バンやろ外伝 -another gig-   作:高瀬あきと

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第36話 SCARLETへの訪問

俺の名前は中原 英治。

俺は今、ファントムのバンドのメンバーと、SCARLETへと向かっている。

 

これからライブハウス兼お洒落カフェ『ファントム』は、ライブハウス兼お洒落カフェ兼音楽事務所『ファントム』となる。

まぁ、それも初音と三咲がSCARLETと話し合いをしてから本決まりという事だけどな。

 

俺がファントムの経営者のはずなんだがな…。

 

 

Ailes Flammeから

江口 渉くん、秦野 亮くん、内山 拓実くん、井上 遊太(シフォン)。

 

Blaze Futureから

葉川 貴、佐倉 奈緒ちゃん、蓮見 盛夏ちゃん、柚木 まどか。

保護者として盛夏ちゃんの母親、蓮見 聖羅。

 

Canoro Feliceから

一瀬 春太くん、夏野 結衣ちゃん、秋月 姫咲ちゃん、松岡 冬馬くん。

保護者として姫咲ちゃんの付き人、瀬羽 澄香。

 

Divalから

水瀬 渚ちゃん、雨宮 志保、氷川 理奈、雪村 香菜。

 

evokeから

豊永 奏くん、折原 結弦くん、日高 響くん、河野 鳴海くん。

保護者として鳴海くんの妹、河野 紗智ちゃん。

 

Noble Fateから

大西 花音ちゃん、木南 真希ちゃん、東山 達也、北条 綾乃。

 

FABULOUS PERFUMEから

小暮 沙織(シグレ)、明智 弘美(チヒロ)、茅野 双葉(ナギ)、小松 栞(イオリ)

 

Glitter Melodyから

佐倉 美緒ちゃん、永田 睦月ちゃん、松原 恵美ちゃん、藤川 麻衣ちゃん。

保護者として学校の顧問である神原 翔子。

 

Lazy Windから

宮野 拓斗、御堂 架純ちゃん、三浦 聡美ちゃん、観月 明日香ちゃん。

保護者として拓斗の妹、東山 晴香。何でこいつ来てんの?

 

そしてライブハウス『ファントム』から

俺、中原 三咲、中原 初音。

何故か保護者として親友の佐藤 トシキ。

 

総勢45人がSCARLETへと訪問する。

てか、多すぎじゃね?こんな人数で訪問していいの?迷惑じゃねぇかな……。

 

俺は今とても不安でしょうがないです。

 

 

 

「なぁ?なんでさっちも来てんだ?」

 

「おい、渉。お前いつから河野の事さっちって呼ぶようになったんだ?」

 

「は、秦野くん!これは江口くんが勝手に呼んで来てるだけだからね!別に仲良いわけじゃないから!」

 

「お前ら。俺の紗智と気安く話してんじゃねぇよ」

 

「この人が紗智のお兄さん?似てないね」

 

 

 

「何でお母さんまで来てるの~?」

 

「私は盛夏のお母さんよ?これからの事をしっかり聞いてなくちゃ。それより拓斗。あんた盛夏にあいつの事話したんだってね?何してんのよ!」

 

「あ?だからお前俺に会った途端に蹴って来たの?お前も俺の事嫌ってたのかと思ったぜ」

 

「聖羅さんもお久しぶりですよね。拓斗さんも義姉さんのお店で働くようなったって本当ですか?」

 

「蓮見さんのお母さんって事はめちゃ年上やろ?何でそんなに見た目若いん?蓮見さんと姉妹って言われても信じそうやし……」

 

 

 

「あれ?睦月ちゃんって今日はバイトじゃなかったっけ?」

 

「うん。店長に人生で3回くるチャンスのうちの1回目が来たから休みたいって言ったら休みくれた」

 

「春くんはむっちゃんと同じバイトなのかな?私もバイトしないとなぁ~」

 

「あれ?もしかしてユイユイちゃんもバイト探してんの?うちの店って昼の営業も考えてるし、うちでバイトする?」

 

「結衣さんも夏に僕らと海の家とかウェイターの仕事してましたし、居酒屋とかもいいかも知れませんね」

 

 

 

「翔子お姉ちゃんも本当に久しぶり…。こんな近くに居たんだね…」

 

「あたしもまさかなっちゃんがバンドやってるなんて知らなかった。澄香もこっちに居たなら居るって言ってくれてたらさ…」

 

「ごめんね翔子。でも翔子も学校の先生やってるとか聞いてなかったし。てか、翔子が何を教えてるの?音楽と体育以外全然あかんかったやん?」

 

「神原先生は数学の先生ですよ。いつも丁寧な授業でわかりやすいです」

 

「あはは、翔子ちゃんが数学教えてるんだ?翔子ちゃんは優しかったからね。恵美ちゃん達もいい先生に巡り会えたんだね」

 

 

 

「栞ちゃん達は今日は男装してないんだね。ボクもシフォンじゃなくて遊太で来たら良かったかなぁ?」

 

「本当はボク達もちゃんと男装しようかと思ってたんだけど、双葉が病院だったから時間無かったしね」

 

「シフォンはシフォンで来た方が良かったでしょ?遊太だと大事な話の時に発言出来なかったら大変だし」

 

「まどか姉……そうハッキリと遊太の前で言うのはさ…」

 

「香菜。まどかはいつもこうじゃない。それに私も遊くんはシフォンちゃんの方がいいと思うよ?可愛いし」

 

 

 

「あ~、そうなのか。架純ちゃんがあの病院で俺を見掛けたのか」

 

「はい。ごめんなさい…。私も喉が悪くて病院に行っていたので…」

 

「タカの手術した病院はあそこだけど、診察してもらったのは別の病院じゃなかったっけ?ね?お父さん」

 

「そうだな。お前最初に喉を見てもらった先生を架純ちゃんに紹介してやったらどうだ?」

 

「葉川さん達のBREEZEが解散した理由って喉が原因だったんですか?知りませんでした…俺も同じボーカルとして喉を鍛えなくてはな…」

 

 

 

「では理奈さんも美緒さんも、あの日以来ベースの声は聞こえてませんの?」

 

「ええ、毎日ベースは弾いているのだけれど、あの日以降は声が聞こえた事はないわね」

 

「私もです。あの時は確かに『一緒に歌おう』って聞こえた気がしたんですけど…」

 

「irisシリーズのベースかぁ。モンブラン栗田の名前くらいは知ってるけど、どんなベースなんだろ?僕も南国行けば良かった…」

 

「私は美緒に聴かせてもらいましたけど、他のベースよりも音はいいなって印象でしたよ」

 

 

 

「あ?テメェ、雨宮 大志から貰ったギターでまだ弾いてやがらねぇのか」

 

「お母さんが使ってたってギターだけど、あたしにはちょっと軽すぎてさ…」

 

「音はどうなの?Divalの曲には合いそうな感じなのかな?」

 

「茅野も雨宮のギター見てやったらどうだ?でもギターなら明智さんの方がわかるかな?」

 

「あたしはあんまり楽器には詳しくないからね。バンドやり始めた時も双葉と葉川さんに教えてもらいながらだったし」

 

 

 

「へぇ、佐倉さんって作詞も作曲もしてるんですか?Blaze Futureの曲は葉川が作るんだと思ってたんだけど」

 

「いえ、曲はまだなんですよ。なかなか難しくて……」

 

「タカくんも相変わらず無茶振りするなぁ~。中学の頃から全然変わってないね。まぁ、超ネガティブにはなったけど」

 

「へぇ、三咲さんってタカさんと中学の頃から一緒なんですか?」

 

「私はそれよりネガティブじゃない葉川くんが想像出来ないよ」

 

 

 

俺達はある程度のグループに分かれて話をしながら歩いていた。

 

ほどなくして、手塚から貰った名刺に書いてあるSCARLETの住所に着いたんだが……。

 

「ねぇお父さん……本当にここ?」

 

「おい英治、テメェ間違えてんじゃねぇだろうな?」

 

「ねぇ、ここM&Sソフトって書いてありますよ?」

 

《ざわざわ》

 

俺達の眼前にはびっくりするような大きなビルが建っていた。

 

え~……梓じゃあるまいし、俺が迷子になるとかねぇんだけどなぁ…。地図もちゃんとあるし…。

 

「大丈夫英治。ここで合ってるよ。早く入ろうよ」

 

ん?翔子?

そう言って翔子が先陣を切って、ビル内に入って行った。

 

「おい、あいつ大丈夫か?いきなり入って行ったぞ?」

 

「お兄さん、大丈夫ですよ。翔子先生はSCARLETと交流あったみたいですし、来た事があるんだと思います」

 

「うん。きっと大丈夫。ヤバかったら翔子ちゃんを置いて逃げよう」

 

そう言って美緒ちゃんと睦月ちゃんも入って行った。

 

しょうがない。俺達も入るか……。

 

 

 

俺達がビル内に入ると、そこには大きなエントランスが広がっていた。

 

「ま、まじですか?こ、こんなエントランスってドラマでしか観た事ないんですけど…」

 

「あ、あたし達って私服で来て良かったの?スーツで来るべきだった?」

 

みんなびっくりしているな。俺もびっくりしてるもん。

手塚さんめ…こんなデケェ会社なら最初に言っておけよ…。

 

「みなさんどうしてそんなに驚いているのでしょうか?」

 

「さぁ?何も変な所はないと思うのですが…」

 

ああ、例外がいたか。姫咲ちゃんと澄香は一般人の感覚じゃねぇわな…。

 

「英治。こっちだって。取り合えず手塚が来るまで8階の会議室で待っててくれってさ」

 

どうやら翔子が受付に問い合わせてくれたようだ。

さすがに45人も一度にエレベーターには乗れないから、俺達は数回に分かれて8階の会議室へと向かった。

 

 

 

 

《ざわざわ…》

 

俺達は会議室に通されてからも緊張は続いていた。

 

「マ、マイミーの巨大ポスター…ハァハァ」

 

「貴、見て下さい!こっちには京太くんの巨大ポスターがっ!」

 

「お、お姉ちゃん…恥ずかしいから止めてよ…」

 

「ね、ねぇねぇ、このポスター写真撮って大丈夫かな?ねぇ?」

 

「ちょっと渚…落ち着いて…」

 

「お~!バンやり以外にも色んなゲーム作ってるんだぁ。あ、これ叔母さんに送ってあげたら喜ぶかも~」

 

「盛夏。それ盛夏の推しキャラじゃない。梓をダミーに使うのはよしなさい」

 

「あ、綾乃。よかったら良かったらこの角度であたしの写真撮ってくれないかな?」

 

「後ろのポスターとツーショットになるような感じで?」

 

「ねぇ双葉。今度このゲームの衣装作ろうよ」

 

「いいね。冬はこのキャラの衣装でいこっか」

 

一部の人間を除いては……。

 

 

 

「しかし、手塚のやつ来るの遅いな…」

 

「色々忙しいんちゃう?こんな大きな会社やし」

 

-コンコン

 

ん?ノック?

部屋の入口がノックされた後、手塚さんが入って来た。

 

「よく来たなファントム。俺が元クリムゾンエンターテイメントの大幹部の手塚 智史だ。しかしまぁ本当に全員で来るとはな」

 

そして手塚さんは俺達全員の顔を見てから、こう言った。

 

「本来なら全員社長室でって思ってたんだけどな。まぁ、こんな人数はさすがに入らないから、社長にここまで来てもらった。本当に悪いとは思うんだが、拍手で出迎えてやってくれるか?」

 

は?拍手だぁ?まぁ、別にそんくらいなら構わないが社長って何者なんだ?

手塚さんの口振りだと俺が知ってる奴みたいだったが……。

 

「では!うちの社長の登場です!皆様拍手でお迎え下さい!!

………チッ、何で俺がこんな事を(ボソッ」

 

 

パチパチパチパチパチパチパチパチ……

 

 

俺達が拍手を始めると部屋のライトが消され、どこからともなく謎のBGMが流れて来た。

 

部屋の入口にスポットライトが当てられ、少ししてからそこに入って来た人物は……

 

 

「皆の者!よくぞここまで来た!天晴れである!!」

 

 

どうやら俺は部屋の暗さとBGMが心地好くて眠ってしまったらしい。

これはきっと悪い夢だ…。

 

「おい、俺は幻覚を見てんのか?昔見た事あるちびっ子が見えてんだけど?」

 

「ああ、俺もどうやらクリムゾンとの長い戦いのせいで、頭がいかれちまったみたいだ。変なちびっ子の幻覚が見える」

 

「はーちゃんも宮ちゃんも……あの子は日奈子ちゃんだよ。俺にも見えてるし多分これ現実だよ。それよりあの乗ってる乗り物ってフリーザが乗ってたやつじゃない?あれってリアルで見るの初めてなんだけど…」

 

「何で日奈子がSCARLETに…?え?これってドッキリ?」

 

「え?澄香は知らなかったのか?SCARLETのボスは日奈子だよ?」

 

マジか!?日奈子がSCARLETのボス!?

これって夢でも幻覚でもないの!?

 

SCARLETの社長として部屋に入って来た人物はArtemisのドラマー、月野 日奈子(つきの ひなこ)だった。

 

「日奈子お姉ちゃん…?」

 

「え?この人ってArtemisの日奈子さんなの?」

 

《ざわざわ…》

 

「みんなお久しぶりだね!元気してた?」

 

「………よし、帰るか」

 

「ああ、俺も帰って寝るかな。昨日もバイトだったし」

 

「しかし困ったな。これでファントムが音楽事務所になるって話も無くなっちまったか…」

 

《え?》

 

「むー!タカちゃんも拓斗ちゃんも英治ちゃんも何それ!ぷんすこだよぷんすこ!」

 

「お嬢様、私達も帰りましょう。今回の話は残念です」

 

「え?澄香さん?」

 

「澄香ちゃんまでどういう事~~!」

 

「あの…どういう事かしら?日奈子さんってそんなに……?」

 

「え?私もわかんないけど…」

 

まじか…てか、こいつに会社なんか経営出来んのか?

 

「まぁ、それはさておき」

 

「いや置くなよ。てか、なんでお前が社長なんかやってんの?」

 

「え?変?」

 

「あたしも最初に日奈子から連絡もらった時はびっくりしたもん。そりゃタカ達もびっくりするっしょ」

 

そうか…だから手塚さんもこないだボスの正体を明かさなかったんだな…。

 

「え?本当に帰るの?」「でもたぁくんもたっくんも帰ろうとしてるよ?」「澄香さん?本当に帰るのですか?」

 

《ざわざわ》

 

まぁ日奈子の企画って無茶が多かったし何度か死にかけたからなぁ。

タカとトシキと拓斗と俺だけが…。

 

「タカちゃんほんとに帰るの?(ウルッ」

 

「あ?そ、そんな風に言われると……ぐぐ……」

 

「タカちゃん………これ。バンやりのマイミーちゃんの原画。欲しくない?」

 

「日奈子様、どうぞ私の事は犬と呼んでください」

 

相変わらず安いなぁこいつは…。

 

「せ、先輩だけズルい!」

 

「黙れ。日奈子様の御前たるぞ?頭が高いわ」

 

「大丈夫大丈夫~。なっちゃんの分もちゃんとあげるから~」

 

「日奈子お姉ちゃん(トゥンク」

 

何で渚ちゃんはときめいてんの?

 

「んで?日奈子。マジでお前がSCARLETのボスなのか?」

 

「そだよ。話せば長くなるんだけどね。

あたしはクリムゾンから自由な音楽を取り戻す為にね。資金集めに色々時間掛かっちゃったけど…」

 

「そか。お前も頑張ってたんだな」

 

「た、タカちゃん……あた、頭!何であたしの頭撫でてんの!?」

 

「あ、悪い。ちびっ子過ぎて子供扱いしちゃったわ」

 

日奈子って初音と身長もそんな変わらねぇしな…。その気になりゃ小学生でも通りそうだ。こいつ何で15年前から成長してないの?

 

「殺られる…タカちゃんに頭撫でられたとか梓ちゃんに知られてしもたら、うちの命殺(たまと)られてまうで……ガタガタブルブル」

 

「タカもボスもしょーもねーコントしてんじゃねぇよ。俺も仕事が残ってんだ。さっさと話しちまおうぜ」

 

「チッ、手塚のくせに偉そうだな」

 

「そうなんだよ。手塚のくせにいつも偉そうなんだよ。ほんと嫌な部下なんだよね。ぷんぷん」

 

そういや日奈子って手塚さんの事嫌いだったよな?何で一緒に居るんだ?

 

「ねぇタカ。みんな置いてけぼりになってるからさ。さっさと話やっちゃおうよ」

 

翔子に正論を言われるのも15年前じゃ考えられねぇな。時の流れって本当に恐ろしいな。

 

「しょうがない。タカちゃんとのコントは梓ちゃんが帰って来てからにするか。

さて、ファントムの皆様。改めまして弊社までよくぞお越し下さいました。天晴れである」

 

俺も取り合えず日奈子の話を聞くか。

 

「せっかくこうしてみんなに来てもらいましたので、手っ取り早くお話を進めさせて頂きたいと思います。手塚」

 

「ああ、はいはい。まずうちの社員を2人紹介させてもらう。おい、入れ」

 

手塚さんがドアの外に声を掛け、2人の女性社員が入って来た。

 

「手塚。入れとはまた偉そうだな。パワハラとして、然るべき所に訴えさせてもらう」

 

「え?あのねーちゃんは?」「渉の知り合いなのか?」「あの人はinterludeから俺達を助けてくれた…」「綺麗な人だなぁ」「え!?トシキさん!?」

 

このお姉ちゃんが北のグループのみんなをinterludeから助けてくれたって子か。

確かに綺麗なんだが、何だかどっかで会ったような感じがするな……。

 

続いて2人目が入って来た。

 

「あ、あはははは。お姉ちゃんやっほ~…」

 

「来夢!?何でここに!?」「は?何で来夢ちゃんがここにいんの?」「へ?貴って来夢ちゃんの事知ってるんですか?」「来夢ちゃんって誰?」「渚の妹よ」

 

渚ちゃんの妹?何でSCARLETに居るんだ?渚ちゃんもタカも知らなかったみたいな感じだな…。

 

「さぁ、2人共自己紹介をしてやれ」

 

「手塚…。私の個人情報をこんな大勢の前で発表しろとは……セクハラだな?」

 

この子は手塚さんが嫌いなのか…?

 

「まぁいいだろう。私はSCARLETで唯一のバンドでボーカルをやらせてもらっている、風音 有希(かざね ゆき)だ。

『有希』とは『有る』に『希望』と書く訳だが、希望なんて無いのに有希って名前とか超ウケる」

 

「希望がないの?」「なんか未来みたいな自己紹介だな」「未来お姉ちゃんの自己紹介って何ですか!?」「SCARLETで唯一のバンド?」

 

「えっと……恥ずかしいな…。私はDivalの水瀬 渚の妹で、水瀬 来夢といいます。んと、関西からこっちに異動となりました。今日は顔見せで月曜から仕事のはずでしたが、何故か今日から働く事になりました。よろしくお願いいたします」

 

「来夢が異動?」「ねーちゃんの妹さんなのか」「あんまり似てないね」「いきなり今日からとか…」

 

「まぁ、そんな訳でな。

うちの社長、日奈子から契約やこれからの仕事の話。そして風音からはクリムゾンとSCARLETとの話。この2つはお前ら各々のバンドから1名以上は聞いてもらいたい。

あ~、そんでBREEZEとArtemisだった連中は風音の話を聞いてくれ。英治もな。日奈子との契約の話は三咲でいいだろ」

 

「まぁ俺も契約とかよりクリムゾンとかの話のがいいか」「お父さん私も日奈子さんの話聞いてくる」「バンドから1名ずつか…」「他のメンバーは?どうなるの?」「取り合えず話し合う?」

 

「あ~、待て待て。そんでな。他のメンバーに関してだが、これからのクリムゾンとの戦いにはチューナーって存在が必要になる。SCARLETにはチューナーやバンドマンを育成する施設があるからな。そこには俺が案内するから希望者は申し出てくれ」

 

「チューナー?」「ちょうどいいな。双葉、私に行かせてくれないか?」「沙織なら大丈夫だと思うしいいよ?」「チューナーか…」「うちは初音ちゃんが居るし」

 

「そんで他のメンバーはな。英治に聞いてるかも知れないが、お前達バンドのグッズはうちで制作してもらいたい。

だから、グッズが気になるバンドもいるだろ?見習いちゃん…ああ、水瀬 来夢の事な。こいつにグッズ制作の説明や工場見学に連れて行ってもらってくれ」

 

「ボクグッズ見たい!」「奇遇だなシフォン。オレもそう思ってたんだ」「亮はクリムゾンの話聞いて来てよ…」「私もグッズ気になるなぁ可愛いのがいいし」「結衣が可愛いと思う物ですか……」「不安だね…」

 

「まあ、お前らも色々あると思うからな。今から15分程度でどうするか決めてくれ。もちろんチューナーとグッズは聞かなくていいバンドは聞かなくてもいいからな。契約の話に3人、クリムゾンの話に1人とかでも構わねぇからな」

 

「はー。手塚が色々仕切ってくれるから、あたしは楽出来るわ~」

 

「いいのかボス?こいつこのままだと調子に乗るぞ?」

 

「あはは…こっちに異動になっても見習いちゃんって呼ばれるんだ……」

 

 

 

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-Ailes Flamme

 

オレの名前は秦野 亮。

これからの話を誰が何処に聞きに行くか。それを今、話し合っている。

 

「ねぇねぇ、ボクはグッズが見たいんだけどダメかな?」

 

「まぁ、シフォンがグッズを見たいって希望してるんならいいんじゃないか?」

 

「僕はどうしようかな?渉と亮はどうしたいの?僕はさっきも言ったけど、亮にはクリムゾンとSCARLETの事を聞いててもらいたいんだけど?」

 

「何でだ?俺じゃダメなのか?」

 

「渉は何を聞いても、interludeを倒すとか、クリムゾンとは戦うとしか言わないでしょ?僕らの中じゃ亮が一番冷静に考えられると思うし」

 

確かにそうだな。親父やお袋の事もあるし、貴さんや英治さんもそっちの話に参加するならオレもそっちの方がいいか…。

 

「でも結局亮もクリムゾンはぶっ倒すってなるだけじゃねぇか?それに俺は契約とかそんなの聞いても多分わからねぇぞ?」

 

「あ、なら渉くんはチューナーの所に行ったらどうかな?渉くんってボクらの中じゃ一番リズム取るの下手くそだし、チューナーは渉くんに合った人がいいんじゃない?」

 

「え!?俺ってリズム取るの下手なのか!?」

 

確かにそうだな。オレや拓実が行っても渉に合わなかったら意味がないしな…。

 

「となると、契約の話は拓実に任せる事になるけど大丈夫か?」

 

「え!?あ、そうか…。それもちょっと自信無いなぁ…」

 

「でもでも、それも拓実くんの方がいいんじゃない?」

 

「え?何で?僕ってあんまり数学得意じゃないよ?」

 

「それはボクらみんな文系だし一緒じゃないかな?でもほら、拓実くんにはパティシエの夢があるじゃん?その為にもSCARLETとの契約の話を聞いて、拓実くんの夢に都合がいいようにしちゃえばいいと思うよ?」

 

「そんな……僕の都合に合わせても…」

 

「オレもそれでいいと思うぞ?オレも渉もシフォンも特にメジャーデビューしたいとか無いしな。だから拓実のパティシエベーシストになる近道ってのかな。都合がいい選択をしてくれた方がオレ達にも都合はいいと思うんだけどな」

 

「俺もそれでいいと思うぞ?interludeとBLASTを倒す!俺はそれだけだからな」

 

ああ、渉のやつまだBLASTも倒す夢は持ってたんだな。

 

「うん…わかった。じゃあ僕が日奈子さんの話を聞いてくる」

 

「おう!任せた!」

 

こうしてオレ達Ailes Flammeは、

渉がチューナーの話、

拓実が契約の話、

シフォンがグッズの話、

オレがクリムゾンとSCARLETの話を聞く事になった。

 

しかしシフォンのおかげで話もすんなり纏まったな。可愛いだけじゃないシフォン。マジで推せるぜ。

 

 

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-Blaze Future

 

「って訳で俺はあのお姉ちゃんの所に話聞きに行くわ。お前らどうする?」

 

「私はタカがあの女の子にセクハラしないように見張っときたいんですけどね~」

 

「いや、セクハラなんかしないし」

 

俺の名前は葉川 貴。

SCARLETからの話を誰がどの話を聞くか、今話し合っている。

 

「おかーさんはおじーちゃんの事もあるし、クリムゾンの話聞きたいとか?」

 

「そうね…でも今更あんな奴の事を聞いてもね…今度こそタカが倒してくれるでしょうし」

 

「え?俺が倒すの?」

 

「うちって初音がチューナーしてくれるでしょ?別にチューナーの話は聞かなくてもいいんじゃない?」

 

ああ、それな。

英治も三咲も初音ちゃんも、うちのチューナーに初音ちゃんを……って言ってるけど、あんまり乗り気じゃねぇんだよな…。

初音ちゃんを巻き込みたくねぇしな。しっかりしてると言ってもまだ幼女だし。

 

「でもさ貴ちゃん。初音ちゃんが音色(トーン)を見れるとしたら、クリムゾンにも狙われるだろうし~、他のバンドのチューナーになるってなるかもだし?貴ちゃんの手が届く所に居た方がいいんじゃなぁい?」

 

「盛夏…何でお前俺の心読んでんの?」

 

「タカ……。盛夏とは口にしなくても心で通じ合える。そう言いたいのね?これからは私の事はお義母さんって呼ぶのよ?」

 

「盛夏。お前のかーちゃんはあれだな。アホだな」

 

「でもタカ。あたしもそう思うよ?」

 

「え!?まどか先輩もタカと盛夏が心で通じ合える関係と!?」

 

「奈緒もアホなの?あたしが言いたいのはそっちじゃなくて初音の事だよ」

 

まぁそうなのかなぁ?どっちにしろクリムゾンと戦う事になるなら、俺の見える所に居てもらった方が安心は安心か。ん~……安心かなぁ?

 

「まぁその辺はまたヤバくなったら考えたらいいか…。んで?お前らはどうする?何の話聞きたいとかある?」

 

「タカがクリムゾンとかの話聞きに行くんだし、あたしが契約の話を聞きに行こうか。仕事の事もあるし気になるっちゃ気になるしさ」

 

「あたしはグッズが見たい~。盛夏ちゃんプロデュースで色々作りたいし~」

 

「私は貴と一緒にクリムゾンの話聞いてもいいですか?」

 

「あ?セクハラなんかマジでやんないよ?」

 

俺ってそんなに心配なの?セクハラなんかした事ないんだけど…。

あ、でもこないだ理奈に存在がセクハラって言われたな。あ~……生きにくい世の中だわぁ…。

 

「そんなのわかってますよ。貴にはそんな欲望はあっても実行する度胸はないって信じてます」

 

それって信じてる事になんの?

 

「ちょっとクリムゾンのバンドの事で気になる事がありまして…」

 

あ、そっか。何か同級生がクリムゾンでバンドやってんだっけか。

 

「そうだな。じゃあ、俺と奈緒でクリムゾンの話、盛夏がグッズでまどかに契約の話を任せるか。聖羅はどうする?」

 

「だからお義母さんって呼んでって…」

 

ああ、はいはい。

 

「盛夏はグッズに行くみたいだし、タカ達とクリムゾンの話にしとこうかしらね」

 

俺達Blaze Futureは

俺と奈緒と聖羅でクリムゾンの話、

盛夏がグッズの話、

まどかが契約の話を聞く事になり、チューナーの話には参加しない事にした。

 

 

 

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-Canoro Felice

 

俺の名前は一瀬 春太。

Canoro Feliceのボーカルをやっている。

メジャーデビューを夢見て…。

 

「澄香さんがクリムゾンの話に……という事ですが、私達はどうしましょうか?」

 

「そうだな。契約の話もあるしな。俺達はメジャーデビューを目標としているし、やっぱり春太が聞いた方がいいか?」

 

「俺も直接メジャーデビューの話を聞きたいって思ってるけど、契約やお金の話ってなると姫咲の方がいいとは思うし、チューナーの事も気になるっていうのも本音かな」

 

確かにメジャーデビューを早くしたいと思っているけど、チューナーの事も気になる。俺達と一緒にCanoro Feliceをやってくれる人なんだから…。

 

「チューナーの事は気になされずとも結構でございます。Canoro Feliceは契約の事、クリムゾンとの事、まぁ、気になるならグッズの事で大丈夫でございますよ」

 

え?チューナーは気にしなくていい?

 

「あの、澄香さん…何故ですか?やはりチューナーと言えども私達Canoro Feliceの一員となる方ですのよ?」

 

「私もグッズが気になるけど、チューナーは大事だと思うよ?私達の理想っていうか考え方が同じ人になってもらいたいし」

 

「澄香さん。俺もチューナーは大事だと思っています。姫咲や冬馬も俺達と一緒に演奏をして楽しかったから……」

 

ハッ!?

 

俺はここまで口に出して気付いた。

 

澄香さんが目を閉じて口元を緩ませ笑っている。澄香さんがこんな時は何か考えがある時だ。主に小芝居の。

セバスさんの頃から澄香さんはこうだった。

 

まずい……迂闊な事を言えばついツッコミを入れてしまう。クールにならないと…。

 

「どうした春太?」

 

「い、いや、何でもないよ…」

 

-ニヤリ

 

笑った…!澄香さんが…!

まさか俺が話の途中で気付き、話を止める所まで澄香さんは読んでいたというのか…。

 

「フフフ、春太くん。どうやら気付いたようでございますな」

 

やはり…俺は踊らされていた…。

澄香さんと姫咲の大好きな小芝居の立役者として…。

 

「春太が?何を気付いたってんだ?」

 

クッ…冬馬のこの反応までも見透かされていたような気がする…。

 

「春太くん、冬馬くん。先日、秋月家の屋敷に来た時の事を思い出してみて下さい」

 

……屋敷に招待された時?

澄香さんとメイド長さんの戦いの印象が強すぎて…。

 

「ま、まさか……澄香さん……」

 

冬馬?冬馬は何かに気付いたのか?

しかし、その反応は危険だ!

 

「松岡くんの想像通りでございます」

 

クッ…冬馬は別に何か言った訳じゃないのに想像通りってどういう事なんだ…(ギリッ

 

「え?結局どういう事なの?まっちゃんの想像って何?」

 

結衣がツッコミを入れた!?

 

「結衣ちゃんも思い出して下さいませ。私の私設部隊の事を…」

 

私設部隊?

確か……『タイが曲がっていてよ』くらいしか覚えてないや…。

 

「そういえば澄香さんの私設部隊の人達って何か特訓してたよね?」

 

「ええ。ありがたい事に、皆様私を護る為に日夜訓練に勤しんで頂いていますわ」

 

姫咲を護る為に……日夜訓練を…。

 

 

『ハッ!ハッ!ヤーッ!』

 

 

ハッ!?そういえば、澄香さんの私設部隊の人達は武器だけじゃなく楽器を…。

 

「残念ながら私にはチューナーの素質はございませんでしたが、私の選んだ精鋭の中にもしかしたら……そう思い、昔からCanoro Feliceのチューナーになる為の訓練を課して参りました」

 

「澄香さん…そんな…私達の為にそんな昔から……う、うぅ…」

 

「すみちゃん…私達の為にいつも頑張ってくれてたんだね…うわぁぁぁぁん」

 

何でみんな泣いてるの?

俺達がCanoro Feliceになってからまだ3ヶ月くらいしか経ってないよ?何かそろそろ1年?ってくらい濃い毎日を送ってるけど…。

 

「昔から?俺がCanoro Feliceに入れてもらってからまだ3ヶ月だよな……」

 

「まぁ、そんな訳で、私の私設部隊にもチューナーになれそうな素質のある者もいますので、契約の件とグッズの話で良いと思います」

 

何の茶番だったんだろうこれは…。

 

俺達Canoro Feliceからは、

俺と姫咲で契約の話、

結衣がグッズの話、

冬馬と澄香さんがクリムゾンの話を聞く事になった。

 

結衣がグッズに絡むというのは、少し不安もあったけど…。

デビューの話、上手くいくといいけどね……。

 

 

 

--------------------------------------

 

 

 

-Dival

 

「まさか来夢がSCARLETで働く事になるなんて……。来夢にもお父さんにも聞いてなかったし…」

 

「確かにびっくりよね。渚の実家に遊びに行かせて頂いてから、まだそんなに日も経っていないのに…」

 

私の名前は水瀬 渚。

私達Divalはこれからの事を話す為に、誰が何処に話を聞きに行くか決めなきゃいけないんだけど…。

 

「渚は妹さんの事で頭いっぱいかな。理奈と香菜はどうする?」

 

「そうね。クリムゾンとの事か契約の事。……の、どちらかしらね。やっぱり私はcharm symphonyの時の事もあるから契約と言いたい所だけれど、Kiss Symphonyの事も気になるから…」

 

そうだよね…。私もしっかりしなきゃ…。

 

「理奈!志保!香菜!私は大丈夫だよ!

私もしっかりお話聞ける!

理奈はKiss Symphonyの事もあるし、クリムゾンとの話に行きなよ!私は契約の話を……」

 

「渚ぁ。無理しなくていいって。あたし達もDivalなんだからさ。妹さんの事で今は頭いっぱいでしょ?」

 

「そうだよお姉ちゃん。それにお姉ちゃんのオツムじゃ多分、契約の話なんて理解出来ないでしょ?」

 

「そだね……渚って貴に言われるまで、今のマンションの家賃の事とかもわかってなかったんでしょ?………って!?」

 

「「「来夢ちゃん(妹さん)!?」」」

 

「どうも。理奈さんはお久しぶりです。他の方ははじめまして。姉がご迷惑をお掛けしております」

 

来夢?何でここに?

 

「ちょっとDivalの事でお話がありまして」

 

「来夢ちゃんお久しぶりね。まさかSCARLETに……って話もしたいのだけれど、私達に話って何かしら?」

 

「あ、はい。私の事もついでに……。

お姉ちゃんと理奈さんは知っていると思いますが、私は地元の小さい音楽事務所で働いてまして…。その事務所がSCARLETと提携を結んだので、事務員の足りないこちらに私が異動になりました」

 

なるほど。それでここに居るんだ…。

でも、娘が2人共関東とかお父さんもよく許したよね。私の時は大反対だったのに…。

 

「……と、思っていたのですが」

 

え?思っていた?

 

「どうも私にはチューナーの素質があるみたいでして、日奈子お姉ちゃんからお父さんに、私にDivalのチューナーをさせてみないか?って提案されて、事務員兼チューナーとして、こちらに配属された訳です」

 

チューナー?来夢が?

それも私達Divalの…?

 

「へぇ、渚の妹さんがあたし達のチューナーをやってくれるんだ?あたしとしては全く知らない人ってよりは気は楽かな?」

 

「そうね…チューナーはいずれは必要となるのだし、私としても来夢ちゃんなら……とは思うのだけれど…」

 

「うん、あたしもお父さんとデュエルをして、チューナーがどれだけ大切な存在なのか思い知った。あたし達にチューナーが居ればお父さんにリズムを崩される事はなかったかもしれない。

だけど…だからこそチューナーも最高のチューナーにやってもらいたい」

 

「そうね。志保の言う通り。こんな事を言うのは来夢ちゃんには気の悪い話だとは思うのだけれど、まずは来夢ちゃんのチューナーとしての実力を見せてもらいたいわね」

 

あ、そうだよね。私もそう思う。

来夢だったら私も気が楽だけど、来夢ってあんまり音楽は得意じゃなかったような?

 

「私もそういった事はちゃんと言ってもらった方がいいって思ってます。私もやると言った以上はしっかりやりたいと思ってますので。ですが正直な所……」

 

「あ、もしかしてあんまりチューナーとしての自信が無いとかかな?」

 

「そうですね。実力を見てもらうと言っても、今日は私はグッズの案内がありますし、チューナーって何をすればいいのかとかもわかってませんし…」

 

チューナーとしての実力か…。

でもそうだよね?何を基準に判断したらいいんだろ?

いや、それよりも標準語の来夢に違和感を感じちゃってるよお姉ちゃんは。

 

「あ、そだ。渚って妹さん……えっと、来夢さんとカラオケとか行った事ないの?」

 

「ん?カラオケ?よく行くよ。来夢と一緒にカラオケ行くと気持ちよく歌えるんだよね。何でかわかんないけど」

 

「私は歌は苦手なんですけど、お姉ちゃんにはよく連れて行かれますね。試験の後とかよく連れて行かれてたよね?」

 

そうなんだよね~。

来夢って歌はあんまり歌わないけど、私が歌ってる時にリズム取ってくれて……

………ん?リズム?

 

「なるほど…ならもしかしたら渚の歌には、来夢ちゃんのリズムと相性がいいのかも知れないわね」

 

そっか。そうだったんだ…。

私が歌っている間、来夢が私にリズムを伝えてくれて…それで私は来夢といると歌いやすかったんだ…。

 

「志保」

 

「うん。あたしもいいと思う」

 

「来夢ちゃん。さっきは失礼な事を言ってごめんなさい。きっと来夢ちゃんは渚に合った最高のチューナーになれると思うわ。もし良かったらお願いします。

私達Divalのチューナーになってもらえないかしら?」

 

「理奈さん……。

はい、もちろんです。最高のチューナーになってみせます。Divalのチューナーの件、承らせて頂きます」

 

「ありがとう。よろしくね」

 

よろしくね。来夢…。

 

「んじゃ、来夢さんがチューナーになってくれるって事で、あたしらはチューナーの話は聞きに行かなくて大丈夫かな?みんなどうする?」

 

「あ、その事もなんですけど、お姉ちゃんは梓お姉ちゃんの事、雨宮さんは雨宮 大志さんの事、理奈さんはKiss Symphonyとその事務所の事がありますので、クリムゾンのお話を、そして、雪村さんが契約のお話を聞くのがいいと思うのですがどうでしょう?」

 

「あたしが契約の話かぁ~…。でも確かにその方がいいかなぁ…」

 

「梓お姉ちゃんの事か…。うん、気になるのは気になるかな」

 

「なら、来夢さんの言う通りそのように別れましょうか」

 

私達Divalは

私と志保と理奈でクリムゾンの話を、

香菜が契約の話を聞くという事になった。

 

 

 

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-evoke

 

「奏、俺は半端な奴とバンドをやる気はねぇ。俺はチューナーを見に行く。文句ねぇな?」

 

「文句があったとして、お前が考えを変える事はあるのか?」

 

「俺はやはり早くメジャーデビューしたいしな。紗智の為にも。俺は契約の話を聞きに行かせてもらう」

 

「俺はどこでもいいけど、誰かと一緒の方がいいかなぁ?寝ちゃったら起こしてほしいし」

 

俺の名前は豊永 奏。

これからの話を誰が何処に聞きに行くかを話し合うつもりだったが…。

 

やれやれ、結弦がチューナーで、鳴海が契約、響は誰かと一緒に…と、なると俺はクリムゾンの話を聞きに行くしかないな。

 

「響。俺はクリムゾンの話を聞きに行こうと思う。お前はどうする?」

 

「ん~…どうしようかな?そだ。紗智ちゃんはどうするの?」

 

「あ、私ですか?どうしようかな?」

 

特に紗智ちゃんに聞いておいてもらいたい話というのはないが、万が一の時の為にもクリムゾンの話を聞いてもらってた方がいいか…?

 

「紗智。俺に早くデビューして欲しいだろう?俺と一緒に契約の話を聞きに行くか?」

 

「ねぇ、奏さん。私は自分のやりたい事の為に話を聞きに行ってもいいですか?」

 

自分のやりたい事?紗智ちゃんにもやりたい事があるのか?

 

「ああ、それは構わないぞ。紗智ちゃんの意思を尊重させてもらう」

 

「じゃあ私はチューナーのお話を聞きに行きたいです!」

 

チューナーの話だと?紗智ちゃんが?

 

「おい紗智。テメェそれはどういう事だ?チューナーの話なんざテメェには関係ねぇだろ?」

 

「そうだぞ紗智。お前は俺と一緒に契約の話を聞きに行こう」

 

「私は楽器も出来ないし、何か出来るとか自信を持って言える事もないけど、もしかしたらチューナーになれるかも知れない。ううん、チューナーになれなくてもチューナー探しの手助けとか出来るかも知れない。

私もみんなの力になりたいんだよ」

 

紗智ちゃん……。

 

「何を言っているんだ紗智。お前は傍に居てくれるだけで……」

 

「鳴海ぃ。もうそういうのはいいから」

 

「あ?響お前何言ってんだ?紗智は俺達の力の源だろう?」

 

まぁ、確かに紗智ちゃんの応援はありがたいし、俺達の力になっていると思うがな。

 

「紗智ちゃんもさ。色々考えて、俺達やAiles Flamme、そしてDivalの力になりたいって思ったんじゃない?

だからいいじゃん。紗智ちゃんがチューナーの話を聞きに行きたいならそれでもさ」

 

「しかしな…紗智にはあんまり深入りさせたくないって気持ちは…」

 

「考えてみなよ鳴海。もし紗智ちゃんにチューナーの素質があって、evokeのチューナーになってもらえたら、今よりもっと一緒の時間が増えるよ?」

 

「結弦。そういう訳だ。紗智が迷子になったりしないように、しっかり見ててやってくれ」

 

なるほどな。確かに紗智ちゃんにチューナーの素質があれば俺達と共に戦ってもらった方が安心ではあるな。

 

「あ?テメェ……まぁいいか」

 

「ちょっ…ちょっと響さん」

 

「ん?きっと大丈夫だよ。紗智ちゃんは俺達じゃなくてAiles FlammeとDivalの力になりたいんでしょ?」

 

「え?は、はい……ごめんなさい」

 

ん?そうなのか?

それはそれで残念な気もするんだが…。

どうやら2人の会話は鳴海には聞こえていないみたいだな。

 

「それはその時にまた鳴海と話したらいいと思うよ。紗智ちゃんは今やれるかもって思う事をしっかり聞いておいで」

 

「はい……ありがとうございます」

 

ふむ。なるほどな。確かに響の言う通りだな。

しかし響のやつ、いつからそんな風に物事を考えるようになったんだ?

 

俺達evokeからは、

俺と響でクリムゾンの話を、

結弦と紗智ちゃんがチューナーの話を、

そして鳴海がメジャーデビューの話を聞く事になった。

 

俺達はこれまでのライブでも、グッズ販売はしていたから、誰かはグッズの話聞いておいた方が良かったとは思うが……まぁ何とかなるだろう。

 

 

 

--------------------------------------

 

 

 

-Noble Fate

 

私の名前は北条 綾乃。

私達はSCARLETの本社に訪問させてもらっている。

 

そして、ギターの木南 真希、ベースの東山 達也さん、ボーカルの大西 花音。

この4人の内誰が、音楽事務所になったファントムとの契約の話、クリムゾンとSCARLETの話、チューナーの話、バンドのグッズの話に行くのか。

 

話し合いが今始まろうとしている。

 

私達のバンドであるNoble Fateのバンドマスターは私だ。

だから、クリムゾンの話か契約の話に私が行くのは妥当だと思う。

 

しかし私はグッズの話が聞きたい。

どんなグッズを出すのか、どんなグッズを作るのか。

そういった事を妄想するのが大好きだから…。

 

ここで私が『グッズの話聞いて来ていいかな?』とか発言するのは正直どうかと思う。何より恥ずかしい。

 

私はどうしたら……(ギリッ

 

「綾乃さん……!綾乃さん!」

 

え?私?

 

「あ、ごめん花音。どうしたの?」

 

「聞いてました?」

 

「あ、ごめん…ちょっと考え事してて…」

 

グッズを見に行きたいものだから、うっかり話をスルーしちゃってた。ちゃんと聞かないとね…。

 

「そうなんですか?考え事って?」

 

「う、ううん、何でもないよ」

 

言えない…グッズが見に行きたいって考えていたなんて…。

 

「それで誰がどの話を聞きに行くのかって話なんですけどね。真希さんもバンドやっていただけあって、グッズで揉めたりもあったみたいですから、あたし達は4人ばらばらになりますけど、一通り話を聞いておこうって話でして…」

 

グッズ!?私は花音の言葉を聞いて、チャンスと一瞬思ったが、真希が前のバンドの時にグッズの事で揉めたのなら、真希がグッズを見たいと言うかも知れない…。

 

どうする…?どうしたら私はグッズを見に行ける…?(ギリッ

 

「そんな訳だからさ。綾乃にも迷惑掛けるかも知れないけど、やっぱりグッズの話も聞いておいた方がいいと思って…」

 

真希。もちろんよ。私もグッズの話を聞きたい。

けど…ここは真希に譲るしかないの…?

 

「ごめんね。私はチューナーを見に行きたいって言ってるのに、こんな事を言っちゃって…」

 

真希!?待って…!今、真希はチューナーを見に行きたいって言った!?ならグッズは……。

 

「真希さんは自分で聞きたい話があるって言ってくれてますからね。僕としても真希さんにはチューナーの話に行ってもらいたいって思ってるんですが…」

 

「綾乃さんはどうですか?あたしもチューナーの話とか正直……ってありますから、真希さんが行ってくれるならありがたいなぁって思ってるんですけど…」

 

「もちろんよ!真希!私達Noble Fateのチューナーの話はあなたに任せるわ!」

 

「え?綾乃…?いいの?」

 

「もちろん!」

 

良かった……これで真希がチューナーの話を聞きに行ってくれる…。後は花音と達也さんが何の話を聞きたいかだね…。

 

「あ、それでさ?花音と達也さんは何の話が聞きたいの?」

 

「あ~…あたしは特にこれってのはないんですよね。でも、達也さんと綾乃さんは、拓斗さんや英治さんの事もあるからクリムゾンの話の方がいいですかね?」

 

……まずい。確かに私はおっちゃんの弟子だ。

15年前の事もあるし、私はクリムゾンの話を…というのが自然だろう。だけどね、私はグッズが見たいんだよ花音。

 

「でもさ、花音。私も達也さんも15年前の事、アルテミスの矢として戦ってたBREEZEの事もあると思うよ。けど、それは私達Noble Fateには関係ないよ。私達は私達としてクリムゾンと向き合わないと」

 

ふぅ…これで何とかなるかな?ちょっと我ながらいい事言ったと思うし。

 

「なるほど…確かに綾乃さんの言う通りですね。確かに僕も拓斗さん達BREEZEの事もありますが、Noble Fateとして、江口達にも小松達にも負けない楽しいバンドをやりたい。その想いが一番ですから」

 

達也さん……。

 

「ならどうしよっか?綾乃か達也が契約の話を聞く?花音はグッズにしとく?」

 

真希!?花音がグッズってどういう事!?

あ、そうか。達也さんか私が、クリムゾンの話か契約の話かって事か…どうしよう?

貴兄…貴兄ならこんな時はどうする?あのひねくれ者さんなら…。

 

「私はお仕事の事もあるけどさ。それは達也さんも真希も一緒でしょ?でも達也さんは学校のイベントとかで忙しい日もあるだろうし、契約の話を聞く方がいいんじゃないかな?」

 

「綾乃さん……いいんですか?確かに11月には修学旅行もありますし、少し忙しくなりそうですから、その話を聞いておけば、ある程度の調整は出来るようになるでしょうしありがたいですけど…」

 

「私は普通の事務員だし、まどかが幼稚園の先生をやってて大変なとこ見てきてますから…達也さんが良ければ是非」

 

「綾乃さん、ありがとうございます」

 

ごめんなさぁぁぁぁぁぁぁぁい!

そんな風にお礼を言われると罪悪感が…。

 

でも私はここまで来てしまった。

後は花音だけ…。花音をクリムゾンの話に行かせる事が出来れば…。

 

「そうですか。じゃあ後は綾乃さんがクリムゾンの話で、あたしがグッズの話でいいですかね?」

 

何を言っているの花音。全然良くないよ。

 

しかし、このままだと私がクリムゾンの話に行く事になりかねない…。どうする?

 

「花音は……クリムゾンの話よりグッズの話が聞きたいの?」

 

「はい?」

 

聞いてしまった。この質問はすごく不自然な気がする…。考えて…おっちゃんならこんな時どうする?あの面倒臭がり屋さんなら…。

 

「花音。私は花音がグッズの話を聞きたいのなら、グッズの話を聞いた方がいいと思う。だけどね、花音もNoble Fateの一員なの。自分の聞きたい話をちゃんと聞いた方がいいと思うの」

 

さぁ花音。あなたはどの話が聞きたいの?

これでグッズと言われればそれまで。私は諦める。

だから花音言って。クリムゾンの話を聞きたいと!

 

「いや、あたしは何でも。後で話の内容は共有するでしょうし。だから、綾乃さんが決めてくれていいですよ?」

 

うわぁぁぁぁぁぁん……!花音!何でなの!?

普通こんな話になったら、私は実はクリムゾンの話じゃなくてグッズの話を聞きたいのかな?って思わない!?

 

「なら、やっぱり花音がグッズの話で綾乃がクリムゾンの話ってのがいいかな」

 

「そうですね、それで行きましょうか」

 

まずい…まずい…このままだと…。

トシ兄…トシ兄ならこんな時どうする?あの生真面目さんなら…。

 

「……ごめんなさい。本当は私…グッズの話を聞きたいです。グッズが気になってます…」

 

「「「はい?」」」

 

 

こうして私達Noble Fateは

花音がクリムゾンの話、

真希がチューナーの話、

達也さんが契約の話を聞き、

私がグッズの話を聞く事になった。

 

こんな事なら最初から素直に言っておけば良かった。

 

 

 

--------------------------------------

 

 

 

-FABULOUS PERFUME

 

「では私がチューナーの話を聞きに行くので構わないな?」

 

「うん、それで大丈夫だよ」

 

「頼んだよ沙織。ボク達に合いそうなチューナーが居たらスカウトしてきてね!」

 

「話を聞きに行くだけだし、いきなりスカウトってのは無理じゃないか?」

 

私の名前は茅野 双葉。

私達FABULOUS PERFUMEからは、沙織がチューナーの話を聞きに行く事は決定していた。

後は私と弘美と栞がどこの話を聞きに行くかなんだけど…。

 

「普通に考えて双葉がクリムゾンの話、あたしが契約の話で栞がグッズの話ってのが妥当じゃないか?」

 

「でも弘美よりボクの方が数学出来るよ?」

 

「弘美は接客業をしている割に、あんまり数学……算数に明るくないからね」

 

「待って沙織、何でわざわざ数学から算数に言い直したの?」

 

確かにそうなんだよねぇ。弘美はあんまり計算は得意じゃないし…。でも、弘美には夢があるから契約の話をしっかり聞いて、将来の事も考えて欲しいし…。

 

「ねぇ双葉。ボクが弘美と一緒に契約の話を聞きに行こうか?」

 

「それがいいかなぁ?」

 

「双葉も栞も何でだよ!?契約の話くらいあたし1人でも聞いて来れるって!!」

 

うぅん…確かに今日は細かいお金とかそういったお話は無いと思うけど……。

 

「双葉。歳上の私がこんな事を言うのは…とは思うのだけど、FABULOUS PERFUMEのバンドマスターは双葉なの。私は…双葉が決めた事なら……従うわ。弘美だけに契約の話を聞きに行かせても、私は双葉を責めたりしない」

 

「だから何で!?沙織まであたしが心配なの!?こないだカラオケで今後の話を決めた時より重い雰囲気になってんじゃん!?」

 

「わかったよ沙織……私が…私がFABULOUS PERFUMEのバンマスなんだもんね…」

 

私達はグッズの展開もそれなりにしている。

その時のライブの雰囲気に合わせて、発注をかける事業所は変えているけど、これからのグッズはSCARLETで制作するのなら、その話は私達には大切な話だ。

 

「栞…私達にはグッズの話も大切だと思う。私はクリムゾンの話を聞きに行くから、栞にグッズのお話は頼める?」

 

「うん、ボクは大丈夫だよ…。でも、でもいいの?弘美1人で契約の話を……いいの?」

 

私は黙って頷いた。

 

「……双葉…グスッ」

 

「いやいやいや!何で!?双葉も栞も何でそんな重く考えてんの!?」

 

私達FABULOUS PERFUMEからは、

沙織がチューナーの話、

弘美が契約の話、

私がクリムゾンの話、

栞がグッズの話を聞く事に決めた。

 

不安もあるけど、私達はFABULOUS PERFUMEだから、きっと大丈夫だと思う。きっと……。

 

「だーかーらー!あたしは大丈夫だって!みんな心配しすぎー!!」

 

 

 

--------------------------------------

 

 

 

-Glitter Melody

 

私の名前は佐倉 美緒。

私達Glitter Melodyのメンバーは、これからの事の話を聞く為に、学校の部活の顧問である神原 翔子先生とSCARLETに訪問している。

 

翔子先生は元Artemisのメンバーという事で、クリムゾンとSCARLETの話を聞くようだけど、私達は……。

 

「あたしグッズの話が聞きたい」

 

「私だってグッズの話が聞きたいもん!」

 

「睦月ちゃんも麻衣ちゃんも落ち着いて…」

 

睦月と麻衣が自分プロデュースのグッズを制作したいという事で、私がクリムゾンの話、恵美が契約の話を聞く事に決まったのは決まったんだけど、翔子先生が

 

『これからのあんた達は学校から離れて、自分達でバンドを頑張っていくんだろ?出来る限りはあたしも助けてあげられるけど、チューナーはこれからのクリムゾンとの戦いには必要な存在だよ。しっかり聞いておいた方がいい』

 

と、言うものだから、睦月と麻衣でどっちがグッズの話を、どっちがチューナーの話を聞きに行くのか揉めている所だ。

 

「麻衣、聞いて。あたしね、Glitter Melodyの為にマスコットキャラも考えて来たの。グリメロちゃんっていうの可愛くない?」

 

「か、考えて来たのって…そのグリメロちゃんってどんなデザインなの?」

 

「それは考え中」

 

「考え中って何よ!ただ名前考えただけじゃん!Glitter Melodyを略しただけの安直な名前だし!」

 

グリメロちゃんって…私達バンドだよ?

マスコットキャラって……可愛いのならアリかな。

 

「じゃあ麻衣は?何かあたし達Glitter Melodyのグッズ開発担当として何か考えてる案はあるの?」

 

Glitter Melodyのグッズ開発担当…?

いつからそんな話になったの?

 

「わ、私は…私なら…むむむむむ…」

 

「ねぇ美緒ちゃん…どうしよう?睦月ちゃんも麻衣ちゃんも…」

 

「うん、正直どうでもいいと思ってるかな」

 

「ど、どうでもいいって…」

 

「グッズの話を聞きに行ったとしても、他のメンバーやSCARLETの人がグッズ開発とかするかも知れないし?チューナーにしたって話を聞いただけで、今日ここで決めなきゃいけないって事もないでしょ?」

 

「そ、それはそうだけど…」

 

「でも確かにこのままだと纏まらないのも確かかな…」

 

さて、どうしようかな?

睦月も麻衣も自分のやりたい事には真っ直ぐだからなぁ…。

 

「ねぇ、睦月、麻衣。ちょっと提案なんだけどさ?」

 

「「美緒は黙ってて!」」

 

ちょっと泣きそうなんだけど?何で?

私はちょっとした提案を言おうとしただけだよ?

助けてお姉ちゃん……。

 

「睦月ちゃんも麻衣ちゃんも!美緒ちゃんが提案あるって言ってくれてるんだし、少し落ち着いて話を聞こうよ!」

 

「あ、恵美…ごめん…」

 

「そだね。せっかく美緒が提案してくれてるんだもんね。ごめんね、恵美」

 

何で?何で恵美の言う事は素直に聞くの?

謝るのって普通は私にじゃないの?

 

「ほら、美緒ちゃん」

 

うん、ありがとう恵美。泣くのは家に帰るまで我慢するよ。

 

「あのさ?このままだと話も纏まらないじゃん?睦月が聞きに行くにしても、麻衣が聞きに行くにしてもさ?グッズは睦月と麻衣で作る事にしようよ」

 

「ふぅ……聞きましたか睦月さん」

 

「やっぱり美緒は美緒だね」

 

え?何なの?私おかしい事言ったの?

 

「美緒ちゃん。その案はあたしもいいと思うんだけどね?もしライブ用のグッズを作るとして、睦月ちゃんも麻衣ちゃんもTシャツを作りたいってなったら、またデザインとかで揉めるんじゃないかな?同じグッズを2種類販売ってなるとお客さんもさ…?」

 

ああ…そうか。2人が同じデザインで納得いったら話は早いけどその度に揉める可能性もあるのか?

 

「美緒?わかった?これはあたしと麻衣の譲れない戦いなの」

 

「美緒はクリムゾンとラーメンと理奈さんと葉川さんの事でも考えてて!」

 

ちょっと待って麻衣。何でそこにお兄さんが出てくるの?てか、何で私がこんな風に言われなきゃならないの?なんかムカついてきた…。

 

「も、もういいよ。

だったらさ!Glitter Melodyのマスコットキャラはグリメロくんにしよう!睦月が可愛いグリメロくんのデザインして!そんで麻衣!麻衣はそのグリメロくんの着ぐるみにでも入ってくれそうなチューナーを探して来て!はい!これで決定!何か文句ある!?」

 

ハァ…ハァ…わ、私だって怒る時は怒るんだからね…。

 

「み、美緒ちゃん?それ…本気なの?」

 

「美緒。グリメロくんじゃないから。グリメロちゃんだから」

 

「なるほど…私達のマスコットキャラにゆるキャラみたいな着ぐるみのマスコットを採用して、そのマスコットをチューナーにする…。確かにこれは私プロデュースで色々イベントとかもやれそうだね…」

 

え?グリメロくんじゃなくてグリメロちゃんなの?

いや、それより待って。着ぐるみのマスコットとか色々イベントとかって何?私達のバンドかっこいい系だよね?私もしかしてヤバい事言ってない?

 

「うん。美緒にしてはいい案だと思う。麻衣、そうしない?」

 

「そうだね!なかなか面白い趣向だと思う!ゆるキャラかぁ。うん!テンション上がって来た!」

 

「み、美緒ちゃん。確かにあたしも面白いなって思うし、話も纏まったみたいだけど……あたし達のバンドのイメージには合わなくない?大丈夫かな?」

 

あ、えっと……。ごめんなさい……。

 

私達Glitter Melodyからは

私と翔子先生がクリムゾンとSCARLETの話、

睦月がグッズの話、

恵美が契約の話、

麻衣がチューナーの話を聞くという事に纏まった。

 

纏まったのは良かったんだけど……。

私はもう少し冷静に物事を考えて発言するようにしよう。そう思い知らされた1日だった。

 

 

 

--------------------------------------

 

 

 

-Lazy Wind

 

俺の名前は宮野 拓斗。

訳あってクリムゾンと戦い続けていた。

 

クリムゾンに恨みを持つメンバー。

友達を壊された御堂 架純。

友達を奪われた三浦 聡美。

両親が消えてしまった観月 明日香。

 

そして、俺の妹の暴君東山 晴香。

 

俺達は5人でSCARLETに訪問していた。

 

15年前にもBREEZEとしてクリムゾンと戦っていた俺は、クリムゾンの話を聞きに行くという事になっているが、こいつらはどの話を聞きに行かせるべきか…。

 

「みんな色々思う事もあると思うけどさ。考え過ぎちゃうと余計に考えてしまうと思うんだよね。直感で私この話が聞きたいとか希望はあるかな?」

 

うちの暴君は何を仕切ってるの?

ああ、暴君だからか……。

 

「私は…特に聞きたい話なんて無い。クリムゾンを潰す。それが出来ればどうでもいい」

 

「明日香ちゃん!そんな考えじゃ駄目!

あたしはね、兄貴ってこんな無愛想でアホだけどさ。兄貴がBREEZEの時には楽しい演奏をしてた。そしてそれを見るのが好きだった」

 

「私は楽しい演奏なんて知らないし。音楽はクリムゾンを倒す為だけの…」

 

「タカとデュエルしてもそう思った?」

 

「タカと……わからない。確かにタカも英治もトシキも今までの知ってるミュージシャンとは違ってた。昨日のFABULOUS PERFUMEのライブも……」

 

明日香……。

すまん。本当は俺が……お前の両親にお前を託された俺が、楽しい演奏ってのを教えてやらなきゃいけなかったのにな……。

 

「明日香。私もね。

タカさんと…BREEZEとデュエルをして思ったの。音楽は楽しんでやるものだって。

私もクリムゾンへの憎しみや恨みは消えてない。だけど、これからは楽しい演奏でクリムゾンと戦おうと思う。明日香もこれからはそうしていこう?」

 

「架純…。私も楽しい音楽ってのがあるなら、楽しい音楽をやりたい……でも私はそんなすぐには…」

 

「拓斗くん。うちは契約の話を聞きに行くわ。

明日香にはチューナーの話に行かせてやりたいんやけどええかな?」

 

あ?チューナーの話を明日香に?

 

「は?聡美何を言ってるの?」

 

「今はクリムゾンとかSCARLETとか忘れ?うちらの仲間になるチューナーの事とかを考えてたらええよ」

 

「は!?ちょっと待ってよ。グッズに行けとか言われるなら、まだわかるとしてもチューナーって何でよ!?」

 

「うちも昨日、クリムゾンに奪われた元メンバーと会ってな。やっぱりクリムゾンは許されへんって思った。だからクリムゾンは倒したいと思ってるよ。でもな、タカくんも言ってたやろ。そんな音楽やっててもクリムゾンと一緒なんや」

 

そうだな。少しニュアンスは違うが、クリムゾンから自由で楽しい音楽を取り戻す為に戦ってたんだ。

その為だからって楽しい音楽を忘れてたら意味なんかねぇよな。

 

「明日香。あんたに足りないんは楽しい音楽を一緒にやる。楽しい事を一緒にやる仲間や友達や。だから、チューナーは明日香が楽しんでやれると思う人を選び」

 

「私が……」

 

「そだね。あたしもそれがいいと思う。チューナーの話に行って来な。ね、明日香ちゃん」

 

「…それが楽しい音楽を知るきっかけになるのだとしたら、私はチューナーの話を聞いてみる」

 

「うん。じゃあ聡美が契約の話で明日香がチューナーの話ね。拓斗さん、私もクリムゾンの話を聞きに行ってもいいかな?」

 

架純が俺と一緒にクリムゾンの話だと?

あ、タカが一緒だからか?

 

「違うよ……。Blue Tearの時の仲間が…クリムゾンのミュージシャンになったみたいで…」

 

そういや夕べそんなことを言ってたっけか?

それより違うよって何だ?

まさか俺の心の声を聞いた?いや、まさかな……。

 

「わかった。なら俺達Lazy Windからは俺と架純でクリムゾンの話、聡美が契約の話で、明日香がチューナーの話でいいな。おい、晴香はどうすんだ?」

 

「あたしもクリムゾンの話を聞こうかな。もう兄貴がどっか行っちゃうのも嫌だし」

 

こ、こいつらの前でそんな照れるような事言うなよ…。

でも約束してやんよ。俺はもう何処にも行かねぇよ。

やらなきゃいけない事はあるけどな……。

 

 

 

--------------------------------------

 

 

 

そして場面は俺、中原 英治の視点に戻る。

 

俺とトシキはクリムゾンの話を聞きに行くことになっているから、契約の話は三咲と初音に任せる事にした。

 

今日の俺達の話し合い次第で、俺達ファントムの…ファントムでバンド活動をやってくれているみんなの運命が大きく変わるだろう。

 

クリムゾンとの戦いなんてつまらない音楽は俺達の世代で終わらせておきたかったんだけどな。

あの時の俺達にもっと力があれば、今は変わっていたんだろうか?

 

なぁ?どうなんだろうな?

ユーゼス……。


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