「Divalとは違うバンド…梓お姉ちゃんの…」
「企画バンドねぇ~…もぐもぐ」
「歌詞…かぁ…。うぅ…どうしたもんですかね…」
「あたしはNoble Fateだけで良かったのに…」
「うぅ~…眠い…飲み過ぎた…」
「この企画バンドに選ばれたら、私の実力もあの頃のバンドメンバーに選ばれたとも言えるわね…」
「お兄さんプロデュースのバンドにお姉ちゃんって事は無いのか…」
「江口と同じバンドになりそうなら断ろ…」
「み、みんな企画バンドやる気満々なんだ…?」
あたし達は美味しいご飯を食べながら、隣の個室で話されていた企画バンドの事を話していた~。
あたしの名前は蓮見 盛夏。
そんじょそこらにはいない美少女だ。
……と、自分では思っている。
正直な話をすると、あたしはこの企画バンドにはあんまり興味は無い。
あたしはBlaze Futureのベーシストだから。
おかーさんの影響もあったのかもしれないけど、ずっと大好きだったBREEZE。
あたしがずっと追っていたBREEZE。
TAKUTOさんのベースに負けないように、
TAKAさんの歌に合わせるように、
そう思ってベースをやってきたあたし。
そんなあたしがTAKAさんの…、タカちゃんのBlaze Futureでベースを弾く事が出来るようになった。
そして仲良くなったBlaze Futureのギタリスト奈緒。
奈緒のギターの音はとても心地いい。
あたしとまどかさんのリズムで、どんどん奈緒のギターを引っ張っていきたい。
どんどん奈緒のギターに合わせた音を出したい。
あたしはそう思うようになっていた。
Blaze Future。
ボーカルのタカちゃん。
タカちゃんはきっと企画バンドが始まっても、Blaze Futureを頑張ってくれると思う。
だけどタカちゃんの作りたい曲は、昔のBREEZEの時に作っていた曲なのだろう。
ギタリストの奈緒。
ずっと憧れていたBREEZEのTAKA。
そんな憧れの人と一緒にバンドをやる事が出来て、今は手塚さんプロデュースの名の元に、あの頃のBREEZEと同じような歌を歌えるかも知れない。
憧れの人に並ぶチャンス。奈緒はやりたいだろう。
ドラマーのまどかさん。
タカちゃんがBlaze Futureを辞めて、あたし達…奈緒の歌声に全てを託して、歌う事を辞めると怖がっていた。
だけど、勇気を出して自分のやりたい事を話せた。
まどかさんは凄いと思う。きっと…自分の弱さも受け止めているから。
あたしには…出来ない…。
でも、それは…あたしの我儘。我儘なんだよね。
「あ、盛夏」
「ん?香菜ぁ?どしたの~?」
あたしは…普段通りの盛夏ちゃんで居なくちゃ。
それがあたしに出来る精一杯だから。
「ビールもうなくなりそうじゃん?盛夏もおかわり頼む?」
「おお~、どうしよっかなぁ?う~ん、やっぱりまだビールかなぁ?」
「了解。盛夏もビールね~」
タカちゃんとまどかさんはどうするんだろう?
タカちゃんのバンドにはBlaze Futureのメンバーはダメって事だった。
まぁ、奈緒は手塚さんのバンドのボーカルだし、まどかさんは英治ちゃんとプロデュースやるみたいだし、残ったBlaze Futureはあたしだけなんだけどね~。
手塚さんは誰をベースに選ぶんだろう?
奈緒はさっきあたしのベースじゃないと話を断るって言っていた。あたしも奈緒のバンドのメンバーになりたい。
奈緒のバンドのベースに選ばれるのがあたしじゃなかったら。それでも奈緒には断ったりせずに、やりたい事をやってほしい。
でも…そうなったら素直に応援出来ないだろうな…。
あたしは…本当に我儘だ…。
『バンドメンバーの取り合いになっても嫌だしさ!今のうちにメンバー決めちゃおうよ!』
お?バンドメンバーを…決める?今から?
「うふふ~、みんな誰のプロデュースするバンドに入るのかなぁ~?タカちゃんのバンドか、まどかさんのバンド~。それか奈緒と同じバンドじゃないとあたしは嫌かなぁ~?」
あたしの精一杯の言葉。
こんな言葉しか言えなかった…。
奈緒には…BREEZEを越えたいという気持ちもあるのに。
「盛夏はさ?その…私と一緒のバンドじゃくても…ベースやる?」
奈緒…?
………やりたい訳ないじゃん。
「ん~?そだなぁ。
さっきも言ったけど~。タカちゃんのバンドは無理だから~。
まどかさんのプロデュース、それか奈緒と同じバンドに選ばれなかったらお断りするかも~?」
「あ、あはは。盛夏がまどか先輩に選ばれたら、私と盛夏は別のバンドになっちゃうね」
わかってるよ、あたしも…。だから、言わないで…。
『あたしは奈緒と同じバンドじゃないとお断りするよ~。だから奈緒もあたしと同じバンドじゃなかったら断ってほしいかなぁ?』
奈緒もこの企画バンドやってみたいと思ってるんだろうから、あたしはこんな我儘言えない。
「おぉ!?そうなっちゃうとそうだね~」
だからあたしはこんな事しか言えないよ。
奈緒はそれ以上は何も言わず、あたしに微笑みかけてくれていた。
『だったら辞めてもいいんちゃう?それでタカは誰にボーカルやって欲しいの?誰を選ぶの?』
お?タカちゃんがボーカル選ぶ?
誰を選ぶんだろう?
あたしの事はさておき、これはこれで気になるよね~。
タカちゃんのやりたい曲に合った歌声。
あの頃のBREEZEの曲に合った歌声。
『俺がボーカルをやって欲しいのは理奈だ』
「え?私?」
「ぴぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!」
「わ、美緒!?大丈夫!?」
理奈。確かに理奈の歌もかっこいいけど…。
ベースボーカルって事かな?
確かに理奈に聴かせてもらったcharm symphonyの時の歌声は、タカちゃんの曲に合ってるかも~?
うっふっふ~。
タカちゃんが選んだのは理奈かぁ~。
渚と奈緒はどんな反応するかなぁ?
「せ、先輩が選んだのは理奈かぁ~。あ、あはは。わ、私は梓お姉ちゃんに選ばれてるしね。選択肢に私は無かったわけだし」
「そ、そうだよね。貴が理奈を選んだのは、わ、私も手塚さんに選ばれてたからだし。私も選択肢に無かったもんね」
「渚も奈緒もどうしたの?顔が青ざめて汗がものすごいけど?」
うふふ~、焦ってる焦ってる~。
理奈はどんな反応してるのかなぁ?
「全く…本当に困った男ね。でもそうね。
奈緒や渚の言う通りだわ。
私には奈緒のように人を感動させる歌声も、渚のように人を惹き付ける歌声もしていないわ…」
「り、理奈さん!そんな事ないです!!理奈さんの歌声は最高ですよ!!お兄さんが理奈さんを選んだのは……ん?あれ?理奈さん何でそんなお顔がニヤけているんですか?」
「ありがとう美緒ちゃん。そうね。
それでも貴さんが選んだのは『私』なのよね。他の誰でもなく」
「「ウッ…」」
『理奈なら俺が思い描く歌を表現してくれると思う』
「あら?私なら貴さんが思い描く歌を表現?
全く…あの男は何を言っているのかしら?恥ずかしいじゃない。
『私なら』と期待して私を選んだのね。しょうがないわね。私にはDivalがあるのだけれど、期待に応えてあげる事にするわ」
「「ム、ムキー!!!!」」
-ドン!ドン!
奈緒と渚は隣の個室に向かって壁にパンチした。
うふふ~、黒いバトルが開かれておりますな~。
理奈なんか勝ち誇った顔しちゃってるし~。
「り、理奈?先輩のプロデュースとか嫌なら断ればいいんじゃないかな…?」
「そ、そうだよね。しょうがなくとか思ってやるなら断った方がさ…?」
「渚も奈緒も何を言っているの?
私もBREEZEのTAKAさんに憧れて歌っていたのよ?
それに、渚と奈緒と競えるいい機会ではあるわ」
「で、でもさっき理奈はしょうがないわねとか言ってたじゃん!」
「そ、そうだよ!しょうがなくやる必要なんかないよ!そ、それって貴にも失礼じゃん?」
「言い方が悪かったわね。ごめんなさい。
貴さんが私に歌って欲しいと言うなら喜んで歌わせてもらうわ。しょうがなくと言ったのは、あんな大きな声で、みんなの前で『私を選んでくれた』事が恥ずかしいから、しょうがない男ねって意味で言っただけよ(ニコッ」
「「ウッ…」」
『あ?いや、俺のバンドじゃ理奈にはベースはやらせるつもりねぇ。理奈にはボーカルとして歌に集中してもらう』
「「「「え?」」」」
タカちゃんのバンドのベースは理奈じゃない?
ん~。確かに理奈のスタイルはタカちゃんの音楽っぽくは無いけど~。
「私がベースを弾かない…?どういうつもりかしら?」
『え?りっちゃんにベースやらせないの?それってベースを他の人にやって欲しいって事?』
『ああ、まぁな。理奈のベースの技術も最高ではあるんだが、俺の曲に合うベーシストは他にいるからな』
「わ、私のベースも最高だなんて…。も、もう!あの男は…。
でも確かに私のベースはBREEZEとは、拓斗さんとはかけ離れているわね。私のベースは父の影響が大きいもの」
「せ、先輩が…理奈を…」
「そっかぁ。確かに理奈のベースより盛夏の方がBREEZEのスタイルに近いもんね…」
確かにあたしと理奈のスタイルは違うよね~。
あたしはタカちゃんのバンドには入れないし、タカちゃんは誰にベースをして欲しいんだろう?
『もしかして美緒ちゃん?』
「ぴぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!」
-ガシッ!
いつもの如く倒れようとしていた美緒を、すんでの所で理奈が支えていた。
「あ、危なかったわ…。準備していて良かったわね…」
「わた、わた、私が理奈さんと同じバンドに…!?」
「美緒、残念だけどね。それは無いと思うよ」
「お姉ちゃん?」
そうだよね~。
美緒のベースは理奈の影響受けてるからか、本当に理奈に似たスタイルだし。
もし美緒をベースにって事なら、理奈がそのままベースボーカルしたらいいもんねぇ?
「そうね。美緒ちゃんのベースは私のスタイルとよく似ているわ」
「わ、私如きが理奈さんのスタイルに似ているとは…!」
「あ、それあたしも思うよ。美緒とセッションしてると、まるで理奈と一緒にやってるような気になるし。歌声は全然違うけどね」
「し、志保まで…ああ、何と恐れ多い…」
『美緒ちゃんのベースも確かにすげぇけど、美緒ちゃんに頼むなら理奈がやっても一緒だろ?同じタイプのベーシストだし。それに美緒ちゃんの歌を腐らせるのも勿体ねぇ。それにお前…美緒ちゃんにボーカルやって欲しいと思ってんじゃねぇの?』
あ、やっぱり美緒じゃないんだ?
「そういう事だよ、美緒」
「お兄さん…わ、私のベースも凄いとか、私が歌わないのは勿体ないとかって…も、もう…///」
「それより澄香お姉ちゃんは美緒ちゃんにボーカルやってほしいと思ってるんだね」
「じゃあタカ兄は誰にベースやってもらいたいんだろ?
ファントムの中じゃ拓斗さんに近いのは盛夏の次は内山くんかな?」
「確かに内山も最近は拓斗さんの弾き方に影響受けてる感じするね」
『梓の事だから…ベースはせっちゃん?』
お?あたし?
「梓お姉ちゃんのバンドに盛夏のベースかぁ。なら私と盛夏が同じバン…」
『うん。ホントはそうしたいけどね。せっちゃんは手塚さんに譲る事にした』
「ドにならないだとぉぉぉぉ!?」
およ?あたしは手塚さんに譲る?
え?それならあたしは奈緒と…。
『手塚に…?って事はせっちゃんは奈緒のバンドに?』
『うん。奈緒ちゃんの歌にはせっちゃんのベースが必要だと思う。あはは、あたしも奈緒ちゃんの歌のファンだし、奈緒ちゃんには最高のコンディションでって思って』
え?本当に?いいの?
あたしは奈緒と一緒にやれるの?
あたしが奈緒の方に目をやると、奈緒もあたしを見ていた。
「えへへ、私の歌には盛夏のベースが必要だって♪
企画バンドでも一緒にやれそうだね」
企画バンドでも、Blaze Futureでも奈緒と一緒にやれる。奈緒と演奏出来るんだ。
「うっふっふ~。奈緒の歌にはあたしのベースが必要かぁ。ま、あたしも奈緒にはあたしが居ないとダメだと思ってたんだよね~」
「もう、何を言っているの盛夏は~」
本当に嬉しいよ。奈緒。
『まぁ、そうだな。だから俺も蓮見 盛夏にベースをやってもらいてぇって思ってる。だから、ドラムも本当は柚木 まどかにやって欲しかったんだけどな』
およ?およおよ?それって…。
「わぁ~、貴兄かわいそ~。まるでBlaze Futureには貴兄がいらないみたい~」
「ちょっ、綾乃さん。思ったとしてもハッキリとそう口にするのは…」
タカちゃんはBlaze Futureに必要だぞー!
手塚さんは何を言ってるんだー!!
『よーし!じゃああたし、架純ちゃんとユイユイちゃん取ったー!』
ほぇ?架純ちゃんとユイユイ?
「日奈子お姉ちゃんがやりたいのってアイドルユニットだっけ?」
「あの2人は元アイドルだし~。ちょうどいいかもね~」
「アイドルユニットかぁ。架純ちゃんも優衣も喜びそうだね」
「アイドルユニットって演奏はどうするんだろ?御堂さんも夏野さんもギターだよね」
「アイドルか…私も選んでもらえないかな?ね、花音、私もまだいけるよね!?」
「アイドルと一言で言ってもBlue Tearやアイドリッシュセブンのようなダンスアイドル、パスパレのようなバンドアイドルもあるものね」
「理奈さん…今更ですけど…クロスオーバーしてます…」
「架純さんの喉って大丈夫なのかな?貴が今度、いい病院に連れて行ってくれるらしいけど」
「んー!アイドルかぁ。あたしも割とアイドルでもイケそうだよね?」
あたしは奈緒と同じバンドって事になったけど、みんな自分がどうなるのか気になるよね。
あたしもタカちゃんがベースに誰を選ぶのか気になるしね~。
『俺にもやりたい音楽ってのはある。どうせプロデュースするなら、俺も……タカの音楽や梓の音楽に負けねぇくらいの音楽をやって行きてぇ』
「おっちゃん…?」
「英治先生…」
おお!?英治ちゃんが珍しく真面目だ。
やりたい音楽…タカちゃんや叔母さんに負けない音楽か…。あたしはBREEZEを追っ掛けて、タカちゃんや奈緒と並んで…。今の目標って何だろう?
『俺もタカに憧れてた男の1人だからな。そしていつか俺の音楽で勝負してみてぇとも思ってたしな』
『英治…お前…』
『だから架純ちゃんは好きだけどな、俺のバンドのボーカルは沙織にやってもらいたいと思ってる』
「英治先生が選んだのは沙織さんかぁ~」
「おっちゃんの事だから渉くんか花音を選ぶと思ったんだけどなぁ~…」
「え?綾乃さん?何であたしなんですか?」
英治ちゃんが選んだのは沙織さん。
FABULOUS PERFUMEのシグレさんかぁ~。
シグレさんの歌なら聞いた事あるけどぉ~…。
『まどか、勝手に決めちまって悪いな。そんでドラムはな。遊太にしてもらいたいと思ってんだよ』
ドラムは遊太ちゃん?
なるほどなるほど~。英治ちゃんのやりたい音楽はそういう音楽かぁ~。
遊太ちゃんのドラムはシフォンちゃんの時とは違うもんね。
「そっか、おっちゃん…。おっちゃんらしいかな」
「え?綾乃姉は何かわかったの?」
「香菜も英治さんの弟子っていってもまだまだだね。あたしもわかったよ」
「え!?志保も!?」
『あ!あたしのダンスユニットには、一瀬くんと秦野くんと豊永くんと河野くんと達也入れたい!いいよね!?ね!あ、5人になっちゃったか…』
ん?晴香さん?5人?
「あ、確かにファントムのイケメン勢かも?」
「晴香さんが5人も取っちゃったかぁ~」
「秦野くんとか将来心配ですよね~。色々と」
「確かに達也さんってライブの時はかっこ良かったかもですね」
「それね!普段は髪を下ろしてるのにライブの時は髪を上げてて、ワイルドでいい感じって思ったもん」
「「イケメンなら…貴さん(お兄さん)も入ってもいいんじゃ…(ボソッ」」
「ん?理奈も美緒も何か言った?」
「も、もしかして美緒ちゃんもなの…?」
「あ、そだ!ねぇねぇ!」
うん?何だろう?
急に渚が手を上げて立ち上がった。
「みんなぶっちゃけさ?やるなら誰のバンドに入りたい?」
ん~?渚はいきなり何を言ってるんだろ~?
「渚…あなた何を言って…」
「私はさ。梓お姉ちゃんにボーカルとして選んでもらったけど、やっぱりDivalがいい」
「な、渚?何を言っているの?みんなそれはそうなんじゃない?あたしもDivalがいいし、タカ兄もBlaze Futureの方が…」
「それだよ香菜!」
「うん、ごめん。それってどれ?」
「みんな今の自分のバンドが一番だと思うんだよね。
でも仕事として?って言うのかな?やるならこの人のプロデュースバンドがいい!とか、この人とバンドやってみたいな。とか、そう思ったりしない?」
「うん、渚。ちょっとよくわかんない」
ん~?んん~…。
あたしがやりたいのはBlaze Futureだ。
だけど、企画バンドをやるなら、それでも奈緒と同じバンドがいい。
そういう事を聞きたいのかな?
「さぁ!花音!
花音はやるなら誰のバンドがいい!?」
「へ?あたし?」
「渚?あたしとのさっきの会話はもう終わったって事?」
花音のやりたいバンドかぁ。
確かに想像つかないかも~。
「ま、まぁ、あたしはNoble Fateがあれば…」
「そういうの!そういうのじゃなくて!」
「渚は何を言ってるの?めんどくさ…」
「花音、私も気になるよ」
「私も私も~」
「奈緒も綾乃さんも何を言ってるの…ほんとに…」
「Blaze FutureとDivalの対バン観に行った時。
バンドやりたいって言ったのは私だけどね。それを聞いた花音は自分からバンドやりたいって言ったんだよ?」
「うっ…た、確かにそうですけど…」
ほうほう。そうだったのか~。
綾乃さんは何となくわかるけど、花音も自分からやりたいって思ってたんだぁ~?
「それとも花音はNoble Fateでこないだオープニングアクトやってみてさ?バンドは辞めようかな?って思った?」
「それはないよ。楽しかったし。
初めはあたしが歌詞を書くって事になって失敗したって思いましたけど。
あたしなんかの歌詞に真希さんが曲を付けてくれて、こんなすごい歌になるだって感動しましたし」
そして花音はビールを一口飲んでから続けて言った。
「へ、変な意味じゃなくて…いや、これも変な理由かも知れないけど…」
「ん?何?」
みんな花音に目を向けて、花音の次の言葉を待っていた。
「あたしはこの企画バンド…。
やるなら日奈子さんのアイドルユニットがいいかな。アイドルになりたいとか、そんなんじゃないんだけど…」
日奈子さんのアイドルユニット?
「え?意外だぁ。花音ってアイドルやりたかったの?」
「あ、綾乃さん!だ、だから違いますって…!」
「私も意外だと思ったんだけど…。花音はアイドルユニットだけはやりたがらないと思ってたし…」
あたしも奈緒と同じ意見だね~。
花音は他のバンドはやったとしても、目立つような事のあるアイドルだけは嫌がるかと~。
「んとさ、あたしって昔からぼっちで、ゲームするか音楽を聞くか…。そんな感じだったんだよね」
「花音…」
「お姉ちゃんも正にそんな感じでした。そこに漫画とアニメと特撮も加わりますが」
「美緒?」
「Noble Fateのボーカルとしてライブをやって、……って言ってもまだ1曲しかやってないけど、すごく楽しかったし、あたしの歌を聞いてオーディエンスも喜んでくれて…」
「花音…」
「あたしももっと歌いたいって思ったし、あたしじゃセンターなんか無理だと思うけどさ。御堂さんの喉の事もあるから、あたしの歌で少しでも助けになれたらなって思っちゃって。あはは、あたしなんかじゃ助けになれないかも知れないけど」
そっかぁ~。
花音の歌も楽しい気分になれる歌声してるもんね~。
うん。きっと花音ならやれる気がする~。
「そっか!さすが花音だね!」
「え?渚?何がさすがなの?あたしそんな事言った?」
「それじゃ綾乃さんはどうですか!?」
「え?私?渚ちゃんは何を言っているの?」
「綾乃さんは誰のバンドがいいですか?」
ん~?渚は酔っ払ってるのかな?
あれかな~?叔母さんにボーカルに選んでもらえてテンション上がってるのかな~?
「ああ、その話?それなら私は手塚さんかな?」
ほぇ?手塚さん…?
「え!?綾乃姉は手塚さんがいいの!?
てっきりトシ兄かタカ兄を選ぶと思ってた…」
「貴兄のプロデュースも面白そうとは思うんだけどね。トシ兄はどんな音楽やるのかわかんないのもあるし?」
「へぇー、それなら綾乃先輩は私と盛夏と一緒って感じですよね」
「え?うん。やるなら奈緒と盛夏ちゃんとやりたいと思って」
「ふぇ?え?マジですか…?」
綾乃さんはあたしと奈緒とやりたいって事なのかな?
「うん。マジだよ。
花音の歌が私は一番好きなんだけどね。こないだのライブで奈緒の歌を聴いた時に、この歌に合わせたリズムを刻んでみたいって思っちゃってね」
「あ、綾乃先輩…」
「そして盛夏ちゃんなら、そんなあたしのリズムにも合わせた演奏をしてくれると思って」
おお~。あたし褒められてる~。
「だから私は手づ…」
「なるほど!綾乃さん!私感動しました!」
「え?何が?渚ちゃん?」
「さあ!志保は?志保は誰のバンドがいい!?」
「え?あたし?」
「うん、理奈は先輩のバンドって決定してるしね」
あ~、なるほど。
だからあたしと奈緒にも聞かなかったのか~。
「あ、なるほどね。それならあたしはやっぱ澄香さんがいいかな?トシキさんと翔子さんは男でメンバーって話だしね」
「そうなんだ?てっきり先輩を選ぶと思ってたのに。
何で澄香お姉ちゃんなの?」
「ん?澄香さんのとこはボーカルが美緒でしょ?だからだよ」
「し、志保!?私がボーカルだからって…その…」
「あはは、美緒の歌も凄いと思ってるけどさ。ベースも本当に理奈みたいで合わせやすいし、あたしのギターには美緒や理奈のリズムが合ってると思うし」
「そうね。美緒ちゃんのベースも歌も本当に凄いと思っているわ。さっきは奈緒と渚と競ういい機会だと言ったけど、美緒ちゃんにも負ける訳にはいかないわね」
「そうだよね。Dival以外で演奏するってのも、あたしらにいい経験にもなりそうだよね」
「そういう香菜は誰のバンドがいいのかしら?」
「あたしは絶対貴兄だよ」
……ほ?香菜はタカちゃんのバンドがいいのか~。
まぁ英治ちゃんのバンドは遊太ちゃんがドラムだし?
でも香菜はアイドルとかやりたいって言うと思ってたなぁ~。
「香菜が…先輩がいい…だ…と…?」
「香菜?何でなの?何で貴なの?」
「まさか香菜…あなたも…?」
「いやいやいや!違うから!そういうんじゃないから!
あたしもBREEZEの曲好きだしさ!子供の頃からBREEZEの曲で練習してきた訳だし!」
「私も子供の頃からBREEZEの曲で練習してきたし、貴兄の曲好きだけど、貴兄のバンドがいいとかないよ?」
「綾乃姉もあたしの命が危うくなるような事言わないでっ!マジでタカ兄がいいとかじゃないから!
ほら、タカ兄のバンドのボーカルは…その…ね?」
タカちゃんのバンドのボーカル?理奈がいるから?
「香菜…あなた…」
「うぅ~…言うのめっちゃ恥ずいわぁ~…。
その…理奈ちがボーカルやるなら…あたしも理奈ちと一緒がいいから…」
「香菜…」
お~お~。香菜もあたしが奈緒と一緒がいいって思うように、理奈と一緒がいいんだね~。
「私もそう思うわ。私にはあなたのリズムが必要よ、香菜」
「理奈ち…」
『あ、それね!
ボーカルはなっちゃん!なっちゃんは何と言ってもあたしの後継者だからね!それでギターは睦月ちゃん!
睦月ちゃんは翔子の後継者みたいなもんじゃん?
それより澄香は何でそんなに奮えてるの?』
『あ、いや、あははは。私もさすが梓やなーって思って!後継者って事はベースは姫咲お嬢様?』
「あ、理奈、香菜。百合してる場合じゃないよ!
梓お姉ちゃんはギターに睦月ちゃんでベースは姫咲ちゃんがいいみたい!」
「な、渚…別に百合って訳では…」
「ギターに睦月、ベースに姫咲さんか…。
なかなかクセの強そうなバンドになりますね」
「た、確かにそのバンドには誰かまとめ役が必要な気がするよね」
「私がいるから大丈夫!!睦月ちゃんと姫咲ちゃんとなら、私が一番お姉ちゃんだしね!」
「……そうね。梓さんのバンドにはしっかりした人が必要ね」
「え?理奈?何で?だから私がいるよ?」
「う~ん、ドラム組でしっかりしてる人かぁ~?あ、香菜とか~?」
「あたし!?あたしは…その理奈ちとが…」
「そうよ盛夏。香菜は私のよ。誰にも渡さないわ」
何かその言い回し~。理奈も酔ってる?
「まどか先輩はプロデュース側だしなぁ。あ、恵美ちゃんとか?」
「恵美さん?う~…ん確かにしっかりはしてるけど…。渚と睦月と姫咲さんの相手は辛いんじゃ…」
「志保?」
「うん、でも恵美ならやれると思う。あの子は睦月と麻衣に振り回されてもいつも元気だから」
「いや、だからね?私がまとめるよ?」
『タカ。お前は理奈をボーカルにしたいって言ってたな。他のメンバーは誰を考えてる?』
「お~?貴ちゃんのメンバー発表かな?」
「タカ兄の発表かぁ。あたしは選ばれるかな…?」
「大丈夫よ、香菜。香菜が選ばれなかったらあの男を抹殺するわ」
抹殺って……。
『俺は理奈をボーカルにベースを双葉、ドラムは香菜って考えてんな。ギターは悩んでるけど…』
「理奈ち!あたし!」
「ま、当然の結果ね。私には香菜のリズムが必要なんだもの」
「それより貴…!ギターは悩んでるって……何であたしを選ばないのよっ!?……貴のバカッ!!」
-ドン!ドンドン!
「え?あれ?渚?綾乃さんも…?」
志保が壁にパンチした時、渚と綾乃さんも壁に向かってパンチしていた。何で綾乃さんも?
「な、渚?どうしたの?」
「いや~…双葉ちゃんと先輩って昔から仲良しさんみたいだしさ…。それで…なんとなく?」
「なんとなくって…」
「あ、綾乃さんは何で?貴さんに選ばれたかったとかですか?」
「花音?私はそんな事ないよ?
ただ貴兄の目の前にはまどかがいるのに、まどかはプロデュースだとしても、『いや、ドラムはまどかがいいんだけど?お前やってくんね?』って言ってほしかったんだよ~。まどかかわいそう~」
「あ、綾乃姉のタカ兄のモノマネも似てるね…」
ん~、タカちゃんの事だから面と向かってこそ言わないと思うんだけどな~。
「でも…貴が茅野先輩を選んだのは何となくわかるかな。茅野先輩の技術はナギの時とは違って凄かったからね。お父さんも褒めてたくらいだし」
「茅野さんのベースはそんなにすごいの?ナギの時とは違うというのは?」
「ああ、うん。茅野先輩ってナギの時は、それがバンドのスタイルなんだろうけど、静かでクールなイメージあるでしょ?」
「そうだね。ナギさんのベースは私や理奈さんとも違うタイプだけど…クールな印象が強いかな」
「うん、でも茅野先輩の時は…お父さんとデュエルした時は、いつものクールな印象と違ってて、すごくパワフルな演奏だったんだ。技術だけなら理奈よりも…って思うくらいだったよ」
「私よりも…?」
ほぉ~。理奈よりも凄いのかなぁ?
これは理奈の反応はどうなるかな?
「それは面白いわね。FABULOUS PERFUMEのナギさんではなく、茅野さんとしての演奏。実に聴いてみたいものだわ」
「きっと驚くよ。理奈にもいい刺激になるんじゃないかな」
『……よし、梓。お前はボーカルに水瀬 渚、ギターに永田 睦月、ベースが秋月 姫咲だな?ドラムは誰か考えてるか?』
『ん…?ドラムは誰にしようかまだ悩んでるよ?日奈子には後継者いないし?あ、タカくん…あたし酔っちゃったかも?』
「あ、梓お姉ちゃんが酔っているだと…!?ゴクリ」
あ、渚はそれに反応しちゃうんだ?
『あ、梓、ならうちの恵美とかどうだ?あいつは日奈子のドラムに影響受けてるしな』
「え?恵美?…確かに恵美はArtemisの音楽に影響受けてるかも…」
「恵美ちゃんならしっかりしてるし、渚と睦月ちゃんと姫咲ちゃんのまとめ役としてもいいんじゃない?」
「いや、だから私が一番お姉ちゃんだし私がまとめるよ?」
『俺はボーカルに佐倉 奈緒。ベースに蓮見 盛夏。ドラムは柚木 まどかにしてもらいたかったが、今は北条 綾乃にしてもらいたいと思ってる』
「あ、私、手塚さんのバンドだ」
「わぁぁぁ!やったです!綾乃先輩!」
「綾乃さんよろしくぅ~」
「綾乃姉は奈緒達と同じバンドか…。なかなか面白くなりそうだね」
『俺はボーカルに渉くん。はーちゃんとすごく似てるけどさ。Ailes Flammeとは違う曲調で歌わせたらどうなるかな?ってワクワクするし』
トシキちゃん…?
そっかぁ~。トシキちゃんは渉くんかぁ~。
やっぱり…トシキちゃんも貴ちゃんが大好きなんだね~。
「トシ兄は江口くんか…やっぱりね、フフ」
「ふぇ?綾乃先輩はトシキさんが渉くんを選ぶって思ってたんですか?」
「江口くんは…そうね。
奈緒もわかるんじゃないかしら?あの頃の貴さんにそっくりだわ」
「あの頃の貴……ん~、確かに雰囲気は似てるけど…」
「お姉ちゃん…さすがだね。
渉ごときじゃお兄さんとは全然似てないって事だね?お姉ちゃんが愛するのはお兄さんだけだと…」
「美緒はソフトドリンクで酔ったのかな?あんまり気持ち悪い事言ってたら、さすがのお姉ちゃんも引くからね?」
『ギターは折原くんかな。雨宮さんとデュエルした時は、正直独りよがりな演奏だったと思う。でも、あのデュエルの後は、南国DEギグの時もみんなを見るようにはなってたし、負けてから見える事もいっぱいあるだろうしさ。あの時と変われた折原くんに色々教えていきたいって気持ちがあるんだ。
ベースは拓実くん。こないだのLazy Windとの対バンの時は、これまでの拓実くんの演奏とは違う雰囲気になってて、すごくドキドキした。でも、だからかな?昔の俺と宮ちゃんを思い出したよ。
そしてドラムをして欲しいのは松岡くん。松岡くんは周りをよく見てくれてるからね』
「へぇー、トシキさんが選んだギタリストって折原か。そんでベースは内山でドラムは松岡…」
「どしたん志保。何か嬉しそうじゃん?」
「うん、少し嬉しいかな。これでボーカルが江口じゃなくてあたしだったら、もっと嬉しかったんだけどね」
ん?ボーカルに志保だったら嬉しかった?
ギターが折原さんでベースが拓実ちゃん、ドラムが冬馬ちゃんだったら嬉しいの?
あれ?このメンバーってもしかして?
「あ、これもしかして南国DEギグの時の?」
「そ、渚正解!
トシキさんが選んだメンバーって江口以外はお父さんとデュエルしたメンバーだからさ。何か…トシキさんはトシキさんでお父さんに影響受けたのかな?って思うと嬉しくて」
そっか。みんな志保のおとーさんとデュエルしたんだよね。
『……トシキも翔子も俺と同じギタリストだしな。俺もお前らの音楽が楽しみだぜ。
澄香、お前の希望するメンバーは決まってるか?』
『私はベースボーカルに美緒ちゃん、ギターは志保、キーボードに明日香ちゃんで、ドラムは栞ちゃんかな』
「私と志保と明日香さんと栞さん!?」
「あ、さすが澄香さん!それ面白そう!」
「美緒ちゃんがベースボーカル。澄香さんにベーシストとしても選ばれるとは…。さすが美緒ちゃんね」
「理奈さん…何とありがたい言葉を…」
「栞ちゃんがドラムか。あの子も遊ちゃんと一緒で緊張しぃだけど大丈夫かな?」
「栞も多分大丈夫だよ。志保と栞が同じバンドか…楽しみだね」
『お豆腐!お豆腐食べたい!冷奴ー!』
「梓お姉ちゃん…私も今…冷奴を食べてるよ(トゥンク」
渚は何でときめいたんだろぉ~?
『英治は?ギターとベースは決めたか?』
『あ?俺っすか?ギターは木南さんかな。そしてベースはまどかのたっての希望で日高くんだ』
「え?まどかの希望で日高くん?ま、まさかまどか!?」
「綾乃さん、それは無いと思いますから…。それよりギターは真希さんか」
「真希さんと沙織さんは古いお友達みたいですからね。意外と合うかもですね」
「ん~?日高くんって誰~?」
「何言ってんの盛夏。evokeの日高 響さんじゃんか」
「おお!あのいつも眠そうな人か~」
「盛夏。間違ってはいないのだけれど…その…本人の前では…ね?」
「理奈ち…それもう手遅れ…」
『わぁー!すごい。みんな自分のプロデュースしたいメンバーがバラバラだ』
ほ?あ、確かにみんなバラバラかな?
「本当に…みんなバラバラですよね…」
「何てご都合主義なんだろう!」
「な、渚?わかってるでしょ?あんまりそういう事を言うのはさ…?」
「それにみんな希望したバンドに入れそうですよね」
「美緒、それも言っちゃいけない事だよ」
『うん。あたしは架純ちゃん、ユイユイちゃん、弘美ちゃん、聡美ちゃん、麻衣ちゃん、さっちちゃんの7人』
「え!?さっち!?」
「さっちちゃんがアイドルかぁ~。さっちちゃんも可愛いもんね。志保、さっちちゃんにも家に遊びにおいでって言っててよ」
「麻衣がアイドル…?ヤバイな、あの子喜んでやりそう…」
ありゃ?でもちょっと待ってよ?
「私達の…貴さんプロデュースのギタリストは誰がやるのかしら?」
「それだよね。私達のバンドも私と盛夏と綾乃先輩だけだし…」
「ヤバい…私眠気限界…」
「だから綾乃さんは弱いくせに飲み過ぎですって…!」
あたし達のバンドは3人でやるのかな?
奈緒がギターボーカルなら~。
『タカ。お前のバンドのギターにビッタリなヤツがいる』
お?貴ちゃんにピッタリのギタリスト?
「誰かしら?気になるわね」
「あたしより貴に合うギタリストか…」
「志保は何を言っているの?」
『フフフ、風見 有希。お前のmakarios biosだ』
「え?有希さん?」
「ん~?貴ちゃんはギター出来ないのに~?」
「貴の遺伝子でってなると…ギター大丈夫ですかね?」
「どうしようかしら?一気に不安になってきたわ…」
「いや、でも貴さんはあんな性格だからギターは挫折しただけで、有希さんは挫折せずに頑張ったからギター上手いって可能性も…」
「花音?貴兄の遺伝子だよ?」
『タカちゃん、ほんとに大丈夫だよ。有希ちゃんはSCARLETのバンドのギターボーカルだし』
「有希さんはギターボーカルだったんだ…」
「日奈子お姉ちゃんのお墨付きなら大丈夫なのかな?」
「でも貴兄の遺伝子だよ?」
「綾乃さんはタカさんの事嫌いとかじゃないですよね?」
『有希はギターボーカルとキーボードの2人バンドだからな。キーボードのヤツの名前は桐谷 亜美。俺のバンドにはこいつを入れようと思っている』
「きりたに あみさん…?誰ですかね?盛夏は知ってる?」
「ん~ん、あたしも知らな~い」
「私も聞いた事ないかな?SCARLET本社に行った時もあってないよね?」
『あ、亜美ちゃんはね、Blaze Futureの奈緒ちゃんと盛夏ちゃんとまどかちゃんのファンなんだよ。父親のせいで男嫌いだからさ、タカちゃんの事はどうでもいいみたいなんだけど』
『父親のせいって訳じゃねぇだろ。離婚したのもクリムゾンとの事があったからだし、家族3人で仲良く飯食ったりはしてるしよ』
「え!?私達のファン?ま、まじですか…?」
「お~!あたし達のファンなのか~!なんか嬉しいなぁ~」
「えっと、それよりお姉ちゃん達は他の事は気にならないの?これって亜美さんって方はもしかしたら手塚さんの…」
『よし!これでみんなのプロデュースする企画バンドは決まりだね!次にみんなのバンドでやる企画なんだけどさ…』
・
・
・
日奈子さんの言うみんなのバンドでやる企画。
その話もゆっくり聞きたかったんだけど、あたし達は飲み放題の時間制だったから、話の途中で飲み会が終わる事になり、今、それぞれが帰路についていた。
「本当にとんでもない事になったわね」
「まぁ、でも面白そうではあるじゃん」
「香菜の言う通りだね。せっかくなんだし楽しもうよ」
あたしも奈緒と一緒にやれるなら楽しんでやりたい。
ううん、きっと楽しんでやれると思う。
だけど…やっぱり貴ちゃんも一緒が良かったな…。
-翌日
あたしは朝早くから駅前でボケ~っとしている。
お腹空いたなぁ。朝からメロンパンとカレーパンと焼きそばパンしか食べてないし~。
もうすぐお昼になろう時間。
あたしはやっとターゲットを発見した。
「見ぃ~つけたぁ~!」
-ドン
「ぐほっ!」
あたしはターゲットに向かって体当たりをした。
「え!?何!?いきなり何なの!?盛夏!?」
ふっふっふ~。まさかあたしがここに居るとは思ってなかったのか慌ててるねぇ。
「まさかこんな所でナンパされちゃうとは~」
「あ?今のって俺がナンパした事になんの?」
「しょうがない。せっかく貴ちゃんにナンパされちゃった訳だし?今日1日は付き合ってあげるか~」
「いや、本当にお前は何を言ってるの?」
「さ、行こっか~」
「お前…どうせ夜に会え……盛夏?」
あたしは貴ちゃんの腕を掴んでいた。
あたしもまどかさんみたいに…。あたしの気持ちを伝えなくちゃ。
『あたし達はBlaze Futureだよ。企画バンドももちろん頑張るけど~、Blaze Futureが大好きだから。貴ちゃんは貴ちゃんの隣はあたしの場所だって言ってくれたけど、あたしの隣も貴ちゃんの場所だから』
『だからずっとずっと…一緒に居てくれなきゃ嫌だよ?』
「盛夏?どした?」
「ふぇぇぇぇ…お腹が空いて一人で歩けない~…」
「は?」
あはは~…。やっぱりこんな事しか言えないや。
でも、貴ちゃんを見たら何か安心した。
「早く行こう~。Canoro Feliceのミニライブの前にご飯ご飯~」
「あ?今からCanoro Feliceのミニライブ観に行くって何で知ってんだ?」
「ふっふっふ~。盛夏ちゃんは何でも知っているのだ~」
「は?は、はぁ…」
そうしてあたしは貴ちゃんと、商店街近くのデパートに、Canoro Feliceのミニライブへと向かうのであった。
きっと…大丈夫だよね。貴ちゃん♪