バンやろ外伝 -another gig-   作:高瀬あきと

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第9話 企画バンド

「まどかはボーカルは誰がいいと思う?」

 

「は?英治それ本気で言ってる?あんたどんな感じの音楽したいとか無いの?それに寄ってこの人がいいとかあるじゃん」

 

 

「さすが翔子ちゃんだね。俺もボーカルしてもらうならその子しかいないと思ってたんだ」

 

「そんな…トシキさん…。あたし達…これって以心伝心…?」

 

 

「タカは誰に歌って欲しいとかあるの?」

 

「ああ、もうボーカル、ベース、ドラムは決まってる。問題はギターなんだよな…」

 

「タカくん、さっきまでやる気無さそうだったのに、今はノリノリだね?」

 

 

「企画バンドって事は、そよ風の宣伝に使うのは無理かなぁ…いや、でも…」

 

「な、なぁ。晴香。お前本気なのか?ダンスユニットとか俺が曲作るのか…?」

 

 

「おい、日奈子。お前のせいでカオスになっちまったじゃねーか」

 

「え?でもいいじゃん?楽しいし」

 

「はぁ…柚木 まどかが英治とプロデュースするにしても、俺のバンドのドラム引き受けてくれねぇかな…」

 

 

俺の名前は葉川 貴。

また俺のモノローグかよ。とか思っている。

 

 

「よし!みんな!」

 

俺達が酒を飲みながらあれやこれやと話していると、暴君日奈子が急にみんなに声を掛けた。

このタイミングとか嫌な予感しかしねぇ。もう帰りたい。

あ、トイレ行くとかタバコ買いに行くとか言って逃げちゃおうかな?

 

「バンドメンバーの取り合いになっても嫌だしさ!今のうちにメンバー決めちゃおうよ!」

 

「日奈子。お前はやっぱりバカだな」

 

「むー!英治ちゃん!何それ!」

 

「考えてもみろ。ファントムの連中がそんな企画バンドやりたく無いって言ったらどうすんだよ」

 

「だから予め先に決めとくんでしょ!手塚が奈緒ちゃんにボーカルやって欲しいって思っても、奈緒ちゃんが嫌って言ったら、じゃあ奈緒ちゃんが無理だったから、なっちゃんを勧誘する!とかなったらややこしくなるじゃん!」

 

「ああ。まぁ日奈子の言う通りではあるな。俺は佐倉 奈緒に断られたらバンドを作るつもりはねぇけどな」

 

あ?そうなの?この野郎言い出しっぺの癖して、奈緒に断られたらやらないの?それなら俺も…。

 

「まぁ俺がやらないからって、お前らはやめる必要ねぇからな」

 

「何言ってんの手塚は。あたしがやりたいんだもん。やめる訳ないじゃん!」

 

「な、なぁ、晴香本気なのか?お前の趣味に俺が付き合わされるのか…?」

 

「なぁ、それってよ?俺もボーカルにしてぇヤツは決まってんだが、断られたら俺も辞めていいのか?」

 

「あ?タカも?」

 

そう。俺がプロデュースするなら、BREEZEの時のヴァンパイアとかみたいな曲をプロデュースしたい。

こないだLazy Windとデュエルした時にも思ったが、やっぱり高いキーは俺には出せねぇ。

普段の俺の曲ならBlaze Futureの曲として出したいしな。俺も歌いたいし。

 

「まぁ、タカはBlaze Futureもあるしね。昔みたいな曲だけをプロデュースしたいって事でしょ?」

 

「ああ、まぁな」

 

「だったら辞めてもいいんちゃう?それでタカは誰にボーカルやって欲しいの?誰を選ぶの?」

 

何かその言い回し何となく嫌なんですけど?

 

「タカくん!なっちゃんはダメだよ!なっちゃんはあたしのだから!」

 

はいはい。百合百合。

 

「俺がボーカルをやって欲しいのは理奈だ」

 

「え?りっちゃん?」

 

 

『ぴぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!』

 

 

ああ、美緒ちゃんの叫びの幻聴が聞こえる。

理奈に俺がボーカルを頼んで、理奈が引き受けてくれたら、美緒ちゃんにとっては最高に嬉しい展開だろうしな。

 

「そっか…りっちゃんか」

 

「ああ、確かに理奈なら声の高低の幅も広いし、昔のタカに近い感じがするよな」

 

「うん。確かに理奈ちゃんならヴァンパイアとかも上手く歌ってくれそうだよね」

 

「英治とトシキも同じ印象か。

確かに理奈なら俺が思い描く歌を表現してくれると思う」

 

 

-ドン!ドン!

 

 

「ねぇ、さっきから隣の個室からドンドン壁を叩かれてんだけど何なの?」

 

ほんま怖いわぁ。

 

「おい、手塚さん。文句言って来いよ」

 

「あ?何で俺が。英治お前が行けよ」

 

「おい、晴香。隣の個室ってどんな客だ?」

 

「は?隣の個室?んー、あんまり顧客の情報は言うわけにはいかないんだけど…。ちょっと怖いお客さんだよ?文句言いに行くなら覚悟はしといた方がいいかも…」

 

は!?怖い客!?覚悟しとけって何の覚悟!?

 

「拓斗、お前ここの店員だろ?お前行ってこいよ」

 

「あ?何で俺が…大体今日は休みなんだしな。仕事の事は忘れてぇ。手塚が俺達を集めたんだし、手塚が行けよ」

 

「俺も行きたいのは山々なんだがな。クソ…左腕の古傷が痛みやがるぜ…。タカ、お前行ってこいよ」

 

「怖いから嫌だ。英治、お前行ってこいよ」

 

「俺は小さい初音を置いて死ぬ訳にはいかねぇ。トシキ、お前行ってこいよ」

 

「え?俺?俺もちょっと…」

 

「英治!トシキさんを困らせないで!あたしがあんたをしばくよ?」

 

「何で俺が!?」

 

「結局みんなビビッてる訳ね…」

 

「「「「「ビビッてなんかねーし」」」」」

 

「え?タカくん、さっき怖いから嫌だって言ってなかった?」

 

もうホント何なの隣の個室…。超怖いんですけど…。

 

 

 

「ま、もうちょい小さい声でお話しようか」

 

「そうだね。男共はビビッてるみたいだし」

 

あのな?俺らは平和主義者なの。お前らArtemisみたいな武闘派と一緒にすんじゃねーよ。

 

「で、話は戻るけどさ?それでボーカルをりっちゃんにお願いしたいから、ベースも決まってるって事?」

 

「あ?いや、俺のバンドじゃ理奈にはベースはやらせるつもりねぇ。理奈にはボーカルとして歌に集中してもらう」

 

「え?りっちゃんにベースやらせないの?それってベースを他の人にやって欲しいって事?」

 

「ああ、まぁな。理奈のベースの技術も最高ではあるんだが、俺の曲に合うベーシストは他にいるからな」

 

「もしかして美緒ちゃん?」

 

 

『ぴぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!』

 

 

澄香。滅多な事言うんじゃねぇよ。

ほら、また美緒ちゃんの幻聴聞こえちゃったじゃん。

美緒ちゃんなら理奈と同じバンドでベースをやってくれって頼んだら、二つ返事でやってくれそうだけどな。

 

「美緒ちゃんのベースも確かにすげぇけど、美緒ちゃんに頼むなら理奈がやっても一緒だろ?同じタイプのベーシストだし。それに美緒ちゃんの歌を腐らせるのも勿体ねぇ。それにお前…美緒ちゃんにボーカルやって欲しいと思ってんじゃねぇの?」

 

「え?な、何でわかったの?」

 

「理奈と美緒ちゃんのベースはお前に近いしな。そんくれぇわかるよ。後は姫咲もだけどな」

 

「タカ…そんな…私の事は何でもわかってるなんて…」

 

いや、何でもとは言ってな…グホッ!

 

「あれ?どしたんタカ?」

 

「タカくんの脇腹に蚊が止まってたから、かいかいになったら大変だと思って叩いたら悶えちゃった。当たり所が悪かったのかな?」

 

け、結局俺は今日も殴られるの…?

 

「梓?梓はもうバンドメンバーは決めたん?」

 

「あ、うん。まぁね」

 

澄香も梓も俺を挟んで普通に話続けるの?

俺こんなに悶えてるのに?

 

「梓の事だから…ベースはせっちゃん?」

 

「うん。ホントはそうしたいけどね。せっちゃんは手塚さんに譲る事にした」

 

「手塚に…?って事はせっちゃんは奈緒のバンドに?」

 

「うん。奈緒ちゃんの歌にはせっちゃんのベースが必要だと思う。あはは、あたしも奈緒ちゃんの歌のファンだし、奈緒ちゃんには最高のコンディションでって思って」

 

確かにな。奈緒と盛夏は何て言うんだろう?

俺達には見えない絆ってか、そういうのに結ばれてるって言うか…。それ言い出すとDivalも全員が全員そんな感じなんだけどな。

 

「まぁ、そうだな。だから俺も蓮見 盛夏にベースをやってもらいてぇって思ってる。だから、ドラムも本当は柚木 まどかにやって欲しかったんだけどな」

 

おい、待て。それ確かに最高かも知んねぇけど、Blaze Futureから俺を抜いただけになるじゃん。

ふぁ!?もしかして俺って足手まとい!?

 

「おい、手塚テメェ。それじゃBlaze Futureにタカがいらねぇみてぇじゃねぇか。…………俺もちょっと前まではBlaze Futureはタカを抜いてやればいいと思ってたけどよ」

 

ふぁ!?拓斗!?

それあれだよね?俺が喉をまたやらかしたって思ってたからだよね?俺があいつらにいらないとかじゃないよね?

 

「って訳でな。柚木 まどか。お前俺のバンドのドラムやってくれねぇか?」

 

「あたし…?あ、えっと…すみません。あたしも…タカとしか…したくないです。あたしの……は、タカのだから…。あたしの初めて(のバンド)もタカだったし///」

 

あ?お前何かその言いか…グフッ、オブン

 

「ま、まどかちゃん?その、その言い方は…ね?」

 

「タカが変な妄想したらどうすんの?お姉さん心配になっちゃうよ?」

 

「あははは…!タカ!悶えてる!あははははははは!」

 

え?何?

今いきなり右と左からものっそい衝撃的がきたんですけど?何か右脇腹と左頬がめちゃくちゃ痛いんですけど?

え?何でまどかはそんな大爆笑してるの?さっきの言い回しはわざとなの?

 

「チ、ならしゃあねぇか。ドラムか…」

 

おい、手塚。お前俺がここで悶えてんだぞ?

お前何かおかしいとか思わないの?そのまま話続けるの?

 

「ねぇねぇ。晴香ちゃんはイケメンダンスユニットだよね?それって男の子でユニット組むって事だよね?」

 

「うん。あたしはそのつもりだよ」

 

日奈子も晴香もそのまま話続けるの?俺はこんなに苦しんでるのに?『どうしたの?』とかないの?

 

「よーし!じゃああたし、架純ちゃんとユイユイちゃん取ったー!」

 

あ?この暴君様は何を高らかに宣言してらっしゃるの?

 

「お前いきなりアレだな。大体何でその2人選んだんだよ」

 

「顔とスタイル」

 

こいつ…そうも堂々と…。

 

「おい、タカ、お前も何か言ってやれよ」

 

「落ち着け英治。今までのこの暴君様の企画よりはマシだろう?何て言っても命の危険がねぇからな。こいつがそれで満足して大人しくなってくれるなら、些細な事だろう?」

 

「でもよ…」

 

「あ、もしかして英治って架純ちゃん取りたかったとか?あんた架純ちゃんのファンだもんね」

 

「まどか…。ああ、俺は架純ちゃんの大ファンだな。

だけどよ。バンドってなると別だ。架純ちゃんは可愛い。ものすごく一緒に居たい。拓斗に対して憎しみを持ったくらいだ」

 

「あ!お前こないだのデュエルん時、それであんなに怒ってたのかよ!?」

 

「その通りだ」

 

え?そうなの?俺の為に怒ってくれたんじゃないの?

 

「俺にもやりたい音楽ってのはある。どうせプロデュースするなら、俺も……タカの音楽や梓の音楽に負けねぇくらいの音楽をやって行きてぇ」

 

「英ちゃん…」

 

「タカがマジでやるってんなら、俺もマジでやりてぇんだよ」

 

「英治にしてはやけに珍しいじゃん」

 

「俺もタカに憧れてた男の1人だからな。そしていつか俺の音楽で勝負してみてぇとも思ってたしな」

 

「英治…お前…」

 

「だから架純ちゃんは好きだけどな、俺のバンドのボーカルは沙織にやってもらいたいと思ってる」

 

……ん?あ?沙織?

ちょっと待て。沙織って…、イオリにして欲しいって事か…?

 

「英治…?」

 

「まどか、勝手に決めちまって悪いな。そんでドラムはな。遊太にしてもらいたいと思ってんだよ」

 

は?遊太?シフォンじゃなくて?

沙織が男装してイオリ?遊太が天使化…じゃない、男の娘になってシフォンでバンドか?

 

「英治…あんたそれってさ…」

 

「沙織は沙織として歌ってもらう。遊太には遊太としてドラムを叩いてもらう。俺のやりてぇバンドはそんなバンドだ」

 

沙織は双葉と栞に頼まれて…ってのもあるが、あいつの家族がクリムゾンだから…いや、今はあいつのねーちゃんはクリムゾンエンターテイメントだろ。

まぁ、それも正体はバレちまってるらしいから、何とかなるかも知れんが、遊太は遊太のままじゃドラムは…。

 

「だからこの2人は俺のバンドに入れたい。すまんな」

 

「いいんじゃね?あいつらがやりたいって言うなら」

 

英治も色々自分の音楽や、あいつらの事を考えての提案なんだろうな。俺も先に言っておくか。

 

「あ、俺のバンドなんだけどよ…」

 

「あ!あたしのダンスユニットには、一瀬くんと秦野くんと豊永くんと河野くんと達也入れたい!いいよね!?ね!あ、5人になっちゃったか…」

 

この日奈子より暴虐の限りを尽くす独裁者晴香様は何を言っているの?みんなでバンドに誰を入れるか?って話でもないのに、何でいきなり5人も選んでるの?

 

よし、このままこいつの我儘に付き合ってたら、俺らにもファントムの奴らにも……特に拓斗に迷惑かけちまう。

ここはビシッと晴香を叱ってやらなきゃならねぇな。いつまでもこいつを甘やかす訳にもいかねぇし。

 

さぁ!手塚!今こそお前が俺の役に立つ時だ!

晴香にビシッと文句を言ってやれ!

 

「おい…晴香…」

 

お、手塚。お前マジで晴香に文句言ってくれるのか。

ありがとう。後10秒くらいだけ尊敬しててやるわ。

 

「あ、手塚。やっぱ5人はダメ?みんなもそう思ってる?でもあたしもこの5人は外せない…って思うからさ。文句ある人はあたしとタイマンはろうよ」

 

「……5人ってのもアリだと思うぜ」

 

「ありがとう!手塚!」

 

10秒もたなかっただと…!?

手塚この野郎…。晴香のタイマンってのにビビりやがったな?チ、俺も晴香は怖いからしょうがないと思います。

 

「あ、晴香ちゃんがいいなら、あたしも5人バンドでもいいかな?今のあたしの曲にはキーボードも欲しいと思って…。あ、でもあたしはダメとかあったら言ってくれたらいいよ?ちゃんとあたしもタイマンはるし」

 

……梓。

いや、今の梓にならもしかしたら勝てるか…?

…………ダメだ。どうシミュレーションしても俺が血塗れになってる。

 

「梓とタイマンとか…。晴香のがまだマシやんか…(ボソッ」

 

「ん?翔子?何か言った?」

 

「い、いや。あたしらArtemisはキーボード居なかったじゃん?でも、部活ではキーボードする子らも居るからさ?キーボードの重要さはわかってるつもり!

さすが梓だなー!って思って!」

 

「わぁ♪翔子ー!ありがとうー!」

 

「そそそ、それでさ?梓は誰をプロデュースしたいの…?」

 

「あ、それね!

ボーカルはなっちゃん!なっちゃんは何と言ってもあたしの後継者だからね!それでギターは睦月ちゃん!

睦月ちゃんは翔子の後継者みたいなもんじゃん?

それより澄香は何でそんなに奮えてるの?」

 

……後継者?って事はベースは…。

 

「あ、いや、あははは。私もさすが梓やなーって思って!後継者って事はベースは姫咲お嬢様?」

 

「うん。日奈子がアイドルやりたいって言った時は、姫咲ちゃんを狙ってるかな?って思ったけど…。あたしのバンドのベースは姫咲ちゃんがいいかな」

 

「ガタガタブルブル…」

 

「あれ?日奈子どうしたの?寒い?」

 

「う、ううん。も、もしさ?あたしのアイドルユニットにも姫咲ちゃん欲しいって言ったら梓ちゃんどうする?」

 

「……やっぱりタイマン?」

 

「ねぇ。梓ちゃん。その前にちょっと電話してもいいかな?」

 

あ?電話?日奈子やつ誰に電話すんだ?

あ、今から梓とタイマンはるし両親に最期の挨拶かな?

 

俺がそう思いながら日奈子の背中を見て、今まで何度も死にかけ……今までの思い出を思い返していた。

 

「あ、もしもし?日奈子だよー。弘美ちゃん、今大丈夫?」

 

弘美?弘美ってチヒロか?

お前ら仲良かったの?てか、何で今弘美に電話?

 

「あ、うん。それでね?こないだあたしと話してたじゃん?

………そうそう!番組の企画でアイドルとか作りたいねーってやつ!」

 

あ?日奈子のやつ弘美とそんな話してたの?

 

「それでさ、それが本格的に決まりそうで…。

……うん、うん。そう。あたしのプロデュースでね?

……いや、それがさ?うちの魔王に姫咲ちゃん取られちゃって~」

 

「日奈子?魔王ってあたし?」

 

「あ、取られちゃったってのはね。あたし達ArtemisとBREEZEで各々バンドをプロデュース……うん。そうそう。話早くて助かる~♪」

 

お前これまだ企画段階だろ?弘美に言っちゃっていいの?弘美って今は沙織と木南と居るんじゃねぇの?

 

「え?社長権限で何とかならないか?って?

無理無理。うちの魔王はマウンテンゴリラがスーパーサイヤ人になったくらい狂暴だもん。あたし死にたくないし。

………うん、だからせめて人数だけでもとは思ってるんだけど、それもうちの魔王がさ?」

 

「マウンテンゴリラがスーパーサイヤ人?それってあたしの事?」

 

「……あ、そっか!うん!そうだね!それでいこう!」

 

そして日奈子は電話を切り、梓の方を向いてこう言った。

 

「梓ちゃん!梓ちゃんがやりたい曲は、あの頃のArtemisみたいな…。今の梓ちゃんの気持ちを込めた曲だよね?」

 

「え?うん、そうだけど…それより魔王って?」

 

「梓ちゃん!あたしも…Artemisのドラマーとして感動したよ!」

 

「え?うん、ありがとう…マウンテンゴリラがスーパーサイヤ人って何?」

 

「梓ちゃん!ボーカルの梓ちゃん、ギターの翔子ちゃん、ベースの澄香ちゃん、そしてドラムのあたし。

4人でとっても楽しかったよね!」

 

「うん、そうだね…。楽しかった」

 

「そしてその楽しかったArtemisの後継的なバンド!梓ちゃんの愉快な仲間達!あたしは応援したい…!」

 

梓ちゃんの愉快な仲間達?何それバンド名なの?

俺ならそんな名前のバンドに入ってくれとか言われたら、秒で断るわ。

 

「梓ちゃんの後継者のなっちゃん!翔子ちゃんの後継者の睦月ちゃん!澄香ちゃんの後継者の姫咲ちゃん!そして……あ、どうしよ?あたし後継者居ないや」

 

あの頃の日奈子のドラムに近いのは栞かな?

いや、恵美ちゃんもさすが翔子の教え子なだけあって、日奈子に似たドラマーではあるな。

 

「ま!それはいいとして!」

 

いいのかよ…。

 

「梓ちゃん!あたし達は4人でArtemisだったんだよ!」

 

「日奈子…」

 

「梓ちゃんの曲にはキーボードは必要ないよ!」

 

いや、お前キーボード居たら曲の幅広がるよ?

キーボード重要だからね?わかってる?

いや、わかってるんだろうな。そこまでして梓のバンドメンバー5人ってのを阻止したいか…。

 

「ね、梓ちゃん?Artemisは4人だよ…」

 

いや、そもそも梓がやりたいバンドは、Artemisって訳じゃねぇから。

 

「うん…うん…!そうだね。あたし達Artemisは4人だもんね…」

 

「梓ちゃん…。梓ちゃんのプロデュースするバンドも…4人でいいよね…?」

 

「うん!もちろんだよ!あたしがプロデュースするバンドはArtemisとは違うけど…あたし達のバンドは4人にするよ!」

 

日奈子のやつ…押しきりやがった…。

 

「フゥー、良かった。梓ちゃんとタイマンとかなったら、命が死んじゃうもんね。って訳であたしのアイドルグループは7人にするよ。梓ちゃんを説得出来た訳だし」

 

何を言ってるのこのちびっ子は…。

 

「本当は姫咲ちゃんもアイドルにしたかったけど…。これは梓ちゃんを納得させられる理由が無いしなぁ~」

 

お前ここでそれ言っちゃったら梓にも聞こえちゃうよ?大丈夫なの?

 

 

 

「日奈子。茶番劇は終わったか?」

 

「茶番劇!?手塚!お前は何を言ってるの!」

 

「お前らに好き勝手話させてたら、纏まるもんも纏まらねぇからな」

 

まぁ確かにな。かと言って…。

 

「そこでだ。今お前らが茶番劇を演じてる間に色々決めさてもらった」

 

あ?手塚この野郎。お前が勝手に決めただと?

上等だ表出ろ。戦争だ。

お前をしばいたどさくさに紛れて俺は帰る。

だってもう21時過ぎてるよ?トシキなんか平日なら寝てる時間だしな?酒を飲んでるせいで梓も何かおかしいし。

 

「あ、あの、トシキさん、大丈夫ですか?」

 

「あ、まだらいじょうぷだよ」

 

「ね!澄香!あたしお酒強くなったでしょ?」

 

「ああ、うん…あたし晴香だよ?」

 

ほらな?

 

「タカ。お前は理奈をボーカルにしたいって言ってたな。他のメンバーは誰を考えてる?」

 

あ?俺?

 

「俺は理奈をボーカルにベースを双葉、ドラムは香菜って考えてんな。ギターは悩んでるけど…」

 

 

-ドン!ドンドンドン!

 

 

うぉ!?また隣の個室から!?

ほんま怖いわぁ…。

 

「双葉は理奈を引っ張るベーシストとしてピカイチだと思う。香菜もな。理奈は昔に聞いたが、あいつはリズムはドラムに合わせてるみたいだしな。綾乃のが英治のリズムには近いドラマーだけど、理奈に合わせられるのは香菜しか居ないと思ってる」

 

「……よし、梓。お前はボーカルに水瀬 渚、ギターに永田 睦月、ベースが秋月 姫咲だな?ドラムは誰か考えてるか?」

 

「ん…?ドラムは誰にしようかまだ悩んでるよ?日奈子には後継者いないし?あ、タカくん…あたし酔っちゃったかも?」

 

安心しろ梓。かも?じゃねぇ。

お前は完全に酔っている。

 

「あ、梓、ならうちの恵美とかどうだ?あいつは日奈子のドラムに影響受けてるしな」

 

「ふぇ?恵美ちゃん?」

 

あ、やっぱ恵美ちゃんって日奈子のドラムに影響受けてんのか。性格は日奈子と正反対って感じだけど、ドラム叩く時はパワフルな演奏だもんな。

 

「なるほど…確かに恵美ちゃんは日奈子の演奏に似てるかも…。日奈子と違って可愛い性格してるけど…」

 

「梓ちゃん?」

 

 

「俺はボーカルに佐倉 奈緒。ベースに蓮見 盛夏。ドラムは柚木 まどかにしてもらいたかったが、今は北条 綾乃にしてもらいたいと思ってる」

 

「あ?手塚テメェしばくぞ?まどかがダメだったから綾乃か?」

 

「タカ、お前の言いたい事はわかる。だがそうじゃねぇ」

 

 

『英治がダメだったから、あたし?』

 

 

いつかまどかに言われた言葉。

 

「まどか」

 

「え?何?」

 

「すまんかった」

 

「は?何が?」

 

「いや、なんとなくだ」

 

そう、なんとなく。あの頃まどかは奈緒とバンドやろうって言った時、俺がすぐに誘わなかった事に傷付いてたかも知れねぇ。こんなのただの俺の思い上がりかも知れねぇけど。ただ、謝りたかった。

 

「ん?タカどうした?

まぁ、いいか。俺は柚木 まどかは佐倉 奈緒と蓮見 盛夏を纏める役にと思ってただけだ。ただ、俺の曲には自由な音楽をやる柚木 まどかが合っているか、パワフルなリズムの北条 綾乃が合っているのかは迷っていた」

 

「あたしのドラムってそんな評価高いの?」

 

「そりゃお前は俺の正当後継者だからな」

 

「英治に聞いたのは間違いだったよ。拓斗さんはあたしのドラム聞いた事ありましたっけ?」

 

「おい、まどか。俺早速お前とやっていけないかもって思ったんだけど?」

 

「……お前のドラムは出鱈目過ぎるな」

 

「え?最悪じゃん?」

 

「いや、それは技術とかそんなんじゃねぇ。お前のドラムは奈緒を引っ張る力強さ、盛夏に合わせるテクニックもある。それに何よりドラムを叩いてるお前を見て、オーディエンスは一緒に楽しくなれるような…そんな存在感もある。タカがお前のドラムが好きだってのは頷けるレベルだ」

 

「ふぇ!?あ、ありがとう…ございます」

 

「まどか?俺もお前のドラムはそんな感じって思ってるぞ?」

 

「だけどお前のドラムはBlaze Futureだからこその演奏だと思ってる。他のバンドやタカから離れた時にどうなるかは未知数だな」

 

「タ、タカとか関係者無いですし…」

 

さっきから隣に座ってる魔王が『酔っちゃったと』か、『今日は帰れない』とか言ってるから、あんま話聞こえてなかったけど何の話しとるん?唯一わかった事は、まどかは拓斗には敬語なのかって事くらいなんだけど?

 

「よし、俺とタカと梓のバンドメンバーは決まった。異論は認めねぇ。次はトシキと翔子、お前らは誰にやってもらいたいと思ってる?」

 

「手塚…!トシキさんは眠そうでしょ?起こしたりしたらわかってるよね?」

 

「翔子ちゃん、もう少しは大丈夫だよ。うん、らいじょう…ぷ…」

 

「トシキさん…何て優しいの…(トゥンク」

 

いや、今ので翔子はときめいたの?

お前らはよ付き合うか結婚するかしろよ。

 

「あふん」

 

「ふぇ?タカくん…?どしたの、気持ち悪い声出して…」

 

「タカはもう少し乙女心勉強して出直して来い」

 

澄香?お前か?今、俺の顎にいい一撃を入れたのは…。

 

「俺も色々考えたんだけどね。俺のやりたい音楽、それが翔子ちゃんと合ってるのかどうかも気になったしさ」

 

トシキ?お前急に何を流暢に喋ってるの?

さっきまで眠そうだったじゃん?え?俺、澄香に殴られ損?

 

「英ちゃんの話を聞いてね。俺もやりたい音楽ってちょっと見えて来た。それを翔子ちゃんに話したらさ、翔子ちゃんも意気投合してくれたし、俺はこういう音楽やりたいなって…あはは」

 

「トシキさん…トシキさんの思い描いた音楽って、あたし達Artemisとも、トシキさん達のBREEZEとも違ってましたから…Artemisのあたしとして指導して来た部活も大事ですけど、枠を外れて新しい音楽を見詰めるのもいいかな?って」

 

「翔子ちゃん、ありがとう。俺は作詞も作曲も苦手だからさ。これからもずっと俺を支えてね」

 

「こ!?これからもずっと…!!?」

 

そう言って翔子は倒れた。

 

「澄香」

 

「はい…?何でございましょう…?」

 

「俺、めっちゃ顎痛いんだけど?俺に言う事無い?」

 

「ご、ごめんなさい…」

 

澄香も素直に謝るこの破壊力。

トシキは何でこれで翔子の気持ちに気付かないかなぁ?

 

「タカ、やっぱさっきの謝罪無し」

 

「あ?」

 

「タカくんはほんまいっぺんしばかんとあかんわ…」

 

梓!?しばかんとあかんって何!?

 

「俺はボーカルに渉くん。はーちゃんとすごく似てるけどさ。Ailes Flammeとは違う曲調で歌わせたらどうなるかな?ってワクワクするし」

 

渉ってそんな俺に似てるか?

あいつは俺と違ってかわいいけど?

 

「ギターは折原くんかな。雨宮さんとデュエルした時は、正直独りよがりな演奏だったと思う。でも、あのデュエルの後は、南国DEギグの時もみんなを見るようにはなってたし、負けてから見える事もいっぱいあるだろうしさ。あの時と変われた折原くんに色々教えていきたいって気持ちがあるんだ」

 

トシキ…。

そっか、お前も…やっぱお前も根っからのバンドマンだな。お前が今そう思えてるって事、お前とBREEZEをやれて良かったって改めて思うわ。

 

「ベースは拓実くん。こないだのLazy Windとの対バンの時は、これまでの拓実くんの演奏とは違う雰囲気になってて、すごくドキドキした。でも、だからかな?昔の俺と宮ちゃんを思い出したよ」

 

「トシキ、俺とお前を思い出すって…」

 

「俺も宮ちゃんもさ。自分に自信が無くて一生懸命だったでしょ?そんな俺達を思い出してね。あの頃俺達が失敗した事を教えて、拓実くんがどう変わるのか見てみたいんだよ」

 

「た、拓実に期待してんのはお前だけじゃねぇからな!

あいつは…勝手に俺の後継者だと思ってるしよ…」

 

「ふふ、宮ちゃんも変わったよね。

そしてドラムをして欲しいのは松岡くん。松岡くんは周りをよく見てくれてるからね。

あの頃のはーちゃんみたいな渉くん、独りよがりだったけど周りを見るようになった折原くん、自信が無くても一生懸命演奏する拓実くん。このメンバーを引っ張れるのは松岡くんかな?って」

 

確かに松岡くんなら、みんなを引っ張ってくれそうではあるな。でもな、それだと松岡くん自身の良さが…。

 

「俺も自分を出すのは苦手だから偉そうには言えないけど、翔子ちゃんも居てくれるから…。松岡くんにも松岡くんの良さを引き出せる指導もさ。翔子ちゃんならきっと…」

 

「ト!?トシキさんに期待されてる!?……ご、ごふっ」

 

翔子…。トシキに期待されるというプレッシャーに堪えられなかったか…。

 

 

 

「……トシキも翔子も俺と同じギタリストだしな。俺もお前らの音楽が楽しみだぜ。

澄香、お前の希望するメンバーは決まってるか?」

 

「私はベースボーカルに美緒ちゃん、ギターは志保、キーボードに明日香ちゃんで、ドラムは栞ちゃんかな」

 

「理由は?」

 

「私がやりたいのは王道ロックだからね。ファントムの中でもパワフルな演奏を魅せてくれるメンバーを選んだの。そしてArtemisみたいに、みんな仲良くワイワイやって欲しいって思ったからさ。同い年の女の子同士でって思ってね。美緒ちゃんは学校は違うけど、あの4人仲良いしさ」

 

ほ~ん、澄香らしい理由だな。

 

「それに梓もガールズバンドだし。英治がさっきタカに負けないって言ったように、私も梓のバンドに負けないバンドにしたいしね。私も本気でやりたいから」

 

「お豆腐!お豆腐食べたい!冷奴ー!」

 

梓は完全に酔っ払いか…。

 

 

「英治は?ギターとベースは決めたか?」

 

「あ?俺っすか?ギターは木南さんかな。そしてベースはまどかのたっての希望で日高くんだ」

 

あ?日高くん?まどかの希望で?

 

「うん、日高くんのベースはすごく聞いてて心地いいんだよ。まぁ、本人がいつも眠そうだからかも知れないけどさ。小暮さんの歌声には合うと思うんだよね」

 

なるほどな。

 

 

「わぁー!すごい。みんな自分のプロデュースしたいメンバーがバラバラだ」

 

あ?そうなの?俺も何となくで聞いてたから、そこまで気付かなかったけど。

 

「そういう日奈子はそれで7人アイドルってのやれるのか?」

 

「うん。あたしは架純ちゃん、ユイユイちゃん、弘美ちゃん、聡美ちゃん、麻衣ちゃん、さっちちゃんの7人」

 

………は?さっちちゃん?

 

「ちょ、ちょっと待てよ。お前さっちちゃんって…。河野くんがよ…」

 

「元々アイドルグループ作りたいってのは、あたしと弘美ちゃんとさっちちゃんで話してたんだよ。さっちちゃんはメンバーに入る気満々だったんだ」

 

さっちちゃんも確かに可愛いもんな。

おっと、こんな事考えてたらまた殴られちゃいそう。

 

「本当は姫咲ちゃんも欲しかったけど、梓ちゃんに取られちゃったから、姫咲ちゃんの代わりに一緒にプロデュースするつもりだった弘美ちゃんが入るって事で。ほら、これでみんな決定!」

 

なるほどなぁ~。

って、納得すると思ったかこの野郎。

 

「決定って何だよ。俺のバンドも手塚のバンドもギターが決まってねぇじゃねぇか。アホか」

 

「よし、じゃあ今までの希望でメンバーは決定にしておこう。後で俺からSCARLETのグループに全員に、明日集合をかけておく」

 

は!?手塚!?お前正気か!?

 

「待ってよ、手塚さん」

 

「あ、梓ちゃん、俺トシキだよ?」

 

「待ってよ、手塚さん」

 

「あ?何だよ?」

 

「Canoro Feliceは明日もヒーローショーのミニライブあるから無理かも?」

 

「ほんま!?梓!それほんまに!?よし、明日こそは私も観に行こ…」

 

ほう。明日もあんのか。だったら俺も観に行こうかな?

 

「なら、夕方からの集合にすっか。来れない奴らがいたら日を改めるしかねぇかな…」

 

いやいやいや、待てよ。だから!俺とお前のバンドのギターはよ!

 

「よし、送信完了だ。

さて、タカ。俺とお前のバンドのギターだったか?」

 

「あ、ああ。わかってんのかよ。ファントムのメンバーみんな決まってしまったろうが。俺とお前のバンドどうすんだよ」

 

「俺のバンドのギターは佐倉 奈緒にやってもらう。ギターの問題はねぇ」

 

なんだ…と…?

って事はこいつのバンドは3人でやるつもりなの?

 

「タカ。お前のバンドのギターにビッタリなヤツがいる」

 

「あ?俺のバンドのギターにピッタリのヤツだ?誰だよそれ」

 

「フフフ、風見 有希。お前のmakarios biosだ」

 

「ああ、有希か。あいつギター出来んの?俺の遺伝子だろ?あ、何か悲しい事自分で言ってる」

 

「は!?ちょ、ちょっと待て…!お前、有希がお前のmakarios biosだって知ってたのか!?」

 

「え?みんな知ってるけど?何でお前が知らないの?」

 

「ま、マジか…驚かせてやろうと思ってたのによ…」

 

「あははー!サプライズ成功!有希ちゃんにもタカちゃんに名乗り出た事は内緒にしてようって言ってたしね!」

 

「お前…!ほんとお前な…!!」

 

有希がギターかぁ。俺の遺伝子だったらギターダメじゃん。ただ可愛いだけじゃねーか。

 

「ちょ、タ、タカくん?タカくんのmakarios biosって…?」

 

「ああ、梓は知らないんだっけ?どうも俺にもmakarios biosが居たらしくてな」

 

「そうなんや…。あ、あたし日本酒おかわり」

 

こいつ…まだ飲むのか…。

 

「チ、まぁいい。有希のギターの技術は問題ねぇ。昔の俺に匹敵する腕前だ」

 

なんだと!?マジでか!なら俺も頑張ったらギターを…?いや、もう今更感あるか…。

 

「タカちゃん、ほんとに大丈夫だよ。有希ちゃんはSCARLETのバンドのギターボーカルだし」

 

「有希はギターボーカルとキーボードの2人バンドだからな。キーボードのヤツの名前は桐谷 亜美(きりたに あみ)

俺のバンドにはこいつを入れようと思っている」

 

あ?キーボード?

そういや有希のバンドメンバーには会った事なかったもんな。2人でバンドやってんのか…。それで今までクリムゾンと…。

 

「亜美ちゃんまだ大学生じゃん。就職先もうちに決まったけど、さすがに手塚のバンドは嫌なんじゃない?」

 

「あ?異論は認めさせねぇ。だが、あいつはBlaze Futureのファンだし、佐倉 奈緒と同じバンドって言ったら喜ぶだろ」

 

え?そうなの?いやだわ、照れちゃう。

 

「あ、亜美ちゃんはね、Blaze Futureの奈緒ちゃんと盛夏ちゃんとまどかちゃんのファンなんだよ。父親のせいで男嫌いだからさ、タカちゃんの事はどうでもいいみたいなんだけど」

 

え?俺の事はどうでもいいの?俺ボーカルだよ?

 

「父親のせいって訳じゃねぇだろ。離婚したのもクリムゾンとの事があったからだし、家族3人で仲良く飯食ったりはしてるしよ」

 

「「「「「は?」」」」」

 

離婚?え?何を言ってるの?

 

「離婚って何だよ。手塚テメェ結婚してたのか?」

 

「あ?拓斗は知らなかったのか?15年前はまだ離婚してなかったし俺は妻帯者だったぜ?」

 

「「「「「はぁ!?」」」」」

 

「拓斗だけじゃなくて、俺も知らなかったですよ!」

 

「あ、そうなのか。まぁ、結婚して子供も居たが、クリムゾンエンターテイメントを抜けてからは、俺も追われる身になった訳だしな。あいつらが安心して暮らせるように離婚したんだわ。まぁ、形だけの離婚みたいなもんだがよ」

 

こ、こいつでも結婚出来るってのに何故俺は…。

おのれこの理不尽な世の中め…。

 

「まぁ、その子供ってのが有希とバンドやってる亜美って訳だ」

 

 

「よし!これでみんなのプロデュースする企画バンドは決まりだね!次にみんなのバンドでやる企画なんだけどさ…」

 

そうして俺達は企画バンドをプロデュースする事になった。暴君日奈子が提示した番組企画も俺達のバンドでコーナーを設けるらしい。

そりゃ、番組企画のバンドって話だもんな…。

 

それから俺達は誰のバンドがどの企画をやるか話し合い、明日、日曜の夜にファントムのみんなをSCARLET本社に呼び出し、その説明会が行われる事になった。

 

さて、あいつらはやるって言ってくれるかな?


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