バンやろ外伝 -another gig-   作:高瀬あきと

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第2話 makarios bios

俺の名前は江口 渉。

 

昨日のGlitter Melodyのライブを見て、いてもたってもいられなくなり、俺は1人でカラオケに来ていた。

 

受付に居たのは雨宮だった。

 

 

『え?あんた今日はぼっちなの?せっかくの日曜なのに寂しい青春だね』

 

 

とか、言われたもんだから、必要以上にドリンクをオーダーして忙しくしてやろうと思う。フリードリンクだしなっ!

 

だけど、何故か3杯目を注文してから一切ドリンクが来なくなった。喉乾いたんだけどどうしようか?

 

 

俺は届かないドリンクを不安に思いながら、ちょうど曲が終わったのでトイレに行く事にし、そのついでに受付まで行って雨宮に文句を言ってやった。

 

 

『ドリンクを理由にあたしを何度も呼んで…。そんなにあたしに会いたいの?ごめんね、江口の事は友達としてしか見れないよ…』

 

 

なんて事を言われたもんだから、俺は2度とドリンクは注文しないと心に誓った。

 

かと言ってドリンク無しで歌い続けるのもなぁ。

 

そんな事を考えながらカラオケの部屋に戻ろうとした時、

 

「あっ…」

 

「お?」

 

そこに居たのはSCARLETの風見 有希さん。ゆきねぇちゃんだった。

 

「ゆきねぇちゃんも今日はカラオケなのか?」

 

「江口くんか…あのあれだ。私がここに居た事は内緒にしてくれないか?」

 

「え?何でだ?」

 

内緒に…?内緒にしてて欲しいなら、別に誰かに言ったりはしないけど、何で内緒にしてて欲しいんだろう?

 

「ボスにはあんまり外で歌うなと言われているし、1人でカラオケとか手塚に知られたら何を言われるかわかったものじゃないのでね」

 

ゆきねぇちゃんも今日はヒトカラなのか。

 

「まぁ、内緒にしてて欲しいなら誰にも言わないから安心してくれ!」

 

「すまないね。ありがとう」

 

う~ん、せっかく会えたし聞いてみてもいいかな?

 

「なぁ?ゆきねぇちゃんってSCARLETでバンドやってるんだよな?」

 

「ん?ああ。まぁね」

 

「せっかくだしゆきねぇちゃんの歌、聞いてみたいんだけどダメかな?1曲だけでいいからさ」

 

「私の歌を?」

 

ダメかな?ゆきねぇちゃんは顎に手を当てて考え込んでいるようだった。

 

「やっぱりダメか?」

 

「………まぁいいだろう。私の部屋に来たまえ」

 

「本当か!ありがとうなっ!」

 

俺はゆきねぇちゃんに連れられて、ゆきねぇちゃんの部屋に向かった。ダメ元で言ってみるもんだよなぁ。

 

SCARLETのバンドマンの歌か。

きっとすげぇ上手いんだろうな。勉強させてもらうぜ!ゆきねぇちゃん!!

 

 

 

 

「さて、せっかくなんだ。江口くんのリクエストに応えてあげよう。歌ってほしい曲はあるのかな?」

 

「あ、歌ってほしい曲か。別にそこは考えてなかったな。ゆきねぇちゃんの歌声を聞きたかっただけだし」

 

「そんなに期待する程の歌声はしていないがね。しかし、何を歌ったものか」

 

ゆきねぇちゃんに歌ってほしい曲か…。

何があるかな?さすがにSCARLETの曲ってのはカラオケに入ってねぇだろうしな。

あっ、それなら…。

 

「それなら、ゆきねぇちゃんが得意な曲を歌ってみてくれよ!」

 

「私の得意な曲か…。上手く歌えないと恥ずかしい想いをするな。さて、何を歌うか…。あ、BREEZEの曲なら江口くんもわかるかな?」

 

「BREEZEの曲?ああ、ある程度はわかるぞ。にーちゃんにライブDVD借りて何度も見たしな!」

 

「パパに?」

 

「え?」

 

パパ…?パパってにーちゃんの事か?

 

「ゆきねぇちゃん…パパって…?」

 

「え?あ、え?え、江口くん?どうかしたかね?パパ?何を言ってるんだ?」

 

「いや、今ゆきねぇちゃんパパって言わなかったか?パパってにーちゃんの事か?」

 

にーちゃんがパパ?こんな大きな子供が?

いや、にーちゃん独身だしな?あ、もしかして大人な関係のパパか?

 

「江口くん…聞き間違いは止めてくれないか?しかもタカの事をパパ?ありえないな」

 

お?聞き間違い?

 

「確かにタカの事を言ったわけだが、『パパ』ではなく『バカ』と言ったのだがね」

 

パパじゃなくてバカ?

あれ?そう言ったのか?俺の聞き間違い?

 

「では、BREEZEの歌を歌うか…。『Future』はカラオケには無いのか…。なら『ヴァンパイア』にしておくかな」

 

そう言ってゆきねぇちゃんはBREEZEの『ヴァンパイア』を予約して、マイクを持って立ち上がった。

 

「ライブだと平気なのだが、カラオケを人前で歌うとなると緊張するものだな」

 

 

♪♪

♪♪♪

 

 

えっ…?ゆきねぇちゃんの歌…。こ、こんなにすげぇのか!?カラオケで!?

 

俺はゆきねぇちゃんの歌を聞いて奮えていた。

ゆきねぇちゃんの歌声は力強く、そして優しい歌声だった。歌詞のフレーズが心にドスンと入ってくる。

 

これがSCARLETのボーカルの歌声か…!!

 

 

♪♪

♪♪♪

 

 

「ふぅ…。どうだったかね?」

 

「……凄かった。まるで歌詞の世界に入り込んだような感覚になって」

 

これがクリムゾンと戦ってきたゆきねぇちゃんの歌声か。

 

……遠い。俺なんかじゃまだまだ追いつけねぇ。

BLASTの大和とも、interludeの虎次郎とも違った凄さ。

 

なのに何でだろう。すげぇワクワクする。

もっともっと歌って、いつかにーちゃんやねーちゃん、大和や、ゆきねぇちゃんみたいに歌いたいって思った。

 

 

ん?にーちゃん?

 

 

「そうか、ありがとう」

 

「そういや、ゆきねぇちゃんの歌ってさ。なんかにーちゃんの歌に似てるな?今のにーちゃんの歌じゃなくて、BREEZEん時のにーちゃんの歌に」

 

「ふぇ?パパに?///」

 

ふぇ?笛?

え?ってかやっぱりパパって言わなかったか?

しかも微妙に喜んでる感じがする?

 

「なぁ?やっぱりゆきねぇちゃんってにーちゃんの事…」

 

「確かにパパって呼んだよね?」

 

え?雨宮?

何で雨宮が俺達の部屋に居るんだ?

 

「え?何の事かね?そ、それより雨宮さんは何故ここに?」

 

「江口にドリンクを持ってってあげようと思ったら、有希さんと一緒に部屋に入ってくのを見てね。悪いけど何の話をしてるのかな?って思ってさ」

 

ま、まさか雨宮のやつ…。

俺とゆきねぇちゃんがラブな関係と勘違いして、ヤキモチを妬いて俺達の話を盗み聞きしたって事か!?

 

「江口。ないから。あんまり気持ち悪い事考えてると本気で抹殺するよ?社会的に」

 

よーし、どうやら今日も安定に心は読まれてるようだな。

 

「それより貴がパパってどういう事?あのチキン野郎にそんな変な関係を作る度胸なんか無いと思うし」

 

にーちゃん…。

 

「さっきから雨宮さんは何を言っているのかね?タカの事をパパなんて呼ぶわけがないだろう?」

 

「あんた…makarios bios?貴の遺伝子の…クリムゾンを脱走したっていう36番じゃないの?」

 

36番?にーちゃんの遺伝子のって…。

クリムゾンエンターテイメントの海原が言っていた?

 

「何の事だかわからないな。タカの遺伝子?クリムゾンを脱走?何か漫画かアニメの話かな?」

 

「ごまかさないでっ!!」

 

あ、雨宮…?何でこんなに怒ってんだ?

 

「……出来ればここにいる雨宮さんと江口くんだけの秘密にしていて欲しい。その代わりと言っては何だが…聞きたい事には出来るだけは答えよう」

 

「オッケ。ちょっと待ってて」

 

そう言って雨宮は部屋に備え付けられていた内線を手に取った。

 

「あ、店長?悪いんですけど人生で3回あるチャンスの内の1回目が来たので早退させてほしいんですけど?」

 

人生で3回あるチャンス?

 

「あ、はい。わかりました。今度拓斗さんのパンツを…。え?はい。洗濯前ですね?友達に頼んでおきます」

 

拓斗にーちゃんの?パンツ?

 

「あたしの早退は許可された。じゃあ、誰にも言わないから質問に答えてもらいますよ?」

 

ちょっと待て雨宮。

早退が許可されたってのはいい。だけど拓斗にーちゃんのパンツって何だ?

 

「いいだろう。何でも聞いてくれたまえ。ただし、出来る限りだ。そこだけは譲歩してくれたまえ」

 

「わかりました。江口、あんたも今日の事は口外するんじゃないよ。修学旅行には行きたいでしょ?」

 

いや、俺は内緒にしてくれって話は言わないけどな?

修学旅行には行きたいでしょって、その脅し何なの?もし喋ったら俺どうなるの?

 

 

「さっきのあたしの質問。まずアレには答えられますか?」

 

「そうだな。私はBREEZEの葉川 貴の遺伝子によって造られたmakarios biosだ。当時は36番と呼ばれていた。

私は父親のような存在のタカに会いたいと思い、クリムゾンエンターテイメントを脱走した。タカに会える事は叶わなかったが、Artemisのドラマーである月野 日奈子に保護されて今に至る。……これで満足かな?」

 

「そか。やっぱり貴のmakarios biosなんだ…」

 

ゆきねぇちゃんがにーちゃんの遺伝子で…?

だから、にーちゃんの歌に似てた?

いや、何だかあんまりしっくり来ねぇ。何でだ?

 

「質問は以上かな?」

 

「まだです。その事は何で内緒に?貴になら言ってもいいんじゃないですか?」

 

そうだな。にーちゃんは自分のmakarios biosがって心配してたみたいだし…。

 

「その答えをする前に私からも質問をしていいかな?」

 

「……まぁいいです。どうぞ」

 

「私がmakarios biosだという事。それはいい。

だが、36番がタカのmakarios biosだと雨宮さんは知っていた。それはタカも自分のmakarios biosが存在する事を知っているって事だね?」

 

「…はい。貴も知っています。先日クリムゾンエンターテイメントの海原に会って、貴のmakarios biosが存在する事をその時に…」

 

「そうか。海原は戻って来ていたか。

では、先程の雨宮さんの質問に答えよう。タカが自分のmakarios biosが存在すると知った。あの男の事だ。形振り構わず私を探すだろう」

 

「そうですよ!貴は有希さんの事を…36番の事を知った!だから…!」

 

「名乗り出るよ」

 

え?名乗り出る?

 

「ちょ、名乗り出る…?その…貴にですか?」

 

「ああ。タカ…もういいか。

パパには私の事を話す。私の事を知ったのならそれがいいだろうしね」

 

「内緒だったんじゃないんですか?だから今まで…」

 

「パパには私の存在を知られていなかった。だから内緒にしていただけだ。あの男はチキンの癖に無茶をするからな。私の存在を知ってしまったのなら、早めに話した方が賢明だろう」

 

本当にゆきねぇちゃんは…にーちゃんの…。

 

「海原も余計な話をしてくれたものだな。いいだろう。来週の土曜日、江口くんも雨宮さんも予定を空けててくれたまえ。タカも呼び出して私の事を話す」

 

「な、何で来週何ですか?」

 

「私はSCARLETのバンドマンでもある。ボスや手塚にも話しは通しておかなくてはな。そして、私が逃げないという証明の為にもキミ達に立ち会ってもらおうとね。土曜日なら学校も休みだろう?」

 

「そうです…ね。わかりました。来週の土曜日は空けときます」

 

来週の土曜日俺も…?いや、別にいいけどな?

ゆきねぇちゃんも雨宮も俺も立ち会ってって、話なのに何で俺の予定は聞いてくれないんだ?お構い無しか?

 

「もうひとつ…質問があるんですけど」

 

「何かな?」

 

「39番。梓さんのmakarios biosは…今は…」

 

「39番か。あの子なら元気にしているようだ」

 

元気にしている?にーちゃん達が探してるっていうmakarios biosが?

 

「元気にしているって…。まさか39番も日奈子さんに保護されて?」

 

「いや、彼女はクリムゾンに戻った。木原 梓が生きている事を知らないだろうしね。自分が脱走したからと負い目を感じているんだろう」

 

「39番が元気にしているって知っているのなら、梓さんの事を教えてあげれば…!」

 

「私が39番を見掛けたのは昨日たまたまだ。15年振りにね」

 

昨日見掛けた?待てよ。ゆきねぇちゃんも確か昨日はGlitter Melodyのライブに…。

まさか昨日ファントムに39番が居たのか!?

 

「あの子がどういうつもりや経緯でGlitter Melodyのライブに来ていたのかは知らないが、他のmakarios biosと一緒に居たのでね。さすがに声は掛けれないというものだ」

 

「39番が昨日のライブに…?まさか本当に美来さんが39番なんじゃ」

 

「雨宮さんとあの子は知り合いなのか?」

 

「やっぱり…美来さんなんですか?」

 

「ああ、今は美来と名乗っているようだ」

 

そんな…美来ねーちゃんが39番…?

お? 美来ねーちゃん?美来ねーちゃんって誰だ?

俺の会った事ある人なのかな?

 

「美来さんとは少し知り合いでして…実は…」

 

 

そして雨宮はにーちゃんと行った旅行での事。

南国旅行の時に東のグループで美来ねーちゃんと会った事。

昨日のライブ前にファントムで会った事を話してくれた。

 

 

「そうか。タカだけではなく、BREEZEのメンバーやArtemisのメンバーも美来とは会っているのか。

しかし、うちのボスもタカも何故美来が39番だとわからないんだ。何か黒い陰謀でも働いているのか?」

 

って事は、にーちゃん達は36番にも39番にも会ってるって事か…?

15年間必死で探してたのに、こんなあっさり見つかるなんてな。世の中何が起こるかわかんねーな。

 

 

 

 

そして俺達はカラオケ店を出た。

俺も雨宮ももう少しゆきねぇちゃんと話したいとは思ったけど、来週の土曜日にも会う約束はしてるしな。

その時に色々話を聞けばいいか。

 

俺と雨宮はこのままファントムに遊びに行く事にしたけど、ゆきねぇちゃんは帰って日奈子ねーちゃんと話をするらしい。

 

 

「しーちゃん?」

 

 

「え?」

 

しーちゃん?雨宮の事か?

 

「な、何で…?美来さん…?」

 

美来さん?雨宮をしーちゃんと呼んだ人。

雨宮はこの女の子を美来さんと言った。

 

この女の子が木原 梓って人のmakarios bios?39番なのか?

 

「こんな所でしーちゃんと会うとは超奇遇。昨日振りだね」

 

「あ、は…はい。お久しぶりです…」

 

「久しぶり?昨日会ったばっかだけど?」

 

雨宮の奴テンパってるのか?

まぁ、無理もないか。こんなご都合主義っていうか何というか。こんなタイミングで会うなんて普通ありえねぇもんな。

 

「久しぶりだな」

 

「ん?綺麗なお姉さん?何者?久しぶり?」

 

「私だよ39番」

 

「39番?何の事?」

 

「私は36番と呼ばれていた」

 

「……サム?生きていたの?何で…今まで何処に!?」

 

「私はサムと言う名前は捨てたのだよ、サク」

 

サム?サク?

……あ?36だからサム?そんで39だからサク?

てか、女の子なのにサムって…。

 

「髪の毛が短くなってるからわからなかった。サム。何でしーちゃんと一緒に居るの?」

 

「サムと呼ぶのは止めてもらおうか。私は今は風音 有希という名前を貰ってね。希望なんて無いのに有る希望とかマジうける」

 

「有希か…。あたしも今はサクじゃない。美来。

美しい未来なんて無いのに美来とか超うける」

 

何なの?ゆきねぇちゃんには希望ないの?

そんで美来ねーちゃんには美しい未来とかないの?

 

「なるほど。上手くタカくんやなっちゃんと近付けたと思ってたんだけどな。ここまでか…」

 

にーちゃんやねーちゃんに上手く近付けた?

 

「ちょっと未来さんそれって…!?」

 

「しーちゃんと有希が一緒って事は、あたしの正体を知ったって事でしょ?」

 

「ああ、あらかた話したところだ」

 

「そっか」

 

「美来さんは貴や渚を騙してたんですか?クリムゾンエンターテイメントの……まさか小夜さんも!?」

 

小夜さん?誰だ?

ちょっと俺の置いてけぼり感すげぇんだけど?

 

「あたしも小夜もクリムゾンエンターテイメントに造られたmakarios bios。Malignant Dollというバンドでクリムゾンに歯向かうバンドと戦っている」

 

「Malignant Doll…?じゃあやっぱり貴と渚に近付いたのは…」

 

「Blaze FutureもDivalもあたしの敵。あたしが必ず倒す。もちろん江口 渉のAiles Flammeも」

 

Ailes Flammeも…?美来ねーちゃんって俺達の事も知っているってのか。

 

「酷い…。渚も貴も理奈も美来さんの事…」

 

「………あたしは」

 

ん?美来ねーちゃん?何か言いたげだな…。

 

「美来。クリムゾンを捨てて私達の元に来い。クリムゾンからはタカも水瀬さんも…私も一緒に美来を守る。だからっ!」

 

ゆきねぇちゃん…。

うん、俺もだ。俺もクリムゾンから美来ねーちゃんを守ってやる!きっとファントムのみんなも…。

 

「それは無理。あたしはクリムゾンを裏切れない」

 

「だったら…あたしは美来さんを倒しますよ?もしあたしがデュエルで勝ったら」

 

「あたしはあたしのやりたい時にしか歌わない。クリムゾンのデュエルを挑まれたら受けなければいけないという規則に従う気はない」

 

「なっ!?」

 

「心配しなくてもいつかデュエルしてあげる。しーちゃんのDivalもあたしが倒すから…」

 

何でだよ。こうなったら梓さんの事を美来ねーちゃんに…。そしたらきっと…。

 

「あ、あのさ!梓さんは…」

 

俺がそこまで言った時、俺はゆきねぇちゃんに肩を掴まれた。

 

「美来。私達と一緒に来ないのは何か理由があるのか?」

 

ゆきねぇちゃん?

 

「……有希。会えて良かった。元気そうで」

 

「美来?」

 

「バイバイ」

 

そう言って美来ねーちゃんはいきなり懐から出したボールを地面に叩きつけた。そして辺りは煙に包まれた。

え?何これ?

 

「ケホッケホッ、み、美来さん…!?」

 

「煙玉?チッ…」

 

 

 

煙が晴れた時、そこには美来ねーちゃんの姿は無かった。

 

 

「逃げられたか…。すまない。私の判断ミスだ」

 

「いや、煙玉を持ってるとか思ってもなかったしな。ゆきねぇちゃんのせいじゃねぇだろ」

 

「私が江口くんを止めずに、梓が生きている事を伝えていたら…美来は…」

 

「有希さんのせいじゃないですよ。あたしも美来さんに会った時にすぐに言っていれば…。クッ…渚に何て言えば…」

 

俺達はそのまましばらく動けなかった。

せっかく美来ねーちゃん、39番に会えたのに誰も梓さんの事を伝えられなかった。

 

そして、ゆきねぇちゃんは美来ねーちゃんの事は、来週の土曜日に纏めてみんなに話そうと提案してくれた。

俺や雨宮からはにーちゃんやねーちゃんに伝えにくいだろうからと、ゆきねぇちゃんが話してくれるらしい。

 

 

俺達は心にモヤモヤしたものを残したまま解散し、何か考えても、何を思っても晴れた気分にならないまま1週間が経ち、土曜日を迎えたのだった。

 

 

 

 

「まさかタカの方からボスを呼び出すとはな」

 

「そよ風で飲み会とか楽しみだよね。タカちゃんと呑むのも久しぶりだ~」

 

「あの…あたしや江口も一緒で良かったんですか?」

 

「うん。有希ちゃんがタカちゃんのmakarios biosって知っちゃったんでしょ?だから別にいいかな?って思うし」

 

「江口くんと雨宮さんの前でちゃんとタカに話すと言っただろう?」

 

俺は今、雨宮とゆきねぇちゃんと日奈子ねーちゃんとで、居酒屋そよ風に向かっていた。

 

にーちゃんにゆきねぇちゃんが36番だと伝える為に。そして、美来ねーちゃんが39番だと伝える為に…。

 

そよ風でご飯を食べながら話すとは思っていなかったけど、どうやら今日はにーちゃんが日奈子ねーちゃんを呼び出したそうだ。にーちゃんからも何か大事な話があるんだろうか?

 

「あ、そういえば有希ちゃんも自分の事以外にも何か話す事あるんだって?何の話なの?」

 

ゆきねぇちゃんから自分の事以外にもってのは、きっと美来ねーちゃんの事だろうな。

日奈子ねーちゃんにも39番の事はまだ話してないのか。

 

「着けばわかるさ。吉報と受け取るか凶報と受け取るかはボス次第だがね」

 

「凶報?え?何か怖いんだけど?」

 

 

俺達はそんな話をしながらそよ風に到着し、受付のお姉さんに部屋まで案内してもらった。

どうやら俺達が最後の到着後らしい。

 

「は!?何で!?」

 

「何でここに…?」

 

「ん?しーちゃんに有希?えぐっちゃんも?1週間振りだね」

 

「あ?美来って有希とも知り合いなの?」

 

「うん。知り合い」

 

そこにはにーちゃんと英治にーちゃんとトシキにーちゃんと拓斗にーちゃんのBREEZEの4人。

そして澄香ねーちゃんと翔子ねーちゃんArtemisのメンバー。Blaze FutureとDivalのメンバー、姫咲さんと美緒。

 

そして…美来ねーちゃんが居た…。

 

「ちょっと!美来さん!?先週あんな事言ってて何でここに!?」

 

「志保?美来お姉ちゃんと先週会ったの?え、私聞いてないよ?」

 

「タカくんに大事な話があるから来いと言われた。まさかプロポーズかと不安に思って、なっちゃんとみーちゃんに相談したらみんな集まった」

 

「そうか。だから俺はここに到着早々に渚達に殴られたのか。謎は全て解けた」

 

今から大事な話をって事なのに…。いいのかなこのメンバーって。

 

俺は一抹の不安を抱えたまま、この場に居るのだった。

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