バンやろ外伝 -another gig-   作:高瀬あきと

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第8話 15年前の遺志

「いやー!今日のevokeも最高にかっこ良かったな!」

 

「ああ、オレ達もライブやりたくなって来るよな」

 

「渉も亮も…。僕もライブやりたいけど曲作りもしなきゃだよ?来月はハロウィンだよ?」

 

「あ、そうだよな?ハロウィン編ってどうなるんだろ?」

 

「渉くんもメタな事言ってないで…。

それよりたか兄はボクらと一緒に帰って良かったの?evokeをゲストに呼んだバンドさんって、たか兄の友達のバンドじゃないの?」

 

「あ?いや、あのバンドは…なんつーか。

あいつらは俺らBREEZEとよく対バンやってたバンドの後継者的なバンドでな。あいつらは4代目で、あいつらのプロデュースしてんやつが、俺の知り合いなんだわ。知り合いってだけで友達じゃねーし」

 

「4代目?」

 

「ああ、俺の知り合いのやつらも、あのバンドの3代目だっけかな?」

 

「ふぅん、変なの」

 

俺の名前は葉川 貴。

今日はAiles Flammeの4人と一緒にevokeのライブを観に来ていた。evokeはゲスト参加なんだけどな。

 

俺はせっかくの土曜日だし、ゆっくりと惰眠を貪りたかったのだが、渉にevokeのライブに行こうと誘われた。

いつもの俺なら何か適当な理由を付けて断るのだが、evokeがゲスト出演するメインのバンドの名前を見て驚いた。

 

ONLY BLOOD(おんりーぶらっど)

唯一の血筋という意味を込めて作られたというバンド名。そのバンドは俺達がまだガキの頃に活躍していたバンドで、その音楽を初代のおっさんから託されたって奴が2代目ONLY BLOODとして活動し、俺達がBREEZEをやり始めた頃に3代目にONLY BLOODが託されたという。

 

3代目ONLY BLOODは俺達BREEZEを敵視して、何度もデュエルをした仲ではあったが、あいつらはクリムゾンエンターテイメントに寄って潰されてしまった。

 

それからONLY BLOODはその遺志も音楽も後世に託される事は無く、そのままあのバカと一緒に消えて無くなっちまったもんだと思っていたが…。

 

「んで?その4代目さんはどうだった?」

 

「ん?ああ、ONLY BLOODか?

まぁ、あのバカがプロデュースしてるだけあって、なかなか良かったな。昔を思い出したわ」

 

ONLY BLOODがあいつらの4代目だと気付いたのは、渉に今日のライブのフライヤーを貰った時。

メインバンドONLY BLOODのメンバー欄に作詞作曲として、あのバカの名前があったからだ。

 

俺も喉の事が無ければ…。BREEZEん時のヴァンパイアとかみたいなダークロックもやれたのかも知れねぇな。

あの時のような高い声が響かせられるなら…。

 

いやいやいや、あんな歌詞とか奈緒と盛夏とまどかの前で見せれないし。うん。Blaze Futureは王道ロックで攻めるのだ。ダークな歌詞は封印です。MCでも下ネタは封印したしな。うん。

 

 

「よう。タカ」

 

「ん?誰だキサマ?」

 

俺がAiles Flammeの4人と楽しく帰宅していると知らないおっさんに話し掛けられた。やだ怖いわ。

 

「なぁ、にーちゃん。あの人SCARLETの手塚さんじゃねーのか?」

 

「手塚…?知らんな」

 

俺は渉にそう言って、そのおっさんを無視して帰ろうとした。

 

「今後のSCARLETに関しての大事な話だ。つまりファントムのバンドにとっても大事な話だって事だな」

 

くっ…こ、こいつ。

俺の弱点をついて来やがって…。

 

「大事な話って何だよ」

 

「ちょっと着いて来い。Ailes Flamme、悪いな。そういう訳だからタカを借りてくぜ?」

 

「あ?ここじゃダメなのかよ?」

 

「長くなるからな」

 

はぁ~…しゃあねぇか…。

いつものふざけた態度と違ってマジモードになりやがって…。

 

「渉、亮、拓実、シフォン。悪いけどそういう事らしい。俺はこいつと行って来るわ」

 

「ああ!俺は亮の家で飯食ってからバイトだ!」

 

「拓実とシフォンはどうする?」

 

「僕はこれからバイトだからね。このまま帰るよ」

 

「ボクもバイト~」

 

渉も拓実くんもシフォンもバイトか。

せっかくの土曜日に学生さんは大変ですな。

 

そして俺達は別れ、俺はしゃーなしに手塚に着いて行ってやる事にした。

 

 

 

「おい、どこまで行くんだよ」

 

「黙って着いて来い」

 

「あ?話くらいその辺でも出来るだろうが」

 

「あー!うっせぇな!そよ風だよ!俺の奢りだから黙って着いて来い!」

 

何!?そよ風だと!?しかも奢り!?

って、こいつに奢って貰うのは何かな…。

 

「チ、そんな怪訝そうな面すんじゃねぇよ。

BREEZEの連中とArtemisの連中も呼んでんだ。あいつらも一緒だから心配すんな」

 

あ?BREEZEとArtemisだ?

余計心配になったんだけど?俺、今日は殴られたりしなくて済むよね?

 

 

 

 

その後俺達は電車に乗り、手塚とそよ風にやって来た。

てか、何でさっき渉達と別れたの?

そよ風に来るなら駅まで一緒でも良かったじゃん。

 

俺はそんな事を考えながら、手塚と一緒にそよ風に入った。

 

「あ、タカと手塚。やっと来たね。みんなもう待ってるよ」

 

「おう、晴香悪いな。タカのヤツが素直に着いて来なくてよ」

 

「まぁあたしはタカは結局来ないと思ってたんだけどね。澄香か翔子に迎えに行かせたら良かったのに」

 

ああ、確かに澄香か翔子が迎えに来てたら無駄な問答なんかせずに素直に着いて来てただろうな。殴られたりしたら嫌だし。

 

俺達が晴香に通された個室。

その部屋に入るとトシキ、拓斗、英治、梓、翔子、澄香、日奈子の7人が居たのだが、誰も座らずに立って俺達を待っていた。

 

「あ?何でお前ら座ってねぇの?てか、梓は立ってて大丈夫なの?」

 

「少しくらいは立ってられるし歩けるよ」

 

「はぁ~ん。そうなのか。それで?何で座ってねぇの?」

 

「ああ、俺も手塚さんから呼ばれただけで、何の話か知らねぇしよ。タカと手塚さんが来てから席は決めた方がいいかな?ってな」

 

ああ、なるほどな。

 

「ああ、それでか。待たせちまって悪かったな。じゃあ、奥の席にBREEZEが座って、手前の席にArtemisにするか」

 

「「「「「断る!!」」」」」

 

「あ!?何でだよ!」

 

いや、ほんと何で断るの?

さっさと話済ませて帰ろうよ。

 

「チ、めんどくせぇな。じゃあ適当でいいから好きに座れ。誰が何処に座ろうが話には影響しねぇしな」

 

そう言って手塚は奥に行って座った。

 

「おい、英治。あいついきなり上座に座りやがったぞ」

 

「ああ、ああも堂々と上座に座られるとはな」

 

「手塚め!あたしの部下のくせにあたしに上座を譲らないとは!プンプン」

 

「うるせぇな!今日は俺からお前らに話があるんだからこの位置関係がいいだろうが!それに俺は一番歳上だし、今日は俺の奢りなんだからなっ!こんぐれぇ許せ!」

 

「え?本当に手塚が出すの?じゃあSCARLETの経費は使わせないよ?」

 

「ああ、それでいい。頼むからさっさと座ってくれ」

 

そう言って奥から入り口側に向かって

日奈子、英治、翔子、トシキ

拓斗、梓、俺、澄香

という並びで座る事になった。

手塚は上座だから、日奈子と拓斗の横って形になるな。

 

「何で男女交互に座ってやがんだよ。これは合コンかよ…」

 

「あたしは社長だからね。当然上座だよ」

 

「日奈子には今後のファントムでのライブの事で聞きたい事もあったからよ」

 

「…あ、あたしは久しぶりにトシキさんと飲みたくて。2週間前は隣に座れなかったし///」

 

「あはは、俺は端っこの方が落ち着くし」

 

「俺は久しぶりに梓と隣同士で話したかったからな。梓の隣に座ろうと思ったら必然的にここになっただけだ」

 

「あたしは澄香の事もあるからこの位置関係がいいかな?って…」

 

「俺は梓に無理矢理ここに座らされたんだけど?俺も端っこのが良かったのに…」

 

「タカの隣とか触られそうで嫌だったけど、下座に座る癖が付いちゃっててさ?」

 

いや、お前俺の横嫌だったの?

でも安心してくれ。何より命の惜しい俺はお前に指一本触れるつもりねぇから。

 

「ハァ…まぁいいや」

 

そして手塚はタバコに火を着けた。

 

「さ、適当に好きなの頼んでくれ。乾杯の後に早速話に入らせてもらう」

 

 

 

そして注文したドリンクと食べ物がテーブルに並べられた。本当に飲みながら話すのか。まぁいいけど。

俺もビールを注文したしな。てか、このお話バンドのお話だよね?ライブより飲み会の描写のが多くないか?

 

「よし、飲み物はみんなに行き渡ったな。それじゃまずは乾杯すっか」

 

「待って手塚!!あたし今グレープフルーツ絞ってるから。んしょ、んしょ」

 

日奈子のやつ本当に生搾りサワーが好きだな。

 

「よし!あたしの力じゃここまでが限界!

さ、タカちゃん。残り絞って~」

 

「めんどくせぇ」

 

こいついつもこれだよな。

何でいつも俺が最後に絞らされるの?

俺より澄香とか翔子の方が絶対力強いからね?

ま、生搾りの極意は力じゃないけどな。

 

「これはSCARLETの社長として、ファントムのミュージシャンBlaze Futureのタカちゃんへの社命なんだよ」

 

「アホか」

 

「今度、うちからバンやりのクリアファイル出すんだけど?」

 

「日奈子。グレープフルーツを寄越せ。俺が生搾りの極意を見せてやろう」

 

「こいつは本当に安いな…」

 

うふふ、バンやりのクリアファイル?何それ。

もうめっちゃ楽しみなんですけど?

 

俺はグレープフルーツがしわくちゃになるまで絞り倒し、日奈子に渡してやった。あ~…手にグレープフルーツの匂いがうつっちゃった。微妙にくせぇ…。

 

「さて、これで準備はいいな。それじゃ乾杯すっか」

 

「「「「「かんぱーい!」」」」」

 

そうして俺達の飲み会は始まった。

あ、飲み会って言っちゃったよ。

 

 

「さて、早速だがな。ここにお前らを呼んだのは…」

 

「ねぇ、英治ちゃん。ファントムのライブの事で聞きたい事って何?」

 

「ん?ああ、それなんだけどよ」

 

「トシキさん。こうやって飲むの…久しぶりだね///」

 

「あはは、そうだね」

 

「梓…。お前は弱いんだから、あんま飲み過ぎんなよ?」

 

「もう!拓斗くんは!あたしもアメリカでの生活でお酒強くなったんだよ?」

 

「俺ビールおかわり」

 

「タカはいつも飲むの早いよね」

 

俺達は飲み会を楽しんでいた。

 

「いやいやいや!飲み会を楽しんでいた。じゃねーよ!聞けよ!俺の話を!!」

 

「もう!手塚うるさい!」

 

「そうだぜ!久しぶりに梓と飲めてるってのによ!」

 

「日奈子も拓斗も黙れ!とりあえず俺の話を聞け!その後は好きに話したらいいからよ!」

 

「うん、日奈子も拓斗くんも…。まずは手塚さんの話を聞いてくれないかな?」

 

「む!梓ちゃんが言うならしょうがないか…」

 

「梓の頼みならしょうがねぇ。さぁ話せ手塚。手短にな」

 

「あ、俺ビールおかわり」

 

「あ、タカ、あたしもおかわり。トシキさんもおかわり頼みます?」

 

「ありがとう翔子ちゃん。俺は大丈夫だよ」

 

「チ、まぁいいか。お前ら俺がクリムゾンのミュージシャンだった頃、思い描いていた夢を覚えているか?」

 

あ?手塚の思い描いていた夢?

 

「う~ん、知らないかな?英治ちゃん知ってる?」

 

「あ?クリムゾンにいた頃の手塚さんは、クリムゾングループに潰されてしまったバンドを救済してただけじゃねぇのか?翔子は知ってるか?」

 

「え?手塚の事とか興味ないし。トシキさんは知ってますか?」

 

「俺も英ちゃんと同じ印象かな?そう言えば何でミュージシャンになったのかは知らないかな?宮ちゃんは知ってる?」

 

「手塚の夢って聞いた事あったか?梓は何か知ってるか?」

 

「タカくんは知ってる?」

 

「んあ…。手塚プロデュースのバンドでエクストリームジャパンフェスに出場して優勝する事…だったか?」

 

「え!?タカは知ってたん!?

エクストリームジャパンフェスで優勝って…。それ…私達Artemisの夢でもあったじゃん…」

 

「タカは覚えていたか」

 

「いや、お前俺以外にもこの話したの?知ってたのが俺だけじゃねぇのか?」

 

そう。手塚の思い描いていた夢。

これを俺が聞いたのは、15年前の俺のクリムゾンエンターテイメントとのラストギグの前日。

俺の喉が壊れ、手塚の左腕が壊れた前日の事だ…。

 

「ちょ、ちょっと待てよ。手塚さんプロデュースって何だよ。そもそも手塚さんはミュージシャンだったろ。自分が優勝したいとかよ…」

 

「俺は俺の実力もわかってるしな。それに当時の俺はクリムゾンエンターテイメントのミュージシャン。既にデビューしているミュージシャンは、あのフェスには参加出来ねぇだろ」

 

「それはそうかも知れないけどさ。手塚、あんたまさかファントムの子達を、エクストリームジャパンフェスに参加させたいって話?」

 

「ちょっと待って澄香ちゃん。それも無理じゃない?ファントムのバンドは、ファントムでデビューしてる事になっちゃってるし」

 

あ?それもそうか。

俺もファントムのバンドをエクストリームジャパンフェスに参加させたいとか言い出すのかと思ったんだが…。

 

「それはそれで面白そうなんだがな。まぁ、その場合は俺プロデュースって事が出来なくなる。それにあいつらとの約束は反故にしたくねぇし、お前らもあいつらには自分達の好きな音楽をやらせてやりてぇだろ?」

 

「ま、まぁね。じゃあ何なの?」

 

「そこでだ。俺と梓でも話したんだがな。俺のプロデュース、Artemisのプロデュース、そしてBREEZEのプロデュースでそれぞれバンドを結成させてぇ。どうだ?」

 

あ?俺達でバンドをプロデュースだぁ?アホかこいつ。

 

「手塚ってアホだと思ってたが、本当にアホだったな。意味がわからねぇ。特に俺はLazy Windがあるし、タカにはBlaze Futureがあるだろうがよ。他のバンドをプロデュースなんかしてる時間ねぇよ」

 

「タカ。お前はどうだ?お前はBlaze Futureになってからはダークロックを1曲も作ってねぇ。いや、今のお前の歌声じゃ作ったとしても歌えねぇだろ?作って届けたいと思わねぇか?あの頃のBREEZEの歌を!」

 

こいつ…。俺もあの頃のような歌を届けてぇって思う事はある。今の俺にはあの頃のような声はねぇわけだしな。だが…。

 

「お前はアホだな。俺も拓斗と同じ気持ちだ。そもそもBREEZEプロデュースって何だよ。そんな曲でやるなら俺プロデュースになるじゃねーか。だから俺はパス。

トシキと英治はやりたいならいいんじゃねぇか?」

 

「あはは、確かに俺も音楽から離れちゃってるしね。

でも、元BREEZEのギタリストとしてなら、ちょっと面白そうとは思っちゃったかな」

 

「俺もそうだな。俺もタカや拓斗やファントムのみんなを見てて、バンドをやりてぇって気持ちもあったからな。プロデューサーとしてならやれそうだし面白そうって思ったけどな」

 

あ?トシキと英治は面白そうって思ってんの?

それはそれで俺もあいつらの音楽を観てみたい気もするな。

 

「ねぇ、手塚。さっきあんた梓と話したって言ってたよね?それって梓はやるつもりだって事?」

 

「澄香…。うん、あたしもやりたいって思ったんだ。この前Lazy WindとAiles Flammeのライブを観て、今日はCanoro Feliceのライブを観て…」

 

「へ!?か、Canoro Feliceのライブ!?今日!?

ちょっ…私何も聞いてないんだけど!?え!?何で!?」

 

あ?Canoro Feliceのライブって商店街主催のヒーローショーのやつか?栞に誘われたけど今日はevokeのライブあったし行けなかったんだよな。

 

「う…うぅ…お嬢様…何故なのですか…じいやは…じいやは…うぅ…」

 

おいおい、喋り方がセバスになってんぞ?

てか、何でCanoro Feliceは澄香に内緒で?

 

「ぇ~…澄香聞いてなかったんだ?話さなきゃ良かったかな…」

 

「それより梓。お前はやるつもりなのか?」

 

「ん?ああ、うん。あたしももう歌うのは無理だしね。

でも、あたしのあの頃の歌。今のArtemisの…あたしの曲をプロデュースしたいなって思って…」

 

「まぁ、あたしもパスだ。でもあの頃は梓が作詞も作曲もしてたしな。お前がやりたいなら止める事もないよ」

 

「ありがとう翔子」

 

梓もやりたいって思ったのか。そうだよな。

エクストリームジャパンフェスで優勝したら、メジャーデビューの扉が開かれる。ようはメジャーデビューのオーディションみたいなフェスだ。

Artemisはそこで優勝してメジャーデビューするのが夢だったしな。

 

「ま、手塚も梓もやりてぇんならやったらいいんじゃねぇの?音楽は自由に楽しくやるもんだしな。あ、俺ビールおかわり」

 

「タカ。俺の話をちゃんと聞いていたか?」

 

「あ?ようはお前プロデュースのバンドと俺達プロデュースのバンド、そしてArtemisプロデュースのバンドを結成してエクストリームジャパンフェスに出場させてぇって事だろ?俺は嫌だけどお前らは好きにしたらいいじゃねーか」

 

「フッ」

 

あ?この野郎…。何鼻で笑ってんの?やんなら表出んぞ?渚とか理奈呼んじゃうぞ?

 

「タカくん。手塚さんはエクストリームジャパンフェスに出場させたいとは言ってないよ」

 

あ?

………確かに手塚はエクストリームジャパンフェスに出場したいとは言ってねぇな。でも、それがあいつの夢だったろ?

 

「タカ。15年前にな。俺の夢は変わったんだ」

 

「は?どういう事だよ」

 

「俺は俺のプロデュースするバンドで、BREEZEとArtemisを越えるバンドを作りてぇんだ。俺にとってBREEZEとArtemisはな、エクストリームジャパンフェスで優勝するよりも尊い目標になったんだよ」

 

手塚…。お前…。

こいつ…何も言えなくなるような事言いやがって…。

 

「俺はクリムゾンエンターテイメントの四天王と呼ばれた男でありながら、BREEZEともArtemisともデュエルする機会は無かった。まぁ、お前らの音楽の方が俺には合ってると思ったしな」

 

「それで…お前のプロデュースするバンドと俺達のプロデュースするバンドでデュエルして勝ち負け決めてぇって事か?」

 

「少し違うな。

勝ち負けはどうでもいい。俺達がプロデュースしたバンド。そいつらがどれだけ楽しんでバンドやれるか。それを観てぇだけだ」

 

どれだけ楽しんでバンドやれるか?

 

「お前も今日、ONLY BLOODのライブ観て思ったんじゃねぇか?BREEZEが、お前が喉を壊さなかったら、あの時のお前らしい音楽をもっとやれたんじゃねぇかってよ」

 

「おい手塚。テメェそれ以上タカの事を…」

 

「拓斗いいよ。気にすんな」

 

「でもよ…」

 

お前が俺をメジャーデビューさせてぇって思ってたのもわかってるよ。だからこの話はお前にとっても辛いかも知れねぇ…。

 

「ちょっ!タカ!テメェ俺の事なんか気にしてんじゃねーぞ!?」

 

「は?俺がお前なんか気にする訳ねぇだろ。自意識過剰もここまで来ると怖いからな?」

 

「だったら……いいけどよ」

 

いやいやいや!文句のひとつも言ってくれよ!

はぁ~…拓斗も気にし過ぎだっつーの。

 

「タカ。この話をお前らBREEZEやArtemisの前でしたのは他でもねぇ。お茶らけたりせずに真面目に聞け」

 

あ?普段から俺は真面目ですけど?

 

とは、思ったが手塚の野郎もマジモードだな。

さっきからスパスパ煙草ふかせやがって…。

 

 

「俺は佐倉 奈緒をボーカルとしてバンドをプロデュースしたい」

 

 

 

………は?

 

 

 

「はぁぁぁぁぁぁぁ!!?」

 

-ドン!!

 

うお、びっくりした。

つい大声出しちゃったからか、隣の個室の方に壁ドンされちゃったぜ…。俺とした事が…。

 

「ちょ、手塚お前何言ってんだよ。マジでしばくぞ?鼻毛全部抜いてやろうか?お?」

 

「ちょっと…タカくん落ち着いて」

 

「おい、手塚さん。さすがに奈緒ちゃんは無いだろ。奈緒ちゃんはBlaze Futureのギタリストだ。タカじゃなくても俺もしばきますよ?その眉毛全部剃りますよ?」

 

「英治ちゃんも落ち着いて!手塚!お前は今日でクビ。明日から会社来なくていいよ!」

 

「ひ、日奈子ちゃん落ち着いて…」

 

「日奈子。トシキさんが落ち着けって言ってるでしょ?落ち着きなさい」

 

手塚め…。大人しく話を聞いてたら奈緒をボーカルにバンドをプロデュースするだと?

奈緒はもう歌わせる訳には…。

 

「タカ。お前の気持ちもわかる!

だがよく考えろ!お前は佐倉 奈緒の歌声を聞いてどう思った!?クリムゾンエンターテイメントや海原に怯えてあいつの歌声を腐らせるのは勿体ねぇと思わねぇのか!?」

 

「クリムゾンエンターテイメントや海原に怯えてるだぁ?んな訳ねぇだろ」

 

「だったら何を拒む?」

 

「あ?だから…奈緒は俺達Blaze Futureのギタリストであって…」

 

「それが理由か?お前は佐倉 奈緒の歌を聞いてギタリストでいいと思ってんだな?それが葉川 貴の…」

 

「うるせぇよ!手塚!!」

 

わかってる。俺も奈緒の歌はすげぇって思ってる。

出来る事なら奈緒にも歌ってもらいてぇ。

奈緒がBREEZEのTAKAに憧れてくれたように、俺も奈緒の歌にドキドキした。憧れに近い気持ちを持った。

 

あれだな。奈緒とまだ知り合ってなくて、奈緒の歌を聞いてたらうっかりファンになっちゃってたレベルまである。

 

「俺は何も佐倉 奈緒をボーカルにして、ライブハウスやファントムでライブをやって行きたい訳じゃねぇ。

デビューさせたりクリムゾンとデュエルするような真似もさせるつもりもねぇ。もちろんエクストリームジャパンフェスにも参加するつもりもねぇ」

 

あ?バンドをプロデュースするのに、ライブもやらずにクリムゾンとデュエルもさせない?

クリムゾンとデュエルしねぇなら…って気もするが、ライブやらねぇなら何でバンドやんの?アホなの?

 

「フッ、佐倉 奈緒はあくまでもBlaze Futureのギタリストだ。だが、それと同時にファントムに所属するバンドマンであり、SCARLETのタレントという位置付けではある」

 

こいつさっきから何を…。

 

「覚えているか?SCARLETで番組を作りてぇと言った話を。俺のプロデュースするバンド、お前らのプロデュースするバンドはSCARLETの企画バンド。その番組内でのみ活動するバンドだ。

まぁ、人気が出りゃ番組のイベントライブとかもするつもりだけどな」

 

SCARLETの企画バンド…?

確かに番組内のみとか、番組のイベントとしてってんならクリムゾンとデュエルするような事は回避出来るか…。クリムゾンがイベントに乗り込んで来たら完全アウェイだし、その場で俺も乱入してBlaze Futureとしてデュエルやりゃいいしな…。

 

「どうだタカ。お前の心配するような事にはならねぇだろ?どうだ?」

 

「ちょっと待てよ手塚さん。それなら、手塚さんがプロデュースせずに、タカに奈緒ちゃんをプロデュースさせたらいいじゃないですか。奈緒ちゃんも憧れのBREEZEのTAKAプロデュースとかなら大喜びしそうですし」

 

 

-ドン

 

 

うわっ、びっくりした。

また隣の個室の方に壁ドンされちゃったよ。

俺らちょっと熱くなりすぎて、声が大きくなっちゃってたかな…。

 

「英治。だから佐倉 奈緒は俺がプロデュースしてぇって言ってんだろ。それに、タカが佐倉 奈緒をプロデュースするには問題がある。それはタカもわかってるだろう?」

 

「あ?奈緒ちゃんをタカがプロデュースする事に何か問題が?あ、曲じゃなくて子供作っちゃいそうだからとか?」

 

「英治。頼むから黙れ。

そうじゃねーよ。俺が奈緒をプロデュースする問題。

それは奈緒のあの歌声は俺の作った曲じゃ出せねぇ」

 

「あ?どういう事だよ」

 

「奈緒のあの歌声は奈緒が想いを込めて作った歌詞だから想いが乗る。だから、俺が歌詞を作っちまったら意味ねぇんだよ」

 

「その通りだ。俺はさっきも言ったように自分の実力はわかってるつもりだ。昔は俺も作詞をしていたが、どれもパッとしねぇ。曲はスーパーいい曲ばかりだがな」

 

「手塚。それでテメェは奈緒に作詞させて、テメェは作曲しようって事か。それならタカでもよ…」

 

「タカの曲は歌詞が合って、初めてモノになる。それはBREEZEだったお前もよくわかってるだろ」

 

まぁ、そうだな。俺は歌詞書いてイメージして曲付けるもんなぁ。それにあの頃のBREEZEの曲は奈緒の歌声には合わない気もするし。

それにあの頃のBREEZEみたいな歌詞と曲なら、俺の曲に合う歌声をしているのは……。

 

「これが最後の頼みだ。これ以上はもう言わねぇ。

タカ、俺は佐倉 奈緒をプロデュースしてぇ」

 

「はぁ…。まぁ好きにしたらいいんじゃねぇか?

手塚の気持ちもわからなくはないしな。俺も奈緒の歌をもっと聞きたいと思ってたのは事実だしな」

 

 

-ドン!

 

 

ふわっ!?また隣の個室の方が!?

 

「って訳で賛成じゃねぇけど反対もしねぇ。

条件は2つ。奈緒自身がやりたいって言わないとやらせねぇ」

 

「ああ、もちろんだ。それは最優先事項だからな。

それともう1つの条件は何だ?」

 

「…ああ、さっきから隣の個室の方に壁ドンされて怖いし、もう少し小さい声で話そう」

 

「あはは、確かにあたし達うるさかったかもね…」

 

「そういやそれってSCARLETの番組企画って言ってたよな?って事は他のバンドメンバーもファントムのバンドマンから選ぶのか?」

 

「ああ、当然そのつもりだ」

 

「ん?って事は梓もか?」

 

「うん。あたしがプロデュースしたいボーカルは、当然なっちゃんだよ」

 

「渚!?」

 

 

-ドン!

 

 

うおっ!?俺が小さい声で話そうって提案したのに、俺がうっかり叫んじゃったよ。気を付けよ…。

 

「ねぇ。タカちゃんは本気なの?本気でそれやっていいと思ってる?」

 

「ん?まぁ当人がいいって言えばいいんじゃないか?」

 

「手塚も?本気?それSCARLETの番組企画としてやるの?社長のあたしに何の相談も無く?」

 

「ああ、それは悪かったと思ってる。だから今話してんじゃねぇか。俺は本気でやりてぇと思ってる」

 

「う…うぅ……」

 

日奈子?あれ?日奈子泣かせちゃった?

 

「おい、日奈子どうしたんだ?大丈夫か?」

 

「うぅ~……!!やりたいやりたいやりたい!!

あたしもやりたいよー!!」

 

「「「「は?」」」」

 

「タカちゃんと梓ちゃんと手塚だけズルいズルいズルい!あたしもあたしプロデュースの……!!!」

 

「ちょっ…日奈子。声が大きいよ?もう少し静かに…」

 

「………アイドルグループ作りたい」

 

「「「「アイドルグループ!?」」」」

 

「よし、決めた。作る」

 

「お、お前日奈子…」

 

「うるさい!あたしはSCARLETの社長だよ!

だからこうしよう!手塚、タカちゃん、トシキちゃん、拓斗ちゃん、英治ちゃん、梓ちゃん、翔子ちゃん、澄香ちゃん、あたしで9バンドをプロデュースしよう!

よ~し、決定!!あ、これもう社長命令だから」

 

何なのこの暴君様は。

 

「おい、日奈子ふざけんなよ。お前のアホみたいな企画に付き合ってやれる程俺は暇じゃねぇんだよ」

 

「いいの?拓斗ちゃん?」

 

「あ?俺はタカと違ってバンやりとかゲームに釣られる程安くねぇぞ?」

 

拓斗?お前俺の事そんな風に思ってたの?

 

「……昔、あたしのパンツ見た事梓ちゃんにチクっちゃうよ?(ボソッ」

 

「なぁ!?」

 

あ?日奈子のやつ拓斗の耳元で何言ってんだ?

 

「日奈子!テメェ…!」

 

「ねぇねぇ梓ちゃん梓ちゃん」

 

「ん?どうしたの日奈子?」

 

「んとね」

 

「待て!日奈子!やる!俺やるからっ!」

 

「拓斗ちゃんもやってくれるって~」

 

「拓斗くんいいの?」

 

「あ、ああ。もちろんだ…くそっ(ボソッ」

 

あ?拓斗は日奈子に何を握られてんだ?

 

「日奈子。さっき言ったろあたしはパス。

それにあたしはSCARLETのバンドじゃないしな」

 

「翔子ちゃん?いいの?」

 

「いいの?って何がだよ」

 

あ?今度は翔子の横に行ってどうしたんだ?

 

「こないださ?梓ちゃんが日本に帰ってきた日さ?あんこちゃんに会ったんだって?(ボソッ」

 

「あ?ああ、まぁな」

 

「あんこちゃんって実はね?SCARLETで楽器のリペアを担当してもらう為に、あたしが呼んだんだよ(ボソッ」

 

「は!?それであいつこっちに!?」

 

「どうしようかなぁ?あんこちゃんって今はあたしのSCARLETの社員だしな~。あたしはあんこちゃんを応援しちゃおうかなぁ?(ボソッ」

 

「日奈子…テメェ…」

 

「クスッ」

 

長いな。まぁ、翔子は一筋縄じゃいかねぇだ…

 

「わかった…あたしもやるよ…」

 

ろ…って、な…なんだ…と…!?

 

「わぁ♪ありがとう翔子ちゃん!」

 

しかしトシキと英治は面白そうって言ってたし、やるつもりなのかな?澄香はどうすんだろ?

 

「澄香ちゃんはやるよね?」

 

「はぁ…。まぁ、梓も翔子も日奈子もやるのに、私はやらないって何か嫌だし。私もやるよ」

 

「よしよしよーし!楽しくなってきた!」

 

ほんまこいつの脳はピーカンでいいですな。

さて、俺はどうすっかな。

 

Blaze Futureに全力を出したいって思うしな。

でも…あいつがボーカルをやってくれるなら…。

いやいやいや、ないわ。あいつがボーカルやってくれる訳ねぇ。やっぱり僕はBlaze Futureで頑張ります。

 

「手塚!これで全員参加だよ!」

 

「フッ、楽しくなって来やがったな」

 

え?待って。俺はやるなんて言ってないよ!?

 

「あ、それとタカちゃんはBlaze Future、拓斗ちゃんはLazy Wind、翔子ちゃんはGlitter Melody、澄香ちゃんはCanoro Feliceからメンバーを入れるのは無しね」

 

「は!?日奈子!何で!?私はやるなら姫咲お嬢様を…」

 

あ?俺はBlaze Futureから無しなの?

って事は盛夏とまどかは諦めねばならんか…。

いや、まだやるとは言ってねぇし!!

 

「澄香。あたしもそれがいいと思う。

それにあたし女子校の顧問だしな。やるなら野郎共をプロデュースしたいと思ってたし」

 

ああ、そうか。部員って女の子ばっかだもんな。

 

「ま、待って日奈子ちゃん」

 

あ?トシキ?

 

「どしたのトシキちゃん?」

 

「俺はBREEZEの時も作詞、作曲ってやってなかったしさ?いきなり1人でプロデュースって自信無いんだけど…」

 

「ああ、なるほど。そっか。

じゃあトシキちゃんは……翔子ちゃんと一緒にやったら?翔子ちゃんなら部活で作詞、作曲やり馴れてるだろうし、男の子でバンド組むみたいだから、トシキちゃんもその方がやりやすいでしょ?」

 

「あ、そうだね。翔子ちゃん、悪いんだけどいいかな?」

 

「トシキさん…!全然OKです!一緒に頑張りましょう!!」

 

あ?トシキは翔子と一緒にやんのかよ。

 

 

「おこんばんはー!」

 

 

え?

いきなり俺達の個室の部屋が開かれたと思ったら、そこには晴香とまどかが立っていた。

まどか…?何でまどかがここに?

 

「兄貴。話は聞いたよ。兄貴プロデュースでバンド作るんだってね」

 

「あ?お前どこで話聞いてたんだよ。それに仕事はどうした?」

 

「兄貴!あたしもプロデュースしたかったんだよ!ダンス系イケメンユニットを!」

 

「晴香。お前はきっと疲れてんだな?早く帰れ。

家にはお前の愛する夫と子供達が待っているだろう?」

 

「あ、まどかは何を飲む。あたしはビール」

 

「あ、あたしもビールで…」

 

まどか?こいつどうしたんだ?何でここに?

 

晴香はトシキと澄香の間の席に座り、まどかは英治と翔子との間に無理矢理座った。

 

「ちょ、おま…まどか」

 

「あ、英治ごめんね。翔子さんもすみません」

 

「あ、あたしは大丈夫だよ」

 

翔子はまどかが横に座ってきたせいで、席を詰めたもんだからトシキと近くなったもんね。そりゃ大丈夫だよね。

 

「お前な!狭いだろ!別のとこ座れよ!」

 

「あ、英治?さっきあたしが座る時、あたしの胸が英治の肘に当たったよね?三咲さんに泣きつこうかな?」

 

「まどか、狭いだろもう少し詰めてやるからな。

おい、日奈子お前もっと詰めろ」

 

「もう!何なの英治ちゃん!」

 

英治の野郎。どさくさに紛れてまどかの胸が肘に当たっただと…?何てうらやまけしからん!

 

「ねぇ、タカ…」

 

「あ?」

 

俺がまどかの胸…いやいや、英治の野郎めとか考えてると、まどかが話し掛けて来た。

 

「Blaze Futureは大丈夫だよね?奈緒が別のバンドでボーカルやっても…タカは…」

 

そういやこないだのGlitter Melodyのライブの時。

あの時、奈緒がソロ曲をやって……あん時もお前そんな顔して心配そうにしてたよな。

 

 

あの時俺が思ってしまった事。

 

 

奈緒にボーカルをやらせたい。

 

 

あの日からたま~にだけど悩んでた。

手塚に言われるまでもなく、奈緒の歌声を聞いていきたいと思った俺も居た訳だから。

 

でも今は違う。だから心配すんな。

 

「まどか。お前俺らの話聞いてたの?てか、何でここに居るの?今日はNoble Fateとの合同練習だったんじゃねぇのか?」

 

「あ、うん…。合同練習は上手くいったよ。

スタジオで練習してたら、帰りがたまたまDivalと一緒になってさ」

 

「ああ、そうなの?だったら余計によ…」

 

「あ、だからね。みんなでこの後ご飯に行こうってことになったんだけど、達也さんはこれから夜行バスで関西に行って明日は修学旅行の下見らしくてさ」

 

は!?今から夜行バスで関西!?

達也…お前大変なんだな…。

 

「それで真希さんも今夜は沙織さんと弘美さんとご飯らしくて…」

 

「あ、沙織ちゃんと弘美ちゃんもそう言ってたよ」

 

あ?梓は沙織と弘美に会ってたの?

 

「だから…ご飯は今度にしようって事になって…。あたしが、みんなの予定を纏めて晴香さんに空いてる日を確認に来たら……タカ達の声が聞こえて…。ごめん」

 

あ~、そういう事か。そういやそよ風って予約不可の癖にDival様の予約なら受けるんだっけかな。

 

ん?いや、でも待てよ?

 

「それでお前1人でそよ風来たのか?

奈緒と盛夏はどうしたんだよ。花音と綾乃も一緒じゃないって…」

 

「はぁ…」

 

え?ため息?

 

「だからさっき言ったじゃん。ご飯はまた今度って。

奈緒と盛夏と花音は買い物行って、綾乃は薄情にもあたしを置いて帰ったの!」

 

あ、ああ。さすがまどかだな。ぼっちで可哀想に。

 

「は?ぼっちじゃないし。タカと一緒にすんなし!」

 

いつもの調子に戻ったかな。

はぁ、こいつもめんどくせぇ性格してるよな。

………俺の心が読まれてるのは別として。

 

「英治」

 

「あ?どした?」

 

俺は英治に声を掛けた。俺のこれからの決意を口に出す為に…。

 

「お前も作詞、作曲ってやりなれてねぇんじゃね?」

 

「あ?俺も腐ってもライブハウスのオーナーだぜ?

やりなれてぇ所かやった事もねぇよ」

 

何でこいつその台詞でドヤ顔出来るの?

 

「そか。……おい、まどか」

 

「ん?何?」

 

「俺はBlaze Future辞めるつもりはねぇよ。

でも、昔みたいな曲をな。作りたいって思ってたのは確かだ」

 

「うん。そか。

あたしはそれでいいと思うよ。タカがBlaze Futureを辞めないでいてくれるなら…それでいい」

 

「おう。

だからな、俺はこいつらみたいに…プロデュース業ってかな。それをやろうと思う。Blaze Futureの片手間じゃなくて、そっちも本気でな」

 

「タカくん…」

 

「タカ…。あんた…」

 

「そっか。それがタカのやりたい事なら、あたしは何も言わないよ。でもBlaze Futureを疎かにするなら怒るからね!」

 

「ああ。約束する。でもな…」

 

「でも?何?」

 

「お前がガキの頃した約束も…そのマジだから」

 

「え…?」

 

「俺がバンドやるならお前のドラムで…。お前がドややるなら俺が……ってやつ?あれだ」

 

ああ、俺はみんなの前で何を言わされてるの…?

超恥ずかしいんですけど…。

 

「覚えててくれたんだ…。

奈緒とバンドやるって時はあたしに声掛けなかった癖に」

 

「あ?俺は前だけ見て生きてるからな。そんな過去は忘れました」

 

「は?何それ?忘れてるの?覚えてるの?どっちなの?」

 

「だから…今回の企画バンドの話な。お前はつまんねぇかも知れねぇが……バンドじゃなくてプロデュースやれよ。英治と」

 

「英治と…?英治とあたしで…?」

 

「お!それいいな!まどか、お前もBlaze Futureの宿題とかで作詞、作曲したんだろ?」

 

「え?え…?うん、まぁ…」

 

「だったらよ!編曲とかは俺がやるから、お前と俺でやろうぜ!」

 

「英治が良ければ…うん…」

 

はぁ…何とかなったか。

俺もお前が他のバンドのドラムやるのは…嫌だったしな。

 

「タカ…それ。あたしと昔の約束だからって…」

 

「めんどくせぇから1回しか言わねぇぞ?

約束ってのはあるにはある。だけど……お前には俺以外のバンドではドラムやって欲しくねぇ。何か…嫌だし(ボソッ」

 

「この…すけこまし…」

 

ふぁ!?そんなんじゃねーしな!

お前は妹みたいなもんだしな!それ以上はねぇし!

歳は離れてるけども……!!!

 

「じゃあさ?あたしが高校の頃に、一番の志望大学に合格したら……って約束も覚えてる?」

 

「は?だからお前の入学式には行ったったやん?」

 

「それだけかぁー」

 

え?何?

お前が志望大学に合格したら、スーツ着て保護者面して入学式に来いって罰ゲームだろ?

わざわざスーツ新調して行ったやん?

 

そうして、俺、トシキと翔子、拓斗と晴香、英治とまどか、梓、澄香、日奈子、手塚。

8つのバンドがSCARLETの企画バンドとして誕生することになった。

 

でも俺は…あいつにボーカルを断られたら…。

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