バンやろ外伝 -another gig-   作:高瀬あきと

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第16話 タカの場合

私は氷川 理奈。

今はSCARLET本社の会議室で、香菜と茅野さんとの3人で一緒に人を待っている。

 

「あ、あはは、理奈ちさぁ?タカ兄のバンドに選ばれて嬉しいのはわかるけど、そわそわし過ぎじゃないかな?」

 

「香菜?おかしな事を言わないでちょうだい。

私は別にそわそわなんてしていないわ。有希さんが来るのを待ちわびているだけよ」

 

「いや~、世間一般ではそれをそわそわしてるって言うと思うんだけど…」

 

まったく香菜もおかしな事を言うわね。

それってまるで私がこのバンドを楽しみにしているようじゃない。

私は別に楽しみにしている訳じゃないわ。

そう…あれがあれであれなのよ。

 

 

……

………

 

 

いやー!!!

ダメだ!無理無理無理無理無理!!!

 

何よ『私は氷川理奈』って…!!

いかにも理奈ちがモノローグで言ってそうな言葉をチョイスして、喋り方も理奈ちっぽくしてみたけど限界あるし!もうあれがあれであれとか言っちゃったし…!!

 

あぁ…ダメだ。何で今回のモノローグがあたしなの?

タカ兄の企画バンドの話でしょ!?

理奈ちがボーカルじゃん!Divalでベーシストの理奈ちがcharm symphony以来のボーカルをやるって大事な話じゃん!

いいじゃんモノローグは理奈ちで!何であたしのモノローグなの!?

 

 

そう…。本当はあたしは理奈ちではなく、Divalでドラムを担当している雪村 香菜。

 

これからタカ兄の企画バンドの話があると思うんだけど、あたしと理奈ち、双葉ちゃんの3人は渚の妹である来夢ちゃんの指定した会議室にいる。

 

本来ならタカ兄もSCARLETのバンドのボーカルの有希さんもこの会議室に呼ばれているはずなんだけど、今この会議室にはあたし達しかいない。

 

いや~、めちゃ嫌な予感するわぁ~…。

この異質なメンバーでモノローグがあたしとか嫌な予感しかしないじゃん…。

こないだ理奈ちに砕かれた腕もやっと治ってきたのに…。

 

「あの…香菜?どうしたのかしら?」

 

「え?いや、何でもないよ。あははは」

 

「そう?だったらいいのだけれど…」

 

ああ…あたしはまた理不尽な惨劇に巻き込まれるんだ…。何事も無く帰る事なんか出来ないんだね…。

 

あたしはこれから起こるであろう惨劇を想像し色んな事を諦めていた。

 

「あ、あの、香菜ちゃん?どうしたのかな?もしかして今日って何の話か知ってたりするのかな?」

 

あたしが今までの楽しかった思い出に浸っていると双葉ちゃんが話掛けてきた。

 

「あ、うん、そだね。タカ兄も有希さんもまだ来てないし今のうちに双葉ちゃんにも話しとこっか」

 

「タカくんや有希さん?わ、私は何でこのメンバーで呼び出されたの?」

 

そりゃ不安だよね。

あたしと理奈ちはDivalだし、双葉ちゃんはFABULOUS PERFUMEのメンバーと分かれて1人な訳だし。

そこに更にはタカ兄と有希さんも来るってんだからね…。

 

あたしと理奈ちはこれからどんな話になるのかわかってるわけだし、双葉ちゃんに先に説明してあげなきゃね。

 

「双葉ちゃん、実はさ…」

 

「待って頂戴、香菜」

 

ん?理奈ち?

 

「茅野さんには私から説明するわ」

 

「ふぇ?理奈さん?あ、よろしくお願いします」

 

おぉ~、まさか理奈ちが説明してくれるとはっ!

あ、そっか。タカ兄のバンドの話だし理奈ちも気合いが入ってるって事かな?気合いってより気愛?なんちゃってぇ。

 

 

……今、理奈ちがあたしを思いっきり睨んできたんだけど何で?

 

 

「まぁいいわ。

今は茅野さんに説明する事が大事だしね」

 

今は…?理奈ちは今はって言った…?

 

「茅野さん、軽くだけれど私から説明させてもらうわね」

 

うん、さっきの理奈ちの発言は気にしない事にしよう。

そんな事より双葉ちゃんに説明する方が大事だしね。うん。

 

「早速なのだけれど、まずは私とデュエルをしてもらえるかしら?」

 

「ふぇ?デュエル…?」

 

ふふふ、双葉ちゃんもびっくりしてるね。

さすが理奈ちだね。まずはデュエルするのが手っ取り早いもんね。

 

 

……

………

 

 

って!!なんでデュエル!?

 

双葉ちゃんにSCARLETの企画バンドの話をするだけだよね!?それが何でデュエルなの!?

 

いやいやいや!理奈ち!

それはダメだよ!双葉ちゃんも困っちゃうよ!?

理奈ちに普通の説明を期待したあたしが悪かったの?

 

「わかりました…。デュエル…受けさせてもらいます…」

 

待って双葉ちゃん。

何がわかったの?何でデュエルを受けるの?

あっれぇ~?おかしのはあたしなの?

 

「あなたの本気を期待しているわ」

 

理奈ちはそう言ってirisシリーズのベース、雲竜を構えた。

 

いや、本当に何でなの?理奈ちも本気…?

 

「では…いきます…!」

 

いやいやいや、本当に待って?

双葉ちゃんも何処からベースを出したの?

 

あたしのそんな疑問は無かった事のように、理奈ちと双葉ちゃんのデュエルは開始された。

 

 

♪♪

♪♪♪

 

 

ほ…本気だ…。

 

理奈ちは本気でデュエルをしている。

あたし達Divalでライブをやる時のような本気の演奏を…。

でもさすがに双葉ちゃんだ。FABULOUS PERFUMEでやってきただけある。

 

2人の演奏にあたしの目も耳も奪われていた。

 

「クッ…さすが理奈さん…付いていくのが…」

 

「さすがFABULOUS PERFUMEのナギね。よく付いて来ているわ」

 

2人の演奏は互角に見える…けど…、何だろう?理奈ちも本気だとわかる。でもあたしには理奈ちは何か考えがあるような…。何だかそんな気がする。

 

「だからこそがっかりね。正直残念だわ」

 

「…え?」

 

え?残念?何で…?

双葉ちゃんも理奈ちにしっかり付いて行っている。

 

あ、そっか…。双葉ちゃんは何とか理奈ちに付いて行っているだけ。確かにこのままだと理奈ちの勝ちだろう。

 

「本当にこれがあなたの本気の演奏なのかしら?志保のお父さん、雨宮 大志とデュエルした時のあなたの演奏なの?」

 

「私の…本気…?」

 

「だったらいいわ。このままこのデュエルを終わらせるだけよ」

 

…!?

理奈ちの演奏の雰囲気が変わった…!

いつもの理奈ちの繊細な演奏とは違って、荒々しい攻撃的なサウンド…。理奈ちってこんな演奏も出来るの!?

 

……

………いや、違う。やっぱり理奈ちはこんなスタイルの演奏は馴れてないんだ。

その証拠に理奈ちは演奏中にも関わらずピックを飛ばしてしまって、今は指弾きをしている。

 

その飛ばしてしまったピックがあたしの額に飛んで来て刺さってしまった。正直物凄く痛い。

 

「理奈さん…?」

 

「本来のあなたのスタイル。FABULOUS PERFUMEのナギではなく、茅野 双葉のスタイルはコッチなのでしょう?」

 

そういや志保が言ってたっけ?

 

『お父さんとデュエルした時は、いつものクールな印象と違ってて、すごくパワフルな演奏だったんだ』

 

双葉ちゃんとしての演奏はナギの時とは違うって…。

 

「あなたの今の演奏も素晴らしいわ。でもそれがあなたらしさの演奏なのかしら?」

 

「私らしさ…?もちろんです!私は私の精一杯を…!」

 

「FABULOUS PERFUMEのナギとじゃなく、私は茅野 双葉と本気のデュエルがしたいのよ」

 

「ナギじゃなくて…私の…」

 

あちゃ~…双葉ちゃんの音に歪みが出てきちゃった。

こうなっちゃったら、理奈ちの勝ちだね。

 

あたしがそう思った時、双葉ちゃんの雰囲気が変わった。

 

「私のやりたいように…私の持ち味を前に出すように…」

 

……!?

 

「か、茅野さん…!?」

 

双葉ちゃんはこれまで魅せなかったようなサウンド、ヘドバンもしながら…。

すごい…こんな弾き方も出来たんだ…。

 

「まだまだね…。私に合わせる必要なんてないわ。

貴女の音を…聴かせて頂戴!」

 

理奈ちの音も更に攻撃的に…。

この弾き方は理奈ちらしくない…。

 

理奈ち…もしかして双葉ちゃんの本気を見る為に…?

 

「……!!」

 

ヤバい…。あたしは今2人の演奏を観て鳥肌が立っている。額から流れてくる血も痛みも忘れるくらいに…。

 

 

♪~

♪♪~

♪♪♪~

 

 

「ハァ…ハァ…」

 

「ハァ…さ、さすが…理奈さん…ですね…」

 

理奈ちと双葉ちゃんのデュエルが終わった。

 

すごい…2人共…。

理奈ちはcharm symphonyの時とも、Divalとも違う。

今までの理奈ちとはかけ離れたような演奏だった。

そして双葉ちゃんもFABULOUS PERFUMEの時とは違う攻撃的なパワフルな演奏。

 

2人共今までの自分とは違うスタイルの演奏。

 

それなのにそれがまるで自分のスタイル、パフォーマンスのように演奏していた。

これが理奈ちと双葉ちゃんの音楽…。

 

「…ごめんなさい。いきなりこんなデュエルを挑んだりして」

 

「あ、いえ…楽しかったです…理奈さんとのデュエル」

 

「今から話させてもらうわ。何故、今日このメンバーで集まったのかを」

 

そして理奈ちは双葉ちゃんに、SCARLETでの企画バンドの話、タカ兄のバンドの話を双葉ちゃんにした。

 

 

 

 

「た、貴くんのプロデュースでバンドを…?」

 

「ええ。茅野さんにも話しておくけれど、私はBREEZEというバンドを尊敬している。そんなバンドのボーカルだった貴さんのプロデュース。そして渚や奈緒とミュージシャンとして競える。とても興味深い企画だと思っている。是非やりたいと思っているわ」

 

「私のベースで…?」

 

「ええ。だから悪いとは思ったのだけれど、あなたの実力を今のうちに観ておきたかったのよ。

同じベーシストとして悔しいけれど、あなたの演奏はとても素晴らしいものだったわ。付け焼き刃の私のあのスタイルでは到底敵わないわね」

 

付け焼き刃の演奏って…!?

理奈ちも全然凄かったんですけど!?

 

「あなたの演奏でバンドをやれば、私の演奏へのいい刺激にもなる。この企画バンドはDivalにとってもとても意味のあるものだわ。是非、茅野さんにもこの企画バンドに参加してもらいたのだけど」

 

「私も…今のデュエルで…そう思いました。FABULOUS PERFUMEとしても、もっといい演奏を出来るようになるんじゃ…って」

 

お?おお!?

もしかして双葉ちゃんもこの企画バンドに前向きな考えかな?さすが理奈ち、あたしが説明しただけじゃ双葉ちゃんにここまで前向きに考えさせるなんて出来なかったかもしれない。

 

「わかりました。私も是非やらせて頂きたいです。

貴くんのプロデュースバンドっていうのも面白そうですし」

 

おおー!いいねいいね!楽しくなってきた!

うん、理奈ちの歌に双葉ちゃんとあたしのリズム。

そしてあたしも影響されたBREEZEのタカ兄のプロデュース。

Divalのこれからって意味だけじゃなくて、Divalとは別の新しいあたし達の音楽ってのもすごく楽しそう。

 

「貴さんのプロデュースバンドっていうのも面白そう…?そういえば聞くのを失念していたわ。あなたと貴さんって…」

 

理奈ち!?それ聞いちゃうの!?

いやいやいや、それは今はやめとこう?

 

「あ、あはは~。双葉ちゃんも前向きにやる気になってくれて良かったよ!!ね!理奈ち!」

 

あたしはすかさず2人の間に入った。

 

「香菜…?ええ、そうね」

 

「香菜ちゃん…うん、改めてこれからもよろしくね」

 

ああ、良かった。何とかタカ兄の話を回避する事は出来たかな?でも念には念を入れて…と…

 

「そ、それにしてもタカ兄も有希さんも遅いよね。どうしちゃったんだろ~?」

 

「あ、そういえばそうだね。私達がこの部屋に通されてからかなり時間が経つし…」

 

「有希さんは何かあるのかも知れないからいいとしても、貴さんは遅すぎるわね。私達を待たせるとはいい度胸だわ」

 

 

-ガラッ

 

 

あたし達がそんな話をしていると、部屋の扉が開かれ有希さんが入って来た。

 

「遅れてしまってすまないね。実は2人がデュエルをしている時から部屋の前には来ていたのだが…」

 

「私達がデュエルをしている時から…?」

 

理奈ちが部屋に入ってきた有希さんに向かってそう言った。

 

「ああ。

実に楽しい演奏だったよ。思わず聞き入ってしまった」

 

「私と理奈さんがデュエルをしている時から聞いてたんでしたら…企画バンドの話も聞いてましたよね?」

 

「ああ。もちろんだ」

 

そう言った有希さんはあたし達の近くまで来て、手近なイスに座った。

 

「悪いが私は君たちと企画バンドとやらをやるつもりはない。ギターは他のメンバーを探してもらえるかな?」

 

……有希さんはこの企画バンドには入ってくれないんだ?何でだろ?タカ兄のmakarios biosだってんならタカ兄はお父さんみたいなもんじゃん。

そんなタカ兄のバンドが嫌だなんて…。

 

「そう。有希さんは企画バンドには入りたくないという訳ね?」

 

「ああ。すまないね」

 

「理由を聞かせてもらえるかしら?」

 

理奈ち…。

 

「そ、そうですよ。私も聞かせてもらいたいです!も、もしかしてさっきの私達の演奏を聞いて…?」

 

双葉ちゃん…。

 

うん、あたしもやりたくない理由ってのを聞きたい。

さっきの理奈ちと双葉ちゃんのデュエルは本当に凄かったもん!あの演奏を聞いてやりたくないって思ったんなら…。

 

「あたしも聞かせて欲しいです!さっきの理奈ち達のデュエルは凄かった!あたし…奮えましたもん!」

 

「香菜…」

 

「香菜ちゃん…」

 

あたしの言葉の後、少しの間を置いて有希さんは話してくれた。

 

「2人の演奏は凄いものだったよ。私も楽しそうと思える素晴らしい演奏だった」

 

有希さんも楽しそうって思ったんじゃん!

だったら…!だったら…!!

 

「だったら何でですか!?やってみてもいいじゃないですか!!」

 

「か、香菜…」

 

「香菜ちゃん、落ち着いて…」

 

あ、あたしとした事がつい大きな声で…。

でも、でも…なんか悔しいじゃん。

せっかく楽しそうって思ってもらえたのに、やってもみないでやらないだなんて…。

 

「私はタカのmakarios biosだ。

それは理奈も香菜も知っているね?」

 

「…!?そ、それは知っていますけど」

 

「ええ…もちろん知っているわ」

 

「ふぇ!?え?ゆ、有希さんが貴くんの…?それって美来ちゃんと同じ…?」

 

「そうか。双葉も美来がmakarios biosだという事を知っていたか。

私は音楽が楽しいものである事もわかっているし、君たちとバンドをやるのは楽しいだろうとは思った。

だが、makarios biosである私は今はクリムゾンと戦う為に音楽をやっている。私達のようなmakarios biosを増やさない為に。だから今は…クリムゾンとの事を優先させたいのだよ」

 

今は…、今は…か…。

そっか…美来さんも言ってた。

これ以上makarios biosを増やさない為にクリムゾンとして歌ってるって…。

有希さんも同じなんだ…。これ以上makarios biosを増やさない為にクリムゾンと戦っている。

 

そんなの…当事者じゃないあたし達には何も言えない…。

 

「私はいつかは楽しい音楽をやりたい。そう思っているよ。だがそれは今じゃない。

本当に申し訳ないが…わかってくれたまえ」

 

有希さんも楽しい音楽をやりたいと思ってるのに…。

 

 

-ガラッ

 

 

「悪い。待たせたな」

 

タカ兄…。こんなタイミングで来るなんて…。

あたしも理奈ちも双葉ちゃんも有希さんに何も言えなかった。ううん、有希さんの意思にあたし達が何か言える事なんかない…。

 

「ん?あれ?お前らどったの?」

 

タカ兄がこのタイミングで来てくれたのは良かったのかな…。

 

「何か変だなお前ら。まぁいいや。

取り敢えず今からめんどくせぇ事を言うけど聞いてくれ」

 

めんどくせぇ事って…。

 

「タカ。説明には及ばんさ。

みんなこの集まりの趣旨は把握している」

 

「あ?有希?」

 

「悪いが私は企画バンドとやらをやるつもりはない。

他のギタリストを探してくれ」

 

有希さん…。

 

「は?何でお前が企画バンドの話を知ってんだ?

まぁいいや。お前がやりたくねぇならやる必要ねぇしな」

 

ちょ、ちょっとタカ兄…!!

 

「貴さん…あの…その言い方は…」

 

「いや、有希がやりたくねぇならやる事ねぇだろ?

………それに」

 

それに…?

 

「俺は俺のプロデュースバンドで有希にギターやらせるってのは嫌だったしな」

 

え…?

 

「ちょっと!貴くん!!」

 

「有希さんにギターをやらせるのは嫌ってどういう事かしら?理由を言いなさい。どんな理由があったとしても地獄を見せてあげるわ」

 

「タカ兄!何でそんな事を言う訳!?あたしらを敵に回したいの!?」

 

「双葉、理奈、香菜。落ち着きたまえ。

タカが私にやらせたくないと思っていたのなら好都合じゃないか」

 

有希さん…!?何でそんな落ち着いてられるんですか!?

 

「理由を言えって言われてその理由を言ったら地獄を見る事になるの?それものすごく怖いんだけど…」

 

タカ兄もタカ兄だよ…!何でそんな事を有希さんの目の前で…!

 

「有希。お前は俺の遺伝子な訳だしな」

 

「…ん?確かにそうだな。面と向かって言われると気分も悪くなるがね。生理的に」

 

「生理的にって…。何でそんな俺嫌われてんの?パパ泣いちゃうぞ?」

 

「まさにそういう所な訳だが…」

 

「まぁいいや。お前は俺の遺伝子だ。

ギターなんて出来る訳がねぇ。俺のプロデュースバンドはBREEZEん時みてぇな曲…いや、それを超えるような曲でやりてぇんだよ。Blaze Futureは超える事は出来んだろうがな」

 

BREEZEを超えるような…バンド?

そ、それでもBlaze Futureは超えられないんだ?

 

「私は確かにお前の遺伝子から造られている。

だが、お前と一緒にしないでもらおうか」

 

「いや、だって俺の遺伝子だよ? BREEZEを超えたいと思ってんだよ?それってトシキよりギター上手くないと無理やん?」

 

「ちょっと待って頂戴。口を挟むのはどうかと思ったのだけれど、日奈子さんも手塚さんも有希さんはギターが出来ると言っていたじゃない」

 

「そ、そうだよタカ兄!タカ兄も聞いたでしょ!?

SCARLETのバンドは有希さんがギターボーカルって!!

手塚さんも昔の手塚さんに匹敵するレベルだって…」

 

「ちょっと待ってくれ香菜。私のギターのレベルが手塚に匹敵するレベル?冗談は止めてくれたまえ。

私のギターの腕はとうに手塚を超えているよ」

 

あ、あれ?有希さんが反論するんだ?

 

「いや、それでもだな。所詮手塚程度のレベルだろ?」

 

手塚程度って…。手塚さんのギターの腕前とか知らないけど、手塚さんってクリムゾンエンターテイメントの大幹部だったんでしょ?かなりの腕前じゃないの?

 

「タカ。だから言っているだろう?手塚ごときと一緒にしないでもらおうか。お前はまさか私がギターを弾けないと思って私にやらせたくないと思っていたのか?」

 

「あ?そうだけど?ギター本当に出来るのお前」

 

「当たり前だろう。お前は私に喧嘩を売っているのか?」

 

「いや、ないわ」

 

「何だと…?(ギリッ」

 

え?え?何?この展開…。

 

「貴くん…もしかして…」

 

「ん?あれ?お前ギターやれないからこの企画バンドやりたくねぇんじゃねぇの?」

 

「そんな訳ないだろう?私は私の考えが…」

 

「だったら証明してみせろよ。ギターがやれるって事。

手塚のアホよりギター弾けるって事をよ」

 

「証明…だと…?」

 

「おう。俺のプロデュースバンドはトシキレベルの腕前がねぇとやれねぇと思うしな。この企画バンドをやってみせて、俺にギターやれるって事を証明してみせろよ」

 

「お前…」

 

タカ兄…?もしかしてタカ兄もあたし達の話を聞いてたの…?だから有希さんに…?

 

「口車に乗ってみろよ。楽しそうって思ったならやってみろって。クリムゾンは今度こそ俺が潰してやっからよ」

 

「あの男は…本当にまだるっこしいわね…」

 

「あはは、貴くんらしいっちゃ貴くんらしい…かな」

 

タカ兄…。説得するならもっと上手くやればいいのに…。本当に…。

 

「な、有希。makarios biosは俺ももう絶対造らせねぇからよ…」

 

「パパ…」

 

ん?え?有希さんタカ兄の事パパって呼んだ?

 

「え?有希?お前今俺の事…」

 

「ああ、すまないね。バカって言ってしまった」

 

「え?バカ?パパじゃなかったの?」

 

「ふぅ…しょうがないな。お前の口車に乗ってやるか…。ギターが出来るという事を見せてやらねばな…」

 

「何とかなったか。さすが俺の遺伝子だな…後の問題は理奈か…(ボソッ」

 

ん?理奈ち?

タカ兄が何言ってんのか聞こえたけど…理奈ちは企画バンドをやる気満々だし問題とか無いと思うんだけど…。

 

「まぁ理奈も双葉も香菜も企画バンドの事わかってるって事だよな?」

 

「え?ええ、聞いているわ」

 

「うん、私も聞いてるよ」

 

「タカ兄のプロデュースでこの4人でやるんでしょ?

それよりタカ兄は何で遅れて来たの?」

 

「ん、ああ。これを人数分コピーしてたからな。ほれ」

 

そう言ってタカ兄はあたし達にスコアを渡して来た。

 

え?このスコアってもしかして…。

 

「『Reveria(レヴァリア)』…?まさかこれが私達のバンド名なのかしら?」

 

「大いに楽しむって意味のRevelと詠唱って意味のAriaを合体させた造語だけどな」

 

大いに楽しむ…か…。

うん、タカ兄のこのバンドに掛ける想い。わかるな。

 

「貴くん…もう企画バンドの曲作って来たの?それも3曲も…?」

 

「うわっ!このスコアめちゃくちゃむずいじゃん…!」

 

「おい、タカ…お前この曲は……いいのか?」

 

有希さん?ん?タカ兄のこの曲って変なとこある?

 

「え?有希…もしかして気付いたの?」

 

「タカ…そういえばお前は何故私の事を呼び捨てなのかね?」

 

「え?何故って…あの、俺は呼び捨てにしたらいけませんかね?」

 

「ハッキリ言わせてもらおうか。気持ち悪いな」

 

「まじでか。

……じゃ…じゃあ、有希ちゃん?」

 

「キモい。呼び捨てで構わんよ」

 

「何なのそれ!?ほんと何なのお前!!」

 

え?何このくだり…。

 

「お前な…。ああ、そういや美来も同じような事言ってたな。何なのお前ら…」

 

「この曲はお前達BREEZEのヴァンパイアに似ている…。いや、ヴァンパイアのアレンジと言ってもいい曲だ」

 

……BREEZEのヴァンパイア?

あ、確かに似てるかも?

うん、この曲ならあたしもやれそうな気がする。

歌詞のフレーズもヴァンパイアに似てるような…?

 

「この『月の痕(つきのきずあと)』という曲は…ヴァンパイアのアンサーソングだな?」

 

「ええ…まぁそうですね…」

 

アンサーソング?

それって曲の続編とか別視点とかそういうやつ?

 

「確かにこの曲はヴァンパイアの……女性視点といった感じの曲かしらね。私達がこの歌を…?」

 

タカ兄達の名曲に入るだろうヴァンパイア。

その曲のアンサーソングをあたし達が…。こんなのプレッシャーも半端ないじゃん…。

ArtemisもBREEZEも、あの頃のBREEZEの曲を知ってるメンバーがあたしらの周りには多いのに…。

 

理奈ち…大丈夫かな?

あたしは理奈ちの方に顔を向けた…。

 

 

やっぱりだ…。

 

 

理奈ち…平静を装ってるけど顔はにやけてるし耳まで真っ赤じゃん。もうやる気満々じゃん。

タカ兄が歌ってきた曲のアンサーソングがめちゃ嬉しいんだね…。

 

「この曲についてはわかったわ。残りの2曲。

強く抱きしめて(つよくだきしめて)』と『Dark Shout(ダーク シャウト)』。この2曲は…?」

 

「ああ…あの…そのな…」

 

「貴くん本当にこの曲を私達の為に作ってきたの?それにしては完成し過ぎてない?」

 

「いや…あの…」

 

どうしたんだろ?言いにくい事なのかな?

理奈ちにボーカルをやってもらいたくて作ったの?

 

「この『強く抱きしめて』に関しては私もわからないな。ただ、『Dark Shout』か…。この曲はお前が歌いたかった曲じゃないのか?」

 

タカ兄が歌いたかった曲?

 

「ああ…まぁ…あれだ。そんな事どうでもいいんじゃね?それよりお前らみんなやれそうなら良かったわ。んで次の話なんだけどな?」

 

「ジー…」

 

「あ、あの…理奈?何ですかね?」

 

「貴くん?本当にこの曲は作ってきたの?」

 

「え?いや、もちろん俺が作った曲なんですけど…」

 

「タカ兄もさ?隠さずにちゃんと言いなよ。そんな言いにくい事なの?」

 

「はぁ~…めんどくせぇな、お前ら。

『強く抱きしめて』って曲はArtemisに提供するつもりで作った曲だ。でもまぁ梓の声質には合わねぇなぁって思って封印してた曲。理奈ならこの曲に合った歌声で歌ってもらえると思ってな…」

 

 

-ボン!

 

 

え!?理奈ち爆発した!?

梓さんより理奈ちのが合ってるとか言われて嬉しかったの!?

 

「そんで『Dark Shout』は元々は俺がBREEZEの時に作ってた曲だ。発表出来なかった曲だからお前らに歌ってもらえたらなと…。歌詞を女性視点に修正しただけだ」

 

タカ兄のBREEZEの時の曲…。

 

ヴァンパイアのアンサーソング。

Artemisに提供しようと作ってた曲。

タカ兄がBREEZEの時に歌いたかった曲。

 

「まぁ、それはそれとして。

もいっこ大事な話があるんだけどな…」

 

「大事な話…?何かしら?」

 

 

 

 

そしてタカ兄が話したのは、企画バンドのあたし達でやる番組の話。

どうやら理奈ちを先生にして、あたし達と澄香さんの企画バンドのメンバーで生徒に扮し、SCARLETの企画バンドの話をするトーク番組らしい。

 

こういう事もやらなきゃいけないかな?とは思っていたけど、理奈ちはcharm symphonyの時の事があるから複雑だよね…。

 

「冗談じゃないわ!」

 

理奈ち…。やっぱり嫌なんだね…。

あたしとしては面白そうとは思ったけど…。

 

「何で年上の有希さんが生徒役で私が教師役なのかしら?」

 

うん?

 

うん?待って理奈ち。そこが問題なの?

 

「いや、だってお前、生徒って感じじゃねぇし」

 

「それはどういう意味かしら?私はもうそんなに若くないって言いたいのかしら?

いいわ。辞世の句でも遺言でも好きな方を言いなさい。地獄を見せてあげるわ」

 

理奈ち?そこなの?

 

「企画番組かぁ。FABULOUS PERFUMEとしての出演じゃなければ私はいいと思うけど…」

 

「私もこの企画番組の事ならやっても構わないと思うがね」

 

「え?有希さんは意外かもです…。断ると思ってました」

 

「香菜。この番組の事をよく考えてみたまえ」

 

「この番組の事を…ですか?」

 

何だろう?この番組には一体どんな意図が…。

 

「SCARLETの企画バンドと私達が目立てば目立つ程、ファントムのバンドがクリムゾングループの目から免れる」

 

「え?」

 

「双葉の言う通りだ。ま、タカやボスや手塚がそこまで考えているとは思わないけどもね」

 

あ、そっか。

クリムゾンエンターテイメントはあたし達の事を知ってるし敵視してたとしても、charm symphonyの理奈ちがDivalじゃなくて……Reveriaだっけ?

そっちのバンドを始めたって事になったら、他のクリムゾングループの目眩ましにはなるのか。

 

「だったら私も女生徒でもいいじゃない!」

 

「いや、MCとかやれそうなん理奈しかいねぇし」

 

うん。タカ兄も理奈ちもそんな事は微塵も思って無さそうだね。

 

「貴くんと理奈さん、まだやってるよ?このままじゃ企画バンドの番組も…」

 

「タカは面白ければいいって思ってそうだしね。問題は理奈か」

 

有希さん?あ、そういえばタカ兄も問題は理奈ちかとか言ってたような?

 

「やれやれ。

あの男に加勢するのは気が進まないが、企画バンドをやるならこの番組はやるべきだと思うしね」

 

そう言って有希さんはタカ兄と理奈ちの間に入って行った。

 

「タカ。お前はこの企画バンドの番組は…面白そうと思っているのか?」

 

「は?……ああ、やらなきゃってのはあるしな。

やらんで済むならやらんでもいいとは思ってるけど、それだと…」

 

「もういい。喋るな」

 

「え?何で?」

 

「理奈。キミはこの企画バンドに関しては賛成なのだね?」

 

「え?…ええ、私が憧れていたBREEZEのボーカルがプロデュースする音楽。

…この3曲も素晴らしい曲だわ。やらせて貰えるというのなら是非にでも…」

 

「わかった。少し黙っていてくれたまえ」

 

「え?何故かしら?」

 

有希さんがタカ兄と理奈ちの間に入って少しの時間が経った。

 

 

 

「タカ。悪いとは思うのだが、お前SCARLETの本社の周りを3周走って来い」

 

「は?お前何を言ってるの?アホなの?」

 

「いいから行って来るといい」

 

「いや、めんどいんだけど?」

 

「私はお前の口車に乗って企画バンドのギターをやってやるんだ。それくらいの頼みくらい聞いてもらってもいいと思うのだが?」

 

「何なのこいつ。マジめんどくせぇんだけ…」

 

「いいから行け」

 

 

 

そしてタカ兄はブツクサ言いながらも部屋を出て行った。

 

「さてと…理奈」

 

「有希さん?あの…な、何かしら?」

 

「キミはこの企画バンドの番組をやるのは本当に嫌なのかね?」

 

「いえ…そうね。嫌と言う訳ではないわ。

この企画バンドで番組をやるのだったら、クリムゾングループの目を欺くのにもいいし、澄香さんの企画バンドのメンバーで楽器講座をやるのならこれからバンドや音楽をやりたいと思う人達も出てくるかもしれない。

この企画はいい企画だと思ってるわ」

 

理奈ち…そこまでわかってるんだ…。

だったら何で…。

 

「でも…私だってまだJKとしても…」

 

そこ!?本当にそこだったの!?

 

「やれやれ。しょうがないか(ボソッ」

 

有希さん?

 

「そ、それに私がやりたいのは音楽であって番組のMCって訳では…」

 

「理奈。タカは実はな。

JKよりも女教師が好きなのだよ、あいつは女教師フェチなのだよ。多分」

 

「な…!?何ですって…!?」

 

え?タカ兄って女教師フェチなの?初耳だけど…?

 

「だからタカは…理奈に生徒役ではなく、女教師をやってもらいたいんだと思うのだよ。多分」

 

「そんな…いえ、そんなはずは無いわ。だってあの男はロリコンのはずだもの。それも極度の」

 

「信じる信じないは理奈の自由だ」

 

えっと…それって本当なのかな?

あ、それだと翔子さんが危なくない?色んな意味で。

 

「ゆ、有希さん、それって…?」

 

「ああ、私の口からのデマカセだ。だが、嘘とも言い切れないのは事実だがね。実際にあいつのまわりには昔から今もJKが多いのに誰にもそんな気を起こしていないしね」

 

それで!?それだけの理由で!?

 

それから少しした後、タカ兄が戻って来て、理奈ちは…

 

「しょ、しょうがないからその企画番組とやらも承諾してあげるわ」

 

「はぁ…はぁ…え?俺が走らされてる間に何があったの?はぁ…はぁ…」

 

「あ、あんまりハァハァ言わないで頂戴!何を興奮しているのかしら!?」

 

「え?いや、今思いっきり走ってこさせられたんですけどね…はぁ…はぁ…」

 

「やっぱりそういう事なのね…」

 

「え?やっぱりって何?はぁ…はぁ…」

 

そうしてあたし達は企画バンドと番組をやる事になった。

最後ら辺の話の顛末はどうでもいい感じだったけど、この企画バンドはあたし達Divalにとってもいい可能性を秘めているかも知れない。

 

あたしはそれがすごく楽しみだ。

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