バンやろ外伝 -another gig-   作:高瀬あきと

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第37話 SCARLETとクリムゾン

私の名前は中原 初音。

 

まさかバンドマンでもない私のモノローグからお話が始まるだなんて…。

さすが特別編と言ったところだ。

 

SCARLET本社での話も終わり、私達はファントムへと戻って来ていた。

 

SCARLETとの契約の話はこうだった。

ファントムはSCARLET直属の音楽事務所となるけど、今までと同じようにライブハウスとしても、カフェとしての営業もしていくのも許してもらえた。

 

しかし、音楽事務所となる以上はファントムは会社となってしまうので、私が事実上の責任者らしいが、年齢的な問題があるので、お母さんがSCARLETの社員となり、音楽事務所ファントムの社長に就任する事になった。

お父さんは『何で俺じゃないんだ』と、泣いていた。

 

SCARLETはメジャーレーベルでは無く、インディーズレーベルの会社だ。だから私達ファントムもインディーズレーベルとなり、メジャーデビューしたいのなら、メジャーレーベルの音楽事務所に移籍しなければならない。

私は出来ればこのままみんなには、ファントムでバンド活動をしてほしいけど、メジャーデビューしたいのなら、邪魔するわけにはいかないかな…。

春太さんは『キラキラしたライブをやれるなら、メジャーデビューでもインディーズデビューでも構わないよ』と言ってくれたけど…。

 

懸念していたクリムゾンとの戦いも、自分達からクリムゾンのミュージシャンに戦いを挑む必要は無いらしいが、クリムゾンが主催のイベントやギグやフェス等には、参加してもらいたいとの事だった。もちろんバンドの意思を尊重してくれるようで安心している。

聡美さんは『そんならうちらもファントムのバンドマンとして、自分らから仕掛けへん方がええんかな?』と言っていた。

 

色々とややこしい契約の話になるかと思っていたけど、資金面もすごくシンプルで、ファントム所属のバンドには良い条件が揃っていた。お給料ってのは無いみたいだけどね。まどかお姉ちゃんも『給料は無くても色々と支援してもらえるみたいだしありがたい事だね』と言っていた。私もそう思う。

 

音楽に関しても各バンドの好きな音楽をやっていけばいいようで、特に制約等もないようだ。その為、SCARLETからの曲の提供も無いとの事。香菜お姉ちゃんは『理奈ちはcharm symphonyの時の事もあるからその方が良かったよ』と言っていた。みんな好きな音楽をやれるみたいで良かった。

 

そしてファントムに所属したとしても、他のお仕事はもちろん音楽以外の夢を追いかけたり、そっちを頑張っても良いとの事だった。

拓実さんも弘美さんもすごく安心したようだった。

 

契約の話はこんなものだった。

こんなものって言うのは語弊があるのだけど…。

 

うん、次はお父さん達の聞いて来たクリムゾンの話をしようかな。

 

 

 

 

クリムゾンミュージックが日本での活動を再開する。

 

ライブハウスエデンのミュージシャン、

BLAST、OSIRIS、Fairy April、 Cure²Tron。

この4バンドでディスカードランド島のカジノ型ライブハウス『サクリファー』に幽閉されていた四響のダンテを助け出したらしい。

 

四響のダンテは15年前の伝説のバンド『アーヴァル』のドラマーだった人だ。

 

彼の救出に成功したエデンは、これからクリムゾンミュージックとの戦いが始まるらしい。

 

これを期としたのかどうなのか。

お父さん達のBREEZEと、澄香お姉ちゃん達のArtemisが15年前に戦っていたクリムゾンミュージックのグループ会社の『クリムゾンエンターテイメント』の創始者である海原 神人が日本に帰ってくる。

 

クリムゾンエンターテイメント。

創始者である海原 神人がクリムゾンミュージックのパーフェクトスコアに対抗したスコア。アルティメットスコアを作ろうとしていた団体。

 

何の為にパーフェクトスコアに対抗したスコアを作ろうとしていたのか、クリムゾンエンターテイメントの目的は何だったのか……直接戦っていたお父さん達にもわからなかったそうだ。

 

エデンのミュージシャンがクリムゾンミュージックと戦える為に、SCARLETは…私達ファントムはクリムゾンエンターテイメントと戦おうとしている。

 

 

 

だけど……

 

 

 

「正直めんどくせぇな…」

 

 

 

それがお父さん達BREEZEとArtemisの翔子さんと澄香お姉ちゃんの意見だった…。

 

いや!?危機感無さすぎじゃない!?

 

「大体今更海原が日本に帰ってきて何すんの?タカ、お前が今度こそ海原を倒せよ。あ、これで解決じゃね?」

 

「いや、英治…お前アホなの?海原倒すって何したらいいの?俺がやってんのバンド活動なんだけど?」

 

「え?でもタカって梓の事抱き締めながら『海原もクリムゾンも俺が倒してやる』とか言ってなかったっけ?」

 

「お前!ほんとお前な!翔子!お前アホなの!?バカなの!?みんなの前で何言ってんの!?」

 

「タカ……ちょっとトイレに面貸せ…」

 

「拓斗待って。私、男子用トイレは入れないしさ。タカ…梓とそんな事してたの?裏に行こっか?」

 

「貴って昔はそんな事してたんですか?今じゃ考えられないですぅ。あ、詳しくその話聞きたいんで裏に行きましょうか?」

 

「せんぱぁ~い。アハッ♪梓お姉ちゃんを抱き締めたって何ですカ?あ、クリムゾンとの戦いで疲れてる梓お姉ちゃんを無理矢理って感じですかネ?チョット裏に行きましょうカ?」

 

「貴さんが梓さんを抱き締めた?それはとんでもないセクハラね。あら?なのに何故あなたはここに存在しているのかしら?何故捕まってないのかしら?ちょっと裏でお話しましょうか」

 

「いや、違っ!あれは俺が足立と決着を……待っ…待って!」

 

そう言って拓斗さんと澄香お姉ちゃんと奈緒さんと渚さんと理奈さんは、タカを引き摺ってどこかに行った。

平和だなぁ~。

 

 

そこからはお父さんとトシキさんがクリムゾンエンターテイメントの事を話してくれた。

 

クリムゾンエンターテイメントは15年前はそこまで大きな会社ではなかったらしい。

 

アルティメットスコアを開発していた九頭竜。

最強のバンド集団を育成していた二胴。

クリムゾンに敗けたバンドを救済していた手塚さん。

デュエルギグによる音楽の争いの世界を作ろうとした足立。

 

クリムゾンエンターテイメントは単純な組織だった。

手塚さんは事実上お父さん達の仲間になってくれた訳だけど。

 

そして15年前、お父さん達はクリムゾンエンターテイメントの幹部である足立を倒し、海原を海外に退ける事に成功した。

だけど今のクリムゾンエンターテイメントには、足立と手塚さんに変わる幹部。小暮 麗香が居る。

 

彼女はクリムゾンエンターテイメントという枠に囚われず、クリムゾングループの会社から手練れのミュージシャンを集めているらしい。

 

最強のバンド集団を育成していた二胴。

その二胴からクリムゾンエンターテイメントのトップバンドのJOKER×JOKER。そしてinterlude。

そして……Kiss Symphonyを自分のバンドとして手駒にしたらしい。

 

私も先日少し麗香さんと話す機会があったけど、あの人はとても怖い人だった。でもあの人は多分……。

 

小暮 麗香の率いるクリムゾングループのトップミュージシャン達。

二胴の率いる15年前から集められたミュージシャン達。

九頭竜の率いるmakarios bios。

それが私達の敵……。

 

クリムゾンエンターテイメントの話はここまでしか無かったらしい。私達の敵は思っていた以上に強大だ。

 

 

 

そしてグッズの話は特に大変な事も無さそうとの事だった。

各バンドが好きなデザインで、好きなグッズを作る事が出来る。素材や作りもしっかりしていると栞お姉ちゃんは喜んでいた。

 

 

クリムゾンの話も私達には懸念事項ではあるけれど、契約やグッズに関してはさほど問題は無かった。

問題があったのは……チューナーの話だった。

 

 

今現在、ファントムのバンドでチューナーがいるのは私がチューナーとなるBlaze Future。渚さんの妹である来夢さんがチューナーとなるDival。

そして今、Ailes Flammeとevokeでチューナーの取り合いが行われていた。取り合い……なのかな?

 

 

「紗智!お前は俺達のチューナーになれ!Ailes Flammeのチューナーなんて許さねぇ!」

 

「嫌!私は秦野くんの力になりたいの!だからAiles Flammeのチューナーになる!」

 

「鳴海ぃ~。気持ちはわかるけど紗智ちゃんはAiles Flammeのチューナーになりたいって言ってるんだしさ~?」

 

「うるせぇ響!お前は黙ってろ!」

 

「なぁ、さっち。亮の力になりたいのか?俺達のじゃねぇのか?」

 

「江口くんは黙ってて!」

 

 

手塚さんに連れられてチューナーの話を聞きに行った紗智さん達。そこで紗智さんはチューナーとしての素質を開花させたらしい。

手塚さんも驚いていたようだった。

 

 

「しかし鳴海にも困ったものだな」

 

「ああ、紗智自身が俺達のチューナーをやりたいって思わねぇと意味なんかねぇのにな」

 

「でも本当に驚いたよ。まさか河野さんにチューナーの素質があるなんて」

 

「だよね。学校ではよく話すようにはなったけど、あんまり音楽やバンドの話はしないもんね。でも河野さんならボクが遊太の時でも話しやすいかなぁ~」

 

 

紗智さんは亮さんの力になりたいとAiles Flammeのチューナーになろうとしている。しまったなぁ……私もAiles Flammeのチューナーを希望してたらもっと亮さんとお近づきになれたのに。おっと、失礼。

 

だけど妹が大好きでしょうがない鳴海さんは、evokeのチューナーに紗智さんを迎えたいらしい。

本当に困ったもんだよね。どうしたらいいんだろ?

 

 

「紗智。あんまり兄である俺を困らせるな。本来ならお前はクリムゾンとの戦いには巻き込みたくねぇんだ。どうしてもチューナーをやりたいならevokeのチューナーしか許さねぇ」

 

「お兄ちゃん。あんまり妹である私を困らせないで。本来なら志保ちゃんの力にもなりたかったんだよ。でもDivalにはもうチューナーは居るからAiles Flammeのチューナーしかやらない」

 

 

「でもまさかさっちにチューナーの素質があるなんてね。秦野もさっちがチューナーになってくれるならいいんじゃない?」

 

「ああ、確かに河野がオレ達のチューナーをやってくれんならありがたいけどよ。ただ渉と合うかどうかってのもあるしな」

 

「あ、そっか。でもSCARLETの手塚って人が絶賛してたんでしょ?何とかなるんじゃない?」

 

「そのチューナーの話を聞きに行った渉自身がよくわかってないみたいだしな……」

 

 

チューナーか……。誰にでも出来るものじゃないだけに、どこのバンドもチューナー探しは大変だよね。

 

紗智さんはどっちのチューナーになるんだろ?

 

 

 

「さて、もうこんな時間だしな。そろそろ解散すっか?」

 

お父さんがみんなに向けてそう言った。

 

「みんなSCARLETからの契約書をよく読んで、このままアマチュアバンドとして続けていくか、ファントムに所属してインディーズデビューをするか決めてくれたらいい。

このままバンド同士でここで、話し合ってもらっても構わないけどな。俺も三咲と初音とここでこれからの事を話し合うから質問も受け付けるしよ」

 

そう言ってお父さんは私とお母さんの元へと来た。

 

 

「ははは。結局誰も帰らないみたいだな」

 

「そうね。みんなにコーヒーか何か淹れてあげようかしら?」

 

今はどのバンドもバンド同士で集まって話をしているようだ。時間も時間だしご飯か何か用意した方がいいかな?もち有料で。

 

「三咲と初音にも迷惑かけちまうな」

 

「私は大丈夫だよ。BREEZEを結成する前からみんなを見て来たんだもん。BREEZE結成前の英治くんの方が迷惑だったくらいだし」

 

「私も大丈夫だよ。私の方がお父さんにこれから迷惑をかけるかもだしね。反抗期になったり思春期特有の父親嫌いになったり」

 

「そっか」

 

「あ、そうだ。ずっと気になってたんだけど、BREEZEのチューナーは誰がやってたの?」

 

お父さん達も15年前はクリムゾングループと戦ってたんだから、チューナーも居たんだろうと思う。

私にチューナーの素質があるって事はお母さんがチューナーをしていたのかな?

 

「俺達のチューナーか?まぁ予想はしていると思うが三咲がチューナーをやってくれてたぞ」

 

やっぱりお母さんがチューナーをやってたんだ。

私にチューナーの素質があるのはお母さんからの遺伝かな?

 

「じゃあチューナーの事はお母さんに色々聞かなきゃだね。タカにやっぱりお母さんの方が良かったとか思われたくないし」

 

「そうね。でもきっと初音なら大丈夫よ。お母さんより凄いチューナーになれると思う」

 

そうなのかな?実はあんまりよくわかってないんだけど…。

 

「初音」

 

私がお父さんとお母さんと話をしていると、まどかお姉ちゃんと盛夏ちゃんが話し掛けて来た。

 

「どうしたまどか?初音に何か用か?」

 

「うん、ちょっとね。うちのバンマス様は今しばかれてるみたいだし、Blaze Futureはあたしと盛夏しか居ないから話し合うとか出来なくてさ。聖羅さんも居てくれてるけど」

 

「それで~あたしとまどかさんで、これ書いたから先に渡しておこうと思って~」

 

そう言って盛夏ちゃんは私に契約書とBlaze Futureみんなの履歴書を渡して来た。え!?履歴書も!?

 

「お前らこれ…もう書いたのか?」

 

「まぁあたしらは最初から決めてたし」

 

「貴ちゃんがこういう事って履歴書も必要だろうから書いて来いって言ってたからね~」

 

私は盛夏ちゃんから契約書とみんなの履歴書を受け取った。そして契約書のバンドのメンバー欄には私の名前も書かれていた。

 

「まどかお姉ちゃん、盛夏ちゃんこの契約書…」

 

「え?何かミスあった?」

 

「ううん。私の名前も書いてあるから…」

 

「そうだよ~。初音ちゃんももうBlaze Futureのメンバーな訳だし~」

 

「今はファントムの責任者は三咲さんだからさ。初音もファントムの仲間なのにどこにも名前が無いのは寂しいっしょ」

 

まどかお姉ちゃん……盛夏ちゃん……。

 

「って訳でいいよね?三咲さん」

 

「うん、ありがとうね。まどかちゃんも盛夏ちゃんも」

 

私はついまどかお姉ちゃんに抱きついてしまった。

 

「ありがとう……まどかお姉ちゃん…盛夏ちゃんも」

 

私も…私もBlaze Futureなんだ。Blaze Futureのメンバーでいいんだね。

 

 

「あ、そうだ英治ちゃ~ん。英治ちゃんにも渡しとくね」

 

「あ?何だこりゃ?」

 

「あたしの履歴書だよ~」

 

そっか。うちのカフェタイムの時に盛夏ちゃんと美緒ちゃんがバイトしてくれるって言ってたっけ?

あ、ヤバい。まだバイトの条件とか考えてないや。

 

「あ~、バイトのやつか。律儀にありがとうな。そっかバイトの条件も考えねぇとな」

 

「まぁまた色々と決まってから連絡くれたんでもいいし~」

 

「いや、盛夏ちゃんも早く働きたいだろ?ん~…じゃあ時給は……」

 

 

その後、まだファントムに残っていた美緒ちゃんを呼んで、お父さんがバイトの条件を説明し、早速明日からバイトが開始される事になった。

 

美緒ちゃん達のGlitter Melodyもファントムに所属という事で、明日のバイト開始の時に契約書とみんなの履歴書を持ってきてくれるらしい。

 

私達の戦いはこれからだ。

 

 

 

 

-翌日

 

「いらっしゃいましぃ~」

 

「い、いらっ、いらっしゃいませ…」

 

私達は今ファントムでカフェの営業をしている。

 

「ご注文は何になさいますか~?」

 

盛夏ちゃんは前のバイトもカフェでやっていたらしく、それなりに馴れている感じだ。でも……。

 

「コーヒーおひとつですね~?ついでにカレーもいかがですか~?ここのカレーは絶品でして~」

 

ありがたいっちゃありがたいけど、お客様に色々と追加注文を提案するのはどうなんだろう?

 

「はぁ~……私も早くカフェのバイトに馴れなきゃ…」

 

「でも美緒ちゃんもちゃんと接客出来てると思うよ?ね、理奈」

 

「ええ、そうね。この様子だと奈緒も姉として安心じゃないかしら?」

 

「うん。心配してたけど、この様子だと安心出来るかな」

 

今日はDivalの契約書と履歴書を提出するのと、美緒ちゃんのバイトの様子見という事で、奈緒さんと渚さんと理奈さんと香菜お姉ちゃんと花音さんが来てくれている。

 

志保も渚さん達と一緒に来たのだけど、今は別のテーブル席で、渉さんと亮さんと拓実さんとゆーちゃん。あ、見た目はシフォンちゃんだけど、Ailes Flammeのみんなと紗智さんと栞お姉ちゃんと明日香さんと一緒に居た。

 

紗智さんは何とかAiles Flammeのチューナーになる事を許されたらしく、明日香さんはLazy Windの契約書を持ってきた所を紗智さんに捕まってしまったのだ。

紗智さんは何と言って鳴海さんを説得したんだろう?

 

 

今お父さんはタカ、トシキさん、拓斗さん、澄香お姉ちゃんと一緒にSCARLETの本社に行っている。

 

昨日出してもらったBlaze Futureの契約書、

渚さん達が持ってきたDivalの契約書、

渉さん達が持ってきたAiles Flammeの契約書、

澄香お姉ちゃんが持ってきたCanoro Feliceの契約書、

紗智さんが持ってきたevokeの契約書、

花音さんが持ってきたNoble Fateの契約書、

栞お姉ちゃんが持ってきたFABULOUS PERFUMEの契約書、

美緒さんの持ってきたGlitter Melodyの契約書、

明日香さんが持ってきたLazy Windの契約書。

 

私達ファントムのバンドはみんなインディーズデビューをしてくれる事を選んでくれた。

お父さん達はその契約書を出しに行ってくれている。

 

 

「あ、いらっしゃっせー」

 

私がそんな事を考えていると、お客様がひとり入って来てくれた。

今日はAiles FlammeのみんなもDivalのみんなも居るから、入り口付近のテーブル席の方がいいかな?

 

このお客様のご案内は美緒さんにお願いした。

 

「わ、わかりました…やってみます!」

 

美緒さんはお客様の方へ行って、私が提案した通りの案内をしてくれた。

 

…………うん、バッチリだよ美緒さん!

 

「あ、あんな感じで案内して来ましたけど…」

 

「うん。バッチリだよ!美緒さんも物覚え早いから助かります♪」

 

「あ、私は初音ちゃ……初音さんの部下みたいなものですし、美緒って呼んで頂いて大丈夫ですよ?」

 

美緒さん…。うん、よし……。

 

「確かにここでは雇い主とアルバイトってのあるかもですけど、私は年下ですから…出来ればタメ語で初音って呼んでくれた方が……嬉しいです。美緒」

 

……ど、どうかな?

 

「………うん、わかったよ初音。私にもタメ語でよろしく」

 

「……!うん!ありがとう美緒!!」

 

わぁぁぁ♪美緒からも初音って呼んでもらえるようになっちゃった。何か嬉しいな。

 

「ふっふっふ~。美少女JD盛夏ちゃん登場~」

 

「せ、盛夏(ちゃん)(さん)」

 

「あたしも盛夏って気軽に呼び捨てにしてくれていいんだよ~?初音、美緒」

 

盛夏ちゃん……。

 

「うん!わかったよ盛夏!」

 

えへへ、盛夏とも何か近づけた感じする。

 

「いえ、盛夏さんはお姉ちゃんの親友ですし。

何となく呼びタメは無理です」

 

え?美緒?

 

「ヨヨヨヨヨ~。あたしは美緒と仲良くしたいだけなのに、フレンドリーに接してもらえないのでした~。シクシク」

 

「あ、いえ、フレンドリーとかそんな話じゃなくて…」

 

私達がそんな話をしていると、先程入店してくれたお客様が手を挙げてくれていた。あ、ご注文かな?

 

「あ、あたしがご注文聞いてくるね~。美緒もあたしの接客術をよく見てるんだよ~?」

 

そして盛夏はお客様の元へと行き、

 

 

「ご注文は決まりましたか~?カレーはいかがですか?あたしはここのカレーが大好きでして~」

 

「え?カレーですか…?」

 

 

盛夏!?何でカレーを勧めてるの!?

いや、うちのカレー大好きって言ってくれるのは嬉しいけど…!

 

 

「あ、すみません。ホットコーヒーをお願い出来ますか?」

 

「承知しました~。ホットコーヒーおひとつですね。

おひとつですか~?一緒にカレーもいかがですか~?

今ならセットでお安くなっております~」

 

「え!?」

 

 

ほら!盛夏!お客様もびっくりしてるよ!

その接客はあんまりよろしくないよ!

 

「な、なるほど。あのように接客をすれば…」

 

美緒!?ダメだからね!?

 

「初音~。カレー大盛りとホットコーヒーをお願~い」

 

盛夏!?カレーの注文を取るのに成功したの!?しかも大盛り!?

 

 

「盛夏ってこういうとこ凄いよね~」

 

「香菜も似たようなものじゃない。私が大学に復学した時……私はひとりで居たのに香菜も盛夏もお構い無しに私に話し掛けて来て…」

 

「私も盛夏のああいう所は凄いと思うんだよね~。あの物怖じしない所とか真似したいっていうか~?」

 

「奈緒も大学の頃と今は全然違うじゃん」

 

「よ~し!俺もファミレスでのバイトが始まったら盛夏ねーちゃんみたいに…!」

 

「渉。それは逆効果だと思うからやらない方がいい」

 

「明日香ちゃんの言う通りだと思うよ?ボクもそれは逆効果だと思う」

 

「オレも盛夏さんみたいにうちの客には蕎麦を勧めてるけどな」

 

 

はぁ……。今回は良かったけど、次からはこんな事しないように言っておかないとね…。

 

そんな事を考えながらホットコーヒーを淹れ、盛夏にお客様に出してもらうようお願いして、お客様にまずはコーヒーを出してもらった。

さ、カレーの準備は美緒に教えようかな。

 

 

そんな事を思っていると、ファントムの扉が開かれた。

 

 

「留守番ご苦労様だったな。今帰ったぞ」

 

「あ~、ファントムはクーラーが効いてて最高だな」

 

 

どうやらお父さん達が帰って来たようだ。

 

だけどお父さんとタカはファントムに入った所で固まっていた。それから少ししてから…

 

 

「澄香!トシキ!絶対にファントムの中に入って来んな!!どんだけヤバそうな匂いがしても絶対に入って来るな!!そこで拓斗を抑えとけ!!」

 

え…タカ…?どうしたの?

 

「初音!そこから絶対に動くな!!美緒ちゃんも!」

 

「盛夏!!すぐにそいつから離れろ!!」

 

「ほえ~?」

 

お父さんもタカも…どうしたの?怖いよ…?

 

 

お父さんとタカは盛夏が接客していたお客様の元へと行った。

 

「やあ、久しぶりだね。タカ、英治。外には拓斗やトシキ、それに澄香もいるのかな?」

 

「何でお前がこんな所に居やがる……」

 

「お前……よく俺らの前に顔出せたな?タカ、どうする?」

 

お父さん達の知り合い?もしかして15年前に関係のある人なのかな?

 

「いや、仕事でこっちに出張になったものでね。久しぶりに挨拶を…と思ってね。それと忠告かな」

 

「忠告だぁ?お前…自分の立場わかってんのか?」

 

「ふふふ、怖いことだ。だが私には何もしない方がいい。ここの周りには既にデュエルギグ暗殺者を配備させてある。どういう事か意味はわかるだろう?」

 

デュエルギグ暗殺者…?もしかしてこの人…。

 

「チッ」

 

お父さんとタカはそのお客様のテーブルに、向かい合うように座った。

 

「……で?何の用だ?っても本当の事を話すかどうかわかったもんじゃねぇけどな」

 

「いやいや、本当にこんな立派なカフェを作った英治にね。おめでとうと言いに来ただけさ」

 

「おめでとうだぁ?祝いの言葉より祝い金でも用意して来い。そのコーヒー代は俺が奢ってやるよ。だから今すぐ俺達の前から消えろ」

 

お父さんがあんな事を言うなんて…。やっぱりこの人はクリムゾンエンターテイメントの…。

 

「フフフ、実はカレーの大盛りも注文していてね。英治、その分も奢ってくれるのかな?」

 

「初音。このおっさんのカレーの注文はキャンセルだ」

 

「せっかく可愛い孫娘が勧めてくれたカレーなんだがねぇ」

 

……!?

孫娘が……勧めた…?盛夏?

 

「は?孫娘?何言ってんのお前?とうとうボケたの?」

 

「タカ。俺このおっさん怖いんだけど?どうしよう?」

 

お父さん達のこの態度…。

盛夏の事を孫娘って…この人が海原 神人?

 

「フフフ、私を誰だと思っているのかね?聖羅の娘である盛夏の事を知らないと思っていたかな?」

 

「……てめぇ」

 

「タカ、あんま熱くなんな…」

 

「フフフ、梓ももうすぐ日本に帰って来るそうじゃないか。これは楽しみな事だよ」

 

「何言ってやがる。梓は15年前に事故で…」

 

「死にはしなかったのだろう?私を欺けると思っていたのか?」

 

そんな…梓さんの事まで知っているというの?

 

 

 

「外暑~い。やっぱりファントムの中が最高だわ~」

 

「初音ちゃん、悪いけどお水貰えるかな?」

 

「トシキ、何で水なんだよ。俺は冷えたビールが飲みてぇ」

 

 

 

お父さん達に気を取られていると、澄香お姉ちゃんとトシキさんと拓斗さんがファントムに入って来て、お父さん達の隣のテーブルに座った。

 

 

「バッ!お前ら入って来んなって言っただろ!」

 

「いや~、俺も今更こいつの顔なんて見たくなかったんだけどね。外は暑いからさ」

 

「心配すんなタカ。俺は今のお前程熱くなってねぇよ。正直ここでぶっ倒しておきてぇとは思ってるけどな」

 

「ははは。拓斗も相変わらず怖い事だ。久しぶりだね、トシキ、拓斗、澄香」

 

「そんな事より海原…何であんたがせっちゃんと梓の事を知ってる訳?」

 

 

 

海原…澄香お姉ちゃんはあの人の事をそう呼んだ。

やっぱりあの人がクリムゾンエンターテイメントの創始者海原 神人なんだ…。

 

 

 

「あの人が…あたしのおじーちゃん…」

 

「盛夏さん、あんまり前に出ないで。私の後ろに居て下さい」

 

 

「あいつが海原…。私達の敵…」

 

「まさかラスボスがいきなりファントムに来るなんてね~」

 

「ここで倒しておきたい所だけれど…」

 

「うん、ここはデュエルギグ暗殺者に囲まれてるみたいだしね。下手に戦えない…」

 

「理奈?倒すって何?あたし達やってるのバンドだよね?奈緒も何言ってるの?」

 

 

 

「ど、どうしよう…?」

 

「小松、心配すんな。ここはにーちゃん達に任せとこう」

 

「あいつがクリムゾンエンターテイメントのボス…私のお父さんとお母さんの仇…」

 

「明日香ちゃん、志保ちゃんダメだよ。今は我慢して」

 

「わ、わかってるよ、さっち。あたしも状況はわかってるし」

 

「けど他のお客様は帰った後で良かったよね」

 

「ああ、最悪はオレ達全員でかかれば…」

 

「りょ、亮も怖い事言わないでよ」

 

 

 

「フフフ、まわりも殺気立っているね。デュエルギグ暗殺者を配備しておいて良かったよ」

 

「残念だけど。あんたらご自慢のデュエルギグ暗殺者は私の私設部隊のみんなで倒してくれたみたいだから」

 

「ほう…なるほど。私のピンチという訳か」

 

「は?ふざけんな。どうせ他の手も持ってんだろ?余裕かよ」

 

「さすがタカだね。熱くなってみせてはいても冷静な判断だ」

 

他の手も…?一体何が…?

 

「さて、澄香。私が何故盛夏と梓の事を知っているか?だったね」

 

そうだ。盛夏の事はBlaze Futureの事があるから、調べられたんだとしても、何で梓さんの事まで…。

梓さんの事はダミーのお墓を作ったり、知り合いにも秘密にしていたくらいなのに…。

 

「私は実は昔からSNSで聖羅をフォローしていてね。盛夏の事も成長日記とか呟いて写真までUPされていたからね」

 

〈〈〈は!?〉〉〉

 

「そして聖羅と梓はお互いにフォローしているから、そこで梓の事もね。先日の呟きで自撮り写真付きで『私もうすぐ日本に帰りま~す(はぁと』と呟いていたのは驚いたよ」

 

〈〈〈は!?〉〉〉

 

「あ、梓お姉ちゃんのSNS!?自撮り付き!?探さなきゃ!!」

 

「な、渚!落ち着いて!!」

 

 

 

「2人共本名でやっているから容易にわかるというものだよ」

 

「ア…アホなの!?あの姉妹ホント何やってんの!?」

 

「お、俺達の苦労って何だったんだ…」

 

「あ、梓のSNS…写真付き…」

 

「宮ちゃんも落ち着いて…」

 

「聖羅も梓も何やってんの…。私達の15年って…」

 

 

2人共しかも本名で写真付きでやってるんだ…?

全然隠す気ないよね。それよりこの15年よく無事だったね…。

 

 

「だが安心したまえ。私はもちろん君達ファントムも梓にも手を出すつもりはないよ。今はね」

 

「あ?」

 

「俺達に手を出すつもりはないだと?」

 

「どういうつもりだテメェ…」

 

「今は…か。でもそれっていつかは手を出すって事だよね?」

 

「15年前に散々私達に手を出して来たくせに信じろって?」

 

「フフフ、少し話をしようか?私達の目的を。その方が安心出来るのだろう?」

 

「お前らの目的なんか知った事かよ。俺らは俺らで楽しい音楽をやる。それだけだ」

 

「英治、相変わらずせっかちな事だな。

タカ、私は君の判断力は高く評価しているつもりだが、今回は話を聞いていた方がいいと思うんだが?

そもそも梓が生きている事を知っているのに、今まで私は梓には手を出さなかった。その理由も知りたくはないかね」

 

「おい、タカこんな奴の言う事なんて…」

 

「英治、悪い。ちょっと黙ってろ」

 

「私達クリムゾンエンターテイメントの目的のひとつであるアルティメットスコア。九頭竜はとても優秀でね。もうすぐ完成しそうなんだよ」

 

アルティメットスコア…?もうすぐ完成…?

そんなスコアが本当に存在するの?

 

「私がアルティメットスコアを必要としていた理由。それはね。パーフェクトスコアに対抗する為。ただそれだけだ。

パーフェクトスコアに負けないスコア、そして、パーフェクトスコアに勝たないスコア。

ブレイカースコアに破壊される事も、エビルスコアに呑まれる事もない究極なスコアが必要だっただけ」

 

「パーフェクトスコアに負けないだけじゃなく勝たないスコア…?何でそんなスコアが必要だったのよ」

 

「タカにならわかるんじゃないかね。足立と直接戦っていたタカになら…ね」

 

「足立だと…?お前…まさか…」

 

「足立と戦ったはーちゃんならわかる…?まさか…」

 

「音楽による争いの混沌の世界。そんな世界の創造が私の目的だ」

 

音楽による争いの混沌の世界?何なのそれ?

 

「足立は私の理想の世界には必要な人間だと思っていたが、私の想像を越える猛毒の持主だった。タカが足立を倒してくれた事には感謝をしているよ」

 

「海原…テメェ…」

 

「拓斗。君にも感謝をしているよ。私のクリムゾンエンターテイメントから弱いバンドを排除してくれていたんだってね。おかげで精鋭だけが残る組織へとなる事が出来た」

 

拓斗さん達が倒してきた自分達の仲間のバンドマンを…そんな風に…!!

 

「おかげで皇紅蓮の率いるクリムゾンミュージックを倒す準備が出来た。まぁ、皇紅蓮の足元には最大の癌が居るのだが……そこに気付いていないとはどこまでも愚かな男だ」

 

クリムゾンミュージックの皇紅蓮?

足元に最大の癌…って!?

もしかしてクリムゾンエンターテイメントはクリムゾンミュージックを潰すつもりなの!?

 

「わかんねぇな…。そんでお前に何の得があんの?クリムゾンミュージックを潰す?音楽による争いの世界?お前何が楽しいの?中二病なの?」

 

「デュエルギグというものはすごく金になってね。みんなこぞってパーフェクトスコアを欲しがっているんだよ。パーフェクトスコアの曲なんて誰にでも歌える訳でもないのに。いや~、人というのは実に愚かだね」

 

「なるほどな。そんでクリムゾンミュージックを潰してパーフェクトスコアを奪い、パーフェクトスコアを欲しがっているバンドマンに売り付けて、アルティメットスコアもばら蒔く。デュエルギグの戦争を引き起こそうって訳か。バカじゃねぇの?」

 

「やはり頭の回転は早いね。その通りだよ」

 

「ヘドが出るぜ。お前のそんなバカげた理想の為に何人のバンドマンが夢を潰したと思ってんだ?」

 

「タカ…」

 

タカ…本当に怒ってる…。こんなタカを見るのは始めてかも…。

 

「でもこれは君達にとってはいい話だろう?私達はクリムゾンミュージックを倒す為に忙しいからね。その間は好きに自由に音楽がやれる。自由な音楽のない世界を作ろうとしているクリムゾンミュージックは君達にも敵だろう?

私達がそのクリムゾンミュージックを潰してやろうと言っているんだ!君達は大人しくしていたまえ!」

 

「おい、タカ…」

 

「心配すんな拓斗。熱くなってねぇよ。

海原、そんで何で梓を狙わなくなった?その理由だけが読めねぇ。もったいぶらずに教えろよ」

 

「そうだな。私の理想のアルティメットスコアを歌う。それが出来るのは梓だけだと思っていた。昔の私も愚かだったね。私の新しい部下の小暮 麗香も優秀でね。すごいバンドを集めてくれている」

 

「だから梓は必要なくなったってか……?」

 

「もちろんそれだけではない。私の理想のアルティメットスコア。そのアルティメットスコアですら必要としない最高の素材が私達には居るんだ」

 

「……makarios bios」

 

「その通りだよ澄香。私達にはmakarios biosが居る!あの子達にはパーフェクトスコアもアルティメットスコアもブレイカースコアもエビルスコアも必要ない!ただ歌うだけでいいんだ!これほど最高の存在が……クッ…」

 

「タカ…お前…」

 

「ぐぅぅ……タカ…!」

 

いつの間にかタカが海原の左肩を右手で掴んでいた。

海原はすごく苦しそうな顔をしている。タカがおもいっきり握ってるんだ……。

 

 

そ、そんな奴の肩なんてそのまま潰しちゃえ!

 

 

私はそう思ったけどタカは海原から手を離した。

 

 

「さっきも言ったろ?ヘドが出るぜ…。

もう俺達の前から消えろ。出来れば2度とそのツラ見せんな」

 

「フ、フフフ…わかった。私は帰らせてもらおう。

私達は君達の邪魔はしない。だから君達も私の邪魔をしてくれるなよ。そう忠告しに来ただけだ」

 

そして海原はそのまま帰ろうとした。

だけど入口前で振り返って…

 

「あ、そうそう。君達の探している39番だがね。実に素晴らしい働きをしてくれているよ。さすが我が娘のクローン体だ」

 

「サガシモノ…やっぱりまだクリムゾンに…」

 

「それにしても……私の期待していた36番はどこに脱走したんだろうねぇ?あの日39番と一緒に脱走してそれっきりだ…」

 

「36番…?梓と会ったあの子以外にも…?」

 

「タカ。もし見つける事が出来たら私達の元へ帰ってくるように伝えてくれないかね?

36番はお前のクローン体だからお前の言う事なら聞いてくれるだろう」

 

「あ?俺の…クローン体…?」

 

タカのクローン体…?え?タカの遺伝子で……makarios biosを…?

 

「海原…!てめぇ!待ちやがれ!」

 

「さらばだ」

 

そう言ってファントムから出ていった海原をタカが追って行ったけど……。

タカは少ししてから戻ってきた。

 

 

 

 

「俺の遺伝子か……参ったな…」

 

「タカ…ま、まぁ気にすんなよ!お前の遺伝子って事はきっと今もどっかで元気に生きてるって!」

 

「英治…そういう問題じゃねぇよ…」

 

タカ……やっぱりショックだよね…。

 

「makarios biosはみんな女の子だから…タカの遺伝子を持った女の子…」

 

え?makarios biosってみんな女の子なの?

 

「そうなんだよな…。どうしよう?俺の娘みたいなもんだろ?俺の娘とか絶対超可愛いしな。変な男に騙されてたらどうしよう?パパ超心配」

 

「こ、この男は何を急に父性に目覚めてるのかしら?でも見つけてあげたいわね。変な男に騙されてたら……私も心配だわ。ちゃんと守ってあげないといけないわね。あ、胸が苦しく……」

 

「理奈ちも何で母性に目覚めてんの?」

 

「貴の遺伝子を持った女の子なら私も見つけてあげたいです。貴の娘って事は私の娘みたいなもんですし」

 

「お姉ちゃんは何を言ってるの?」

 

「先輩の娘か……。ママ…お母さん…どっちがいいかな?」

 

「渚?何の相談なのそれ?」

 

「どうしよう…タカの娘…ごめんね、梓…!」

 

「澄香ちゃんは何を謝ってるの?」

 

 

………意外とファントムのバンドのメンバーに居たりして。ってさすがにそれは無いか。

 

 

「ねぇ拓斗…一応聞いておくけど私の…」

 

「心配すんな。お前の両親はちゃんといるから」

 

「良かった…架純の事をお母さんと呼ぶ事にならなくて…」

 

「おい…架純のやつもマジなの?」

 

 

SCARLETとクリムゾンと私達ファントム…。

 

今、新たな戦いが始まろうとしているんだ…。


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