バンやろ外伝 -another gig-   作:高瀬あきと

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第23話 敵

オレは今、会議室の前まで来ていた。

 

これから大事な会議が開かれるという事で緊張もしている。

だけどオレはオレ達のバンドのリーダーッス!

他のバンドに遅れを取ったり、舐められないようにしないと…。

 

 

 

「失礼しまッス!」

 

 

 

軽くノックをした後、元気に声を出して会議室に入る。

 

 

 

-ゴンッ!

 

 

 

後ろからいきなり頭を殴られた。

マジで痛いッス。

 

 

「い、痛ってぇ!いきなり誰ッスか!?」

 

オレが殴って来た奴に文句を言ってやろうと振り返ると…。

 

 

「ワイや」

 

 

そこに立っていたのはinterludeのボーカルである白石 虎次郎…さんだった。

 

「さっさと会議室に入れや。何を入り口でボーッとつっ立っとるねん」

 

「こ、虎次郎さん…」

 

「虎次郎。余計な事はするなと言っただろう?」

 

「は?余計な事ちゃうわい。こいつが邪魔やっただけや」

 

虎次郎さんの横に目をやると、そこにはinterludeのベーシストである朱坂 雲雀さんがいた。

 

 

 

 

あ、自己紹介が遅れちゃいましたね!

オレの名前は不破 太一!

スッゲー久々の登場ッス!

 

オレが登場したのはAiles Flamme編の第8章以来ッスかね?みんなにはすっかり忘れられてると思うッス!

忘れてるみんなは、またAiles Flamme編の第8章を読み直してくれたらいいッスよ!

 

「太一、お前邪魔や言うてるやろ。早よ中に入れや」

 

「あ、す、すみません…」

 

ハァ~…。他のバンドのメンバーに舐められないようにしないと…と、意気込んでいたのに何でいきなり虎次郎さんと出くわすんスかね…。

 

「すまないね不破くん。

今日は虎次郎は連れて来ないつもりだったのだが…」

 

「は?何を言うとんねん。今日は幹部会やろが。

そんだらワイも参加すんのが当然やろ」

 

「っても、interludeのリーダーは雲雀さんじゃないスか。何で虎次郎さんまで来てるんスか」

 

「ワイは幹部やからな」

 

「虎次郎は幹部というより患部だろう?やれやれ…」

 

「雲雀さん大変ッスね…」

 

 

そしてオレ達は会議室に入り、列べられていた椅子に座った。

 

「何でワイの椅子が無いねん」

 

「勝手に付いて来たのは虎次郎だろう?

今日はクリムゾンエンターテイメントの小暮さんの傘下にあるバンドのリーダーが集まる会議なんだからね」

 

そう今日はクリムゾンエンターテイメントのバンド。

その中でも大幹部である小暮 麗香さんの率いる麗香七舞階(れいかしちぶかい)の集まるミーティングっス。

小暮さんも麗香七舞階とか…。完全ネタじゃないっスか。

 

オレはソッとここに集まっているメンバーを見てみた。

 

 

 

………何でここのほとんどのメンバーは、漫画とかアニメでよくあるような影で顔が見えない感じになってんスか?

これは小説ですよね?そんな演出無意味じゃないスかね?

 

オレがそんな事を考えていると

 

「どいつもこいつもヤバい顔付きやで…。こいつらがクリムゾンの…幹部か…」

 

虎次郎さんにはみんなの顔見えてんスか?

 

 

 

オレ達が席に着いてしばらくすると、小暮さんが室内に入って来た。

 

「やぁやぁ!みんなおつかれ~!

うんうん!みんな集まってるね!時間ピッタリ!

さっすが私の率いる麗香七舞階のメンバーだよ♪」

 

そう、ここに居るのはクリムゾングループから選ばれた凄腕のバンドマンから構成されたバンドのメンバー。

 

実はオレもクリムゾンエンターテイメントのバンドマンだったんス。

 

でもでも!

夏休みにAiles Flammeの江口さんや内山さん、Canoro Feliceの夏野さん、Divalの雪村さんと出会ったのは本当に偶然でしたし、オレは本当にAiles Flammeの事を尊敬してるし大好きなんスよ!

 

たまたま…本当にたまたま…オレが所属しているのがクリムゾンエンターテイメントだっただけで…。たまたまAiles Flammeの演奏を聴いて…好きになっただけなんス。

 

オレは…江口さん達の敵なんスよね…。

 

 

オレはクリムゾンエンターテイメントのバンド。

そのメンバーのボーカルっス。

いつか…いつかは江口さんや内山さん達のAiles Flammeとも、夏野さんのCanoro Feliceとも、雪村さんのDivalとも戦わないといけないんスよね…。

 

 

 

-ゾクッ

 

 

 

オレがそんな事を考えていた時、小暮さんの後ろから入って来た人を見て寒気のようなものを感じた。

 

……昔の映像で見た事があるッス。

あれは…あの人は…雨宮 大志。

 

「あいつは…JOKER×JOKERの雨宮 大志…」

 

虎次郎さんの言葉にハッとした。

 

JOKER×JOKERの雨宮 大志…?

 

JOKER×JOKERといえばオレ達クリムゾンエンターテイメントの最強であり最高のバンド。

だけどJOKER×JOKERはメンバーが不明の謎のバンドってコンセプトのはず。

 

いや、待って下さいッス!

雨宮 大志といえばDivalの雨宮 志保さんのお父さん。

そして15年前のアルテミスの矢のギタリストだったはずッスよ!?

何でそんな人が…クリムゾンに…?

 

「あん?太一、お前どないしたんや?さっきから黙りこくってガマガエルみたいに脂汗を流しよって…気持ち悪っ!」

 

虎次郎さん?その気持ち悪っ!てくだりは必要でしたかね?

 

「いえ、JOKER×JOKERの雨宮 大志って、もしかして昔、クリムゾンエンターテイメントの敵だったアルテミスの矢のバンドだった雨宮 大志の事ッスか?」

 

オレはそのまま疑問に思った事を口にした。

 

「は?何言うとんねん。他に雨宮 大志っておるんか?」

 

「で、でも!JOKER×JOKERって正体不明のバンドでしょ!?オレもクリムゾンエンターテイメントに入ってかなり経ちますけど、JOKER×JOKERのギタリストが雨宮さんだなんて知らなかったッスよ!?」

 

「不破くん、一般的にはJOKER×JOKERは確かに正体不明のバンドだよ。トップアーティストだというのに露出もないしね」

 

そう雲雀さんがオレに声を掛けた後、虎次郎さんが続けてこう言った。

 

「雨宮 大志はどういう訳か自分達が倒したバンドマンには、自分の正体を明かしとる。せやから、一般的には知られてなくても、一部の人間には知られとるっちゅー訳や」

 

自分達が倒したバンドマンに正体を明かしている?

だから一部の人間には正体を知られている?どういう事なんだ…?

でも、だから虎次郎さん達も雨宮さんがJOKER×JOKERのギタリストだと知ってたって事ッスか?

 

「雨宮さんには雨宮さんの考えがあっての事なんだろうけど…。でもそのせいでしーちゃんは…」

 

しーちゃん?

雲雀さんがボソッと聞こえるか聞こえないかの声でそう呟いた。

しーちゃんって誰なんだろう?雲雀さんの知り合いッスかね?

 

 

「もーう!みんな時間厳守は良い事だけど、何で電気も付けずに会議室にいるわけ!?私、暗いの嫌いなんだよね~」

 

-パチッ

 

小暮さんの言葉が会議室中に響き渡り、その後、会議室の電気が付けられた。

 

ああ、電気が付いてなかったんスね。

だから、オレには会議室に居る人達の顔がちゃんと見えてなかったんスね。

 

電気が付けられた事で会議室内は明るくなり、そしてオレはその場に居たメンバーの顔を見て驚いた。

 

小暮さんと雨宮さんと一緒に会議室に入って来た人物。

その人は間違いない。HONEY TUMBLEのメンバーの人ッス。

 

HONEY TUMBLEも15年前はクリムゾンエンターテイメントと敵対していたバンドのハズッス。

そして、先日の南国DEギグで復活ライブをしたけど、その時にオレ達クリムゾンエンターテイメントのせいで…。

 

いや、オレが驚いたのはHONEY TUMBLEのメンバーを見たからだけじゃないッス。

この会議室には他にも有名なバンドマンが。

 

kiss symphonyのReonaさん。

あの人は、Divalの氷川 理奈さんが抜けたcharm symphonyの後がまとして、ベースボーカルになったクリムゾングループのミュージシャン。

Reonaさんはクリムゾンエンターテイメントとは関係ないクリムゾングループのミュージシャンだったハズなのに、何でこんな所に…。

 

そして、その他の人を見てからもオレは驚きを隠せなかったッス。

 

 

何故かド派手なドレスを着てワイングラスを片手に座っている女の人。

テーブルにブドウジュース果汁100%って書いてある瓶が置いてあるから、ワイングラスに入っているのはきっとただのジュースッスね。

 

 

その隣には『小学生低学年算数のドリル』と書かれた本を読みながら難しい顔をし、時折頭をガシガシとかきむしっている人がいた。

この人はちょっと前にテレビで観たことがあるッス。

元Blue Tearの小鳥遊 花梨さん…。

 

 

そして更にその隣には、何故か左手だけで一生懸命に右手に包帯を巻こうとしている人が…。

特に怪我をしているようにも見えないのに、何故この人は包帯を…?

 

 

ハッ!?

オレはその隣に座っている人を見て更なる驚きを覚えた。

その人は…。

 

「ん~、なんかこの色はイマイチかな」

 

こ、この人はさっきまで暗かったこの部屋でネイルをやっていたというんスか…!?

何て女子力なんスか…。ん?女子力?女子力ってなんスか?

 

 

この人達は何者なんだろう?

でもどこかで…どこかで見た事があるような…?

 

 

「花鳥風月」

 

 

…花鳥風月?

オレがこの人達は誰なのか?と、考えていた事をわかったかのように、雲雀さんが呟いた。

 

 

花鳥風月。

もちろんオレは知っている。いや、知っていると言っても話に聞いた事があるだけなんスけど。

 

オレ達クリムゾンエンターテイメントのメンバーは、クリムゾンエンターテイメントに所属する前に100人デュエルという訳のわからない儀式をさせられるっス。

 

訳のわからない儀式とは言え、その100人デュエルの過半数。51人以上に勝たなければならないルール。

クリムゾンエンターテイメントの精鋭を倒して、やっとクリムゾンエンターテイメントのミュージシャンになれる。

そしてそのデュエルで敗れたミュージシャンはクリムゾンエンターテイメントから脱退させられ、2度と音楽をやれなくされるか、デュエルギグ戦闘員にさせられるか…。

 

オレも虎次郎さんももちろん、51人以上のミュージシャンを倒したから、クリムゾンエンターテイメントのミュージシャンになれている訳ですが、この花鳥風月の4人は100人デュエルで100人全てのミュージシャンに勝ったと聞いているッス。

 

……クリムゾンエンターテイメントって何人居るんスか?

 

 

「雲雀、お前今こいつらの事を花鳥風月って言うたか?こいつらがあの花鳥風月なんか?」

 

やっぱり虎次郎さんもクリムゾンエンターテイメントのミュージシャンっスね。

大してまわりに興味も無いくせに花鳥風月の存在だけは知ってるみたいっスね。

 

 

-ゴン

 

 

「イッテェ!虎次郎さん!何でオレを殴るんスか!?」

 

「いや、すまん。何かお前が失礼な事を考えとる気がしての」

 

何でわかったんスか?エスパーか何かスか?

 

「ああ、彼女達は間違いない。

花鳥風月と呼ばれている4人のミュージシャンさ」

 

天性の歌声を持つボーカルの天花寺 紫苑。

ダンスを取り入れたパフォーマンスギタリスト、元Blue Tearの小鳥遊 花梨。

人を惹き付けて、心を縛りつけるような音を奏でるベーシスト、風祭 百合子。

圧倒的なサウンドで周りのサウンドを萎縮させる程の卓越したドラマー、若月 菫。

 

この4人があの花鳥風月…。

 

 

「はいはい!静かに!

みんなで仲良く自己紹介!…っていきたい所なんだけど、私も色々と予定が詰まっちゃってるし、サッサと要点だけ話して会議を終わらせちゃうね!」

 

予定が詰まっている?

ならどうしてわざわざみんなを集めて会議を?

メールとかの連絡でも良かったんじゃないスかね?

……いや、もしかしたら予定が詰まってるのに、わざわざみんなを集めなきゃいけない事態が?

 

まさか…ファントムのバンドを?

 

「今、ここには私が集めた精鋭のバンド、麗香七舞階と、JOKER×JOKERとHONEY TUMBLEで9つのバンドがいるわ」

 

9つのバンド…。

確かファントムのバンドも9つのバンド。

Ailes Flamme

Blaze Future

Canoro Felice

Dival

evoke

Noble Fate

FABULOUS PERFUME

Glitter Melody

Lazy Wind

 

やっぱりファントムのバンドとの戦いの為に、ここに集められたんスね。

 

「まぁ、察しの良い子達は気付いてるかも知れないけど、私達は9バンド、ファントムも9バンド。

だから、各々1バンドがファントムのバンドを…」

 

やっぱり…そうなんスね。

江口さん…内山さん…夏野さん…雪村さん…。

 

「ってやれたら面白かったんだけどぉ~。

私達、クリムゾンエンターテイメントはファントムにはノータッチ。いえ、私達からファントムのバンドに手を出す事は禁止よ」

 

…え?

クリムゾンエンターテイメントはファントムのバンドにはノータッチ?オレはファントムのバンドと戦わなくていいって事っスか?

 

「ま、それで今日みんなに集まってもらったのはぁ~……」

 

「ちょ!ちょー待てや!!ファントムのバンドに手を出すなってどういう事やねん!!」

 

小暮さんの話の途中だというのに、虎次郎さんが声をあげた。

色んな所で噂程度には聞いてましたが、やっぱり虎次郎さんはAiles Flammeを…江口さんの事を…。

 

「も~。やっぱり白石くんは文句言うよね~。だからわざわざ全員を召集せずに幹部会にしたってのにさ~」

 

「わ、私もその話にはものを申したいです。そこの人の言う通りです…。わ、私は兄の仇である雪村 香菜のDivalを討つ。その目的の為に私はクリムゾンに…」

 

虎次郎さんに続いて、包帯を巻いている女の子が声をあげた。

 

「あ、そういやそうだっけ?風祭さんもファントムのバンドを潰したくてクリムゾンに入ったんだもんね?そりゃ文句も言いたくなるか~」

 

「あ、い、いえ、私は雪村 香菜さえ潰せれば…ファントムとか…あの…その…」

 

雪村さんを潰す…。

この人は雪村さんに何か個人的な思いがあるんスね…。

 

「待ちなさいよ!そ、それだったら私も架純も結衣も…」「あ、そんならあたしもBlaze Futureを…」「私も秋月さんやチヒロを…」

 

他の花鳥風月のメンバーも口々にファントムの事を話し出した。

 

「あー!もー!ほら!

白石くんのせいで纏まる話も纏まらなくなっちゃったじゃ~ん」

 

「何がワイのせいじゃ!

おかしいんはそっちやろ!!何がファントムのバンドには手を出すなじゃ!ワイらinterludeが麗香七舞階に入る条件は、Ailes Flammeとの一騎討ちを邪魔しない事やったやろが!!」

 

Ailes Flammeとの一騎討ち…?

interludeが二胴さんのチームから、小暮さんのチームに移る条件に提示したのは、Ailes Flammeとの一騎討ち…。

 

そう。

オレ達もそうっスけど、二胴さんのチームから小暮さんのチームに移る時に、各々のバンドは絶対の条件を提示していたんス。

もちろんオレ達のバンドも、提示した条件を飲んでくれるからと、小暮さんのチームに入った訳っス。

 

ま、オレ達は二胴さんのやり方や考え方も嫌いだったっスから、喜んで小暮さんのチームに移籍したんスけどね。

 

「小暮!何を黙っとんねん!提示した条件は絶対なんやろ!せやからワイらはAiles Flammeと一騎討ち出来るハズや!違うんかい!?」

 

「違うわよ?」

 

そっか。違うんスね。

……ん?違うんスか!?

 

まさか…そんな約束なんて無かったって事?

そしたらオレ達の提示した条件も…?

 

「ちょ、ちょー待てや…、違うってどういう事や?」

 

「だから言葉の通りよ」

 

「どういう事や…!まさかお前は最初からワイらを…」

 

虎次郎さんの言う通りだ…。

interludeがAiles Flammeとデュエルする事が無くなったってのは嬉しいスけど、それだとオレ達は…。

 

「いやいやいや、勘違いしないでちょうだい?

そもそも白石くん達interludeの移籍条件はAiles Flammeとの一騎討ちじゃないもの」

 

「は?」

 

え?虎次郎さんの勘違い?

だったらinterludeの条件って…?

 

「ど、どういう事や?ワイは確かにAiles Flammeとの一騎討ちを条件にしたハズやで!な?雲雀?」

 

「いや、違うけど?」

 

「は?」

 

「ああ、これまでのやり取りは白石くんの勘違いだから。だから他のみんなは心配しないでね?

ちゃ~んとみんなから提示された条件の約束は守るから♪」

 

は…ははは、良かった…。うん、安心しました。

だったらオレ達は大丈夫っスね。

 

「じゃ、じゃあワイらの…interludeの条件は何やねん…?」

 

あ、そうだ。

それだったらinterludeの条件ってのは?

 

「ん…っと、interludeの条件は『クリムゾンエンターテイメントは部活動グループgamutには今後一切手を出さない事』。これが条件になってるわね」

 

「部活動グループ…?何やねんそれ?」

 

gamut…?

gamutって、確かファントムのバンドGlitter Melodyの子達の学校の軽音楽部の名称じゃなかったっスか?

 

「いやいやいや、それは何かの間違いやろ?そんなんワイらには関係あらへんし」

 

いや、ほんとそうっスよね?

gamutに手を出さない事でinterludeに何の得が?

 

「間違いないよ。僕は確かにgamutに手を出さない事を条件にしたからね」

 

「な!?雲雀、どういう事や?」

 

「そのままの意味。gamutには昔の友達が居たからね。僕に敵う腕前でもないし。だから潰されちゃうのは可哀想って思っただけさ」

 

「昔の友達て…」

 

「虎次郎もその気持ちはわかるんじゃないかな?」

 

「な、何の事や…。そんなん…わからへんわ」

 

昔の友達?

そういえば雲雀さんもオレの1つ上の高2ですもんね。

そっか、友達がクリムゾンから狙われないように…。

 

「でも、せっかくの条件だったのに、残念だったわね。

雲雀ちゃんのお友達ちゃん、睦月ちゃんはもうgamutの睦月ちゃんじゃないものね」

 

「さすがですね。まさかむっちゃんの事を知っているとは。そうですよ。むっちゃんは今はGlitter Melodyの睦月。gamutのメンバーじゃない。せっかく僕が助けてあげようと思ったのに…」

 

雲雀さんの友達がGlitter Melodyのメンバー?

そ、そうか。Glitter Melodyはファントムのバンドであってgamutじゃない。

だから雲雀さんの出した条件には当てはまらないのか。

いや、でもクリムゾンはファントムのバンドに手を出さないなら結果的には同じなんじゃ?

 

「そうね。睦月ちゃんを守りたかったなら、gamutじゃなくてGlitter Melodyに手を出さない事にしておくべきだったわねぇ~」

 

ん?あ、そういえばそうっスよね?

 

「むっちゃんがgamutじゃなくて、Glitter Melodyになった事はその時は知らなかったからしょうがないよ。でも、ファントムのバンドに手を出さないのなら結果的には同じだから」

 

「ふふふ、じゃあそういう事にしておきましょうか」

 

「…?どういう意味?」

 

「Glitter Melodyじゃなくて、gamutに手を出さないって理由。その方が色々都合がいいものね?

私達クリムゾンエンターテイメントは、gamutに手を出せないから、神原 翔子にも手を出す訳にはいかなくなったものね」

 

「…!?」

 

神原 翔子?誰っスか?どっかで聞いた事あるような?

 

「何を言っているのかわからないな」

 

「ふふふ、そういう事にしておきましょう♪

さて、話を戻すわね。

これからの事なんだけど、みんなモンブラン栗田の名前は知っているかしら?」

 

神原 翔子って人が誰なのか思い出せないスけど、今は小暮さんの話をしっかり聞いておかなきゃっスね。

 

モンブラン栗田。もちろん知ってます。

最高の楽器職人。

本名や何処に住んでいるのかとか謎だらけの人ですけど、その人物は確かに居る。

そして何よりinterludeの雲雀さんのベースは、モンブラン栗田の最高傑作であるirisベースの内の1本だと言われてますし。

 

「モンブラン栗田の名前を知らない人なんてクリムゾンには居ないんじゃないかな?

interludeの朱坂さんのベースは、そのモンブラン栗田の最高傑作である雷獣だと言う話も聞くしね」

 

天花寺さんがそう言った後、その場に居たみんなが雲雀さんの方を見た。

 

「ああ、確かにそうだ。僕のベースはモンブラン栗田の最高傑作のひとつ、雷獣と名付けられたベースさ」

 

やっぱり本物なんスね。

ちょ、ちょっと見せてもらうこととか出来ないもんスかね?

 

「まぁ、さすがにモンブラン栗田の名前は知っているわ

ね」

 

雲雀さんにみんなの注目が集まったというのに、小暮さんはそのまま話を続けた。

つまり、この会議はモンブラン栗田のirisシリーズの話題ではないという事スね。

なら、何故モンブラン栗田の名前を…?

 

「モンブラン栗田の楽器だけじゃなく、追憶のレスポールってギターもあれば、伝説のスネアドラムなんかもあったりするんだけど…」

 

追憶のレスポール…。

この名前も聞いた事があるッス。

アーヴァルのユーゼスさんが使っていた伝説のギター。

今はどこにあるのか、誰が持っているのか…。

バンドやろうぜ!をプレイした事のある人は知ってるでしょうけどね。

 

「ま、それはそれとしてね。

ボーカルの四響ディズィが現れるよりも、15年前のクリムゾンミュージックとアーヴァルとの戦いよりも、ずっと昔に我こそは最高最強のバンドマンだという者達による音楽の戦争があったの」

 

15年前の戦いより前に…?

小暮さんはそのまま話を続けた。

 

「古くは戦国時代での合戦や、幕末での戦いでもデュエルギグは行われていたと言われているわ」

 

なんか一気に眉唾物っぽくなりましたね?

 

「そしてある時にそんな戦争を終わらせようとするバンドマン達が現れた。

音楽の世界を支配しようとするバンド、音楽が好きな者同士手を取り合おうとするバンド、音楽そのものを破壊して終わらせようとするバンド、音楽は自由なものと広めようとするバンド。他にも各々に思惑や目標めいたものがあったみたいだけどね」

 

音楽の世界を支配ってまるで今のクリムゾンみたいじゃないッスか…。

 

「その中でも頂点に近いと言われた12人のボーカル達。

彼らは 音の宝珠(レガリア)と言われるモノを持っていた」

 

ん?気のせい…ッスかね?

今、雨宮さんとHONEY TUMBLEの人が何か反応したような…?

 

「そしてそのレガリアを持つ者達による最低最悪の音楽の戦争が勃発して、戦争が終結した時にはレガリアは各地に散らばったり、次世代へと受け継がれたり…レガリアは存在自体が忘れさられてしまった。

ま、そんな事があって我が国日本は自由な音楽を手にする事が出来たんだけど、その数年後にクリムゾンミュージックが日本に現れ、今に至るって感じかしらね~」

 

まさか…小暮さんはそのレガリアってのをオレ達に探させるつもりなんじゃ…。そんなあるかないかもわからないような物を…。

 

「15年前の戦いではクリムゾンミュージックも、私達クリムゾンエンターテイメントもレガリアなんか見向きもしてなかったんだけどさ~。私としては…」

 

-ガタン

 

「あら?雨宮さん?どしたの?」

 

小暮さんが話を終える前に、雨宮さんが席を立った。

 

「くだらんな。時間の無駄だ。

レガリアの話は俺も聞いた事はある。だが、そんな物は誰も知らないし、本当に存在するかすらもわからない物だ」

 

「ふぅ~ん…それで?」

 

「小暮、お前はそのレガリアを俺達に探せというのだろう?あるかないかもわからない物を探す程俺達は暇ではない」

 

「あるかないかもわからない……かぁ?そんなハズないでしょ?」

 

「何…?」

 

「確かに何処にあるのかはわからない。だけどレガリアは存在する。あなたはそれを知っているハズよ。HONEY TUMBLEの 大崎(おおさき)さんも知っているハズよね?」

 

あ、HONEY TUMBLEのあの人、大崎って名前なんスね。

それにしても雨宮さんもあの大崎さんって人も、レガリアの存在を知っているハズとは…?

 

「雨宮さんも大崎さんも知っているハズよね?

だって15年前のアルテミスの矢とクリムゾンエンターテイメントの戦いにも、レガリアはあったハズだもの」

 

 

-ピクッ

 

 

雨宮さんと大崎さんが身体を震わせた。

今度は違和感とか気のせいとかじゃないッス。

あの2人は確かに小暮さんの言葉に反応している。

 

レガリアはあった。

きっと小暮さんも確信があるんスね。

 

「レガリアなんて物は存在しない。ただのバンドマンに受け継がれるおとぎ話だ」

 

「スコーピオンの足立、サジタリウスの大神、ピスケスの木原。

そしてソレをONLY BLOODから受け継いだサジタリウスのTAKAと、母親から受け継いだピスケスの梓」

 

スコーピオンの足立…?

足立ってもしかして…。いや、TAKAとか梓って、もしかしてBREEZEのTAKAさんとArtemisの梓さん…?

 

オレもクリムゾンエンターテイメントのミュージシャン。もちろん15年前の戦いの事も、BREEZEやArtemisの事も知ってるし、TAKAさんは今はBlaze Futureのボーカルって事も知ってます。

 

「……それでも知らないのかしら?」

 

「反論しても無駄なのだろう?

何処でその話を聞いたのかは知らんが…」

 

「そうね。下調べはバッチリだもの。

今、現存している……いえ、現存はしてないかも知れないわね。所在のわかっているレガリアは3つ。

Blaze Futureの葉川 貴が持つサジタリウス。きっとArtemisの関係者が持っているピスケス。そして、15年前にBREEZEのTAKAに破壊されたクリムゾンエンターテイメントの足立が持っていたスコーピオン」

 

…!?

スコーピオンのレガリアは破壊された?

BREEZEのTAKAさんに?

 

「タカが足立のレガリアを破壊した事まで知っているとはな。

だが、タカも梓もレガリアを使う事は1度も無かった。15年前の足立やクリムゾンとの戦いでもな」

 

「そうね。それも知っているわ。

葉川 貴が意地を張らずにレガリアを使っていれば、喉を壊す事も無かったかも知れないのにね。あ、使わなかったんじゃなくて使えなかったって可能性もあるけど♪」

 

レガリアを使っていれば…?

さっきから小暮さんも雨宮さんも何を言ってるんスか?

レガリアって12人のボーカルが持っていた象徴みたいなモノじゃないって事ッスか?

使う…?レガリアって一体……。

 

「ま、話を戻すわね♪

所在のわかっている3つのレガリア以外。

残り9つのレガリア。それをみんなに見つけ出して欲しいの。各バンドで1つずつ…ね」

 

残り9つのレガリアを?

だからオレ達、麗香七舞階と雨宮さん達JOKER×JOKERと、大崎さん達HONEY TUMBLEを…。

 

「冗談やあらへんわ」

 

誰の返事よりも早く虎次郎さんが声をあげた。

 

「冗談じゃないわ。本気よ?」

 

「だったら尚更や。

ワイらはそんなもん探しとる程暇やあらへん。ワイにはクリムゾンエンターテイメントでトップになる事と、Ailes Flammeの江口を倒すって目標があるんや」

 

「もう~。ほんと白石くんめんどくさいよね~」

 

「何がめんどくさいじゃ!!

ええか!?ワイは自分の力でクリムゾンエンターテイメントのトップになって江口を倒す!そんなレガリアなんか必要あらへんねん!男に必要なんはレガリアやない!ワイの声と歌があれば十分なんじゃ!

そうやんのう?雲雀!」

 

「虎次郎。めんどくさいよ、そういうの。それに僕は男じゃないし」

 

「これがinterludeじゃ!」

 

いやいやいや、これがinterludeじゃ!って何なんスか。

雲雀さんめちゃくちゃ否定的じゃないッスか。

 

「あー、もうほんと白石くんめんどくさい。

まぁ、いいわ。だったら良い事を教えてあげる」

 

「ええ事やと?」

 

「Blaze Futureの葉川 貴がサジタリウスのレガリアを持っている。それはさっきの話でわかっているわね?」

 

「ああ、そうらしいのう。だから何やって話やけどな」

 

「葉川 貴は15年前のクリムゾンエンターテイメントとの戦いで喉を壊している。つまり、今はもうレガリアの力を使えないはずだわ。ま、元々使ってなかったみたいだけど」

 

「だから何やね。まだるっこしいのぅ」

 

「葉川 貴は今はファントムのバンド。

レガリアの次世代後継者をファントムのバンドから選ぶかも知れないわね」

 

「な、なんやと…?」

 

「Ailes Flammeの江口くんは、かつてのBREEZEのTAKAに雰囲気が似ていると言われているわ。

葉川 貴がレガリアの後継者に江口くんを選んだらどうなるかしら?イメージしてみて?」

 

「イメージや…と…?」

 

 

 

----------------------------------------

 

 

『江口 渉!ここで会ったが100年目や!受けてもらうで!デュエル!!』

 

『ん?俺とデュエルすんのか?』

 

『今日こそ決着付けたるわ!』

 

『いや、でも虎次郎はレガリア持ってねぇだろ?俺はにーちゃんに選んでもらった後継者だしな!』

 

『ハンッ!レガリアなんか必要あらへん』

 

『いや、でも虎次郎じゃもう俺の相手にならねーぞ?

やっぱり俺のライバルはBLASTだけだな』

 

『やってみなわからへんやろが!デュエルじゃ江口!』

 

『あはははは、やらなくてもわかるぜ。どんまい!』

 

 

----------------------------------------

 

 

 

「おのれ江口渉ぅぅぅぅ!!!!」

 

うわっ!?びっくりした!

いきなり虎次郎さんが叫び出すからオレだけじゃなくみんなびっくりしてるじゃないッスか。

 

一体どんなイメージをしたんスか…?

 

「こ、こうしちゃおられへんぞ…。雲雀!行くで!

今からレガリア探しや!最強のレガリアをワイらが手に入れるんや!」

 

「いや、ほんと虎次郎は何を言っているの?」

 

「待っとれよ江口 渉!ワイらがナンバーワンじゃ!」

 

-ダダダダダ…ガラッ

-ダダダダダダダダ……

 

そう言って虎次郎さんは会議室から走って出て行った。

ほんとどんなイメージをしたんスかね?

そもそも何処にあるのかもわからないってのに、ヒントも何も無しで出て行って見つかる訳ないじゃないッスか。

 

「ふぅ、これで静かになったわね。さ、これからが本題なんだけど~」

 

え?本題?

さっきのレガリア探しってのが本題じゃなかったんスか?

 

「レガリアなんて本当に見つかるかどうかわからない。そもそも何処にあるのかもわからないし、残り9つのレガリアは現存していないかもだしね」

 

それはそうッスよね。

Blaze Futureのタカさんや、Artemisの梓さんの関係者から奪って来いって命令ならともかく、他のレガリアを探し出すだなんて…。

 

あ、そうか。それは出来ないんスね。

オレ達はファントムのバンドに手を出すのは禁止だから…。

 

「でもみんなにはレガリアを探してもらいます。これは海原さんにも許可を得てる事なので♪」

 

海原さん…。オレ達クリムゾンエンターテイメントの創始者…。

 

「私達クリムゾンエンターテイメントはファントムのバンドに手を出す事を禁止する。そう私達に伝えた後、海原さんはこうも仰ったわ」

 

 

『ああ、そうそう。ファントムには手を出すなとは言ったが、もし彼らが我々の邪魔をして来た場合はその限りではないし、彼らが参加するようなギグイベントに我々のバンドの出演が『たまたま』重なった場合もその限りではない。全力で相手にしてやるといいよ』

 

 

「ってね♪」

 

ん?え?待って下さい。それってどういう…?

 

「なるほどね。その為のレガリア探しか」

 

雲雀さん?

雲雀さんは何かわかったんスか?

 

「フフフ、フフフフフフ。わかりました。それなら私もDivalの雪村 香菜とも戦えますね」

 

え?あの人…風祭さんでしたっけ?

あの人もわかったって事ッスか?

雪村さんと戦える?

 

「それは素晴らしい手だね。つまり、私達はレガリアを探し出す為にイベントに参加した。だが、そのイベントにはファントムのバンドも参加していた。だから、デュエルをして勝たねばならない。レガリアの為に」

 

ハッ!?

そ、そういう事ッスか!?

レガリア探しは海原さんの許可を得ている。

ファントムのバンドがレガリア探しの邪魔になったから、オレ達はファントムのバンドとデュエルをしてもしょうがない…。そんなシナリオにするつもりなんスね…。

 

「そういう事♪

だから各バンドでレガリアを1つだけ見つけて来て欲しいのよ。どのバンドがどのレガリアを見つけて来てくれてもいいんだけど、私達はクリムゾンエンターテイメントの仲間。ちゃんとルールは作っておきましょうね。これが今日の会議の本題」

 

ルール?一体どんなルールを…。

 

「interludeはAiles Flammeと戦いたい。と、いうように各バンドに戦いたいファントムのバンドがいるわ」

 

いや、オレ達には戦いたいバンドなんかいないスけど?

出来ればファントムのバンドとデュエルなんかしたくないッスけど?

 

「ま、だからみんなの意見を参考に私が独断で、各々のデュエルするバンドを割り振ったわ。

簡単な例を出すと、アリエスのレガリアを手に入れる為にAiles Flammeが邪魔になったらinterlude以外は手を出すのは禁止。その状況になったら速やかにinterludeに連絡をしてAiles Flammeとデュエルさせる事」

 

そうか…。小暮さんも本当はレガリアなんか二の次なんスね。

本当の狙いはファントムのバンドとイベントが重なってデュエルをする事…。

 

「じゃあ割り振ってくわね♪

さっきも言ったようにinterludeはAiles Flamme。

Ailes Flamme以外のバンドに手を出すのは禁止よ?わかった?」

 

「Ailes Flammeが相手なら僕にも問題は無いし、虎次郎もうるさくはしないだろう。いいよ、わかった。

Ailes Flammeは僕達interludeが倒す」

 

雲雀さん達のinterludeの相手はやっぱり江口さん達のAiles Flammeッスか。

 

「そして~、雨宮さん達はevokeをお願いね♪」

 

え?雨宮さん達の相手はDivalじゃなくて…evoke?

 

「いいだろう。evokeは俺達で心を折ってやる」

 

 

「ちょっと待ちなさいよ!!」

 

 

「ん?何かしら?」

 

今、小暮さんと雨宮さんとの会話に割って入ったのはKiss symphonyのReonaさん。

何でReonaさんが割って入るんスか?

 

「何で…雨宮 大志の相手がevokeな訳?

雨宮 大志はDivalの雨宮 志保の父親でしょ?

他のバンドよりJOKER×JOKERはDivalとデュエルするべきだと思うんだけど?」

 

オレもReonaさんと同じ意見ッスね。

雨宮さんならきっとDivalを本気で潰すような事は…。

 

「父親として、クリムゾンエンターテイメントの反逆者である娘の居るバンドを責任持って…」

 

「責任持って何?

物は言いようよね。Divalの相手をして、Divalが他のバンドに本気で潰されないように、父親として守ってやれ。って事かしら?」

 

「…!?な、何を言ってるの!?私は…」

 

「夏の関西でのイベントで水瀬さんや氷川さんに負い目を感じちゃった?出来レースであなた達が勝っちゃったものだから」

 

「それは…関係無いわよ」

 

「それとも仲良しこよし、お互い高め合う為に氷川さんの居るDivalは潰されないでほしいとか?」

 

「わ、私は雨宮 大志に父親として責任持ってDivalを潰すべきだと言っているの!」

 

「残念だけど今はそんな甘いこと言ってられないのよ。私達はクリムゾン、あの子達はファントムなんだから」

 

「だ、だから私は…」

 

「優しいわね、Reonaちゃんは。私も考え直したくなっちゃうよ。

でもね、それは無理。

そもそもDivalの相手は風祭さんのバンドの予定だし。それに雨宮さんのたっての願いで、JOKER×JOKERの相手はevokeになったんだから」

 

「え…?」

 

雨宮さんのお願いでJOKER×JOKERの相手がevoke?

何で?雨宮さんには雨宮さんの考えがあるんスかね?

 

「evokeのギタリスト折原 結弦。俺はあいつに興味があるだけだ」

 

「そういう事。それにJOKER×JOKERの相手がevokeじゃなくてDivalだったとしても、あなたの思っているようにはならないわよ」

 

「そうだな。俺はクリムゾンエンターテイメントの雨宮 大志であり、志保はファントムの雨宮 志保。例え娘であっても俺は本気で潰す」

 

「そんな…あ、あなたは娘が可愛くないの!?」

 

「そんなことはない。志保は可愛い。めちゃくちゃ可愛い。果てしなく可愛い。まわりの男共を俺の手で一掃してやりたいくらいだ。志保はヤバいくらいに可愛い」

 

雨宮さんは何を言ってるんスか?

 

「こうやって目を閉じて志保を思い出すだけで俺はもうヤバい。志保の可愛さは世界だとか宇宙だとかそんな小さな世界の言葉では言い表す事は出来まい。わかるな?」

 

本当に何を言ってるんスか?

何がわかるな?なんですか?

 

「そんなの…わかんないわよ。きっと雨宮 志保も…」

 

「先日、志保とデュエルした時も本当にヤバかった。ギターを奏でる志保にキュンキュンしていた。もうマジ胸キュン。平静を装ってはいたがキュン死にするかと思った程だ」

 

「え?え?雨宮さん、Divalの志保ちゃんとデュエルしたの?聞いてないんだけど?」

 

「…………という妄想をしてしまうくらい志保は可愛いという事だ。だが、デュエルとなれば別だ。完全に心を折る。完膚なきまでにな」

 

妄想って…。

雨宮さんってこんな人だったんスね…。

 

「ま、いいでしょ。さっきのデュエルってのは聞かなかった事にしてあげる。

そういう訳よ。そしてあなた達Kiss symphonyの相手はGlitter Melodyよ」

 

「Glitter Melody?何で…?」

 

「それはいずれわかるわ。それに氷川さんのライバルになりたいなら、Reonaちゃんには美緒ちゃんは良い相手じゃない?デュエルでどっちが本当の氷川さんのライバルなのか決着を着けたら?」

 

「い、今はそんなの関係…ない…!」

 

Reonaさん達の相手はGlitter Melodyッスか。

でもさっきからの会話…。

まるでオレ達もファントムの皆さんも小暮さんの手の中のような…。全てとは言わないッスけど、色んな事を見透かされている気がするッス。

 

「そして天花寺さん達はCanoro Felice。小鳥遊さん達はLazy Wind。若月さん達はBlaze Futureの相手をしてもらうわ」

 

!?

天花寺さん達はCanoro Feliceってのはいいとして、小鳥遊さん達がLazy Windで、若月さん達がBlaze Future!?

Lazy Windはオレ達クリムゾンのバンドを何組も潰していった百戦錬磨のバンド。

それに15年前にクリムゾンエンターテイメントの敵であったBREEZEの宮野さんもいる。

そしてBlaze Futureには喉を壊したとはいえ、15年前最強最悪だったクリムゾンエンターテイメント四天王の足立を倒したBREEZEのタカさんがいるっていうのに…。

 

小鳥遊さんと若月さんの実力はそれ程に…?

 

「ふふふ、クリムゾンエンターテイメントに入って良かったわ。早速、架純を倒す舞台が用意されるなんて…。本当は結衣も私が倒しておきたかったけど…」

 

「悪いね花梨。秋月さんは私が倒しておきたいのだよ」

 

「佐倉さんへの復讐の機会がこれで手に入ったわね。待っててね秦野くん♪」

 

この人達は…。

いや、それにしてももしかして若月さんの言ってる秦野くんってAiles Flammeの秦野さんの事ッスか?

 

「後は大崎さんのバンドと不破くんのバンドね」

 

あ、オレのバンド…。

そうッスよね。オレもファントムのバンドと…。

 

残りはFABULOUS PERFUMEとNoble Fateか…。

 

「すんごく悩んだんだけど~…。HONEY TUMBLEはやっぱり実戦経験が多いだろうしね。FABULOUS PERFUMEの相手をしてもらうわ」

 

という事はオレ達がNoble Fateと…。

 

「ま、話はそれだけよ。

……ってもうこんな時間になっちゃってるじゃん!

それもこれも白石くんのせいだわ!あの子は本当にもう!本当に…!!」

 

オレと大崎さんが何か発言する間もなく、小暮さんはそう言って会議を打ち切った。

 

Noble Fateの皆さんには悪いッスけど、正直、Ailes Flammeや夏野さんや雪村さんのバンドとデュエルする事にならなくて良かった…。

 

「あ、不破く~ん」

 

小暮さん…?

 

オレが会議室を出た所で、何故か小暮さんに声を掛けられた。

何か急いでるから会議も打ち切ったんじゃなかったんスか?

 

「ほら。こっちこっち~」

 

何なんスかね一体。

オレはしぶしぶ小暮さんに近付いた。

 

「不破くん達のバンドの要望。

レガリアを手に入れてくるか、Noble Fateを倒す事が出来たらちゃんと叶えてあげるから安心してちょうだい」

 

!?

 

何で…わざわざオレ達にだけそんな事を…?

いや、多分あんな要望を出したのは…オレ達だけだから…。

 

「でもNoble Fateは正直手強いわよ?

ドラマーの北条 綾乃ちゃんはBREEZEの中原 英治の愛弟子だし、ベーシストの東山 達也さんもBREEZEの宮野 拓斗にベースを教わってたと聞いてるし」

 

Noble Fateは危険。

そう言いたいんスよね?だからオレ達の相手にNoble Fateを選んだんスよね。

 

「二胴さんから聞いてますよ。ボーカルの大西 花音さんはBREEZEのタカさんと同じチカラを持っているかも知れない。そして…木南 真希さんは…」

 

「あら…?もしかして知ってた?」

 

ええ、知ってます。

そしてオレはその後の貴女の言葉も聞き逃さなかったッスよ。耳だけはいいんで。

 

「BREEZEのトシキさんに憧れてバンドを始めた。

BREEZEのタカさんに憧れた小暮さんと一緒に」

 

一瞬、小暮さんの顔が怒ったような、寂しいような、それでいて辛いように見えてしまった。

 

「そうよ~。Noble Fateは当時のBREEZEとは全然違う。だけど、当時のBREEZEのチカラを受け継いでいるかのようなバンド。早い内に叩いてほしいのよね」

 

小暮さんが一瞬そんな顔を見せたかと思ったッスけど、次の瞬間にはいつものおどけた感じで話を続けた。

 

「だからクリムゾン以外のバンドに負けたクリムゾンのバンドを潰していっていたあなた達に」

 

そうオレ達はクリムゾンのバンドが、他のバンドに負けた時、それでもまだバンドを…音楽を続けていこうと頑張っていたバンドを…2度と音楽がやれないようにと潰していっていた。

ほんと…オレ達ってどうしようもないクズ野郎ッスよね。

 

小暮さんももうオレ達の気持ちもわかってるんでしょうね。

まぁ、あんな要望を出したくらいですし。

 

だからオレもハッキリと小暮さんの前で言っておこう。

 

「大丈夫ッスよ。Noble Fateは正直潰すつもりはないッスけどね。オレはファントムの皆さんが大好きッスから」

 

「へぇ~…それを私の前で言うんだ?わかってる?私はクリムゾンエンターテイメントの大幹部様だよ?」

 

「わかってますよ。でも安心して下さい。

必ずレガリアは見つけ出します。オレ達が…クリムゾンエンターテイメントを抜ける為に」

 

オレ達の要望はクリムゾンエンターテイメントからの脱退。そしてその後のバンド活動を邪魔しない事。

 

「期待してるわね」

 

そう言って小暮さんはオレの前から去って行った。

 

小暮さんは一体何を考えてるんスか?

 

さっき…

 

『チッ、クリムゾンエンターテイメントはやっぱり手強いわね。他の手も考えないと…』

 

何でそんな事を言ったんスか?

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