!やるよ!ハロウィンライブ!!」

 

「お~いいなぁ。ねぇねぇ渉くん!」

 

「そうだな。なぁ、にーちゃん俺達もそれ出たい!ダメか?」

 

「はぁ…ハロウィンライブは決定なの?Blaze Futureも出るの?」

 

「ねぇねぇ貴ちゃ~んいいじゃ~ん。奈緒もいいよねぇ?」

 

「え?う、うん。いいと思うよ」

 

ん?奈緒?

いつもの奈緒ならライブってなると主旨はどうあれ喜びそうなのに…。

コスプレするのが恥ずかしいのかな?

 

「ほらほら貴ちゃ~ん!奈緒もやりたいって~!」

 

「いいじゃんいいじゃん!やろうよたか兄~!!」

 

「でも私もコスプレしてっていうのは少し恥ずかしいわね…」

 

「理奈って元がいいから可愛くなると思うんだけどなぁ~。ねぇ先輩、やりましょうよ」

 

「そうだな……まぁいいか。英治、10月末頃にやれそうな日あったら連絡してくれ」

 

「お?10月末だな?ちょっと待ってろよ。初音に言われてスマホにファントムのスケジュール入れるようにしたんだよ。俺って手帳とか持たない主義じゃん?

スマホでスケジュール確認とか俺かっこよくね?」

 

英治先生…。最近はスマホにスケジュールを入れるとか割とみんなしてますからね?そもそも手帳とか持ってなかった事に驚きですから…。

 

「あ、そのライブ私達も出ていいですか?コスプレは恥ずかしい気もしますが、そういう企画ライブにもこれから参加していきたいと思ってましたので」

 

あ、そっか麻衣ちゃんがgamutは学校の部活の行事って言ってたっけ。

だから、企画ライブとかはやった事ないのかな。

 

「あとそれと……少しお話が長くなってしまうのですが…土曜日にお願いしようと思ってたのですけど…」

 

美緒ちゃんの話は、美緒ちゃん達のバンドは、学校行事から離れファントムに所属するように決めたようだ。

その為、バンド名をGlitter Melodyと改め、今後活動していくらしい。

 

Glitter Melodyの主催で9月にデビューライブをファントムでやりたいとの事だった。

 

「まぁ曲はそれなりにあるのですが、出来ればお姉ちゃんのいるBlaze Futureにゲストとして参加して欲しいのですけど…」

 

「貴?どうですか?私も美緒にこのお話を聞いてて、美緒達の為にも出たいなぁって思ってるんですけど」

 

「ん?いいんじゃない?」

 

はやっ!タカ兄の決断早っ!

いつやるの?とか何曲やるの?とかないの!?

 

「お兄さん……ありがとうございます。では9月に……」

 

「美緒ちゃん。そのライブのゲスト枠はBlaze Futureが参加したら、もういっぱいになるのかしら?」

 

「あ、いえ。どれくらい時間取れるかとか、今まではライブハウスの出演料は学校が出してくれてましたので、おいくらくらい掛かるのかとか、わからない事だらけですので何とも……」

 

「そう……。もし良かったらなのだけれど、私達Divalも参加させてもらえないかしら?いいわよね?渚」

 

「え?うん!出た……」

 

「ぴぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

み、美緒ちゃん!?

美緒ちゃんはイス毎倒れそうになったけど、すんでの所で理奈ちが美緒ちゃんを倒れないように支えた。

 

「ふぅ……準備していて良かったわ…。危ない所だったわ…」

 

「ま、ま、ま、ま、まさか理奈さん達Divalの皆様にもゲスト参加して頂けるとは…!!」

 

「あははは。良かったね美緒!理奈も美緒が倒れないように支えてくれてありがとう~」

 

ん?あれ?奈緒ってさっきまで少し元気無さそうな感じしてたけど気のせいかな?理奈ちと美緒ちゃんが仲良くてジェラシーって訳じゃ無かったのか…。

 

「タカ。ハロウィンって言ったら10月31日だろ?当日が空いてるみたいだぜ?この日にしとくか?」

 

「お?まじで?みんな大丈夫か?その日にしちゃうか」

 

「「「「さんせ~い!」」」」

 

「ねぇ、タカ。その日Canoro Feliceも参加していい?ダメかな?」

 

「いいぞ?じゃあいっその事ファントムのグルチャで募集かけるか?ファントムギグの前にみんな集まったりしてな。………よし、募集してみた」

 

「そんで美緒ちゃんはいつくらいがいいんだ?9月だよな?」

 

「あ、そうですね。9月の土日で早ければ早い方が……翔子先生が9月は土日しか無理みたいですので」

 

「土日かぁ。なら1週目の土曜とかどうかな?」

 

「あ、あの……すごく聞きづらいんですけど、どれくらいの金額になりますか?」

 

「ああ、土曜なら…12時から22時の機材費とか込み込みで、2階のキャパ200人のホールだとこれくらいかな?地下の500人キャパのホールならこれくらいだ」

 

「……………こ、こんなに?あの…え?まじですか?ど…どうしよう……でも2階なら何とか……むぅ…」

 

「うちは安い方だぞ?………多分」

 

そっか。美緒ちゃんはあんまりその辺詳しくないんだね。こないだのBlaze FutureとDivalの対バンの時も実は大黒字なんだけどなぁ~…。

 

「美緒ちゃん美緒ちゃん、ちょっとこっち来てみ」

 

ん?タカ兄?どうしたんだろ?

 

「お兄さん?何ですか?」

 

「ちょっと耳貸して」

 

「ふぇ!?ま、まさか息を吹きかけてきたり、耳たぶを噛んだりしてくるつもりですか!?お姉ちゃん助けて……!」

 

「…………え?あ、うん。美緒大丈夫?」

 

「お姉ちゃん!?それだけ!?」

 

奈緒?ん?どうしたんだろ?

って、それどころじゃない!!

渚と理奈ちが危ない…!!いや、危ないのはあたしと志保の身の安全だけど…!!

 

「違うから。そんな事しないから。

こないだのBlaze FutureとDivalの収益を教えてあげるから、ちょっと耳貸して」

 

「は、はぁ…」

 

そう言って美緒ちゃんはタカ兄に近付いて、タカ兄は美緒ちゃんの耳許で何かを教えているようだった。

 

タカ兄が予め何を話すのか言ってくれたから、渚も理奈ちもヤミモードにはならなかった。良かったぁ…。

 

「あたし達は貴から収益を貰ったから、どれくらいの儲けが出たかわかってるもんね」

 

「志保……その…間違ってはいないのだけれど、その儲けって言い方は…」

 

「え!?雨宮達ってこないだのライブで儲かったのか?」

 

「うん。一応ね」

 

「ふぇ!?ふぁ!?そ、そんなにですか!?まじですかガチですか!?」

 

「まぁ、あの日は2階のホールだったし、盛夏と香菜が友達をいっぱい誘ってくれたのもあるし、元charm symphonyの理奈目当てとかのお客様もいて、90人くらい来てくれたからな」

 

「あわわわわわ……。そ、そんな大金が……動くとは……お、お姉ちゃん助けて…!」

 

「まぁ、もちろんお客様が入らなかったら赤字にはなるし、そこら辺も考えてチケット代を考えたり、ゲストバンドにもお金を徴収するなり考えんとな」

 

「な、なるほど…わ、わかりました。ありがとうございます…ですが、ゲストバンドからはお金は取りたくないです。私達のデビューライブみたいなものですから…」

 

「そっか……」

 

タカ兄もさすがライブやり馴れてるだけあって頼りになるよね。こないだの対バンの時は、誰も友達呼んでなかったけど。

 

「あ、美緒ちゃん、もし良かったらだけどな。オープニングアクトを綾乃達にやらせてくれるなら10%OFFにさせてもらうけどどうかな?」

 

「オープニングアクトですか?いっその事ゲストとかの方がよくないですか?」

 

「いや、綾乃達はまだ曲が無いからな。1曲だけ、どこかのバンドのオープニングアクトをやらせて欲しいみたいでな。それにせっかくのGlitter Melodyの主催ライブだろ?Blaze FutureとDivalも出るんだし、これ以上参加バンド増やすのは時間的にもさ」

 

「1曲だけ…?」

 

「ああ、8月中に1曲は完成させるからって言って来ててよ」

 

「美緒ちゃん、いいんじゃない?ボク達Ailes Flammeもevokeにオープニングアクトやらせてもらったし。きっと綾乃姉もライブの感じを掴みたいんだと思う」

 

綾乃姉達のバンドの曲かぁ~。あたしも楽しみだな。綾乃姉のドラムはあたし達の中じゃ一番英治先生のリズムに近いし。

 

「考えてやってもいいんじゃねぇか?10%OFFって意外とでかいぞ?」

 

「いえ、綾乃さん達が良ければ是非って思ってますが、オープニングアクトでいいのかな?と思ってるだけで…」

 

「本人達がいいって言ってるからいいんじゃねぇか?綾乃には美緒ちゃんがオッケーって日にちの連絡しても大丈夫かな?」

 

「はい。ありがとうございます。私もバンドメンバーに連絡入れておきます」

 

おお~♪いい感じだね!

9月がライブのゲストで10月にはハロウィンライブ!一気にライブが2回も決まったよぉ~。すっごい楽しみになってきた!

 

「ん~……んん~…」

 

「どうしたんだにーちゃん?」

 

「いや、奈緒と盛夏とまどかに曲作るよう宿題出してたんだけどな。いつ発表すっかな?って思ってな」

 

「ふっふっふ~。実はあたしは既に完成しているのだよ~」

 

「え?盛夏?マジですか?私は歌詞は出来たんですけど曲の方が…」

 

「お?歌詞は出来たのか?曲なら俺が手伝ってもいいぞ?今度どっかでミーティングすっか?」

 

「………いえ、美緒も作曲してますし、私もせっかく貴のギターを託してもらいましたから…貴の力を借りずにやってみます」

 

「え?あ、うん……。いつもなら『何ですかぁ?二人っきりで作曲しようとか言って、曲より子供を作ろうとか言って押し倒してくるつもりでしたかぁ?まじきもいですぅ』とか言ってくるのにどうしたんだ?」

 

「……は?私そんな事言いませんし、そんな喋り方じゃありませんし」

 

うん。確かにさっきのタカ兄みたいなキモい喋り方はしないけど、いつもならあんな感じの事は言ってるのに…。

 

「私達も新曲を作りたいわね。美緒ちゃんのデビューライブにもハロウィンライブにも」

 

「そうだね。ハロウィンライブではハロウィンっぽい曲!美緒ちゃん達のライブではかっこいい暴れ曲がいいね!」

 

ハロウィンっぽい曲かぁ。確かに楽しそう!

 

「ほら貴。理奈もそう言ってますし、私の曲より美緒達のライブの曲とハロウィンライブ用の新曲をお願いします♪」

 

「ああ……そうだな」

 

「お、タカ。ちょうどいい事にみんなからハロウィンライブの返事来たぞ」

 

「お?参加バンドは居たか?」

 

「ん、ちょっと待ってくれな。え………っと、Canoro Feliceは参加希望だが、他のバンドはその日は無理っぽいな」

 

「えー!FABULOUS PERFUMEは無理なのぉ?」

 

「なぁにシフォン?もしかしてイオリとライブやりたかった?」

 

「ち、ちがっ!そうじゃないもん!」

 

あはははは。遊太は可愛いなぁ。昔から栞と一緒だもんね。

 

「ならハロウィンライブは5組か…平日だし時間も考えねぇとな」

 

「そうね。高校生組と社会人組はあまり遅くなってもね」

 

「社会人組はその気になれば有給あるけどね。先輩…………ありますよね?」

 

「ああ、一応あるから心配すんな。え?有給取るの?」

 

「まぁ、ハロウィンの事は俺とタカで話し合っとくからよ。渉くんとシフォンは明後日のFABULOUS PERFUMEのライブの事、他のみんなは9月のGlitter Melodyのライブの事を考えてな」

 

「「「「はい!」」」」

 

くぅ~!これだよこれだよ~!

やっぱりあたし達はバンドマンだもんね!

何よ血の惨劇とかしばかれるとかって!

こういう話!こういう話がいいんだよ。テンション上がるぅぅ♪

 

「俺達も9月にもライブやりたいよな!」

 

「うん。そうだね!たか兄!ボク達も9月にライブやりたい!」

 

「あ?だから何で俺に言うの?」

 

「だったら俺達と出るか?」

 

「「「「拓斗さん!?」」」」

 

「何だよお前達もライブ予定あんのか?」

 

「いや、何も決まってねぇけどな。英治、ファントムの空いてる日あるか?」

 

「あ?まぁ、まだ全然空いてるけどな。うちでやんのか?」

 

「ああ、明日香はライブってのやった事ねぇしな。楽しい音楽ってやつを教えてやりてぇし…………あ、このカルピスサワーは誰の注文だ?」

 

「拓斗にーちゃんいいのか?俺達も出してくれんのか?」

 

「まぁ、出演料は貰うけどな。拓実の演奏も近くで観たいしよ」

 

「うん!じゃあボク達も出して欲しい!」

 

渉くん達Ailes Flammeも9月にLazy Windとライブかぁ~。これから楽しみいっぱいだね。

 

「拓斗さんのライブかぁ~。ねぇ貴。私達も出ませんか?拓斗さんのライブ」

 

「あ?9月に2回もライブやんの?出来なくはないけど…どうすっかな?」

 

「日程にもよるんじゃないかなぁ~?」

 

「美緒達のライブ出演はふたつ返事でオッケーしたのに、拓斗さん達だと悩んじゃうんですか……」

 

「え?奈緒?どしたの?」

 

奈緒?

 

「いえ、拓斗さん。ライブの予定はいつくらいって考えてるんですか?」

 

「ああ、まだ帰ってからみんなと話し合ってからだな。英治、後で空いてる日の連絡くれよ」

 

「おお、わかった」

 

「あ、そんでそろそろラストオーダーだけどどうする?晴香がお友達価格で追加1時間500円だってよ」

 

「いや、俺らは明日も仕事あんしな。そろそろ……」

 

「「「「追加で!」」」」

 

「お前らまだ飲むの?」

 

そう言って拓斗さんは厨房に戻って行ったけど……。奈緒はどうしちゃったんだろう?いつもならあんな事言わないのに…。

 

「香菜。そろそろ席替えしたらどうかしら?せっかく時間も追加したわけだしね」

 

理奈ち?理奈ちが席替えを提案するなんて珍しいね。

そう思って理奈ちの視線を追うと奈緒の方を見ていた。そっか。理奈ちも奈緒が変って思ってるんだ…。

 

「じゃあ席替えしちゃおっか。タカ兄の膝の上もそのままでね。次は誰がタカ兄の膝の上に座れるかなぁ?」

 

本当は『タカ兄の膝の上は無しね!』って提案した方がいいとは思ったけど、美緒ちゃんが2回も引いた訳だし、今回は無しってするのは不自然に思ってそのままにした。

 

美緒ちゃんが3回も引くとは思えないし、もし運良く奈緒が引いたら、奈緒の対応や態度で何かわかるかもしれないし。

素直に奈緒がタカ兄の膝の上に座ったらあたしと志保の身に危険が及ぶけど…。

 

そして3回目のくじが引かれ……、

タカ兄の膝の上に座ったのは……

 

 

 

英治先生だった。

 

 

 

何で!?しかも何で英治先生も素直に座ってるんですか!?

 

「いや~、くじを引いた時は気持ち悪いなぁって思ったけど、美緒ちゃんの言う通りだな。意外と座り心地いいな。こりゃクセになりそうだぜ」

 

「あの?降りて下さいませんかね?俺は普通に気持ち悪いんだが…」

 

「どうしても降ろしたかったら美緒ちゃんの時のように…」

 

「ああ、はいはい…」

 

そう言ってタカ兄は英治先生を抱っこして1番の席まで運んで行った。

意外と力持ちだねタカ兄。

 

そして今回の席はこのように決まった。

 

奥側の席左から、英治先生、美緒ちゃん、奈緒、タカ兄、澄香さん、志保。

 

手前側の席左から、盛夏、渚、渉くん、シフォン、理奈ち、あたし。

 

あたしはまた理奈ちの隣を引いてしまった。きっと愛の力だよね?しばかれる為の捌け口じゃないよね?

 

「奈緒が貴さんの隣……か。あの二人を近くに出来て良かったわ」

 

「うん、そうだね。やっぱり理奈ちも奈緒の様子がおかしいと思ってたんだ?」

 

「ええ。少しね…」

 

やっぱり理奈ちも奈緒の様子を……。

でもね理奈ち。何で理奈ちの右手はあたしの左手首を掴んでるの?

目論み通りにいったんだよね?え?何で?あ、百合?百合なのね?もう!理奈ちったら!

 

誰か助けて…!

 

「お待たせしましたー」

 

拓斗さんがそう言って、あたし達のドリンクと何故か大量の食事を運んで来てくれた。え?まだあの量を食べるの?

 

色んな不安を抱えたまま、飲み会は後半戦へと突入した。

 

 

 

-----------------------------------

 

 

 

「なぁ、奈緒。さっきの話だけどな…」

 

「さっきの話?何の事ですか?」

 

「いや、拓斗のライブの事だけど…」

 

「その事ですか?どうしました?」

 

「俺はボーカルだから、まぁ大丈夫だけど、奈緒もギター初心者だし同じセトリってのも……ってのがあったからであって…」

 

「私がギター下手くそだからですか?なるほどそういう事ですか」

 

「あ?いや、そういう訳じゃ無くてだな」

 

「じゃあどういう訳ですか?私の『せい』ですよね?」

 

「………いや、もういいわ」

 

やってしまった…。最低だ私は…。

 

私の名前は佐倉 奈緒。

 

貴が言いたい事はわかっています。

ただでさえギター初心者の私が短期間の間に何曲も練習を…ライブで出来る程のクオリティで演奏出来る訳がない。

よっぽど……死ぬ気で練習しないと…。

 

仕事も毎日普通にあって、ライブも控えている。私の曲も完成させなくてはいけません。

 

貴は私の事を心配してくれている。それはよくわかっています。

だから……貴にそう思われない為に、嫌な女になろうとしてる…。

 

 

『ふんふん。そっかそっかぁ~。これは美緒の初恋かにゃ?』

 

『ま…麻衣…本気で怒るよ…?』

 

『あははは。美緒カッワイ~』

 

『そんなんじゃないから…本当に…もう…』

 

 

南国DEギグの日。私は美緒と麻衣ちゃんの会話を聞いてしまいました。

今日まで考えないようにしてたけど、貴の膝の上に座った美緒を見て…貴の膝の上の権利を取れた時に喜んでいたのを見て、美緒は本当に貴の事を……。

そう思いました。

 

私は美緒のお姉ちゃんなんだから、今まで美緒の事を見てきたんだからわかってたはずです。

美緒は男性嫌いで、中学から女子校に通うようにまでしていたのに、貴への懐きようはおかしいもんね。

 

私は貴に恋をしている訳じゃない。そのはずです。

子供の頃にBREEZEのTAKAに恋をしていた。ただそれだけの昔の話です。私の『初恋』を大切にしているだけ。

 

だから私はお姉ちゃんとして、美緒の初恋を応援しなければいけません。

 

「奈緒……やっぱりおかしいわね」

 

「うん…あんな事言う子じゃないもんね」

 

だから…。

 

本当に…ごめんなさい…。

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