バンやろ外伝 -another gig-   作:高瀬あきと

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第24話 3周年記念とかおこがましいね

「それでは今日の授業はこれで終わりです。次の授業までに復習を忘れないように。あ、言っておくけれども、復習を忘れないように。よ?復讐したいって気持ちは早く忘れるように」

 

Divalのベーシストである氷川 理奈はそう言って……

 

「ガラガラガラ、ピシャッ」

 

扉の開閉音を口にしながら教室を出ていった。

 

今日の授業はこれで全部終わり。

さて、これから何をしようかな?

 

……ホントに何しよう?

 

「ヤッ、ヤッター。キョウノジュギョウゼンブオワッター」

 

めちゃくちゃ硬い言葉でクラスメートであるLazy Windのキーボード担当、観月 明日香が立ち上がった。

 

「サ、サア!ワタシハキョウハ、ハヤクオウチニカエロー」

 

明日香はそう言って教室から出て行こうとしている。

 

「逃がさないよ。明日香」

 

「ちょっ!は、離しなさいよ美緒!私はこんな茶番に付き合ってらんないの!」

 

明日香が教室から出ようと扉に手をかけたけど、それをGlitter Melodyのベースボーカルである佐倉 美緒が手を掴んで止めた。

 

「明日香ももう諦めようよ。ボクももう諦めたよ?」

 

そう言って明日香に近付いたのはFABULOUS PERFUMEのドラマーであるイオリこと小松 栞。

 

「そうだよ。ただトークしてたらいいだけみたいだし」

 

「そうそう、せっかくなんだからこの状況も楽しまなきゃ~」

 

そこに声をかけたのは、FABULOUS PERFUMEのベーシスト、ナギである茅野 双葉先輩と、Divalのドラマーである雪村 香菜だった。

 

「な、何でみんな文句無いわけ!?訳のわからない事にこんな所に呼ばれて…志保もさっきからモノローグばっかり語ってないで何か言いなさいよ!」

 

「あれ?今日ってあたしのモノローグも筒抜けなんだ?」

 

あたしはDivalのギタリストである雨宮 志保。

実は今日は貴の企画バンドと澄香さんの企画バンドであるあたし達とで、ネット番組の撮影中なのである。

 

ちなみに3周年記念の特別編なのである。

時系列的に言うとEpisode of Phantom編が終わった後の適当な頃合いな時期らしい。

 

適当な頃合いって何よ…意味わかんないし。

 

今はEpisode of Phantom編のめちゃ途中でしょ?

Blaze Future編の第3章だかで、貴が時系列って大事だぞとか言って無かった?

 

「やれやれ、本当に…君たちといると賑やかだね」

 

そう言って明日香達に近付いたのは、SCARLETの唯一のバンド。……バンド名何なんだろ?

とりあえずそのバンドでギターボーカルをしている風見 有希さん。

 

貴の遺伝子で造られたmakarios bios。

……でも本当に有希さんって貴に似てないよね。

有希さんすっごく美形だし、クールなお姉様って感じなのに。

貴ってどっちかというと不細工ではないけど普通?

クールっていうかただの人見知りってだけだし、歳上って感じもあんましないし。

 

ああ…何か有希さん見てると貴が可哀想になってきた。

そりゃ結婚とか出来ないのも頷けるよね。

あたしが成人してもまだ誰とも結婚出来てないようなら、あたしがお嫁に行ってあげようかな?

 

 

 

……違うし!あたし何を考えてんの!?

貴と結婚とか無いし無理だしあり得ないし!

 

あ、そっか。貴って意外とモテてんだよね。

渚や理奈や奈緒とか。

盛夏や美緒も何となく貴の事が好きなのかな?って思う事もあるし、考えてみたら梓さんとか澄香さんも貴の事好きなんじゃなかったっけ?

 

それなのにまだ結婚出来てないようだから、可哀想とか惨めだなぁ。みたいな気持ちになって、だったらあたしが…って思っただけだしね。うん、あたしは別に貴の事好きって訳じゃないよ。うん。

 

「では、私は帰らせてもらうよ」

 

 

……ハッ!?

 

 

あたしも自分の世界に入ってモノローグ語ってる場合じゃないよ。

有希さんも何で帰ろうとしてんのよ!

私達はSCARLETのバンドでもあるんだから、企画番組の撮影もちゃんとしないとさ…。

 

「有希さんも何を帰ろうとしてんですか?今は撮影中ですよ?

……ってこんな事言っていいのかな?」

 

例え有希さんといえど逃がす訳にはいかない。

あたしは有希さんに向けてそう言った。

 

「志保……?

なるほどな。ようやくだが何となく状況はわかった。理奈は上手くやったものだね」

 

ん?状況はわかった?

今まであたし達が何をやってるか有希さんはわかってなかったの?

それより理奈は上手くやったって何よ。

 

「そうだな。…よし、みんなには悪いとは思うが、各々自席に戻ってくれるかね?その後説明させてもらおう」

 

説明?

 

「ちょっと…私も早く帰りたいんですよ。何で自席に…」

 

「明日香。本当に申し訳ないとは思っているよ。

だから、自席に戻ってくれたまえ」

 

「…ちゃんと説明してくれます?」

 

「ああ、約束だ」

 

明日香はしぶしぶといった形で自席に戻っていった。

それを見た美緒と栞も自席に座り、あたし達は有希さんからの説明とやらを待っていた。

 

「みんな自席に戻ってくれて助かったよ。

では説明させてもらおう。みんな今回の番組の台本、それは手元にあるかね?」

 

番組の台本?

ま、まぁ、あたしも素人だしね。

自席の机の中に台本は忍ばせてある。

 

ちょっと分厚い台本だからさわりだけ読んで力尽きてしまった。

わからなくなったら台本を開いたら何とかなるかな?とか思ってたし。

 

ソッとまわりを見てみると、あたしだけじゃなくみんな机の引出しの中に台本を忍ばせていた。

 

「やはりみんな台本をこっそり持って来ていたんだね。まぁ、あの台本を覚えるなんて理奈以外には無理だろうね」

 

理奈は一応元芸能人ではあるわけだし、台本とか覚えたりする現場とかもあったと思うけど、あたし達はみんな素人だもん。そりゃ台本をこっそりと…

 

「ではみんな、台本を見てもらえるかな?」

 

あたしが色々と頭の中で考えながらモノローグを語っていると、有希さんに台本を見るように言われた。

あたしも一応台本を読むには読んだんだよ?ただ覚えきれなかっただけで…やっぱり理奈は凄いなぁ…。

 

ん?あれ?理奈は凄い?

台本を澄香さんに貰って一通り読んだ時には理奈のシーンってもう少しあったと思うんだけど…?

 

でも理奈はこの教室という名のセットから出て行ってしまった。後から戻ってくるとかな台本だったっけ?

 

「だ、台本開いてみましたけど…やっぱり台詞も多いし展開っていうのかな?これは素人の私達に覚えろってのはいきなりは無理ですよ」

 

「あたしもそう思うよ~。この台本めちゃ分厚いし…あたしも20ページ目くらいまでは覚えたけど、途中から覚えるの無理だと思ったし」

 

「明日香も香菜もちゃんと台本を読んでいないようだね」

 

え?ちゃんと台本を読んでいない?どういう事?

 

「では…そうだな。台本の後ろから50ページ目あたりを開いてもらえるかな?」

 

台本の後ろから50ページ目?何でいきなりそんなページを…?

 

あたしは不思議に思いながらも台本の後ろからパラパラとページを捲っていった。

 

………え?あれ?これって。

 

「あ!ボクの台本おかしいよ!後ろから50ページ目とか真っ白だもん!」

 

「栞の台本もそうなの?実は私の台本も途中から真っ白なんだよね」

 

「栞も美緒ちゃんもそうなんだ?私の台本も途中から真っ白だよ」

 

あ、やっぱり台本の途中から真っ白なんだ?

あたしの台本だけ誤植っていうか間違いがあったんだと思っちゃった。

 

栞達の言う通りあたしの台本も最後のページあたりから真っ白になっていた。

 

「ふむ、確認は出来たようだね。それでは最後のページ、奥付のあたりを読んでもらおうか。では、私は失礼するよ」

 

そう言って有希さんは教室から出ていった。

 

台本の最後のページ?

一体何が書かれてるんだろう?

今の有希さんの話し方からすると、台本の途中ページは真っ白で問題無さげな感じだったけど。

 

あたしは有希さんの言った台本の最後のページ。

奥付の部分を読んでみた。

 

 

『ってまぁ、台本には色々書いたけど全部撮影するとか無理やしね!とりあえずみんな適当なトークで盛り上げてくれたらええから。あ、それとカメラのフレームって意外と小さいしさ?撮影に必要なのはこの中から5人くらい。後からゲストも来てくれるからゲスト含めて6人!後の3人はカメラに写りたくないなら帰ってくれてもいいからね。適当に上手くハケちゃって』

 

 

……

………

…………は?

 

 

えっと、つまりこの企画番組の撮影にはあたしらの中から5人でいいって事?

カメラに写りたくないなら帰ってくれてもいい?

 

あ、なるほど。

だから理奈は台本にはないけど、授業は終わらせた体で教室から出て帰ったって事か。

有希さんも話の流れ的に上手く帰宅するって事で教室から出て行ったんだね。

 

そっかそっか。

ハァー…理奈も本当に流石だなぁ。

全然違和感無かったし。

有希さんも自然と帰って行ったもんね。

2人ともちゃんと台本読んでたんだねー。

 

 

……

………

 

 

って感心してる場合じゃないよ!あたし!

 

これって撮影から逃げれるチャンスじゃん!

帰っていいのは3人だけって話だから、この撮影から逃げれるのは理奈と有希さんと残りのあたし達から1人だけ!

あたしも出来ればこんな番組とか出たくないし、逃げちゃうなら今のうちじゃん!

 

あたしはそう思い教室から急い出て行こうと席を立った。

 

 

-ビターンッ

 

 

「痛っ!めちゃ顔面から転んじゃった!美緒!何で私の足を引っ掛けたの!?」

 

「ごめんね、つい…。台本によるとここから逃げれるのは残り1人だけらしいし、明日香を逃がす訳にはいかないと思って…」

 

「あ、あはは、栞?何で私に抱き付いてるの?」

 

「双葉も今教室から出ようとしてたよね!?ボクも帰りたいし双葉を帰す訳にはいかないよ!」

 

 

クッ、みんな台本を読んじゃったんだね!

 

だが、それがいい!

 

みんな我先に帰ろうと自席付近で争っている。

美緒と明日香、栞と茅野先輩。

みんな早く帰りたいんだね。

そしてあたしは今はフリーの状態。香菜は今の状況を楽しもうとか言ってたし、この教室から逃げ出そう争いには参加はしてこないはず。

 

これはあたしが逃げるチャンスだ!

 

そういやさっき栞も諦めたとか言ってなかった?

 

 

 

おっと、いけないいけない。

今はこんなしょーもないモノローグを語ってる場合じゃないよ。うん。

 

あたしもこんな番組出たい訳じゃないし、さりげなくこの教室から出て行かないと…。

 

 

ただどうやってこの教室から逃げる?

 

 

あたしは逃げのチャンスを見計らっていた。

 

 

香菜はおそらくこの番組に出る事は悪くは思っていないだろう。

美緒と明日香は今も言い争いをしている。栞と茅野先輩もだ。

言い争いをしている美緒達の横を通ってどうやって教室から出ればいいか。

 

有希さんのようにみんなに話し掛けながら自然と出て行く?

それとも…。

 

「み、美緒は可愛いから番組出ても大丈夫!だから…ね?私を教室から出して?

 

「残念ながら私は自分の分際というものを弁えているので。可愛いからって理由だったら明日香はモーマンタイだよ。自信を持って。って訳で自分に自信の無い私が帰ります」

 

「栞、大丈夫だから。大丈夫だからその手を離して?」

 

「やだよ!何が大丈夫なの!?手を離したら絶対双葉は教室から出て行くもん!ボクが手を離しても教室から出ないって約束してくれる!?」

 

「………」

 

「ほら!返事しないじゃん!双葉も教室から出る気満々じゃん!!」

 

この4人はこのまま言い争いを続けてくれていれば…。

あたしはソッと香菜の方に目をやった。

 

…何か台本を読んでるみたい。

やっぱり香菜はこの撮影もやる気みたいだ。

今がこの撮影から逃げる最大のチャンス。

有希さんのように、さりげな~く自然に帰ろう。

 

あたしは席から立ち上がり、教室の出口へと近付いた。

 

「ちょっ!志保!何帰ろうとしてんの!?」

 

チッ、見つかったか。

栞が教室から出ようとするあたしを見て声をあげた。

 

だけど残念だったね。

この位置関係、あたしが1番教室の出口に近い。

あと数歩、ほんの数歩だけでも時間を稼げば…。

 

「いや、みんな色々話しもあるみたいだしさ?」

 

そう話しながら1歩また1歩と教室の出口へと近付く。

 

「あたしはこの後バイトもあるし~…」

 

よし…この距離なら…。

 

「さ、させない!逃がさないよ、志保!」

 

美緒が明日香との言い争いを止めてあたしの方へと向かって来た。

 

だけど…遅い!!

 

あたしは教室の出口へと向かってダッシュした。

 

 

-バリーン

 

 

バリーン?何の音?

何かが割れたような…。

でも、まぁいい。あたしはそんな音に気を取られている場合じゃない!

 

出口の扉に手をかけたあたしは勝利を確信した。

 

「勝った!」

 

あたしは思いっきり教室の扉を開け……

開け……あれ?

 

「開かない…?」

 

どうなってんの!?

何で扉が…。

 

「志保?どうしたの?」

 

「いや、扉が開かないんだよ…」

 

「え?」

 

あたしに追い付いて来た美緒も、扉に手をかけて開けようとしてみたけど…。

 

「開かない…何で…?」

 

『ピンポンパンポ~ン。教室からの脱出成功者が3名となりましたので扉を施錠させて頂きました。って訳で残り時間の撮影よろしく~♪』

 

……は?

澄香さんの声がスピーカーから流れてきた。

いや、脱出とか言っちゃってるしね。

 

!?

てか、脱出成功者3名って!?

 

あたしは振り返って教室内を見てみた。

 

あたしの隣には美緒。

そして、明日香、茅野先輩、栞。

……香菜は?

 

「香菜が居ない!?」

 

「香菜姉なら…」

 

栞が教室の出口と逆の方へ指をさした。

 

栞の指をさした先に目をやると、そこには窓がある。

そして、窓の1枚が割れていた。

 

「志保がダッシュしたのと同時くらいに立ち上がって、窓を突き破って…」

 

窓を突き破って!?

 

あたしは窓の方へと近付き、窓の外を見た。

 

割れた窓の一直線上に香菜は倒れていた。ピクリとも動かない。

 

何でなの香菜!?

さっきは「この状況も楽しまなきゃ~」とか言ってたじゃん!!

内心は窓を突き破ってでも逃げたいくらいだったの!?

 

クッ、香菜…後で覚えときなさいよ…。

 

「香菜ちゃんも逃げちゃったししょうがないよ。

今は一時休戦。さっさとトークして撮影終わらせちゃわない?」

 

茅野先輩がそうあたし達に向けて話した。

確かにこの状況じゃ何をしてもあたし達は逃げられないだろうし、さっさとトークを終わらせて帰るのが最善かな。

 

「わかったわよ。敗者は勝者に従うしかないもんね」

 

どうやら明日香も観念したようだ。

勝者に従うっていうか澄香さんはただのプロデューサーだけどね。

 

「トークか…でもどんなトークをしようか?」

 

美緒も諦めたのか茅野先輩達の近くの席に座った。

 

「ボク達の共通点って音楽しかなくない?」

 

「そうだね。みんなで音楽の話で盛り上がろっか」

 

音楽の話か。

そうだね。みんなどんなジャンルの音楽をやるのかバンドを通して知ってるけど、普段どんな音楽を聴いたりしてるのかとか知らないもんね。

音楽の話なら盛り上がりそうだし、番組の企画としても……

 

『ピンポンパンポ~ン。今は授業の終わった放課後という設定です。音楽の話は企画コーナーで存分にやる事になるので今は音楽の話題は禁止で~す♪』

 

また澄香さんの声がスピーカーから流れてきた。

 

「お、音楽の話題は禁止って…」

 

「えっと…じゃあ何の話をしようか?」

 

「好きな食べ物の話でもする?私はラーメン1択だけど…」

 

「あ、あれとかは?栞達ってもうすぐ修学旅行でしょ?私達の時は…」

 

 

『ピンポンパンポ~ン。ちゃうねん!私達が聞きたい話はそんなんとちゃうねん!あるでしょJK!

ス、ス、ス、スクールラ……ブツッ』

 

 

また澄香さんの声がスピーカーから…。

途中で音声切れちゃったけど…。

てか何を聞こうとしたの?スクールラブ?

澄香さんもそんな話が聞きたいの?

 

「まぁ、澄香さんの戯言は放置として。今、澄香さん変な事言ってなかった?私『達』とか」

 

あ、そういえば…。

私達って何?もしかして茅野先輩達のバンドのプロデューサーである貴も聞いている?

 

それは無いね。

貴がスクールラブの話を聞きたいとか絶対無いもん。

聞きたいとか心の中で思ってても、あのチキン野郎が表だって華のJKのそんな話に聞き耳立てる勇気とか持ってるわけないし。

 

いや、だからこそ澄香さんの発言途中にスピーカーを切った?う~ん…。

 

 

 

「ガラガラガラ!ゲスト様参上!!」

 

 

 

あたしが考え事をしていると、施錠されたハズの扉からゲストが入ってきた。

 

えっ…ゲストって…。

 

そして話は後編へと続くのである。

 

 

 

って続くのこの話!?

一応3周年記念でしょ!?

もっと頑張んなさいよ作者!!

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